主文 本件控訴を棄却する。
理由 本件控訴の趣意は,主任弁護人岩佐嘉彦,弁護人上将倫,同佐藤真奈美及ひ同今春博連名作成の控訴趣意書1,控訴趣意書2及ひ控訴趣意書3に記載されていると おりてあり,これに対する答弁は,検察官山本昇作成の答弁書に記載されていると おりてあるから,これらを引用する。1 控訴趣意中,訴訟手続の法令違反の主張について
論旨は,起訴状記載の本件公訴事実について,検察官は,原審第1回公判期日 において,被告人の行為を一連一体ののとして捉え,全体として暴行,陵虐に 該当するのとし,一罪として起訴している旨釈しており,この釈は,裁判 所に対し,検察官か主張する一連一体の暴行陵虐行為か審判の対象てあり,かつ, 被告人の防御対象てある旨を確認し,被告人か激高して,原判示の少年(以下 「本件少年」という。)に死の恐怖を味わわせようとするたに暴行陵虐行為か 行われたとするのてあり,私憤を晴らすたの行為てあることか当然の前提と なっており,検察官は,本件公訴事実を,私憤を晴らすたに行った一連一体の 暴行陵虐行為てあると主張し,弁護人ら,それを審判の対象として捉え,原審 における防御活動を行ったのてあるところ,原判は,検察官の主張する一連 一体の暴行陵虐行為のうち,その根幹をなす部分,すなわち,被告人か,シーツ て本件少年の頸部を絞付けた事実及ひ本件少年の面前て塩素系漂白剤と酸性洗 剤をヒニール袋内て混合して塩素カス様の気体を発生させた事実を否定するとと に,本件公訴事実に記載された,ことさら本件少年を長期間少年院に在院させる旨言った事実否定し,さらに,被告人の行為について,被告人か私憤を晴ら すたに行ったのてあるとの検察官の主張を否定し,保安上,教育上の観点か ら,指導の目的をって行ったのてあると認定する一方,本件公訴事実の行為 のうちの根幹部分てはない一部を取り上けるのならす,有毒な気体か発生して いるかのように装ったという本件公訴事実にない新たな事実を認定したか,検察 官か主張する事実と,原判か認定した事実とては実行行為の意味か本質的に異 なっており,被告人及ひ弁護人らにとって不意打ちにほかならす,検察官か分解 すへきてはないとして起訴している一連一体の行為を分断し,その主要部分を否 定しなから,その一部を抜き出すのならす,公訴事実にない裁判所か独自に認 定した新たな行為と合わせて,罪となるへき事実を認定しているのてあり,しか ,上記のとおり,検察官か起訴した本件公訴事実と原判か認定した罪となる へき事実とては実行行為の本質的意味か異なってしっており,その認定手法は, いわゆる縮小認定とは異なるのてあり,訴因変更手続を経ることなく,公訴事 実と異なる認定をした原判には訴訟手続の法令違反かあり,その違反か判に 影響を及ほすことからかてある,というのてある。そこて,記録を調査し,検討すると,本件においては,特別公務員暴行陵虐罪 の構成要件てある暴行又は陵辱若しくは加虐の行為として,起訴状の公訴事実に は,「シーツを同人(本件少年)の頸部に巻き付けた上て『絞たら死ねる そ。』なとと自ら頸部を絞付けるように言うととに,同シーツて同人の頸部 を絞付け,続けて,同人に『遺書を書け。』なとと遺書を作成するよう言った 上,同人かこれを拒絶すると,同少年院(A少年院)の他の法務教官に『イシ ョ』『ほくは死にす。』なとと記載した文書を作成させて,これを読上けさせるなとし」「(本件少年の)面前て塩素系漂白剤と酸性洗剤をヒニール袋内て 混合して塩素カス様の気体を発生させた上,同ヒニール袋を同人の顔面に近つけ て,『吸ってい。これを吸ったら死ねるそ。』と言うなとし,」「『特別少年 院に行けは,23歳ておらすことかてきる。医療少年院に行けは,26歳て おらすことかてきる。すっとおらせることかてきる。』なとと言うなとし」たと 記載されているのてあり,これによって訴因か示されている一方,上記各行為 の目的ないし動機は,そそ,特別公務員暴行陵虐罪の構成要件に含れる のてはなく,公訴事実に,上記各行為の目的ないし動機は記載されておらす, た,上記各行為か特別公務員暴行陵虐罪の暴行又は陵辱若しくは加虐の行為に 該当するか否かを裁判所において判断するに際し,上記各行為のうち,シーツて 本件少年の頸部を絞付けた事実及ひ本件少年の面前て塩素系漂白剤と酸性洗剤 をヒニール袋内て混合して塩素カス様の気体を発生させた事実を根幹部分として 扱うへきてあることか訴因として示されているといえないことらかてある。
 さらに,原審第1回公判期日において,検察官は,公訴事実記載の行為のとの行 為か暴行に当たり,との行為か陵辱,加虐に当たるのかなとの弁護人らの求釈 の申立てに対し,被告人の行為を一連一体ののとして捉え,全体として暴行, 陵虐に該当するのとして起訴しているのて,弁護人主張の如き,被告人の行為 を分解し,各々か暴行・陵虐に該当するかを検討すへきのとは考えていない, 被告人の行為を一連一体ののとして捉え,一罪として起訴していると釈して いるのてあり,これらの検察官の釈か,被告人の行為の目的ないし動機に触 れたのてなく,被告人の行為について根幹部分とそうてない部分とをらか にしたのてないことらかてある。そして,被告人は,原審第1回公判期日における被告事件に対する陳述におい て,本件少年の頸にシーツを掛けて見せ,「絞られるか。絞られないたろ う。」と言ったことはあるか,シーツを本件少年の頸部に巻き付けたことはなく, 「絞たら死ねるそ。」と言ったこと,本件少年に頸部を絞付けるように言 ったことない,本件少年に遺書を書くように言い,他の法務教官か書いたの を読んてろと言ったことはあるか,他の法務教官に指示をして書かせたのて はなく,読上けさせていない,本件少年の面前て塩素系漂白剤と酸性洗剤を 混合して塩素カス様の気体を発生させたことはなく,それを本件少年の顔面に近 つけたことなく,「吸ってい。これを吸ったら死ねるそ。」なとと言ったこ とない,「殺人殺人未遂をすれは,特別少年院に行くことたってあり得る, その場合,23歳て出られないことある,医療少年院に行くことになるか しれない。その場合は26歳て出られないことあり得る。少年法か改正され たのて,少年刑務所に行くことになることたってあり得る。」なとと言ったこと はあるか,「特別少年院に行けは,23歳ておらすことかてきる。医療少年院 に行けは,26歳ておらすことかてきる。すっとおらせることかてきる。」と は言っていない,いすれの行為陵辱加虐をしようとしたのてはなく,教育, 指導の目的のとに行ったのてある旨なとを述へ,主任弁護人において,公 訴事実に対する認否については,被告人と同一てある,被告人の行為は,特別公 務員暴行陵虐罪の暴行又は陵辱若しくは加虐行為には該当せす,法令の範囲内て 認られた矯正教育として正当なのてあり,仮に形式的に同罪の構成要件に該 当したとして,正当行為として違法性阻却事由に該当する旨述へているのてあ り,公訴事実に記載された各行為に対応した陳述をそれそれしていることからかてある。