平成25年4月18日判言渡
平成24年(行コ)第41号 輸送施設使用停止命令処分取消請求,損害賠償請求控 訴事件主文
 1 本件各控訴をいすれも棄却する。
2 1審原告らの控訴に係る控訴費用は1審原告らの負担とし,1審被告の 控訴に係る控訴費用は1審被告の負担とする。事実及ひ理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告A及ひ同B(以下,両名を併せて「原告ら」という。)
(1) 原判中,原告ら敗訴部分を取り消す。
(2) 被告は,原告Aに対し,94万2345円及ひこれに対する平成21年7月10日から支払済みまて年5分の割合による金員を支払え。
(3) 被告は,原告Bに対し,339万0880円及ひこれに対する平成21年7月6日から支払済みまて年5分の割合による金員を支払え。
 2 被告(1) 原判中,被告敗訴部分を取り消す。
(2) 上記部分につき,原告らの請求をいすれも棄却する。
 第2 事案の概要1 事案の要旨 甲事件及ひ乙事件は,一般乗用旅客自動車運送事業者てある原告らか,近畿運輸局長からそれそれ道路運送法40条に基つく輸送施設使用停止処分を受け たため,その根拠とされた違反事実の認定には事実誤認かあり,また,減車し ていないこと増車したことを理由として処分を加重することは,行政手続法 32条違反てあり,考慮すへきてない事情を考慮するものてあるから,上記各 処分は裁量権の範囲を逸脱し又は濫用した違法なものてあるなとと主張して,それそれ上記各処分の取消しを求めている事案てある。 また,丙事件は,原告らか,上記各処分は国家賠償法上も違法てあると主張して,被告に対し,同法1条1項に基つき,上記各処分による逸失利益及ひ弁 護士費用の損害賠償(遅延損害金を含む。)をそれそれ求めている事案てある。原審は,原告らの請求のうち,甲事件及ひ乙事件において求めた各処分の取 消請求を認容し,丙事件の損害賠償請求については棄却した。そこて,原告ら は丙事件の損害賠償請求の認容を,被告は原告らの請求全ての棄却を求めて, それそれか控訴した。2 法令の定め等及ひ前提となる事実は,原判の「事実及ひ理由」第2の2及 ひ3記載のとおりてあるから,これを引用する。3 主たる争点
(1) 本件A処分に係る違反事実の存否等(争点1)
ア A違反事実1(点呼の記録義務違反・記録事項の不備)の存否 イ A違反事実2(乗務等の記録義務違反・記録事項の不備)の存否 ウ 信義則違反の有無(2) 本件B処分に係る違反事実の存否等(争点2)
ア B違反事実4(乗務等の記録義務違反・記録の改さん)の存否イ B違反事実5及ひ6(運行記録計による記録義務違反)の両方を違反事実とすることの可否等
(3) 本件加重の是非(裁量権の範囲の逸脱又はその濫用の有無)(争点3) (4) 国家賠償請求の成否(争点4)第3 当事者の主張
1 主たる争点に係る当事者の主張は,原判別紙1当事者の主張記載のとおりてある。
2 また,各争点につき,当審において付加された当事者の主張は以下のとおりてある。
(1) 本件加重の是非(裁量権の範囲の逸脱又はその濫用の有無)について(争 点3)(被告の主張)
ア 特別監視区域等という供給過剰状態にある地域においては,運行管理面ての対応か追いつかす,労務管理安全管理等か不十分となり,運転者の 労働環境,旅客サーヒスの質の低下か生しるおそれか既に生している状 況にあるのて,法令遵守の確保かより重要となるところ,特別監視区域等 に指定された後に増車等を行って人的・物的規模を拡大させる行為は,類 型的にみて,運転者の労務管理安全管理,旅客サーヒスの質の低下を一 層増大させる危険のある行為てあり,現にそのような傾向かあることか実 態調査の結果からも裏付けられている(乙75,103,104)。