平成25年9月26日判言渡 同日原本領収 裁判所書記官 平成24年第2928号 不正競争行為差止等請求控訴事件 (原審・大阪地方裁判所平成23年第12566号) (口頭弁論終結日 平成25年4月25日)判
控訴人(1審原告) 大幸薬品株式会社 同訴訟代理人弁護士 柴田弘典 同 岩瀬吉和 同 川端康弘 同 森田慈心 被控訴人(1審被告) キョクトウ株式会社 同訴訟代理人弁護士 藤井夫主文
1 控訴人の本件控訴並ひに当審における請求(変更後の差止請求・廃棄請求及ひ予備的損害賠償請求)をいすれも棄却する。
2 当審における訴訟費用は全部控訴人の負担とする。
事実及ひ理由
第1 控訴の趣旨
1 原判を取り消す。
2 被控訴人は,原判別紙被告表示目録1記載の表示を使用し,又は,同表示を用いた商品を譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのため展示してはならない。
3 被控訴人は,原判別紙被告表示目録2記載の包装を使用し,又は,同包装を用いた商品を譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのため展示してはならない。
4 被控訴人は,第2項記載の表示,同表示を表示した宣伝用カタロクその他の広告物及ひ同表示の印刷用原版を廃棄せよ。
5 被控訴人は,第3項記載の包装,同包装を表示した宣伝用カタロクその他の広告物及ひ同包装の印刷用原版を廃棄せよ。
6 被控訴人は,控訴人に対し,1000万円及ひこれに対する平成23年10月15日から支払済みまて年5分の割合による金員を支払え。
 7 訴訟費用は,第1審,第2審とも被控訴人の負担とする。
 8 仮執行宣言第2 事案の概要
 1 事案の要旨
本件は,控訴人か,被控訴人の行為か,1不正競争防止法(以下「法」とい う。)2条1項2号の他人の商品等表示として著名な原判別紙原告表示目録 記載1ないし3の各商品表示(以下「控訴人表示1」〈原告表示1〉ないし 「控訴人表示3」〈原告表示3〉といい,併せて「控訴人各表示」〈原告各表 示〉という。)と同一又は類似の商品表示を使用した商品を譲渡する行為に当 たるとして,又は2法2条1項1号の他人の商品等表示として需要者の間に広 く認識されている控訴人各表示と同一又は類似の商品表示を使用した商品を譲 渡し,胃腸薬てある控訴人商品と混同を生しさせる行為てあるとして,被控訴 人に対し,法3条に基つき,原判別紙被告表示目録記載1,2の各表示(以 下「被控訴人表示1」〈被告表示1〉,「被控訴人表示2」〈被告表示2〉と いい,併せて「被控訴人各表示」〈被告各表示〉という。)の使用差止め並ひ に被控訴人表示1の表示を付した包装及ひ被控訴人表示2の包装の廃棄を求め るとともに,法4条本文に基つき,1000万円の損害賠償及ひこれに対する 平成23年10月15日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまて民法所定の 年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案てある。原審は,控訴人の請求をいすれも棄却するとの判をし,これに対し,控訴 人か本件控訴をして,差止請求及ひ廃棄請求に係る請求の趣旨を控訴の趣旨第2ないし第5項のとおりに変更し,損害賠償請求(控訴の趣旨第6項)の予備的請求原因として不法行為を追加した。
2 前提となる事実(証拠を掲記した事実以外は当事者間に争いかない。)(1) 当事者
ア 控訴人は,医薬品及ひ動物用医薬品,医薬部外品,農業薬品,化粧品の製造,販売並ひに輸出入等を目的とする会社てある。
イ 被控訴人は,医薬品・医薬部外品・動物用医薬品・化粧品・医療用具の製造並ひに販売等を目的とする会社てある。
(2) 控訴人の商品表示
控訴人は,控訴人各表示を使用して,胃腸薬てある控訴人商品(後記参 照)を製造販売している(なお,控訴人商品には瓶詰タイフの製品とPTP 包装タイフの製品の2種類かある。)。(3) 被控訴人の行為等 被控訴人は,平成21年2月ころから(甲41,乙6),被控訴人表示2の包装を使用して,胃腸薬てある被控訴人商品(後記参照)を製造販売し ている(たたし,上記包装を使用して販売することにより,いかなる商品表 示を使用しているといえるかについては,後記のとおり争いかある。)。(4) 控訴人商品及ひ被控訴人商品 控訴人商品と被控訴人商品は,いすれもクレオソートを主成分とする胃腸薬(以下「本件医薬品」という。)のうち,一般に「糖衣錠」と称される種類の錠剤てある。
 3 争点
(1) 控訴人各表示は,控訴人の商品表示として周知著名なものてあるか(争点 1)。(2) 被控訴人各表示は,控訴人各表示と同一又は類似の商品表示てあるか等 (争点2)。(3) 被控訴人の行為は,控訴人商品と混同を生しさせるものてあるか(争点 3)。(4) 被控訴人各表示は,普通名称を普通に用いられる方法て使用したもの(法 19条1項1号)に該当するか(争点4)。(5) 被控訴人の行為は,不法行為に該当するか(争点5)。
(6) 被控訴人か損害賠償責任を負う場合に控訴人に対して支払うへき損害額はいくらか(争点6)。
4 争点に関する当事者の主張
(1) 争点1(控訴人各表示は,控訴人の商品表示として周知著名なものてある か。)について次のとおり補正するほかは,原判「事実及ひ理由」第3の1に記載のと おりてあるから,これを引用する。【原判の補正】
ア 5頁14行目冒頭から15行目末尾まてを「控訴人表示3は,控訴人商品の直方体箱入りの包装表示てあり(たたし,原判別紙原告表示目録3 ては,正面と左側面のみを記載),その具体的な構成を正面部と左側面部 を中心に特定すると,以下のとおりてある。」と改める。イ 6頁13行目末尾の後に「控訴人による控訴人商品のテレヒ・ラシオ・ 新聞等ての広告宣伝ては,全てに自他商品識別機能を有する『ラッハのマ ーク』又は『大幸薬品』の両方又は一方か入っている。」を加え,15行 目の「原告表示3」の後に「(控訴人商品の包装箱の表示)」を加える。(2) 争点2(被控訴人各表示は,控訴人各表示と同一又は類似の商品表示てあ るか等。)について次のとおり,原判の補正をし,当審における補充主張を付加するほかは, 原判「事実及ひ理由」第3の2に記載のとおりてあるから,これを引用す る。【原判の補正】
ア 7頁17行目冒頭から18行目末尾まてを「被控訴人表示2は,被控訴人商品の直方体箱入りの包装表示てあり(たたし,原判別紙被告表示目 録2ては,正面と右側面のみを記載),その具体的な構成を正面部と右側 面部を中心に特定すると,以下のとおりてある。」と改める。イ 10頁5行目末尾の後に「被控訴人商品には,被控訴人か控訴人商品を 識別する機能を有するものとして主張するラッハのマークに対応するよう な識別マークは付されていない。」を加える。ウ 11頁13行目末尾の後に「なお,『』の文字は,正露丸,供給先の トラックストア(株式会社サントラック〈以下「サントラック」とい う。〉)のストア・フラント的意味,スヘシャル,スーハー等の意味を 込めて用いており,色合い曲線表現により,柔らかさ,優しさを出し, 糖衣錠の飲みすさを印象付けている。」を加える。【控訴人の補充主張】
ア 被控訴人表示1の使用
 控訴人商品及ひ被控訴人商品を含む,いわゆる一般用医薬品(医師に よる処方箋を必要とせすに購入てきる医薬品)は,薬局,トラックスト ア等て販売されており,同業他社の類似製品か薬局トラックストアの 同し若しくは近接した棚に並ひ販売されることも多く,各製造販売会社 は当該医療品の効能によって同業他社製品との差別化を図ろうと試みる ことはもちろん,当該製品のハッケーシ(包装)についても他社製品に 比して,てきる限り需要者の目に留まるように工夫する必要かある。そ して,一般用医薬品商品の包装に,当該製品の正面部に商品名を,文字 のフォント,色,大きさ等を変えた上て,横書きて2段ないし3段に上 から下へ,左から右へ向けて表記して,一連に商品名か称呼される商品 (例えは,「ムヒアルファEX」,「アリナミンEX PLU」,「サンテFXネオ」,「キューヒーコーワコールトA」,「ホホンヒュ メリ錠VA」,「マイティアCLクール」等)か多数存在している。こ のような商品等表示を普段自然に目にしている取引者ないし需要者は, こういった商品等表示に慣れており,当該商品表示を,無意識のうちに, あるいは,無理なく,一連の商品表示ないし一体の商品表示として認識 するというのか実情てある。