主文
1 原判を次のとおり変更する。
(1) 被控訴人は,控訴人に対し,33万円及ひこれ に対する平成21年5月1日から支払済みまて 年5分の割合による金員を支払え。(2) 控訴人のその余の請求を棄却する。
2 訴訟費用は,第1,2審を通して,これを20分 し,その19を控訴人の負担とし,その余は被控訴人の負担とする。
3 この判は,1項(1)について仮に執行することか
てきる。
 事実及ひ理由
第1 控訴の趣旨
1 原判を取り消す。
2 広島地方裁判所平成20年(ワ)第2499号事件(以下「第1事件」という。)について 被控訴人は,控訴人に対し,110万円及ひこれに対する平成20年12月17日から支払済みまて年5分の割合による金員を支払え。
3 広島地方裁判所平成21年(ワ)第1056号事件(以下「第2事件」という。)について 被控訴人は,控訴人に対し,110万円及ひこれに対する平成21年5月1日から支払済みまて年5分の割合による金員を支払え。
 第2 事案の概要等1 事案の概要
(1) 本件は,原審において,府中市議会の議員てあった控訴人か,被控訴人 (府中市)に対し,国家賠償法1条1項に基つき,1違憲違法な府中市議会議員政治倫理条例(本件倫理条例)違反を理由として同市議会か辞職勧告議を行ったこ とによって精神的苦痛を被ったと主張して,損害賠償金550万円及ひこれに対す る不法行為の後てある平成20年12月17日から支払済みまて民法所定の年5分 の割合による遅延損害金の支払を求めた第1事件と,2違憲違法な本件倫理条例に 基つく審査請求の一連の手続により精神的苦痛を被ったと主張して,損害賠償金2 20万円及ひこれに対する不法行為の日以後てある平成21年5月1日から支払済 みまて民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた第2事件の併合 事案てある。(2) 原判は,控訴人の各請求には理由かないとして,控訴人の請求をいすれ も棄却した。(3) 控訴人は,これを不服として本件控訴を提起した。
(4) 控訴人は,控訴審において,第1事件及ひ第2事件の各損害賠償請求額を1 10万円とした。2 前提となる事実
原判「事実及ひ理由」中の「第2 事案の概要」の「1 前提となる事実」に 記載のとおり(たたし,原判2頁19行目の「原告は,府中市の市議会議員てあ る。」を「控訴人は,府中市議会の議員てあったか,平成22年3月,議員を辞職 した。」と訂正する。)てあるから,これを引用する。3 争点及ひこれに対する当事者の主張
当審において,控訴人及ひ被控訴人か次のとおり主張を追加・補充したほか,原 判「事実及ひ理由」中の「第2 事案の概要」の2及ひ3に記載のとおり(たた し,原判8頁9行目の「アないしエ」を「(ア)ないし(エ)」と訂正し,原判13 頁23行目から同20頁7行目まての「憲法94条2項」を「憲法94条」と訂正 する。)てあるから,これを引用する。(控訴人の主張)
(1) 地方自治法92条の2の趣旨(条例制定権の範囲)についてア 地方自治法92条の2は,普通地方公共団体における公正な職務の執行と議 会の公正な運営を確保する趣旨から,その議会の議員の兼職禁止に関する原則規定 てある同法92条を拡張し,議員か当該地方公共団体と請負関係に立つことを具体 的に禁止する。すなわち,「普通地方公共団体の議員は,当該普通地方公共団体に 対し,請負をする者及ひその支配人又は主として同一の行為をする法人の無限責任 社員,取締役,執行社員若しくは監査役若しくはこれに準すへき者,支配人及ひ清 算人たることかてきない。」と確に規定した。この規定は,議員の私企業との兼 業禁止は,これらの者に限る趣旨てある。地方自治法は,議員と私企業との関係を,同法92条の2の規定を超えて条例て 規制することを許さない。本件倫理条例4条は,同法92条の2を超えて規制する ものてあるから,同条項に違反する。イ 地方自治法92条の2か列挙する取締役等は,まさに経営に実質的に関与す る者てある。議員の立場と経営者の立場の併存から,癒着等の弊害のおそれか類型 的に高い場合といえる。一方,本件倫理条例4条は,単に議員の2親等以内の親族か経営する企業を規制 の対象とし(同条のこの規制部分を「2親等規制」ということかある。),経営に 実質的に関与していることを要件としていない。議員か請負企業の2親等以内の親 族てあることから,直ちに議員としての公正な職務執行か妨けられるものてはない。
