平成24年10月4日 名古屋高等裁判所 平成24年(ネ)第316号 損害賠償請求控訴事件 (原審・岐阜地方裁判所多治見支部平成22年(ワ)第266号)主文
 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴人の当審て追加した請求を棄却する。
 3 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及ひ理由第1 当事者の求めた裁判
 1 控訴人
(1) 原判を取り消す。
(2) 被控訴人は,控訴人に対し,5000万円及ひこれに対する平成22年11月11日から支払済みまて年5分の割合による金員を支払え。
 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。(4) 仮執行宣言
2 被控訴人 主文と同旨 第2 事案の概要
1 本件は,控訴人か被控訴人の管理する流水フールて逆飛込みをして頚髄損傷 等の傷害を負った事故につき,控訴人か被控訴人に対し,被控訴人に安全保護 義務違反かあったとして,債務不履行による損害賠償請求権に基つき,1億8 505万7811円の内金8000万円及ひこれに対する訴状送達の日の翌日 てある平成22年11月11日から支払済みまて民法所定の年5分の割合によ る遅延損害金の支払を求めた事案てある。原審か,控訴人の請求を棄却したところ,控訴人か控訴した。
 1控訴人は,当審において,上記第1の1(2)のとおり請求を減縮したほか, 民法717条に基つく損害賠償請求を追加し,上記債務不履行による損害賠償 請求と選択的てあるとした。以下,略語は,特段の断りのない限り,原判の例による。
 2 前提となる事実次のとおり原判を補正するほか,原判「事実及ひ理由」欄の第2の1に 記載のとおりてあるから,これを引用する。(原判の補正)
原判2頁14行目の「底面」を「底面(控訴人の主張)あるいは側面(被 控訴人の主張)」と改める。3 債務不履行に基つく損害賠償請求に関する当事者の主張 次のとおり当審における当事者の主張を付加するほかは,原判「事実及ひ理由」欄の第2の3に記載のとおりてあるから,これを引用する。(控訴人の主張)
(1) 原判の事実誤認等について
原判は,控訴人か本件フールへの逆飛込みによる危険を認識しなから, あえて自らその危険を犯して逆飛込みを行って本件事故を発生させたとの認 定をしているか,控訴人か事故の発生を認識し,これを容認して飛込みをし た事実はなく,そのような証拠もない。したかって,原判は,被控訴人か本件フール利用者に対して負っている 安全保護義務を果たしていたかを具体的に検討すへきてあるのに,その検討 をしないまま,これを肯定して控訴人の請求を棄却しているものて,不当て ある。(2) 被控訴人に安全保護義務違反かあったことについて 本件フールに飛込みをした場合には重篤な結果を伴う事故か発生する可能性かあり,被控訴人は,利用者か本件フールに飛込みをすることを予見し得 2たから,被控訴人の負担する安全保護義務の内容は,本件フールへの飛込み を阻止すへき措置をとることてあったのに,被控訴人は,以下のとおり,同 義務に基つく十分な措置を講しなかった。ア 本件フールの水深は約1mてあるか,平成17年7月付けの財団法人日本水泳連盟作成の「フール水深とスタート台の高さに関するカイトライ ン」(甲47)によると,フールての飛込事故に関する安全確保の観点か ら,最低限確保すへき水深は1.35mとされているから,成人ないしは 成人と同様な体格を有する未成年(以下「成人等」という。)か本件フー ルに飛ひ込んた場合には,重篤な事故か発生する可能性かあった。イ 被控訴人か,本件フールに成人等か飛ひ込むことかあることについて, 予見てきたし,少なくとも予見可能てあったことは,被控訴人か開業当時 から本件フールの周辺に「飛込禁止」の張り紙を貼付していたことから らかてある。また,本件フールの水深か約1mてあることは,その表示かなく,一見 してらかてはない状況にあるから,本件フールの利用者か,本件フール の水深を確認することなく,本件フールに飛ひ込むことはあり得ることて あり,そのことは予見可能てあった。そして,本件フールと同様に飛込みを禁止されていた隣接フール(20 mの屋内フールて,水深は本件フールより深い。)において,平成13年 1月20日に26歳の男性か酒を飲みふさけてフールサイトを走って頭か らフールに飛ひ込み,頭を打って5日から1週間入院した事件かあったか, このことから,成人ても,酒に酔った状態ふさけあっていた状態ては, 飛込禁止の張り紙の存在を認識していても,フールに飛ひ込むことかある ことを,被控訴人も十分認識てきたはすてあり,まして,判断能力にお いて未成熟てはあるか,身体的には成人と同視てきる子ともか,本件フー ルに飛ひ込むことは容易に予見てきることてある。ウ 上記ア及ひイから,被控訴人には利用者か本件フールに飛ひ込むことか ないよう,次のような措置を講する義務かあったか,被控訴人は,飛込禁 止の張り紙をし,おさなりに監視委員の配置をしたたけて,同義務を尽く さなかった。(ア) 成人等か物理的に本件フールに近寄れないようにする措置か考えられ るか,そのためには,成人と付き添いの必要な幼児ないしは小学生程度 の子ともに限って本件フールの立ち入りを認め,中学生以上の立入りを 禁止する。(イ) 肉体的に成人と同視てきる未成年者に対して本件フールへの飛込みを 思いととまらせるための措置として,入場の際に飛込みの危険性につい て注意喚起し,飛込禁止の意味を具体的に告知することか考えられる。
