平成25年8月27日判言渡 同日原本交付 裁判所書記官 平成24年第2382号 商標権侵害差止等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判 所平成22年第13516号)口頭弁論終結日 平成25年2月19日

控訴人(1審被告) 株式会社ファランクス 同訴訟代理人弁護士 中 川 澄 同 江森史麻子 同呰真希 被控訴人(1審原告) 有限会社サムライ 同訴訟代理人弁護士 平野和宏 同訴訟代理人弁理士 小谷昌崇 同補佐人弁理士 小谷悦司同 同
主文
 1 本件控訴を棄却する。
川瀬幹夫 脇坂祐子
2 原判の当事者の表示のうち,原告の登記簿上の本店所在地を「兵庫県以下 省略」と,被告の本店所在地を「東京都新宿区以下省略」とそれそれ更正する。3 控訴費用は控訴人の負担とする。
 事実及ひ理由
第1 控訴の趣旨
1 原判中控訴人敗訴部分を取り消す。
2 被控訴人の請求をいすれも棄却する。
3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
第2 事案の概要

1 本件は,被控訴人か,控訴人に対し,控訴人か原判別紙標章目録記載1な いし3の各標章(以下,それそれの標章を「被告標章1」ないし「被告標章3」 といい,併せて「被告各標章」という。)を付した商品を製造し,ウェフサイ ト等において販売することか,被控訴人の有する商標権の侵害に当たると主張 して,商標法36条1項,2項に基つき,被告各標章の使用差止め及ひ上記商 品の廃棄を求めるほか,控訴人か原判別紙標章目録記載4の標章をウェフサ イトのトッフヘーシを表示するための html ファイルにメタタクとして用いる 行為か商標権侵害に当たるとしてその差止めを求めるとともに,主位的に,同 商標権侵害の不法行為に基つく損害賠償の一部請求として8115万6250 円及ひこれに対する遅延損害金の支払を求め,予備的に,不当利得に基つき利 得金291万6666円及ひこれに対する遅延損害金の支払を求める事案てあ る。原審は,被控訴人の請求のうち,被告標章1及ひ2に関する使用差止め及ひ 商品廃棄の請求を認容し,被告標章1をウェフサイトに表示することを禁し, 各ウェフサイトから被告標章1を削除するよう命し,併せて損害賠償金を50 7万5781円とその遅延損害金の限度て認容し,その余の請求を棄却したの て,控訴人か被控訴人の請求の全部棄却を求めて控訴した。原審て請求か棄却 された被告標章3及ひ原判別紙標章目録記載4の標章に係る請求は,当審の 審判の対象になっていない。2 前提事実,争点及ひ争点に関する当事者の主張については,以下のとおり付 加補正し,さらに後記当審における主張を加えるほかは,原判「事実及ひ理 由」第2の1,3及ひ第3記載(たたし,被告標章3及ひ原判別紙標章目録 記載4の標章に係る部分を除く。)のとおりてあるから,これを引用する。略 称については原判と同様とする。 原判7頁5行目の末尾の後に,改行して以下のとおり加える。
 「(3) 後記【控訴人の主張】(3)に対する反論
被告各商品と同種の商品は,一般に,本件各登録商標の指定商品と同一営 業主により製造又は販売されているものといえ,また,その販売の仕方なと からみても,被告各商品に本件各登録商標又はこれに類似する商標を使用し た場合,同一事業主の製造又は販売に係る商品と誤認混同を生するおそれか ある。」 原判7頁19行目の文頭から同頁22行目末尾まてを,「需要者か普段 着として使用するか否かにかかわらす,本件各登録商標の指定商品と被告各 商品とを,購入の際に誤認混同することはない。」と改める。 原判8頁6行目の末尾の後に,改行して「上記スホーツ用品と被告各商 品は,一般に同一営業主か製造又は販売しているとはいえないし,仮にして いたとしても,同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれか あることには直接つなからない。」を加える。3 控訴審における主張
 争点2(被告標章1及ひ2と本件各登録商標の類否)における要部の認定 について
 (控訴人の主張)
商標の要部の認定において,取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識 別標識として強く支配的な印象を与えるものかとうかを判断するには,商標 の構成部分の大きさを比較するのみてなく,その商標か与える印象称呼, 観念といった要素なとを総合的に考慮すへきところ「,AMUAI JA PAN」には,「AMUAI」とも「JAPAN」とも異なる新しい観念 か生している。すなわち,現在,ありふれた一般名詞に,「女子」「男子」なとと同様に, 「JAPAN」「シャハン」なとを付けた愛称て呼はれている団体クルーフ か数多く存在するか,それらはJAPANとそれ以外の一般名称を分けてし まえは,全く意味をなさなくなる。
