平成25年5月30日判言渡
平成24年(行コ)第184号 公金違法支出損害賠償請求控訴事件主文
 1 原判中,控訴人敗訴部分を取り消す。
2 上記取消部分に係る被控訴人の請求を棄却する。
3 訴訟費用(補助参加費用を含む。)は,第1審,差戻し前の控訴審,上告審及ひ差戻し後の控訴審を通し,すへてを被控訴人の負担とする。
 事実及ひ理由第1 控訴の趣旨
 主文と同旨
第2 事案の概要
1 本件は,栃木県の旧α町(以下「α町」という。)か浄水場用地として土地 を購入したことについて,同土地を取得する必要性はなくその代金額も適正価 格よりも著しく高額てあるのに,控訴人補助参加人A(以下「A」という。) との間て同土地の売買契約(以下「本件売買」ともいう。)を締結したことか 違法てあるとして,α町と旧β町(以下「β町」という。)との合併により設 置されたさくら市の住民てある被控訴人か,地方自治法242条の2第1項4 号に基つき,市の執行機関てある控訴人に,上記売買契約の締結当時のα町の 町長てあった控訴人補助参加人B(以下「B」という。)に対して,不法行為 に基つく損害金1億2192万円及ひこれに対する平成17年1月15日か ら支払済みまて民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求する ように求める住民訴訟てある。2 原審においては,上記請求とともに,被控訴人か,控訴人に,上記土地の売 主てあるAに対し,不当利得に基つく利得金1億2192万円及ひこれに対す る平成17年1月15日から支払済みまて民法所定の年5分の割合による利 息の支払を請求するように求める請求か併合されていたか,原審は,被控訴人の請求のうち,上記1の請求を認容し,Aに対する不当利得返還請求の義務付 けを求める部分を棄却した(原判)。そこて,控訴人は,その敗訴部分を不服として控訴したか,差戻し前の控訴 審は,その控訴を棄却し,控訴人か上告したところ,上告審は,上記控訴審判 を破棄し,本件を当庁に差し戻す判をした。3 本件における前提事実は,次のとおり補正するほかは,原判「事実及ひ理 由」欄の第2,1に記載のとおりてあるから,これを引用する(たたし,上記 引用部分中,「原告」とあるのを「被控訴人」と,「被告」とあるのを「控訴 人」と,「別紙」とあるのを「原判別紙」と読み替える。以下の引用部分に おいて同し。)。(1) 2頁25行目の「町長として,」から26行目末尾まてを「町長てあっ た。同町には,水道事業について管理者か置かれておらす,管理者の権限は 町長か行うものとされていた(地方公営企業法7条たたし書,8条2項)。」 に改める。(2) 4頁15行目の次に,次のとおり加える。
(8) α町は,平成17年3月28日にβ町と合併し,さくら市か設置されてα町の権利義務を承継した。α町長てあったBは,市長選挙を経てさくら市長となり,平成21年4月ころまてその任期を務めた。
 (3) 4頁16行目の「(8)」を「(9)」に改め,4頁21行目の次に,次のとおり加える。
(10) 平成21年9月1日に開催されたさくら市議会において,本件請求に係るさくら市のBに対する損害賠償請求権について,その権利を 放棄する旨の議案(以下「本件議案」という。)か議員から提案され, 審議の結果,16対5の多数て同議案か議された(以下これを「本 件議」という。)。控訴人は,本件議を受けて,Bに対し,本件 議の事実と権利放棄の事実を記載した文書を送付し,この文書は,Bに到達した(乙25ないし27)。
 4 本件における争点は,次のとおりてある。(1) Bは,α町あるいは同町を承継したさくら市に対し,本件売買による不 法行為に基つく損害賠償責任を負うか。(2) さくら市議会による本件議により,さくら市のBに対する損害賠償請 求権か消滅したか。5 本件の争点(1)についての当事者の主張は,当審における当事者の主張を後 記6(1)アのとおり加えるほかは,原判「事実及ひ理由」欄の第2,2のう ち原判4頁25行目から13頁13行目まての記載のとおりてあるから,こ れを引用する。本件の争点(2)についての当事者の主張は,後記6(1)イ及ひ(2) のとおりてある。6 当審における当事者の主張 (1) 控訴人の主張
ア Bに対する損害賠償請求の義務付け請求について (ア) 本件土地の適正価格について被控訴人か援用するC鑑定は,1取引事例の1ないし3かいすれも農 地てあって,宅地ないし雑種地てある本件土地との比較に用いるのは適 切てないこと,2基準価格の算定に用いた「γ-1」か「田」として利 用されている土地てあるから,宅地ないし雑種地てある本件土地の基準 地とするのは適切てないこと,3宅地造成工事費用総額として約1億円 の費用かかかるとされ,この費用は,「田んほの状態あるいは山林の状 態から,各区画に分けた宅地に分譲するまての造成費用てある」と説 するか,α町とAとの間ては,本件土地を更地として引き渡すことを条 件としていたのてあるから,1億円という多額の造成費用を要しないこ と,4本件土地の適正価格を7590万円てあるとするか,この鑑定結 果によると1mの単価は9230円となり,本件土地に隣接する路線価か2万3700円あるいは2万8200円てあるから(乙19),上記 鑑定結果は信用てきないこと,5Aか,本件土地に隣接する土地を,も と所有者てあるDに対し,1m当たり1万2081円て売却したのは, DとAの父か友人てあったこと,Dか事業に失敗し自宅を失うことにな ったなとの背景事情かあり,Aは,本件土地を前所有者てあるDからス ムースに引渡しを受け,円満にフラントを撤去し,整地作業を実施する 必要かあったために,破格に低額て売却したものてあるから,上記売却 価格はC鑑定か適正てあることの根拠とならないこと,以上から,C鑑 定に依拠して本件土地の適正価格を認定するのは不当てある。(イ) Bか裁量を逸脱,濫用したとする根拠か不当てあることついてa Aか本件土地を競売により所有権を取得した際の価格は,本件土地 の適正価格を考える上て参考にならない。本件土地に関するα町とA との取引は,本件土地上にある建物,フラント工場を撤去し,更地の 状態に戻すことか条件になっていたことからすると,上記価格は,適 正価格を検討する上て考慮すへき事情とはならないから,本件競売物件の競売による売却価額か約4500万円てあったことをBか把握 していたこととしても,これによりBか裁量を逸脱,濫用したとする 根拠とはならない。b Bは,Aから本件土地を7000万円て売却する旨の打診を受けて はいないから,Aから上記のような打診を受けていたことを鑑定を見 直すへき根拠とするのは不当てある。c 平成16年8月31日の町議会の全員協議会て多くの議員から鑑定 価格の妥当性価格の高さについて疑問か出されていたとしても,A から2億5000万円という売買代金か提示された後の平成16年 9月6日の全員協議会においては,根本的な見直しを求めるような状 況てはなかったのてあるから,Bにおいて鑑定を見直すへき事情かあったとはいえない。
d 不動産鑑定士のEは,E鑑定か適正てあると認識しているのてあるから,Bか自らEに鑑定内容についての説を求めていないことか不適切てあったとはいえない。
e 以上によれは,Bは,専門的知識かないことから専門性の高い職業人に鑑定を求めたものてあるのに対し,不動産鑑定理論に対する専門 的な知見を水道事業の管理者てあるBに求める被控訴人の主張は不 当てある。イ さくら市議会の議(本件議)による損害賠償請求権の消滅について (ア) 地方自治法96条1項10号は,議会の議事項として,「法律若しくはこれに基つく政令又は条例に特別の定めかある場合を除くほか, 権利を放棄すること」と定め,地方公共団体の権利放棄については,執 行機関たる地方公共団体の長てなく,議会の議によるへきものとして いるところ,法令及ひ条例には,本件損害賠償請求権の放棄について特 別な定めはないのて,本件損害賠償請求権の放棄の可否は,住民の代表 てある議会か,損害賠償請求権の発生原因,賠償額,債務者の状況,放 棄することの影響,効果等を考慮して行う合理的な判断に委ねられてい る。(イ) 地方自治法96条1項10号か,権利放棄を議会の議事項とした のは,住民の意思をその代表者を通して直接反映させようとしたものて あり,執行機関の専断を排除しようとする趣旨をも含むものて,権利放 棄の議について長の執行行為は必要かない。したかって,本件訴訟の対象になっている損害賠償請求権は,地方自 治法149条6号によりさくら市の執行機関か管理すへき債権てあり, その債務免除は,同法240条3項により,執行機関の債務者に対する 意思表示によってなされるへきてあり,議会の議のみによって効力か生しるとはいえないとの考え方は不当てある。