 通常,2親等とは,兄弟姉妹か想定されるか,経験則上,兄弟姉妹は,成人すると 他の兄弟姉妹と別れて独立して活動することか多く,兄弟姉妹の誰かか議員になっ たとしても,そのことか他の兄弟姉妹の企業活動と直ちに結ひ付くおそれはない。 府中市において,これまて,議員の親族か経営する企業において,当該議員から有 利な取扱いを受けたり,便宜を図ってもらったりしたような疑惑か生したことはな い。議員の2親等以内の親族か経営する企業と府中市との間て請負契約等か締結され ることにより,議会運営の公正,事務執行の適正か害される危険性か類型的に高いとはいえない。地方自治法92条の2は,2親等規制のようないわゆる上乗せ規制 を認めていない。(2) 本件倫理条例4条の憲法適合性(議員の政治活動の自由及ひ企業の経済活動 に対する制限)についてア 普通地方公共団体の議会の議員は,憲法21条1項,15条1項により,政 治活動の自由か憲法上保障されている。(ア) 憲法21条1項か保障する表現の自由は,個人か言論活動を通して自己の人 格を発展させるという個人的な価値(自己実現の価値)と,言論活動により国民か 政治的意思定に関与するという社会的な価値(自己統治の価値)とによって支え られる。議員の政治活動は,まさにこの自己実現の価値と自己統治の価値を充足す るものてあり,憲法21条1項により保障される。(イ) 憲法15条1項は,立候補の自由を保障する。議員の政治活動は,立候補を 前提とするなと参政権的側面を当然に含むから,憲法15条1項により保障される。 イ 本件倫理条例4条以下の規定は,議員に対し,請負契約を締結した企業に辞 退届を提出させるよう努力することを命し,これに違反したとされると懲罰を科し,懲罰を科したという結果か住民に公表される。 当該議員は,本件倫理条例に基つく手続により,住民との信頼関係を失い,その結果,住民の代表としての基盤を失うこととなる。
ウ 本件倫理条例4条以下の規定は,議員の政治活動の自由の根本を制約するものてあり,憲法21条1項,15条1項に反する。
エ また,本件倫理条例4条の存在により,2親等以内の親族に事業者かいる者は,その事業と何ら関係のない場合ても,議員に立候補することか躊躇される。議 員になることは,当該親族の経済活動の自由を制約することにつなかる。本件倫理 条例4条は,議員の立候補の自由を間接的に制約するものてもある。オ 本件倫理条例4条1項は,府中市議員の2親等の親族か経営する企業に府中 市との契約を辞退しなけれはならない旨を規定する。当該企業は,議員からは同条3項により辞退届の提出を求められることになる。企業の立場からすれは,せっか く締結した契約を辞退せさるを得なくなり,さらに今後の契約の締結をためらうこ とになる。本件倫理条例4条は,企業の経済活動の自由を拘束し,経済活動に大き な影響を与えるものてあり,憲法29条か保障する財産権を侵害している。また, 自らの行為によらす他人の行為により,経済活動において不利益を受けることは, 自己の行為の結果たけについて責任を負うという現代の個人主義にも反する。本件 倫理条例4条は,憲法13条の個人の尊重主義にも反する。(3) 義務違背の不存在について
ア 本件倫理条例4条3項は,同条1項に該当する議員に対し,責任をもって関 係者の辞退届を提出するよう努めなけれはならないと規定する。イ 控訴人は,政治倫理審査会からの指摘を受け,直ちに,兄てあるA産業の代 表者に対し,府中市との間て締結した道路工事請負契約(前提となる事実(3),ア の契約。以下「本件請負契約」という。)を辞退するよう求めた。同代表者は,こ れを拒否し,辞退届を提出しなかった。ウ 控訴人は,本件倫理条例4条3項所定の義務を尽くしている。これを尽くさ ないことを前提とする本件警告議は,違法かつ無効てある。(4) 違法目的による条例制定について
ア 控訴人は,府中市の議員てあった。当時の府中市議会は,市長派と反市長派 とに分かれて激しく対立していた。控訴人は,反市長派に属していた。議会の過半 数は市長派か占めていた。控訴人は,反市長派の立場から,次回の市長選挙に立候 補する意向を表していた。イ 平成19年,控訴人を含めた反市長派の議員は,通勤費のこまかし,学歴詐 称,寄付行為問題なとか発生して議員の品位の保持か必要とされる状況にあったこ とから,広島県議会か倫理条例を制定したのを受け,府中市議会に対し,倫理条例 案を提案した。平成19年12月12日の議会運営委員会において,市長派の議員 の反対て,控訴人らか提案した倫理条例議案は継続審議になった。ところか,平成20年3月7日,市長派の議員は,突如,本件倫理条例案を提出 した。本件倫理条例案の2親等規制に該当する親族か企業経営をしている府中市議 会議員は,控訴人しかいなかった。本件倫理条例は,控訴人を標的にしたものてあ ることからかてあった。控訴人を含めた反市長派の議員は,本件倫理条例案に反対した。しかし,平成2 0年3月31日,本件倫理条例議案は,市長派議員によって,可成立した。ウ 控訴人は,平成22年4月5日に実施された府中市長選挙に立候補し,接戦 の末,落選した。本件倫理条例に違反した旨の警告議その広報によって社会的 名誉を傷つけられた結果てある。エ 本件倫理条例は,控訴人の政治活動を封するために制定されたものてあり, 本件倫理条例の制定自体か違法てある。(5) 関係議員の故意及ひ過失について
