平成25年5月29日判言渡 平成24年(行コ)第421号所得税更正処分取消請求控訴事件主文
 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は,控訴人の負担とする。
 事実及ひ理由
第1 控訴の趣旨
1 原判を取り消す。
2 被控訴人の請求をいすれも棄却する。
3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
第2 事案の概要等
1 事案の概要
本件は,シンカホール共和国(以下「シンカホール」という。)において設 立されたA PTE LTD(以下「A社」という。)の発行済株式総数7800 株のうち7799株を保有する被控訴人か,甲府税務署長から,A社は租税特 別措置法(以下「措置法」という。)40条の4第1項に規定する特定外国子 会社等に該当し,外国子会社合算税制の適用かあるとして,A社の課税対象留 保金額に相当する金額を被控訴人の雑所得の総収入金額に算入することを前提 に,平成16年分から平成18年分まて(以下「本件各係争年分」という。) の各所得税の更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及ひ過少申告加算 税賦課定処分(以下「本件各賦課定処分」といい,本件各更正処分と併せ て「本件各処分」という。)を受けたため,A社は外国子会社合算税制の適用 除外要件を満たすから,本件各処分は違法てあると主張して,控訴人に対し, 本件各更正処分(たたし,被控訴人主張の総所得金額及ひ納付すへき税額を超 える部分又は被控訴人主張の総所得金額を超え同主張の還付金の額に相当する 税額を下回る部分)及ひ本件各賦課定処分の取消しを求めた事案てある。したかって,本件の争点は,A社か措置法40条の4第4項(たたし,平成 17年法律第21号による改正前は,同条3項。以下同し。)所定の外国子会 社合算税制の適用除外要件のうちの(1)特定外国子会社等か,その本店又は主た る事務所の所在する国又は地域において,その主たる事業を行うに必要と認め られる事務所,店舗,工場その他の固定施設を有していること(以下,この適 用除外要件を「実体基準」という。)を満たすか否か,及ひ(2)その特定外国子 会社等か,その本店又は主たる事務所の所在する国又は地域において,その事 業の管理,支配及ひ運営を自ら行っていること(以下,この適用除外要件を「管 理支配基準」という。)を満たすか否かてある。原判は,A社の事業か受注発注という形態による小規模な卸売業てあるこ とに照らすと,A社か使用していたB PTE.LTD.(以下「B社」という。) のレンタルオフィススヘース及ひA社のシンカホール在住の取締役てあるC の専用執務室並ひにD Pte Ltd(以下「D」という。)の倉庫スヘースは, A社の事務所及ひ倉庫としては必要な規模と考えられ,A社は,その事業を行 うために十分な固定施設を有していた(すなわち,実体基準を満たしていた) と認められ,また,A社の経営上重要な事項に関する意思定及ひ会計帳簿書 類の作成・保管を含む日常的な業務の遂行は,いすれもC及ひEら営業担当者 により行われていて,A社は,独立した法人としてその事業の管理・支配及ひ 運営を自ら行っていた(すなわち,管理支配基準を満たしていた)と認められ るから,以上によれは,A社は,措置法40条の4第4項の適用除外要件を全 て満たすことになるとして,控訴人の本件各係争年分の雑所得の金額にA社の 課税対象留保金額を含めすに控訴人の本件各係争年分の納付すへき税額を算出 し,本件各更正処分は,上記のとおり算出した納付すへき税額を上回る部分に ついて,いすれも違法てあり,本件各賦課定処分は,過少申告による納税義 務違反の事実かあるとの前提を欠き,いすれも違法てあるとして,被控訴人の 請求をいすれも認容した。このため,これを不服とする控訴人か本件控訴を申し立てた。
2 「関係法令の定め」,「前提事実」,控訴人の主張する「本件各処分の根拠及ひ適法性」及ひ「争点に関する当事者の主張の要旨」は,次の3のとおり当 審における控訴人の主張を付加するほかは,原判「事実及ひ理由」の「第2 事案の概要」の1から3まて及ひ5に記載(原判の別紙1から別紙3まて及 ひ別表1から別表11まてを含む。)のとおりてあるから,これを引用する。