これを被控訴人商品の包装(被控訴人表示 2)についてみると,取引者又は需要者の視線か,自然に,上側から下 側へ,そして,左側から右側に移動していくことによって,被控訴人商 品は「正露丸糖衣」と認識され,「セイロカントーイエス」と称呼さ れるものてある。 市場て先行する著名商品か存在する場合,同種の後行商品に触れた, 通常の注意力を有する取引者及ひ需要者は,後行商品の商品名は,先行 著名商品のそれてはないかと反応する。控訴人商品の控訴人表示2は, 平成7年4月まて(遅くとも別件の大阪地裁判て著名性か認定された 平成11年)には,全国的な著名性を獲得しており,控訴人という特定 の会社により製造された商品及ひ「セイロカントーイエー」という称呼 か浸透している中て,取引者ないし需要者は,無意識のうちに,これを 脳裏に記憶されている控訴人各表示に引き付けるものてあり,その結果, 同種の著名商品か存在しない場合に比して,被控訴人表示2を「セイロ カントーイエス」と称呼する蓋然性は高まる。このことは,控訴人か新 たに行ったアンケート調査の結果(甲69~72)からも裏付けられて いる。 したかって,被控訴人商品の包装(被控訴人表示2)には,被控訴人 表示1か使用されている。イ 控訴人表示1及ひ控訴人表示2と被控訴人表示1との類似性  法2条1項2号(著名商品等表示)の場合法2条1項2号の立法趣旨は,フリーライト(たた乗り)タイリュ ーション(希釈化)等を防止することて永年の営業上の努力により高い 信用・名・評判を有するに至った著名表示のフラントイメーシを保護 する点にあるところ,その類似性については「容易に著名表示を想起さ せるほと似ている表示」といえるかとうかによって判断されている。ま た,同号の類似性の判断においては,立法趣旨に鑑み背景の取引事情も 十分に勘案することか必要てあり,従前の関係,表示選択動機,表示に 現れた悪意等の要素も斟酌されるへきてあると解され,著名表示のフラ ントイメーシを保護するという観点からも,不正競争者にフリーライト の意図か認められるような場合には,当該行為に対しては厳しく考えて いかなけれはならないとされている。さらに,同号の類似性は,法2条 1項1号の類似性と同様,対比観察てはなく,離隔的観察によって判断 されるへきものとされている。これを本件についてみるに,「セイロカントーイエー」と「セイロカ ントーイエス」とは,「エー」と「エス」とて最初の母音か共通してお り,また10文字という長い称呼の中の最後の1文字か異なるのみてあ り,その称呼もほほ同してある。また,同し家庭医薬品て「A」と 「」を用いる同系の医薬品か多数存在し,共通する名称に異なる名称 を付加したシリース商品か見られ,そのことは需要者にとっても顕著な 事実てあることからすると,セイロカン糖衣Aと正露丸糖衣とかシリ ース商品てあるとの誤認か需要者に生しるおそれかある。このような医 薬品業界における医薬品の商品名に関する現状その他の取引の実情に鑑 みると,被控訴人表示1を目にした際,控訴人表示1ないし控訴人表示 2か容易に想起され,被控訴人商品か控訴人商品の関連商品として観念 されるほとに似ているという客観的状況かあるといえる。そして,被控 訴人は,平成8年ころから,薬事法による承認を受けた販売名を「正露丸糖衣キョクトウ」と称して被控訴人商品を製造販売しているところ, 発売開始当時の包装は,包装の正面に「キョクトウ」の文字を使用して, 「キョクトウ製」てあることを全面にアヒールするテサインて,控訴人 商品てある「セイロカン糖衣A」のそれとは相当異なっていた。その後, 平成18年ころの包装変更を経て,平成21年2月ころ(遅くとも平成 22年12月ころ)より,被控訴人商品は現行の包装(被控訴人表示 2)て販売されるに至った。被控訴人は,被控訴人商品を製造販売する に当たって,その包装を自由に採択することかてきるにもかかわらす, 無数に選択し得る包装の中から,被控訴人表示2を用い始めた経緯は らかに不自然てあって,控訴人か昭和56年11月から使用している著 名表示てある控訴人表示3に類似させ,フリーライトを試みようとした 意思か強く推認される。したかって,被控訴人表示1は,控訴人表示1及ひ控訴人表示2と類 似する。 法2条1項1号(周知商品等表示)の場合 法2条1項1号は,2号とは異なり,「混同」を要件としている以上,類似性の判断においては,混同か発生する可能性かあるか否かという点 か重視され,かつ市場における需要者の判断か基準となると解されてお り,取引の実情の下において,取引者又は需要者か両表示の外観,称呼 又は観念に基つく印象,記憶,連想等から両者を全体的に類似のものと して受け取るおそれかあるか否かを基準として判断するのか相当てある とされている(出所混同防止の基準)。これを本件についてみるに,「セイロカントーイエー」(控訴人表示 1及ひ控訴人表示2)と「セイロカントーイエス」(被控訴人表示1) については,最後の文字を「エー」と発音するか「エス」と発音するか のみの差てあり,かつ前述のとおり,市場において控訴人表示1及ひ控訴人表示2は「セイロカン糖衣A」フラントとしての地位を確立し,取 引者及ひ需要者との関係て優に周知性か認められる取引環境にあること に鑑みれは,市場における需要者は,両表示を混同する可能性かあるこ とに疑いの余地はない。したかって,法2条1項1号との関係ても,被控訴人表示1と控訴人 表示1及ひ控訴人表示2との間に類似性は認められる。ウ 控訴人表示3と被控訴人表示2との類似性
 控訴人表示3のようないわゆるハッケーシ(包装)テサインは,控訴人表示1及ひ控訴人表示2のような文字表示に比して,その色,テサイ ン,ロコ等の模様も相まって視覚的に需要者の脳裏に残りすいことか らすれは,控訴人表示1及ひ控訴人表示2に比して,より控訴人商品を 識別・想起させる商品表示として,需要者の間に周知著名になっていた といえる。 控訴人表示3及ひ被控訴人表示2の包装の態様は,以下の点において, 正面部及ひ側面部のいすれにも類似性か認められる。a 正面部における類似性
 控訴人表示3の下半分全体に大きくアルファヘットの欧文字か1 字記載されているのに対し,被控訴人表示2の下半分全体にも大き くアルファヘットの欧文字か1字記載されている。 控訴人表示3の大きなアルファヘットの欧文字は,金色て表示さ れているのに対し,被控訴人表示2のアルファヘットの欧文字は, 文字表示部は背景色てあるオレンシ色になっているか,それを控訴 人表示3と同様の金色か取り囲むように表示され,いすれにおいて も,全体として,欧文字は,金色の印象を与えるように表示されて いる。 控訴人表示3及ひ被控訴人表示2には,いすれものアルファヘットの欧文字の中央付近を横切るように赤いラインか用いられている。
 控訴人表示3及ひ被控訴人表示2には,セイロカンないし正露丸の文字の真下に「糖衣」という文字か記載されており,その文字は赤い図形上に,白抜き文字て記載されている。
 控訴人表示3及ひ被控訴人表示2はいすれもオレンシ色を背景とした上て,赤色,黒色及ひ白色を用いて商品名等の文字か記載されている。
 控訴人表示3及ひ被控訴人表示2にはいすれも黒字て「飲みすい白い錠剤」と記載されている。
 控訴人表示3及ひ被控訴人表示2にはいすれも,右下に黒字て錠数か記載されている。
 b 側面部における類似性
 控訴人表示3の右半分全体に大きくアルファヘットの欧文字か1 字記載されているのに対し,被控訴人表示2の右半分にも大きくア ルファヘットの欧文字か1字記載されている。 控訴人表示3の大きなアルファヘットの欧文字は,金色て表示さ れているのに対し,被控訴人表示2のアルファヘットの欧文字は, 文字表示部は背景色てあるオレンシ色になっているか,それを同様 の金色か取り囲むように表示され,いすれにおいても,全体として, 欧文字は,金色の印象を与えるように表示されている。 控訴人表示3及ひ被控訴人表示2には,いすれものアルファヘ ットの欧文字の中央付近を横切るように赤いラインか用いられてい る。 控訴人表示3及ひ被控訴人表示2には,セイロカンないし正露丸 の文字のすく近くに「糖衣」という文字か記載されており,その文字は赤い図形上に,白抜き文字て記載されている。
 控訴人表示3の左上上部には,「軟便・下痢・食あたり」という 控訴人商品か医薬品として有する効能か記載されているのに対し, 被控訴人表示2の左上上部にも,「下痢・食あたり・水あたり」と いう被控訴人商品か医薬品として有する効能か記載されており,そのうち,下痢と食あたりについては記載か共通している。
 控訴人表示3及ひ被控訴人表示2はいすれもオレンシ色を背景と した上て,赤色,黒色及ひ白色を用いて商品名等の文字か記載されている。
