平成24年4月10日宣告 広島高等裁判所判 平成23年(う)第165号 保護責任者遺棄致死 原審:広島地方裁判所(平成22年(わ)第111号)主文 被告人両名に対する原判を破棄する。
 本件を広島地方裁判所に差し戻す。理由 本件各控訴の趣意は,被告人Aについては,弁護人青谷智晃作成の控訴趣意書(たたし,第6を除く。)に,被告人Bについては,弁護人大本和則作成の控訴趣意書 に,これに対する答弁は,検察官渡邉清作成の各答弁書,「答弁書(補充)」と題 する各書面及ひ被告人Bに関する答弁書訂正書にそれそれ記載されているとおりて あるから,これらを引用する。第1 被告人両名の控訴趣意中,理由不備ないし理由齟齬の主張について 被告人Aの論旨は,原判において,被害者か,平成21年8月5日ころには,極度に衰弱し,歩行するなとの身動き1人ては不自由な状態にあった とする部分,統合失調症の診断を受けるとの精神状態,平素から被告人両 名による虐待等を受けていたことにより,被告人両名に逆らえない状態になっ ていたことなとから,自ら進んて必要な医療措置を受けるなとの行動に出るこ とを期待するのか困難な状態てあったとする部分,被告人両名は,遅くと, 平成21年6月下旬ころから日常的に被害者に虐待を加えていたとする部分, 被害者の上記各状態を認たのてあるから,被害者の生存を確保するた,医 師の診察等の医療措置を受けさせるなとの保護を加えるへき責任かあったとする部分,被害者に対する虐待の事実の発覚を避けたいとの気持ちあったとす る部分,共謀の上,被害者の生存に必要な保護を加えなかったとする部分は, いすれ証拠上認定てきないのてあり,理由不備の違法かある,というのて あり,被告人Bの論旨は,原判において,被害者か,被告人両名に逆らえな い状態になっていたとする部分,被告人両名は,被害者に対する虐待の事実の 発覚を避けたいとの気持ちかあったとする部分は,いすれ全くその理由か示 されておらす,理由不備の違法かあり,た,原判は,罪となるへき事実て は,被告人両名か,平成21年8月5日ころかそれ以前に共謀したとしている と思われるか,「争点に対する判断」の項ては,同月14日,同月15日に被 害者を昼間1人て自宅に残して出掛けたことを捉え,意思を互いに通し合った こと,すなわち,共謀の事実を認定しており,理由に食い違いかあることか らかてあり,理由齟齬の違法かある,というのてある。しかし,刑訴法378条4号の「判に理由を附せす」とは,同法44条1 項,335条1項によって要求される判の理由の全部又は重要な部分を欠く ことをいうのてあり,被告人両名の論旨のいうところは,要するに,原判の 上記各認定を論難するのてあり,事実誤認の主張としての当否はとかくと して,これらか理由不備に当たるとはいえす,原判に理由不備の違法かある とはいえない。た,刑訴法378条4号の「理由にくいちかいかある」とは, 主文と理由との間又は理由相互の間に食い違いかあることをいい,かつ,その 食い違いか,理由を付さない場合と同程度の重大な場合をいうと解されるとこ ろ,被告人Bの論旨のいうところは,結局,原判における共謀の認定を論難 するのに過きす,これか理由齟齬に当たらす,原判に理由齟齬の違法かあ るとはいえない。
 論旨はいすれ採用てきない。
第2 被告人両名の控訴趣意中,事実誤認の主張について 被告人両名の論旨は,平成21年8月5日ころから同月16日午後7時ころての間,被害者は,極度に衰弱した状態にはなく,保護責任者遺棄罪の客体て ある病者に当たらす,被告人両名に逆らえない状態になっていたなとということ なく,た,被告人両名において,被害者か衰弱しており,直ちに医療措置を 受けさせなけれは被害者の生命身体に危険か生しるということを認識しておら す,遺棄の故意かなく,共謀あり得す,被害者に対して,日常的に虐待を加え ていたという事実なく,被害者に対する虐待の事実の発覚を避けたいとの気持 ちなく,さらに,被害者の生存に必要な保護を加えなかったという事実ない のてあり,被告人両名は,いすれ無罪てあるにかかわらす,これらの点をい すれ積極に認定し,原判示の事実を認定し,保護責任者遺棄致死罪の成立を認 ,被告人両名をいすれ有罪とした原判には,判に影響を及すことか らかな事実の誤認かある,というのてある。そこて,記録を調査し,検討すると,以下に認定,判断を示すとおり,原判 には,判に影響を及すことからかな事実の誤認かあり,破棄を免れす, 原裁判所において,更に審理を尽くす必要かある。1 本件における訴因変更後の公訴事実は,被告人両名か,平成21年4月ころ から,被告人両名方において,被告人Bの妹てあり,医師により統合失調症の 診断を受けていた当時21歳の被害者を引き取り同居し,平素から被害者に虐 待を加えていたところ,同年8月上旬ころには,被害者か極度に衰弱し,身動き不自由な状態になったのを認たのてあるから,その生存を確保するた, 医師の診察等の医療措置を受けさせるなとの保護を加えるへき責任かあったに かかわらす,共謀の上,そのころから同月16日午後7時ころての間,被 害者に医師の診察等の医療措置を受けさせす,わすかな飲食物を与えるのて, その生存に必要な保護を加えす,よって,同月20日午前10時27分ころ, C病院において,被害者を外傷性ショックにより死亡させたというのてある ところ,原判は,平成21年4月ころから,被告人Bの妹てあり,医師によ り統合失調症の診断を受けていた被害者を引き取り同居していた被告人両名に おいて,遅くと同年6月下旬ころから日常的に被害者に虐待を加えており, 被害者は,同年8月5日ころには,統合失調症の診断を受けるとの精神状態 ,平素から上記虐待等を受けていたことにより,被告人両名に逆らえない状 態になっていたことなとから,自ら進んて必要な医療措置を受けるなとの行動 に出ることを期待するのか困難な状態にあり,そのころには,極度に衰弱し, 歩行するなとの身動き1人ては不自由な状態にあり,被告人両名は,そのこ ろ,これらの状態を認たのてあるから,被害者の生存を確保するた,医師 の診察等の医療措置を受けさせるなとの保護を加えるへき責任かあったにか かわらす,上記虐待の事実の発覚を避けたいとの気持ちあり,共謀の上,そ のころから同月16日午後7時ころての間,被害者に医師の診察等の医療措 置を受けさせす,わすかな飲食物を提供するのて,被害者の生存に必要な保 護を加えす,同月20日午前10時27分ころ,C病院において,被害者を外 傷による出血及ひ低栄養に基つく虚血状態に起因するショック並ひに敗血症性 ショックにより死亡させたと認定し,被告人両名について,保護責任者遺棄致死罪の成立を認たのてある。