 (ウ) 本件におけるBの帰責性についてa 本件土地は,浄水場用地としての条件に適合しており,地権者も1 名て交渉か容易てあったことなとから,α町においてこれを浄水場用 地として取得する必要性か認められる。その売買代金か高額に過きた としても,当時,第2次拡張計画に基つく用地取得の予定時期を数年 過きても他に適当な候補地か見当たらない中て,水道事業の管理者と してのB町長は,用地取得の早急な実現に向けて努力すへき立場にあ ったものてあり,仮に,代金額に係る交渉を不調として本件土地の取 得を断念するならは,用地取得の予定時期を既に数年過きて遅れてい た浄水施設の設置なと第2次拡張計画の実現か更に遅れることにな り,α町及ひその住民全体の利益に反する結果となる状況にあったも のてあり,また,Aか最終的に本件売買て合意された代金額を要求す ることになった根拠はE鑑定てあったところ,一般に不動産鑑定の適 否の判定は中立的な専門家の関与なしには困難てあることに照らせ は,仮に他の不動産鑑定士によってより安価な鑑定評価額か出された としても,限られた期間内の当事者同士の交渉によって売主から代金 額の大幅な引下けという譲歩を確実に引き出すことかてきたとは言 い難い。そして,本件売買に関し,Bにおいて適正価格との差額から 不法な利益を得て私利を図る目的は全くなかった。b 本件売買の代金額は,α町議会の議を得た3億円という用地購入 費の予算の枠を5000万円下回るものてあったのてあり,本件売買 により浄水場用地か確保され,浄水施設の設置なと水道事業を拡充す る第2次拡張計画の早期の実現か図られることによって,α町ないし さくら市及ひその住民全体に相応の利益か及んているということか てき,他方,Bか本件売買によって不法な利益を得たなとの事情はない。
c 本件の鑑定依頼は,Aとの交渉において,本件土地の取得価格は不動産鑑定を行ってめる旨を説して,これを実施することになった ものてあり,不動産鑑定士による鑑定評価額等の客観的な資料により, 過大補償たけてなく過小補償もないよう正当,公平に地方公共団体の 用地取得事務を行うへきことはα町においても同様てあって,専らα 町か内部的な参考資料とする目的て行われたものてはない。そのため, Bは,Aとの売買交渉の過程て本件土地の取得価格は不動産鑑定を行 ってめる旨を説していたのてあるから,鑑定結果か出れは,これ をAに示すのは当然のことてある。なお,本件においては,Aか本件 土地の売却価格を7000万円程度と考えていると述へたことか問 題となっているか,Bは,このことを聞いていないし,仮に聞いてい たとしても,Bの上記対応か適切さを欠くことにはならない。さらに,Bか株式会社Fの会長てあるGに不動産鑑定について相談 したのは,用地取得の時機を失することを危惧したためてあるし,株 式会社Fは,α町か公共事業の施行に伴う公共用地等の情報提供等に ついて協定していたα町宅地建物取引業者連絡協議会の加入会社て あり,Bは不適切な者にその相談をしたのてはない。またEは,過去 にα町から鑑定依頼をされた実績もある者てあって,不適切な不動産 鑑定士を選任したものてはない。d 以上のとおり,本件においてBの帰責性は大きいなとと評価される へき事情はない。(エ) 本件議は,本件議案の提出理由書に記載のとおり,当時の町長て あったBにとって本件土地の取得は緊急を要していて,水道事業計画の 推進のために水道事業の管理者として本件売買か必然的な選択てあっ たこと等か放棄の理由とされており,同議案に賛成した議員らの発言の中ても,同様の必要性地元住民の要望も強かったことか重視され,B か不法な利益を得たわけてはないことなとの指摘かされていることか らして,本件議か本件訴訟の第1審判(原判)の法的判断を否定 するなと不当な趣旨のものとすることはてきない。(オ) 浄水場用地の取得は,α町の水道事業に係る公益的な政策目的に沿 ってα町の執行機関てある町長か行うへき本来の責務てあるといえる ものてあり,また,本件売買の代金額は町議会の議を得た用地購入費 の予算の枠を下回っている。このような職務の遂行の過程における行為 に関し,1億数千万円の賠償責任の徴求かされた場合,執行機関の個人 責任として著しく重い責任を負うことになり,以後,執行機関において, 職務の遂行に伴い個人の資力を超える高額の賠償の負担を負う危険を 踏まえ,長期的な観点からは一定の政策目的に沿ったこのような職務の 遂行に萎縮的な影響を及ほすなとの状況か生するおそれかある。一方,Bの賠償責任には,上記(ウ)a,bのような酌むへき事情か存 しており,何よりも本件売買の代金額か適正価格を上回った原因は,主 として専門家てあるE不動産鑑定士の鑑定結果によるものてあり,Aと の交渉か折衝としての実体を有しない態様のものてあったことはない し,Bの対応にますさかあったともいえない。したかって,本件議によりBの賠償責任を免除することは,前述し た職務の遂行に萎縮的な影響を及ほす状況の回避に資することになる。(2) 被控訴人の主張
ア 議会の権利放棄の議たけては効力を生しないこと
Bに対する本件損害賠償請求権は,地方自治法149条6号によりさく ら市の執行機関か管理すへき債権てあり,その債務の免除は,同法240 条3項により,執行機関の債務者に対する意思表示によってはしめて生し るものてある。地方自治法96条1項10号は,執行機関の専断をチェックするためのものてあり,議会の債務免除の議か,執行機関の執行行為に代わって債務免除の効力を生しさせるものてはない。
イ 本件議は,実体的にも違法無効てあり,その効力はないこと(ア) 地方自治法96条1項10号,同法240条,同法施行令171条 ないし171条の7の各規定を整合的に解釈すると,地方自治法96条 1項10号の権利放棄について,野放図な自由裁量を認めす,議会の議 か公益に資するという要件を備えることを要すると考えるへきてあ る。地方公共団体の議員は,住民の代表てあり,議会は,その合議体てあ って,行政に対する監視権限をもっており,地方公共団体の議員,議会 も地方公共団体か有する債権を含む財産の維持について善管注意義務 を負っているところ,本件議は,公益性かなく,さくら市に損害を与 えるたけて,B前市長の救済を図るためのものてあるから,無効てある。(イ) 本件議案の提案理由には,本件住民訴訟の公益性を超える公益性の 存在は認められないし,むしろ提案書の記載によれは,「元町長の裁量 に不法な逸脱,濫用かみられない」,「当該用地の取得は,水道事業管 理者の裁量として必然的な選択てあった」,「元町長の判断に著しい錯 誤かみられない」なと,控訴人の主張を鵜呑みにして原審の判断を真っ 向から否定していること,差戻し前の控訴審判の言渡し期日直前に 「さくら市の損害賠償請求権に関するすへての権利を放棄するため」に 本件議の提案かされたものてあることか認められるのてあって,本件 議は,B個人の利益を図り,公の利益のための本件住民訴訟を無に帰 せしめ,且つ,裁判妨害を意図したものてあるから,地方自治の趣旨に 反し違法,無効てある。(ウ) 本件議は,市長の命を受けたさくら市建設部H部長の指導と教示 によってされたものてあり,違法かつ無効てある。ウ Bの帰責性について
(ア) Bか,平成16年3月のα町議会て浄水場用地取得に関して本件土地をその対象地としているかのような答弁をしていること,その後の 本件売買に至る経緯に鑑みれは,Bは,上記答弁をした時点て,既に関 係者との間て,本件競売物件か競落された後に売買交渉を行う密約を交 わしていた可能性か高い。そして,3億円という用地取得費の予算か非 常に高額なものてあること,BかAから売買代金として当初7000 万円の提示を受けなから,しかも,同年6月に開催された土地問題対策 会議においても本件土地について不動産鑑定をするというような話は なかったのに,Bか個人的にGを介してEに不動産鑑定を依頼し,Eか 本件土地について不当な鑑定評価をしていることに鑑みると,この不動 産鑑定は本件土地の価格吊り上けのための工作てあったと考えさるを 得ない。(イ) Bは,Eへの鑑定依頼Aに鑑定評価額を伝えることに直接的に関 わっており,上記のとおり平成16年5月にAからの本件土地売却の申 入れかある以前から,競売て競落される本件土地を買い受ける密約を, 関係者との間て交わしていた可能性か高く,Bの行為は,もは過失の 段階を超え,意識的にα町に損害を与えようとしていたと言っても過言 てはない。このようにBの帰責性は際立っており,本件議は,普通地方公共団 体の民主的かつ実効的な行政運営の確保を旨とする地方自治法の趣旨 等に照らし不合理てあって,議会の裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当た る。エ 議会運営委員会の瑕疵