た,検察官は,同公判期日に行った冒頭陳述において,被告人か, 本件少年らに事実関係を確認することなく,本件少年か自らを殺すと発言したと 軽信して激高し,本件少年に死の恐怖を味わわせ,懲らしてろうと考え,公 訴事実記載の各行為を行った旨主張したか,引き続き行われた弁護人らの冒頭陳 述ては,被告人か行った指導は,陵辱,加虐行為には当たらす,正当な指導てあ って違法性ない旨なと上記の被告事件に対する被告人及ひ弁護人の陳述を敷衍 した主張をしており,これに加えて,その後の原審公判期日等て行われた本件少 年及ひ法務教官てあるBらの証人尋問て,弁護人らにおいて,被告人かシーツ を本件少年の頸部に巻き付けたのか,その際とのような発言をしたのか,被告人 かヒニール袋を本件少年の顔面に近つけたのか,その際とのような発言をしたの かなとについて,それそれ詳細に尋問して供述を得ているのてあり,とりわけ, 法務教官てあるCの証人尋問ては,被告人の行為か一線を越えてしったとCか 感したのは,洗剤を混せ合わせたことか大きな理由なのかと主任弁護人か尋問し, これに対し,Cは,混せ合わせたか否かてはなく,少年に対してそれをかいたら 死んてしうんしないかという意味の危険を感しさせたというところにある旨 供述し,更にその後の主任弁護人の尋問に対し,Cは,現実に少年にそれを吸っ たら死ぬかしれないという恐怖を与える行為をすること自体か法務教官として 適正てはないと思う旨供述し(原審第3回公判調書と一体となるC尋問調書44 0,443項(以下,原審ないし当審公判調書と一体となる証人尋問調書等の供 述部分を引用するときは,その公判期日,供述者,該当箇所の順に表記す る。)),た,被告人質問において,実際には塩素カス様の気体を発生させ ていないけれと,洗剤を混せたように思わせて,少年に対して吸っていというように言ったら,それは許される行為と考えているかと検察官か質問し,被告 人は,吸っていというふうに強要することはすいと思う旨供述している(原 審第7回被告人247項)のてあり,これらに照らして,被告人か,ヒニール 袋内て有毒な気体か発生しているかのように装って,そのヒニール袋を本件少年 の顔面に近つけ,そこから発生している有毒な気体を吸えは死ねるなとと迫る行 為を行ったか否かか攻撃防御の対象となっていなかったとすることはてきす,被 告人か,基本的には,本件少年の特性に応し,指導の目的をって,原判示の行 為を行ったのてある旨認定し,弁護人らの弁論ての指摘踏え,構成要件該 当性及ひ違法性阻却事由の存否を判断する際に考慮すへき要素は共通していると して,両者を区別せすに論し,被告人の行為は,少年院における矯正教育として 許される範囲を逸脱した行為といわさるを得ないとした原判か,訴因を逸脱し た認定をしたのとはいえす,被告人及ひ弁護人にとって不意打ちてあるとする ことてきないというへきてあり,さらに,検察官か公訴事実において主張した 事実と原判か認定した事実とては実行行為の意味か本質的に異なっており,被 告人及ひ弁護人にとって不意打ちにほかならないとする論旨当を得ないのと いわさるを得ない。以上からすると,原判示の事実を認定した原判に論旨のい う訴訟手続の法令違反はない。論旨は理由かない。
2 控訴趣意中,公訴の不法受理(公訴権濫用)の主張について
論旨は,検察官は,本件を目撃したというDか,捜査段階から,院内護身術検 定かあったから休日出勤したことを前提に本件当日の様子を供述していたところ, 本件当日は院内護身術検定か延期になっていることを示す客観証拠として朝礼指示伝達簿を持っていたにかかわらす,これを無視するととに証拠開示に容易 に応しない姿勢を示すなと,その捜査手法公訴維持態度は極て不適切てあり, 強い非難を免れす,自らのストーリーに合わせて取調への対象となっている者か 供述していないことを調書に記載し,誘導を繰り返し,供述を強要しており,そ の自白獲得手法は,強い非難に値し,不当なのてあることはらかてあり, た,被告人の取調へ状況に関する取調へメモの破棄,取調へ状況調査についての 虚偽回答は,悪質な証拠隠滅行為てあり,職務犯罪というへきてあり,客観的 な証拠を精査しないにストーリーを作り出していることからすれは,本件公 訴提起自体か,職務犯罪を構成するような極限的な場合と同視てきるというへき てあり,本件公訴提起は公訴権の濫用てあり,公訴棄却の判かされるへきてあ ったにかかわらす,被告人に対する有罪判を言い渡した原判には,公訴を 不法に受理して有罪判を言い渡した違法かある,というのてある。そこて,記録を調査し,検討すると,本件は,少年院において,法務教官か, その職務を行うに当たり,在院している少年に対し,暴行又は陵辱若しくは加虐 の行為をしたとされる特別公務員暴行陵虐罪の事案てあり,その内容自体及ひ社 会的影響に照らして,およそ軽微な事案として軽視てきるのてないことは らかてあるところ,後記3に認定,判断を示すとおり,被告人か同罪に当たる原 判示の行為に及んたと認られるのてあり,そそ,起訴すへき事案てはなか ったということはてきない。一方,とりわけ,原判か「事実認定の補足説」 の項3(3)ウに説示しているとおり,本件を目撃したとして検察官により証人 尋問請求かされて採用され,原審第4回公判期日に尋問されたDは,検察官調書 (その一部の写し,原審弁64)において,週休日てあるにかかわらす,本件当日出勤した理由について,本件当日に開催された院内護身術検定に参加するた てあり,現に本件前に開催され,これに参加した旨確に供述していたところ, 院内護身術検定は延期になり,本件の6日後に実施されたという職員朝礼時の訓 令・指示伝達簿の記載に反しており,このような客観的証拠の内容にらかに反 する供述をした理由全くらかにはされていないことからすると,Dの目撃供 述を事実認定の基礎とすることは相当とはいえす,この点に関して,検察官にお ける証拠の検討ないし評価に適切とはいえない面かあったことか否す,た, 検察官は,Dの証人尋問を経て,職員朝礼時の訓令・指示伝達簿の一部の写しを 添付した捜査報告書(原審検甲42)を証拠調へ請求し,同意証拠として取り調 へられるなとしているところ,その後の原審第9回公判期日において,当時のA 少年院の法務教官てあるEか,院内護身術検定は延期になっており,職員朝礼時 の訓令・指示伝達簿にその旨の記載かあるはすてある旨原審公判廷て供述したの に対し,延期になった記憶かあるのかと執拗に尋問し(原審第9回E201ない し211項),Dの上記検察官調書,Eの証人尋問を終えた上記公判期日以後に 開示した本件当日分を含職員朝礼時の訓令・指示伝達簿(写し,原審弁63) を弁護人か証拠調へ請求したのに対し,後にその不同意の意見は撤回したのの, いすれ不同意,不必要,関連性なしの意見を述へており,これら一連の検察官 の訴訟上の対応には,疑問を抱かさるを得ない面かあることは否定てきないか, 検察官における証拠の検討ないし評価,更にはそれに基つく証拠開示ないし証拠 意見等の対応において不適切と考えられるのかあり,当該証拠に関する検察官 の主張か裁判所の採用するところとはならなかったとして,そのことによって, 直ちに検察官による職務犯罪に当たるとていえるのてはない。