平成24年(う)第1344号 監禁,強制わいせつ,児童買春,児童ホルノに 係る行為等の処罰及ひ児童の保護等に関する法律違反被告事件 平成24年11月1日 東京高等裁判所第10刑事部判決主文
本件控訴を棄却する。
 当審における未決勾留日数中70日を原判決の刑に算入する。理由
1 控訴の趣意 本件控訴の趣意は,要するに,第1に,原判決は,13歳未満の児童2名に対する監禁罪(原判示第1,第4),強制わいせつ罪(同第2,第5),児童買春, 児童ホルノに係る行為等の処罰及ひ児童の保護等に関する法律(以下「児童ホル ノ法」という。)7条3項の児童ホルノ製造罪(同第3,第6)の成立を認めた 上て,すへての罪か併合罪の関係にあるとしたか,1原判示の各被害児童を撮影 した動画は,いすれも一般人を基準として性欲を興奮させ又は刺激するものに当 たらないから児童ホルノ製造罪は成立しない,2各監禁罪と各強制わいせつ罪は, いすれも観念的競合又は牽連犯の関係にあり,各強制わいせつ罪と各児童ホルノ 製造罪は,いすれも観念的競合の関係にあるか又は包括一罪てあり,各児童ホル ノ製造罪は包括一罪てあるから,結局,原判示第1から第6まては全体として一 罪になる,したかって,原判決には判決に影響を及ほすことか明らかな法令の適 用の誤りかある,第2に,被告人を懲役3年に処した原判決の量刑は重すきて不 当てあるというのてある。2 法令適用の誤りの論旨について
(1) 児童ホルノ該当性について 所論は,原判示第3及ひ第6の動画は,一般人を基準とすれは性欲を興奮させ又は刺激するものに当たらない旨主張する。しかし,被告人は,原判示第 3については,女児てある被害児童のハンティ等を下ろして陰部を露出させ る姿態をとらせ,これを撮影,記録し,同第6については,女児てある被害 児童のハンティ等を下ろして陰部を露出させ,その陰部を被告人か触るなと の姿態をとらせ,これらを撮影,記録したのてあるから,これらの動画の上 記部分は,各被害児童の年齢か当時6歳てあったことを考慮しても,社会通 念上,一般人を基準として性欲を興奮させ又は刺激するものに該当する。(2) 罪数関係について
ア 監禁罪と強制わいせつ罪の罪数関係について
所論は,原判示の各監禁罪と各強制わいせつ罪について,いすれも,1性 的意図をもって被害児童を監禁する行為は,被害児童の性的自由を害して 被告人の性的欲求を満足させる行為てあるから,監禁行為とわいせつ行為 は一体の行為として評価され,観念的競合の関係にある,2仮に,観念的 競合の関係にはないとしても,監禁罪と強制わいせつ罪は手段と結果の関 係にあるから牽連犯の関係にある旨主張する。そこて検討すると,被告人は,各被害児童に対し,いすれも,わいせつ行為をする目的て公衆トイレ内に誘い込んた後,内鍵を施錠したり(原判示第4),トアの前に立ちふさかるなとして(同第1),陰部を触る等のわいせつ行為をしたものてあるか,わいせつ行為に及んていること自体かトア前に立ちはたかることとなって監禁行為は継続しているし,わいせつ行
為か終了した直後にその場から逃走して被害児童を解放している。そうすると,刑法176条後段に触れる行為と同法220条に触れる行為とはほとんと重なり合っているといえる上,社会的評価において,トイレのトアの前に立ちふさかるなとして脱出不能にする動態と,このような姿勢をとりなからわいせつな行為をする動態は,被害児童をトイレに閉しこめてわいせつな行為をするという単一の意思に基つく一体的な動態というへきてあるから,原判示の各監禁罪と各強制わいせつ罪は,いすれも観念的競合の関係にあるものと解される。
イ 強制わいせつ罪と児童ホルノ製造罪の罪数関係について 所論は,原判示の各強制わいせつ罪と各児童ホルノ製造罪について,いす れも,1被告人か,被害児童に陰部を露出させる姿態等をとらせ,これら を撮影した行為は,撮影行為も含めて全体として,児童ホルノ法7条3項 に触れる行為てあるとともに刑法176条後段にも触れる行為てあり,行 為の全部か重なり合う上,わいせつ行為として同質てあるから観念的競合 の関係にある,2仮に,観念的競合の関係にはないとしても包括一罪てある旨主張する。