 たたし,原判6頁17行目の「後記4の争点」を「後記5の争点」に,9頁 1行目の「設けられている」を「設けられていること」に,28頁8行目の「B 社ら」を「B社から」に改める。3 当審における控訴人の主張
(1) 外国子会社合算税制の適用除外要件の主張立証責任について1外国子会社合算税制の適用除外要件を定める措置法40条の4第4項 は,同条第1項の例外として規定されていること,2タックスヘイフンに所 在する子会社等か配当を全く又はわすかしか行わす,留保所得を蓄積してい るところに税の回避を推認し得るという考え方からすれは,適用除外要件の 充足については,納税者において主張立証する必要かあると考えられること, 3課税庁にとって,国外に所在する子会社等の実態を把握することは困難て あるのに対し,納税者は,子会社等の実態を容易に把握することかてきるこ と,4同条第6項は,納税者に適用除外要件を満たしていることをらかに する書類その他の資料の保存を要求していることからすれは,適用除外要件 に関しては,納税者か主張立証責任を負っていると解すへきてある。(2) 適用除外要件のうちの実体基準について 特定外国子会社等か「賃借権等の正当な権原に基つき固定施設を使用している」というためには,その賃貸借契約等の中て少なくとも使用することか てきる場所施設か特定されており,その契約期間においては,排他的かつ 独占的にその施設等を継続的に使用することかてきる権原を有し,かつ,当該施設を実際に主たる営業のために使用していることか必要てある。
 しかるに,1B社のレンタルオフィススヘースについては,常に特定のス ヘースかA社のために排他的又は独占的に確保されているとは認められない こと,2Cは,A社平成15年12月期(A社の平成15年1月1日から同 年12月31日まての事業年度をいい,以下,他の事業年度についても,同 様の表現をする。),A社平成16年12月期及ひA社平成17年12月期 (以下,これらの事業年度を併せて,「A社各事業年度」という。)におい て,A社及ひB社と法人の住所を同しくする15社ないし19社の役員を兼 務しており,原判か認定した専用の執務室というのは,このような多数の 会社の役員を兼ねるCのB社内における執務室にすきす,A社か,その固有 の執務のために,排他的又は独占的に当該執務室を有し,かつ,当該執務室 を実際にA社の主たる事業のために使用しているとは認め難いこと,3A社 は,通常,製品を製造場所から得意先に直接出荷しているから,原判か認 定した倉庫も,製品の保管倉庫としての実態を伴っているとはいえないこと から,A社は,その事業に必要な固定施設を有していたとは認められない。したかって,A社は,実体基準を満たしていない。 (3) 適用除外要件のうちの管理支配基準についてCは,シンカホールにおいて多数の会社の役員を兼務していたから,多数 の会社の日常的な業務を兼務しなからA社の全ての業務を責任と権限をもっ て担当することは,客観的に不可能てあり,また,Eら営業担当者に対して A社の業務について全般的な指揮監督をしていたとは認め難く,重要事項の 定,新規顧客の開拓なとを責任をもって担当していたともいえない。A社 の主たる事業は,卸売業てあり,その業務の中心は,仕入れ及ひ販売等の営 業全般にあるところ,仕入れについては,仕入れ先てあるF株式会社(以下 「F社」という。)の専務取締役(平成20年5月以降は,代表取締役社長) てあり,A社の取締役てもある被控訴人か,あらかしめ日本において行った包括的な意思定に従って進められ,販売についても,被控訴人か,日本に おいて,あらかしめ物流商流の道筋をつけた上て,包括的な指示を出し, その後,A社から業務委託を受けたB社の従業員てあるEらか,被控訴人に よる包括的な指示の範囲内て,取引先を管理していたにすきない。このように,A社の卸売業に係る業務の管理,支配及ひ運営については, 被控訴人か日本において行っていたというへきてあり,A社か,シンカホー ルにおいて,その主たる事業てある卸売業を自ら管理,支配及ひ運営をして いたとは認められない。したかって,A社は,管理支配基準を満たしていない。 第3 当裁判所の判断1 当裁判所も,被控訴人の請求はいすれも理由かあるものと判断する。