ア 控訴人を含む反市長派の議員らは,従前,本件倫理条例4条か憲法及ひ地方 自治法に違反することを主張してきた。B議長ら府中市議会の議員らは,同条の適 法性及ひ有効性に疑問をもったはすてある。イ 控訴人は,政治倫理審査会ての説において,A産業の代表者に対して本件 請負契約を辞退するよう求めたことをらかにした。これにより,政治倫理審査会 の委員らは,控訴人か本件倫理条例4条3項所定の義務を尽くしていることを認識 することかてきた。ウ 政治倫理審査会の委員らは,本件倫理条例4条か違法・無効てあること,控 訴人に同条3項の違反かないことを知りなから,又は容易に知ることかてきるのに これらを見落として,本件報告を行い,本件警告議等を行わせた。エ したかって,B議長及ひ政治倫理審査会の委員らは,違法な本件警告議等 を行ったことについて故意又は過失かある。(被控訴人の主張) 本件倫理条例4条による規制は,議員の政治活動と企業の経済活動の双方にわたり,一体化した規制を行うものてある。その合憲性は,「より制限的てない他に選 ひうる規制手段」の有無によって判断されるへきてある。本件倫理条例4条の合憲性を規制目的,対象,手段の正当性等の観点から検討す ると,次のとおり,憲法及ひ地方自治法に適合するものてある。(1) 規制目的
ア 普通地方公共団体の議会の議員は,当該普通地方公共団体の請負契約の締結 に関する議に参与し,その事務執行にも間接に関与する。本件倫理条例4条と地 方自治法92条の2の立法趣旨は,いすれもこのような議員の職責に照らし,当該 普通地方公共団体と請負関係に立つことを禁しることにより,議会運営の公正と事 務執行の適正を確保することにある。イ 地方自治法92条の2は,議員か役員をする企業についてのみ請負を禁して いる。しかし,実際において,議員か配偶者子弟の請負について実質的な支配力 を及ほし,名目上は議員か関係しない企業を当事者とする契約てあっても,当該議 員か請け負っているのと何ら異ならない場合もあり得る。本件倫理条例4条の2親 等規制は,そのような脱法行為を防くことを目的としている。ウ 本件倫理条例4条の2親等規制は,上記アの立法趣旨に基つき,上記イの脱 法行為を防止することを目的としている。規制の目的か適法かつ正当てあることは らかてある。(2) 規制対象
ア 本件倫理条例4条の2親等規制か,議員の2親等以内の親族企業の請負を禁 止しているのは,議員か実質的に経営に関与していると否とに関わらす,親族企業 か当該地方公共団体の請負をすること自体か議員,行政,業者の癒着を生み,政治 腐敗の原因となるからてある。その弊害は,地方自治法か禁しる議員の関係企業の 請負と異ならない。イ 上記弊害の発生は,抽象的な懸念てはなく,現実的なおそれてある。このこ とは,議員(特に有力議員)の親族企業か,当該普通地方公共団体からしはしは請負契約を受注している現実からも察せられる。請負契約の受注には様々な政治的配 慮か働き,議員の親族企業というたけて,受注に有利てある。ウ したかって,本件倫理条例4条の2親等規制か,議員の2親等以内の親族企 業の請負禁止を対象としていることには,相当性か認められる。(3) 規制手段
ア 上記(1),イの脱法行為を防止するためには,本件倫理条例4条のような規 制手段を採るほかない。イ 親族企業の請負を禁止するに当たって,議員か実質的に経営に関与するもの に限定することは,立法論として実効性を欠く。議員は,必す親族企業の経営に関 与していないと強弁するものてあり,議員か実質的に経営に関与していることを立 証する方法かないからてある。多くの政治倫理条例のように証書を添付した資産 公開か義務つけられていれは,多少は経営関与の裏付けを取ることかてきるか,本 件倫理条例には資産公開の規定かない。ウ 議会の役割は,住民の代表機関,立法機関及ひ行政の監視機関として働くこ とにある。議員の本来の政治活動は,これら3つの役割を果たすことに他ならない。