 生命,身体に重大な危険かあることを,改めて認識させておけは,飛ひ 込もうとしたときに,同行動を躊躇させる契機となるか,被控訴人は, 文書ても口頭ても一切そのような告知をしていない。(ウ) 飛込禁止を利用者に周知させ,飛込禁止を真に実効あるものとする方 法としては,飛込禁止をマイクて繰り返し警告する措置か考えられるか, 被控訴人はそのような措置も講していない。なお,被控訴人は「飛込禁止」の張り紙をしている。しかし,飛込禁止 の理由としては,飛ひ込むことによって遊泳者と衝突する危険かあるこ とと,本件事故のようにフールの底に頭部を激しく衝突させて負傷する 危険かあることの二つの理由かあるため,その趣旨を確にしないと, 利用者において飛込禁止の趣旨を正確に認識かてきす,飛込禁止の理由 をフールか浅く,飛込みをすると頭部かフールの底面に衝突して重傷を 負うおそれかあるなとと認識てきる者はかりてはない。したかって,飛 込禁止の張り紙は,少なくとも飛込みによる受傷の危険性を示したも のとすへきてある。また,飛込禁止の張り紙は,飛ひ込もうとする人間に良く見える場所てなくてはならす,例えは手すり(柵)に貼付すれは,飛ひ込もうとする眼前に確認てきるか,こうした措置もとられていない。 (エ) 飛込みの気配かあれは直ちに阻止てきるような完全な監視態勢をとるへきてあったのに,そのような監視態勢は取られていなかった。 十分な監視員を配置しておれは,現実には一部の未成年者についての み注意を集中させれはよいのて,阻止は困難てはない。また,監視員かいるたけて抑制効果かある。しかし,本件フールの監視態勢については, 1人の監視員かフールソーンを移動しなから,本件フールと隣接フール の両方を監視するという態勢てあり,しかも同監視員は高校生のアルハ イトてあって,専門の訓練を受けたものてはなく,本件フール周辺を常 時監視する態勢となっておらす,全く付近に監視員かいない場合かあっ た。現実に本件事故の際には,監視員は事故に誰も気かついていないし, 被控訴人自身この監視員か,事故当時とこにいたのかさえ把握していな い。飛込禁止を実効あらしめるためには,常時複数の監視員か必要てあ り,うち1名は全体を高所から監視てきる場所に,うち少なくとも1名 はフールの周囲を移動しなから監視することか必要てある。そうてない と,具体的に走ったり,飛込みの気配の見える者を直ちに制御てきない。また,かつては,本件施設てもフールサイトにいた監視員か笛を鳴ら して注意を喚起することかあり,控訴人の母は,現実にそうしたことに よって飛込みをしようとしていた者か飛ひ込まなかったことを見ている。 ところか,本件事故にあっては,控訴人はシャクシーから本件フールに 小走りに走って飛ひ込んており,本件フール専用に常時高所から監視す る監視員あるいは周囲を巡回して監視する監視員かおれは,その段階て 笛を鳴らすなとして警告することは十分に可能てあって,本件飛込みを 回避することか可能てあった。(オ) 本件フールの南側の部分を本件フールの縁より低くしたり,本件フー 5ルの縁に沿って,柵(手すり)を設置したりする措置を講すへきてあっ た。本件フールの北側サイトは,フール縁より低くなっており,そこから フールに飛ひ込むことは不可能てあるか,本件フールの南側サイトは, フール縁と同し高さとなっており,飛込みか可能てあるため,本件フー ルの南側サイトについても本件フールの縁より低くすることにより,飛 ひ込むことを困難とし,容易に飛込みを阻止てきる。また,本件フールの縁に沿って柵(手すり)を設置することよっても, 飛込みを阻止てきる。実際にも,他のフール施設においては,フールの 縁に約1mの高さの金属製の柵(手すり)を設置している(甲48の2, 3)。控訴人はシャクシーから本件フールに小走りて進行し,そのまま 飛ひ込んているのてあるか,上記柵(手すり)か本件フールの縁に沿っ て設けられていれは,飛込みは不可能てある。少なくとも,勢いを持っ て飛ひ込むことはてきない。そして,柵(手すり)の設置には多額の費 用は必要てない。(被控訴人の主張)
(1) 本件事故の発生状況等に関する原判の認定に誤りかない。原判は,控訴人か本件事故の発生を認識し,これを容認してあえて 本件フールに飛ひ込んたと認定しているものてはなく,本件事故の発生 を十分認識し得たにもかかわらす,あえて本件フールに飛ひ込んて本件 事故を発生させたと認定しているのてあり,原判のこの認定に誤りは ない。本件フールか幼児用の流水フールてあり,付き添いの大人の腰程度ま ての水深しかないことは,本件フールを利用したことのある中学生てあ れは分かるし,控訴人は,水泳部に所属し,日常的にフールを利用して いたのてあるから,そのことを十分に分かっていた。また,本件フールの周囲には,「飛込禁止」の張り紙か何か所も張られていた。したかっ て,このような水深の浅い本件フールに頭から飛ひ込めは,フールの底 て頭部を打撲する危険かあることは,水泳部に所属し,飛込みの危険性 をよく分かっていた控訴人において十分認識てきたし,予見することか てきた。それにもかかわらす,控訴人は危険な飛込行為をして本件事故 を自ら発生させたものてあり,被控訴人には本件事故の発生につき注意 義務違反はない。なお,本件事故の態様は確てはなく,控訴人か本件フールの底ては なく,本件フールの側面の壁て頭を強打した可能性も否定てきない。控 訴人はフールに飛ひ込んた直後に,勢い余って,フールの側面の壁に頭 をふつけたとも考えられるからてある。(2) 被控訴人に安全保護義務違反かないことについて 本件フールは,幼児か水とたわむれ遊ふことを目的としたものてあり,通常有している安全性を有しており,本件フール自体に危険性はない。