「AMUAI JAPAN」は,観念の点から,「AMUAI」と も「JAPAN」とも異なる「スホーツの国際試合における日本代表」「ス ホーツをする日本男児」という観念か生しるため,切り離すことかてきない。
 したかって,被告標章1及ひ2においては,「AMUAI」又は「am urai」は取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く 支配的な印象を与えるものと認められす,被告標章1及ひ2についても,構 成部分の一部を抽出し,この部分たけを本件各登録商標と比較して商標その ものの類否を判断することは許されない。「AMUAI JAPAN」は 一連一体として把握されるへきてある。(被控訴人の主張)
「AMUAI JAPAN」の要部の認定においては,外観上一連一体てはなく2段に表記されていること,文字の大きさか著しく異なっている こと及ひ「JAPAN(Japan)」なる文字部分か日本国を表すものとし て一般に用いられている言葉てあることを考慮すへきてある。被告標章1及 ひ2の外観を無視し,観念のみて要部認定をすへきとする控訴人の主張は失 当てある。 争点7(損害)における法38条2項,3項の適用について (控訴人の主張)ア 法38条2項は損害の発生まて推定する規定てはないのて,同項の適用の前提としては,登録商標そのものを使用することによって登録商標に化 体された信用か害されることか必要てあるところ,被控訴人か甲15にお いて使用している標章はいすれも本件登録商標2とは外観において異なる。
 したかって,同項を適用する前提を欠く。イ 被控訴人は本件登録商標1を使用していないのて,法38条3項による 使用料請求は認められない。ウ 被告各商品の需要者と被控訴人のサッカー関連商品の販売開始時期から
すると,被告各商品の売上けと本件各登録商標を用いた被控訴人の売上け との間に因果関係はない。また,控訴人は,平成17年から,着実にフットサルの分野におけるフ ットサル愛好家なとの需要者の信用を確立してきたのてあり,その結果「 AMUAI JAPAN」はフットサル界,フットサル愛好家の中ては 知らない人かいないほとの認知度を誇っている。このような控訴人製品か 売れたからといって,シーンスメーカーてある被控訴人の売上けか減少す る因果関係はないのて,被控訴人に損害は発生していない。(被控訴人の主張)
ア 甲15に掲載されている標章は,外観において異なる部分かあるとしても,本件各登録商標と,社会通念上同一の商標と認められるものてあるか ら,被控訴人の業務上の信用か化体していることはらかて,商標権の侵 害行為の規定(37条)からしても,商標権の法的保護の範囲内にある利 益てあると解される。イ 本件登録商標1は使用されている(甲22,23)。
ウ 法38条は,侵害行為と損害との因果関係及ひ損害の額を推定する規定 てあるから,控訴人か,本件各登録商標の指定商品に類似する商品(普段 着として利用可能な被服等)に本件各登録商品に類似する被告標章1及ひ 2を付した被告各商品を販売することによって,控訴人に損害か発生したといえる。
 また,控訴人かフットサルの分野におけるフットサル愛好家なとの需要者の信用を確立してきたか否かはらかてはないか,仮にそうたとしても 被控訴人はシーンスたけを販売しているわけてはなく,Tシャツ,シャツ, スウェット,ショートハンツなとの衣料を全国的に店舗販売し,インター ネットを使った通信販売もしている。控訴人の販売方法からすると,被告 各商品か売れたことて被控訴人の売上けか減少することかないとはいえな
い。
第3 当裁判所の判断
当裁判所も,被控訴人の請求(当審ての審判の対象になっているもの)のう ち,被告標章1及ひ2に関する使用差止め及ひ商品廃棄を求める部分及ひ被告 標章1をウェフサイトに表示することを禁し,各ウェフサイトから被告標章1 を削除するよう命しる部分については理由かあり,併せて損害賠償金507万 5781円とその遅延損害金の請求については理由かあると判断するか,その 余の請求については理由かないと判断する。その理由については,以下のとお り付加補正し,当審における主張の判断を付加するほかは,原判「事実及ひ 理由」第4の1ないし8(たたし,被告標章3及ひ原判別紙標章目録記載4 の標章に係る部分を除く。)記載のとおりてあるから,これを引用する。1 原判25頁17行目文頭から同頁23行目の末尾まてを以下のとおり改め る。「前記イ及ひの商品についても,控訴人か本件各登録商標の指定商品と 同一のものてある前記イの各商品と併せて販売していること,ユニフォーム といっても,インターネット上ては,用途として普段着等,運動用以外の紹介 とともに,1着単位ても被告各商品を購入てきるようにしていること(甲11 の1ないし5),インターネット上の商品販売サイトてある楽天市場の検索エン シンて「AMUAIティーシャツ」と入力して検索した結果は被告各商品 と原告商品か一覧て並んて表示されること(甲12)なとからすると,現実に 被控訴人かサッカー関連用品の販売を開始したのは平成22年1月ころてあっ たとしても,商品の出所の誤認混同のおそれかないとはいえない。控訴人は,インターネット上におけるカテコリ「スホーツ・アウトトア」 サフ・カテコリ「フットサル」から検索する場合には需要者は控訴人のことを 知っているフットサル愛好者てあるのて,誤認混同のおそれはないと主張する か,控訴人の自社サイトからの検索てあれは格別,上記カテコリからの検索を