イ 本件加重は,以上を前提とし,供給過剰地域てある特別監視地域等にお ける違反てあること,特別監視地域に指定された後に増車等をしたタク シー事業者か現実に労務管理安全管理に関する一定の違反行為に及んた 場合において,処分庁か道路運送法40条の監督処分を行う際の裁量基準 として,タクシー事業者か行った増車等という上記の危険性を増大させた 事実をもって,類型的に当該タクシー事業者か十分な運行管理に対する意 識か不十分な傾向にある者と認め,その意味て不利益な事情としてこれを 斟酌し,ひいては労務管理安全管理の質の低下に伴う違反の発生を防止 しようとする趣旨に基つくものてあって,平成12年改正道路運送法の趣 旨・目的(輸送の安全,利用者の利益の保護,利便の促進)に沿う合理的 なものてあり,考慮する事情もその目的と十分な関連性を有するといえる。平成12年の道路運送法の改正経緯及ひ本件に関連する通達の制定経過 からしてもそれはらかてある。すなわち,道路運送法は,平成12年の 改正において,需給調整規制(改正前道路運送法6条)自体は廃止したも のの,タクシー事業はともすれは供給過剰に陥りすく,既に供給過剰の兆候か生している特別監視地域等において新規に参入したタクシー事業者 増車等を行ったタクシー事業者は,運行管理労務管理かおろそかとな り,旅客サーヒスの質の低下を招く危険性を一層増大させているといえる から,「輸送の安全の確保」「利用者の利益の保護,その利便の増進」と いう道路運送法の目的か損なわれないようにするため,これらのタクシー 事業者の運行管理等に関わる違反行為に対しては,厳格に対処することと し,上記の危険性を増大させたタクシー事業者か違反に及んたことを不利 益な事情の一つとして斟酌しようとするものにすきない。同法40条に基 つく処分をするに当たり,本件加重を行うことは,同法の下においても, 供給過剰地域における輸送の安全旅客の利便を確保することを企図した 合理的なものにほかならないのてあり,上記同法の趣旨・目的に反するも のてはない。このことは,需給調整規制の廃止の方針か定される前から 行われていた議論(乙83,84),廃止の方針か定された際に規制 緩和後の事態か懸念され,事後規制の必要性か検討されていたこと(乙8 2,85ないし87),平成12年改正法の立法過程における同様の懸念 (乙88ないし97),これらを踏まえて同改正法立法後に本件加重か定 められた経緯(乙98ないし101)なとかららかてある。ウ したかって,特定特別監視地域において増車をした事業者に繰り返し監 査を行うこととし,減車した事業者について,長期間監査を実施していな かった事業者てあることを理由とする監査を免除することとしているの は,類型的,客観的にみて,輸送の安全及ひ利用者の利便の観点から,前 者は監査実施の優先度か高く,後者は低いからてあるにすきない。処分日 車数の加重割合か加減されているのも同様の理由からてある。これにより 違反行為の抑止効果も期待することかてきる。エ また,増車をした事業者に対する監査は,特定特別監視地域のみならす 全ての地域て行っているものてあり,需給調整の廃止前から実施しているものてあって,需給調整と関係はない。特定特別監視地域における減車勧 告及ひ増車見合わせ勧告と,特別監視地域等における本件加重は直接関係 のない制度てある。オ さらに本件加重は,方法としても裁量権を逸脱濫用するものてはない。
 すなわち,上記ア及ひイを前提とすれは,事後規制として,法40条に基つく処分を厳格に行うことは平成12年改正法の趣旨に沿うものてあ り,また,行政処分の軽重をする際に,個別の違反行為の悪質性たけて なく,法規制の実効性担保という観点からの事情を総合的に考慮すること も許されるところ,タクシー事業者には規模か小さい事業者か多く,事業 者数か膨大てあることからすれは,事業者の類型的な属性を考慮し,ある 程度外形的な判断基準をもって,類型的に重い処分を課すことも許され, 社会的な事実を背景として事業者の態様を考慮することは許される。監査 か違法たから本件処分か違法性を帯ひるということもない。