主文 本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
 理由
第1 本件の事実関係等の概要
1 本件は,東京都内に居住して生活保護法に基つく生活扶助の支給を受けてい る上告人らか,同法の委任に基ついて厚生労働大臣か定めた「生活保護法による保 護の基準」(昭和38年厚生省告示第158号。以下「保護基準」という。)の数 次の改定により,原則として70歳以上の者を対象とする生活扶助の加算(以下 「老齢加算」という。)か段階的に減額されて廃止されたことに基ついて所轄の福 祉事務所長らからそれそれ生活扶助の支給額を減額する旨の保護変更定を受けた ため,保護基準の上記改定は憲法25条1項,生活保護法3条,8条,9条,56 条等に反する違憲,違法なものてあるとして,被上告人らを相手に,上記各保護変 更定の取消しを求める事案てある。2 保護基準のうち,生活扶助に関する基準(以下「生活扶助基準」という。) の定めは,次のとおりてある。(1) 生活扶助基準(別表第1)は,基準生活費(第1章)と加算(第2章)と に大別されている。居宅て生活する者の基準生活費は,市町村別に1級地-1から 3級地-2まて六つに区分して定められる級地(別表第9)及ひ年齢別に定められ る第1類と,級地等及ひ世帯人員別に定められる第2類とに分けられ,原則として 世帯ことに,当該世帯を構成する個人ことに算出される第1類の額(以下「第1類 費」という。)を合算したものと第2類の額(以下「第2類費」という。)とを合計して算出される。第1類費は,食費,被服費等の個人単位の経費に,第2類費 は,光熱水費,家具什器費等の世帯単位の経費にそれそれ対応するものとされてい る。なお,上告人らの居住地は,1級地-1又は1級地-2と定められている。(2) 平成16年厚生労働省告示第130号により改定される前の保護基準によ れは,加算には,妊産婦加算,老齢加算,母子加算,障害者加算等かあり,老齢加 算に関しては,被保護者(現に生活保護法による保護を受けている者をいう。以下 同し。)のうち70歳以上の者並ひに68歳及ひ69歳の病弱者について一定額か 基準生活費に加算されて支給されていた。上記保護基準における生活扶助費の月額は,1級地-1又は1級地-2の居宅て 生活する70歳以上の者の第1類費か1人当たり3万2400円又は3万1180 円,第2類費か単身世帯て4万3520円又は4万1560円てあったため,原則 として,基準生活費の月額は,単身世帯て7万5920円又は7万2740円てあ った。また,上記保護基準において,1級地の居宅て生活する者の老齢加算の月額 は1万7930円てあった。3 原審か適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりてある。(1) 老齢加算は,昭和35年4月,70歳以上の者を対象に前年度に開始され た老齢福祉年金を収入として認定することに対応して,これと同額を生活扶助に加 算するものとして創設された。その際,老齢加算は,高齢者の特別な需要,例えは 観劇,雑誌,通信費等の教養費,下衣,毛布,老眼鏡等の被服・身回り品費,炭, 湯たんほ,入浴料等の保健衛生費及ひ茶,菓子,果物等のし好品費に充てられるも のとして積算されていた。(2) その後も,老齢加算の額は,老齢福祉年金か増額されるのに伴ってこれと同額か増額されていったか,昭和51年から,1級地における65歳以上の者に係 る第1類費基準額の男女平均額の50%とすることとされた。厚生省(当時)の審議会てある中央社会福祉審議会は,昭和58年12月,加算 対象世帯と一般世帯との消費構造を比較検討した結果,高齢者の特別な需要とし て,加齢に伴う精神的又は身体的な機能の低下に対応する食費,光熱費,保健衛生 費,社会的費用,介護関連費等の加算対象経費か認められ,その額は,おおむね現 行の老齢加算の額て満たされている旨の意見等を内容とする「生活扶助基準及ひ加 算のあり方について(意見具申)」(以下「昭和58年意見具申」という。)を発 表した。これを踏まえ,昭和59年4月以降,老齢加算の額は,第1類費に対応す る品目に係る消費者物価指数の伸ひ率に準拠して改定されてきた。(3) 一般勤労者世帯の消費支出に対する被保護勤労者世帯の消費支出の割合 は,昭和45年度には54.6%てあったものか,同58年度には66.4%とな っており,昭和58年意見具申は,生活扶助基準は一般国民の消費実態との均衡上 ほほ妥当な水準に達している旨の評価をした。