 水深の浅い本件フールに飛ひ込んてフールの底て頭を打つ危険性は,通 常人てあれは,十分予見,認識することかてきるから,物理的に「飛込 み」を不可能にする措置をとることまての必要はない。被控訴人は,本 件フールの周囲に飛込禁止の張り紙をし,監視員によって本件フールの 周辺を監視させるなとしており,本件フールの安全対策として十分な注 意を払っていた。4 民法717条に基つく損害賠償請求に関する当事者の主張 (控訴人の主張)本件フールには,以下のとおり設置・保存の瑕疵かあり,本件事故は同瑕 疵により発生したから,本件フールの占有者てある被控訴人には民法717 条に基つき,本件事故により控訴人か被った損害を賠償する責任かある。(1) 本件フールは,利用者か飛込みによりその生命身体に対する危険かある 7構造てある。 本件フールについては,入場制限はなく,入場料さえ支払えは,誰ても入場し利用てきるから,多様な入場者に対しても安全か確保されるような 設備てある必要てある。ところか,前記のとおり,本件フールの水深は約1mてあり,フールて の飛込事故に関する安全確保の観点から,最低限確保すへき水深1.35 mに不足している。そのため,成人等か本件フールに飛ひ込んた場合には, 重篤な事故か発生する可能性かあった。そして,現に控訴人か本件フールに飛ひ込んて,本件事故か発生したも のてある。なお,本件フールは流水フールてあるか,流水フールてあっても,飛ひ 込んても底面に頭部を打たない程度の水深にすることと保護者か浮き袋を 着けた幼児を保護しなから,流れに身を任せて一緒に楽しむことの両方を 満足させることは可能てあるか,被控訴人は,その選択により,飛込みの 危険を避ける水深にせす,その結果として本件フールについて飛込みによ る危険性か生しることになったのてある。(2) 本件フールへの飛込行為は,フール施設として本来の使用方法に該当し, 異常な利用行為てはない。ア 本件フールは,フール施設てあるから,フール施設として利用する限りは利用方法に制限かなく(本件フールは流水フールてあるか,流水フ ールか全て水深か浅く,飛込みか危険てあるわけてはない。),本件フ ールへの飛込行為もフール施設としての利用の範疇に含まれている。なお,本件フールは水泳競技に使用されることか予定されていないこ と及ひ本件フールには飛込台か全く設置されていないことは事実てある か,その事実から直ちに,本件フールては当然に飛込行為は禁止されて いるとか,外観上飛込禁止か当然予測てきるとはいえす,本件フールか飛込禁止となったのは,本件フールについてフール施設としての本来の使用方法を被控訴人か一方的に制限していることによるものに過きない。 イ もっとも,本件フールについて,被控訴人によって飛込禁止という使 用方法の制限か徹底され,飛込みをする者か全くいない状態か長期にわ たって継続されていれは,飛込みの禁止は控訴人の主観的な意思から, 客観的な使用方法に変わったといえるかもしれないか,開業以来被控訴 人かその制限を徹底するためにしてきたことは,飛込禁止の「貼り紙」 「看板」(以下「貼り紙等」という。)を設置していたということたけ てあり,他には,飛ひ込もうとする者を躊躇させ再考させたり,飛込み を困難にさせたり,飛込みの勢いを減殺させる設備の設置等の措置を全 くとっていなかったから,本件フール施設ては,飛込禁止か一般的なルールとして確立されていたとはいえない。 また,操業から本件事故まての約15年間に,本件のほかには全く飛込行為かなかったなとということは到底考えられない。との程度の飛込 行為かあったかは不てある(常時本件フールの周囲に監視員かいない のて,飛込行為の集計もされていない。)。しかし,前記のとおり,本 件フールと同様に飛込禁止となっていた隣接フールにおいて飛込みかあ り,そのため短期間入院した事故か発生しており,これは氷山の一角て あり,この事件を前提とすれは,入院まては至らす,怪我もせす,治療 も受けることかなかった飛込行為か相当数あったことは予測てきる。そして,本件フールの深さか約1mてあることについては,その旨の 表示かなく,一見してらかな状況にはなかった(水深を確認するため には,意識的にフールに入って確認するか,一部透となっているとこ ろを見て確認することになるか,それてはおおよその水深確認しかてき ない。)から,本件フールの外観から直ちに本件フールへの飛込みか危 険てあると理解することは困難てあった。なお,貼り紙等についても,「飛込禁止」というたけの記載てあり, その理由として,飛ひ込むことによって泳いている人と衝突して双方か 受傷する危険かあるということと,フールの底面に衝突して受傷する危 険かあるということか考えられるか,これを見た者か前者の理由と理解 すれは本件のような流水フールか空いていた時間には飛込みか可能と考 えて,飛ひ込むことも考えられる。(3) 本件フールへの飛込みか通常予測てきない異常な行動とはいえない。 ア 本件フールについては,前記のとおり入場制限かなく,入場料さえ支 払えは誰ても入場し利用てきるから,多様な入場者に対しても安全か確保されるような設備か必要てあった。
イ そして,本件フールへの飛込みか一般的に予測てきたことは,「飛込禁止」を記載した貼り紙等の存在かららかてある。
 また,前記のとおり,隣接フールにおいては,飛込みか禁止されていたのに,飛込事件かあった。この事件のように,成人ても,酒に酔った 状態ふさけあっていた状態ては,飛込禁止の貼り紙の存在を認識して いても,フールに飛ひ込むことかあるのてある。まして,身体的には 成人と同視てきる判断能力において未成熟な中学生高校生か本件フー ルに飛ひ込むことは,通常予測てきない異常な行動とはいえない。本件事故にあっては,控訴人には具体的な記憶かないか,帰るために 更衣室に向かう途中て小走りに走って飛ひ込んた状況からすると,名残 惜しく最後に一泳きしようとしたこと,格好よく飛ひ込むところを弟 その友人に見せてろうとした感情から,危険を回避する判断能力か 低下し,更衣室に至る途上に存在した本件フールへ飛ひ込んたものと思 われる。(4) ところて,本件フールについての通常有すへき安全性の確保は,本件 フール施設の構造とともに,飛込みを阻止する被控訴人の措置とあいまって確保されることかあり得るか,飛込みを阻止するための被控訴人の 対応は,前記3(控訴人の主張)(2)ウのとおりてあって,極めて不十 分てあり,この観点からしても本件フール施設には瑕疵か存在する。(被控訴人の主張)
(1) 本件フールの設置管理の瑕疵の不存在について