(ア) さくら市議会は,平成17年4月8日,さくら市議会会議規則を制定し,また,平成24年法律第72号による改正前の地方自治法109条の2第1項の普通地方公共団体の議会は条例て議会運営委員会を置 くことかてきるとの規定を受け,さくら市議会委員会条例(平成17年 条例175号)を制定しているところ,本件議案は,その取扱いについ て,議会運営委員会に付託され,その後,議会て議された。(イ) 本件議案については,平成21年8月28日に議会運営委員会に付 託するとの議長の裁を受け,議会運営委員会委員長か,同日,各委員 に同月31日午前9時に委員会を開催する招集の通知をし,同日午前9 時にさくら市役所3階委員会室て議会運営委員会を開催した。同委員会 には,I議長か出席し,議長として,又は委員として発言している。し かし,前記改正前の地方自治法109条の2第4項3号によると,議会 運営委員会は議長の諮問した事項を審査するとなっていることから,諮 問する側の議長は委員会の委員になることはてきないし,議長か同委員 会に出席し発言することはてきるものの(同法105条),議長か委員 会に出席するには,さくら市議会会議規則108条により,委員会か委 員てない議員(議長を含む。)の出席を求めるか,委員てない議員か発 言の申し出かあった場合に委員会か許諾した場合に限られているのて あって,I議長の出席について,委員会か出席を求めた事実も,また, I議長か発言を求め,委員会かこれを許諾した事実もない。したかって,I議長の議会運営委員会への出席は,さくら市議会会議 規則に違反している。(ウ) 本件議案か付託された平成21年8月31日の議会運営委員会は, 同日午前10時8分から午前10時35分まて休憩しているか,その際, I議長らとJ市長(控訴人)とか話し合った結果,本件議案の議会への 提出採の時期について,1議会の初日,2議会の最終日,3高裁判 後の臨時議会のいすれにするかを委員会て採することとし,休憩後 の再開委員会ては,上記3案のうち本会議の初日に提出し採することをめたものてある。しかし,仮に休憩時間中てあったとしても市長か 議長議案提案者と本件議案の取扱いについて話し合うことはあって はならないことてある。本件議会運営委員会はもともと議員てないのに 出席したI議長とJ市長か主導して,定例議会の初日に本件議案を提出 し即て議することをめたものと解され,議会ての十分な審議を故 意に避けたものてあって議会の審議機能を拒絶したものてあり極めて 失当な措置てある。議会運営委員会における以上の処置はBを救済することなとを意図 したI議長とJ市長の談合による暴挙てある。オ 本件議の瑕疵 本件議は,1平成21年9月1日の市議会の初日に午後の1番目の議題とされ,僅か30分ほとて議されていること,2議会運営委員会委員 長か同年8月31日の委員会終了後,I議長に対して本件議案に関する報 告書を提出していないのは市議会会議規則101条に違反すること,3I 議長か,市議会会議規則38条1項に規定する議会運営委員会委員長の報 告少数意見者の報告をさせていないこと,4同議会ては,開議の2週間 前に議員に議案を配布しているのに,本件議案に限り9月1日の開議の直 前に配布し,議会の初日に議されていることなとから,これらは議会の 裁量権を逸脱しており,議は権利の濫用てある。第3 当裁判所の判断
1 本件の事実経過について
前記前提事実(上記補正後のもの),証拠(後掲各証拠のほか,乙14,丁 12,証人K,証人E,証人L,証人A,証人B(当審),控訴人本人(原審) 及ひ弁論の全趣旨によれは,以下の事実か認められる。(1) 平成9年度における栃木県内市町村における水道普及率の平均は91%てあったか,α町の水道普及率は74%と低く,一方,同町の同年度における水道施設の利用率は98%てあって,同施設の利用率は限界に近い状態に あった(乙35,36)。このためα町ては,平成10年,町の全域か給水 区域となる第2次水道事業拡張計画を立て,同年3月31日,栃木県知事か ら水道事業経営変更の認可を受けた(乙7)。また,α町ては,同計画を, 地方自治法2条4項の規定に基つき策定されるα町第二次総合計画(α町全 計画の基本となる計画)の基本計画として位置つけていた。なお,第2次拡 張計画策定まての町議会においては,Bか町長に就任する以前から,α町長 に対し,複数名の議員から,町内の未給水区域の解消という要請かされてい て,Bかα町助役を務めていた時期においても,議員らから,水圧の低下に より給水区域内の町民の水道利用に不便をきたしているか早急に対応てき ないか等の質問かされ,当時の町長水道課長からは,その原因か,使用水 量か増大により施設の稼働能力か限界状態にあるためてあること,その改 善策としての取水井整備第2次水道事業拡張計画を進める旨の答弁かさ れていた(乙37の1ないし8,38)。第2次拡張計画ては,事業計画完成の目標年次か平成25年度とされ,平 成12年まてに浄水場用地を確保し,平成16年度には,配水池,配水塔を 含む浄水施設を設置する予定となっていた(乙7,9)。(2) α町ては,当初,新たな浄水場の用地としては,既存のδ浄水場既設の 7か所の取水井と近接していること等の条件を満たす浄水場候補地として, 建替計画かあったε町営団地の敷地かあかったか,平成12年度まてに同建 替計画自体か頓挫し,同敷地は候補地から除外された。また,平成13年度 ころからは,α町εの民間企業の独身寮跡地かその候補地としてあかり,所 有者との交渉か行われたか,建築基準法上の規制により同土地には浄水場を 建築することかてきないことか判し,同土地も候補地から除外された。以上のとおり,第2次拡張計画に係る用地の確保は当初の予定から大幅に 遅れていたところ,α町ては,平成15年6月17日,総合計画を担当する企画課か所管課となり,水道課の主管する水道事業に関し,他の関係各課を 交えて検討するための会議てある水道事業調整会議を開催し,浄水場用地取 得問題を検討した結果,β町との合併前に何としてても浄水施設設置を着手 する必要かあるとして,今後,水道課て多くの候補地を選んた上,水道事業 調整会議町長,収入役,教育長,総務課長及ひ企画課長により組織される 庁議等て候補地の絞り込みを行っていくこととなった(乙9)。そして,同 年10月30日に開催された水道事業調整会議において,水道課から,浄水 場用地として5つの候補地か提案され,水道課は,それそれの候補地につい て工事費とその利点問題点を付した資料を提出した上,出席者による意見 交換かされた結果,水道課てさらに条件を検討し,優先順位を付けて地権者 の状況等を当たってみた後て再度会議を開くこととなった。なお,上記5つ の候補地のうちの第5案は,本件土地の隣接地てあった(甲2,乙10)。(3) 水道課は,平成15年11月ころ,上記候補地の一つ(第5案)に隣接す る本件土地を含む本件競売物件か競売手続に付されているとの情報を得た。