行う者か必すしも控訴人のことを知っているとは限らない。 したかって,これらの商品についても,本件各登録商標と同一又は類似の商 標か使用されれは,控訴人又は被控訴人に関する知識かない一般の需要者によ っては,少なくともインターネット上ては,同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認混同されるおそれかあるというへきてある。」
2 原判25頁24行目の「需要者か」から同頁24,25行目の「これらは,」まてを「被告各商品は,」と,26頁20行目の「表記された」を「表記され, このうち「」と「」の文字か他の文字より大きく表記された」と,27頁 11,12行目の文頭から末尾まてを「文字の大きさを比較すると,「AMU AI」に使用されている文字は,「JAPAN」に使用されている文字の,幅, 高さとも,各々約3.5倍程度てある。」と,29頁13行目の「文字の」から 同頁15行目末尾まてを「文字の大きさを比較すると,「amurai」に使 用されている文字は,「japan」に使用されている文字の,幅,高さとも, 各々約2倍程度てある。」と,それそれ改め,33頁13行目の「役務と」の後 に「他人の業務に係る商品又は役務とを」を,36頁14行目の「前記5」 の前に「前提事実及ひ」を,44頁24行目の「甲17」の後に「18,1 9の1ないし6」を,それそれ加える。3 控訴審における主張について
 争点2(被告標章1及ひ2と本件各登録商標の類否)における要部の認定について 控訴人は,被告各標章と本件各登録商標の類否を判断するに際して行われる商標の要部の認定につき,「AMUAI」と「JAPAN」は一連一体 となって新しい観念を示すのて,要部としても一部を抽出することはてきな い旨主張する。しかし,ある標章からとのような観念を生しるかは,その標章の具体的な 構成取引の実情を踏まえて判断すへきところ,原判「事実及ひ理由」第

4の2イ及ひて説示するとおり,少なくとも被告標章1及ひ2につい ては,「AMUAI」又は「amurai」の部分と,「JAPAN」 又は「japan」か上下2段になっており,「AMUAI」(「amu rai」)と「JAPAN」(「japan」)とては文字の大きさか顕著に異 なっており,取引者需要者か被告標章1及ひ2を一瞥したときに「JAP AN」(「japan」)の部分か看取てきないというものてはないとしても, 「AMUAI」(「amurai」)の部分に比へて与える印象に格段の 差異かあることは否定てきす,「AMUAI」又は「amurai」の 部分か,取引者,需要者に対して強く支配的な印象を与えるものてある。こ れに対し,「JAPAN」(「japan」)の部分は,取引者需要者かこれ を「AMUAI」(「amurai」)の部分と共に目にするとしても, 付随的なもの,ないしは「AMUAI」(「amurai」)の部分とは 独立に「JAPAN」(「japan」)という我か国の国名を原産国の表示等 の意味て付加したものと受け取るのか一般的てあると認められる。したかっ て,「AMUAI JAPAN」という表記か広く用いられるようになっ ているとしても,被告標章1及ひ2か被告各商品に使用された場合に,これ を目にした取引者又は需要者か,全体として「AMUAI JAPAN」 という一連一体の構成のものと把握するとはいえす,被告標章1及ひ2か2 段になった表記の全体か一連一体の標識として「AMUAI JAPA N」との観念か生しるとはいえない。控訴人の上記主張は採用てきない。 争点7(損害)における法38条2項,3項の適用について
ア 控訴人は,法38条2項は,登録商標そのものの使用による登録商標に 化体された信用を害することを想定しているのて,同条の適用の前提とし ては登録商標そのものの使用か必要てあるところ,本件において,被控訴 人か使用している標章(甲15)は本件各登録商標そのものてはなくいす れも外観において異なるから,法38条2項を適用することはてきない旨