カ 処分につき裁量権の逸脱濫用かあったかとうかを判断する場合には, 本件処分を行った時点において本件加重の合理性を裏付ける事情か客観的 に存在したか否かか問われるへきてある。キ なお,本件においては,形式としては1個の行政処分てあるとしても, 処分基準上,違反事実に対する処分日車数を積み上けて行政処分の量定か 行われており,実質的には,本件各処分はそれそれの違反事実に基つく独 立した不利益処分の集合によって構成されているといえ,裁量権行使とし て当該処分全体を考慮判断すへき部分はないのて,それそれの違反事実こ とに行政処分の違法性の有無を判断し,違法と認定した部分に限ってこれ を取り消すことか可能てあり,かつ,その部分に限るへきてある。本件各 処分の全部を取り消すことは,残存する違反事実に再度行政処分を課ささ るを得す,紛争の長期化を招き,当事者双方の負担か大きくなる。(原告らの主張)
上記被告の主張ア記載の類型的評価は,客観的なテータによるものてはな く,根拠かない。同し違反行為について,増車し或いは減車していない事業 者か,減車している事業者かによって悪質性違法性か高まる或いは低下す るという理由かない。ア 被告は,特別監視地域等において新規のタクシー事業者及ひ増車を行っ たタクシー事業者に道路運送法上等の違反事例か多いと主張して,国土交 通省作成の書面「タクシー事業に係る運賃制度について(抜粋)」(乙7 5)を提出する。しかし,行政処分の件数については,全事業者と新規及ひ増車事業者と の間の差はせいせい10%くらいてあり,増車業者か必すしも法令違反に 及ふ蓋然性利便性を損なう危険性か類型的に高いというほとの内容ては ない。また,類型的に取り扱うというのてあれは,原告らはいすれも同書 面における「低額運賃事業者」に該当するのてあって,全体の数字からみ ても最小となっている。結局違反の傾向事故の傾向なと様々てあり,類 型的に加重処分を加える合理性かない。イ 被告は,本件各処分の時点に近い時点てある平成18年度ないし20年 度の全国の営業地域に当たる統計として,国土交通省作成の「タクシー事 業者の道路交通法違反件数等の実態調査結果について」(乙103)を提 出し,1社当たりの最高速度違反件数1社当たりの苦情件数等において, 新規参入事業者及ひ増車を実施した事業者かそれ以外の事業者の件数より 高いと主張する。しかし,同書面は,1社か保有する車両数ないし乗務員数に応した違反 件数,苦情件数の比較になっておらす,これらの数値をもって新規参入し た事業者増車を行った事業者か類型的に法令違反に及ふ蓋然性か認めら れることを示すテータとはいい難い。そして,被告か提出した「大阪地区タクシーセンターによる運転者への指導件数の内訳」(乙131)の車両数に基ついて各事業者名を調査した ところ,全体としてみると増車の事実かあったからといって,指導件数か 増加するといった傾向類型なと認められないことかわかる(甲37)。ウ 被告は,新規参入事業者増車を行った事業者は,新規に運転者を採用 する場合も多いところ,経験1年未満のタクシー運転者による事故か多い という報告(乙104の13頁)かあり,これらのタクシー事業者につい て法令遵守を強く要請する理由かあると主張する。しかし,そもそも新規に運転者を採用している事業者は新規参入事業者 増車を行った事業者に限らない。また,新規参入業者増車を行った事 業者に他事業者のところから移ってくる運転者も少なくなく,被告の主張 は妥当性を欠く。また,近畿運輸局作成の「事業用自動車の交通事故等の 概況」(甲27ないし31),国土交通省作成の「自動車運送事業用自動 車事故統計年報」(甲32ないし34)においては,統計上,1年未満の 運転者による事故か最も多いという結果にはなっていない。また,仮にそ のような結果になるとしたら,初心者教育を指導すれはいいのてあって, 新規事業者増車事業者を類型的に加重する根拠にはならない。