主文
 本件上告を棄却する。
理由
 弁護人中村護ほか一二名の上告趣意のうち、判例違反をいう点は、所論引用の判例が本件とは事案を異にするので適切でなく、その余は、単なる法令違反、事実誤認の主張であって、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。
 なお、原判決の認定によると、被告人らが本件マンションを建設中のA建設及びその購入者から提出された給水契約の申込書を受領することを拒絶した時期には、既に、A建設は、武蔵野市の宅地開発に関する指導要綱に基づく行政指導には従わない意思を明確に表明し、マンションの購入者も、入居に当たり給水を現実に必要としていたというのである。そうすると、原判決が、このような時期に至ったときは、水道法上給水契約の締結を義務づけられている水道事業者としては、たとえ右の指導要綱を事業主に順守させるため行政指導を継続する必要があったとしても、これを理由として事業主らとの給水契約の締結を留保することは許されないというべきであるから、これを留保した被告人らの行為は、給水契約の締結を拒んだ行為に当たると判断したのは、是認することができる。
 また、原判決の認定によると、被告人らは、右の指導要綱を順守させるための圧力手段として、水道事業者が有している給水の権限を用い、指導要綱に従わないA建設らとの給水契約の締結を拒んだものであり、その給水契約を締結して給水することが公序良俗違反を助長することとなるような事情もなかったというのである。そうすると、原判決が、このような場合には、水道事業者としては、たとえ指導要綱に従わない事業主らからの給水契約の申込であっても、その締結を拒むことは許されないというべきであるから、被告人らには本件給水契約の締結を拒む正当の理由がなかったと判断した点も、是認することができる。
 よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
平成元年一一月八日
最高裁判所第二小法廷
 裁判長裁判官 牧 圭 次
裁判官 島 谷 六 郎
裁判官 香 川 保 一
裁判官 奥 野 久 之
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