 そこてます1の点について検討すると,その事実の概要は,被告人か,13歳未満の被害児童に対し,そのハンティ等を下ろして陰部を手指て触り,舐めるなとした上,自己の陰茎を握らせるなとする(以下,これらの行為を「直接的なわいせつ行為」という。)際に,性的欲求又はその関心を満足させるために,これらの姿態をとらせてその一部(原判示第2,第3の場合)又はそのほとんと(原判示第5,第6の場合)を携帯電話て撮影し
て児童ホルノを製造したというものてある。
確かに,所論のいうとおり,一般に上記撮影行為自体も刑法176条後段の強制わいせつ罪を構成すると解されている上,直接的なわいせつ行為の姿態をとらせる行為か児童ホルノ法7条3項の構成要件的行為てあることからすると,本件において,刑法176条後段に触れる行為と児童ホルノ法7条3項に触れる行為とは重なり合いかあるといえる。しかし,本件ては,被告人は,撮影行為自体を手段としてわいせつ行為を遂けようとしたものてはないから,撮影行為の重なり合いを重視するのは適当てない。また,直接的なわいせつ行為の姿態をとらせる行為は,上記のとおり構成要 件的行為てはあるか,児童ホルノ製造罪の構成要件的行為の中核は撮影行 為(製造行為)にあるのてあって,同罪の処罰範囲を限定する趣旨て「姿 態をとらせ」という要件か構成要件に規定されたことに鑑みると,そのよ うな姿態をとらせる行為をとらえて,刑法176条後段に触れる行為と児 童ホルノ法7条3項に触れる行為とか行為の主要な部分において重なり合 うといえるかはなお検討の余地かある。そして,直接的なわいせつ行為と,これを撮影,記録する行為は,共に被告人の性的欲求又はその関心を満足させるという点ては共通するものの,社会的評価においては,前者はわいせつ行為そのものてあるのに対し,後者か本来意味するところは撮影行為により児童ホルノを製造することにあるから,各行為の意味合いは全く異なるし,それそれ別個の意思の発現としての行為てあるというへきてある。そうすると,両行為か被告人によって同時に行われていても,それそれか性質を異にする行為てあって,社会
的に一体の行為とみるのは相当てない。
また,児童ホルノ製造罪は,複製行為も犯罪を構成し得る(最高裁平成18年2月20日第三小法廷決定・刑集60巻2号216頁)ため,時間的に広かりを持って行われることか想定されるのに対し,強制わいせつ罪は,通常,一時点において行われるものてあるから,刑法176条後段に触れる行為と児童ホルノ法7条3項に触れる行為か同時性を甚たしく欠く場合か想定される。したかって,両罪か観念的競合の関係にあるとすると,例えは,複製行為による児童ホルノ製造罪の有罪判決か確定したときに,撮影の際に犯した強制わいせつ罪に一事不再理効か及ふ事態なと,妥当性を欠く事態か十分生し得る。一方て,こうした事態を避けるため,両罪について,複製行為かない場合は観念的競合の関係にあるか,複製行為か行われれは併合罪の関係にあるとすることは,複製行為の性質上,必すしもその有無か明らかになるとは限らない上,同し撮影行為てあるにもかかわらす,後日なされた複製行為の有無により撮影行為自体の評価か変わることになり,相当な解釈とは言い難い。
以上のとおり,本件において,被告人の刑法176条後段に触れる行為と児童ホルノ法7条3項に触れる行為は,その行為の重なり合いについて上記のような問題かある上,社会的評価において,直接的なわいせつ行為とこれを撮影する行為は,別個の意思に基つく相当性質の異なる行為てあり,一罪として扱うことを妥当とするたけの社会的一体性は認められす,それそれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるから,両罪は観念的競合の関係にはなく,併合罪の関係にあると解するのか相当てあ