 そこて,水道課は,平成16年2月,競売事件の申立人てあるM銀行を介し て,本件競売物件の任意売却をする意向かあるか所有者に打診したところ, 同銀行から所有者には任意売却の意思はないとの連絡かあった。α町ては, 本件競売物件については,その権利関係か確てはなく,競落したとしても 引渡しか円滑に進むか不安かあるとの判断から,本件競売物件の競売には参 加することはしなかった。(4) 当時のα町長てあったBは,平成16年3月2日,α町議会に対し,浄 水場用地の購入費として3億円を計上した平成16年度水道事業会計予算 案を提出し,町議会はこれを議した。この浄水池用地の購入費3億円は, 上記(2)の水道事業調整会議において候補地としてあかった5箇所の土地近 辺の時価額等を勘案し,概ね1m当たり3万円を基に算出した金額てあった (乙2,10)。Bは,α町議会における同月3日のN議員からの浄水場用地取得に関する 質問に対して,設置の場所について,「一番我々か考えて可能かなと思われ るところと交渉しているところてすか,これは場所については,この場ては 差し控えさせていたたきます。」,「更地なのか,あるいは何か建物か建っ ているのかということてありますか,仮に建物,建造物かあったとしても, 購入する場合にはそういうものについては撤去してもらって,更地の状態て ないと買うことはてきません。」との答弁し,取得費については,「3億円 を計上した,我々の方はてきるたけ安く買いたい,てきるたけ議員の言われ るとおり,これは最少の経費て最大の効果,これは当然のことてありまして, 3億円あるから3億円使わなけれはならないことてはありませんから。」と の答弁をした(甲32)。(5) 平成16年当時,Aは,個人て不動産業を営んており,当初,本件競売物 件を取得して,建設業者と共同て宅地分譲をすることを計画していた。Aは, 本件競売物件に係る競売の売却手続に入札して最高価買受申出人となり,売 却許可定の後,平成16年7月5日に代金を納付して,原判別紙第1物 件目録記載1ないし11の土地(評価額2119万円)につき2165万円, 同目録記載12の土地及ひ同目録記載13の建物(評価額2404万円)に つき2300万円の売却価額によりその所有権を取得した(甲2,3,4の 1,2)。Aは,上記競売の過程て,本件競売物件の当時の所有者から,α町か本件 競売物件を水道施設用地として取得しようとしていて,銀行を通して何度か 買い受けの申出をしていたことを聞いた。そこて,Aは,開札期日の翌日て ある同年5月19日,α町役場を訪れ,水道課長に対し,本件競売物件をα 町に売却してもよい旨を申し入れた。水道課長は,突然,Aから上記のよう な申入れてあったことから,その時点てはその申入れを聞くにととめ,同日, 町長てあるBに上記申入れについて報告した。Bは,この報告を受けて,直ちに総務課長及ひ同課長補佐を同道して本件競売物件の現地を訪れ,同土地 上に砂利フラント等か存在していること周囲の状況等を確認し,同土地か 現在の水源地に近いことなと,幾つもの好条件か揃った土地てあるとの認識 を持った。Bは,水道課に対し,本件競売物件か浄水場用地として利用てき るか検討するように指示した。α町ては,第2次拡張計画か大幅に遅れてい たこと,給水区域の拡張工事か進む中,新たな浄水場か稼働しないために 現在のδ浄水場から離れた水道の末端区域において水道の水圧か下かると いった支障も生していることから,一日ても早く第2次拡張計画か完成する 必要かあったところ,その時点ては他の候補地の取得交渉もなかったことも あり,本件競売物件の取得を当面の検討事項とした。(6) Aは,平成16年5月24日,再度α町役場を訪れ,町長室において,町 長てあるB,収入役,総務課長,企画課長及ひ水道課長と面談し,改めて, 本件競売物件をα町に売却してもよい旨を申し入れ,その際,本件競売物件 を約4500万円て取得したこと,更地の売却価格として7000万円程度 を考えていること,本件競売物件の一部を前所有者に坪5万円て売るつもり てあることなとを述へた。Bは,事前に本件競売物件の現地を確認していた ことなとから,本件競売物件か浄水場用地としては諸条件を備えてはいるも のの,砂利フラント等周囲に複数の地権者か存在しており,砂利フラント 等の撤去隣地地権者との境界問題なと,その利用に当たりいくつかの支障 かあると考えていたことから,Aに対し,本件競売物件を浄水場用地として 取得するのてあれは,砂利フラント等を撤去し,周囲の地権者と境界の確定 かされるなと土地の権利関係か確にされることか前提条件になることを 説し,α町か本件競売物件を取得する場合の金額については,これまてα 町か土地を取得する場合には,不動産鑑定を行って取得価格をめているた め,本件競売物件を取得する場合も不動産鑑定を行う旨をAに伝えた。なお, α町を含む栃木県内の普通地方公共団体は,買収を予定している土地の所有者との用地交渉の際は,当該土地の代金その算定根拠を交渉相手に説することとしていた。
(7) 本件競売物件か浄水場用地として相応しいか否かを検討していたα町の水道課は,Aからの上記(6)の申入れを受けて,平成16年6月1日,これ まての関係各課に都市整備課を加えて,その検討をした結果,原判別紙第 1物件目録記載1ないし11の土地に同目録記載12の土地の一部を加え た本件土地か上記(2)の条件を満たしていること,地権者か1名てあること から効率的に取得交渉を進めることかてきることなとを考慮し,本件土地を 取得する方針て対応することをめ,翌2日,その取得の方向て更に検討し ていく旨をAに伝えた。(8) α町ては,公共用地の取得等については,関係各局課の局課長によって 構成される土地問題対策会議においてその是非を検討することとされてお り,平成16年6月3日に開催された同会議においては,本件土地を浄水場 用地として取得するか否かか付議された。同会議の席上,O企画課長から, 本件競売物件を不動産業者のAか取得して,その後α町に浄水場用地として 売却してもよい旨の申入れかAからあったこと,浄水場用地は,前年度から 候補地をあけて検討を進めてきたか,定には至っていないこと,Aは,更 地としてα町に売るとして,その価格は7000万円程度てあり,隣接する 土地を坪5万円て前所有者に売るつもりてあると述へていることなとの説 かあり,意見交換質疑等か行われた後,本件土地か浄水場用地として適 していることか確認され,価格の調整地質の調査等は必要てあるものの, 本件土地の取得に向けて水道課において検討を進めることとし,価格等か判 したら同会議を開いて再度検討することとなった(甲9)。(9) 上記の土地問題対策会議における検討を踏まえ,α町ては,本件土地の 適正価格を判断するための資料とするため,不動産鑑定士に鑑定を依頼する こととした。しかし,本件土地の取得を担当する水道課職員は,それまて用地取得を担当したこと自体かなく,不動産鑑定評価を鑑定士に依頼した経験 もなかったため,その実施に手間取っていた。一方,α町は,β町との合併に向けた合併協定書の調印を平成16年7月 25日に控えていたところ,当初の第2次拡張計画によれは,平成16年度 には配水池,配水塔を含む浄水施設か設置されている予定てあったのに,未 た浄水場用地の確保すらてきていないこと,β町との合併前に浄水場の建 設か定していないと,合併後に改めて浄水場の建設について審議し直さな けれはならなくなるといった懸念かあったことから,β町との合併前に,少 なくとも浄水池用地を確保し,浄水場施設建設の足掛かりを付けておく必要 かあった(乙9,13)。なお,当時のα町の水道普及率は,β町を含めた 隣接市町の水道普及率か90%を超える中,78%と低く,一方,水道施設 の利用率は最大て120%を超え,断水の危険等もあった(乙25,39, 40)。ところか,上記のとおり,本件土地の取得価格を判断するための資料てあ る不動産鑑定士による鑑定の実施か手間取っていたことから,Bは,平成1 6年7月ころ,独自の判断て,単身,友人てあるGか会長を務める株式会社 Fの事務所に出向き,Gに対し,本件土地の不動産鑑定を実施したいと考え ている旨を伝え,Gから,その不動産鑑定士としてEを推薦された。なお, α町ては,平成11年度からα町宅地建物取引業者連合協議会と公共事業の 施行に伴う公共用地等の情報提供及ひ媒介に関する協定を締結しており(乙 32),この協定は,α町か事業を行うにあたって用地の取得か必要となる 場合,α町に所在する不動産業者から広く情報の提供を受け,適切な用地の 確保かてきるように締結されたものて,株式会社Fも同協議会に加入する宅 地建物取引業者として,α町に同協議会を通し公共用地の情報提供媒介を 行っていて,α町て実施した区画整理事業において,難航していた用地交渉 においてGから援助を受けたこともあった。Bは,α町の水道課職員に対し,Gを通してEに本件土地の不動産鑑定を 引き受けてもらえるか打診している旨を伝え,その後の選任の事務手続を迅 速に進めるよう指示し,その後,Eから不動産鑑定を引き受ける旨の回答を 得たことから,α町は,平成16年7月6日,Eに対し,本件土地の不動産 鑑定を依頼した。(10) Eは,同年8月10日,本件土地の価格を2億7390万円(1m当た り3万3300円,地積8225.12mとして算定したもの)とする不動 産鑑定評価書(乙11)をα町に提出した。このE鑑定は,約195mない し272mのほほ整形の住宅地を取引事例比較法の対象とし,347mのほ ほ正方形の住宅地に係る公示価格を参考として標準価格を設定したものて ある(E鑑定の内容の詳細は,原判「事実及ひ理由」欄の第3,1(11)イ に記載のとおりてあるから,これを引用する。)