 控訴人表示3及ひ被控訴人表示2にはいすれも黒字て「飲みすい白い錠剤」と記載されている。
 c 全体としての類似性
控訴人表示3はオレンシ色の背景に赤色を基調とし,かつ黒及ひ白 を用いた色彩構成になっている点,包装の下半分に大きいアルファヘ ットの欧文字か1字記載されている点及ひ同アルファヘット文字の真 ん中を包装の基調色ともなっている赤いラインか横切っている点に特 徴かあるところ,これらの特徴はいすれも被控訴人表示2と共通し, 又は極めて類似している。しかも,被控訴人表示2には,被控訴人の 名称被控訴人を示す商標なとその出所を示すような表示は全く付さ れておらす,需要者か被控訴人商品と控訴人商品とを誤認するような 事態か生している。そして,控訴人表示3及ひ被控訴人表示2の両表 示を全体的,離隔的に対比して観察した場合には,前記の共通点から 生しる印象の強さか,「セイロカン」という文字の表記方法,ラッ ハのマークか入っているか否かといった相違点から生しる印象の強さ を上回り,取引者又は需要者において,両表示か類似するものと受け 取られるおそれかある。【被控訴人の反論】
ア 被控訴人表示1の使用
 被控訴人商品の包装(被控訴人表示2)には,「正露丸」「糖衣」 「」は一連一体のものとして記載されていない。そもそも「」か地 色て模様のようになっている上,文字の中央を白抜きて「EIOG AN」と記載した赤い線か横切っているため,「」かはっきりとは見 えない。さらに,正面部縦表示ては,上下に分断しており,右側面部横 表示ては,左右に分断さえしている。また,取引の実情ては,被控訴人 商品は「正露丸糖衣『キョクトウ』90錠」として扱われており,「正 露丸糖衣」と称呼はされていない。このように,被控訴人商品には, 控訴人か主張する控訴人表示1は表示されていないし,表音されること もない。したかって,被控訴人商品の包装(被控訴人表示2)における 「正露丸」「糖衣」「」は一連一体とはいえない。 控訴人か例としてあける「ムヒアルファEX」「アリナミンEX PLU」ては,「ムヒ」「アリナミン」自体に個性かあり,そもそ も普通名称てある「正露丸」「糖衣」とは比較にならないし,いすれも 3段表記てあるか,字の大きさ・配置等により読みすくしており,被 控訴人商品の包装(被控訴人表示2)とは表現方法か違う。イ 控訴人表示1及ひ控訴人表示2と被控訴人表示1との類似性 そもそも,被控訴人は控訴人か主張する被控訴人表示1を使用していな いから,類似性なとあろうはすかない。「A」と「」は全く異なるアル ファヘットてあるから,シリース商品と誤認されるおそれなと全くない。ウ 控訴人表示3と被控訴人表示2との類似性
 被控訴人商品は,被控訴人かトラックストアてあるサントラックのフライヘート・フラント商品(以下「PB商品」という。)として製造販 売している商品てあり,テサインもサントラックに合わせ,さらに柔らかい表現により糖衣錠の飲みすさを表現するなと独自に工夫しており,被控訴人の他の商品とテサインを別にしている。
 控訴人商品の包装(控訴人表示3)と被控訴人商品の包装(被控訴人表示2)ては,「正露丸」の読みと「糖衣」は共通している。これは, 普通名称としての共通性によるものてある。黒い大きな漢字の「正露 丸」とカタカナの「セイロカン」ては印象か全く異なる。「糖衣」は赤 字に白抜きは共通しているか,控訴人表示3ては「A」の横棒の上の小 さな四角形の中に小さく白抜きになっている。これに対し,被控訴人表 示2ては,比較的大きな楕円形の中にくっきりと読みすく白抜きされ ている。両者はテサインを全く異にする。そして,被控訴人商品は,正 露丸の糖衣錠てあることか一目てわかるように,包装の上面及ひ底面に 「正露丸」・「糖衣」と示している。控訴人商品は,包装の上面及ひ 底面に,控訴人にとって重要なラッハのマークか示されている。した かって,両商品の包装は類似していない。 以上のとおり,被控訴人表示2と控訴人表示3とは類似していないか ら,控訴人のたた乗りの主張は的外れてある。(3) 争点3(被控訴人の行為は,控訴人商品と混同を生しさせるものてある か。)について次のとおり,原判の補正をし,当審における補充主張を付加するほかは, 原判「事実及ひ理由」第3の3に記載のとおりてあるから,これを引用す る。【原判の補正】
12頁7行目末尾の後に「被控訴人商品と控訴人商品とかその包装上の近 似性から誤認混同のおそれかあることは,インターネットリサーチの方法に よって実施したアンケート結果(甲59~62)によっても裏付けられ る。」を加える。【控訴人の補充主張】
ア 需要者か,圧倒的なシェアを誇り周知著名性を有する控訴人商品の称呼と類似性のある被控訴人商品の称呼と接した場合,時を異にして耳にすれ は,周知著名な控訴人商品あるいはその関連製品てあると誤認してしまう おそれかあることはらかてある。「セイロカントーイエー」(控訴人表 示1及ひ控訴人表示2)と「セイロカントーイエス」(被控訴人表示1) は最後に「エー」と発音するか「エス」と発音するかのみの差てあり,長 い称呼の中て見れはその差はほんのわすかなものにすきす,しかも,「セ イロカン糖衣A」フラントという控訴人商品の著名性も考慮すれは,取引 者及ひ需要者は,被控訴人表示1に接した場合,既に聴きなしんている 「セイロカントーイ」と「エ」の部分の共通性により,控訴人表示1ない し控訴人表示2を連想・想起し,両者を類似のものとして受け取るおそれ かある。イ 需要者か,圧倒的なシェアを誇り周知著名性を有する控訴人商品の包装 (控訴人表示3)と類似性のある被控訴人商品の包装(被控訴人表示2) に接した場合,時を異にして目にすれは,周知著名な控訴人商品あるいは その関連製品てあると誤認してしまうおそれかあることはらかてある。
 さらに,需要者か本件医薬品を購入する際には同医薬品か販売カウンター の背面等に置かれ,需要者か直接手に取ることか容易てなく,当該商品の 包装を近くてしっくりと見ることかてきない場合も少なからす存するとこ ろ,そのような場合には,需要者は全体的な色彩の構成か控訴人商品の包 装(控訴人表示3)と同一てある被控訴人商品の包装(被控訴人表示2) を控訴人商品として誤認混同するおそれかより高まる。【被控訴人の反論】
ア 被控訴人商品の販売名会社名には,当然自他商品識別機能かある。控訴人商品ないし控訴人表示3は,ラッハのマーク会社名を加えても,著名てはないし周知性もない。
イ 前述したとおり,控訴人商品と被控訴人商品とは類似していないから,混同のおそれもない。
(4) 争点4(被控訴人各表示は,普通名称を普通に用いられる方法て使用したものに該当するか。)
【被控訴人の主張】
ア 被控訴人表示2のうち「正露丸」及ひ「糖衣」の各文字は,普通名称にすきない単語てあり,また,医薬品についてアルファヘットを付記することも慣用されているから,「」部分は慣用表示てある。
イ 承認を要する医薬品の名称についての表現は,「販売名,日本薬局方に 定められた名称又は一般的名称以外の名称を使用しないものとする。」 (昭和55年10月9日厚生省薬務局長通知「医薬品等適正広告基準につ いて」)とされている。被控訴人は,被控訴人商品の包装の左側面に販売 名を記載し,正面及ひ右側面には「正露丸」「糖衣」「EIOGA N」「」等の一般名称を表記している。「」は模様になっているか, 正露丸サントラックの頭文字てあり,かつスーハー,スヘシャル等の意 味を込めているものてあって,アルファヘットの慣用表示を普通に用いられる方法て使用したものてある。
【控訴人の主張】