ア 土地工作物か通常有すへき安全性を欠いているか否かは,その工作物 の構造,本来の用法,場所的環境及ひ利用状況等諸般の事情を総合考慮 して具体的,個別的に判断すへきてある(最高裁昭和45年8月20日 判参照)。イ 本件フールの構造 本件フールは,屋外に設置された流水フールて,全長63mの円形の水路に,水流を内環させるものてある。水路の幅は3m,水深は1m,水流の速さは時速1kmてある。
 ウ 本件フールの本来の用法流水フールは,ゆっくり流れる水の上に浮き袋等を浮かへ,浮き袋等 につかまったり横たわったまま水と共に流されたり,親子なとか水とた わむれなから一緒に楽しむことを目的に設置されたレシャーフールてあ る。したかって,流水フールは,全体の形状か長方形て直線のコースから なる競泳用のフールとは異なり,水泳競技に使用されることは当初から 予定されておらす,利用者か流水フールて泳く速さを競ったりするもの てはない。また,本件フールには飛込台は全く設置されておらす,競泳 用フールとは異なり,利用者か流水フールに飛ひ込むことは当初から全 く想定されていない。エ 本件フールの通常の利用方法 本件フールの実際の利用方法も,この本来の用法と同様てある。本件フールの利用者は,老若男女,幼児から高齢者まて多岐にわたっており, 親子なとか浮き袋等につかまって一緒に水に流されるなとして楽しんて いる。なお,時々,子供か足から本件フールに飛ひ込むことかあるか,被控 訴人てはこのような飛込みも禁止し,「飛込禁止」の貼り紙を本件フー ルの周囲に貼ったり,フール監視員を巡回させて監視し,違反者に厳し く注意している。したかって,本件フールに利用者か飛ひ込むことか常 態になっていることはなく,本件フールへの飛込みは通常の利用方法て はない。オ 本件フールに対する法的規制 流水フールなとのレシャーフールを規制する法律は存在しない。水泳競技に使用される競泳フールについては,財団法人日本水泳連盟の作成 した「フール公認規制」かあるか,この規制は流水フールなとのレシャ ーフールは対象としていない。ちなみに,競泳フールを対象とした「フール公認規制」は,競泳用の 標準フールの水深について,小中学校フールは80cm以上,それ以外の フールは1m以上としている。本件フールは,「フール公認規制」の対 象外てはあるか,その水深1mは,この規制の規準に照らしても適合し ている。カ 本件フールての事故の発生件数 本件フールては,平成7年2月の開業以来,本件事故か発生した平成20年8月18日まての約13年半にわたって,飛込事故は1件も発生していない。
キ 本件フールの管理態勢
被控訴人は,本件フールの周囲数か所に,「飛込禁止」の貼り紙をし, 本件フールに飛ひ込まないように,利用者に注意を呼ひかけている。また,監視員2名を本件フールの周りを巡回させ,利用者か本件フールの 周囲を走ったり,本件フールに飛ひ込まないように注意するなとして, 飛込事故等の防止のために必要な措置を取っている。ク 本件フールの安全性 以上のとおり,本件フールの構造本来の用法,実際の利用方法,過去に飛込事故か1件も発生していないこと,被控訴人の管理態勢等を総 合的に考えれは,本件フールは本来の用法に従って利用している限り, 飛込事故か発生することは考えられす,通常有すへき安全性を欠いてい るものとは考えられない。(2) 被控訴人には民法717条による不法行為責任かないことについて 本件フールは本来の用法に従えは安全性に欠けるものかない施設てある から,これを異常な方法て使用しないという注意義務は利用者側にある。
 すなわち,本件フールの設置管理する者は,本来の用法に従えは安全な 施設においては,利用者か危険を認識し得ないか,危険を認識していても 避け難い場合に,必要な範囲内て危険を警告する義務かあるにすきない。 水深の浅い流水フールに頭から飛ひ込めは大きなケカをする危険性か髙 いことは控訴人は十分理解していたこと,本件フールの周囲に「飛込禁止」 の貼り紙を数か所設置したり,フール監視員を巡回させていることを考えれは,本件フールの安全性に欠けるところはない。 したかって,本件フールに飛ひ込んたことにより発生した本件事故について,被控訴人には民法717条に基つく不法行為責任はない。 第3 当裁判所の判断1 認定事実 前提となる事実に証拠(甲3,4の1ないし3,甲36の3,甲38の1,40,44の3,乙1ないし5,7ないし9,証人U,証人V)及ひ弁論の全 趣旨によれは,以下の事実か認められる。(1) 本件フールの構造利用状況なと
ア 本件フールは,風呂施設,ハーテン施設及ひフール施設等からなるWの一施設てある。
 Wは,被控訴人か経営管理する温泉レシャー施設てあり,一般に開放され,所定の利用料金を支払えは,原則として,年齢性別なとを問わす, 誰ても利用てきる施設てあり,本件フールを含むフール施設も同様てある。Wには,フール施設として,本件フール(別紙図面の青色部分)のほか に,これに隣接して,遊泳目的用として,長方形型て長さ20m,水深約 1m,3コースの室内フール(以下「隣接フール」という。別紙図面の 「フール(20m×3コース)」部分)かあり,隣接フールにはウオータ ースライターの着水フール(別紙図面「着水フール」部分)か付設されて いる。イ 本件フールは,屋外に設置された流水フールて,別紙図面のとおり,幅 3mの水路を楕円形状に巡らせたような形状をし,同水路内を,水を循環 させて,常時緩かな水流となるようにしたフールてあり,水深は1mて ある。本件フールの南東側の壁は,透なアクリルカラス製となっており,ア クリルカラス越しに,フールの水深か分かるようになっている。被控訴人 は,ホームヘーシにおいて,本件フールについて「X屋外流水フール」と して宣伝している。本件フールのうち,上記アクリルカラスとなっている部分から北側にか けてのフールサイト部分(本件フールの全体の約3分の1の程度)は,フ ール壁に接してこれより低い位置に通路かあるなとのため,同部分からフ ールに飛ひ込むことは困難てあるか,その他のフールサイト部分において は,フールサイトとフール水面との間に,柵手すりなと飛込みの支障と なるものはないため,フールサイトから本件フールへの飛込みは容易てある。なお,飛込台は設置されていない。 他方,隣接フールにおいては,フールサイトとフール水面との間に,柵手すりなと飛込みの支障となるものはないため,飛込みは容易てある。なお,飛込台は設置されていない。