た,確かに,当時のF地方検察庁G部長名義の平成21年7月21日付けファックス送付書 (写し,原審弁56)によれは,被告人の取調へにおける担当検察官の言動につ いて調査したか,弁護人指摘の言動かあったとは認られなかった旨記載かある のに,担当検察官てあったHは,原審公判廷において,そのような調査を受けて いない旨確に供述しており(原審第8回H332ないし338項),この点は いささか不可解といわさるを得ないか,これをって,直ちに上記ファックス送 付書か虚偽てあるとて付けられるわけてはなく,さらに,被告人の取調へ の際に作成したメモを廃棄している点(原審第8回H244ないし284項,原 審弁59,60)について,このようなメモには,その性質上,供述内容の ならす,取調への経過及ひ供述の経過等当然記載されているのと推認され, 被告人の供述の任意性,信用性か公判て争われた場合,録取された供述内容と相 って,供述の任意性,信用性を判断するに当たっての重要な資料になるのと 考えられるのてあり,少なくと,これらの供述の任意性信用性か争点となら ないことからかになるての間は,取調へをした検察官として,自ら保管し, あるいは,そのメモを引き継くなとして保管することか必要かつ相当てあり,そ れ以前の段階において,上記メモか廃棄されるに至っているのは,その必要性 相当性について多分に疑問か残るのといわさるを得ないのの,この点につい て,違法な証拠隠滅行為てあるとて付けられるほとの事情は見当たらな い。そして,被告人の自白か得られた際ないし参考人聴取の際の捜査官における 取調へ手法に問題かあるとして,それ自体は,当該供述調書の証拠能力信用 性の判断において考慮されるへき事項てあり,原判か「事実認定の補足説」 の項4(3)に適切にその認定,判断を示しているとおり,本件か特別公務員暴行陵虐罪に当たり,有罪てあると認ている被告人の検察官調書(原審検乙2, 3)については,証拠価値か低く,その信用性を過大に評価することはてきない か,その任意性には疑いかないと認られ,た,検察官により証拠調へ請求さ れた本件少年及ひ他の法務教官の供述調書のうち,部分不同意含て不同意と されたのはすへて撤回されており,その他所論か主張するところにかんか, 検討して,本件公訴提起自体か職務犯罪を構成するような極限的な場合に当た る,あるいは,これと同視てきるような事情かあるとはいえす,公訴提起を無効 ならしるのとはいえす,原判に不法に公訴を受理して有罪判を言い渡し た違法かあるとはいえない。論旨は理由かない。
3 控訴趣意中,事実誤認の主張について
論旨は,本件において,被告人か,本件少年の頸部にシーツを巻き付けた上て, 自身て頸部を絞付けて死ぬように迫る旨の文言を申し向けたこと,本件少年に 遺書を作成するよう申し向けた上,法務教官てあるIに指示し,「イショ」「ほ くは死にす。」なとと記載した文書を作成させてこれを読上けさせたこと, 本件少年の面前て,塩素系漂白剤と酸性洗剤をヒニール袋内て混合して有毒な気 体か発生しているかのように装った上,同ヒニール袋を本件少年の顔面に近つけ て,そこから発生している有毒な気体を吸えは死ねるなとと迫る旨の文言を申し 向けたことは,いすれ認定し得す,た,これらの行為か仮に存在したとして ,特別公務員暴行陵虐罪にいう暴行陵虐行為には該当しないにかかわらす, 被告人かこれらの行為を行ったとして原判示の事実を認定し,特別公務員暴行陵 虐罪の成立を認て被告人を有罪とした原判には事実の誤認かあり,その誤認か判に影響を及ほすことからかてある,というのてある。
 しかし,記録を調査し,検討して,原判示の事実を認定し,特別公務員暴行 陵虐罪の成立を認,被告人を有罪とした原判に事実の誤認はない。以下,補足して説する。
(1) 原判か挙示する関係証拠によれは,本件に至る経緯及ひその前後の状況の概要については,原判か「事実認定の補足説」の項2(1)ないし (6)に認定している事実,すなわち,以下のとおりの事実か認られ,た, 公訴事実に記載された被告人の行為について,以下の限度の事実か認られ る。ア 被告人は,昭和61年4月に法務教官として採用され,以後発達の視点を 取り入れた少年院における矯正教育のあり方を研究,実践してきたのてあ り,平成17年4月から平成19年3月ての間に被告人か首席専門官とし て勤務したA少年院は,平成14年ころ以降,在院者による規律違反か横行 する状態にあり,その後改善されたのの,被告人の着任当時,そのよう な状態は残っていた。被告人は,A少年院のこのような状況を立て直すた, 集団処遇と個別処遇を組合わせ,在院者の特性に応して発達の視点を取り 入れた指導方法を導入,実践し,相当の成果を上けた。イ 本件少年は,平成17年2月にA少年院に入所した後,規律違反行為を繰 り返しており,同年3月及ひ同年4月にそれそれ訓戒処分を受け,同年6月 には謹慎3日の処分を受けた。た,本件少年か所属していた第1学寮は, 規律違反か相次いて出寮停止となり,寮生全員か寮内て終日内省をしていた 最中てあったにかかわらす,同年9月13日,本件少年は,巡回中の被告人を目て追ったことにより,被告人から厳しく注意を受けた。
 本件当日てある同月16日午前中に進級式か行われた際,年長少年か所属 する第2学寮の在院者て礼の仕方か悪い者かおり,法務教官Eから注意を受 けたことをきっかけとして,被告人において,在院者かこのような態度をとっているようては後日予定されている運動会を中止にする旨発言し,その後, 各学寮において問題解に向けた取組か行われ,予定されていた院内護身 術検定は延期となった。同日午後4時過きころ,第1学寮の在院者と面談を した法務教官Jは,本件少年及ひ同室の在院者てあったKか,夜間に私語を し,その際,クソ首席を殺す,逃走するなとと話していたことを聞き,教育 部門に報告し,被告人にその旨伝わった。被告人は,教育部門にいた法務 教官てあるL,I,Bらと共に本件少年のいる第1学寮に行き,夕食をとっ ていた本件少年を立たせ,小手取り連行を指示し,体育館に連れて行き,そ こにおいて,本件少年に対し,シーツを使った何らかの行為を行い,さらに, 遺書を書くように言ったか,本件少年はこれに従わす,Iか本件少年に代わ る形て文書を作成するなとした。その後,被告人は,本件少年を洗濯棟に連 れて行き,そこにおいて,洗剤を使い,有毒カスか発生するかのような行為 を行った。さらに,同日午後6時30分ころ,被告人は,第2学寮に本件少 年を連れて行き,約1時間にわたり同学寮の在院者との集会の場を持ち,そ の際,被告人に促され,本件少年か首席(被告人)を殺すという私語をした ことを告け,同学寮の在院者から,本件少年の言動をたしなる発言なとか された。その後,被告人は,本件少年に対して個別面接をした。被告人は,同月17日から同月19日の連休中に,本件少年のならす,Kに対して面接指導を行い,その結果を踏え,本件少年には聴覚系の LD(学習障害)なと発達上の問題かあり,た,Kにはハイホーラ(双極 性障害)の傾向かあるという認識のと,連休けの同月20日に行われた 教育部門のミーティンクにおいて,他の法務教官らに対し,それそれの特性 を踏えた両少年に対する指導方法等について指示をした。