その理 由は,次の2のとおり当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほか は,原判「事実及ひ理由」の「第3 争点に対する判断」に記載(原判の 別紙4及ひ別表2から別表4まてを含む。)のとおりてあるから,これを引用 する。たたし,原判35頁3行目から4行目の「,原告本人調書3頁」を削 り,同頁6行目及ひ45頁9行目から10行目の「本人調書」をいすれも「被 控訴人本人調書」に,35頁7行目及ひ48頁1行目の「C調書」をいすれも 「C証人調書」に,44頁10行目の「本件増資の」を「本件増資を」に,同 頁25行目から最終行の「指示を受けた」を「指示をした」に改め,50頁4 行目の「契約書作成の目的は」の次に「,本件業務委託契約の存在及ひ本件業 務委託契約に基つく業務委託料の金額をらかにすることにあり,」を加え, 同頁12行目の「可能性か高い」を削り,52頁16行目の「満たしているも のと認められる」を「満たしていないとは認められない」に改め,56頁21 行目の末尾に行を改めて「したかって,A社は,管理支配基準を満たしていな いとは認められない。」を加える。2 当審における控訴人の主張に対する判断
(1) 外国子会社合算税制の適用除外要件の主張立証責任についてア 控訴人は,措置法40条の4の条文の構造,国外に所在する子会社等の実態を把握することの難易性等から,同条4項の適用除外要件に関しては, 納税者か主張立証責任を負っていると解すへきてあると主張する。しかしなから,措置法40条の4第4項において,同条1項の規定は, 4項か規定する場合に該当するときは,適用しないとされているからとい って,これを,4項の要件か充足されたときに1項の規定は適用しないと 解すへきなのか,あるいは,4項の要件か充足されないときに1項の規定 を適用すると解すへきなのかは,条文の構造たけからてはめられない。また,外国子会社合算税制については,タックスヘイフンに所在する子 会社等か配当を全く又はわすかしか行わす,留保所得を蓄積しているとこ ろに税の回避を推認し得るという考え方かその根底にあるとしても,「別 個の法人格を有する外国法人の所得を株主の所得に算入するような措置は 極めて異例なものといえる」(甲3。乙15も,同し文献てある。)とも 評されていることからすれは,税の回避を推認し得るということか,適用 除外要件の充足を納税者において主張立証する必要かあるということに直 ちに結ひ付くものてはない。すなわち,本来合算されるへきものてあれは, 適用除外要件かあることによって合算を免れるということになろうか,本 来合算されるへきてないものてあれは,適用除外要件かないことによって, 初めて合算か許されるということになろう。さらに,国外に所在する子会社等の実態の把握についても,もともと, 税金訴訟ては,納税者側の事情か主張立証の対象となることか多い(国の 事情純然たる第三者の事情か主張立証の対象となることは,通常は,想 定されない。)のてあるから,主張立証責任をめるに当たって,証拠へ の近さは,あまり重視すへきてはないと考えられる。その上,本件におい て,控訴人か,「所得に対する租税に関する二重課税の回避及ひ脱税の防止のための日本国政府とシンカホール共和国政府との間の協定」の情報交 換を定めた条項(以下「本件情報交換条項」という。)に基つき,シンカ ホール税務当局から情報を収集したように,国には,外国との間の租税条 約租税協定によって,相手国の税務当局を通して納税者の国外の子会社 等の情報を収集する手段か用意されている。したかって,課税庁にとって, 国外に所在する子会社等の実態を把握することか困難てあるとはいい難 い。そして,措置法40条の4第6項か,納税者に適用除外要件を満たして いることをらかにする書類その他の資料の保存を要求しているとして も,そのことは,税金訴訟における主張立証責任と直接関係はない。イ 控訴人は,過少申告加算税を課さない旨を定めた国税通則法の規定の主 張立証責任に関する裁判例及ひ居住用財産の譲渡所得の特別控除を定めた 措置法の規定の主張立証責任に関する裁判例を挙けて,これらの裁判例て は納税者に主張立証責任かあるとされているから,外国子会社合算税制の 適用除外要件についても,納税者に主張立証責任かあると解すへきてある と主張するか,前者の制度は,後者の制度とは,その趣旨,条文の構造等 を異にしており,参考にてきるものてはない。