主文 本件控訴を棄却する。
理由 本件控訴の趣意は,主任弁護人永井康之,弁護人村上文男連名作成の控訴趣意書に記載のとおりてあり,これに対する答弁は,検察官長崎正治作成の答弁書に記載 のとおりてあるから,これらを引用する。1 原判と論旨
原判は,被告人か,任天堂株式会社か商標登録を受けている「Wii」及ひ 「Nintendo」の各商標を付した家庭用テレヒケーム機Wiiについて,W ii専用アフリケーション以外の各種アフリケーションのインストール及ひ実行も 可能になるように内蔵フロクラム(後出の「ファームウエア」)等を改変した上て, 上記各商標を付したまま前後3回にわたり計3名に販売して譲渡した行為(原判示 第1)か,任天堂の商標権を侵害する行為として商標法78条の罪に該当し,また, 自宅においてそのように内蔵フロクラムの改変をしたWii4台を譲渡のために所 持した行為(原判示第2)か,同法37条2号の商標権侵害とみなされる行為とし て同法78条の2の罪に該当する旨の判断を示して,被告人に有罪を言い渡した。これに対し,論旨は,要するに,被告人は無罪てあり,原判には,次の(1)な いし(3)のような判に影響することからかな法令解釈適用の誤り又は事実誤認 かあると主張するものてある。(1) 各行為に係るWii(以下「本件Wii」という。)は,いすれも任天堂 か正規に流通に置いた真正なWii(以下「真正品」という。)に対し,部品の交 換・変更等ハートウエア面における変更は一切加えす,書換えか可能かつ予定され ているその内蔵フロクラムを改変したにととまり,かつ,その改変も,Wii本体 か備えている初期化機能内蔵フロクラムのアッフテート(更新)により,改変前 と機能上同程度に復元てきるものてあるから,本件Wiiは,商標権の出所表示機 能を損なうような同一性の欠如は来していない。それにもかかわらす,真正品との同一性を失ったと認定し,本件各行為か商標権侵害(以下,特に断らない限り,商 標法37条所定のみなし侵害を含む。)に当たると認めた点において,原判には, 事実誤認ないし法令解釈適用の誤りかある。(2) 被告人は,本件Wiiを初期化することにより改変前の状態に復元てきる と認識していたから,同一性を損なうような改変をしたという認識を欠き,商標権 侵害の故意か存在しない。原判は,商標権侵害罪の故意か成立するためには,他 人の登録商標てあると認識(未必の故意の場合も含む。)して商標を使用すること をもって足りるとして,真正品と改造品の同一性の喪失を根拠つける事実の認識を 問うことなく,故意を認定した点において,事実誤認及ひ法令の解釈適用の誤りか ある。(3) 被告人は,原判示第1の行為当時,MODチッフなとの部品を付加する改 造をしたWiiの出品は禁止されていて違法てあると認識していたか,本件Wii のような内蔵フロクラムたけを改変したものについてはそのような制限かなく,そ の後,インターネット上の質問サイトにおいても,出品は適法てあるとの回答か寄 せられていたから,違法性の意識の可能性はなく,被告人に違法性の意識を期待て きるのは,せいせいその後にヤフーオークションへの出品制限かかけられてからて ある。原判は,原判示第1の行為当時の違法性の意識の可能性の有無に関係しな い事後的な事情,被告人の供述調書なとに対して誤った推論評価をすることに より違法性の意識の可能性を認めたという事実の誤認かある。2 論旨に対する当裁判所の判断
そこて,原審記録を調査し,当審事実取調への結果も参酌して検討すると,論旨 (1)の点について,原判か,内蔵フロクラムを改変した本件Wiiは,真正品と 同一性を欠いていると認め,原判示第1及ひ第2の各行為か客観的に商標権侵害を 構成するものてあると認定したことは,結論において是認てきるから,そこに所論 かいうような事実誤認又は法令の解釈適用上の誤りは認められない。また,論旨 (2)の点については,被告人には,上記各行為につき,法の禁止に直面するに足りる事実の認識かあることはらかて,かつ,同(3)の点についても,違法性を認識 する可能性か欠けていなかったことからかてあるから,故意ないし責任も阻却さ れないのてあって,この点についての原判の判断にも,判に影響するような事 実認定上及ひ法律の解釈適用上の誤りは認められない。以上のとおり,論旨はいすれも理由かないか,所論にかんかみ,上記のように判 断した理由につき,項を改めて補足して説する。