。(11) Bは,E鑑定に係る鑑定書を確認したか,Aの取得価額か競売手続によ る価額てあること,本件土地をα町か取得するに当たっては,Aにおいて, 本件土地に存していた砂利フラント等を撤去して更地の状態に造成し,周囲 の地権者との境界問題を解するなと作業をする必要かあること,本件土 地付近の土地の固定資産税路線価との比較なとから,Aか競売により本件土 地を取得した約4500万円の金額とE鑑定における評価額に大きな開き かあることについて格別疑問を持たす,E鑑定における鑑定評価額を本件土 地の適正価格てあると考えた。そこて,Bは,平成16年8月11日,α町 役場の町長室において,関係部署の職員とともにAと面談し,同人に対し, 本件土地の鑑定評価額か2億7390万円てあったことを伝えるとともに, α町としては,適正な値段て本件土地を取得しなけれはならないと考える一 方,てきるたけ低額て取得したいとの希望もある旨を伝えた。Aは,翌12日,E鑑定を踏まえて,α町に対し,本件土地の代金として 2億6500万円を提示した。(12) α町は,平成16年8月18日,土地問題対策会議を開催し,本件土地 を浄水場用地として取得する件について審議した。その席上,K水道課長か E鑑定の鑑定評価額及ひAから提示された代金額等を報告したところ,以前 に報告された7000万円程度という価格と異なる理由についての質問, 交渉てもう少し下かるのてはないかという意見もあったか,最終的に,同会 議ては本件土地を取得する方向て進めることて異議かないという結論か出 された(乙10)。また,α町は,同日,庁議を開催し,Aか提示した2億6500万円て本 件土地を取得するという方針をめ,併せて,本件土地取得に関して,町議 会の全員協議会に報告することも定した。(13) その後,Aによる本件土地の測量の結果,実測面積(8091.57m) か公簿面積(8659.09m)よりも567.52m少ないことか判し たことなとから,α町は,Aとの間て,本件土地の価格を2億6000万円 程度とするよう交渉を進めた。(14) Bは,平成16年8月31日,全員協議会において,本件土地について, E鑑定の鑑定評価額,Aから提示された代金額,Aか競落した価格等を報告 したところ,出席議員からは,鑑定評価額に妥当性はあるのか,近傍に比較 すると高すきるのてはないか,このような金額ては町民は理解てきないのて はないか,不動産鑑定は一人によるものか,金額等について再度検討いた い,今回の経緯をふまえてAと協議してはとうか,ためなら断るしかないな との意見質問か出された。これに対し,Bは,回答か遅れれは売買自体の 成立か難しくなるなとと回答したか,これらの質疑応答の結果,Bか再度交 渉して,その結果を全員協議会に報告することとなった(甲7)。(15) Bは,平成16年9月1日,再度,Aと本件土地の価格交渉を行ったと ころ,Aから2億5000万円の提示を受けた。Bは,同月6日に開催された全員協議会において,本件土地を代金2億5000万円て取得する方針てあることを報告したところ,議員からは,坪当 たり10万円の価格は住民に受け入れられるのかとの意見か出される一方 て,不動産鑑定士か鑑定した価格てあれはむを得ないのてはないか等の意 見も出され,Bは,時期的な問題もあるのてこの価格て契約させてもらいた いと述へた。その後,議員の一人か,Aと別途自ら交渉したい旨の申入れか あったことから,Bはこれを了承したか,後日,同議員から代金額を下ける ことはてきなかった旨の報告かあった(甲8)。(16) Bは,平成16年9月21日,α町を代表して,Aとの間て,本件土地 を代金2億5000万円て購入する旨の売買契約(本件売買)を締結した(乙 1。この契約を締結した行為を以下「本件契約締結行為」という。)。(17) E鑑定については,その後,被控訴人からのE鑑定は不当てある旨の申 出を受けた社団法人P協会か,平成20年3月18日,E鑑定は,対象土地 についての確認調査を怠ったうえ,条件設定の妥当性を無視した評価て,価 格形成要因の分析における必要な減価修正についても十分な検討か行われ たものとは言い難い極めて杜撰なものてあり,不動産鑑定評価基準を違反し, 専門職業家としての倫理規定遵守義務に違反した不当鑑定てあるとの理由 て,Eに対し,6か月間の会員権停止処分をした(甲16,17)。(18) さくら市議会においては,平成21年9月1日,本件議案を賛成16, 反対5の賛成多数て本件議をした。本件議案の提案理由書には,Bには裁量の逸脱,濫用かみられす,さくら 市のBに対する損害賠償請求に係る全ての権利を放棄するため議案を提出 するものてあり,原審における認定の基礎とされたC鑑定の内容は,固定資 産評価額等と著しくかけ離れている一方,本件売買の代金額は,固定資産評 価額とも著しい差はなく,結果として取引において成立すると認められる正 常価格に近いものとなっていること,水道普及率か近隣の市町村は90%を 超える中てα町は70%台と低く,水道施設の利用率も120%を超えて断水の危険等もあり,住民からも第2次拡張計画の推進を求める要望か出るな と浄水場の建設は緊急を要するという状況の下て,浄水場用地としての本件 土地の取得は水道事業の管理者として必然的な選択てあったこと等に鑑み れは,Bの判断に著しい錯誤はみられす,水道の事業計画の推進に必然的な 土地の取得てあったことを考慮して,Bに対する上記の権利を放棄すること は当然の帰結てある旨の提案者の意見か記載されていた(乙25)。また,市議会ての上記討論において本件議案に賛成した議員らは,その理 由につき,本件土地の適正価格の点以外にも,浄水場の建設は緊急を要して おり浄水場用地として本件土地を取得する必要性は高く,地元住民の要望も 強かったことを重視するとともに,その方針に関しては全員協議会ての議論 を経ていたこと,Bか不法な利益を得たわけてはないこと,本件土地上に浄 水場を建設することは工事費か他の土地上の建設よりも安くなる可能性か あることなとを考慮すへきてある旨を述へていた(乙27)。なお,本件議に至るまての経緯は以下のとおりてある。すなわち,ア 被控訴人代理人らは,平成21年7月28日,さくら市長,さくら市議 会議長及ひさくら市議会各議員宛に,「B前市長,J現市長に繋かる一部 の市民か,さくら市のB前市長に対する本件損害賠償請求権を放棄する議 を求める「嘆書」の署名を集め,同書をさくら市議会に提出し,市議 会をして請求権の放棄をさせようとしているか,行政の非違の最終的判断 は,司法の専権事項てあって,議会行政の長か,現に司法の判断の手続 に入った案件について,判を回避し,それを妨害するため,請求権の放 棄を議することは越権てあり,かつ違法てある。上記嘆書か議会に提出されても,請求権の放棄という違法な暴挙をしないことを強く要請す る。」という趣旨の要請書(乙22)を提出し,同書は,同年8月11日 のさくら市議会の全員協議会て報告された。イ 一方,Qは,同年8月18日,さくら市議会議長宛に,「本件は,市の損害と認めるへき証拠根拠かあるとは言い難く,土地購入も適正な時価 て行われており,裁量権の逸脱,濫用したものてはなく,α町長当時の判 断に間違いはみられないはかりか,水道事業計画推進に必要てあったこと に鑑みれは,権利放棄こそ,前市長の重荷を解放する手段てあり,地方自 治法96条1項10号の規定により議会の権利の放棄を求めて,署名活動 を行ったものてある。」との嘆書(乙23)を1658名の署名を添え て提出し,同書面は,同月21日のさくら市議会の全員協議会て報告され た。ウ 被控訴人代理人は,同年8月26日,さくら市議会議長宛に,「最近に なって,一部の住民からさくら市に対し,宇都宮地裁かB旧α町長に1億 2000万円の支払を命した判に関して,請求権の放棄を求める嘆書 か提出され,現在,その是非について市議会の審議か予定されているか, 議会は,市民のために厳しくチェックする機関てあるにもかかわらす,こ のような不当な放棄をすれは,住民のか反映されないはかりか,住民訴 訟そのものを否定してしまうことになるのて,上記請求権の放棄を求める 嘆書を議会に取り上けないことを強く要望する。」との陳情書(乙24) を提出し,同書は,同月31日のさくら市議会の全員協議会て報告された。エ さくら市議会議員Rほかは,同年8月28日,さくら市議会議長に対し, 同年9月1日から開催される市議会(平成21年第3回定例議会)におい て,本件訴訟の対象となっている損害賠償請求権の放棄の議案を,議案内 容を示し提出したい旨を通知し,同年8月31日の議会運営委員会におい て,議案を同年9月1日の本会議において審議することを定した(甲3 8の1ないし3)。オ 上記経緯を経て,さくら市議会は,同年9月1日,本件議をした。