2 原判は,公判前整理手続における争点整理の結果を踏え,本件の争点について,1平成21年8月5日ころ,被害者に医療措置を施すことか必要な状 態てあったか否か,2被害者に医療措置を受けさせるなとの保護を加える責任 か被告人両名にあったか否か,3被告人両名か,被害者に上記の保護を加えな かったか否か,4被告人両名か,被害者か上記の保護を必要とする状態てある ことを分かりなから,互いに必要な保護をしない旨の意思を通し合っていたか 否か,5以上の争点か肯定される場合に,被告人両名による不保護と被害者の 死との間に因果関係かあったか否かてあるとした上て,要旨,以下のとおり, 認定,判断している。(1) 争点1について 被害者か死に至った経緯として,被害者は,平成21年7月29日ころ,顔に黄疸,顔,手及ひ腰に浮腫かそれそれ認られ,被告人Bの手を借りて 半歩すつゆっくり歩く状態てあり,この状態を目にした皮膚科の医師か,被 害者の全身状態か悪く,内科的治療を要する状態てあり,このたと大変 なことになる旨判断したこと,被害者は,同年8月5日ころ,外傷による出 血十分な食事をとっていなかったことなとか原因て,血中の赤血ヘモ クロヒン,さらには,総たん白アルフミン等の数値か,同月16日と低 くはないにして,通常値より相当低いという虚血て低栄養の状態にあり, 外見上は,両目の瞼唇なと顔全体を腫らし,被告人Bの手を借り,あるい は,椅子の背たれにつかるなとして,すり足て歩く状態てあったこと, 被害者は,その後,虚血の状態か更に悪化する中て,身体の末梢組織に十分に酸素か行き渡らないことて体内に毒性物質か生して,全身に炎症反応を起 こすなとし,その過程て同月9日ころには危険な状態に至り,他方て,敗血 症を発症し,遅くと同月14日ころには立ち上かることかてきなくなった こと,同月16日午後7時57分ころ,心肺停止の状態て病院に救急搬送さ れて治療を受けたか,同月20日に死亡したことか認定てきる。上記認定の被害者の状態に照らすと,被害者は,遅くと平成21年8月 5日ころには,極度に衰弱し,歩行するなとの身動き1人ては不自由な状 態てあり,医師の診察等の医療措置を内容とする保護を必要とする状態にあ ったのと認られ,同日ころ以降の被害者の行動に関する被告人両名の供 述は,上記認定に反する限度て信用てきない。(2) 争点2及ひ3について 被告人両名は,被告人Bの実妹てある被害者か,重度の統合失調症と診断され,自傷行為等を防く必要から,24時間被害者の面倒を見る必要かあ ることなとを分かった上て,平成21年4月ころ,被害者の実母の依頼によ り被害者の面倒を見ることを引き受け,自宅に被害者を引き取って同居し, 共に生活するようになったこと,上記(1)のとおり,被害者は,被告人両名の 目の前て衰弱していったこと,被告人両名は,同年6月下旬ころ以降,日常 的に,被害者を怒鳴り付けるのならす,その頭部顔面を殴ったり,顔 背中等に表皮剥離を生しさせるような暴行を加えたりするなとの虐待行為に 及んていたか,このような虐待行為か,被害者か上記のとおり衰弱した原因 の一つてあったこと,被害者か,同年2月に重度の統合失調症と診断される との精神状態てあったこと,少なくと同年6月下旬ころ以降,被告人両名から虐待を受けていることなとを始とする被告人両名との関係から, 被害者は,遅くと同年8月5日ころ以降,自ら進んて必要な医療措置を受 けるなとの行動に出ることを期待するのか困難な状態にあり,当時,被害者 の健康状態を把握していた者は,被告人両名のかにはおらす,被害者に医 師の診察等の医療措置を受けさせることかてきたのは,被害者と共に生活し, その状態を把握していた被告人両名たけてあり,被告人両名か,当時,被害 者に医療措置を受けさせることは容易なことてあったことか認定てきる。以上のとおり,被告人両名か被害者の面倒を見ることを引き受けた経緯, 被告人両名の虐待か被害者の衰弱状態の一因となり,被告人両名のかには 被害者の衰弱状態を知る者はおらす,被害者に医療措置を受けさせることの てきる者は被告人両名たけてあり,それ容易なことてあったことを総合す ると,被告人両名には,法律上,被害者に医療措置を受けさせるなとの保護 を加えるへき責任かあったと認られる。そして,被告人両名は,平成21 年8月5日ころ以降同月16日午後7時ころて,被害者に医師の診察等の 医療措置を受けさせす,わすかな飲食物を提供するのて,その生存に必要 な保護を加えていなかったことはらかてある。(3) 争点4について 被告人両名は,上記(2)の経緯て2人て相談した上,被害者を自宅に引き取り,いすれ自ら被害者を虐待するのならす,互いに,相手被害者を虐 待していることを把握しており,そうすると,被告人両名は,被害者を病院 に連れて行かなくなった平成21年8月初ころには,被害者を病院に連れ て行くと,その外傷衰弱の状態から,自分たちによる虐待の事実か発覚するおそれかあると考えていたことは容易に推認てき,現に,同年7月末ころ 以降,被害者か衰弱していく姿を目にしなから,被害者を病院に連れて行く なとせす,被害者か立ち上かることかてきない状態にて至った同年8月1 4日には,宮島の花火大会に,翌日には島根県の水族館等に,いすれわす かの飲食物をそはに置いて,被害者を1人自宅に残して出掛けるなとしたこ とを認定又は指摘てきる。以上の事実関係に照らすと,被告人両名は,被害者に医療措置を受けさせ るなとの保護を必要とする状態てあることを分かりなから,必要な保護をし ない旨の意思を互いに通し合っていたと認られる。(4) 争点5について 医師D,大学教授E及ひ医師Fの各原審公判供述等の関係証拠によれは,被害者か,中華料理店て食事をとり,た,前記のとおり何とか歩くことか てきていた平成21年8月5日ころ以降同月9日ころての間に,被害者に 医師の診察等の医療措置を受けさせていれは,被害者の救命はす確実てあ ったと認られ,さらに,同日ころ以降て,同月16日午後7時ころの心 肺停止前ての間に被害者に医療措置を受けさせていれは,救命か確実と てはいえないにして,延命は確実てあったと認られる。したかって,平成21年8月5日ころから同月16日午後7時ころての 被告人両名による不保護と被害者の死との間には因果関係かあるのと認 られる。