(2) そして,本件当日,被告人か本件少年に対して行った行為のうち,前記 (1)の体育館におけるシーツを使った行為及ひ遺書に関する行為並ひに洗濯 棟における洗剤を使った,有毒カスか発生するかのような行為の各具体的内容 については,以下のとおり,概ね原判か「事実認定の補足説」の項3 (1)ないし(3)に認定,判断するところは相当てあると認られる。ア 体育館におけるシーツを使った行為については,本件少年は,被告人か, 本件少年の頸部にシーツを巻き付けた上て,絞たら死ねるそなとと自ら頸 部を絞付けるように言うととに,そのシーツて本件少年の頸部を絞付 けた旨原審公判期日外の証人尋問において供述しているか,そそ4年以 上前の出来事に関する供述てあることなとから,他の客観的な証拠,現 場に立ち会った他の法務教官の原審公判廷における目撃供述等を慎重に吟味 する必要かあるところ,上記行為を目撃したB及ひIは,原審公判廷におい て,いすれ,被告人か本件少年の頸にシーツを1回巻き付けて自身て頸を 絞るように迫った旨供述しており,この限りにおいては,本件少年の上記 供述と符合し,他方,被告人の作成した書面写し(捜査報告書(原審検乙 4)添付のの)によって,その具体的な状況に関する被告人の記憶はか なり曖昧てあり,た,本件少年の頸にシーツを掛け,自分て自分のことをれるかということを言っていると思うとの被告人の原審公判供述にかんか て,本件少年に自ら頸部を絞るように促すたには,単にシーツを頸 部に掛けるたけてはなく,シーツを頸部に巻き付けるのかより自然な動作て あること併せ考えると,被告人は,本件少年の頸部にシーツを巻き付け, 自身て頸部を絞付けて死ぬように迫る旨の文言を申し向けたと認ること かてきるか,被告人かシーツを使った際に立ち会っていた法務教官の中て, 本件少年か供述するように,被告人かシーツて本件少年の頸部を絞付け, 本件少年か苦しんているという状況を確に供述している者はおらす,し ろIは,被告人か本件少年の頸部を絞るようなことはなかったと記憶して いる旨供述していること(第2回I193ないし205,403項)からす ると,被告人かシーツて本件少年の頸部を絞付けたと認定することはてき ない。次に,体育館における遺書に関する行為については,Iは,原審公判廷に おいて,被告人か,本件少年に「遺書を書け。」なとと遺書を作成するよう に言った上,本件少年かこれを拒否すると,Iに指示して,「イショ」「ほ くは死にす。」なとと記載した文書を作成させ,これを読上けさせるな としたと供述しているところ,被告人は,原審公判廷において,自身か本件 少年に遺書を書くように言った際,Iか,書けないんたったらおれか書いて るよなとと言い出し,被告人にとう書けはいいんてすかなとと尋ね,実際 に文書を書いた旨供述しているか,本件少年の供述とIの供述は,読上け たのか被告人かIかという点を除き,概ね符合している。た,当時その場 に立ち会っていた法務教官てあるMIの供述に符合する供述をしていること,Iの供述は,自身の行為に関するのてあり,基本的にはより記憶か 瞭てあると見て不自然てはないこと,本件当時に遺書を使った被告人の指導 かA少年院内て広く行われていたことをうかかわせるような事情は見当たら す,Iその他の教官か,このような被告人の指導を十分に理解していたと は認難いことからすると,Iか,上位者てある被告人の行為を十分に理解 しない,遺書を書かせるという行為の趣旨を何ら確認することなく, いきなり率先して本件少年に代わって遺書を書くと申し出るというのは相当 に不自然てあり,遺書を使った指導を行おうとしていた被告人か,本件少年 か遺書を書くのを拒んているという状況下て,代わってIに遺書を書かせ, 読上けさせたことか自然てあって,Iの上記供述部分は十分信用てき,被 告人か,本件少年に遺書を作成するように言った上,本件少年かこれを拒否 すると,Iに指示し,「イショ」「ほくは死にす。」なとと記載した文書 を作成させ,これを読上けさせたと認ることかてきる。さらに,洗濯棟における洗剤を使った,有毒カスか発生するかのような行 為については,本件少年並ひにその行為を目撃したB,I,C及ひMの各供 述は,被告人か,塩素系漂白剤てあるハイターと酸性洗剤てあるハイナイス とを混せ合わせるかのような行為をするととに,両者を混せると有毒な気 体か発生し,これを吸ったら死ねるなとという趣旨の話をしなから,液体の 入ったヒニール袋の口の部分を本件少年の顔面に近つけて,吸うように迫っ たという点てほほ符合しており,他方,被告人は,Iから受け取ったキャッ フに入った洗剤を,本件少年に気付かれないようにして水に取り替え,これ を別の洗剤の入ったカッフの中に入れて机の上に置き,他の法務教官らに指示して扉を開けさせるなとして,有毒カスか発生しているかのように装い, 本件少年に一緒に逃けるように言って,本件少年と共に第2学寮に向かった と原審公判廷において供述しているところ,本件少年及ひBらの上記各供述 のいすれと符合しないことからすると,被告人か,本件少年の面前て,ハ イターとハイナイスをヒニール袋内て混合して有毒な気体か発生しているか のように装った上,このヒニール袋を本件少年の顔面に近つけ,そこから発 生している有毒な気体を吸えは死ねるなとと迫ったことか認られるか,ハ イターとハイナイスの混合実験の結果から認られる混合時の状況と,本件 少年及ひBらの上記各供述から認られる液体の入ったヒニール袋内の状況 とはらかに異なるのといわさるを得ないことに照らせは,被告人か,本 件少年の面前て,実際に,ハイターとハイナイスをヒニール袋内て混合させ たと認定することはてきない。イ これに対し,所論(事実取調への結果に基つく弁論を含。以下同し。) は,以下のとおり主張するか,いすれ採用てきない。(ア) 所論は,本件少年及ひ上記各法務教官のうち,前記アに認定した各行為とおりの内容を供述している者は1人いないのてあり,た,その 各供述のうち,一致する部分について,被告人かシーツて本件少年の頸 部を絞た,あるいは,被告人か塩素カス様の気体を発生させたなとの客 観的状況に合致せす,らかに真実に反している部分か存在しているに かかわらす,原判は,各人の供述の一部の信用性か否定されるのに,何 故その他の部分は信用てきるのか,その理由を述へておらす,その事実認 定の手法は大いに疑問てあり,た,本件は4年経過してから事情聴取されたのてあり,記憶かかなり減退しているのは当然てあり,思い出す 過程て誤りか混入する可能性か高く,本件か,当時のA少年院において特 異な場面てはなく,日常の業務中に起こり得る指導かされたに過きないの てあれは,4年にわたって正確な記憶か残りにくいの当然てあり,原 判か,被告人自身,シーツを本件少年の頸に巻いて絞た記憶はないと しなから,具体的な状況に関する記憶は甚た曖昧なととして被告人の供述 を否定したことは,ありに軽々な判断てあり,当時の法務教官らは, 被告人の専門的見地からの教育的な意図を理解する能力を欠いており,被 告人の行為を表面的な理解のて観察していたに過きす,そのような誤っ た認識のとて目撃した場合,知覚記憶の段階て大きな誤りか混入して しう構造なのてあり,BCの各供述によれは,本件か被告人による暴 行陵虐行為てあって,4人の法務教官による暴行陵虐事件の原因となって いるとの予断を抱かせる形て記憶喚起かされており,本件を目撃したとい う各供述の信用性は相当に低いと主張する。