ウ 本件フールの利用については,後記エのとおり飛込みか禁止されている以外にはフールとしての利用に特段の制限はなく,水泳することも自由て あったか,前記のような構造及ひ形状てあるため,主として,流れる水の 上に浮き袋等を浮かへ,浮き袋等につかまったり,横たわったまま水と共 に流されたり,親子なとか水とたわむれるなとの方法て利用する者か多く, 被控訴人も,本件フールについて,主としてそのような利用を想定してい た。他方,隣接フールの利用についても,後記のとおり飛込みか禁止されて いる以外にはフールとしての利用方法に制限はなかったか,前記のような 構造及ひ形状てあったため,主に水泳(遊泳)目的て利用され,被控訴人 においても,そのような利用を主なものとして想定していた。エ 被控訴人は,Wか開業された平成7年2月当時から,本件フール及ひ隣 接フールての飛込みを禁止しており,本件事故当時において,本件フール 及ひ隣接フールの周囲の壁柱には,別紙図面の1ないし5の位置に,そ れそれ,「飛込禁止」の文字部分は注意を引くように赤字にした「危険て すから,飛込禁止します」と記載した縦40cm,横60cmの大きさの警告 板を設置し,また,同図面の6及ひ7の位置に,蛙の絵とともに「フール ソーン ハーテソーンはとひこまないてね」と記載した縦42cm,横30 cmの大きさの警告板を設置し,同図面の8の位置に,赤字に「飛込禁止」 と大書した縦24cm,横91cmの警告板を設置していた。もっとも,被控訴人は,上記警告板の設置以外には,本件フール及ひ隣 接フールについて飛込禁止てあることを利用者に知らせる措置(例えは,W入場に際して,飛込禁止を告知したり,館内マイクて飛込禁止の放送をするなとの措置)を講していなかった。
オ 本件フールにおいては,平成7年2月の開業以来,本件事故か発生した平成20年8月18日まての約13年半にわたって,飛込みにより負傷す るなとの事故か発生したことはない。なお,隣接フールにおいては,平成13年1月20日に,仲間と一緒に 来た26歳の男性か飲酒の上,逆飛込みをして頭部を打って頸椎かすれる なとの負傷をし,1週間近く入院するという事故かあった。カ 本件事故当時には,本件フール及ひ隣接フールなとかあるフールソーン を専門に監視する監視員1名(Y。当時高校3年生)とハーテソーンとそ の周辺を監視するための監視員1名(Z。現場コントロール(フール,ハ ーテソーン,浴室ソーンなとに人員を配置したり,指示を出したりする業 務)を担当する職員)か監視業務に従事し,本件フールサイト等を巡回し, 本件フール隣接フールの周囲を走ったりする利用者かあれは,注意する なとして,事故の発生を防止するようにしていた。Y及ひZとも,本件事故を目撃しておらす(本件事故発生時にとこを巡 回していたかも証拠上らかてない。),Yは,控訴人か本件フールから 引き上けられた後に本件事故の発生に気つき,Zに連絡し,救急車なとの 手配かなされた。(2) 本件事故発生の状況なと
ア 控訴人は,平成5年a月b日生まれて,本件事故当時14歳,中学3年生てあり,身長約170cm,体重約56kgてあり,中学1年生当時から学 校の水泳部に所属し,学校のフールて水泳競技の練習を行うなとしていた。また,控訴人は,小学5年生のころから毎年2回程度Wを訪れ,本件フ ール及ひ隣接フールを利用していた。イ 控訴人は,平成20年8月18日午後2時ころ,母,弟,弟の同級生家 16族(同級生とその弟及ひ母親)の6名てWを訪れ,所定の利用料金を支払 って入場した上,フール施設ハーテン施設て遊ひ,本件フールも利用し た。ウ 控訴人らは,同日午後5時近くになって帰宅の準備をすることになり, 屋外シャクシー(別紙図面の「屋外シャクシー」部分)につかった後,更 衣室に戻って着替えすることになったか,控訴人は,屋外シャクシーから 上かると,もう一泳きしようとして,小走りに別紙図面のAからBのよう な経路て本件フールに向かい,その南隅のフールサイト(別紙図面のB地 点辺り)から本件フールに逆飛込みをし,フール底面に頭頂部を衝突させ, 頚髄損傷等の傷害を負う本件事故か発生した。エ 控訴人は,従前の本件フールの利用経験に加え,本件事故当日にも本件 フールを利用していることから,本件事故当時,本件フールての飛込みか 禁止されていることを知っていたし,本件フールの水深か浅く,控訴人の 腰辺りまてしかないことも知っていた。以上のとおり認められ,この認定を左右するに足りる証拠はない。
なお,被控訴人は,本件事故は,控訴人か逆飛込みをして頭部を本件フール の底面てはなく,側面にふつけたことにより発生した可能性かある旨主張する か,証人Vの証言によれは,控訴人の治療に当たった病院の関係者から,控訴 人の頭頂部か赤くなっているのて,頭頂部をふつけたものてある旨の説を受 けたことか認められるから,被控訴人の主張は採用てきない。2 安全保護義務の債務不履行による損害賠償請求について
(1) 控訴人は,被控訴人の経営管理するWに利用料金を支払ってその施設に入場することにより,被控訴人との間て,本件フールを含むWの施設の利用契 約(以下「本件施設利用契約」という。)を締結したものてあるから,被控 訴人は,同契約に基つき,控訴人に対し,控訴人かWの施設を利用すること に伴って控訴人の生命身体に危害か生しることかないよう,その安全に配慮すへき義務(以下「安全配慮義務」という。)を負うものというへきてある。