ア 法19条1項1号にいう「普通に用いられる方法」とは,普通名称等を一般取引上普通に行われる態様て使用することをいう。そして,かかる規 定の趣旨を濫用して使用したものはここにいう普通の用法による使用とは いえないと解されており,濫用の有無については当該商品の具体的取引過 程の実態により判断すへきてあると解されている。例えは,特殊な字体て 現すとか,特別の図案を施すとか,特定の商品を指示するように足るよう 特に技巧を施して使用することは,普通の用法による使用てはないと解されており,判例ても「普通に用いられる方法」とは,特に一般の注意を引 くに足りるような特別な書体図案により技巧を加えた標章てはなく,普 通の書体てかつ普通に使われる図形て表された外観のものをいうと解され ている。イ これを本件についてみるに,控訴人表示1及ひ控訴人表示2はいすれも 自他商品識別機能かあり,いすれも周知著名性を有するものてあるところ, 被控訴人表示1は,控訴人において多大の時間と費用をかけて獲得した控 訴人各表示の周知著名性にたた乗りするものてあるから,被控訴人表示1 の使用は,その態様いかんを問わす,出所表示機能を不可避的に奏するも のてある。そして,被控訴人表示1か「クレオソートを主成分とする胃腸 薬」という医療品の性質を表示するために「」を付加しなけれはならな い必然性ないし必要性を裏付ける事情か全く存在しないことからすると, これか「普通に用いられる方法」に該当する余地はない。また,被控訴人 表示2においては,控訴人表示3を多分に意識し,これに類似したテサイ ンか施されているから,「普通に用いられる方法」て使用されているとは いえない。ウ したかって,被控訴人による被控訴人商品の販売行為に法19条1項1 号か適用される余地はない。(5) 争点5(被控訴人の行為は,不法行為に該当するか。)について 【控訴人の主張(当審における予備的主張)】ア 控訴人は,昭和56年11月以降,控訴人各表示を使用した上て継続して控訴人商品を販売してきているところ,同製品については発売当初から テレヒ・ラシオ・新聞その他種々の媒体を通した広告宣伝を行っており, その広告宣伝費か平成13年11月から平成23年3月まての間たけを見 ても約32億円(正露丸との混在広告を含めると73億円以上)に上る。
 控訴人か多額の資金を広告宣伝費として投資することによって,需要者及ひ業界の間においても「セイロカントーイエー」,「セイロカントーイ」 といえは控訴人商品を指称するものとの認識か定着するまてに「セイロカ ン糖衣A」フラントを高めてきた。その結果,控訴人商品は,クレオソー トを主剤とする糖衣錠タイフの胃腸薬の市場において,単なる糖衣錠タイ フの胃腸薬とは異なるフラントとして確立され,クレオソートを主剤とす る糖衣錠タイフの胃腸薬の分野てのシェアは,売上高の87%以上,販売 個数の85%以上を誇っており,売上高については,ここ最近(平成22 年4月から平成23年3月)におけるシェアは90%を超えるに至ってい る。したかって,控訴人は,多額の費用と労力をかけて構築した営業の成 果てある「セイロカン糖衣A」フラントについて,第三者にたた乗りされ ないという法的利益を有している。イ 被控訴人は,平成8年ころから,販売名を「正露丸糖衣キョクトウ」と 称する被控訴人商品の製造販売を行っているところ,平成21年2月ころ (遅くとも平成22年12月ころ)から商品ハッケーシ(包装)のテサイ ンには無数の選択肢かあるにもかかわらす,被控訴人商品のハッケーシを 控訴人商品の対応するハッケーシに類似させてきた。被控訴人は,控訴人 か上記のような営業活動を行っていることを熟知しているはすなのに,控 訴人各表示と同一又は類似の商品名,包装テサインを有する製品を製造し, あたかも控訴人商品と同シリースてあるかのような体裁を生しさせた上て 販売している。これは,らかに控訴人か多大な費用と労力を投資して築 き上けてきた「セイロカン糖衣A」フラントにフリーライトして販売しよ うとするものてある。とりわけ,控訴人表示3及ひ被控訴人表示2はいすれもオレンシ色を背 景とした上て,赤色,黒色及ひ白色を用いて商品名等の文字を記載すると いう色彩の構成か全く同一てあるという点,包装正面部の商品名の表示の 下半分全体に大きくアルファヘットの欧文字の中央付近を横切るように赤いラインか用いられている点,及ひいすれも黒字て「飲みすい白い錠 剤」と記載されている点については,被控訴人か控訴人商品を意識せすし ては,およそテサインしようかない程度に似せられているというほかない。 さらに,被控訴人は,販売名を「正露丸糖衣キョクトウ」と称しなから, その販売名をそのまま商品表示として正面部等に表示せす,あえて控訴人 表示1及ひ控訴人表示2を意識した「正露丸糖衣」を商品表示として使 用しているか,このような態様はらかに不自然てある。このような被控訴人の一連の行為は,周知著名な控訴人商品の表示を らかに意識し,控訴人表示1及ひ控訴人表示2によって作り上けられたイ メーシ広告力ないしは名等のフラント力に便乗する意図てあるとしか 説しようかない。ウ したかって,仮に被控訴人による被控訴人商品の製造販売行為か不正競 争行為てあると認められないとしても,被控訴人の同行為は民法709条 の不法行為に該当する。【被控訴人の主張】 被控訴人は,日露戦争に由来する「正露丸」(糖衣錠はその糖衣型て,時代に合わせ飲みすくしたものてある。)の名により,被控訴人商品を製造 販売しているものてあり,被控訴人には,不法行為の故意も過失もないし, 控訴人は被控訴人からいかなる被害も受けていないから,損害もない。(6) 争点6(被控訴人か損害賠償責任を負う場合に控訴人に対して支払うへき 損害額はいくらか。)について【控訴人の主張】
被控訴人は,平成21年2月ころ(遅くとも平成22年12月ころ)から 被控訴人商品を製造販売しており,かかる不正競争を行うにつき故意又は少 なくとも過失かあるところ,これにより,控訴人は,営業上の利益を侵害さ れ,少なくとも1000万円の損害を被った。不法行為による損害についても同してある。
 【被控訴人の主張】
被控訴人か平成21年2月ころから被控訴人商品を製造販売していること は認めるか,その余は否認する。第3 当裁判所の判断
1 本件医薬品の名称に関する経緯事実
証拠(甲30,60,乙3,4,14)及ひ弁論の全趣旨によれは,上記経 緯事実については,次のとおり補正するほかは,原判「事実及ひ理由」第4 の1(「正露丸」か本件医薬品の普通名称てあること),同(「正露丸」 の名称て本件医薬品を製造販売する他社の存在)に記載のとおりてあることか 認められる。【原判の補正】 13頁20行目末尾の後に「同様の状況は,その後も現在に至るまて変わっていない。また,糖衣錠タイフの正露丸も,控訴人・被控訴人以外に少なくと も数社から販売されており,それらの商品は,包装箱に「正露丸糖衣錠」又は 「正露丸糖衣」ないしそれらを含む商品名を表示している。」を加え,21行 目冒頭から23行目末尾まてを削除する。2 争点1(控訴人各表示は,控訴人の商品表示として周知著名なものてある か。)について(1) 控訴人各表示は,原判別紙原告表示目録1ないし3のとおりてあり,そ の構成は,次のとおり補正するほかは,原判「事実及ひ理由」第4の2 「原告各表示の構成」に記載のとおりてある。【原判の補正】
ア 14頁11行目の「各文字を」の後に「普通の活字体て」を,15行目の「具体的には,」の後に「カタカナの太字て横書きに表記した『セ イロカン』の右に」を,「アルファヘットの『A』の」の後に「右側の字画を太い垂直の棒状とし,」を,それそれ加える。
イ 15頁15行目末尾の後に「『A』の文字は,横線か飛ひ出していないことのほかは,控訴人表示2の『A』のテサインとほほ同してあ る。」を加え,16行目の「重なる形て」を「重なり,左方に飛ひ出す 形て」と改める。(2) 被控訴人は,控訴人表示1及ひ控訴人表示2は,普通名称てある「正露 丸」及ひ「糖衣」と,アルファヘットの「A」を組み合わせたたけのものて あり,自他商品識別機能を有するものてはない,控訴人表示3のうち自他 商品識別機能を有するのは,ラッハのマークと控訴人の会社名のみてあり, その他の部分に自他商品識別機能はない,と主張するのて,この点について 検討する。ア 「セイロカン」は,控訴人の主力商品てある「正露丸」のカタカナ表記 てある(甲1の2,甲7,8,37,45,74,乙13,弁論の全趣 旨)ところ,前記1の認定事実によれは,「正露丸」は,本件医薬品の 名称として,遅くとも昭和29年ころまてに普通名称となっていたこと, 平成18年当時,「正露丸」又は「EIOGAN」の名称て本件医 薬品を製造販売を行っていた業者は,控訴人のほかに少なくとも10社以 上存在し,その後も同様の状況か続いていることか認められる。ところて,ある標章か普通名称てあるか否かはもっはら取引界の実情と の関係て相対的に判断されるへきものてあるから,ある時期において普通 名称てあるとされた標章てあっても,その後の取引の実情の変化により, 特定の商品を指称するものとして取引界に認識され,自他商品識別力を獲 得するに至る場合かあることは否定し得す,この理は「正露丸」について も妥当する。しかし,本件においては,上記のとおり,「正露丸」又は 「EIOGAN」の名称て本件医薬品を製造販売している業者か控訴 人と被控訴人のほかに少なくとも10社以上存在している状況か続いてきたのてあるから,本件医薬品の取引業界ては「正露丸」か普通名称てある との認識か一般てあると認められ,他に「正露丸」か自他商品識別性を獲 得するに至ったと判断するに足りる証拠もない。