る。
次に,2の点については,強制わいせつ罪と児童ホルノ製造罪の保護法益 の相違や,上記のとおり両行為の性質か相当異なることなとからすると, 包括一罪にはならないというへきてある。ウ 各児童ホルノ製造罪の罪数関係について 所論は,原判示の各児童ホルノ製造罪について,児童を性の対象とする風潮を防くという社会的法益を主な保護法益とするから,被害児童か別てあ っても,犯行の日時場所か乖離せす被告人の犯意か継続しており,かつ, 記録媒体か同一てある本件においては,包括一罪となる旨主張する。しかしなから,児童ホルノ製造罪は,被害児童の人格や権利も保護法益と するものてあるところ,原判示第3と第6の被害児童は別人てあること, 各犯行は約5か月離れて場所も異なるため異なる機会に新たに犯意か形成 されたものというへきてあることからすると,記録媒体か同一てあっても, 一罪として1回の処罰によるへき事案とは考えられす,包括一罪にはなら ないと解すへきてある。エ 小括 上記アのとおり,監禁罪と強制わいせつ罪とは観念的競合の関係にあるから,これを併合罪の関係にあるとした原判決には法令適用の誤りかあるか, 上記イ及ひウを踏まえれは,この誤りによって最終的な処断刑の範囲は変 わらないから,判決に影響を及ほすものとはいえない。3 量刑不当の論旨について 本件は,被告人か,平成23年7月と12月に,それそれ別の被害児童を公園
の公衆トイレに誘い込んてトイレ内に監禁し,その間,13歳未満の児童に対し てわいせつ行為をするとともに,その姿態を携帯電話て撮影,記録したという, 各2件の監禁,強制わいせつ,児童ホルノ製造の事案てある。被告人は,いすれも公園て一人て遊んていた見知らぬ当時6歳の児童に声をか け,その未熟さや性的知識のなさにつけ込んて密室のトイレに誘い込み,自己の 性的欲求を満たすために犯行に及んたものてあり,卑劣かつ悪質な犯行てある。
 被告人か難病による大きなストレスを抱えていたことを考慮しても,身勝手な動 機に酌量の余地は乏しいと言わさるを得ない。いすれも10分足らすの犯行てあ ったものの,陰部を舐めたり自己の陰茎を握らせるなとして射精するに至ってい るほか,その一部を後て見るために撮影しており犯情は極めて悪いというほかな い。各被害児童は過激なわいせつ行為をされ,その顔か特定てきる形て撮影まて されたのてあって,その精神的衝撃や不安感,不快感は大きく,成長過程におけ る悪影響も否定てきないし,その保護者らにも多大な衝撃を与えたものてある。そうすると,被告人の刑事責任は重いというほかなく,事実を認めて反省し, 謝罪の手紙を書くなとしているほか,被害児童の保護者の一人との面会を契機に 更生の意を強くしていること,被告人の両親かカウンセリンク等の受診を検討し た上て今後の監督を約束していること,被害児童側に各80万円を支払い示談か 成立していること,2万円を贖罪寄付したこと,比較的若年て前科前歴かないこ と,難病を患っていること,その他所論か指摘する酌むへき事情を十分考慮して も,原判決の量刑か重すきて不当てあるとはいえない。所論は,原判決後の事情 として,被告人か反省を深め,性癖矯正のため依存症治療の専門クリニックの相 談員と文通を始めたことや,上記の面会した保護者か原判決の量刑は重すきる旨の考えを示していること等を指摘するか,その責任の重大性に鑑みると,これらを考慮しても,上記の判断は変わらない。
 4 結論
よって,論旨はいすれも理由かないから,刑訴法396条により本件控訴を棄 却し,刑法21条を適用して当審における未決勾留日数中70日を原判決の刑に 算入し,当審における訴訟費用は刑訴法181条1項たたし書を適用してこれを 被告人に負担させないこととして,主文のとおり判決する。(裁判長裁判官 村瀬 均 裁判官 倉澤千巖 裁判官 池田知史)
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