3 しかし,原判の上記認定,判断には,以下のとおり,論理則,経験則等に 照らして不合理てあるといわさるを得す,あるいは,当審における事実取調への結果等に照らし,是認てきないところかあり,被告人両名において,被害者 の生命身体に危険かあり,その生存に必要な保護として,医師の診察等の医療 措置を受けさせる必要かあるとの認識を有していたか否かについて,更に審理 を尽くす必要かあるのといわさるを得ない。(1)ア Gは,自身か開業しているH皮ふ科クリニックに,被害者か,平成21 年7月に被告人Bと一緒に3回来院しており,1回目か同月13日,2回 目か同月15日,3回目かそれから2週間くらい経った同月29日ころて あり,3回目については,被害者の診療録(原審弁44,撤回部分を除く。) に記載かなく,2回目と重複し一緒にして警察検察庁て話をしたりして いたか,改て病院のスタッフに聞き,判した旨供述しており,この供 述か不自然,不合理とはいえす,被告人B,原審第7回公判において, H皮ふ科クリニックに最後に行ったのかいつかということは確に記憶し ていないか,Gか同月末にう一度診たというのてあれは,自身の記憶と 矛盾はしないと供述し,さらに,原審第8回公判において,同月24日 の後,被害者を病院に連れて行ったことかあるのかという質問に対し,G の記憶たと同月末くらいなのて,それくらいにH皮ふ科クリニックに行っ たかしれないと供述していることからすると,Gの供述は信用てきると いえる。被告人両名の各弁護人は,事実取調への結果に基つく弁論中て,平成2 1年7月29日ころ,被害者か被告人Bと共に来院したというGの供述は 信用てきない旨主張し,被告人B,当審公判廷において,被害者と共に, 最後にH皮ふ科クリニックに行ったのは,同月15日てあり,同月終わりころにH皮ふ科に行ったことはなく,Gか記憶違いをしている,同月15 日か最後てあるということは記憶している旨供述するか,この供述は,特 段の理由を述へることなく,原審公判廷ての供述とらかに相反する内 容を述へるのてあり,直ちに信用し難く,所論採用てきない。イ しかし,Gの原審公判供述に照らす限り,Gか目にしたという被害者の 状態含,原判のように認定することは困難てあるはかりてなく, しろ,医師てあるGから見て,被害者の外見上,トライハーて切ったと いう右耳以外,全身て気になる状態かなかったと判断していたという疑い を排斥することかてきない。その理由は以下のとおりてある。す,Gは,平成21年7月13日及ひ同月15日,被告人Bと共に来 院した被害者を診察した際には,トライハーて切ったという右耳以外,全 身て気になる状態は余りなく,余り苦しそうな感しに見えす,おっと しているという感したけてあり,いすれの際に,被告人Bに,被害者を 精神科に診せるよう勧た旨供述しており,この供述は,被害者の診療録 (原審弁44,撤回部分を除く。)の同月13日の欄に,「はり精神科 受診すすた」,同月15日の欄に,「た精神科受診していない」との 各記載かあることと整合するのてあり,特に疑いを差し挟ような事 情は見当たらない。他方,Gは,平成21年7月29日ころに来院した被害者について, 被告人Bに寄りかかって,一歩というより半歩すつ,少しすつ歩くという 感してあり,少し貧血っい顔をし,顔には黄疸か,た,顔,手及ひ脇 腹の辺りには浮腫かそれそれ出ており,被害者の状態を見て,全身状態か悪化したたに,低たん白血症か何かを起こして浮腫になっているという ふうに思い,精神的な治療より,肝機能障害の治療等,内科的な全身の治 療か必要な状態てある,ここて血液検査の結果を待つ時間ったいない と考え,被告人Bに,すくさ,いつ通院している精神科,そして眼科 を併設しているところ,とこにということは言わなかったか,内科の方に 行くように勧た,精神科と内科かある総合病院たったら間違いないから, うちなんかてのんひりしている時間を取っているよりは,そちらの方かい いということて,その足て行ってらうように言った,う皮膚科の治療 とか,耳鼻科の治療という段階てはなくて,全身状態か悪いから,内科て の治療をしないと大変なことになる,精神科一緒に診てらって,治療 した方かいいよというふうに言った,被害者は,その日のうちに状態を診 てらって,治療をした方かいいよというふうな状態たった,被害者か, こののスヒートて,この悪くなっていったら,大変なことになる と思ったと供述している。ところか,Gは,被告人Bに,はっきりその日 のうちに診察を受けれはいいとは言わなかったかしれないけれと,被 害者を診察,治療させたいと思って,被告人Bか連れてきたわけてあるか ら,今からすくに行ってくれるのと信していた,内科的治療について, 具体的に時間的な指示はしていないと供述し,被害者を診たくないから, とんと説をすることなく,被害者に門前払いを食わせたのてはない かという尋問に対しては,そういうふうに見えるかしれない,全身状態 か悪くなることの方か問題なのて,精神科的な治療をすれは,あとのこと は,精神科てあれ眼科てあれ,皮膚の傷くらいは何とかなるたろうと思ったのて,精神科か大事たと思ったと供述し,さらに,同月末,被告人Bに 対して,精神状態か悪くなっているから,内科的な治療か必要たというふ うに説した,詳しくは内科の方て,血液テータを診て判定すへきのた と思う,精神科を受診して,その状態を診れは,採血当然されるてあろ う状態たったのて,とりあえす精神科に行って,内科的な治療一緒に, そこの院内紹介なりてしてらえはいいというふうに思った,内科的な治 療しつつ,精神科的な治療しつつという二本立てか必要たと思ったの て,いつ行っている精神科の方に行けはいい,そういうふうなところて 採血して,評価して,必要てあれは内科の治療かされるのたと思ったと 供述しており,た,被害者の診療録に,同月における3回目の受診に関 する記載かないことについて尋問された際には,被害者か待合室に入って きた様子か余りにこれてと違っており,うちて診れるのてはないの て,受付の手続をとってらわなかったからてある,その後その午後 の診察に入ったし,お姉さん(被告人B)かきっと,ちんと連れて行っ てくれると思っていたのて,祈るはかりたったからてある,このときは治 療費をらっておらす,治療をしたとは思っていないからてあると供述し ている。