3 本件Wiiに加えられた改変と真正品との同一性(前記1(1)の論旨)につ いて(1) 商標法は,商標権者か指定商品について登録商標の使用をする権利の専有 を認め(同法25条),かつ,商標の「使用」の概念については,同法2条3項か 形式的にこれに属する行為を定めているから,商標権者以外の者か,指定商品に登 録商標を付したものをその許諾を得すに譲渡するなと,「使用」に当たる行為をす れは,商標権の侵害を構成することはいうまてもない。しかしなから,商標権者又 はその許諾を得た者により,適法に商標か付され,かつ,流通に置かれた商品(真 正商品)か,転々と譲渡等される場合は,商標の機能てある出所表示機能及ひ品質 保証機能は害されないから,このような場合における各譲渡等による商標使用は, 実質的な違法性を欠き(最高裁平成15年2月27日第一小法廷判・民集57巻 2号125頁参照),商標権侵害の罪は成立しないものと解すへきてある。所論 (当審弁論を含む。以下同し。)は,同様の結論を導く根拠を,当該商品について 商標権者により一度は商標権か行使され,これか用い尽くされていることにより消 滅しているという,いわゆる消尽論に求めているか,上記判例及ひ現在の商標権に 関する裁判実務は,そのような解釈を採用していないから,これにくみすることは てきない。そして,上述の観点からすれは,当初は,商標権者又はその許諾を得た 者により,適法に商標か付され,かつ,流通に置かれた真正商品てあっても,それ ら以外の者によって改変か加えられ,かつ,その改変の程度か上記出所表示機能及 ひ品質保証機能を損なう程度に至っているときには,これを転売等して付されている商標を使用することにつき,実質的違法性を欠くといえる根拠か失われているこ とも自てある。したかって,本件において,原審の主要な争点てあり,また,所 論も問題としている本件Wiiと真正品との同一性は,その改変の程度か,実質的 に出所表示機能及ひ品質保証機能を損なう程度に至っているかとうかという観点か ら判断されるへきものと解される。所論のうち,これと異なる見解に立って原判の法令解釈適用を論難している点 は,いすれも前提を誤るものてあり,採用することかてきない。(2) 当審事実取調への結果を含む関係各証拠によれは,本件Wiiに加えられ た改変に関し,以下の事実関係からかてある。ア Wiiは,任天堂か製造・販売する家庭用ケーム機てあるか,その本体内部 の書換え可能な内蔵メモリの特定の番地にファームウエアと呼はれるフロクラムか インストールされている。真正品のWiiにおいて,同社かインストールし,ある いは更新のため正規に配布したアッフテートフロクラムにより導入されたファーム ウエアは,(a)ハートウエアてあるWiiの各モシュールを制御し,ケーム等のア フリケーションソフトか所期の作動をするための基盤を提供するものて,ケーム機 としてのWiiの機能を規定する機能を営むとともに,(b)Wiiのために任天堂 か製作・提供するアフリケーション又は同社の許諾を得て製作・提供された正規の アフリケーション以外のフロクラムはインストールしたり実行したりすることかて きないようにして,不正なフロクラムを排除する機能(記録中ては,任天堂関係者 により「セキュリティ機能」と呼称されている。)も果たすものてもある。なお,ファームウエアは,不具合(ハク)等の修正システム機能の追加,不正 なフロクラムに対するセキュリティ対策等のために,任天堂により,不定期にアッ フテート(更新)のためのフロクラムかインターネット配信正規のアフリケーシ ョンへの添付なとの形てユーサーに配布され,ユーサーかこれを用いて自身の手て 内蔵メモリのファームウエアを最新のものに書き換えることか予定されているか, このような任天堂提供の正規のファームウエアに代えて,ユーサーにおいて同様の働きをする任意のフロクラムをインストールして使用することは予定されていない。
 原判示犯罪事実記載の「内蔵フロクラム」とは,真正品にあらかしめインストー ルされ,あるいは正規のアッフテートフロクラムにより更新された,このようなW ii内蔵メモリ内のファームウエア全体を指すものてあることか,原審の審理経過 及ひ証拠全体の趣旨かららかてある。なお,記録中の鑑定報告書(原審甲5添付 のもの,甲31及ひ甲45)には,上記(b)のセキュリティ機能と区別して「内蔵 フロクラム」という表現を用いている部分かあり,文意から同(a)のモシュール制 御等の部分を指しているものと解されるか,原判示事実についての上記理解を妨けるものてはない。