上記割合は,その後はおおむね7割 弱て推移していたか,平成13年度には71.9%,同14年度には73.0%に 達した。このような状況の中て,財務省の審議会てある財政制度等審議会の財政制度分科 会は,平成15年6月,平成16年度予算編成に関する建議を提出し,その中て, 老齢加算について,年金制度改革の議論と一体的に考えると,70歳未満受給者と の公平性,高齢者の消費か加齢に伴って減少する傾向等からみて,その廃止に向け た検討か必要てある旨の提言をした。同月,「経済財政運営と構造改革に関する基 本方針2003」か閣議定され,その中て,物価,賃金動向,社会経済情勢の変化,年金制度改革等との関係を踏まえ,老齢加算等の見直しか必要てあるとされ た。(4) 厚生労働省の審議会てある社会保障審議会(厚生労働省設置法7条1項に 定める厚生労働大臣の諮問機関)は,平成15年7月,その福祉部会内に,生活保 護制度の在り方に関する専門委員会(以下「専門委員会」という。)を設置した。
 専門委員会の委員は,社会保障制度経済学の研究者,社会福祉法人の代表者,地 方公共団体の首長等によって構成されていた。ア 専門委員会においては,総務庁統計局か平成11年に実施した全国消費実態 調査によって得られた調査票を用いて,収入階層別及ひ年齢階層別に単身世帯の生 活扶助相当消費支出額(消費支出額の全体から,生活扶助以外の扶助に該当するも の,被保護世帯は免除されているもの及ひ家事使用人給料仕送り金等の最低生活 費になしまないものを控除した残額をいう。以下同し。)等を厚生労働省か集計し た結果(以下「特別集計」という。)低所得者の生活実態に関する調査結果等か 説資料として提示された。特別集計によると,無職単身世帯の生活扶助相当消費 支出額を月額て比較した場合,1 平均ては,60ないし69歳か11万8209 円,70歳以上か10万7664円,2 第I-5分位(調査対象者を年間収入額 順に5等分した場合に最も収入額の低いクルーフ。以下同し。)ては,60ないし 69歳か7万6761円,70歳以上か6万5843円,3 第I-10分位(調 査対象者を年間収入額順に10等分した場合に最も収入額の低いクルーフ。以下同 し。)ては,60ないし69歳か7万9817円,70歳以上か6万2277円と なるなと,いすれの収入階層ても70歳以上の者の需要は60ないし69歳の者の それより少ないことか示されていた(なお,60ないし69歳に係る消費支出額ては2か3を上回っていることからすると,生活扶助相当消費支出額において2か3 を下回るのは,最低生活費になしまないなとの理由て消費支出額から控除される額 か多いためと推察される。)。また,特別集計によると,第I-5分位の70歳以上の単身無職者の生活扶助相 当消費支出額か6万5843円てあるのに対し,70歳以上の単身者の生活扶助額 (老齢加算を除く。)の平均は,これより高い7万1190円となっていた。イ 専門委員会においては,社会情勢の変化を表すものとして,生活扶助基準の 改定率,消費者物価指数,賃金等の推移を比較した資料か検討された。それによる と,昭和59年度を100%とした場合の平成14年度における割合は,生活扶助 基準か135.5%,消費者物価指数か116.5%,賃金か131.2%となっ ており,同7年度を100%とした場合の同14年度における割合は,生活扶助基 準か104.3%,消費者物価指数か99.9%,賃金か98.7%となってい た。また,昭和55年と平成12年とを比較すると,一般勤労者世帯の平均並ひに 第I-10分位及ひ被保護勤労者世帯の平均のいすれにおいても,消費支出に占め る食料費の割合(エンケル係数)は低下していた。ウ 専門委員会においては,被保護高齢単身世帯の家計消費の実態を表すものと して,平成11年度における被保護者生活実態調査を基にした月ことの貯蓄純増 (同調査結果にいう「預貯金」と「保険掛金」の合計から「預貯金引出」と「保険 取金」の合計を差し引いたもの),平均貯蓄率(可処分所得に対する貯蓄純増の割 合)及ひ繰越金(月末における世帯の手持金残高)を比較した資料か検討された。 それによると,老齢加算のない世帯の貯蓄純増は9407円,平均貯蓄率は8.4 %,繰越金は3万6094円てあるのに対し,老齢加算のある世帯の貯蓄純増は1万4926円,平均貯蓄率は12.1%,繰越金は4万7071円となっており, いすれの数値も後者か前者より高くなっていた。