 控訴人主張の安全保護義務も,その対象とする範囲内容はともかくとし て,概ね上記のような趣旨をいうものと解されるのて,以下においては,控訴人の安全保護義務についての主張も,安全配慮義務の主張として説示する。 (2) ところて,証拠(甲46,47)及ひ弁論の全趣旨によれは,財団法人日本水泳連盟は,平成17年7月,水泳フールの飛込みによる頚椎・頚髄損傷, 四肢麻痺等の重篤な事故の発生防止を目的として,「フール水深とスタート 台の高さに関するカイトライン」を策定し,これを公表したか,それには, 1フール公認規則ては,スタート端壁前6mまての水深か1.35m未満の フールについてはスタート台の設置を禁していること,2しかし,1.35 mの水深なら絶対安全な水深ということてはなく,如何なる飛込み姿勢に対 しても安全な水深となると,水深3m以上となること,3ところか,既存の フールにあっては,水深1mないし1.2m程度の施設かかなり多い状況て あり,一般の営業用フールにあってはその程度の水深のものかむしろ通常て あること,4如何なる飛込み状況の中ても安全確保という「絶対的な安全基 準」としててはなく,既存のフールの現状等を踏まえた現実的な妥協点とし て,水深1mないし1.35mのフールのスタート台の高さについて,水深 に応したスタート台の高さの目安(例えは水深1mないし1.1m未満のフ ールのスタート台の高さ(水面上)は0.25m±0.05mとするなと) を定めたか,このカイトラインのとおり実施しても,陸上,水中て姿勢・動 作等の要因か複合すれは,フール底に頭部を強打し,飛込事故か発生し得る こと等の趣旨の記載かあることか認められるところ,上記カイトラインにお ける飛込みとは,上記カイトラインの内容及ひ趣旨からして,競泳競技にお いて一般に行われている逆飛込み(頭からの飛込み)をいうものと解される。そして,前記1(1)の認定事実のとおり,本件フールは,その水深か1m てあり,実際にも,控訴人か,本件フールに逆飛込みをして,その頭部をフール底面に衝突させて頚髄損傷等の傷害を負ったのてあるから,上記カイト ラインの記載内容に照らして,本件フールにおいて逆飛込みをした場合には, その際の動作速度姿勢等によっては,上記カイトラインに記載されている ような頚髄損傷等の重篤な傷害事故の発生する危険かあることか認められる。(3) しかし,被控訴人においては,本件フールについて全面的に飛込みによる 利用を禁し,本件フール周囲に飛込禁止の警告板を複数掲示してその旨を 示していたのてあり,控訴人も,従前における本件フールの利用経験及ひ本 件事故当日の本件フールの利用により,本件フールにおいて飛込みか禁止さ れていることを知っていたことは,前記1て認定したとおりてある。したかって,控訴人は,被控訴人か本件フールの利用方法として,示的 に飛込みを禁止していたのに,そのことを知りなから,同禁止に違反して本 件フールに逆飛込みをして本件事故を発生させたものというほかない。そして,被控訴人か本件施設利用契約に基つき控訴人に対して負担する安 全配慮義務は,前記のとおり,控訴人かWの施設を利用することに伴って控 訴人の生命身体に生しることある危害を対象とするものてあるか,この場合 の利用とは,本件施設利用契約の通常の趣旨からして,施設の利用者か当該 施設について通常予定されている利用方法に従って利用することを前提とし ての利用てあるというへきてあるから,控訴人か,上記のとおり,被控訴人 か本件フールの利用方法として飛込みを禁止していることを知りなから,こ れに反して本件フールに飛ひ込むことによって生しることかある危害につい てまては及はす,被控訴人は,本件施設利用契約により,控訴人との関係て, そのような危害の発生を防止するために配慮すへき義務を負担するものては ないというへきてある。なせならは,被控訴人か施設の利用方法として示 的に禁止している場合のその利用方法により生しることかある危害は,原則 として,同施設か予定している通常の利用方法には含まれす,したかって, 被控訴人か本件施設利用契約に基つき控訴人に対して負担する安全配慮義務の範囲にも含まれないというへきてあるからてある。
(4) もっとも,本件フールにおいて,被控訴人の上記のような禁止にもかかわらす,これに違反して飛込みか頻繁に,あるいはしはしは行われている事実 かあって,飛込禁止か有名無実化していたなとの特段の事情かある場合には, 本件フールにおける飛込みか本件フールについて通常予定する利用方法てな いということはてきないから,被控訴人は,本件フールにおける飛込みを禁 止していることをもって,控訴人に対し,本件フールにおける飛込みによっ て生しることかある危害に対する安全配慮義務を免れるものてはないという へきてある。そこて,上記特段の事情の有無について検討するに,本件フールについて は,Wの開業以来13年余り,利用者か飛込みにより負傷した事故は発生し ていないことは前記1(1)オて認定したとおりてあり,証拠(乙8,証人U, 証人V)及ひ弁論の全趣旨によれは,本件事故当時,本件フールにおいて飛 込みかしはしは行われるなとにより,被控訴人による飛込禁止か有名無実化 しているような事実はなかったことか認められるから(証人Vは,控訴人の 母親てあり,控訴人は小学5年生のころから毎年2回程度Wを利用している か,本件事故前に控訴人か本件フール隣接フールに飛ひ込んたことはない し,監視員か,フールサイトを走ったり,飛ひ込んたりした人かいると, 「走らない」とか,「飛ひ込まない」なとと叫んて注意していた旨証言して いる。なお,同証言にいう「飛込み」か,足からの飛込み,頭からの飛込み のいすれてあるかについては,その証言内容からはらかてない。),上記 特段の事情の存在を認めることはてきない。(5) 控訴人は,本件フールに飛込みをした場合には重篤な結果を伴う事故か発 生する可能性かあり,かつ,被控訴人は,利用者の中には本件フールに飛ひ 込む者かあることを予見することかてきたから,被控訴人には,控訴人等の 利用者に対する安全配慮義務の一環として,控訴人等の利用者か本件フールに飛ひ込むのを阻止するために十分な措置を講すへき義務かあったのに,被 控訴人はこれを怠っていた旨主張する。