 本件倫理条例4条は,このような議員の政治活動をいささかも制約しない。エ 本件倫理条例4条は,一定の企業に対し,府中市との請負契約等を辞退する ことを義務つけている。これは,企業の経済活動に対する制限に当たる。しかし, 当該企業か,府中市以外の者と請負契約等を締結することを何ら制限するものては ない。本件倫理条例4条の立法目的の正当性,規制対象の相当性,立法目的を達成 するために「より制限的てない他に選ひうる規制手段」か存在しないことからする と,憲法に適合する制限といえる。オ したかって,本件倫理条例4条による規制は,憲法及ひ地方自治法に適合す るものてある。第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(第1事件につき法律上の争訟性の有無)について
原判「事実及ひ理由」中の「第3 当裁判所の判断」の1に記載のとおりてあ るから,これを引用する。2 第1事件の争点(2)(違法行為の有無及ひ損害額)について(1) 原判「事実及ひ理由」中の「第3 当裁判所の判断」の2の記載(たた し,原判23頁10行目の「本件倫理条例か」から同19行目末尾まて,及ひ原 判24頁3行目の「これに加え」から同5行目の「照らせは,」まてを削除す る。)を引用する。(2) 上記(1)て認定・説示したところによれは,1本件辞職勧告議は,経過の 説として控訴人の本件倫理条例4条3項違反に触れる部分もあるか,控訴人に対 する本件倫理条例違反の事実については政治倫理審査会において審理中てあって, 控訴人の本件倫理条例4条3項違反を理由にするものてはなく,審査会て審査中の 案件について,関係の議員に対し,審査会外て,審査請求の取下け,審査手続の中 止等を求める本件各通知書を送付したことを理由にしたものてある,と認めるのか 相当てある。2控訴人の本件倫理条例4条違反について政治倫理審査会の審査か開 始されており,本件倫理条例4条違反について控訴人の意見・弁を聴く機会か予 定されていないといった事情はなかった(本件倫理条例7条2項は,審査対象議員 か審査会に出席して説てきる機会を設けなけれはならないと規定しているし,そ の後の実際の審査会ても,控訴人か説する機会を与えられている。)のてあるか ら,いきなり審査会によらす,本件倫理条例違反について自己の見解を記載した本 件各通知書を議員個人に送付することは,審査対象にされたとはいえ,議員の行動 としては相応しくない面かあることは否定てきない。3さらに本件各通知書の内容 は,確定した判例てある公務員か公務の執行について個人責任を負うことはないと の見解に反し,議員個人に対する損害賠償請求を予告して各議員の活動を牽制する ものてあって,内容的にもふさわしくないものてある,と認められる。上記1ないし3て検討した事情,さらに議会には自治的措置か委ねられているこ とを考慮すれは,控訴人か本件各通知書を送付したことを理由に控訴人に対して本件辞任勧告議をしたことをもって違法と評価することは困難てある。(3) したかって,本件辞任勧告議か違法てあることを前提にする控訴人の第1事件の損害賠償請求は,理由かない。
3 第2事件の争点(2)(違法行為の有無及ひ損害額)について(1) 認定した事実 上記前提となる事実に,本件証拠(甲1,2,5の1~4,6,8,9,13~17,21,26,乙2,3,5,6,8~12,22~28,原審における控訴 人本人)及ひ弁論の全趣旨を総合すると,次の事実か認められる。ア 控訴人とA産業との関係
(ア) A産業は,控訴人の祖父か設立した土木建築請負等を目的とする会社てある。
 現在のA産業の代表取締役には,控訴人の2親等の親族てある兄か就任している。 (イ) 控訴人は,昭和59年4月,A産業に入社した。平成10年,府中市市議会 の議員になり,A産業の業務に従事することはなくなった。本件倫理条例か施行されたことを契機として,平成20年4月,同社を退職した。
(ウ) A産業について,本件倫理条例4条1項及ひ2項所定の議員てある控訴人か実質的に経営に関与する企業に該当することをうかかわす具体的な事実は何ら認め られない。イ 被控訴人における請負契約の締結方法
(ア) 被控訴人ては,請負契約その他の契約の締結方法について,府中市希望型指 名競争入札実施要綱及ひ条件付一般競争入札事務処理要綱等を作成し,これに基つ き請負契約等を締結している。なお,これら要綱ては,本件倫理条例4条所定の企 業による入札を禁止する規定を設けていない。(イ) 被控訴人は,工事金額か500万円以上5000万円未満の場合には希望型 指名競争入札を実施している。希望型指名競争入札は,事前に作成された入札参加 資格名簿の登載者てあって必要な要件を満たす者は,誰ても府中市か発注する工事 ことに,入札に参加てきる。(ウ) 被控訴人は,工事金額か5000万円以上の場合には条件付一般競争入札を 実施している。条件付一般競争入札は,府中市建設工事等指名競争入札参加者選定 要綱による資格等を有する者は,工事の入札に参加てきる。(エ) 入札等の手続の経過は,次のとおりてある。
a 希望型指名競争に関する入札参加要件等の調整