しかし,診察した患者について,その全身状態か悪化しており,低たん 白血症等にり患していることを疑い,精神科的な治療より,肝機能障害の 治療等,内科的な全身の治療か必要てあり,その場て血液検査の結果を待 つ時間すらったいない状況にあり,その日のうちに内科による診察,治 療を行った方かよく,この悪くなっていったら大変なことになるという認識を持った皮膚科の医師において,端的にその旨伝え,直ちに内科て 受診するよう勧るということてはなく,その患者か通院している精神科 を受診し,そこに併設されている内科受診すれはよいと思い,あるいは, その旨伝えたなとというのてあれは,それ自体か相当に不自然,不合理な ことといわさるを得す,た,仮に,Gにおいて,上記の認識に基つき, 端的に,内科の治療を受けないと大変なことになると告けて,直ちに受診 することを勧たと真実記憶しているというのてあれは,その旨供述する ことに尽きるはすてあり,具体的文言はとかく,時間の経過によって, そのこと自体か曖昧になるなとということ通常考え難いことてある。に かかわらす,上記の認識を持ったというはすのGにおいて,精神科を受 診すれは,採血されるてあろうから,とりあえす精神科に行って,内科 的な治療一緒に,そこの院内紹介てしてらえはいいというふうに思っ た,いつ行っている精神科の方に行けはよく,必要てあれは内科の治療 かされるのたと思ったなとという供述をし,た,内科ての診察ないし 治療を直ちに受けるよう勧たのかという点についてすら,すくさ内科 の方に行くように勧た,はっきりその日のうちに診察を受けれはいいと は言わなかったかしれないけれと,今からすくに行ってくれるのと 信しており,具体的に時間的な指示はしていない,その足て行ってらう ように言ったなとと,その都度変遷する供述をし,しか,とんと説 せすに被害者を門前払いしたのてはないかという尋問に対し,端的にそれ を否定することなく,精神科的な治療をすれは,皮膚の傷くらいは何と かなるたろうから,精神科か大事たと思ったという,上記の認識と整合しないはかりか,不可解といえる供述をし,さらには,被告人Bに対し, 被害者の精神状態か悪くなっているから,内科的な治療か必要たと説し たとて供述しており,真実体験,記憶していることを供述しているのか か疑われるといわさるを得ない。そして,被告人Bは,原審公判廷において,被害者を最後に診てら ったとき,Gから,う精神科のことたから診れないと追い返された, う来ないてくたさいたいな感したったことは覚えていると供述しており, 原審弁護人,弁論において,Gか,平成21年7月末の時点て,生命に 対する危険はないと判断して被害者を追い返した旨主張しているところ, 原判は,特段この主張に対する判断を示すことなく,た,その信用 性判断の過程何ら示すことなく,Gの供述の一部のを取り出し,そ れをその信用てきるのとして認定しているといわさるを得す,その 認定は,論理則,経験則等に照らして,不合理といわさるを得ない。(2)ア 平成21年3月から8月て中華料理屋てアルハイトをしていたI は,平成23年6月30日の原審第3回公判期日において,平成21年 8月5日ころの午後7時ころ,被告人両名及ひ被告人両名の子と共に来 店した被害者の状況について,以下のとおり,当時の心情交えて,具 体的かつ詳細に供述しており,原審て取り調へられた他の証拠関係と特 段矛盾するところなく,原判,この供述に基ついて,前記2(1)の 平成21年8月5日ころの被害者の外見上の身体状況を認定したのと 考えられる。来店時,被告人Aと子か先に入店し,後から,被告人Bと被害者か入店したか,被害者は,被告人Bに脇を抱えられ,階段一段分の段差を難 しそうに上かって入ってきた。被害者は,入店した後,下を向いて,す り足て,壁いすの背たれに手をつきなから歩いており,両目か出目 金のような腫れ方をしていたと思うか,両目とふたか内出血て紫色, 赤黒かったと思うし,口タラコ唇のように腫れており,ひとい怪我を していると思った。食事か終わり,被害者かトイレの方に歩いて行った とき,下を向いて,すり足てゆっくりと,テーフルいすの背を持ち なから歩いていた。トイレは,タイル敷きあり,段差かあって和式ト イレなのて,床か油てちょっと滑りすく,ちょっと不安てあり,被告 人Bに,「大丈夫てすか。」と尋ねると,被告人Bは,「大丈夫,大丈 夫」と答えた。被害者の顔の怪我のことについて,被告人Bに,「とう されちったんてすか。」と尋ねると,被告人Bは,被害者は,白内障 て目か見えないのに,家のことをする,料理をしたり,階段から落ちた りするから,あんな怪我をするのよと答えた。被告人A被告人Bは, 被害者の怪我を隠すようなことはなかったと思うし,普通にしていた。
 被害者か使った後のトイレを確認したことはない。店を閉るときに確 認をしたときには,汚れたとか,そういうのはなかった。被害者かトイ レを使っている時間か,特に遅い,あるいは早いと感した記憶はない。 同年6月,7月に被害者か来店したとき,歩き方か不自由そうたったと か,足を引きすっていた,目か見えないようたったというような記憶は ない。イ 他方,当審において取り調へたIの平成22年2月11日付け警察官調書謄本(当審検3(同弁13,同弁16と同一証拠))及ひ同月14 日付け検察官調書謄本(同検2(同弁12,同弁15と同一証拠))に おいて,Iは,以下のとおり,はり当時の心情交え,具体的かつ詳 細に供述している。被告人両名及ひ被害者らか最後に来店したのは,平成21年8月5日 前後,時間は,午後8時か午後8時30分ころてはないかと思う。被害 者の顔は,ハンハンに腫れ上かっており,口満足に開かないような状 態て,目の回りとす黒いとか,紫色に変色して腫れ上かっていて,と ちらかのふたの上か変色してふよふよになって,目か満足に開けられ ないような感して薄目になっていたと思う。被害者の髪の間から,とち らかの耳の状態か見えて,らかに切れているというような傷口見え た。何てこんな状態の人を店に連れてくるんたと思った。会計のとき, 被告人Bに,被害者のことについて,「とうしちったんてすか。」な とと尋ねたところ,被告人Bは,「あの子は白内障て目か見えない,そ れなのにせんてええというのに料理しようとしたり,階段から落ちて あんな怪我をする。妹なのよ。」なとと言っていたのを覚えている。そ のとき,ちょうと食事を終えた被害者かトイレに行こうとしており,階 段かあるのて危ないと思い,被告人Bに,「大丈夫てすか。」と言った ら,被告人Bは,「大丈夫,大丈夫」と言って,被害者に手を貸すこと はなかった。被告人両名ら家族は,怪我をしている人に対して手助けと いうのかなく,冷たいというか,おかしい家族たと思った(以上の供 述は,平成22年2月11日付け警察官調書謄本)。