 (19) 本件訴訟における差戻し前の控訴審は,本件における口頭弁論を平成2 1年7月14日に終結し,判言渡日を同年9月29日と指定したか,同年9月1日,控訴人から口頭弁論の再開の申立てかされたことから,同月15 日,口頭弁論を再開する定をし,同年10月29日の口頭弁論期日におい て,控訴人から本件議によって本件に係る損害賠償請求権か消滅した旨の 主張かされ,再度口頭弁論を終結した。2 Bの損害賠償責任について
(1) α町あるいはこれを承継したさくら市に対する損害賠償責任かBに生していた点についての判断は,次のとおり補正するほかは,原判「事実及ひ 理由」欄の第3,2に記載のとおりてあるから,これを引用する。ア 25頁22行目の「平成16年当時,」の次に「β町との合併か平成1 7年3月28日に控えていたこともあり,」を加え,25行目の「前記1 (8)」を「前記1(7)」に改める。イ 29頁19行目から21行目まてを次のとおり改める。
ウ しかも,本件競売事件における本件競売物件の評価額は,本件競 売物件1ないし11の土地か2119万円,本件競売物件12の土 地及ひ本件競売建物か2404万円の合計4523万円てあり,建物そのものの評価額及ひ本件土地に含まれない12の土地の一部 を除いて,本件土地に対応する評価額を計算すると3889万円と なる(甲3)ところ,この評価額は,競売という特殊な市場ての評 価を得るための競売市場減価かされているのて,減価される前の評 価額を評価書にしたかって求めると7189万円となり,また,上 記(15)のとおり,Aは,本件土地に含まれない本件競売物件12の 土地の一部及ひその上の本件競売建物を,他に売却しているか,そ の際の売買価格は,建物は0円,土地は500万円てあり,土地1 m当たりの価格は1万2081円てある。そうすると,E鑑定の評価額は,これら競売における評価額競 落後実際に売買された額とかけ離れた額てあり,その鑑定の内容についても上記ア(原判引用部分)に指摘したように多くの問題的 かある上,基本的な調査か不十分てあり,現に,財団法人P協会は, E鑑定について,対象土地についての確認調査を怠ったうえ,条件 設定の妥当性を無視した評価て,価格形成要因の分析における必要 な減価修正についても十分な検討か行われたものとは言い難い極 めて杜撰なものてあり,不動産鑑定評価基準を違反し,専門職業家 としての倫理規定遵守義務に違反した不当鑑定てあるとの理由て, Eに対し6か月間の会員権停止処分をしていることからしても,E 鑑定の結果をもって本件土地の適正価格と認めることはてきない。ウ 33頁7行目の「そのような事実を裏付ける的確な証拠はない。」を「本 件土地の種別は宅地見込地てあるから,宅地見込地としての評価の参考に するとの観点からすると,取引事例とする土地か農地てあるか否かは重要 てはなく,宅地にするのにとの程度の難易度かあるのかか問題てあって, C鑑定士は,証人尋問において,田たから畑たから山たからということて はなく,出来上かりの宅地ととのくらいの開差かあるかという観点て見る 旨述へていて評価の方法として妥当なものと認められるから,農地を取引 事例とすることか不適切てあるとの控訴人の主張は採用てきない。」に改 める。エ 33頁9行目の「当該基準」から11行目末尾まてを「C鑑定において は,本件土地か宅地見込地てあるため,宅地見込地てある「γ-1」の土 地を基準値として用いたものてあり(証人C),これを適切てはないとす る控訴人の主張は採用てきない。」に改める。オ 33頁15行目の「しかし,」から18行目末尾まてを「しかし,C鑑 定における開発法の試算は,1区画平均230mの戸建専用住宅敷地を2 6区画分譲する場合の開発を想定して,宅地造成工事費1億0281万4 000円(1m当たり1万2500円)を計上しているものてあり,その単価は類似の造成工事費を参考として査定されており(甲6の別表4), これを過大てあるとする事情はうかかわれないから,上記控訴人の主張は 採用てきない。さらに,控訴人は,C鑑定の結果か近隣土地の路線価と乖離していて信 用てきない旨主張するか,路線価は,国税庁によって市街地的形態を形成 する地域にある宅地を路線価方式て評価するものてあり,宅地見込地の評 価てはないから,宅地見込地として評価しているC鑑定による鑑定評価額 か近隣土地の路線価と乖離しているからといって,その鑑定か不適切てあ るということにはならす,控訴人の上記主張は採用てきない。」に改める。カ 34頁1行目の次に,次のとおり加える。
 なお,控訴人は,この点について,AとDとは特別の事情かあったために,破格に低額の1m当たり1万2081円て土地の売却か されたものてあり,この売買代金を根拠にC鑑定の評価額か適正て あるとすることはてきない旨主張するか,AのDへの売却価額か破 格に低額てあることを認めるに足りる的確な証拠は存在しないか ら,控訴人の上記主張は採用てきない。キ 34頁17行目の「前記1(8)」を「前記1(6)」に,26行目の「前記 1(15),甲7」を「前記1(14)」に改める。ク 36頁8行目の「これに対し,」の次に「控訴人は,競売における売却 価額は適正価格を考える上て参考にならないから,Bか本件競売物件か約 4500万円て売却されたことを把握していても,そのことはBか裁量を 逸脱,濫用したことの根拠とならない旨主張する。しかし,競売による売却価額は,競売という特殊な市場て形成される価 格てあるから,その価格をもって,直ちに通常の市場て形成される適正価 格と扱うことかてきないとはいえるものの,競売にあたって売却基準価額 を定めるための評価額を求める場合,一般に,通常の市場において形成される額を求めた上て,競売市場減価をして評価額を求めていることからも らかなように,売却価額は,競売における評価額に基つき定められた売 却基準価額を前提とした競争入札の過程を経て形成されるのてあり,通常 の市場て形成される適正価格と相応に関連しているということかてきる から,売却価額か適正価格を考える上て参考にならないとする控訴人の主 張は採用の限りてない。そして,約4500万円て売却された物件につい て,競落後1か月もたたない時点て,2億7390万円の鑑定評価かされ たのてあるから,競売による売却価額を把握している者としては,鑑定評 価額について疑問を抱いてしかるへきてある。また,」を加える。
ケ 37頁10行目の次に,次のとおり加える。
さらに,控訴人は,平成16年8月31日の全員協議会て価格に ついて多くの議員から疑問か出されたか,その後の同年9月6日の 全員協議会ては根本的な見直しを求めるような状況てはなかった から,鑑定を見直すへき事情かあったとはいえない旨主張する。しかし,同年8月31日の全員協議会の状況は上記1(14)のとお りてあり,出席議員からは,鑑定評価額に妥当性はあるのか,近傍 に比較すると高すきるのてはないか,このような金額ては町民は理 解てきないのてはないか,不動産鑑定は一人によるものか,金額等 について再度検討いたい,今回の経緯を踏まえてAと協議しては とうか,ためなら断るしかないなとの意見質問か出されたのてあ り,これらの意見質問を踏まえれは,Bにおいても,当然,鑑定 について再検討すへきてあって,その後の全員協議会において根本 的な見直しか求められなかったからといって,再検討しなかったこ とか正当化されるものてはなく,控訴人の上記主張は採用てきない。さらに,控訴人は,不動産鑑定士てあるEは,その鑑定結果か適正てあると認識しているのてあるから,Bか直接Eに説を求めて いないことは不適切てあったとはいえない旨主張するか,E鑑定の 鑑定評価額か,競売による売却価額の約6.1倍,当初Aか提示し た代金額の約3.9倍もの高額になっていることから,Bとしては, その理由について,E鑑定においてその理由か合理的に説されて いるかを検討するに当たり,Eに直接説を求める必要かあったと いえるのてあり,上記の事情によれは,Bに不動産鑑定に関する専 門的な知見かないとしても,E鑑定の鑑定評価額に疑問を抱いてし かるへきてあり,最終的にその適否を判断するに当たっては,他の 鑑定士に鑑定を依頼するなと,専門知識を有する者を活用すること は十分に可能てあったといえる。控訴人の主張は,採用することか てきない。(2) 以上のとおり,本件においては,α町か本件土地を取得する必要性は認め られるものの,本件売買の代金額は高額に過きるため,違法な財務会計行為 てある本件契約締結行為により適正価格との差額相当額の損害かα町に生 しており,そのことについてBには過失かあるというへきてあるから,Bは α町に対し,その損害賠償責任を負うことになる。3 本件議の効力について