かえって,控訴人か適用除 外要件のうちの管理支配基準の解釈をらかにするために提出した裁判例 (乙60,63)は,管理支配基準を充足していないこと(より正確にい えは,「管理支配基準を充足していないことの評価根拠事実」)の主張立 証責任は国にあるとの前提て主張整理を行っている。また,控訴人は,浅妻章如教授の「租税特別措置法40条の4第3項C FC税制適用除外要件中の実体基準・管理支配基準に関する意見書」(乙 68)を提出し,その中には,立証責任に触れる部分かあるか,その内容 は,「CFC税制に関する立証責任について確定的なことは言いにくいか, 規定の構造に照らしても証拠との距離に照らしても,通常の課税要件の立証責任・・・と比へると,本件の適用除外要件の立証責任は,幾分か納税 者側に厳しい負担を配分することとなる・・・ものと思われる。」という にととまり,感想の域を出ないものてある。これに対し,甲16(今村隆 著「課税訴訟における要件事実論」170頁)ては,課税取消訴訟におけ るタックス・ヘイフン対策税制の適用除外要件について,乙60の裁判例 を基に,「適用除外要件-管理支配基準の評価根拠事実」(より正確にい えは,「適用除外要件-管理支配基準を充足していないことの評価根拠事 実」)を抗弁と説している。このように,乙60,63の裁判例及ひ甲16の文献からは,実務ては, 国に外国子会社合算税制の適用除外要件を充足していないことの主張立証 責任を課していることからかてある。ウ したかって,当審における控訴人の主張(1)は,採用することかてきない。
 (2) 適用除外要件のうちの実体基準についてア 控訴人は,特定外国子会社等か「賃借権等の正当な権原に基つき固定施 設を使用している」というためには,使用することかてきる場所施設か 特定され,排他的かつ独占的にその施設等を継続的に使用することかてき る権原を有すること等か必要てあるところ,1B社のレンタルオフィスス ヘースは,特定性排他性・独占性の要件を欠き,2Cの専用執務室は, 排他性・独占性及ひA社のために実際に使用しているとの要件を欠き,3 Dの倉庫は,製品の保管倉庫としての実態かないから,A社は,その事業 に必要な固定施設を有していたとは認められす,したかって,実体基準を 満たしていないと主張する。そこて,「賃借権等の正当な権原に基つき固定施設を使用している」と の意義につき,使用することかてきる場所施設か特定され,排他的かつ 独占的にその施設等を継続的に使用することかてきる権原を有すること等 か必要てあるかとうかはさておき,これらの要件か必要てあるとして,控訴人か主張する上記1から3まての点について,以下,順次検討する。 イ ます,B社のレンタルオフィススヘースについてみると,A社各事業年 度に該当する平成15年1月1日から平成17年12月31日まての間に おいて,B社は,シンカホールのα Street にあるヒル(以下「旧ヒル」という。)に本社及ひレンタルオフィスを置き(乙39,49),A社は, そのレンタルオフィス内の机1台分のオフィススヘースを賃借していた (引用に係る原判「事実及ひ理由」の第3の2(5)ア)か,A社か賃借し ていたオフィススヘースか特定されていなかったり,A社か排他的かつ独 占的に当該スヘースを使用することかなかったとの事実をうかかわせる証 拠はない。控訴人は,B社は,レンタルオフィススヘースにおける机の数を超える 数の法人に対して同スヘースを賃貸しており,同スヘースを日単位又は時 間単位て賃貸する事業も行っていたから,A社は特定のオフィススヘース を賃借しているものてはなく,排他的又は独占的にA社の賃借スヘースか 継続して確保されているものてもなかったと主張する。しかしなから,控 訴人か上記主張の根拠とする乙58の1は,1枚目の TOPICS の日付から 分かるとおり,平成23年6月28日以降のB社のホームヘーシてあり, B社は,平成19年7月頃,本社及ひレンタルオフィスを旧ヒルからβ Way にあるヒル(以下「新ヒル」という。)に移転している(乙39,6 9)のてあるから,乙58の1は,旧ヒルにおけるレンタルオフィススヘ ースの形態をらかにするものてはない。また,仮に,B社かレンタルオ フィススヘースにおける机の数を超える数の法人に対して同スヘースを賃 貸したり,一部に日単位又は時間単位て賃貸する事業を行っていたとして も,平成12年の設立時からA社各事業年度に至るまて年単位てオフィス スヘースを賃借し,今後も賃借することか想定されるA社に対する賃貸場 所か,特定されす,移動していたとは,およそ考えられない。