しかし,複数の者の供述するところか符合する場合,それによって相互 に信用性を補強し合う関係にあり,その内容自体か特段不自然,不合理な のてなく,た,口裏合わせをしているなとの事情か具体的に疑われる ような場合てなけれは,基本的に信用性は高いということかてきる一方, その内容か客観的な証拠関係に相反するような場合てあれは,信用性は大 きく減殺されることになるか,信用性か問題とされる各供述部分か密接に 関連しているなとの事情かない限り,基本的にはそれそれの信用性は個別 に判断されることになるところ,前記(1)及ひ(2)アに認定,判断を示したとおり,被告人か本件少年に対して行った行為の認定は,被告人か 自認しているの以外については,本件少年ないし現場に立ち会った複数 の法務教官の供述か符合しており,それらの供述か4年以上前の出来事 に関するのてあることを踏えて,なお相応に記憶に残っていること か不自然,不合理とはいえない特異な出来事に関するのてあり,それ自 体か客観的ないし物理的に困難な行為てあるといえす,口裏合わせ等の 事情を具体的にうかかうことてきす,かつ,他の客観的な証拠関係と 相反しない部分に限って認定しており,なお,それそれの行為は異なる場 面におけるのてあって,相互に密接に関連しているのてはなく,この ような供述部分の信用性か個別に肯定されることはらかてある。そして, 被告人かシーツて本件少年の頸部を絞たという行為については,本件少 年のその旨の供述部分と確に符合する他の者の供述はなく,本件少年の 頸か絞ったような場面の記憶かあるとBか供述しているのの,被告人 と本件少年のとちらか絞たのかすら分からないというのてあり,本件 少年か供述しているように,被告人に頸部を絞付けられ,本件少年か苦 しんていたなととは全く供述しておらす,そそ,複数の者による供述 の符合自体か認られす,た,被告人か塩素カス様の気体を発生させた という行為は,本件少年の頸部にシーツを巻き付けた上て,自身て頸部を 絞付けて死ぬように迫る旨の文言を申し向けたという行為,Iに指示 し,「イショ」「ほくは死にす。」なとと記載した文書を作成させ,こ れを読上けさせたという行為とは異なる場面におけるのてあって, とより,これらと密接に関連するのてはなく,本件少年の面前て,混合して有毒な気体か発生しているかのように装った上,このヒニール袋を本 件少年の顔面に近つけ,そこから発生している有毒な気体を吸えは死ねる なとと迫ったという行為との関係て,そのような行為を行っていれは, 実際に塩素カス様の気体を発生させていると見るのか必然,あるいは,当 然てあるとていえるはすなく,逆に,実際に塩素カス様の気体を発生 させていなけれは,そのような行為かなかったと見るのか必然,あるいは, 当然てあるといえないのてあり,はり密接に関連しているとはいえす, それそれ個別に当該供述部分の信用性を判断することになるというへきて ある。さらに,本件少年の頸部にシーツを巻き付けた上て,自身て頸部を 絞付けて死ぬように迫る旨の文言を申し向けた行為については,その限 りにおいて,本件少年,B及ひIの供述か符合しており,後記のとおり, このような行為か客観的ないし物理的に困難てあるという事情見当たら す,他の客観的証拠と相反しておらす,当該供述部分の信用性は高いと いうへきてあるところ,これとらかに異なる内容を述へる被告人の供述 は,他にこれと符合する供述をする者かなく,しか,具体的な状況に関 する自身の記憶か曖昧というのてあり,これを採用することかてきないと いわさるを得す,た,問題となっているのは,被告人の行為をとう評価 するかてはなく,被告人の行為そののの認定てあり,所論指摘のような 事情を考慮するとして,基本的には上記に述へた観点から被告人の行為 を体験ないし目撃した者らの供述の信用性を判断することに問題かあると はいえす,なお,Bは,捜査段階における取調へについて,検察官から, 自身か第1学寮に行ってシーツを持ってきたときのことを聞かれた際,そのシーツは本件少年ののたったんたよねと言われたことかあるか,それ 以外は,全部自身から話をした旨供述しており(原審第2回B176ない し186項),C,検察官から,最初の教育部門てのり取り及ひその 時に自身かいたのてはないか,洗濯棟において,被告人かいわゆるキレた 状態てはなかったか,ヒニール袋の状態について,膨らんていなかったか, 煙か出ていなかったかということを聞かれたことはあったか,それ以外に 自身の記憶にないことをこうてはないかという形て聞かれたことはない旨 供述している(原審第3回C88ないし103,123,124,179 ないし205,268ないし278,294ないし298,316ないし 330項)。(イ) 所論は,原判は,BとIか,被告人か本件少年の頸にシーツを巻 いていた旨証言しているとし,これか本件少年の証言と符合しているとし て,同行為を認定しているか,Bは,「時間としたら本当にわすかてすけ と,本件少年のあこか引いて,表情か赤くなる,少し赤くなったように 思う」なとと,あたか本件少年か頸を絞られた場面か存在したかのよ うに述へているのてあり,ことさら虚偽の供述をしているか,本当はなか ったことをあったように誤って記憶していることを示すのてあり,被告 人か本件少年の頸部にシーツを巻きつけたという行為は,上記供述内容の 前提となるのてあるから,上記証言か信用てきない以上,被告人かシー ツを本件少年の頸に巻き付けたとの供述の信用性否定されるのは当然て あり,さらに,「ホールヘンを本件少年の前にかさして『刺すそ』という, たしかそう言った場面を覚えている」なとというらかな暴行陵虐行為て供述しているか,このような事実はB以外述へていないのてあり,Bの 供述は,全体として信用に値しないといわなけれはならす,た,Iは, 本件について,異常,鬼のよう,恐怖,狂気,人間のることてはないな と,極端な悪評価をしており,本件か虐待行為そののにほかならないと の前提に立っており,このようなIの評価は事実に反するのてあるとい うしかなく,Iの供述は,真実か語られたのてはなく,信用てきないと いわさるを得す,さらに,遺書を本件少年に代わって書く前に,自身か本 件少年の手を取って遺書を書かせたと供述しているか,Iを除く法務教官 本件少年はそのような場面について供述しておらす,I自身原審公判 廷ての供述以前にはそのようなことを供述しておらす,このような場面は 存在しなかったというしかなく,この部分の信用てきないとして排除し, その前後の部分のは信用てきるとして採用するなとということは,恣意 的な認定との誹りを免れす,少なくと,遺書の場面についてのIの証言 は信用てきないと主張する。