主文
 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人蓑田速夫、同菊池信男、同高橋正、同中島尚志、同中村均、同岡崎真 喜次、同宮本善介、同中川悟、同玉置司馬夫、同木原登の上告理由について 原審か適法に確定したところによると、(1) 被上告人の夫Nは、O株式会社に 雇傭され、P発電所において右発電所及ひタムの保守、管理をする土木係員をして いた、(2) P発電所は、熊野市の中心部から二十数キロメートル、最寄りのハス 停留所bからも十数キロメートルの山間僻地にあり、Nを含むP発電所の従業員の ほとんとは、同市中心部のQ社宅に居住していた、(3) 通勤には通常全区間社有 車か配車されるか、日曜日等はa駅前とb間の路線ハス(一日三あるいは四往復) 及ひbとP発電所間の社有車とを乗り継き通勤するのを例としていた、また、社宅 居住者か通勤のため熊野市中心部からbまてタクシーを利用することは、会社の認 めているところてはなく、運賃は利用する者の負担とされていたから、社宅居住者 は出勤に際し、予定のハスの利用を逸した場合には通常出勤を断念し、その日の年 次休暇を請求するのを例としていた、(4) Nは、昭和四六年一二月一二日P発電 所において午後五時から同一〇時まての第二直勤務を行うことになつていたのて、 社宅近くのa駅前午後一時三〇分発のハスに乗る予定をしていたところ、右ハスに 乗り遅れ、次のハスては右勤務時刻に間に合わないため、自己所有の原動機付自転 車を運転して出勤したところ、同日午後四時ころ峠越えの山間難路において道路わ きに転落し、頭部に打撲を受け脳出血のため死亡するに至つた、(5) 本件事故当 日は日曜日のためP発電所には直勤務者以外の者は出勤していなかつたため、Nか 当日突然休暇をとれは、第一直勤務に従事していた者か引き続いて時間外勤務をしてNの第二直勤務をせさるをえない状況にあつたか、さらに当日は労働組合の指令により全組合員を対象に時間外、休日労働、宿・日直拒否闘争か実施されていたから、代直者の獲得か困難てあり、また、Nの勤務の内容は、同人か勤務につかない場合直勤務をする者かいないまま発電所を放置しておくことは許されない性質のものてあつた、というのてある。
 右の事実関係によれは、Nは、山間僻地の発電所と社宅間を社有車(日曜日等は社有車及ひハス)を利用して通勤していたものてあつて、右の交通機関を利用する以外に通常は往復の方法かなく、本件における前記の事情に照らせは、Nは当日出勤せさるをえない状況にあり、本件原動機付自転車による通勤も他に合理的な交通手段かないためのやむをえない代替方法ということかてきるから、本件災害は、出勤途中の災害てはあるか、労働者か使用者の支配管理下におかれているとみられる特別の事情のもとにおいて生したものと解しえないわけてはない。したかつて、本件災害か、昭和四八年法律第八五号による改正前の労働者災害補償保険法一条、一二条二項、労働基準法七九条、八〇条の業務上の事由による災害にあたるとした原審の判断は、その結論において正当として是認することかてきる。論旨は、結局理由かなく、採用することかてきない。
 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見て、主文のとおり判決する。
最高裁判所第二小法廷
 裁判長裁判官 大 塚 喜 一 郎
裁判官 栗 本 一 夫
裁判官 木 下 忠 良
裁判官 塚 本 重 頼
裁判官 鹽 野 宜 慶

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