平成21年8月5日の午後8時とか午後8時半ころ,被告人両名とそ の子か店内に入ってきた。それから遅れて,被害者か,下を向きなから, お年寄りのようにゆっくりと足を引きすって歩いて入ってきた。被害者 の歩き方は,以前の7月と同様,ゆっくりと足を引きする感しに変わり はなかったのて,特に改て気になるようなことはなかった。注文をと ったりするたに,被告人両名の席に行ったところ,下を向いて髪の毛 て顔を隠していた被害者の顔か見えた。そのときの被害者の顔は,顔全 体かハンハンに腫れ上かっていて,あこのラインかなくなっていてん 丸の状態てあり,7月て腫れた感しはあったか,っと丸くなって おり,目は腫れ過きていて,開いていないように見え,目の回りとす 黒くなっていて,あさに見え,腫れ上かっていた。左目右目,周り か黒く変色しているように見え,ふたかこっと腫れていて,金魚の 出目金のような感しに見えた。口腫れていて,唇か上下っこり 腫れて,下を向いているのに,唇たけか飛ひ出ているように見えた。7 月てとはらかに違ってひとくなっているように見えた。被害者を見 て,こんな状態て食事に連れてくるのはなせたろうと感した。食事を終 えた被告人両名ら家族は席を立ったか,その際,被害者かトイレに向か って歩き,店のトイレは,和式て段差かあり,床か滑りすいた,周 りかよく見えていないような被害者かトイレを1人て使うのは,危ない と思い,被告人Bに,「トイレ大丈夫てすか。」なととを掛けたか, 被告人Bは,「大丈夫,大丈夫」なとと言って,被害者に手を貸すよう なことはなかった。被告人Bに,被害者のことについて,「事故か何かてすか。」なとと何気なく尋ねると,被告人Bは,「あの子は白内障か あって目か見えないのよ。何せんてええって言うのに料理をしたり, 階段から落ちたりする。それてあんな怪我をしている。」なとと言った。 被害者か使用した後のトイレは,特にひとく汚れているような状態ては なかった(以上の供述は,平成22年2月14日付け検察官調書謄本)。ウ Iは,被告人両名被害者と直接の関係を有しない第三者てあり,殊 更被告人両名に不利な供述をすることを疑わせるような事情特に見当 たらないことからすると,上記アのとおり,被害者の来店時の状況に関 し,具体的かつ詳細に,当時の心情交えてされており,原審て取り調 へられた他の証拠関係と特段矛盾するところないIの原審公判供述の 信用性は高いと見ることか直ちに不合理とはいえない。しかしなから,そのIか,上記イのとおり,同し場面について,捜査 段階において,同様に具体的かつ詳細に,当時の心情交えてしている 供述に,原審公判供述との食い違いかあり,その食い違いか,およそ勘 違い記憶違い,あるいは記憶の減退等によるのとは考え難いのて あるならは,逆に,そそ被害者の来店時の状況に関するIの供述全 体の信用性について,深刻な疑問を抱かさるを得ない。そして,Iは,原審公判廷において,上記アのとおり,平成21年8 月5日ころ,来店した際,被害者は,被告人Bに脇を抱えられ,わすか 階段一段分の段差を難しそうに上かって入ってきたのてあり,一方, 7月に被害者か来店した際には,足を引きすっていたなとの記憶かない 旨供述しているのに対し,捜査段階においては,被告人両名及ひその子か店内に入ってきてから,遅れて,被害者か入ってきた,被害者の歩き 方は,7月に見たときと同様,ゆっくりと足を引きする感しに変わりは なく,特に改て気になるようなことはなかった,被告人両名は,怪我 をしている被害者に対して手助けというのかなく,冷たいというか, おかしい家族たと思ったとて供述しているのてあり,被害者か来店し た際の状況について,自身の心情交え,それそれ克に異なる内容を 述へているのてあり,さに,およそ勘違い記憶違い,あるいは記 憶の減退等によるのとはにわかに考え難い供述の食い違いかある。そうすると,来店した被害者に関わる一見して白なはすの事情につ いて,このように具体的かつ詳細に,自身の心情て交えた供述の食い 違いか生しているにかかわらす,来店当時の被害者の状態に関するI の原審公判供述,あるいは,捜査段階の供述のいすれかか信用てきる, た,Iの原審公判供述及ひ捜査段階の供述を通し,被害者の状態に関 して符合している部分については信用てきるということか,論理則,経 験則等に照らし,合理的に説てきるのかを慎重に検討する必要かあり, そのたには,改てIに対する証人尋問の実施考慮しなけれはなら ないというへきてある。なお,当裁判所は,検察官か事実取調へ請求をした立証趣旨を平成2 1年8月5日ころにおける被害者の身体状況とするIの証人尋問請求に ついて,これを却下したか,これは,Iの供述の信用性という重要な問 題に関する上記のような慎重な検討は,第一審てある原裁判所において, 裁判員を含た合議体の審理に委ねるのか相当てあると判断したことにある。
(3) さらに,以下に判断を示すとおり,被告人両名において,被害者の生命身体に危険かあり,その生存に必要な保護として,医師の診察等の医療措 置を受けさせる必要かあるとの認識を有していたか否かを判断するたに は,被害者の状況か,被告人両名から見て,その認識を抱かせるに足り るのてあったのか否かについて,更に審理を尽くす必要かあるといわさ るを得ない。ア 被害者の死因については,C病院に救急車て搬送された被害者の治療 に当たったC病院高度救命救急センターに勤務する医師D,被害者の遺 体の解剖を行ったC大学院医歯薬学総合研究科法医学教授E,感染症を 専門とし,捜査機関か収集した被害者の診療録,レントケンのコヒー等 を検討したJ病院院長Fの各原審公判供述によれは,外傷による出血及 ひ低栄養に基つく虚血状態に起因するショック並ひに敗血症性ショック によるのと認られ,被害者は,平成21年8月5日ころ,外傷によ る出血十分な食事をとっていなかったことなとか原因て,血中の赤血 ヘモクロヒン,さらには,総たん白アルフミン等の数値か,同月 16日と低くはないにして,通常値より相当低いという虚血て低栄 養の状態にあり,その後,虚血の状態か更に悪化する中て,身体の末梢 組織に十分に酸素か行き渡らないことて,体内に毒性物質か生して,全 身に炎症反応を起こすなとし,その過程て同月9日ころには危険な状態 に至り,他方て,敗血症を発症し,被告人両名の各原審公判供述に照 らし,遅くと同月14日ころには立ち上かることかてきなくなったことか認られることは,原判か認定するとおりてあり,なお,関係証 拠に照らせは,被害者の死に大きく寄与したと認られる敗血症発症に 至る感染原因は,被害者において,重度てあると診断された統合失調症 に起因する自傷行為,視力か悪いこと等による自転車ての転倒等の事故 ての負傷の存在を具体的にうかかわせるのか複数ある一方,その存在 自体を合理的な疑いを差し挟余地なく否定てきるというとののは 存せす,さらには,後記の被告人両名からの暴行ての負傷等の外傷から の菌の侵入によるのか考えられるか,それ以上の特定は困難てある。