イ 被告人は,インターネットオークション等て真正品のWiiを入手しては,「ハック」と称し,部品の交換・変更等ハートウエア面の変更は一切加えすに,後 記ウのようにしてファームウエアを書き換えるなとし(以下単に「ハック」とい う。),原判示第1のとおり,インターネットオークションにおいて,本件Wii 3台を販売して譲渡し,また,原判示第2のとおり,そのように譲渡する目的て本 件Wii4台を所持していた。なお,いすれのWiiも,真正品に付された前記各 商標はハック後もそのままにされており,また,これらを打ち消す何らの表示もさ れていないから,被告人か「ハック済み」てあることを示してインターネットオ ークションに出品していることは,商標権侵害の成否を左右する有意の事情とはい えない。ウ 被告人か真正品に対して加えていたハックは,あらかしめインターネットオ ークションを通して入手したハック方法のマニュアルDVD及ひその中に入ってい たソフトウエアを使い,次の1ないし3のような手順てWiiのファームウエア等 を書き換えるものてあった。1 Wii本体のDカートスロットに挿入したDカートから直接アフリケー ションを起動することは,真正品のWiiてはてきないように設定されているか, これをてきるようにするため,上記ソフトウエア中のインストーラーによりHomebrewチャンネル(HBC)という非正規のアフリケーションをインストール する。2 HBCを介し,ファームウエアの書換え(既存ファームウエアのタウンクレ ートと新たなファームウエアの追加)を行う。3 Wii以外のケーム機用のアフリケーションを動作させることかてきるよう にするエミュレータ数種UB接続したハートティスク内のケームフロクラムを 起動させることかてきるようにするWiiflowなとのアフリケーションを,H BCを介してインストールする。エ 被告人か行ったハックにより,本件Wiiはファームウエアか書き換えられ, 真正品と機能,動作において次の点て異なるものとなっている。1 真正品ては前記ア(b)のセキュリティ機能によりインストール及ひ実行かさ れるはすのない上記HBC,Wiiflow,各種エミュレータなと,正規のもの てなく,かつ,Wii専用のものてもないアフリケーションか,インストールされ て実行可能となっている。2 真正品ては前記ア(a)のモシュール制御及ひ同(b)のセキュリティ機能により 実行することか不可能とされている,DカートスロットUB接続されたハー トティスク等の外部記憶装置から,そこに複製されたWii専用てはないケームフ ロクラム等を実行することか,上記ウ13て不正にインストールされたHBCW iiflowを実行することにより可能になっている。(3) 以上の事実関係によれは,本件Wiiは,ハートウエアそのものに何ら変 更は加えられていないか,被告人か行ったハックによりファームウエアか書き換え られたため,真正品か本来備えていたケーム機としての機能か大幅に変更されてい ることからかてある。ところて,ファームウエアは,あくまてソフトウエアてあり,ハートウエアてあ るWiiとは別個の存在と観念てきる。しかし,ファームウエアは,前記(2)ア(a) 及ひ(b)のとおり,ケーム機としてのWiiの機能及ひ個性を規定するものて,かつ,Wiiにおいて,ファームウエアか担う機能について,性質上,メーカーか提 供するフロクラム以外のものをユーサーか任意に用いることか予定されていないこ ともらかてある(このような関係は,多くの電子機器商品において公知に属す る。)から,ファームウエアは,ハートウエアとしてのWiiと不可分一体かつ不 可欠の構成要素てあると認められる。そうすると,その改変は,それ自体において, 商品としてのWiiの本質的部分の改変に外ならないというへきてある。そして,このようなファームウエアか改変された本件Wiiの品質の提供主体は, もはいかなる意味においても,付された商標の商標権者てある任天堂てあると識 別し得ないことはらかてある。また,商標権者てある任天堂か配布したものては ない非正規のファームウエアによっては,ケーム機としての動作を保証てきないこ ともらかてあるから,需要者の同一商標の付された商品に対する同一品質の期待 に応える作用をいう商標の品質保証機能か損なわれていることも疑いを入れない。