したかって,「正露丸」 自体はなお普通名称てあるというへきてあり,この理は,「正露丸」のカ タカナ表記てある「セイロカン」についても,同様てある。イ 一般に,「糖衣」とは「飲みすくするために,丸薬・錠剤に施した糖 分を含んた甘い被膜」(大辞林)をいい,「糖衣錠」とは,「飲みすく するために外側を糖製品て包んた錠剤」(広辞苑第六版)とされており, 製剤の一類型を指称する普通名称てあることか認められる。したかって, 「糖衣」自体に自他商品識別力を認めることはてきない。ウ 「A」は,アルファヘット最初の文字にすきす,それ自体ては自他商品 識別力を認めることはてきない。エ 上記のとおり,控訴人表示1及ひ控訴人表示2の「セイロカン」,「糖 衣」,「A」の各要素自体については自他商品識別力を認めることはてき ない。(3) 次に,それらか結合した控訴人表示1及ひ控訴人表示2の著名商品表示性 について検討する。ア 前記第2の2の前提となる事実(以下「前提となる事実」という。),証拠(甲1,3~9,12~30,33~35,37~41,44,45, 58,60,74,83,84,乙5,6,10~14,18~20〈た たし,枝番号のあるものはそれも含む。〉)及ひ弁論の全趣旨によれは, 次の事実か認められる。 控訴人は,昭和41年6月から,クレオソートを主剤(主成分)とす る胃腸薬(本件医薬品=正露丸)に糖衣コーティンクを施した錠剤につ いて,「セイロカン糖衣」又は「セイロカントーイ」との表示(商品 名)て控訴人商品を販売してきており,昭和56年11月からは,控訴人各表示(控訴人表示1・控訴人表示2・控訴人表示3の包装)を使用 して控訴人商品を販売してきた。また,PTP包装タイフの製品は,昭 和61年7月から発売され,当初は「セイロカントーイ」と表示された か,平成4年7月以降,控訴人表示2に変更して現在に至っている。 他社製品としては,昭和23年当時,「クレオソート糖衣錠」か,昭 和52年当時,民生薬品工業株式会社の「正露丸糖衣」か,昭和57年 当時,大光製薬株式会社の「正露丸糖衣」か,昭和62年当時,和泉薬 品工業株式会社の「イツミ糖衣正露丸」かそれそれ販売されており,平 成7年4月当時,渡辺薬品工業株式会社及ひ日新薬品株式会社の「正露 丸糖衣錠AA」か,平成8年中ころからは被控訴人の「正露丸糖衣錠」 かそれそれ販売されていた。 昭和56年11月から平成7年10月まての間,控訴人商品の売上数 量は,総計約2352万個,年平均約168万個となっている。また, 株式会社社会調査研究所か薬局POテータ(約440店)による調査 結果をヘースに抽出作成したテータによると,平成7年4月1日から平 成8年1月31日まての10か月間及ひ平成7年4月1日から平成8年 11月30日まての20か月間の「クレオソートを主剤とする胃腸薬の 糖衣錠」に関する売上は,控訴人商品か約95%又は約93%,「正露 丸糖衣錠AA」か約5%又は約7%てあり,両製品以外ては該当製品は 確認されていないという結果てあった。そうすると,平成7年ないし平 成8年当時,「正露丸糖衣錠AA」以外の他社製品の販売数量は定かて はないか,こくわすかなものてあったと推認される。 控訴人は,控訴人商品について,平成2年11月から平成7年10月 まての間に,新聞,テレヒ及ひラシオを通した広告宣伝費用として,合 計約24億5000万円(これには,控訴人か別途販売している「正露 丸」か混在するものは含まれていない。)を投下した。このうち新聞広告においては,通常,控訴人か別途販売している「正 露丸」と並へて控訴人商品の広告かなされており,そこては控訴人表示 2か表示され,同時にラッハのマーク及ひ「私にはラッハのマークかつ いています」と記載されていた。テレヒ広告においては,種々のものかあるか,いすれにおいても「セ イロカントーイエー」と商品名か連呼され,控訴人表示2か表示された 包装か映し出されていた。また,それとともに,「大幸薬品てす」又は 「ラッハのマークの大幸薬品てす」とのナレーションか挿入されている。ラシオ広告においては,「セイロカントーイ」との称呼て商品名か連 呼されていた。 控訴人は,平成8年に,「正露丸糖衣錠AA」の名称て本件医薬品を 製造又は販売していた渡辺薬品工業株式会社及ひ日新薬品株式会社を被 告として,同会社らの行為か法2条1項1号又は2号の不正競争に該当 するとして損害賠償等を求める訴えを大阪地裁に提起した。同裁判所は, 平成11年3月11日,「セイロカン糖衣A」という表示は平成7年4 月以前の時点において控訴人商品を識別する周知著名な商品表示になっ ており,「正露丸糖衣錠AA」は上記表示に類似し,同会社らの行為は 法2条1項2号に当たると判断して,損害賠償請求の一部を認容する判 をした。同判は確定した。 平成13年11月から平成23年3月まての間における控訴人商品の 販売個数は,約3156万個,売上高は約185億円てあり,糖衣錠タ イフの本件医薬品(正露丸)における市場占有率は,売上高てみると8 7%以上てあり,特に平成22年4月から平成23年3月まての間には 売上高て90%を超える市場占有率を有していた。販売個数を基準とし ても,平成13年度から平成22年度まての間における市場占有率は, 約80%以上てあった。なお,控訴人か販売している本件医薬品は,糖衣錠の控訴人商品と糖衣錠タイフてない従来からの主力商品てある「正 露丸」とかあるところ,その比率は,平成14年度ては控訴人商品か販 売数量比率て43%,売上金額比率て42%てあったか,その後徐々に 控訴人商品の比率か高くなって,販売数量比率ては平成20年度から, 売上金額比率ても平成21年度から控訴人商品か50%を超えるに至っ ており,平成23年度ては販売数量比率て55%,売上金額比率て53 %を糖衣錠タイフの控訴人商品か占めている。 控訴人は,全国の広い範囲にわたって新聞,テレヒ及ひラシオその他 の媒体による広告宣伝を継続しており,平成13年11月から平成23 年3月まての間における控訴人商品に関する広告宣伝費は,約32億円 てあり,控訴人か別途販売している「正露丸」の広告と併せた広告宣伝 費は,73億円以上てある。このうち新聞広告の内容は,前記のとおりてある。
テレヒ広告においては,種々のものかあるか,いすれにおいても商品 名は「セイロカントーイエー」と称呼され,控訴人表示2か表示された 包装(控訴人表示3の左側面に該当するもの)か映し出されている。ま た,それとともに,「ラッハのマーク,大幸薬品のセイロカン糖衣A」 とのナレーションか挿入されているものもある。ラシオ広告においては,「飲みすい白い錠剤ラッハのマーク大幸薬 品の『セイロカン糖衣A』。」,「ラッハのマーク大幸薬品の正露丸。
 のみすい糖衣Aもあります。」,「ラッハのマーク,大幸薬品の『正 露丸』。のみすい白い錠剤『糖衣A』もあります。」なと,種々のも のかあるか,いすれにおいても控訴人商品の商品名は「セイロカントー イエー」と称呼されている。 被控訴人は,平成21年2月ころから,被控訴人表示2の包装を使用 して,被控訴人商品をサントラックのPB商品として製造販売している。イ 前記ア認定の事実によれは,控訴人商品については,前記ア記載の別 件訴訟における大阪地裁判て認定判断されたように,大量に販売され, 長期にわたり強力な広告宣伝かされたことと,他に同種の商品名を持つ有 力な競合商品も存在しなかったことから,「正露丸糖衣錠AA」か発売さ れた平成7年4月以前の時点て,既に「セイロカン糖衣A」の商品名て広 く国民の間に浸透していたものと認められる。このことに加え,控訴人は, その後も控訴人商品の全国的に広告宣伝を強力に行ってきたものてあり, 控訴人商品は全国て販売されており,本件医薬品を製造販売する業者か控 訴人と被控訴人以外に10数社あるにしても,糖衣錠タイフの本件医薬品 における抜群の市場占有率を維持してきたものてある。これらの事実によ れは,被控訴人商品か発売された平成21年2月ころにおいても,現在に おいても,一般的な家庭用医薬品の需要者か「セイロカントーイエー」な る控訴人表示1及ひ控訴人表示2の称呼を聞いた時には,控訴人商品を連 想,想起させる状況になっており,控訴人表示2の外観も,上記の事情と その固有のテサインか相まって,控訴人商品を識別,想起させる商品表示 となっているということかてき,控訴人表示1及ひ控訴人表示2は控訴人 商品を識別する周知著名な商品表示てあると認められる。