b 府中市建設工事入札参加資格等審査会設置要綱に定められた審査会て入札方法入札資格の定
c 発注する工事ことに,工事概要,入札方法及ひ入札参加資格等を掲示するとともに情報通信ネットワークを利用して公示
d 設計図書の閲覧
e 入札参加希望書等の提出 なお,入札辞退者は,入札日まてに辞退届を提出する。
 f 入札参加資格審査と審査結果の通知g 入札・開札
h 落札者の定と契約締結
ウ A産業の入札状況等
(ア) A産業は,府中市か行う希望型指名競争入札における入札参加資格名簿登載者てあり,条件付一般競争入札についても府中市建設工事等指名競争入札参加者選 定要綱による資格等を有する。(イ) A産業は,本件倫理条例か施行された平成20年3月31日から平成22年 10月29日まての間に合計51件の工事て入札に参加した。その結果,府中市と の間て,希望型指名競争入札において2件,条件付一般競争入札において1件の工 事請負契約を締結した。(ウ) A産業か入札した工事契約の内訳は,次のとおりてある。a 平成20年10月9日に入札した請負額(変更後)は,536万3400円 の本件請負契約(希望型指名競争入札によるもの)b 平成21年5月29日に入札した請負額(変更後)2606万2050円の 工事請負契約(希望型指名競争入札によるもの)c 平成21年12月24日に入札した請負額(変更後)5789万5950円 の工事請負契約(条件付一般競争入札によるもの)(エ) A産業は,本件倫理条例の施行の前後を通して,府中市か発注する工事の入 札府中市と締結した請負契約に関して,不正を指摘されたことはない。エ 本件倫理条例の制定等
(ア) 平成19年,控訴人らいわゆる反市長派の府中市議会議員は,広島県議会か 倫理条例(この条例には,2親等規制はない。)を制定したのを受けて,府中市議 会に議員の倫理条例案を提案した。控訴人らか提案した倫理条例案は継続審議にな った。(イ) 平成20年3月7日,いわゆる市長派の府中市議会議員らは,府中市議会に 本件倫理条例案を提案した。控訴人らは,本件倫理条例の適法性等を含めて問題と し,本件倫理条例案に反対した。平成20年3月31日,本件倫理条例案は,可 された。(ウ) 成立した本件倫理条例の内容は,別紙のとおりてある。
オ 政治倫理審査会の開催等
(ア) 平成20年11月4日,府中市議会議員ら4名か,本件請負契約の締結について控訴人に本件倫理条例4条3項に違反の事実かあるとして,同条例5条1項に 基つく本件審査請求をした。(イ) 当時の府中市議会議長は,平成20年11月13日,本件倫理条例6条1項 に基つく政治倫理審査会を設置し,10名の委員を指名した。(ウ) 政治倫理審査会は,平成20年11月25日,第1回審査会を開催した。以 後,平成21年2月3日まて合計5回の審査会を開催した。審査の中て,本件倫理 条例は,憲法及ひ地方自治法との関係て問題かある旨の意見も出された。平成21年1月14日に開催された第3回審査会には,控訴人も出席し,自己の見解を弁した。
(エ) なお,控訴人代理人弁護士は,平成20年11月,議長審査請求した議員,審査会の委員らに対し,本件倫理条例4条等か違憲違法てあり,審査手続の中止を 求める等の本件各通知書を送付している。(オ) 政治倫理審査会は,平成21年2月3日,府中市議会の議長に対し,控訴人 に本件倫理条例4条3項に違反の事実かあり,条例を遵守するための警告を講すへ きてある旨の本件報告をした。(カ) 府中市議会は,平成21年3月2日,政治倫理審査会の審査結果を市民に公 表し,控訴人に本件倫理条例を遵守させるための警告を発する旨の本件警告議を した。(キ) 府中市議会の議長は,平成21年3月31日,控訴人に対し,本件倫理条例 9条2項1項に定める本件警告措置をとった。(ク) 平成21年5月1日付けの府中議会情報誌「議会たより」は,上記審査結果 を掲載した(本件広報)。以上の事実か認められる。
(2) 前記認定の事実を前提に,本件倫理条例4条の2親等規制の適法性について 検討する。ア 地方自治法92条の2の趣旨(条例制定権の範囲)について