しかし,前記(1)ないし(3)て説示したところによれは,被控訴人か,その 経営管理するWの施設の利用者との間に締結する施設利用契約に基つき,当 該利用者に対して負担する安全配慮義務は,利用者に対し,利用者かWの施 設を,同施設か通常予定する利用方法て利用することに伴って利用者の生命 身体に危害か生しることかないよう,その安全に配慮すへき義務にととまる ものというへきてあるところ,利用者か,本件フールにおいて飛込みか禁止 されていることを知りなから,同禁止に違反して本件フールに逆飛込みをす ることは,同禁止か有名無実化しているなとの特段の事情の認められない本 件においては,本件フールについて通常予定されている利用方法の範囲を逸 脱するものてあるから,被控訴人か負担する上記安全配慮義務の範囲外てあ り,したかって,被控訴人には,同禁止に違反して本件フールに飛込みする 利用者かあることを前提として,これを阻止するための措置を講しる義務ま てはなく,これを怠ったからといって,上記安全配慮義務の不履行となるも のてはないというへきてある。したかって,控訴人の上記主張は,控訴人主張の飛込みを阻止するための 種々の措置の当否なとについて検討するまてもなく,採用することかてきな い。(6) 以上によれは,控訴人の安全保護義務の債務不履行による損害賠償請求は, その余の点について検討するまてもなく,理由かなく,棄却すへきてある。3 民法717条に基つく損害賠償請求について
(1) 前記1(1)の認定事実によれは,本件フールは,Wの諸施設の一つとして,屋外に設置されたフール施設てあり,被控訴人か経営管理する土地の工作物てあることからかてある。
(2) 本件フールの設置又は保存の瑕疵の有無
ア 本件フールはその水深か1mてあるため,本件フールにおいて逆飛込み をした場合には頚髄損傷等の重篤な事故か発生する危険(以下「本件危 険」という。)かあることは,前記2(2)て認定したとおりてあり,また, 控訴人か本件フールに逆飛込みをして本件事故か発生していることは,前 記前提となる事実のとおりてある。控訴人は,本件フールについて本件危険かあることか本件フールの設置 又は保存の瑕疵てある旨主張するのに対し,被控訴人は,本件フールにお いて飛込みか禁止されていることを理由として,本件危険の存在は本件フ ールの設置又は保存の瑕疵には当たらない旨主張して争うところ,民法7 17条1項にいう「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵かあること」とは, 土地工作物か通常有すへき安全性を欠いていることをいうか,同安全性を 欠くか否かは,その工作物の構造,本来の用法,場所的環境及ひ利用状況 等諸般の事情を総合考慮して具体的,個別的に判断すへきものてある(最 高裁昭和45年8月20日第一小法廷判・民集24巻9号1268頁, 最高裁昭和53年7月4日第三小法廷判・民集32巻5号809頁参 照)。そこて,以下において,上記見地に即して,本件危険かあることか本件 フールの設置又は保存の瑕疵に当たるか否かについて検討する。イ 本件フールは,屋外に設置された流水フールて,幅3m,水深1mの水 路を楕円形様に配置し,同水路にゆっくりとした速さて水を循環させてい ること,本件フールについては,飛込みか禁止さているほかには,フール としての利用方法に制限はなく,水泳(遊泳)することも自由てあるか, 上記のような形状及ひ構造等から,ゆっくり流れる水の上に浮き袋等を浮 かへ,浮き袋等につかまったり横たわったまま水と共に流されたり,親子 なとか水とたわむれなから一緒に楽しむという態様て利用する者か多く, そのような利用か一般的てあること,他方,隣接フールは,その構造等から,水泳(遊泳)のために利用されることか多く,そのような利用か一般 的てあること,本件フール及ひ隣接フールについては飛込み台か設置され ていないこと,被控訴人は,本件フール及ひ隣接フールについて飛込みを 禁止し,その旨の警告板を本件フール及ひ隣接フールの周囲の壁柱に複 数設置しており,本件フールについては,その周囲に別紙図面の1ないし 3及ひ8のとおり,壁等に4枚の警告板か設置されていること,本件フー ルについて,平成7年2月の開業以来,本件事故か発生した平成20年8 月18日まての約13年半にわたって,飛込みによる人身事故は発生して いないこと,本件フールについて,被控訴人による上記のような飛込禁止 措置にもかかわらす,飛込みか頻繁に,あるいはしはしは行われるなとに より飛込禁止か有名無実化しているというような事実は認められないこと, 控訴人は,本件フールについて飛込みか禁止されていることを知りなから, 同禁止に反して本件フールに逆飛込みをして,本件事故を惹起したものて あることは,前記1及ひ2て認定説示したとおりてある。そして,本件フールについて,その水面とフールサイトの位置関係なと から,一部を除き,フールサイトからの飛込みか容易てある構造となって いるのてあるか(前記1(1)イ),飛込みを逆飛込みに限って検討すると, 証拠(甲4の1,乙2,3,9)及ひ弁論の全趣旨によれは,本件フール は,上記のとおり,幅3m,水深1mの水路を楕円形様に配置した構造と 形状てあるところ(別紙図面の青色部分),楕円形様の南東部分(控訴人 か逆飛込みをした部分)及ひ北西部分の各弧状部分のフールサイトから水 路の直線方向に飛ひ込む場合を除き,本件フールについては,その大部分 において,一方のフールサイトから他方のフールサイト方向に逆飛込みを した場合には,その間にはフール幅程度の距離しかないため,他方のフー ルサイト側のフール壁に頭部を衝突する現実的な危険かあり,逆飛込みを 行おうとするようなフール利用者てあれは,その恐れから逆飛込みを思いととまるような構造及ひ形状となっていることか認められる。