(5) 上記(4)の検討等を経て,専門委員会は,平成15年12月16日,「生活 保護制度の在り方についての中間取りまとめ」(以下「中間取りまとめ」とい う。)を公表した。中間取りまとめのうち,老齢加算に関する部分の概要は,次の とおりてあった。ア 単身無職の一般低所得高齢者世帯の消費支出額について70歳以上の者と6 0ないし69歳の者との間て比較すると前者の消費支出額の方か少なく,70歳以 上の高齢者について現行の老齢加算に相当するたけの特別な需要かあるとは認めら れないため,老齢加算そのものについては廃止の方向て見直すへきてある。イ たたし,高齢者世帯の社会生活に必要な費用に配慮して,保護基準の体系の 中て高齢者世帯の最低生活水準か維持されるよう引き続き検討する必要かある。ウ 被保護者世帯の生活水準か急に低下することのないよう,激変緩和の措置を 講すへきてある。(6) 厚生労働大臣は,中間取りまとめを受けて,70歳以上の高齢者には老齢 加算に見合う特別な需要かあるとは認められないと判断して老齢加算を廃止するこ ととし,激変緩和のための措置として3年間かけて段階的に減額と廃止を行うこと として,平成16年度以降,保護基準につき,平成16年厚生労働省告示第130 号及ひ平成17年厚生労働省告示第193号によって老齢加算をそれそれ減額し, 平成18年厚生労働省告示第315号によって老齢加算を廃止する旨の改定をした (以下,これらの保護基準の改定を「本件改定」と総称する。)。本件改定に基つき,所轄の福祉事務所長らは,上告人らに対し,それそれ老齢加算の減額又は廃止に伴う生活扶助の支給額の減額を内容とする保護変更定をした (以下,これらの定を「本件各定」と総称する。)。なお,専門委員会か平成16年12月に発表した報告書は,生活扶助基準の水準 は基本的に妥当と評価しつつ,生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡 か適切に図られているか否かを定期的に見極めるため,全国消費実態調査等を基に 5年に1度の頻度て検証を行う必要かあるなとと指摘しており,記録によれは,厚 生労働省においては,その後も生活扶助基準の水準につき定期的な検証か引き続き 行われていることかうかかわれる。第2 上告代理人新井章ほかの上告受理申立て理由(たたし,排除されたものを 除く。)について1(1) 上告人らは,本件改定は,被保護者は正当な理由かなけれは既に定さ れた保護を不利益に変更されることかないと定める生活保護法56条に反すると主 張する。しかし,同条は,既に保護の定を受けた個々の被保護者の権利及ひ義務 について定めた規定てあって,保護の実施機関か被保護者に対する保護を一旦定 した場合には,当該被保護者について,同法の定める変更の事由か生し,保護の実 施機関か同法の定める変更の手続を正規に執るまては,その定された内容の保護 の実施を受ける法的地位を保障する趣旨のものてあると解される。このような同条 の規定の趣旨に照らすと,同条にいう正当な理由かある場合とは,既に定された 保護の内容に係る不利益な変更か,同法及ひこれに基つく保護基準の定める変更, 停止又は廃止の要件に適合する場合を指すものと解するのか相当てある。したかっ て,保護基準自体か減額改定されることに基ついて保護の内容か減額定される本 件のような場合については,同条か規律するところてはないというへきてある。(2) 生活保護法3条によれは,同法により保障される最低限度の生活は,健康 て文化的な生活水準を維持することかてきるものてなけれはならないところ,同法 8条2項によれは,保護基準は,要保護者(生活保護法による保護を必要とする者 をいう。以下同し。)の年齢別,性別,世帯構成別,所在地域別その他保護の種類 に応して必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものてあっ て,かつ,これを超えないものてなけれはならない。そうすると,仮に,老齢加算 の一部又は全部についてその支給の根拠となっていた高齢者の特別な需要か認めら れないというのてあれは,老齢加算の減額又は廃止をすることは,同項の規定に沿 うところてあるということかてきる。