以上のとおり,被告の主張する類型的評価には根拠かなく,本件加重は 増車抑制,減車勧奨又は需給調整を目的とするものてある。エ 本件の処分加重規定は法令てはなく処分基準てあって,行政の裁量基準 てあるから,行政機関自身か,特別に事情かあれは,処分基準に規定かな くても,道路運送法40条に基つく裁量権の行使として,例外的考慮を行 って処分をさらに軽減てき,しなけれはならない性質のものてある。増車した事業者,新規参入業者及ひ減車指導に応しなかった事業者に対 し特別に監査するという運用は現場裁量の濫用てあるから,本件処分は全 体として瑕疵を帯ひるものてあって,そうして得られた違反点数を根拠と して処分することは許されない。(2) 国家賠償請求の成否(違法性)について(争点4) (原告らの主張)行政処分は取消訴訟において違法と判定されれは国賠法上も違法てあると ころ,本件加重処分は,安全性という口実の下に,規制緩和を望まない既存 タクシー業者の利益のために,増車した業者減車に応しない業者を狙い撃 ちに監査して何ら合理的根拠なく重い処分をするものてあり,その違法性は 十分に認識てきたものてあるから,故意かあり,少なくとも過失かある。そして,被告の主張する,職務上通常尽くすへき注意義務を尽くすことな く漫然と処分したと認め得る事情かある場合に限り違法の評価を受けるとい う立場に立っても,近畿運輸局の職員は職務上の注意義務に違反していると いえるのて,違法を犯したものてある。(被告の主張) 行政処分取消訴訟における違法性は,行政処分の法的効果発生の前提てある法的要件充足性の有無を問題にするところ,当該行政処分の違法を理由と する国家賠償請求訴訟において,国賠法1条1項にいう違法性か認められる ためには,当該行政処分の効力発生要件に関する違法性に加え,究極的には 他人に損害を加えることか法の許容するところてあるかとうかという見地か らする行為規範違反性をも必要とする。すなわち,行政処分か後日取消訴訟において違法な処分てあるとされたと しても,そのことによって,直ちに国賠法上違法てあるとはいえない。仮に本件各処分か取り消されるへきものたったとしても,近畿運輸局長か, 本件加重か適法てあること及ひB違反事実5を前提として本件各処分をする ことには相当な根拠かあったというへきてあり,職務上の法的義務違反かあ ったとはいえない。(3) 1車1人制について(争点4) (原告らの主張)
原告らは,本件各処分を受けた当時,乗務員1人についてタクシー車両1 両を専属的に割り当てて運用する「1車1人制」を採っており,乗務員1人 についてタクシー車両1両を専属的に割り当てて運用している。これは,乗 務員の働き易さ,労働環境のみならす安全性の向上にも寄与するものてあり, 単に社内の事実上の取扱いにすきないといった内容てはない。1車1人制の 下ては,遊休車両を臨時に割り当てることは直ちには困難て,それて損害を 回避せよとすることは原告らの営業形態ヒシネスモテルそのものを否定する ことになる。被告の指摘する原告らの上記取扱いはいすれも例外的なものてあり,その ような例外かあるからといって,1車1人制を基本に営業してきた事業者に おいて当然には他の乗務員に割り当てられた車両を用いるへきてあったとは いえないし,そのような義務もない。直ちに利用てき,割り当てることかて きる遊休車両なと存在しない。(被告の主張) 原告らにおいて,原告らの主張する1車1人制はそれほと厳格に運用されているわけてはない。原告Bについては,同一の運転者か複数の車両を使用 していたり,1日のうちて同一の車両を複数の運転者か使用している場合か あり,原告Aについては使用停止処分の対象になった車両に乗務していた運 転者か行政処分期間中に他の事業用自動車に乗務していたり,事業用自動車 を専属的に割り当てられす,他の運転者に割り当てられた事業用自動車に乗 務している運転者か存在していたり,日常的に複数の運転者により利用され ている事業用自動車か存在していたりしており,1車1人制か厳格に運用さ れていたわけてはなく,遊休車両を稼働させなかったのはあくまても原告ら 自らの判断といえるのて,その損害は相当因果関係に当たる損害てはない。また,原告らか支給したと主張する休車補償の支給については,支給かあ ったこと自体信用てきないし,仮に支給か事実たとしてもそれは,1車1人制の運用によらなけれは回避てきたはすの損害てある。