そして,平成21年8月5日ころ以降,被害者の体内においては,上 記のとおり,虚血状態か悪化するなとし,更には敗血症を発症するなと していたのてあり,その意味において,被害者か衰弱していき,危険 な状態に至ったことはらかというへきてあるか,そのような被害者の 体内における衰弱状態の進行か,同月14日ころには立ち上かれなくな ったということ以外に,被害者の状況として,とのような形て表れてい たのか,さらには,被害者について重度の統合失調症との診断網膜剥 離,白内障との診断かされていることを了知していた一方,特段の医学 知識を有するわけてはない被告人両名から見て,当時の被害者かとのよ うな状態にあると認識していたのかを,被害者の体内における衰弱状態 の進行のから即断すること,とりわけ,一般通常人にとって,その状 態か重篤,重態なのと判断し,又は判断し得るかについては,それ ての具体的な経過等の認識に関わることてあるか,被害者は,診療 録の中に書いてあるようなことを見て,余り元気に飛ひ回っていたわけてはなく,余り大きな変化かあらわれたわけてはないと思う,見かけ 上,低栄養にして,貧血にして,ゆっくり来たときには,なかなか その変化に気付かないということはあるたろうと思う,はたから見て, とこてかあらわれてくるのか,あるいは,とこていつと違ってい るのかによって,受け止る症状としては違うのかしれないとするF の原審公判供述中の判断を直ちに排斥てきるのはなく,た,同月1 4日ころに被害者か立ち上かれなくなった際の具体的状況については, 腰痛ないし筋肉痛てあると思って心配し,あるいは,お盆休なのて救 急車てないと診察してくれないのてはないかと考え,救急車を呼うと したか,被害者か,大丈夫とか,救急車は呼はなくていいと言ったり したのて,大丈夫たろうと思い,呼ふのをたという被告人両名の原 審及ひ当審各公判供述以外の証拠はなく,困難といわさるを得ない。そうすると,原判は,被害者は,被告人両名の目の前て衰弱してい った,あるいは,被告人両名は,平成21年7月末ころ以降,被害者か 衰弱していく姿を目にしていたと認定しており,この認定は,上記に説 示した限度て是認てきるのの,被害者の状況か,被告人両名から見て ,被害者の生命身体に危険かあり,生存に必要な保護として,医師の 診察等の医療措置を受けさせる必要かあるとの認識を抱かせるに足りる のてあったとてはにわかに断し得ないというへきてある。イ 原判か認定するとおり,被告人両名において,平成21年6月下旬 ころから,日常的に,被害者を怒鳴り付けるのならす,その頭部顔 面を殴ったり,顔背中等に表皮剥離を生しさせるような暴行を加えたりするなとの虐待行為に及んていたのてあり,このような虐待行為か, 上記アに認定した被害者の衰弱の原因の一つてあったと認られる。所論は,被告人両名か,被害者に対し,日常的に虐待を加えていた事 実はない旨主張するか,Eは,頭部,顔面,背中等にある被害者の外傷 について,統合失調症にり患している者かとのような行動形態をとるか なとはよくは分からないか,自傷行為かあったとして,自傷行為ては 不可能な部分か非常に多くあり,被害者の外傷の多くは他害,他傷によ るのと考えた方か合理的てあり,死亡する二,三か月前から数日前 ての間,暴行を受けていたと思われるとしていること(Eの原審公判供 述),被告人両名方の向かい側に居住する住人は,平成21年6月の終 わりころから同年8月に入るころて,被告人両名の怒鳴り被害者 の謝るか聞こえてきており,すりカラス越しに被告人Bか被害者に暴 力を振るうのを見たことあると供述していること(Kの原審公判供述), さらには,被告人両名か,原審公判廷において,被害者に対し,複数の 機会に,あるいは,相当回数にわたり暴行を加えていたこと自体は認 ていることに照らせは,上記認定の限度ては,被告人両名か被害者に暴 行を加えていたのと認られ,これを虐待行為と評価することか誤り とはいえない。しかし,被告人両名の被害者に対する虐待行為について,それ以上に 具体的に特定することは,保護責任者遺棄致死罪か問われている本件に おいて,そのような特定ないし認定を行うへきてはないことを措くとし て,関係証拠に照らして,困難てあり,上記アのとおり,被害者の衰弱か体内て進行していたことはらかてあるのの,それか被害者の 外見上の状況にとのように表れ,被告人両名において,当時の被害者か とのような状態にあると認識していたのかを,被害者の体内における衰 弱状態の進行のによっては,直ちに認定し難いというへきてあり,こ のことに,被告人両名か上記の虐待行為を被害者に加えていたというこ とを併せ考慮して,被告人両名において,被害者の生命身体に危険か あり,その生存に必要な保護として,医師の診察等の医療措置を受けさ せる必要かあるとの認識を有していたとてはにわかに断し得ないとい わさるを得ない。ウ 被害者の状況に関わる事情として,検察官は,被害者の写真(原審検 甲62)を挙けて,救急搬送された被害者の顔面は,腫れのた,平成 21年6月5日時点の被害者と同一人てあると判別てきないとてあっ た旨主張するところ,上記写真は,その撮影日時ては特定てきないか, 救急搬送後に撮影されたのてあることはらかてあり,Dは,原審公 判廷において,治療による薬剤投与腎臓機能の低下等による影響て, 治療の中て被害者かくんたということかある,死亡により退院となる ての間に被害者のくはひとくなっている,入院時から退院時て の間に,排出分を差し引いた上て,20リットル程度の水分か被害者の 体内に入っていると思う旨供述しており,上記の写真を検討する際には, 搬送直後の治療か行われていない時点ののてあることか確にならな い限り,これらの点を考慮に入れる必要かあり,検察官主張のような評 価をすることはてきない。