(1) 地方自治法96条1項10号は,普通地方公共団体の議会の議事項として,「法律若しくはこれに基つく政令又は条例に特別の定めかある場合を除 くほか,権利を放棄すること」を定めているか,この「特別の定め」の例と しては,普通地方公共団体の長はその債権に係る債務者か無資力又はこれに 近い状態等にあるときて一定の要件を満たす場合にはその議会の議を経 ることなくその債権の放棄としての債務の免除をすることかてきる旨の同 法240条3項,地方自治法施行令171条の7の規定等かある。他方,普 通地方公共団体の議会の議を経た上てその長か債権の放棄をする場合におけるその放棄の実体的要件については,同法その他の法令においてこれを 制限する規定は存しない。したかって,地方自治法においては,普通地方公共団体かその債権の放棄 をするに当たって,その議会の議及ひ長の執行行為(条例による場合は, その公布)という手続的要件を満たしている限り,その適否の実体的判断に ついては,住民による直接の選挙を通して選出された議員により構成される 普通地方公共団体の議機関てある議会の裁量権に基本的に委ねられてい るというへきてある。もっとも,同法において,普通地方公共団体の執行機 関又は職員による公金の支出等の財務会計行為又は怠る事実に係る違法事 由の有無及ひその是正の要否等につき住民の関与する裁判手続による審査 等を目的として住民訴訟制度か設けられているところ,住民訴訟の対象とさ れている損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を放棄する旨の議かさ れた場合についてみると,このような請求権か認められる場合は様々てあり, 個々の事案ことに,当該請求権の発生原因てある財務会計行為等の性質,内 容,原因,経緯及ひ影響,当該議の趣旨及ひ経緯,当該請求権の放棄又は 行使の影響,住民訴訟の係属の有無及ひ経緯,事後の状況その他の諸般の事 情を総合考慮して,これを放棄することか普通地方公共団体の民主的かつ実 効的な行政運営の確保を旨とする同法の趣旨等に照らして不合理てあって 上記の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たると認められるときは,その 議は違法となり,当該放棄は無効となるものと解するのか相当てある。そ して,当該公金の支出等の財務会計行為等の性質,内容等については,その 違法事由の性格当該職員又は当該支出等を受けた者の帰責性等か考慮の 対象とされるへきものと解される。(2) そこて,これを本件議についてみると,以下のとおりいうことかてき る。ア ます,本件土地は,上記2(補正後の原判引用部分)のとおり,浄水場用地としての条件に適合しており,地権者も1名て交渉か容易てあった ことなとから,α町においてこれを浄水場用地として取得する必要性か認 められるものてあって,本件契約締結行為の違法事由は専らその売買代金 か高額に過きた点にあるものてある。そして,その当時のα町においては, 第2次拡張計画に基つく用地取得の予定時期を大幅に遅れている状況に あったところ,水道事業の管理者てあったBは,用地取得の早急な実現に 向けて努力すへき立場にあったものてあり,他に適当な候補地か見当たら ない中て,本件土地の所有者かα町に対し売却の意向を示していたのてあ るから,仮に,代金額に係る交渉を不調として本件土地の取得を断念する ならは,用地取得の予定時期を既に数年過きて遅れていた浄水施設の設置 なと第2次拡張計画の実現か更に遅れることになり,α町及ひその住民全 体の利益に反する結果となる状況にあったものといえる。また,本件土地 の売主てあるAか最終的に本件売買て合意された代金額を要求すること になった根拠は,α町か依頼した不動産鑑定士による鑑定結果(E鑑定) てあったところ,一般に不動産鑑定の適否の判定は中立的な専門家の関与 なしには困難てあることに照らせは,仮にα町か依頼した他の不動産鑑定 士によってより安価な鑑定評価額か出されたとしても,限られた期間内の 当事者同士の交渉によって売主から代金額の大幅な引下けという譲歩を 確実に引き出すことかてきたとは言い難い。そして,BによるAとの本件 土地取得のための交渉は,E鑑定の内容をAに開示した結果,その鑑定評 価額を前提として,そこからとの程度減額した金額を代金額とするかとい う交渉となったのてあり,前記1(5)から(16)まて認定の経緯に照らして も,それか折衝としての実体を有しない態様のものてあったとはいえない。
 また,本件売買に関し,Bにおいて適正価格との差額から不法な利益を得 て私利を図る目的かあったなとの事情については,本件全証拠によるもこ れを認めるに足りない。イ 本件売買における代金額は,α町議会の議を得た3億円という用地購 入費の予算の枠を5000万円下回るものてあったのてあり,本件売買に より浄水場用地か確保され,浄水施設の設置なと水道事業を拡充する第2 次拡張計画の早期の実現か図られることによって,α町ないしさくら市及 ひその住民全体に相応の利益か及んているということもてきる一方,Bか 本件売買によって不法な利益を得たなとの事情は,本件全証拠によるもこ れを認めるに足りない。ウ ところて,土地収用法その他の法律により土地等を収用し,又は使用す ることかてきる事業に必要な土地等の取得又は土地等の使用に伴う損失 補償の基準として制定された「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱 (昭和37年6月29日閣議定)」(甲11。以下「損失補償基準要綱」 という。)は,公共事業等の起業者かその事業に必要な土地等を私法上の 契約によって取得するいわゆる任意取得の場合てあっても,起業者におい ていたすらに,資金面の制約,工期の切迫,交渉上の駆引きその他の理由 から,収用の場合における補償額に比して過大あるいは過小の価額を提示 するのは相当てはなく,収用の場合における補償額と同様,常に正当,公 正なものてあるへきてあるとの考えに基ついて制定されていることから すると,国地方公共団体は,公共事業の用地取得事務の遂行に当たって は,このような視点に基つき,損失補償基準要綱に沿って正当な補償額を 算定し,これを相手方に提示して任意交渉を進めていくへきといえる。そ して,損失補償基準要綱は,土地の補償額について,「正常な取引価格」 をもって補償するものと定めているところ,栃木県地方用地対策連絡協議 会においては,この「正常な取引価格」を「周辺土地の取引事例価格,地 価公示価格,地価調査価格,不動産鑑定士による土地鑑定評価額等」を参 考に算定するとともに,用地交渉においては,その算定根拠を権利者に説 すへきものとしている。α町を含む栃木県内の普通地方公共団体か用地交渉にあたり以上のような姿勢をとっていたことは前記認定のとおりて ある。そして,Bは,前記認定のとおり,本件土地取得に係るAとの交渉にお いて,本件土地の取得価格は不動産鑑定を行ってめる旨を説し,α町 においては本件の鑑定依頼をしたものてあることからすると,本件の鑑定 依頼は,鑑定結果を専ら内部的な参考資料とする目的て行われたのてはな く,α町かAと用地交渉をするに当たり,本件土地の適正価格を把握し, 交渉の場面てAにもその根拠等を説するための資料とするために行わ れたと認められる。被控訴人は,平成16年3月のα町議会て浄水場用地取得に関して本件 土地をその対象地としているかのような答弁をしていることなとから,上 記答弁をした時点て,既に関係者との間て,本件競売物件か競落された後 に売買交渉を行う密約か交わされていた可能性か高い旨主張するか,この 時点ては未た誰か本件競売物件の競落人になるかは不な状態てあるこ とからすれは,被控訴人主張のような密約か交わされたと解することはて きない。被控訴人の主張は憶測の域を出るものてはなく,そのような密約 の存在を推認させるような事実ないし事情は,本件全証拠によるもこれを 認めるに足りない。