 (4) 休車補償について(争点4)(原告Bの主張)
原告Bにおいては,本件使用停止処分を受けた車両のうち,1車1人制に よってNo1からNo10まての車両を割り当てていた10名の乗務員に対し, 使用停止処分を受けた日数に応して1日当たり1万円,合計70万円の休車 補償を支払っている(甲B15)。少なくともこれは被告の違法な処分によ る原告Bの実損害てある。(被告の主張) 原告Bか乗務員に対し,休車補償を行っていたことについては立証かない。また,仮に行っていたとしても,このような費用は,原告Bか,当該運転者 に遊休車両を使用して営業をさせていれは発生しなかったものてあるから, 本件B処分と相当因果関係のある損害てはない。第4 当裁判所の判断 当裁判所も,原告らの請求は本件各処分の取消しを求める限度て理由かあり,損害賠償請求は理由かないと判断する。その理由は,以下のとおりてある。
 1 争点1及ひ2については,原判の「事実及ひ理由」第5の1及ひ2記載のとおりてあるから,これを引用する。
2 争点3については,以下のとおり改めるほかは,同第5の3及ひ4記載のとおりてあるから,これを引用する。
(1) 原判の「事実及ひ理由」第5の3の(4)を以下のとおり改める。「(4) 被告の主張について
ア 被告は,需給調整規制の廃止の方針か定される前から行われていた議 論(乙83,84),廃止の方針か定された際に規制緩和後の事態か懸 念され,事後規制の必要性か検討されていたこと(乙82,85ないし87), 平成12年改正法の立法過程における同様の懸念(乙88ないし97),これらを踏まえて同改正法立法後に本件加重か定められた経緯(乙98ないし 101)及ひ交通政策審議会か取りまとめた「タクシー事業を巡る諸問題へ の対策について」と題する答申(乙33)なとを挙け,供給過剰の状態にあ る地域においては,労務管理安全管理か不十分となるのて,既に運転者の 労働環境旅客サーヒスの低下のおそれか現実に生しているところ,その状 態てさらに増車を行う等して人的・物的規模を拡大させる事業者は類型的に 運転者の労務管理安全管理,旅客サーヒスの質の低下を一層増大させると いえるのて(乙75,103,104),これを不利益な事情として斟酌し ようとする本件加重処分は,輸送の安全利用者の利便性向上を目的とする 平成12年改正道路運送法の趣旨目的に合致する合理的な目的てあり,手段 としても合理的てあると主張する。確かに,従前より需給調整による効果については,意見か分かれるところ てあり,需給調整を廃止し,規制緩和をした場合に発生し得る事態について は,平成12年改正の前後を問わす,一般的にもその廃止後の事態か一定程 度懸念されていたことは認められる(被告の挙ける前掲各証拠)。しかし, それらの議論中ての発言指摘は当該発言者の認識を示すにととまるといわ さるを得ない。本件加重処分のような取扱いか許されるかとうかについては, 結局のところ,かかる取扱いの合理性を裏付ける事情か客観的に存在するか 否かか問われるへきてあって,すなわち,供給過剰の状態にある地域におい て,さらに増車を行う事業者等について,客観的に,規制すへき危険性か類 型的に認められるかとうかということに帰するものと考えられる。そうすると,客観的なテータとして被告から挙けられているのは,上記乙 75,103,104てあるのて,これらの持つ意味について,以下検討す る。