控訴人は,乙53(平成19年7月1日付け業務委託契約書)の賃料とB社の平成2 4年時点の日貸しの賃料との比較も主張するか,いすれも,A社各事業年 度とは時期か違い,場所も違うのてあるから,この比較を基にA社か賃借 していたオフィススヘースか排他的又は独占的てはなかったといえるもの てはない。なお,甲1(異議定書)には,被控訴人か本件各処分の取消しを求め てした異議申立てに係る調査において,被控訴人か,調査担当職員に対し, 「(A社の)机の場所はB社によって管理され固定されていない。」と申 述したとの記載かあるか,乙39(聴取書)及ひ乙50(調査報告書)に は,上記の内容の記載はなく,甲24(被控訴人の陳述書)には,調査担 当官から,使用する机1台分のスヘースはとうってまるのかと聞かれ, とのスヘースか割り当てられるかはB社か指定したと答えたたけてあると の記載かあるから,甲1の上記部分を記載のとおりに理解することはてき ない。控訴人は,上記以外にも,1Cか原審における証人尋問て示したA社の オフィススヘースの場所とCか平成24年11月にシンカホール税務当局 の調査官に示したA社のオフィススヘースの場所とか異なるから,A社各 事業年度におけるA社のオフィススヘースの場所も特定されていなかった とか,2B社と業務委託契約を締結してオフィススヘースを賃借している 他の会社から控訴人か平成25年1月に聴取したところによると,同社の オフィススヘースの場所は特定されていないから,B社は,一般的に,オ フィススヘースを賃貸する際に,その場所を確に特定していないとも主 張する。しかしなから,上記のとおり,B社は,平成19年7月頃に本社 及ひレンタルオフィスを旧ヒルから新ヒルに移転しているのてあって,C かシンカホール税務当局の調査官に示したというA社のオフィススヘース の場所は,平成24年11月時点の場所(新ヒルにおける場所)てあると考えられること,そして,平成25年1月に控訴人か聴取したという他の 会社の例を一般化することも,相当てないと考えられることからすれは, 上記1及ひ2の事実かあるからといって,A社各事業年度においては旧ヒ ルにあったB社のレンタルオフィスにおけるA社のオフィススヘースか特 定されていなかったとは推認することかてきない。また,控訴人は,Eか,甲14(陳述書)において,A社からの受託業 務のみならす,B社か受託した韓国関連の商社業務も行っていたと陳述記 載していることから,当該机かA社の専用の机スヘースてあったとみる ことはてきないとも主張するか,B社とA社との間てオフィススヘースの 賃貸借か合意されていた以上,Eの仕事の内容によって賃貸借の内容か変 質するものてはない。さらに,控訴人は,室内のレイアウトからして,Eか業務を行っていた のは,レンタル用のスヘースてはなく,B社の執務室にあったE自身に割 り当てられた机てあり,A社のオフィススヘースは業務のために使用され ていなかったとも主張する。しかしなから,上記主張は,訴訟の最終盤に なって出てきた全くの推測に基つく主張てある。そうすると,B社のレンタルオフィススヘースについて,A社の賃借ス ヘースか特定されていなかったとか,A社の賃借スヘースとして排他的又 は独占的に確保されていなかったとか,EかA社の業務のために使用して いなかったなとの控訴人の主張は,いすれも採用することかてきない。ウ 次に,Cの専用執務室についてみると,当該執務室は,B社の業務C か取締役を兼務する会社(乙66(平成24年12月10日付け調査報告 書)によれは,Cか役員に就任していた会社は,B社とA社を除き,平成 15年度末には14社,平成16年度末には16社,平成17年度末には 18社に及ふか,各会社の業務にとの程度携わっていたかは確てはな い。)の業務のほか,A社の職務の遂行のためにも使用されていた(引用に係る原判「事実及ひ理由」の第3の2(5)イ)。 控訴人は,Cの専用執務室かA社のみならす他の多くの会社の役員としての執務にも使用されていたのては,A社か排他的又は独占的に執務室を 有し,A社の業務を主に遂行するために当該執務室を「固定施設」として 独立して使用していたとは認め難く,また,Cか,B社の専用の執務室て A社の業務を行っていても,B社とA社との賃貸借契約に基つくものては ないから,正当な権原に基つき「固定施設」を使用しているとの要件も欠 くと主張する。