次に,控訴人表示3についてみると,控訴人商品の包装箱の正面に は,その中央に控訴人表示2か「セイロカン」と「糖衣A」の各部分に 分けて縦2段て表示され,これに加えて「糖衣A」の文字の上部から控 訴人表示3の正面下半分を占める大きさて控訴人表示2の「A」の文字 と同様のテサインの「A」の文字か金色て大きく表示されており,控訴 人表示2そのものてはないか,これと同様の字体,テサインによる実質 的には控訴人表示2と同一といってよい「セイロカン糖衣A」の商品表 示か使用されていること,同包装箱の左側面には,その上半分のとこ ろに控訴人表示2と同様の字体,テサインによる「セイロカン糖衣A」の文字,すなわち控訴人表示2そのものか表示され,これに加えて控訴 人表示3の左側面右半分を占める大きさて控訴人表示2の「A」の文字 と同様のテサインの「A」の文字か金色て大きく表示されていること, 上記正面と左側面の大きな金色の「A」の文字は控訴人表示2の 「A」の部分をさらに強調して需要者の目を引くものとしていることか らすると,控訴人表示2と同一の商品表示か使用されていることはら かてあり,需要者も控訴人商品の包装箱を目にしたときにそのように把 握することは,前記広告宣伝の事実包装箱全体の表示態様に照らして らかてある。しかし,商品の陳列時に需要者の目を引くと考えられる 包装箱の正面と左側面には,この表示部分と包装箱の正面及ひ左側面に 存在するラッハのマークを除けは,薬品の種類,効能特徴等か普通に 表示されているにすきす,上面と底面にもラッハのマークと控訴人表示 2(底面はアルファヘット表示したもの)か存在し,右側面背面は小 さく控訴人の会社の表示(右側面),ラッハのマーク(右側面),控訴 人表示1(背面)か存在するけれとも,主として注意事項効能,用法 ・用量,成分・分量等か小さな文字て記載されているのてあり(前記補 正の上引用した原判「事実及ひ理由」第4の2ウ記載参照),全体 としては,控訴人表示2に相当する表示部分とラッハのマークを除けは 特徴的な表示はない。その他,控訴人商品の箱の色(るい黄色かかっ た橙色)もこの種の他の商品ても用いられているものと同種ないしさほ と差かないものてあること(甲60,乙14),控訴人商品の広告宣伝 においても特にハッケーシ(包装)の特徴に力点を置いてきたというよ うな事情もうかかわれないことからすると,控訴人表示3の商品包装全 体か控訴人商品を識別する商品表示として周知著名てあるとまて認める ことはてきない。他に,控訴人表示3の全体(包装全体)か控訴人商品 の商品表示として著名又は周知てあることを認めるに足りる証拠はない。ウ 被控訴人は,控訴人表示1及ひ控訴人表示2は,普通名称てある「正露 丸」及ひ「糖衣」と,アルファヘットの「A」を組み合わせたたけのもの てあり,自他商品識別機能を有するものてはないと主張する。しかし,自 他商品識別力は表示の構成のみによって生しるのてはなく,取引の実情に 応して獲得されるものてあるから,普通名称を本来の意味とおりに使用し た場合てあっても,使用の態様取引の実情から自他商品識別力を獲得し 得る場合かあるはすてある。そして,前述したように,控訴人表示1及ひ 控訴人表示2は,多年にわたる販売,広告宣伝により,その本来の意味内 容を超えて,控訴人商品を指称する表示として周知著名なものとなってい ることか認められるから,被控訴人の上記主張は採用することかてきない。また,被控訴人は,控訴人表示3のうち自他商品識別機能を有するのは, ラッハのマークと控訴人の会社名のみてあり,その他の部分に自他商品識 別機能はないと主張する。確かに,前記アの認定事実によれは,控訴人商 品の広告宣伝において,ラッハのマークか強調されており,ラッハのマー クか控訴人商品に限らす控訴人か販売する商品を識別する表示として周知 著名てあることはらかてあるか,広告宣伝において商品名とともに自社 の名称標章をも広告宣伝することは通常行われていることてあるから, ラッハのマークか広告宣伝中て強調されているからといって,控訴人表示 3の包装のうち控訴人表示2に係る部分の自他商品識別力を否定する理由 とはならない。むしろ,前述した控訴人商品の販売実績と広告宣伝実績か らすると,控訴人表示2は,控訴人の標章てあるラッハのマークとは独立 して,控訴人商品を示す商品表示としての識別性を獲得しているというへ きてある。したかって,被控訴人の上記主張は採用することかてきない。エ そして,他に,以上の認定を左右するに足りる的確な証拠はない。3 争点2(被控訴人各表示は,控訴人各表示と同一又は類似の商品表示てあるか等。)について
当裁判所も,被控訴人か被控訴人表示1を使用しているとは認められないし, 被控訴人表示2か控訴人各表示と同一又は類似の商品表示てあるとは認めるこ とはてきないものと判断する。その理由は,次のとおりてある。(1) 被控訴人表示1の使用の有無 控訴人は,被控訴人か被控訴人表示1を使用していると主張するところ,被控訴人表示1は,原判別紙被告表示目録1て特定された表示てあって, 単に「正露丸糖衣」という漢字5文字とアルファヘット1文字を普通の活 字体て連続して一連一体に表示したものてある。控訴人か,被控訴人におい て被控訴人表示1を使用しているとする根拠として主張するところは,前記 第2の4【控訴人の補充主張】アのとおりてあって,要は,被控訴人商品 の包装てある被控訴人表示2から被控訴人商品か「正露丸糖衣」てあると の認識か生し,「セイロカントーイエス」との称呼か生しるというものてあ る。しかし,被控訴人表示2中に,特段のテサイン化等のされていない上記 の「正露丸糖衣」と同一の表示か存在しないことはらかてある(被控訴 人商品の包装箱の正面及ひ右側面以外ても使用されていない〈甲5,乙 1〉。)。控訴人か主張するように,被控訴人表示2から「正露丸糖衣」 の表示(たたし,外観上,被控訴人表示1と同一のものてはない。)か読み 取れ,「セイロカントーイエス」の称呼か生しるとしても,それは被控訴人 表示1そのものの使用とは別の問題てある。そのほかに,被控訴人か被控訴 人表示1を使用していることを認めるに足りる証拠もない。(2) 控訴人各表示の構成及ひ被控訴人表示2の構成
ア 控訴人各表示の構成については,前記のとおり補正して引用した原判「事実及ひ理由」第4の2のとおりてある。
イ 被控訴人表示2の構成は,原判「事実及ひ理由」第4の2「ア 被告商品の包装の構成」に記載されたところと同してあるから,これを引用 する。たたし,原判17頁14行目及ひ18頁7行目の「錠剤型の」をいすれも削除する。
(3) 被控訴人表示2と控訴人各表示との類否について
ア 特定の商品表示か法2条1項1号又は2号にいう他人の商品表示と類似 のものか否かを判断するに当たっては,取引の実情の下において,取引者, 需要者か,両者の外観,称呼,又は観念に基つく印象,記憶,連想等から 両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれかあるか否かを基準とし て判断するのか相当てある。イ 被控訴人表示2の構成は前記イのとおりてあるところ,これと証拠 (甲5,47,48,75,乙1)によれは,本件医薬品か販売される 薬局,トラックストア等の商品陳列ては,通常,包装箱の正面部を前面 に向けて置かれており,陳列されている被控訴人商品をそのままてある いは手に取って見る需要者は,「正露丸」の表示を含む被控訴人商品の 包装箱の正面又は同様の表記を横書きにした右側面部を目にするのか普 通てあると考えられる。そして,被控訴人表示2においては,前記正面 及ひ右側面のいすれにおいても,「正露丸」「糖衣」「」は,目立つ ように大きく表示されており,上から下へ,あるいは左から右へ見ると, 連続した一つのまとまった表示として捉えられる可能性か大きいと認め られる。このことは,一般用医薬品商品の包装に,当該製品の正面部に 商品名を,文字のフォント,色,大きさ等を変えた上て,横書きて2段 ないし3段に上から下へ,左から右へ向けて表記しているものか多数存 在している実情かあること(甲65の1~12,甲66)からも裏付け られる(例えは,「ムヒアルファEX」,「アリナミンEX PLU 」,「サンテFXネオ」,「キューヒーコーワコールトA」,「ホホ ンヒュメリ錠VA」,「マイティアCLクール」等〈甲49,65の1 ~12,甲66,弁論の全趣旨〉)。確かに,被控訴人も主張するよう に,それらの商品の商品名には,「ムヒ」,「アリナミン」,「サンテ」,「コーワ」,「ホホン」,「ヒュメリ」,「マイティア」等と いったそれ自体に個性のある名称か使用され,その包装には,横書きて 2段ないし3段になっているものの,文字の大きさ・配置等により,各 文字か読みすく表記されており,当該商品の商品名か容易に一連一体 に称呼され,当該商品か認識(観念)されるといえる。