また,被控訴人は,本件の鑑定依頼について,本件土 地の価格吊り上けのための工作てあったと考えさるを得ない旨主張する か,本件の鑑定依頼かされた経緯は前示のとおりてあり,Bか本件売買に よって不法な利益を得ることを意図したり,利益を得たとは認められない ことなとからして,Bに本件土地の価格を吊り上けるための工作をする理 由はなく,結局のところ,被控訴人の主張は,これを証拠上認めることか てきない。確かに,本件の鑑定依頼に関し,町長てあるBか関係部署の職員を同道 しないてGか経営する会社事務所に出向き,Gと個人的に不動産鑑定士の推薦等の相談をしたという点は不可解な行動といわさる得ないか,平成1 6年6月3日開催の土地問題対策会議において,本件土地の取得に向けて 水道課において検討を進めることとし,価格等か判したら同会議を開い て再度検討するという結論に至りなから,その後,水道課において,その 検討を進めていたことをうかかわせるような事実ないし事情を認めるに 足りる証拠はなく,しかも,同会議の時点ては既にAから7000万円の 代金か提示されていた状況において,「価格等」か判したら再度検討す るとされていたことからすると,この「価格等」とは本件土地の適正と考 えられるような価格を意味するものと解せられる。そうすると,同会議の 会議録(甲9)には記載かないものの,同会議において本件土地について 不動産鑑定を行うことなと,本件土地の適正な価格を把握するための手段 等か話題となっていたとしても不自然てはなく,浄水場用地の取得か当時 のα町における緊急の課題てあったことからすると,水道事業の管理者て あったBか,自ら伝手を頼って本件の鑑定依頼に方向性をつける行動をと ったことには相応の合理的な理由かあったというへきてある。しかも,G か会長を務める株式会社Fは,α町か公共事業の施行に伴う公共用地等の 情報提供等について協定を締結していたα町宅地建物取引業者連絡協議 会の加入会社てあることからすれは,その時点においては,Bは本件の鑑 定依頼について不適切な者に相談したものとまてはいえないし,Eか本件 土地について不当鑑定をする可能性かあると判断てきるような資料かB にもたらされていたといった事情かあったともいえない。さらに,Aか本件土地の代金として新たに2億6500万円を提示して きたのは,Aとの交渉の過程てBかE鑑定における鑑定評価をAに開示し たことによるものといえるか,その開示は,Bとしては,E鑑定における 鑑定評価を本件土地の適正な価格てあると認識していたことを前提とし ていて軽率のそしりを免れないものの,前示の地方公共団体における公共用地取得の手続に則ったものといえる。 以上を総合すると,本件売買における代金額か高額に過きる結果に至った経緯について,Bの帰責性の程度は,小さいとはいえないとしても,B にとって酌むへき相応の事情も認められるから,大きいとまてはいえす, 相応の程度にととまっていると評価すへきある。(3) そして,以上を前提として,本件議の趣旨及ひ経緯について検討すると, 本件議案の提案理由書には,本件訴訟の第1審判(原判)における本件 土地の適正価格の認定の基礎とされたC鑑定書の内容を論難する記載かあ る一方て,当時のα町長てあったBにとって本件土地の取得は緊急を要して いて,水道の事業計画の推進のために水道事業の管理者として必然的な選択 てあったこと等か放棄の理由として記載されており,同議案に賛成した議員 らの発言の中ても,浄水場の建設は緊急を要していて浄水場用地として本件 土地を取得する必要性は高く地元住民の要望も強かったことを重視し,Bか 不法な利益を得たわけてはないなとか指摘されている。そして,このような 市議会における審議を経た議の経緯等に照らすと,本件議について,上 記提案理由書の一部に第1審判か採用したC鑑定を論難するような記載 かあるものの,提案理由書全体をみれは,その記載は,放棄議の提案理由 を強調し訴える政治的な表現とみる余地か十分あり,提案理由書の内容の一 部てあるその記載を直ちに議の趣旨と同視することも適当てはないとい えるのてあって,提案理由書の一部に上記のような記載かあるからといって, これを本件訴訟の第1審判の法的判断を否定する趣旨のものとは解する ことはてきない。また,さくら市のBに対する損害賠償請求権の放棄又は行 使の影響についてみると,浄水場用地の取得は,α町の水道事業に係る公益 的な政策目的に沿って同町の執行機関てある町長か行うへき本来の責務と して行う職務の遂行てあるといえるし,本件売買の代金額は町議会の議を 得た用地購入費の予算の枠を下回るものてあったところ,このような職務の遂行の過程における行為に関し,損害賠償請求権か行使されることにより直 ちに1億数千万円の損害賠償責任の徴求かされ,執行機関か著しく重い個人 責任の負担を負うことになった場合には,以後,執行機関においては,職務 の遂行に伴い個人の資力を超える高額の賠償の負担を負う危険を避けよう として,長期的な観点から一定の政策目的に沿ったそのような危険を伴う職 務の遂行に萎縮的な影響か及ふなとの状況か生するおそれもあり,上記の賠 償責任につき一定の酌むへき事情か存するのてあれは,その限りにおいて議 会の議を経て全部又は一部の免責かされることは,そのような状況を回避 することに資する面もあるということもてきる。以上を総合すると,本件議 は,本件鑑定評価額に基つき高額に過きる代金額て売買契約を締結するに 至ったことにつき,Bか,α町に多額の損害を与えた一方て,水道事業の管 理者として地元住民の要望も強く緊急に必要とされた浄水場用地を取得し, 自らか不法な利益を得たわけてはない等の指摘かされる中てされたものて あり,Bの賠償責任を何ら合理的な理由もなく免れさせたことを企図したも のてないということかてきる。なお,本件議は,控訴人の第1審(原審)ての敗訴を経て,差戻し前の 控訴審の判言渡期日の直前にされたものてあるか,本件議の適法性に関 しては,住民訴訟の経緯当該議の趣旨及ひ経緯を含めた諸般の事情を総 合考慮して裁判所かその審査及ひ判断を行うのてあるから,第1審判か請 求を認容した後の上記請求権の放棄を内容とする本件議によって,裁判所 における審理及ひ判断か妨けられるといった事情は存在していないし,また, 市議会の判断を裁判所の判断に優先させるということにもならないのてあ って,さらに,本件議か主として住民訴訟制度における地方公共団体の財 務会計行為の適否等の審査を回避し,制度の機能を否定する目的てされたこ とを基礎つけるような事情については,本件全証拠によるもこれを認めるに 足りない。本件議かB個人の利益を図り,公の利益のための本件の住民訴訟を無に帰せしめ,かつ,裁判妨害を意図したものてあるから,地方自治の趣旨に反し違法,無効てあるとする被控訴人の主張は採用てきない。(4) 以上の検討によれは,本件議は,普通地方公共団体の民主的かつ実効的な行政運営の確保を旨とする地方自治法の趣旨等に照らして不合理てあっ て議会の裁量権の逸脱又はその濫用に当たるものとは認められないという へきてある。(5) 被控訴人は,Bに対する本件損害賠償請求権は,本件議たけては効力を 生しない旨主張するか,前記前提事実(10)のとおり,本件議の後,さくら 市長は,これを受けて,Bに対し,本件議の事実と権利放棄の事実を記載 した文書を送付し,この文書はBに到達しているのてあるから,Bに対する 権利放棄の効力は生しているというへきてある。また,被控訴人は,本件議に関し,議会運営委員会における審査手続 市議会における手続等に上記第2,6(2)エ及ひオのとおり瑕疵かあった旨 主張するところ,確かに,証拠(甲31,38の1ないし3,39)によれ は,本件議に係る議会運営委員会及ひ市議会における手続等に被控訴人主 張のような事実関係かあったことは認められるものの,これらの事実関係は 本件議の効力に影響を及ほすものとはならない。(6) 以上の次第てあるから,本件議は有効てあり,これに基つく控訴人の執 行手続を経たことにより,さくら市のBに対する本件損害賠償請求権は消滅 したというへきてある。4 したかって,控訴人に対しBに対する損害賠償請求の義務付けを求める被控 訴人の請求は理由かない。よって,上記請求を認容した部分の原判は,その後にされた本件議によ り不当となったから,原判のうち控訴人敗訴部分を取り消し,この取消部分 に係る被控訴人の請求を棄却することとして,主文のとおり判する。東京高等裁判所第24民事部
裁判長裁判官 三輪和雄
裁判官 松 村 徹
裁判官小池喜彦は,差支えのため,署名押印することかてきない。裁判長裁判官 三輪和雄
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