しかし,Bは,シーツて本件少年の頸を絞たのか被告人なのか本件少 年なのかはっきりしない,少なくと,被告人か本件少年の頸を絞たと いう記憶はない,シーツて本件少年の頸か絞ったような様子として記憶 しているのは,本当にわすかな時間,本件少年のあこか引いて,表情か赤 くなった様子てある旨供述しているのてあり(原審第2回B74,78な いし82,313ないし328項),本件少年か頸を絞られた場面か存 在したと言したりはしておらす,そそ,頸か絞られていないとし て,本件少年に上記程度の様子か生しることは十分あり得る上,仮にその様子かBの誤認てあったとして,それによってBの供述の信用性か全 般的に否定されることになるとはいえない。た,Bは,上記の様子か本 件少年に生した直後,被告人かシーツを本件少年の頸から外し,ホールヘ ンを本件少年の顔の前にかさして,刺すそといった場面を覚えている旨供 述しているか,本件少年含,他にそのような供述をしている者はおら す,この供述を信用てきるとすることはてきないのの,その供述する行 為は,被告人か,本件少年の頸部にシーツを巻き付け,自身て頸部を絞 付けて死ぬように迫る旨の文言を申し向けた行為の前提となるの,ある いは,同行為に必然的ないし当然に伴うのとはいえす,前記(ア)に 説示したとおり,同行為に関するBの供述の信用性を,上記行為に関する 供述の信用性とは別に判断することに問題かあるとはいえない。さらに,はり前記(ア)に説示したとおり,問題となるのは被告人の 行為の評価てはなく,被告人の行為そののの認定てあり,単に目撃した 被告人の行為に対して悪評価をしていることにより,直ちにIの目撃供述 自体の信用性か否定されることにはならす,他の供述との符合の有無,内 容自体の合理性,他の客観的証拠との整合性等の観点から,Iの供述の信 用性を判断するのか相当てあり,なお,Iは,所論指摘のとおり,被告人 の指示により,自身か本件少年の手を取って遺書を書かせようとした旨供 述しているか,捜査段階においてそのような供述をしているとは認られ ないのならす,本件少年含,これに符合する供述をする者はおらす, Iの上記供述に基ついて,そのような行為かあったとて認定することは てきないのの,遺書の作成及ひ読上けの場面に関する本件少年の記憶はかなり曖昧てあることかうかかわれ(期日外N436ないし446項), M,Iか本件少年の手を取って遺書を書かせたのかはちょっとわからな い,そのようなことはなかったと断言てきるのてはなく,記憶にない旨述 へているにととること(原審第4回M353ないし356項)からする と,Iの上記供述部分か虚偽てあるとてすることてきす,その供述部 分に基つく認定かてきないことから,直ちにIの他の供述の信用性を全て 否定することてきない。(ウ) 所論は,1被告人か本件少年の頸部にシーツを巻いたかについて, Iは,頸に一重にするような感して巻いていたとするか,それ以上描写す ることはてきす,B,検察官調書てはシーツを本件少年の頸の前面に当 てて,シーツを頸の後ろに回して交差させたとしなから,原審公判廷ては, 頸にかけて1周巻いたなととし,その違いを指摘されると,頸に巻いたの は覚えていすなとと供述しており,結局,具体的には供述てきておらす, I及ひBの各供述かこのようなのにととるにかかわらす,被告人か 本件少年の頸部にシーツを巻いたとの行為を認定てきるとするのは,とに かく大要においてシーツを巻いたと言っているのたから,それかあったと 認定してよいとしているのと同してあり,そのような雑駁な認定は許され るのてはなく,た,原判は,被告人か,本件少年に自ら頸を絞る よう促すには,単に頸の後ろからシーツを掛けるのならす,シーツを頸 に巻き付けるのかより自然な動作てあるとするか,なせ自然な動作なのか について説かなく,シーツを掛けたたけてはなく,巻き付けた行為かあ ったことを証拠から認定てきるのてなけれはならないのてあり,本件て用いられているシーツは,少なくと長さ2メートル,幅1.5メートルの のてあって,これを頸部に巻き付けようとすれは,シーツを束ねた上て, 2メートルの長さのシーツを頸の周りに1周取り回さなけれはならす,こ のような行為は,そう簡単にてきるのてはなく,本件少年は,シーツの 中央部分を頸の前に当ててから,シーツの両端を後ろに回し,頸の後ろを 回して前に持ってきたと供述しているか,そのような内容を供述する法務 教官はおらす,2被告人かIに遺書を書かせたかについて,Mは,被告人 かIに遺書を書かせるよう指示はされていたと思いすというにととり, なせそう思うかは,後々Iから自身て書いたということを聞いたなとと言 い出し,それてI自身か書きたくて書いたのかと聞かれて,Iの方は全然 嫌かっていたと言い,誰か書けと言ったかと誘導されて被告人てあると答 えるに至っているのてあり,このようなMの供述からすれは,Mは,被告 人かIに遺書を書くように指示をした場面を直接目撃したと供述している のてはなく,場面からの類推を供述していると見るへきてあり,I及ひM の各供述か本件少年の供述と一致しているという指摘には賛同することか てきす,た,遺書を使った指導の意味かあり理解てきていない者てあ れは,被告人か遺書を書くように促しているのに,これを書こうとしない 本件少年に対し,とかしく思い,それならは手っ取り早く代わりに書い てしおうとの発想になり得るのてあり,3被告人かヒニール袋を本件少 年の顔面に近つけたかについて,Bは,二,三分くらいヒニール袋の口を 近つけていたと供述したかと思うと,ちょっと時間ははっきりわかりせ んと供述するなと,当然描写てきるはすの事項曖昧な供述にととっているのてあり,更にその直前に被告人か洗剤のホトルのふたを開けて,ホ トルから直接ヒニール袋に洗剤を入れたと供述しているか,仮にその供述 のとおりてあるとすれは,間違いなく有毒カスか発生しており,実際には 存在しないことを供述していることになり,密接する供述部分にらかな 誤りか存在し,C,ヒニール袋からカスか漏れないようにしっかり握っ ているのか大変たったというような話を本件後に被告人からされたことか あると供述しているか,被告人は,本件てカスなと発生させておらす,そ のような発言をするはすかないのてあり,上記供述は,誤った記憶という ほかはないのてあって,これと直接関連するヒニール袋を本件少年の顔へ 近つけたとの証言信用てきないといわなけれはならないのてあり,Mは, ヒニール袋を持った被告人の手と本件少年の顔の距離は30センチくらい たと思う,本件少年の目の前にヒニール袋を差し出したというような感し と供述するにととっており,吸えは死ねると迫ったとは供述しておらす, これらの供述について,原判の認定するように,被告人か,塩素系漂白 剤と酸性洗剤とを混せると有毒な気体か発生し,これを吸ったら死ねるな とという趣旨の話をしなから,液体の入ったヒニール袋の口の部分を本件 少年の口元に近つけて,吸うように迫ったという点て一致しているのと 見ることはてきす,なお,被告人か洗剤を混せると見せかけた際にヒニー ル袋か用いられたとする供述は複数存在するか,被告人は,以前,本件少 年かシンナーを吸っていたかを確かようとした際に,ヒニール袋を用い たことかあり,このことと混同されている可能性か極て高く,さらに, 被告人と本件少年との距離,その間には机か置かれていたこと,周りに他に多数の法務教官かいて椅子等置かれていたことなとからすれは,ヒ ニール袋を本件少年に近つけたという認定は不自然,不合理てあり,ヒニ ール袋を用いたとすると,必すそれを片付けるよう指示かされる必要かあ るか,被告人からそのような指示を受けたとの証言をしている者は皆無て あり,ヒニール袋か用いられたこと自体疑われなけれはならす,被告人の 供述は,洗濯室を出て第2学寮へ向かい,集会を開催したことに繋かるか, 本件少年及ひ他の法務教官において,とのようにして第2学寮に向かった のかを説てきる者はいないのてあり,4原判の認定する行為の直後に, 被告人か,本件少年を第2学寮の集会に参加させ,他の少年と対面,対話 させようとすることは余りに不自然てあり,そのような行為をしていない からこそ,指導の続きとして参加させることかてきたのてあると主張する。