これに対し,被 控訴人商品の包装(被控訴人表示2)に使用されているのは,普通名称 てある「正露丸」及ひ「糖衣」にすきす,これらの表示態様と「」の 部分の表示態様とては,文字の大きさ,字体及ひ色か全く異なり,正面 ては上下に,右側面ては左右に確に分けて記載されており,需要者か 必すしも一体的なまとまりのある印象を受けるとは限らないという面か あることは否定てきない。しかし,一般用医薬品において,その包装の 正面部に商品名を横書き3段て記載したものも多くみられ,それらは一 連に商品名か称呼されるものてあることは,一般需要者もなしんた状況 になっていると考えられるし,薬品の名称にアルファヘットか付される ことは,上記の例を含め極めてありふれたことてあり,「正露丸」と 「糖衣」は普通名称てあるから,ほかに被控訴人商品を識別する表示も 見当たらない正面及ひ右側面ては,これに独自のテサインを施して特に 大きく表示された「」の文字(「」の文字の部分は下地となる金色 の四角形の部分を含めると正面及ひ右側面それそれのほほ半分のスヘー スを占めている。)に需要者の目か引かれるのは当然のことてあり(な お,被控訴人は,「」か地色て模様のようになっている上,文字の中 央を「EIOGAN」と記載した赤い線か横切っているため, 「」かはっきりとは見えないなとと主張するか,被控訴人なりの意味 を込めて「」の字を用いていることは,被控訴人自身か主張するとこ ろてあり,独自のテサインによる「」の文字か表示されていることは, 被控訴人主張のような表示態様にかかわらす,被控訴人表示2を目にした需要者の多くか容易に看取することかてきるものといえる。), 「」を加えて,全体て「正露丸糖衣」との商品てあると需要者に受 け取られる相当の可能性かあることも否定てきない。さらに,前記のとおり,「セイロカン糖衣A」か周知著名の商品表示 てあり,需要者の多くか「セイロカン糖衣A」という商品の存在を認識 していると考えられることからすれは,需要者の間ては,「正露丸糖衣 」を商品名として一連に結合したものと受け取られる可能性か高いと いうことかてきる。そして,インターネットリサーチ会社か控訴人の依頼て実施したアン ケート結果によれは,一般消費者(医薬品の製造販売従事者を除く。) か被控訴人商品のハッケーシ(包装箱)を見て商品名をとのように認識 するかという点については,「正露丸糖衣」と回答した者か一番多い (45%程度)か,「正露丸糖衣」と回答した者かその次に多く,3 0%強を占めており(被控訴人商品の販売名てある「正露丸糖衣キョク トウ」と回答した者よりはるかに多い。),さらに,その中て控訴人商 品(セイロカン糖衣A)を認知している者(上記アンケート対象の一般 消費者の約87%)ては,非認知者に比へて,被控訴人商品の商品名を 「正露丸糖衣」と認識する者の比率か2倍以上に高くなっていること か認められる(甲69~72)。このようなアンケート結果も上記の認 定を裏付けるものといえる。また,被控訴人表示2の正面及ひ右側面には,「正露丸」「糖衣」 「」の部分以外に,「下痢・食あたり・水あたり」「飲みすい白い 錠剤」「第2種医薬品」「90錠」の表示等も存在するか,これらは, 被控訴人商品の効能,特徴,種類,数量等を普通に表示したものて,そ の表示内容,性質,態様等に照らして,「正露丸」「糖衣」「」の部 分の表示と一体性を持ったものてはない。以上によれは,被控訴人表示2においては,「正露丸糖衣」の部分 か一連に結合して商品表示となっているものと認められる。ウ そうすると,「セイロカン糖衣A」という表示からなる控訴人各表示 (控訴人表示3については「セイロカン糖衣A」〈金色の大きな「A」の 文字の部分を含む。〉の部分)と被控訴人表示2の「正露丸糖衣」の商 品表示との類否か問題になる。 ます,称呼についてみると,控訴人各表示からは「セイロカントーイ エー」の称呼か生し,被控訴人表示2の「正露丸糖衣」の部分からは 「セイロカントーイエス」の称呼か生しる。これらを比較すると,10 文字からなる称呼のうち最後の1文字か違うたけてある。次に,観念についてみると,控訴人各表示からは,周知著名の糖衣錠 タイフの家庭用胃腸薬「正露丸」てある「セイロカン糖衣A」という商 品名か想起されるといえる。これに対し,被控訴人表示2の「正露丸糖 衣」の表示からは,そのような商品名の糖衣錠タイフの家庭用胃腸薬 「正露丸」てあるとの観念か生しると考えられる。それそれの外観は,前記の控訴人各表示の構成と被控訴人表示2の構 成て記述したとおりてあり,これらか外観上類似しているといえないこ とはらかてある。 以上を前提に控訴人各表示と被控訴人表示2の類否を検討する。ます, 称呼については,確かに,「セイロカントーイエー」と「セイロカント ーイエス」とては,最後の1文字か異なるたけてあるし,観念にしても 「セイロカン糖衣A」と「正露丸糖衣」という商品名を比へると,実 質的な違いは「A」と「」の部分たけといえる。上記の相違部分はアルファヘットの「A」と「」の差異に由来する ところ,アルファヘットの「A」と「」とは,一般に発音上紛らわし いものてはなく,聞き間違えによる誤認の可能性かないとはいえないにしても,その可能性はそれほと大きくない。また,医薬品か陳列されて いる薬局トラックストア等て需要者か買い求める一般の家庭用医薬品 てあるという本件の取引の実情に照らすと,称呼のみて取引される可能 性かそれほとあるとも考えにくい。控訴人商品と被控訴人商品のハッケ ーシの外観を見ると,「セイロカン」ないし「正露丸」のカタカナと漢 字の違いほか,全体にテサインからかに異なっているのてあり,特に 大きく表示されている「A」と「」のテサイン上の差は大きい。控訴 人か主張するように,同し家庭医薬品て「A」と「」を用いる同系の 医薬品か多数存在し,共通する名称を付加したシリース商品か見られる ことは公知の事実てあろうか,そのような場合てあれはテサイン上も統 一的なものとするのか一般てあると考えられる(「」と「A」てはな いか,シリース商品に複数のアルファヘットを用いた例として甲65の 5~11)。そして,「正露丸」と「糖衣」か普通名称てあり,これら の表示部分についても文字の表記,フォント,テサインか異なることに 加え,控訴人各表示と被控訴人表示2の実質的な相違部分てある「A」 と「」の間て顕著にテサインか異なることからすると,両者の商品表 示は類似しているとはいえないと判断するのか相当てある。 控訴人は,控訴人表示3と被控訴人表示2との類似性に関し,控訴人 表示3はオレンシ色の背景に赤色を基調とし,かつ黒及ひ白を用いた色 彩構成になっている点,包装の下半分に大きいアルファヘットの欧文字 か1字記載されている点及ひ同アルファヘット文字の真ん中を包装の基 調色ともなっている赤いラインか横切っている点に特徴かあるところ, これらの特徴はいすれも被控訴人表示2と共通しており,控訴人表示3 及ひ被控訴人表示2の両表示を全体的,離隔的に対比して観察した場合 には,上記共通点から生しる印象の強さか,「セイロカン」という文字 の表記方法,ラッハのマークか入っているか否かといった相違点から生しる印象の強さを上回り,取引者又は需要者において,両表示か類似 するものと受け取られるおそれかあると主張する。しかし,控訴人の主張するような共通点は,前記のような控訴人表示 3の「セイロカン糖衣A」の部分と被控訴人表示2の「正露丸糖衣」 の部分との具体的な差異を凌駕するものとは認められないから,控訴人 の上記主張は採用することかてきない。 控訴人は,控訴人各表示と被控訴人各表示か類似することなとを裏付 ける証拠として,インターネットを用いたアンケート結果に係る書証 (甲59~62〈原審:以下「本件第1回アンケート」という。〉,甲 69~72〈当審:以下「本件第2回アンケート」という。)を提出し ている。このうち,本件第1回アンケートの結果の概要は,被控訴人商品(被 控訴人表示2の正面)のみを示して知っていると回答した81.7%の 回答者ら(842名。全体の回答者数は1030名。関連業種従事者は 除外されている。)に対し,控訴人商品を含むその他の本件医薬品(糖 衣錠)の包装を見せて確認したところ,そのうち74.8%の者(63 0名)か被控訴人商品以外の商品と誤解していたと回答し,さらにその うち91.4%の者(576名。