 上記した本件フールの構造・形状及ひ利用状況なとによると,本件フー ルは,レシャー用フールてあって,競泳競技用のフールてなく,競泳競技 において行われる逆飛込みを予定した設備構造となっていないことは,そ の外形なとからもらかてあるところ,被控訴人は,本件フールにおける 飛込みを一律に禁止し,周囲の壁等にその旨の警告板を設置してそのこと を示しているのてあるから,本件フールについて,少なくとも逆飛込み する方法てこれを利用することは,本件フールの本来の用法ということは てきない。そして,前記1及ひ2て認定説示したとおり,本件フールにつ いては,平成7年2月の開業以来,本件事故発生まての約13年半にわた って,飛込みによる人身事故は発生しておらす,本件フールについて,被控訴人による上記のような飛込禁止措置にもかかわらす,飛込みか頻繁に, あるいはしはしは行われるなとにより飛込禁止か有名無実と化していると いうような事実も認められないのてあるから,本件フールにおける逆飛込 みか本件フールの通常の用法てあるということもてきないというへきてあ る。そうすると,本件フールについては,これに逆飛込みをした場合には, 頚髄損傷等の重篤な人身事故か発生するという本件危険かあるのてあるか, 上記のとおり,被控訴人により本件フールにおける飛込みか一律に禁止さ れ,その旨か警告板によって示されているのてあるから,本件フールの 利用者か飛込みを禁止する警告板に従って逆飛込みをするようなことはな いものと期待てきるし,社会通念上そのように期待することは相当てある のて,本件フールについて本件危険かあることをもって,本件フールか通 常備えるへき安全性に欠けるものということはてきない。ウ もっとも,本件フールは,前記1(1)アのとおり,Wの諸施設中のフー ル施設の一つとして,年齢等を問わす,被控訴人に所定の利用料を支払った者は,原則として誰ても入場して利用てきる施設てあるから,本件フー ルについて,幼児から老人まての幅広い年齢の者か安全に利用てきる施設 てあることを要するものというへきてあるところ,本件フールか飛込禁止 てあることは,飛込禁止の警告板により利用者に知らされていたものの, 他には本件フールての飛込みを禁止していることを利用者に周知させるた めの措置(例えは,館内放送てその旨を放送する措置フールの周囲に柵 を設置するなとして飛込みを困難とするような設備を設置する等の措置) は講しられていなかったのてあるから(前記1(1)エ),飛込禁止の警告 板の記載を理解てきない者それに従って行動することか必すしも期待て きない者(幼児小学生なと)との関係て,本件フールについて上記の安 全性か十分に確保されているといえるか否かについては,上記のような幼 児小学生については,同伴する保護者において,飛込禁止の警告板の趣 旨を十分に説するとともに,飛込行為をしないように適宜行動を監視し, 注意を与えるなとのことか期待されるところてはあるか,なお疑問かない わけてはない。しかし,控訴人は,本件事故当時,中学3年生てあり,従前の本件フー ルの利用経験及ひ本件事故当日の本件フールの利用から,本件フールにつ いて飛込みか禁止されていることは承知していたのてあるから,飛込禁止 の警告板の記載を理解てきない者にも,それに従って行動てきない者にも 該当しない。したかって,本件フールか上記のような年齢層の利用者との 関係て安全上問題かあるとしても,本件フールは,控訴人との関係ては通 常有すへき安全性に欠けるところかないのてあるから,控訴人か,そのこ とをもって,自己との関係ても本件フールに通常有すへき安全性に欠ける ところかあったと主張することはてきない。この点について,控訴人は,本件フールと同様に飛込みか禁止されてい る隣接フールにおいて,飲酒した成人男性かふさけてフールに飛ひ込み頭結論
よって,控訴人の債務不履行による損害賠償請求を棄却した原判は相当て あるから,本件控訴を棄却し,また,控訴人か当審て追加した民法717条にを打って1週間近く入院した事故の事例を挙けなから,身体は成人同様て あっても判断能力において未成熟な控訴人のような年齢の者か本件フール に飛ひ込むようなことかないよう,より徹底した飛込禁止措置を講するへ きてあった旨主張するのてあるか,隣接フールは,その構造及ひ形状等か ら,主に水泳(遊泳)用に利用されていたフールてあって,本件フールと はその構造及ひ形状等か異なるから,隣接フールての上記事故は本件フー ルにそのまま当てはまるものてはないし,そもそも,被控訴人には,飛込 禁止てあることを理解し,そのことに従って行動てきる者に対して,飛込 禁止に反して行動する者かあることを前提として,本件フール隣接フー ルについて飛込みを阻止すへき措置まてを講しなけれはならないものては ないというへきてある。エ 以上によると,本件フールについては,これに逆飛込みをした場合には, 頚髄損傷等の重篤な人身事故か発生するという本件危険かあるのてあるか, 被控訴人により本件フールにおける飛込みを一律に禁止され,その旨か 示されていたのてあるから,警告板を見て本件フールにおける飛込みか禁 止されていることを理解し,これに従って行動かてきるたけの思慮分別を 備えた利用者てある控訴人との関係ては,本件フールについて本件危険か あることをもって,本件フールか通常備えるへき安全性に欠けるものとい うことはてきない。(3) 以上のとおりてあるから,本件フールについて控訴人主張の瑕疵は,これ を認めることかてきないのて,控訴人の民法717条に基つく損害賠償請求 は,その余の点について検討するまてもなく,理由かなく,棄却すへきてあ る。よる損害賠償請求は理由かないから,これを棄却することとして,主文のとお り判する。名古屋高等裁判所民事第3部
裁判長裁判官 長門栄吉
(別紙図面) 添付省略
裁判官 内田計一 裁判官 山崎秀尚
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