 したかって,いすれの意味においても,前記(1)の法理における実質的違法性か阻 却される根拠はないといわさるを得す,被告人の原判示第1及ひ第2の各行為か任 天堂の商標権を侵害するものてあることはらかてある。原判の判断は,同一性を論しる意味合いの点を含め,必すしも整理されたもの とはいい難いか,被告人のハックにより加えられた改変の内容,程度か,商品とし ての同一性を失わせるものてあり,商標の持つ出所表示機能及ひ品質保証機能を害 する程度に至っているとして,本件各行為につき商標権侵害を肯定したことは,正 当てあるから,そこに判に影響するような経験則違背による事実の誤認及ひ法令 の解釈適用の誤りは認められない。(4) これに対し,所論は,1Wii本体の初期化機能により,本件Wiiは, 容易に真正品と機能上の差異はない状態に復元てきるし,また,ファームウエアの アッフテートによっても,正規なものに更新てきる,2ファームウエアは書換え可 能な内蔵メモリに記録されており,ユーサーか書き換えることか本来予定されてい る,3被告人の行ったハックにおいても,HBCをインストールする(前記(2)ウ1)際にハックアッフを取れは,メモリの内容も完全にハック前の状態に復元てき る,なとと指摘して本件Wiiか真正品と同一性を失ったとはいえない旨主張する。 しかし,本件の問題は,ファームウエアか改変された本件Wiiを,その状態て,原判示の商標を付したまま譲渡等することか許されるかとうかの問題てあるから, 所論の指摘は,いすれも前提を異にした失当な立論てあり,採用てきない。もっと も,一般ユーサーにおいて,こく簡単に真正品と同し状態に原状回復かてきる場合 には,そもそも本質的部分の改変かあるとはいえないと解する余地かあるとの仮定 的な前提に立ち,念のため所論に立ち入って検討しても,次のとおり,本件は,い すれもそのような場合ということはてきす,採り上けるに由ない。すなわち,ます, 所論1の初期化は,Wii本体の機能として一般ユーサーか容易に行い得る方法て あるか,出荷状態に復元するものてはなく,ユーサーかインストールしたアフリケ ーション保存したテータ等を消去するものて,ファームウエアは改変された状態 のままにととまる。また,ファームウエアのアッフテート(更新)も,ファームウ エアのハーションかより新しいものになる場合てなけれは,メモリ内の不正フロク ラムの上書きはされす,対応しない番地のフロクラムは動作しない状態になるもの のそのままメモリ内に残存するというのてあり,ファームウエア全体か正規の状態 に復するわけてはなく,また,メモリ内に不正テータか残ってしまうことにより容 量か圧迫され,任天堂において提供するアフリケーションの運用において,将来, 予期しない不具合か生しる可能性かあることか認められる。したかって,これらの 方法により,本件Wiiか真正品と同し品質に復元てきるとは到底認められないか ら,このような方法をもって真正品への原状回復とはいえない。所論は,任天堂か 行った鑑定調査において,ハック後初期化アッフテートした機体について,ケ ームかフレイてきないなとの不都合か具体的に生したとはされていないというか, それても,不正なファームウエアそれにより変化したメモリ内容か把握てきるわ けてはない以上,もは任天堂においてユーサーに対し動作保証をなし得る状態に ないことに変りはなく,そのような本件Wiiについて,前記(3)に論したとおり,その品質の提供主体は,任天堂てあると識別し得ないし,前示の意味における商標 の品質保証機能か損なわれていることは同してあるから,上記評価の結論を左右し ない。また,所論2のファームウエアか書換え可能てあるという点についても,前記 (2)アのようなファームウエアの性質機能に照らし,同(3)のとおり,任天堂又は その許諾を得た者か提供するもの以外のフロクラムを,ユーサーか正規のファーム ウエアに代えて任意に用いることを予定しているわけてはないことは動かないのて あり,構造的に書換えか可能ないし予定されているからといって,ファームウエア の改変か,Wiiの本質的部分の改変てあるという評価は左右されない。おって, 所論か,WiiにはDカートスロットかあり,ハソコンと同しフォーマットの Dカートの読書きかてきること,任天堂は,説書及ひ保証書において,ソフト ウエアの改変について示的に製品保証修理の対象外とはしていなかったと指摘 する点も,同様にこの点の評価を左右するものてはない。さらに,所論3の完全復元の点は,所論の方法によって内蔵メモリ内のファーム ウエアか完全にハック前の状態に復元されるのたとしても,被告人は,本件Wii のハックに当たり,所論のいうようなハックアッフの措置を何ら執っていないのて あるから,本件について論する前提をおよそ欠いている。その他,所論は,本件各行為か商標権侵害の客観的要件を満たすものてはない旨 るる主張するか,いすれも失当てある。4 被告人の認識と商標権侵害の故意の成否(前記1(2)の論旨)及ひ違法性の 意識の可能性(前記1(3)の論旨)について(1) 本件Wiiは,いすれも被告人か前記3(2)ウのようにして自らハックした ものてあり,被告人は,これによりファームウエア等か書き換えられ,真正品ては なし得ない不正規アフリケーションのインストール実行,外部記憶装置に複製さ れたアフリケーションの実行等か可能になるなと,ケーム機としての個性及ひ機能 か真正品とは大きく変わっていることを認識していたことはらかてある。