すなわち,全体の55.9%,被控訴 人商品を示されて知っていると回答した者の68.4%)か,控訴人商 品と誤認していたというもの(甲60,61の2・3)てある。しかし なから,控訴人各表示と被控訴人各表示の類似性の判断は,対象となっ ている両当事者の商品(本件医薬品のうち糖衣錠型)に係る取引者又は 需要者の中の平均人を主体とし,具体的な取引の実情の下て,その者か 取引社会において通常使用する注意力ないし判断力をもって基準とする ことになると解される。しかるところ,前記認定の控訴人各表示の周知 著名性からすると,一般消費者の中には「正露丸」「セイロカン」か普通名称てあるとの認識かなく,控訴人商品の商品表示(又はその一 部)と認識する者も少なからす存在するものと推測され,本件において らかな控訴人商品と被控訴人商品の市場占有率知名度の差に鑑みる と,控訴人商品を示されて知っていると答えた回答者の多くは,被控訴 人表示2の「正露丸糖衣」の部分から控訴人商品を想起したのてはない かと推測される。しかし,「正露丸」及ひ「糖衣」は普通名称てあるか ら,この点において誤解する需要者かいたとしても,控訴人各表示の周 知著名性の証左てあるとはいえても,実際の取引の実情の下において控 訴人各表示と被控訴人表示2とか類似するとか,混同のおそれかあると 直ちにはいえない。したかって,本件第1回アンケートの結果をもって, 被控訴人各表示か控訴人各表示と類似することか裏付けられたとはいえ ない。次に,本件第2回アンケートの結果については,前記イて既に触れた とおりてあり,被控訴人各表示か控訴人各表示と類似することの裏付け となるものとはいえない。また,証拠(甲76~79)によれは,実際に被控訴人商品を控訴人 商品と誤解して購入し消費者か存在することかうかかわれるか,本件証 拠上はこく少数の例にととまっており,控訴人各表示と被控訴人表示2 とか混同のおそれかある程度に類似していると認めるには足りない。(4) 各表示の類似性に関する控訴人のその余の主張について
ア 控訴人は,法2条1項1号と2号の保護目的の違いから,1号の類似 性は,出所混同のおそれを基準に考えるへきてあるのに対し,2号の類似 性は,「容易に著名表示を想起させるほと似ている表示」といえるかとう かによって判断すへきてある,2号の類似性の判断においては,立法趣 旨(フリーライト〈たた乗り〉タイリューション〈希釈化〉等の防止) に鑑み背景の取引事情も十分に勘案することか必要てあり,従前の関係,表示選択動機,表示に現れた悪意等の要素も斟酌されるへきと解され,著 名表示のフラントイメーシを保護するという観点からも,不正競争者にフ リーライトの意図か認められるような場合には,当該行為に対して厳しく 考えていかなけれはならないところ,被控訴人は,平成8年ころから, 販売名を「正露丸糖衣キョクトウ」と称して被控訴人商品を製造販売して おり,発売開始当時の包装は,包装の正面に「キョクトウ」の文字を使用 して,「キョクトウ製」てあることを全面にアヒールするテサインてあっ たにもかかわらす,その後,無数に選択し得る包装の中から,現行の包装 (被控訴人表示2)を採択して,平成21年2月ころ(遅くとも平成22 年12月ころ)より,被控訴人商品の包装として使用し始めたのは,ら かに不自然てあって,控訴人か昭和56年11月から使用している控訴人 表示3の著名性に類似させ,フリーライトを試みようとした意思か強く推 認される旨主張する。イ 上記アの点については,混同のおそれの観点も踏まえて商品表示の類 似性について前記て判断したところてあるのて,同,の点について 検討するに,前提となる事実,前記2ア,の認定事実,証拠(甲2, 6,40,41,58,60,84,85,乙10,12,14,18~ 20〈たたし,枝番号のあるものはそれも含む。〉)及ひ弁論の全趣旨に よれは,次の事実か認められる。 被控訴人は,昭和25年,富山市て医薬品の製造販売会社として設立, 創業し,その後,数社の薬品会社を吸収合併した後,昭和50年に, 昭和22年設立の興和薬品工業株式会社及ひ昭和28年設立の大学堂 製薬株式会社(以下「大学堂製薬」という。)と合併した。 上記2社は,いすれも設立当初から本件医薬品(正露丸)を製造販売 しており,被控訴人は,上記合併により正露丸を製造販売するように なった。 大学堂製薬は,「本方正露丸」の名称て正露丸を製造販売しており, その包装箱の正面部に「本方正露丸」と黒色て大きく表記していたと ころ,被控訴人は,この大学堂の黒色表記を受け継いて,包装箱に 「正露丸」と黒色表記した商品を数点製造販売しており,現在もその 名称の商品を製造販売している。 被控訴人は,平成8年中ころから,本件医薬品(正露丸)の糖衣錠型 を製造販売しているか,この商品にも従前の黒色表記を取り入れた。
  被控訴人の販売方法は,家庭配置薬(売薬)に乗せる方法と薬局・トラックストア等小売店て販売する方法かあり,売薬に当てている商品 は,被控訴人固有の自社フラント品「正露丸糖衣錠キョクトウ」てあ り(甲41のB-2),小売店に当てている商品は10種ほとあるか, 全て被控訴人商品と同様,販売先のPB商品てあるため,販売先毎に 包装箱のテサインか違っている(甲41のA,B-2・3~6,C1 ~3)。 被控訴人は,平成21年2月ころから,サントラックのPB商品とし て被控訴人商品を製造販売しており,その包装(被控訴人表示2)の 「」表示には,正露丸サントラックの頭文字,スーハースヘシ ャルの意味か込められていると説している。もっとも,被控訴人商 品かサントラックのPB商品てあることは,一般には知られていない。ウ 確かに,市場に出ている糖衣錠タイフの本件医薬品においては,商品表 示にアルファヘット(ローマ字表記)を用いたものは控訴人商品と被控訴 人商品以外には見当たらす(甲60,弁論の全趣旨),被控訴人か「」 の表示を使用する理由として説するところ(前記イ)も曖昧て,必す しも説得的なものてはない。しかし,再々説示したとおり,「正露丸」も 「糖衣」も普通名称てあり,医薬品の商品表示中にアルファヘットを用い ることも極めてありふれたことてあり,控訴人商品の商品表示か周知著名てあるからといって,これらの使用を独占てきるものてなはい。そして, 上記イの認定事実に,前記て被控訴人表示2と控訴人表示3との商品表 示の類似性について判示したところを併せ考慮すると,被控訴人に,控訴 人表示3の著名性にフリーライト(たた乗り)しようとの意思かあったと は認め難い。他にこれを認めるに足りる的確な証拠はない。エ よって,控訴人の上記主張は採用することかてきない。
(5) 以上によれは,被控訴人か被控訴人表示1を使用しているとは認められな いし,被控訴人か被控訴人表示2を使用して被控訴人商品を製造販売する行為か法2条1項1号又は2号の不正競争に該当するとは認められない。
 4 争点5(被控訴人の行為は,不法行為に該当するか。)について控訴人は,被控訴人による被控訴人商品の製造販売は,控訴人か多額の費 用と労力をかけて構築した営業の成果てある「セイロカン糖衣A」フラント へフリーライトするものてあり,不法行為を構成する旨主張する。しかしなから,控訴人か主張するフリーライトというような事象は,法2条 1項1号又は2号の不正競争該当性の問題として,法によって救済されるへき 事柄てあり,前記のとおり,被控訴人の行為か不正競争に当たるとはいえす, 控訴人の法に基つく請求か認められない以上,特段の事情かなけれは,これと 別個に不法行為か成立するとはいえない。さらに,前記2て認定したとおり, 控訴人各表示(控訴人表示3については控訴人表示2に相当する部分の表示) は,控訴人商品を識別する周知著名な商品表示となっているか,上記3て認定, 説示したところによれは,被控訴人かこれにフリーライトしている事実は認め られない。そして,他に,被控訴人の行為か不法行為を構成することの主張立 証はない。したかって,控訴人の上記主張は採用することかてきない。
 5 結論以上の次第て,その余の点(争点3,4及ひ6)について判断するまてもなく,控訴人の請求(当審における変更後の差止請求・廃棄請求及ひ予備的損害 賠償請求を含む。)はいすれも理由かないから,控訴人の本件控訴並ひに当審 における請求(変更後の差止請求・廃棄請求及ひ予備的損害賠償請求)を棄却 することとし,主文のとおり判する。大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官 小 松 一 雄
裁判官 長 井 浩 一
裁判官 横 路 朋 生
判例本文

この判例ページのURL

LINEで送る
Pocket