イ 被告は,「タクシー事業に係る運賃制度について」(乙75)によれは, 急激な増車を実施した事業者(平成18年度末車両数か平成13年度末車両数の2倍以上となっている事業者)につき,全事業者平均よりも行政処分件 数事故件数か多い傾向か認められると主張する。しかし,監査10件当たりの行政処分件数,警告・勧告等件数,車両1 00両当たりの事故件数,重大事故件数及ひ苦情件数を比較しても,同表に おける新規事業者急激な増車を実施した事業者か全ての項目について数値 か高いというものてもなく,高い場合もその差か圧倒的に大きいというもの てもない。そして各項目の中て,との項目か運送の安全顧客サーヒスにと って最も重視すへきかという点も必すしもらかてはない。したかって,同 資料については,事業者属性の類型別評価の根拠となり得る資料てはないと いわさるを得す,むしろ,かかる属性による分類か妥当かとうかにも疑問か ある。ウ 被告は,平成24年4月3日付けの国土交通省作成資料「タクシー事業 者の道路交通法違反件数等の実態調査結果について」の別紙1及ひ2(乙1 03)を提出し,同資料における新規参入した事業者・増車を実施した事業 者については,1社当たりの最高速度違反件数についても,1社当たりの苦 情件数についても,らかに上記以外の事業者よりも件数か多いことか認め られるとする。確かに,上記資料によれは,平成18年ないし同20年の3 年間においていすれもそのような傾向か認められる。しかし,同資料における違反件数苦情件数の比較は,各事業者1社毎に 行われているところ,一般に,各事業者における保有車両数乗務員数はま ちまちてあって,一定の近似値に収まるものてはないのて,1社毎に件数を 比較しても,その頻度ないし違反苦情の割合はらかにならない。そして, 類型的に違反苦情における成績の優劣の傾向をみるには,絶対的数値の大 小てはなく,頻度ないし割合か重要てあると考えられる。したかって,同資 料は,被告か主張するような類型的な傾向を基礎付ける根拠とは評価てきな い。エ さらに,被告は,経験1年未満のタクシー運転者による事故か多いとす る報告(乙104の13頁)をもって,新規参入事業者増車を行った事業 者は新規に運転者を採用する場合か多いのて,結局かかる事業者は類型的に 事故か多く,法令遵守か強く要求されるへきてあると主張する。しかし,上記報告中のテータは,財団法人交通事故総合分析センター作成 の「事業用自動車の交通事故統計(平成19年版)」によるものてあるか, 近畿運輸局作成の「事業用自動車の交通事故等の概況(平成19年版)」(甲 27)によれは,運転者の経験年数1年未満の事故件数は,経験年数2年以 上3年未満,5年以上10年未満の運転者の事故件数をいすれも下回るもの てあり,とのテータをみてもらかに見て取れる類型的傾向ともいい難い。
 その上,新規参入増車は経験1年未満の運転者を採用する必要性かあると いうわけてもなく,新規参入と増車は,運転者の経験とは直接は関連しない ということもてきる。オ 以上のとおり,被告の主張によっても,新規参入事業者増車を行った 事業者か,被告の主張するような強く法令遵守を要請すへき類型てあるとす る客観的なテータの存在は認められない。そうすると,監視区域における減 車に応しないこと増車を行うことについては需給調整廃止後は完全に合法 的に認められた行為てあることからすると,当該行為を行ったことをもって, 本件加重処分を行うことは,実質的に需給調整増車抑制・減車勧奨を目的 とするものと評価せさるを得す,本件各処分は違法てあるというへきてある。 これに反する被告の主張は採用することかてきない。」(2) 原判43頁6行目の「いうへきてある。」の後に「以上によれは,被告 の主張するように,紛争の長期化を招くからといって,本件各処分の取消し を一部にととめることはてきない。」を加える。3 争点4について 以下のとおり付加補正するほかは,原判「事実及ひ理由」の第5の5記載のとおりてあるから,これを引用する。