しかしなから,特定外国子会社等の役員か他の会社の役員を兼務するこ と自体は,何ら禁しられていないところ,役員を兼務する会社の所在地か 同一てある場合には,役員としての執務室か複数になることは現実的ては ない。この場合,当該執務室か物理的な場所としては一つの部屋てあった としても,その部屋て当該会社の業務を独立して行っているとみることか てきる限り,観念的には,その部屋は,各会社の個々の執務室としての性 格を持つとみるへきてある。上記認定のとおり,Cは,その専用執務室て, A社の職務の遂行を独立して行っていたとみることかてきるのてあるか ら,その限りては,当該執務室は,他の者との関係て,排他的かつ独占的 な執務室てあり,A社の職務の遂行のため独立して使用されているという ことかてき,したかって,また,その使用は,正当な権原に基つくものて あるということかてきる。エ さらに,Dの倉庫についてみると,甲29(D作成のA社宛て請求書) は,「倉庫料,出入庫手数料」の請求書てあるから,甲29によれは,平 成15年1月から6月まての間に,A社は,F社から仕入れた製品につき, Dを乙仲として使い,通関業務を代行してもらったほか,Dの倉庫に製品 を保管していたことか認められる。上記の請求回数及ひ請求額からして, 保管を依頼したものか会社の書類てあったとは解されない。したかって,A社は,Dと契約し,Dのシンカホール国内にある倉庫内 にA社か取り扱う精密機械部品の保管場所を確保し,必要なスヘースを賃 借していた(引用に係る原判「事実及ひ理由」の第3の2(6))のみなら す,A社各事業年度において,Dの倉庫を製品の保管場所として使用して いたということかてきる。乙67の2(本件情報交換条項に基つくシンカホールの税務当局からの 回答文書)には,Dのティレクターか,「DはA社か輸入した製品を保管 していない。」と回答したとの記載かあるか,乙67の2の作成日からし て,この事情聴取は,平成24年11月にされたものてあり,Dのティレ クターの上記回答か平成15年1月から平成17年12月まてのことを念 頭に置いたものてあるかは,甚た疑問てある。そして,上記のとおり倉庫 料の記載のある請求書かあることも踏まえれは,乙67の2の上記記載は, A社かA社各事業年度においてDの倉庫を製品の保管場所として使用して いたとの上記認定を左右するものてはないというへきてある。オ 以上によれは,特定外国子会社等か「賃借権等の正当な権原に基ついて 固定施設を使用している」との意義につき,特定性,排他性,独占性等の 要件か必要てあるとの控訴人の主張を前提としたとしても,A社か実体基 準を満たしていないとは認められないから,当審における控訴人の主張(2) は,採用することかてきない。(3) 適用除外要件のうちの管理支配基準について 控訴人は,Cは,多数の会社の役員を兼務していたから,A社の全ての業務を担当することは客観的に不可能てあり,新規顧客の開拓なとを担当して いたともいえす,A社の仕入れ及ひ販売は,被控訴人か日本て行った包括的 な意思定に従って,Eら営業担当者か行っていたにすきない(すなわち, A社の卸売業に係る業務の管理,支配及ひ運営は,被控訴人か日本において 行っていた)から,A社は管理支配基準を満たしていないと主張する。加えて,控訴人は,CかA社から役員報酬を受け取っていなかったことは,A社 において重要な権限を有しておらす,日常的な業務を担当していなかったこ との証左てあり,Cか資金管理権限を有していたとは考え難いとも主張する。しかしなから,被控訴人か当審て提出した甲26(A社の取扱製品に関す る月次粗利益レホート)によれは,A社か平成17年1月から6月まての間 に行った取引をみても,各製品についての粗利益率には,大きなはらつきか ある(例えは,同年1月の取引ては,粗利益率の高いもの(41.9162%) と低いもの(マイナス12.5645%)とて,50ホイント以上も差かあ る)ことか認められるから,A社の取扱製品の取引条件については,A社の 営業担当者と仕入先又は販売先との間て個別の交渉か行われていたことかう かかわれる。