なお,C病院耳鼻科勤務の看護師てあるLは,警察官調書(原審検甲55,同意部分の)において,同年7月24日 に来院した被害者の診察時の状況について,両目のふたかはんはんに くんて開かないような状態てあり,顔全体手指くんてはんは んに腫れている状態てあり,足取りはしっかりしているようてあったか, 目か開きにくくて前か見にくかったのか,右腕を被告人Bに抱えられる ようにして,進路を誘導してらいなから歩いていた,被告人Bか,医 師に,自傷行為かあるとか,精神科に通院しているなとと説している のを聞いたことなとて,それてこんなにひとい状態なんた,お姉さん 大変たなというように思ったと供述しており,この診察の際に,右耳の 傷口の悪化を防くたに,こな消毒とカーセの交換か必要てあった ことから,診察予約か行われたのの,病院側において,被害者の生命 身体に危険かあり,その生存に必要な保護として,医師の診察等の医療 措置を受けさせる必要かあるとの認識にふさわしい何らかの対応をした のとは認られす,Lの供述を前提とする限り,いすれの時期てあれ, 医師看護師から見て,被害者について,生命身体に危険かあり,そ の生存に必要な保護として,医師の診察等の医療措置を受けさせる必要 かあるとの認識を抱くには至らす,して,被害者について,重度の統 合失調症との診断網膜剥離,白内障との診断されていることを了知し ていたとして,特段の医学知識を有するわけてはない被告人両名にお いて,被害者の生命身体に危険かあり,その生存に必要な保護として, 医師の診察等の医療措置を受けさせる必要かあるとの認識を抱くとはい えないのてはないかという疑い直ちには排斥てきない。エ 更に検討すると,平成21年4月から同年8月ての間の毎月,被害 者名義ての失業認定申告書か提出され,同年8月分として,同月5日, ハローワークMに職業相談に行った旨の記載かある同月6日付けの失業 認定申告書か提出されている(失業認定申告書写し5通(原審弁70)) ところ,被告人両名は,原審公判廷において,同月5日及ひ6日,ハロ ーワークを訪れた被害者に同行している旨それそれ供述しており,被告 人両名の供述を前提にすれは,当時の被害者に応対したてあろうと考え られるハローワークの担当職員の供述を得るなとし,その際の被害者の 状況についての証拠調へを行う余地かないとはいえす,た,被告人両 名は,当審公判廷において,同月7日ころから同月10日又は同月11 日ころての間に,N郵便局の近くにある「O」ないし「P」という名 称の食堂て,被害者と共に食事をしたことかある旨それそれ供述してお り,被告人両名か当審に至って供述するに至った経緯に疑義あるの の,被害者の状況を認定,判断するたには,この供述を前提とした食 堂の関係者の供述を得るなとの証拠調へを行う余地かないといえない。オ 以上に説示したとおり,被告人両名において,被害者の生命身体に危 険かあり,生存に必要な保護として,被害者に医師の診察等の医療措置 を受けさせる必要かあるとの認識を有していたか否かを判断するたに は,平成21年7月29日ころ,医師てあるGから見て,被害者の外 見上,同月15日ころと同様,トライハーて切ったという右耳以外,全 身て気になる状態はなく,余り苦しそうな感しに見えす,おっとし ているという感しかするたけてあったに過きなかったとの疑いを排斥てきす,Gにおいて,被害者か,全身状態か悪く,内科的治療を要する状 態てあり,このたと大変なことになる旨判断したと認定することか てきないことを前提とし,同年8月5日ころ,Iか供述するとおり,被 害者において,外見上,両目のふた唇なと顔全体を腫らし,被告人 Bの手を借り,あるいは,椅子の背たれにつかるなとして,すり足 て歩く状態てあったと認定てきるのかについて,再度のIの証人尋問の 実施を含検討を行い,さらには,上記エに示したのなとの証拠調へ 行い,これらを総合して,被害者について重度の統合失調症との診断 網膜剥離等との診断かされていること了知していた一方,特段の医 学知識を有するわけてはない被告人両名から見て,被害者の状況は, 生命身体に危険かあり,生存に必要な保護として,医師の診察等の医療 措置を受けさせる必要かあるとの認識を抱かせるに足りるのてあった と合理的な疑いなく認定てきるのか否かを,慎重に審理する必要かある。(4) そして,被害者の状況か,被告人両名から見て,生命身体に危険かあ り,生存に必要な保護として,医師の診察等の医療措置を受けさせる必要 かあるとの認識を抱かせるに足りるのてあったと認定てきたとして, 以下に説示するとおり,被告人両名において,そのような認識を抱いてい たと合理的な疑いなく認定てきるのかを更に検討しなけれはならない。ア 原判は,被害者か,被告人両名の目の前て衰弱していった旨の認定, あるいは,被告人両名は,平成21年7月末ころ以降,被害者か衰弱し ていく姿を目にしていたという認定から,前記2(3)のとおり,被告人両 名は,被害者か,生存に必要な保護として,医療措置を受けさせるなとの保護を必要とする状態てあることを分かっていた旨認定,判断するか, これてに説示してきたところかららかなとおり,この原判の認定, 判断を論理則,経験則等に照らし,合理的なのとして是認することは てきない。イ 原判は,前記2(3)のとおり,互いに被害者を虐待していることを了 知していた被告人両名において,被害者を病院に連れて行かなくなった 平成21年8月初ころには,被害者を病院に連れて行くと,その外傷 衰弱の状態から,自身らによる虐待の事実か発覚するおそれかあると 考えていたことは容易に推認てき,現に,被告人両名は,同年7月末こ ろ以降,被害者を病院に連れて行くなとせす,被害者か立ち上かること かてきない状態にて至った同年8月14日及ひその翌日には,被害者 を1人自宅に残して出掛けるなとしたことを認定ないし指摘てきるとし ている。しかし,前記3(3)に説示したとおり,外傷を含た被害者の状況か, その生存に必要な保護として,医師の診察等の医療措置を受けさせる必 要かあるとの認識を抱かせるに足りるのてあったといえるかは,なお 慎重に審理しなけれはならす,仮に,それか肯定されたとして,被告 人両名か,被害者に対する虐待の事実を特段隠そうとはしておらす,少 なくと,被害者の生命身体に危険かあり,生存に必要な保護として, 医師の診察等の医療措置を受けさせる必要かあるとの認識を有していな かったのてはないかとの疑いにつなかる事情存しており,これらの事 情を検討しなけれは,被告人両名において,その認識を有していたのかについての認定,判断をし得ない。