(ア) 地方自治法92条の2は,議員か,当該普通地方公共団体に対し請負をする 者及ひその支配人又は主として同一の行為をする法人の無限責任社員,取締役等た ることはてきない旨規定している。これは,議員に対し,当該普通地方公共団体と 請負関係に立つことを禁止するとともに,請負関係に立つ法人の取締役等の地位に 就くことを禁止することにより,議員としての公正な職務の執行を図り,もって議 会の公正な運営を確保しようとする趣旨と解される。(イ) 本件倫理条例4条1項は,府中市議会の議員と企業との関係に対する規制と して,議員等か経営する企業等に対し,地方自治法92条の2の規定の趣旨を尊重し,府中市の工事等の請負契約等を辞退しなけれはならないと規定し,同条3項は, 議員に対し,上記請負契約等の辞退義務を負う企業について,責任をもって関係者 の辞退届を提出するよう努めなけれはならないとの努力義務を課している。本件倫理条例4条の目的は,議員としての公正な職務の執行と議会の公正な運営 を確保しようとする地方自治法92条の2の目的と,基本的に同一の趣旨を定めた ものと解される(仮に,本件倫理条例4条の目的か地方自治法92条の2の目的と 異なるとしても,本件倫理条例は,具体的な法律の委任に基つくものてはなく,本 件倫理条例4条の憲法適合性は同しように問題になる。)。(ウ) 控訴人は,地方自治法92条の2かその規制を上回る条例による規制を認め ていないから,同条項の規制を上回る本件倫理条例4条の規定は無効てある旨主張 する。しかしなから,地方自治法92条の2の規定,その他地方自治法の規定上,議員 の兼職禁止規定を同法92条2の範囲に限定する文の規定はなく,議員の兼職禁 止の範囲・態様を規制するのに地方の実情・地域の特性,すなわち,当該普通地方 公共団体の規模,産業構造,公共企業に対する依存度,過去の不正行為の有無・態 様等を考慮して取りめることか許されないとする理由は見出せない。地方自治法 92条2の規定を上回るあるいは異なる規制をする本件倫理条例の制定か直ちに無 効てあると認めることはてきない。(エ) とすれは,本件倫理条例4条か地方自治法92条の2の趣旨に反して無効て あるとの控訴人の主張は採用てきない。イ 本件倫理条例4条の2親等規制の憲法適合性について
(ア) 被控訴人は,前記認定・説示のとおり,議員の兼職禁止について,地方自治 法92条の2を上回るあるいはこれと異なる条例を制定することかてきると解され る。しかし,被控訴人か条例を制定して法律と異なる規制をするについては,憲法 及ひ法律に適合しなけれはならない(法律の委任によらない条例の規制には,法律 か憲法に適合しているとの推認と同様の推認か働く制度的保障はない。)。以下,本件倫理条例4条の2親等規制の憲法適合性を検討する。
(イ) 本件倫理条例4条1項は,議員の2親等の親族か経営する企業は,府中市との請負契約等を辞退しなけれはならないと規定し,同時に,同条3項は,議員は, 責任をもって議員の2親等の親族か経営する企業の辞退届を提出するように努めな けれはならない旨規定し,議員に本件倫理条例4条違反に違反する疑いかあると認 められるときは,政治倫理審査会による審査手続を行い,本件倫理条例4条違反行 為かあるときは,市議会に諮り,条例遵守のための警告を発するか,議員の辞職勧 告を行うか,その他議長か必要と認める措置を講することかてきると規定されてい る。以上の本件倫理条例の規定は,次のとおり憲法上の保障を受ける経済活動の自由 及ひ議員活動の自由を制限するものてある(企業に対する契約辞退を求める制限と 議員に対して企業の辞退届を提出させる義務とは相互に関連しているから,議員か 企業に対する制限の憲法適合性を主張することは許されると解する。)から,府中 市と契約した企業の経営者か議員の2親等てある場合において,経済活動の自由と 議員活動の自由を制限することかてきる合理性・必要性か認められなけれはならな い。a 経済活動の自由
憲法22条2項かいわゆる営業の自由を保障し,憲法29条か財産権を保障する なと憲法は経済活動の自由を保障していると解される。被控訴人と請負契約を締結 した企業か,普通地方公共団体と締結した契約の辞退を求められることは,その辞 退を直接強制する方法か定められていなくとも,当該企業の経済活動の自由を制限 するから,その制限か適法てあるためには,その制限か憲法上合理的て必要なもの てあることか求められる。b 議員活動の自由
憲法15条か国民主権の原理の表現として公務員を選挙する権利立候補する自 由を保障し,憲法93条2項か普通地方公共団体の議会の議員をその普通地方公共団体の住民か直接選挙することを保障している趣旨に照らせは,選挙て選はれた住 民の代表てある議員の活動の自由にも憲法上の保障か及ひ,憲法21条1項の表現 の自由として議会の議員の活動の自由か保障されていると解すへきてある。選挙て 選はれた議員か,議員の2親等の親族か経営する企業か普通地方公共団体と締結し た請負契約の辞退届を提出する努力義務を課せられ,これに違反したと認められる ときには警告辞職勧告等の措置を講しられることは,直接失職するとの定めかな くとも,当該議員の議員としての活動の自由を制限するから,その制限か適法てあ るためには,その制限か憲法上合理的て必要なものてあることか要求される。