さらに,被控訴人か当審て提出した大部の書証てある甲27(A 社か販売先に発行した製品の販売代金の請求書及ひその月次一覧)及ひ甲2 8(A社か仕入先から受領した製品の仕入代金の請求書及ひ梱包細書並ひ に請求書の月次一覧)によれは,平成17年1月から6月まての間ても,A 社は,合計297件の販売取引を行い,合計69件の仕入れを行ったことか 認められるか,A社の取引は,顧客から受注を得て,F社ほか1社に対して 発注し,出来上かった製品を顧客に納入するという受注発注の形式て行われ ていた(引用に係る原判「事実及ひ理由」の第3の2(3))のてあるから, 上記のとおり多数の販売取引かあったということは,それたけ,A社の営業 担当者か販売先と交渉をしていたことを意味するというへきてある。そして, 甲30(A社のF社D宛てのテヒット・ノート(請求書))によれは,平 成17年1月から6月まての間において,A社の取扱製品について,不良品 てあるとのクレーム,製品の発送間違い,仕様変更の申出等,多種の非定型 な事態か発生していたことか認められるから,A社の営業担当者かこれらの 事態の解に当たったことか推認される。以上のA社の取扱製品についての通常の販売及ひ仕入れに関する交渉クレームへの対応等をA社の営業担当者か行うに当たっては,当然,シンカホ ールにおいてこれを指揮監督する人物を必要としたものと考えられ,その人 物としては,Cしか考えられない。したかって,上記の各書証は,Cか,A社の営業担当者に対する指揮監督 を行い,日常的な営業活動顧客からのクレーム対応,売掛債権の督促・回 収なとの業務を執行していたとの認定(引用に係る原判「事実及ひ理由」 の第3の2(9)イ)を十分裏付けるものてある。また,甲31(米トル口座及ひ日本円口座の入出金一覧),甲32(銀行 口座入出金細書等)及ひ甲33(他行送金・行内振替のサマリーレホート) によれは,Cか,A社の経理銀行取引及ひ為替管理を含む資金管理を行い, 米トル口座,日本円口座,GD口座の各残高を把握しつつ,各種の支払を チェックして承認するなとし,通常の取引については,無制限の権限を有し ていたこと(引用に係る原判「事実及ひ理由」の第3の2(9)イ)も裏付け られる。このようにみると,Cか多数の会社の役員を兼務していたからといって, CかA社の全ての業務を担当することか客観的に不可能てあるとはいうこと かてきないし,CかA社から役員報酬を受け取っていなかったことは,上記 の認定に影響を及ほすものてはない。そもそも,控訴人は,原審の敗訴判を受ける,本件情報交換条項に基 つき,シンカホール税務当局に対し情報収集を依頼したものてある(乙67 の1)か,本件ては,平成15年1月から平成17年12月まてのA社の実 態か問題になっているにもかかわらす,平成24年時点ての情報の収集にと とまっているのてあって,そのことたけても,乙67の2(回答文書)の証 拠価値は,薄いものといわさるを得ない。しかも,既に触れたとおり,B社 は,平成19年7月頃に本社及ひレンタルオフィスを旧ヒルから新ヒルに移 転しており,事務所の面積及ひレイアウトも,本件て問題となっている時点とは異なっている。また,Cについては,原審て証人尋問か行われていると ころ,その後に被控訴人側の立会いかないままCから事情を聴取しても,そ の証拠価値は,薄いというへきてある。さらには,B社と取引かあるといっ ても,A社との類似性かあるかないかも分からない別の会社の事情(乙70) をもって,A社の場合も同してあろうなとと推認することはてきない。控訴人は,原判の「A社においては,経営上重要な事項に関する意思 定及ひ会計帳簿書類の作成・保管を含む日常的な業務の遂行は,いすれもA 社の取締役てあるC及ひEら営業担当者により行われていた」との認定(5 6頁16行目から19行目まて)を種々非難するか,この認定を否定する有 効な証拠を,結局,提出することかてきなかったのてある。したかって,当審における控訴人の主張(3)も,採用することはてきない。
 3 以上によれは,被控訴人の請求はいすれも理由かあり,これと同旨の原判 は相当てあり,本件控訴は理由かないから,これを棄却することとして,主文のとおり判する。 東京高等裁判所第17民事部
裁判長裁判官 原 優
裁判官 江 口 とし子
裁判官 本田能久
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