 すなわち,被告人両名は,平成21年8月5日ころ,被害者と共に中華料理店に入店して食事をしているのてあり,Iの供述を前提として, 特段,被害者の状態を隠すような挙動はうかかわれす,た,被害者名 義の失業認定申告書の提出それに関する被告人両名の供述からすると, そのころ,ハローワークを訪れた被害者に同行していることかうかかわ れるのてあり,このように,被告人両名において,虐待を加えている被 害者と共に,特に人目につくのを避けるということなく外出し,中華 料理店て食事をしたり,ハローワークに同行したりしているという事情 は,警察官Qの原審公判供述によれは,被告人Bにおいて,同年7月3 日,通報を受け,耳にたたれのような傷,一目て見て分かるくらいの 両目の腫れ等かある被害者に職務質問をするなとしたQに対し,自身 被告人Aか,被害者を殴った旨述へ,被害者を注意するた,平手握 りこふして主に被害者の顔面を殴ったと説していることか認られる ことに照らせは,当時の被告人両名においては,被害者に対する虐待 行為を,この程度てあれはさと問題ないなとと考え,それを隠そうと していなかったのてはないか,ひいては,被害者について,その生命 身体に危険かあり,生存を確保するた,医療措置を受けさせる必要か あるなととは認識していなかったのてはないかという疑いにつなかる のてあり,仮に,この疑いか排斥てきなけれは,そのような考えを持っ ていた被告人両名において,それそれか供述するように,同月14日こ ろに被害者か立ち上かれなくなったということかあって,生命身体に危険かあるとは思わす,腰痛ないし筋肉痛の範疇にあるのと判断して, 同日及ひその翌日,被害者を1人残して外出したとして,直ちに不自 然,不合理とはいい難く,上記事情について,慎重に検討,評価しなけ れは,被告人両名の認識を認定,判断てきないというへきてある。そして,これらの事情は,原審の弁論において,原審弁護人によって 概ね具体的に主張されていたか,原判は,これらの事情にったく触 れるところかなく,認定,判断に当たって検討したのかすら不てあり, 原判の認定,判断を,論理則,経験則等に照らし,合理的なのてあ るとして直ちに是認することはてきない。4 なお,被害者の状況か,被告人両名から見て,生命身体に危険かあり,生存 に必要な保護として,医師の診察等の医療措置を受けさせる必要かあるとの認 識を抱かせるに足りるのてあるか,被告人両名において,そのような認識を 抱いていたと合理的な疑いなく認定することか困難てあるという場合には,重 過失致死罪の成否を検討することになると考えられる。以上のとおりてあり,平成21年7月29日ころ,被害者の状態を目にした 皮膚科の医師てあるGにおいて,全身状態か悪く,内科的治療を要する状態て あり,このたと大変なことになる旨判断したとの原判の認定は,論理則, 経験則等に照らし,不合理といわさるを得す,た,同年8月5日ころ,被害 者において,外見上,両目のふた唇なと顔全体を腫らし,被告人Bの手を 借り,あるいは,椅子の背たれにつかるなとして,すり足て歩く状態てあ ったとの原判の認定については,再度のIの証人尋問の実施を含たIの供 述の信用性の慎重な検討を経すして是認てきるのてはなく,被害者の状況か,被告人両名から見て,被害者の生命身体に危険かあり,生存に必要な保護と して,医師の診察等の医療措置を受けさせる必要かあるとの認識を抱かせるに 足りるのてあったとてはにわかに断し得ないのてあり,さらに,被告人両 名か,被害者に対する虐待の事実を特段隠そうとはしておらす,少なくと, 被害者の生命身体に危険かあり,生存に必要な保護として,医師の診察等の医 療措置を受けさせる必要かあるとの認識を有していなかったのてはないかとの 疑いにつなかる事情存しており,これらの事情を検討しなけれは,被告人 両名において,被害者の生命身体に危険かあり,生存に必要な保護として,医 師の診察等の医療措置を受けさせる必要かあるとの認識を有していたのかにつ いての認定,判断をし得ないにかかわらす,これらの事情について触れる ことなく,同月初ころには,被害者を病院に連れて行くと,その外傷衰弱 の状態から,自身らによる虐待の事実か発覚するおそれかあると考えていたこ とは容易に推認てき,被告人両名は,被害者か,生存に必要な保護として,医 療措置を受けさせるなとの保護を必要とする状態てあることを分かっていたと する原判の認定,判断,論理則,経験則等に照らし,合理的なのとして 是認することはてきす,原判には,判に影響を及すことからかな事実 の誤認かあるというへきてある。そして,被告人両名において,被害者の生命身体に危険かあり,生存に必要 な保護として,被害者に医師の診察等の医療措置を受けさせる必要かあるとの 認識を有していたか否かを判断するたには,平成21年8月5日ころ,中華 料理店に来店した際の被害者の状態に関するIの供述の信用性について,再度 のIの証人尋問の実施を含検討,審理を行い,前記3(3)エに指摘したのなとの証拠調へ行った上て,被害者について重度の統合失調症の診断及ひ網膜 剥離等の診断かされていること了知していた一方て,特段の医学知識を有す るわけてはない被告人両名から見て,被害者の状況は,生命身体に危険かあ り,生存に必要な保護として,医師の診察等の医療措置を受けさせる必要かあ るとの認識を抱かせるに足りるのてあったと合理的な疑いなく認定てきるの か否かを慎重に審理する必要かあり,さらには,被告人両名か,被害者に対す る虐待の事実を特段隠そうとはしておらす,少なくと,被害者の生命身体に 危険かあり,生存に必要な保護として,医師の診察等の医療措置を受けさせる 必要かあるとの認識を有していなかったのてはないかとの疑いにつなかる事情 を検討し,被告人両名において,その認識を有していたのかについての認定, 判断を行う必要かあり,事実誤認をいう論旨は,以上に説示した限度て理由か ある。よって,その余の論旨(量刑不当の主張を含。)に関する判断を省略し,刑訴 法397条1項,382条により,被告人両名に対する原判を破棄し,同法40 0条本文に従い,更に必要な審理を尽くさせるた,本件を原裁判所てある広島地 方裁判所に差し戻すこととし,主文のとおり判する。 平成24年4月10日
 広島高等裁判所第1部
裁判長裁判官竹田 隆
裁判官野原利幸及ひ裁判官結城剛行はいすれ転補のた署名押印することかてきない。
裁判長裁判官竹田 隆
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