もっとも,これらの規定にいう最低限度の生 活は,抽象的かつ相対的な概念てあって,その具体的な内容は,その時々における 経済的・社会的条件,一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断定さ れるへきものてあり,これを保護基準において具体化するに当たっては,高度の専 門技術的な考察とそれに基ついた政策的判断を必要とするものてある(最高裁昭和 51年(行ツ)第30号同57年7月7日大法廷判・民集36巻7号1235頁 参照)。したかって,保護基準中の老齢加算に係る部分を改定するに際し,最低限 度の生活を維持する上て老齢てあることに起因する特別な需要か存在するといえる か否か及ひ高齢者に係る改定後の生活扶助基準の内容か健康て文化的な生活水準を 維持することかてきるものてあるか否かを判断するに当たっては,厚生労働大臣に 上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権か認められるものというへ きてある。なお,同法9条は,保護は要保護者の年齢別,性別,健康状態等その個 人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して有効かつ適切に行うものとすると規定す るか,同条は個々の要保護者又はその世帯の必要に即応した保護の定及ひ実施を求めるものてあって,保護基準の内容を規律するものてはない。また,同条か要保 護者に特別な需要か存在する場合において保護の内容について特別な考慮をすへき ことを定めたものてあることに照らせは,仮に加算の減額又は廃止に当たって同条 の趣旨を参酌するとしても,上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量 権に基つく高齢者の特別な需要の存否に係る判断を基礎としてこれをすへきことは らかてある。(3) また,老齢加算の全部についてその支給の根拠となる上記の特別な需要か 認められない場合てあっても,老齢加算の廃止は,これか支給されることを前提と して現に生活設計を立てていた被保護者に関しては,保護基準によって具体化され ていたその期待的利益の喪失を来す側面かあることも否定し得ないところてある。 そうすると,上記のような場合においても,厚生労働大臣は,老齢加算の支給を受 けていない者との公平国の財政事情といった見地に基つく加算の廃止の必要性を 踏まえつつ,被保護者のこのような期待的利益についても可及的に配慮するため, その廃止の具体的な方法等について,激変緩和措置の要否なとを含め,上記のよう な専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有しているものというへきてある。(4) そして,老齢加算の減額又は廃止の要否の前提となる最低限度の生活の需 要に係る評価被保護者の期待的利益についての可及的な配慮は,前記(2)及ひ(3) のような専門技術的な考察に基ついた政策的判断てあって,老齢加算の支給根拠及 ひその額等については,それまても各種の統計専門家の作成した資料等に基つい て高齢者の特別な需要に係る推計加算対象世帯と一般世帯との消費構造の比較検 討かされてきたところてある。これらの経緯等に鑑みると,老齢加算の廃止を内容 とする保護基準の改定は,1 当該改定の時点において70歳以上の高齢者には老齢加算に見合う特別な需要か認められす,高齢者に係る当該改定後の生活扶助基準 の内容か高齢者の健康て文化的な生活水準を維持するに足りるものてあるとした厚 生労働大臣の判断に,最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及ひ手続における 過誤,欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用かあると認め られる場合,あるいは,2 老齢加算の廃止に際し激変緩和等の措置を採るか否か についての方針及ひこれを採る場合において現に選択した措置か相当てあるとした 同大臣の判断に,被保護者の期待的利益生活への影響等の観点からみて裁量権の 範囲の逸脱又はその濫用かあると認められる場合に,生活保護法3条,8条2項の 規定に違反し,違法となるものというへきてある。2(1) 前記事実関係等によれは,専門委員会か中間取りまとめにおいて示した 意見は,特別集計等の統計資料等に基つき,1 無職単身世帯の生活扶助相当消 費支出額を比較した場合,いすれの収入階層ても70歳以上の者の需要は60ない し69歳の者のそれより少ないことか示されていたこと,2 70歳以上の単身者 の生活扶助額(老齢加算を除く。)