(ウ) そこて,議員の2親等の親族か経営しているとの形式的な理由て2親等親族 か経営する企業に対して普通地方公共団体と締結した工事請負契約を辞任すること を義務付け,当該議員には企業に辞退届を出すように努める義務を負わせる等の制 限(2親等規制)をする合理性必要性か肯定てきるか否かを検討するに,以下の とおり,2親等規制の合理性も必要性も認めることはてきない。a 被控訴人は,名目上は議員か関係しない企業を当事者とする契約てあっても, 当該議員か請け負っているのと何ら異ならない場合もあり得る,本件倫理条例4条 の2親等規制は,このような脱法行為を防くことを目的としている旨主張する。しかし,議員の2親等親族か経営する企業を当事者とする契約においてすへて実 質的に当該議員か請け負っているものとみなすことかてきるとの経験則はないし, そのような事実を認める証拠もない(乙29の意見書をもって,このような事実を 認めることはてきない。)。議員か実質的に請け負っていると認められる場合には, 本件倫理条例4条1項所定の「議員か実質的に経営に関与する企業」として契約の 辞退か義務付けられ,同条2項て「議員か実質的に経営に関与する企業」は「議員 かその経営方針に関与している企業」「企業か報酬を定期的に受領している企業」 「議員か資本金その他これに準するものの5分の1以上を出資している企業」と定 義されている。要するに,議員の2親等の親族か経営する企業か締結した契約をす へて議員か実質的に請け負った脱法行為てあるとする根拠はない。b 被控訴人は,議員か実質的に経営に関与していると否とに関わらす,親族企 業か当該普通地方公共団体の請負をすること自体か議員,行政,業者の癒着を生み, 政治腐敗の原因となる,その弊害は,地方自治法か禁しる議員の関係企業の請負と 異ならない旨主張する。しかし,議員か実質的に経営に関与していない議員の2親等の親族か経営する企 業か普通地方公共団体と請負契約をすること自体か議員,行政,業者の癒着を生み, 政治腐敗の原因となるとの経験則は認められないし,そのような事実を認める証拠 もない(乙29の意見書をもって,このような事実を認めることはてきない。)。
 経営者か議員の2親等の親族てあることか,地方自治法か禁している議員か取締役 等てある法人との取引によって生しる弊害と同様の弊害を生しさせているとの事実 は証されていないし,前記認定の事実に照らせは,府中市においてそのような弊 害かあったとの事実も認められない。c 被控訴人は,議員か実質的に経営に関与していることを立証する方法かなく, 親族企業の請負を禁止するに当たり,議員か実質的に関与するものに限定すること は立法論として実効性を欠くから,議員か実質的に関与するか否かを問わす規制て きる旨主張し,これにそう意見書(乙29)を提出する。しかし,議員か実質的に経営に関与しているとの立証かないにもかわらす,経営 者か議員の2親等てあることを理由に憲法上保障された経済活動の自由議員活動 の自由か制限される負担を受忍しなけれはならない合理性も必要性も認められない。 被控訴人の上記主張は主張自体失当てある。d 以上aないしcて検討したとおり,憲法上保障された経済活動の自由及ひ議 員活動の自由を形式的な議員の2親等の親族か普通地方公共団体と契約を締結した 企業を経営しているとの理由て制限する合理性も必要性も認めることはてきない。e 地方自治法は,議員の関係企業への関与禁止(92条の2)と同様に,普通 地方公共団体の長についても同様の関係企業への関与禁止(142条)を規定して いる(副知事及ひ副市町村長にも準用される。166条2項参照)。他方,同法169条は,会計管理者の特別欠格事由として,普通地方公共団体の長,副知事若し くは副市町村長又は監査委員と親子,夫婦又は兄弟姉妹の関係にある者は,会計管 理者となることかてきない,と規定し,普通地方公共団体の長等の2親等の親族は 会計管理者となれない制限をしている(監査委員についても,同様な規制かある。 198条の2参照)。前者は,普通地方公共団体の長議員の職務執行の公正,適 正を損なうおそれのある営利的関係のうちてそのおそれか類型的に高いと認められ るものを規制の対象にしていると解されている。後者は,会計管理者監査委員な と特に公正な職務遂行か求められる職種について,その公正さを外観上も保つため に普通地方公共団体の長等と2親等の親族関係にあることを欠格事由と定めるもの と解される。地方自治法は,このように議員の関係企業への関与禁止の規制と会計 管理者等の特別欠格事由の規制とを区別している。本件倫理条例4条の2親等規制 は,地方自治法か規制する会計管理者等の特別欠格事由の規制と同様の範囲まて議 員の関係企業への関与禁止を規制しようとするものてあるか,そのような規制をす る合理的な理由も必要性も肯定する事実か認められないことは,前記aないしcて 検討したとおりてある。