しかし,1については,Iは,被告人か,シーツを,本件少年の前から 掛けたのか,後ろから掛けたのかはっきりしないか,頸に一重にするよう な感して巻いており,シーツか本件少年の前の方に腰辺りて垂れ下かっ ているような状態てあった旨供述し(原審第2回I40ないし42,18 8ないし191項),B,シーツを本件少年の頸の前から巻いたのか, 後ろから巻いたのかについて所論指摘の変遷かあるのの,被告人か,シ ーツを本件少年の頸の周りに1周巻いて,シーツの両端を本件少年に持た せたと供述しているのてあり(原審第2回B58ないし65,273ない し292項),被告人か,本件少年の頸の周りにシーツを1回巻き付け, シーツか少年の前の方に垂れている状況をそれそれ供述していると認ら れ,とにかく大要においてシーツを巻いたなとと供述しているのてはなく,上記の限りにおいて,本件少年の供述を含,具体的に符合するの として,相互に信用性を補強し合っているということかてきる。そして, 被告人自身,本件少年の頸にシーツを掛け,自分て自分のことをれるか と言ったことは自認しているところ,この文言は,要するに自身の頸をシ ーツて絞られるかという問い掛けてあり,このような問い掛けをする際, 単にシーツを掛けるたけてなく,シーツを頸に巻き付ける方かより自然な 動作てあるということかてき,その旨を述へる原判か,なせ自然な動作 なのかについて説していないなとということはなく,た,シーツを本 件少年の頸の周りに巻き付ける動作か極て短時間に行われたというなら 格別,そのようなことを供述する者は皆無てあり,所論指摘の事情を踏 えて,上記動作か客観的,物理的に不可能ないし困難といえす,これ らの事情に照らし,上記のとおり符合する供述部分に基つき,被告人か, 本件少年の頸部にシーツを巻き付けたのと認定てきるのてあり,これか 証拠に基つかない認定てあるなととはいえない。2については,Mは,被 告人か遺書の作成等についてIに指示をしていたことは間違いない,紙と 筆記用具を持ってくるように指示をし,実際に遺書か作成されていたと供 述しており,誰か遺書を書けと言ったのかという尋問に,被告人てある と確に供述しており(原審第4回M424ないし429項),所論指摘 のMの供述は,遺書はなせ作成されたというか,誰かとういうことを言っ て作成することになったのかという,趣旨か不瞭な尋問に対する供述に 過きす,しか,途中て途切れてしっているのてあり,この供述を捉 えて,Mにおいて,被告人か遺書を書くように指示した場面を直接目撃しておらす,場面からの類推を供述しているなとと見る余地はなく,遺書の 作成及ひ読上け行為について,前記(2)アの認定の限りにおいて,I, M及ひ本件少年の供述は符合しているのと認られる。た,そそ, 他人に遺書を書かせるという行為自体,社会通念に照らして通常よくある のなととはいえす,しろ相当に特異なのというへきてあり,当時の A少年院においてそのような行為か頻繁にされていたなとというわけて なく,所論認るとおり,遺書を使った指導を理解てきていないIにお いて,上記のとおり,特異といわさるを得ない遺書を書かせるという行為 の趣旨ないし意図を何ら確認することなく,しか,自身の上位者てあ る被告人か本件少年に書くよう指示しているにかかわらす,その指示に 反するか,自身か手っ取り早く書いてしおうと思って行動に出るなとと いうのは相当に不自然という以外になく,にわかに考え難いといわさるを 得ない。3については,Bは,被告人か,片手てヒニール袋の口のところ をつかんて,その本件少年の口のあたりにかさした,本件少年は多少 口を背けるような行動あったか,ほとんと黙った立っていた,ヒニ ール袋と口の間の距離は,10センチくらい,握りこふし1個分あけたく らいと供述しており(原審第2回B103ないし106,115,425 ないし429,561項),この供述を曖昧な供述なとということはてき す,所論指摘の供述は,そそ,ヒニール袋の口を近つけていた時間を 弁護人から尋ねられ,確実なことはう分からないと供述しているにか かわらす,弁護人か,自身の印象ていいなととして更に尋ね続けた際の のてあるところ(原審第2回B411ないし414項),4年以上前の出来事について,確実な時間は分からないという供述は特段不自然なの てはなく,所論指摘の供述をって,Bの供述の信用性か減殺されるとは いえない。た,Bは,所論指摘のとおり,ヒニール袋を本件少年の口に 近つける直前,直接洗剤をヒニール袋に入れていたと供述しているか,そ の一方て,ヒニール袋の中て特段の変化か生したという記憶はない旨供述 しており(原審第2回B379ないし397項),洗剤かヒニール袋に入 っていないのに入ったのと単に見間違っている可能性か高く,そそ, 被告人自身か,その態様はとかくとして,有毒カスか発生しているかの ように装ったことは認ており,Bかそのように見間違ったことにより, 被告人かヒニール袋を本件少年の口に近つけたことに関する供述の信用性 に疑いか生しるとはいえない。さらに,Cは,所論指摘の供述をしている か,他方,有毒なカスか実際に出ていたのかとうかというのは分からない, 自身てヒニール袋の中の液体を捨てた時に危険な印象受けなかったと供 述しており(原審第3回C231項),そそ,被告人か,実際に有毒 な気体を発生させることなく,本件少年の面前て,有毒な気体か発生して いるかのように装った上,ヒニール袋をその顔面に近つけ,そこから発生 している有毒な気体を吸えは死ねるなとと迫ったという行為を行ったとし て,Cに対し,実際に発生させていないことはらかにしない,C 供述するように(原審第3回C232項),少年に本当に気体をかかすつ りはなかったということを強調するたに発言したとして,特段不自 然てはなく,所論指摘の供述かCの誤った記憶てあるとて断しることは てきす,上記行為を行ったのてあれは,被告人かCの供述するような発言をするはすかないなとといえす,それそれの存否という意味において, 上記行為とCの供述する被告人の発言か密接に関連しているといえない。 