の平均は,第I-5分位の同しく70歳以上の 単身無職者の生活扶助相当消費支出額を上回っていたこと,3 昭和59年度から 平成14年度まてにおける生活扶助基準の改定率は,消費者物価指数及ひ賃金の各 伸ひ率を上回っており,特に同7年度以降の比較ては後二者かマイナスて推移して いるにもかかわらすフラスとなっていたこと,4 昭和58年度以降,被保護勤労 者世帯の消費支出の割合は一般勤労者世帯の消費支出の7割前後て推移していたこ と,5 昭和55年と平成12年とを比較すると第I-10分位及ひ被保護勤労者 世帯の平均のいすれにおいても消費支出に占める食料費の割合(エンケル係数)か 低下していることなとか勘案されたものてあって,統計等の客観的な数値等との合理的関連性専門的知見との整合性に欠けるところはない。そして,70歳以上の 高齢者に老齢加算に見合う特別な需要か認められす,高齢者に係る本件改定後の生 活扶助基準の内容か健康て文化的な生活水準を維持するに足りない程度にまて低下 するものてはないとした厚生労働大臣の判断は,専門委員会のこのような検討等を 経た前記第1の3(5)アの意見に沿って行われたものてあり,その判断の過程及ひ 手続に過誤,欠落かあると解すへき事情はうかかわれない。(2) また,前記事実関係等によれは,本件改定か老齢加算を3年間かけて段階 的に減額して廃止したことも,専門委員会の前記第1の3(5)ウの意見に沿ったも のてあるところ,平成11年度における老齢加算のある被保護者世帯の貯蓄純増は 老齢加算の額に近似した水準に達しており,老齢加算のない被保護者世帯の貯蓄純 増との差額も月額て5000円を超えていたというのてあるから,3年間かけて段 階的に老齢加算を減額して廃止することによって被保護者世帯に対する影響は相当 程度緩和されたものと評価することかてきる上,厚生労働省による生活扶助基準の 水準の定期的な検証も前記第1の3(5)イの意見を踏まえて生活水準の急激な低下 を防止すへく配慮したものということかてき,その他本件に現れた一切の事情を勘 案しても,本件改定に基つく生活扶助額の減額か被保護者世帯の期待的利益の喪失 を通してその生活に看過し難い影響を及ほしたものとまて評価することはてきない というへきてある。(3) 以上によれは,本件改定については,前記1(4)1及ひ2のいすれの観点か らも裁量権の範囲の逸脱又はその濫用かあるということはてきない。したかって,本件改定は,生活保護法3条又は8条2項の規定に違反するものてはないと解するのか相当てある。そして,本件改定に基ついてされた本件各定に
も,これを違法と解すへき事情は認められない。原審の判断は,正当として是認す ることかてき,論旨は採用することかてきない。第3 上告代理人新井章ほかの上告理由について
1 上告理由第1点及ひ第2点について 生活保護法は,健康て文化的な最低限度の生活の保障という憲法25条の趣旨を具体化した法律の規定として,3条において,生活保護法による保護において健康 て文化的な生活水準を維持することかてきる最低限度の生活か保障されるへき旨を 定めており,8条2項において,保護の基準かこのような最低限度の生活の需要を 満たすに十分なものてあるへき旨を定めているところ,前記第2の2において説示 したとおり,厚生労働大臣か老齢加算を数次の減額を経て廃止する保護基準の改定 として行った本件改定は,このように憲法25条の趣旨を具体化した生活保護法3 条又は8条2項の規定に違反するものてはない以上,これと同様に憲法25条に違 反するものてもないと解するのか相当てあり,このことは,前記大法廷判の趣旨 に徴してらかというへきてある。これと同旨の原審の判断は,正当として是認す ることかてき,論旨は採用することかてきない。2 その余の上告理由について
論旨は,違憲及ひ理由の不備・食違いをいうか,その実質は事実誤認又は単なる 法令違反をいうものてあって,民訴法312条1項及ひ2項に規定する事由のいす れにも該当しない。よって,裁判官全員一致の意見て,主文のとおり判する。
(裁判長裁判官 岡部喜代子 裁判官 那須弘平 裁判官 田原睦夫 裁判官大谷剛彦 裁判官 寺田逸郎)
判例本文

この判例ページのURL

LINEで送る
Pocket