主文
1 原判決中上告人敗訴部分を破棄し,同部分につき第
1審判決を取り消す。
2 前項の部分に関する被上告人の請求を棄却する。
 3 訴訟の総費用は被上告人の負担とする。理由 上告代理人原田信輔の上告受理申立て理由第3について
1 本件は,B市の設置する公立小学校(以下「本件小学校」という。)の2年 生てあった被上告人か,本件小学校の教員から体罰を受けたと主張して,B市の地 位を合併により承継した上告人に対し,国家賠償法1条1項に基つく損害賠償を求 める事案てある。2 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりてある。(1) 被上告人は,平成14年11月当時,本件小学校の2年生の男子てあり, 身長は約130cmてあった。Aは,その当時,本件小学校の教員として3年3組の 担任を務めており,身長は約167cmてあった。Aは,被上告人とは面識かなかっ た。(2) Aは,同月26日の1時限目終了後の休み時間に,本件小学校の校舎1階 の廊下て,コンヒューターをしたいとたたをこねる3年生の男子をしゃかんてなた めていた。(3) 同所を通り掛かった被上告人は,Aの背中に覆いかふさるようにして肩を もんた。Aか離れるように言っても,被上告人は肩をもむのをやめなかったのて, Aは,上半身をひねり,右手て被上告人を振りほといた。(4) そこに6年生の女子数人か通り掛かったところ,被上告人は,同級生の男 子1名と共に,しゃれつくように同人らを蹴り始めた。Aは,これを制止し,この ようなことをしてはいけないと注意した。(5) その後,Aか職員室へ向かおうとしたところ,被上告人は,後ろからAの てん部付近を2回蹴って逃け出した。(6) Aは,これに立腹して被上告人を追い掛けて捕まえ,被上告人の胸元の洋 服を右手てつかんて壁に押し当て,大声て「もう,すんなよ。」と叱った(以下, この行為を「本件行為」という。)。(7) 被上告人は,同日午後10時ころ,自宅て大声て泣き始め,母親に対し, 「眼鏡の先生から暴力をされた。」と訴えた。(8) その後,被上告人には,夜中に泣き叫ひ,食欲か低下するなとの症状か現 れ,通学にも支障を生するようになり,病院に通院して治療を受けるなとしたか, これらの症状はその後徐々に回復し,被上告人は,元気に学校生活を送り,家ても 問題なく過こすようになった。(9) その間,被上告人の母親は,長期にわたって,本件小学校の関係者等に対 し,Aの本件行為について極めて激しい抗議行動を続けた。3 原審は,上記事実関係の下において,次のとおり判断して,被上告人の上告 人に対する請求を慰謝料10万円等合計21万4145円及ひ遅延損害金の支払を 命する限度て認容した。1胸元をつかむという行為は,けんか闘争の際にしはしは見られる不穏当な行為 てあり,被上告人を捕まえるためてあれは,手をつかむなと,より穏当な方法によ ることも可能てあったはすてあること,2被上告人の年齢,被上告人とAの身長差及ひ両名にそれまて面識かなかったことなとに照らし,被上告人の被った恐怖心は 相当なものてあったと推認されること等を総合すれは,本件行為は,社会通念に照 らし教育的指導の範囲を逸脱するものてあり,学校教育法11条たたし書により全 面的に禁止されている体罰に該当し,違法てある。4 しかしなから,原審の上記判断は是認することかてきない。その理由は,次 のとおりてある。前記事実関係によれは,被上告人は,休み時間に,たたをこねる他の児童をなためていたAの背中に覆いかふさるようにしてその肩をもむなとしていたか,通り掛かった女子数人を他の男子と共に蹴るという悪ふさけをした上,これを注意して職員室に向かおうとしたAのてん部付近を2回にわたって蹴って逃け出した。そこて,Aは,被上告人を追い掛けて捕まえ,その胸元を右手てつかんて壁に押し当て,大声て「もう,すんなよ。」と叱った(本件行為)というのてある。そうすると,Aの本件行為は,児童の身体に対する有形力の行使てはあるか,他人を蹴るという被上告人の一連の悪ふさけについて,これからはそのような悪ふさけをしないように被上告人を指導するために行われたものてあり,悪ふさけの罰として被上告人に肉体的苦痛を与えるために行われたものてはないことか明らかてある。Aは,自分自身も被上告人による悪ふさけの対象となったことに立腹して本件行為を行っており,本件行為にやや穏当を欠くところかなかったとはいえないとしても,本件行為は,その目的,態様,継続時間等から判断して,教員か児童に対して行うことか許される教育的指導の範囲を逸脱するものてはなく,学校教育法11条たたし書にいう体罰に該当するものてはないというへきてある。したかって,Aのした本件行為に違法性は認められない。
5 以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ほすことか明らかな法令の違 反かある。論旨は理由かあり,原判決のうち上告人敗訴部分は,破棄を免れない。
 そして,以上説示したところによれは,上記部分に関する被上告人の請求は理由か ないから,同部分につき第1審判決を取り消し,同部分に関する請求を棄却すへき てある。よって,裁判官全員一致の意見て,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 近藤崇晴 裁判官 藤田宙靖 裁判官 堀籠幸男 裁判官那須弘平 裁判官 田原睦夫)
判例本文

この判例ページのURL

LINEで送る
Pocket