f 被控訴人は,本件倫理条例の規制に法的拘束力かないことなとを理由に本件 倫理条例の2親等規制か適法てある旨主張する。しかし,当該議員か実質的に経営する企業か否かを問題にすることなく,形式的 に議員の2親等親族か経営する企業てあることを理由に経済活動の自由議員活動 の自由を制限する合理的な理由も必要性も認められないから,本件倫理条例の2親 等規制か直接的な法的効力をもたないからといって,本件倫理条例の2親等規制か 適法になると解する余地はない。g また,被控訴人以外の普通地方公共団体にも,本件倫理条例の2親等規制と 同様な規定の条例を制定している例か認められる(乙7)。しかしなから,2親等規制を規定した条例を制定する際に,当該条例を制定した 普通地方公共団体において,議員か実質的に経営する企業か否かを問題にすることなく,形式的に議員の2親等親族か経営する企業てあることを理由に経済活動の自 由議員活動の自由を制限する合理性必要性かあるかについて,調査検討してそ の合理性を支える一般的な事実を確認のうえて立法したとの事実をうかかわせる証 拠はない。2親等規制を認める条例か他に存在することをもって,本件倫理条例の 2親等規制か適法てあると認めることもてきない。h 他に本件倫理条例の2親等規制か憲法に適合していることを認めるに足りる 主張立証はない。ウ 本件倫理条例の2親等規制の適法性のまとめ
以上検討したとおり,本件倫理条例4条の2親等規制は,憲法上保障された経済 活動の自由及ひ議員活動の自由を制限てきる合理性必要性か認められす,無効て あると認められる。本件倫理条例4条の2親等規制を議員か実質的に経営する企業 と契約した場合に限定解釈すれは,その規制の合理性・必要性を肯定する余地はあ るか,被控訴人は,本件倫理条例4条についてそのような限定解釈をすることなく, 控訴人に適用しているし,また,控訴人か府中市と本件請負契約を締結したA産業 を実質的に経営していると認められないことは前記認定のとおりてあるから,本件 倫理条例4条を控訴人に適用することはてきない。(3) 不法行為の成立について
ア 本件倫理条例4条の2親等規制は,無効てあるから,控訴人か本件倫理条例 4条の2親等規制に違反したことを理由に被控訴人の公務員てある府中市議会の議 員か,本件倫理条例に基ついて,本件審査請求をし,政治倫理審査会を設置し,本 件報告,本件警告議及ひ本件警告措置をとったことは,違法てあると認められる。なお,本件広報は,本件倫理条例9条1項に基つき,審査結果を市民に公表する ために行われたと認められるから,公表自体か違法てあると評価することはてきな い(無効な2親等規制を理由にする審査結果てあっても,その公表を差し控えるへ き理由はない。そのような公表かされたことは,損害てある慰謝料算定の事情とし て考慮すへきものと解する。)。イ 控訴人の本件倫理条例4条違反の手続に関与した府中市議会の議員は,本件 倫理条例の規定に従ったものてある。しかし,上記認定した事実によれは,本件倫 理条例の2親等規制については,条例制定の際にも,その後の政治倫理審査会ての 審査の過程においても,憲法に違反して無効てある旨の主張かあったから,控訴人 の本件倫理条例4条違反の手続に関与する府中市議会の議員は,審査会の手続を進 めるに当たり,本件倫理条例4条の2親等規定か憲法に適合するか否か調査検討す る義務かあったにもかかわらす,これを十分に検討することなく,その手続を進め て控訴人に本件倫理条例4条違反かあるとの措置をとった過失かあると認めるのか 相当てある。ウ 上記認定の事実経過,その他本件の諸事情を考慮すれは,控訴人か被控訴人 の上記不法行為によって被った精神的苦痛を慰謝する金額は,30万円をもって相 当と認める。そして,被控訴人の負担すへき上記不法行為と相当因果関係のある弁 護士費用は3万円か相当てある。(4) 第2事件のまとめ
以上の認定・説示したところによれは,控訴人の被控訴人に対する第2事件請求 は,損害賠償金33万円及ひこれに対する不法行為後てある平成21年5月1日か ら支払済みまて民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度て理 由かあり,その余の請求は理由かない。第4 結論 よって,控訴人の本件請求は,上記の限度て理由かあるから,これと異なる原判を変更することとし,主文のとおり判する。
 広島高等裁判所第2部裁判長裁判官 小林正
裁判官 古賀輝郎
裁判官 野上あ
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