主張する。 法38条2項は,商標権者か商標権侵害による損害賠償請求を請求する場合において,侵害者か侵害の行為により利益を受けているときは,その 利益の額をもって商標権者か受けた損害の額と推定する旨規定する。この 規定か適用される前提としては,侵害行為により商標権者に損害か発生し たと認められることか必要てあり,そのためには,商標権者自らか登録商 標を営業に使用していることを要するものと解される。なせなら,法38 条2項による推定は,商標権者か自ら登録商標を現実に使用しているにも かかわらす商標権侵害行為か行われた場合には,侵害行為によって自らの 登録商標の出所表示機能か害され,市場において売上か減退することにな る結果,営業上の損害を被るのか通常てあると考えられるところに,同条 項による推定を働かせる基礎か存在するといえるからてある。そして,通 常の取引社会においては,登録商標をそのままの形て使うたけてはなく, 当該商標を付する商品の性質等に応して適宜変更を加える形ても使用する のか一般的てあって,そのような登録商標に適宜の変更を加えた形の商標 を使用している場合てあっても,登録商標と社会通念上同一の商標と認め られるものてあれは,登録商標と同一又は類似の商標か使用されて商標権 か侵害されたときは,当該登録商標に係る商標権侵害によって登録商標の 出所表示機能か害され営業上の損害を被ったものといい得るものと考えら れる。なお,法25条本文は,「商標権者は,指定商品又は指定役務につい て登録商標の使用をする権利を専有する。」と規定するか,ここにいう「登 録商標」は,社会通念上登録商標と同一の商標といえるものを含むものて ある。したかって,法38条2項の適用の前提として商標権者か登録商標 を使用しているというためには,登録商標に適宜の変更か加えられていて も,社会通念上登録商標と同一の商標といえるものを使用していれは足り ると解するのか相当てある。これを本件についてみるに,被控訴人か提出する甲15は,被控訴人の インターネットによる通信販売のためのオンラインショッフのヘーシてあ るところ,このヘーシには,ウエア,Tシャツ,スウェット等の衣料か登 載されており,それらにはローマ字の活字体(コシック体)て「AMU AI」と表記された標章か付されているものかあることか認められる。
 上記標章は,確かにローマ字の「AMUAI」とカタカナの「サムラ イ」を2段に表記した本件登録商標2そのものてはないか,「サムライ」の 称呼及ひ「侍」の観念を生しることては共通しており,上記標章のローマ 字の表記も本件登録商標2のローマ字表記も字体に格別特徴かあるわけて はなく,本件登録商標2の下段のカタカナの表記は上段のローマ字表記を カタカナて表記したたけて,その字体にも特徴はなく,ローマ字とカタカ ナて上下2段に表記することて格別の特徴か生しているともいい難いから, 社会通念上同一の商標とみることかてきる。したかって,本件において,法38条2項適用の前提要件を欠くとはい えない。イ 甲22,23の3,4によれは,被控訴人は本件登録商標1についても 使用していることか認められるから,これを使用していないことを前提と する控訴人の主張は理由かない。ウ また,控訴人は,被告各商品の売上け増加と被控訴人の売上け減少との 間に因果関係か存在しないのて,損害の推定規定を適用することはてきな い旨主張する。しかし,仮に,控訴人かフットサル分野において,フットサル愛好家を 対象として知名度信用を確立してきたとしても,控訴人及ひ被控訴人か 広くインターネットによる通信販売を行い,フットサル愛好家以外の一般 の需要者を相手方として取引を行っていることか認められる以上,需要者 による出所識別か誤認混同の可能性かあることは前述のとおりてあり,ま
た,被控訴人のサッカー用品販売開始時期か遅かったとしても,たたちに 混同の可能性か否定されるわけてはない。したかって,上記因果関係を否 定することはてきない。 以上によれは,当審における控訴人の補充主張についても,いすれも理由 かない。第4 結論 したかって,被控訴人の請求を一部認容した原判は相当てあって,控訴人の本件控訴は理由かないから,これを棄却すへきてある。
 なお,記録によれは,原判の当事者の表示における「原告」の「登記簿上の本店所在地」の記載は,「A町」の「町」を脱落したものてあり,「被告」 の「本店所在地」の記載は,原審の口頭弁論終結時前に「東京都新宿区以下省 略」に移転していたことか認められるのて,いすれも白な誤りとして,民訴 法257条により主文のとおり更正することとする。 よって,主文のとおり判する。
 大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官 小 松 一 雄
裁判官 遠 藤 曜 子
裁判官平井健一郎は,転補につき,署名押印することかてきない。 
 
裁判長裁判官 小 松 一 雄
 
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