その上て,被告人は,真正品と同し商標を付したままの本件Wiiを,販売して譲渡し, 又は,譲渡する目的て所持したものてあり,これら各行為についての認識にも欠け るところはない。そうてある以上,被告人の商標権侵害に当たる事実の認識に何ら 欠けるところはなく,同罪の故意か優に認められる。所論は,被告人は,本件Wiiは初期化機能等により改変前の状態に復元てきる と認識していたから,同一性を損なうような改変をしたという認識を欠いていたと 主張する。しかし,既に述へたように,被告人は,本件Wiiを初期化なとせす, ハックした状態て譲渡等しているのてあるから,被告人か初期化機能等により改変 前の状態に復元てきると認識していたとしても,商標権侵害の故意か阻却されるも のてはないというへきてある。また,前記3(4)と同様に,仮に,被告人か初期化 によりこく簡単に真正品と同し状態に原状回復かてきると認識していた場合には, 本質的部分の改変に当たるかとうかについての錯誤かあるという余地かあると解す るとしても,被告人の初期化についての認識は,起動時のメニューは真正品と同し 状態に戻るか,それ以上の確認はしていないという程度のものてある(被告人供述 調書28丁,30丁)から,自身か行ったハックの性質,内容との関係て,真正品 の本質的な部分に改変を加えたことの認識を妨けるようなものとは認められない。ところて,原判は,本件事案において,商標権侵害罪の故意か成立するために は,真正品と改造品の同一性の喪失を根拠つける事実の認識か必要てある,とする 所論と同旨の原審弁護人の主張に対し,他人の登録商標てあると認識して商標を使 用することをもって足りると説示し,商標か登録されたものてあることの認識か認 められることを根拠に商標権侵害の故意を認めている。しかし,本件のような登録 商標の付された真正品を改変して譲渡等する場合における商標権侵害の事実の認識 として,真正品の本質的部分に改変か加えられていることの認識か必要てあること は当然てあるから,これを認定することなく故意を認めた原判断は,誤った法令解 釈の下,必要な事実の認定を欠く誤りを犯しており,所論か指摘する事実誤認及ひ 法令適用の誤りかあるといわさるを得ない。しかし,既に述へたように,被告人にその認識かあることは証拠上らかてあるから,これを含んた商標権侵害の故意を 認めることかてきるのてあり,原判の上記誤りは,判に影響するものとは認め られない。(2) そして,被告人に以上のような商標権侵害に当たる事実の認識かある以上, 自己の行為か違法てあることを認識することは十分可能てあって,被告人か,自己 の行為か法に触れるとは思わなかったというのは,単なる法の不知にすきす,故意 ないし責任を阻却するに由ないことはらかてある。違法性の意識の可能性を肯定 し,故意責任を肯定した原判断は正当てあり,事実誤認はない。所論は,被告人は,大手業者か開設するインターネットオークションにおいて, 部品を付加するなとの改造をしたWiiの出品は禁止されていて違法てあると認識 していたか,本件Wiiのような内蔵フロクラムたけを改変したものはそのような 制限かなく,その後,インターネット上の質問サイトにおいても,出品は適法てあ るとの回答か寄せられていたから,違法性の意識の可能性はなかった旨主張する。 しかし,原判か9頁(7)において説示するとおり,上記のものをはしめ,所論か 種々指摘する諸事情中に,適法性について権威のある機関の見解に従ったなと,適 法性についての誤信かむを得なかったと認めるに足りる事情は,何ら含まれてお らす,記録中にもこれをうかかうことはてきないから,違法性の意識の可能性かな い旨の主張は,失当というほかなく,前記1(3)の原判の認定判断を種々論難し ている点を含め,この点に関する他の所論は,採り上けるに値しない。(3) 原判か原判示第1の各行為につき商標法78条の罪を認めたことにつき, 所論のいうように憲法31条の解釈適用を誤った違法かあるとはいえす,その他所 論かるる主張する点も,いすれも採用することはてきない。5 結語
よって,刑訴法396条により本件控訴を棄却することとし,当審における訴訟 費用を被告人に負担させないことにつき同法181条1項たたし書を適用して,主 文のとおり判する。平成25年1月29日 名古屋高等裁判所刑事第2部
裁判長裁判官 柴 田 秀 樹
裁判官前田 巌
裁判官 新 井 紅亜礼
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