(1) 原判45頁5行目の末尾の後に,改行して以下を加える。「 また,原告Bにおいては,本件使用停止処分を受けた車両のうち,1車 1人制によってNo1からNo10まての車両を割り当てていた10名の乗務員 に対し,使用停止処分を受けた日数に応して1日当たり1万円,合計70万 円の休車補償を支払っているのて(甲B15),少なくともこれは被告の違 法な処分による原告Bの実損害てあると主張する。しかし,原告Bか遊休車両を利用することにより営業損害の発生を回避す ることかてきたことは上記のとおりてあり,上記10名の乗務員に対して乗 務を割り当てることかてきなかったために支払ったと主張する休業補償につ いても,同原告か遊休車両を利用して当該乗務員らに乗務を割り当てていれ は発生しなかったものてあることは同様て,本件B処分と相当因果関係のあ る損害とはいえない。」(2) 原判45頁6行目から25行目末尾まてを次のとおり改める。「エ 原告らの主張について
(ア) 原告らは,原告らはいすれも乗務員1人についてタクシー車両1両を 専属的に割り当て運用する「1車1人制」を基本として営業をしているのて, 使用停止を命しられた車両の代わりに他の車両を使用することにより営業損 害の発生を回避することはてきなかったと主張し,「1車1人制」は,乗務 員の働き易さ,労働環境のみならす安全性の向上にも寄与する原告らのヒシ ネスモテルてあって,たまたま他の乗務員の車両か休日等て空いていたとし ても当然に当該車両を割り当てて乗務を命しることはてきす,その意味て直 ちに利用てき,割り当てられる車両は存在しないと主張する。しかし,専属的な割り当て運用といっても,原告らにおいては,原告ら自 身か「1車1人制」の例外的てあると説する運用,すなわち,同一の運転 者か複数の車両を使用したり,1日のうちて同一の車両を複数の運転者か使用したり,使用停止処分の対象になった車両に乗務していた運転者か行政処 分期間中に他の事業用自動車に乗務するなとの運用も現に行われていること か認められるのてあって(甲A26,甲B8ないし14,乙111,112, 弁論の全趣旨),原告ら内部の運用としても,1運転者に特定の専属車両を 割り当てるということか徹底されていたわけてもない。結局,これらの運用 を本件各処分の際に行わなかったのは,あくまても原告ら自らの判断と評価 することかてきる。(イ) また,原告らは,乗務員の大半は土日の勤務を休むため,平日の実働 率は高く,他の乗務員か乗れる遊休車両か日々多数存在していたかのような 主張には理由かないと主張する。しかし,原告らにおいて,乗務員の大半か土日の勤務を休んているとか, それによって平日の実働率か高くなっていると認めるに足りる十分な証拠は ない。なお,原告Bの平成21年7月10日から同月16日まての点呼簿(甲 B8ないし14)をみても,マーカーか引いてある使用停止対象車両は11 両てあるか,いすれの日においても,その他に11両以上の稼働していない 事業用車両かあることかうかかわれるのてあり,遊休車両は十分にあったも のと認められる。以上のとおり,原告らの主張は採用てきない。」 第5 結論
以上によれは,原告Aか本件A処分の取消しを求める請求及ひ原告Bか本件 B処分の取消しを求める請求についてはいすれも理由かあり,損害賠償請求に ついては理由かないから,同旨の原判は相当てあって,原告ら及ひ被告の本 件各控訴はいすれも理由かないから,これを棄却することとして,主文のとお り判する。大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官 小 松 一 雄
裁判官 遠 藤 曜 子
裁判官平井健一郎は,転補につき,署名押印することかてきない。裁判長裁判官 小 松 一 雄
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