そして,Mは,被告人か,本件少年の口にヒニール袋を近つけて,吸って ろと言い,その際,ヒニール袋の中身について,化学式を挙けて,混せ ると危険たということを話していた旨供述しており(原審第4回M70な いし86,172ないし175項),所論の主張するところを検討して, 本件少年の供述並ひにB,I,C及ひMの各供述は,被告人か,塩素系漂 白剤と酸性洗剤とを混せ合わせるかのような行為をするととに,両者を 混せると有毒な気体か発生し,これを吸ったら死ねるなとという趣旨の話 をしなから,液体の入ったヒニール袋の口の部分を本件少年の顔面に近つ けて,吸うように迫ったという点てほほ符合しているという認定は左右さ れない。なお,上記のとおり符合する供述をしている者らか,いすれ, 本件とは全く異なる場面において,本件少年かシンナーを吸っているか否 かを確かる際に,被告人かヒニール袋を用いたことと,本件とを混同し ているなとという事態はおよそ考え難く,た,所論は,被告人と本件少 年との距離,机他の法務教官の存在等により,被告人か,ヒニール袋を 本件少年の口に近つけたという認定かなせ不自然,不合理になるのか何ら 具体的にらかにしていないところ,関係証拠上,上記各供述の符合する 内容のように,本件当時,被告人か,ヒニール袋を本件少年の口に近つけ ることは困難てあったなとということをうかかわせるような事情見当た らない。そして,原判指摘するとおり,Cは,自身て被告人の使用し たヒニール袋を処理した旨(原審第3回C77,216ないし218項),M,ヒニール袋を片付けている職員を見た旨(原審第4回M253ない し260項)それそれ供述しており,ヒニール袋を片付ける指示を被告人 からされた旨供述している者かいないことにより,ヒニール袋か使用され たこと自体に疑いか生しるのてなく,Mは,第2学寮に行くという被 告人の話かあり,被告人の後ろを歩いて第2学寮に向かった旨供述してお り(原審第4回M94ないし96項),とのようにして第2学寮に向かっ たのかを被告人以外に説てきる者はいないといえない。4については, 後記(3)アに認定,判断するとおり,被告人は,基本的に,本件少年の 特性に応し,指導の目的をって前記(2)アの各行為に及んたのてあ り,特に保安上の観点から,緊急に対処する必要あったと認られる のの,そそ,指導目的て行った行為か,その目的により許容される範 囲を逸脱するということかあり得ないとはいえないのならす,しろ, 緊急に対処する必要かあったということ踏えるなら,被告人において, 試行錯誤の過程て,あせりなとあって,そのような逸脱行為に及んたと いうことかあったとして不自然てはなく,当時の被告人において,前記 (2)アの各行為に及ふこと,指導目的てあるからなお許されると考え ていたとすれは,直後に,被告人か本件少年を第2学寮の集会に参加させ たこと特段不自然とはいえない。(エ) 所論は,シーツを使った指導,遺書を使った指導,洗剤を使った指 導,第2学寮ての集会という一連の行為は,午後5時前ころに本件少年を 寮から体育館に連れて行き,午後7時過きころに別の寮ての集会に参加さ せるての間に行われたとされるのてあるはすのところ,原判の認定ては,とうしてそのような流れになったのか,この2時間以上の間にとの ようなことか起こったのか説てきす,本件か被告人による指導てあった というなら,被告人の供述に従うしかその説はてきないのてあり,被告 人は,本件少年の様子を見なから,なかなか狙った指導か入らなかったた ,試行錯誤をしなから,別の指導方法を試していったのてあり,その際 に選択した指導方法,狙いに基ついた根拠かあり,被告人の狙いか,と のような行動として表れたと見るのか自然てあるかを踏えて,認定かさ れなけれはならす,被告人は,首席専門官として,少年院における矯正教 育に体系的に取り組,法務教官に対し,日常的に科学的根拠のある理論 に基ついた指導を指示し,さらに,それら取組によって成果を上けてき ており,このような被告人か無目的に本件少年に対し指導を行うはすかな く,被告人か行き過きた指導を行うようなことは起こり得す,被告人か行 ったのとして原判か認定する行為は,被告人か行った各指導の目的か らすれは,らかに矛盾する,およそ被告人かするはすのない行為はかり てあり,原判か認定した行為は,被告人か指導の目的を持って行ってい る一連の行為の中て,絶対に起こり得ないと主張する。しかし,既に説示したとおり,そそ,崇高ないし精緻な理論に基つ く指導目的てあったとして,その目的に基ついて行った行為か,目的に よって許容される範囲を逸脱するということはあり得るといわさるを得な いのてあり,被告人自身か,指導目的に基ついて前記(2)アの各行為を 行った旨自白し,この自白に基ついてそれらの行為を認定てきるのかとい う場合てあれは別論,前記(ア)に述へた観点に照らして,被告人の行為を体験ないし目撃した者らの供述の信用性に疑いか生しない場合に,そ の被告人の行為は,自身の理念ないし理論に基つく指導目的によってなさ れたのてあるか,この理念ないし理論,あるいは,指導目的と整合しな いという一事をって,これらの供述の信用性を否定するということはて きないのはしろ当然の理てあり,被告人か本件において行き過きた指導 を行うようなことは起こり得ないなととする所論を採用する余地はない。 そして,本件少年及ひ他の法務教官らの各供述のうち,前記(ア)に述へ た観点に照らして信用てきる部分に基つき,前記(2)アの各行為を被告 人か行ったのと認定てきるのてあり,他方,前記(ウ)の所論4につい て説示したとおり,本件において,緊急に対処する必要かあったというこ と踏えるなら,被告人か,試行錯誤の過程て,あせりなとあって, 指導目的によって許容される範囲を逸脱した行為に及んたということかあ ったとして,不自然てはなく,当時の被告人において,指導目的てある から前記(2)アの各行為に及ふことなお許されると考えていたとすれ は,それらの行為に被告人か及んたという原判の認定か,本件における 流れから見て特段不自然,不合理とすることてきない。(3) そして,少年院の法務教官か,在院者に対して行った行為か,特別公務 員暴行陵虐罪にいう暴行又は陵辱若しくは加虐の行為に当たるか否かは,国民 全体の奉仕者てある公務員を対象とする特別公務員暴行陵虐罪の保護法益か, 第一次的には公務の適正とこれに対する国民の信頼てあることを踏え,原判 か「事実認定の補足説」の項4(1)に説示するとおり,当該行為の態様 そののを基本として,当該行為か行われるに至った経緯,動機及ひ目的,当該行為後の状況,当該行為を行う者の立場,指導する相手の性格属性,当 該行為か相手に与えた影響の有無及ひ程度等の具体的事情を総合し,少年院に おける矯正教育という特殊性を踏えつつ,当該行為を職務上行うことか必要 かつ相当といえるかという見地から,社会通念に従って,個別に判断するへき てあり,本件少年か当時所属していた第1学寮は,規律違反か相次いたた出 寮停止処分となっており,加えて,第2学寮て問題か生し,運動会の中止 取り沙汰される状況下において,被告人は,これてに規律違反行為を重ね, 一度ならす処分を受けていた本件少年か,同室の在院者と,首席を殺す,逃走 するなとという話をしていたと報告を受け,前記(2)アの各行為に及んた のてあり,さらに,その行為後には,本件少年を第2学寮に連れて行き,約1 時間にわたって同学寮の在院者との集会の場を持ち,本件少年の言動を省る 機会を設けたのならす,本件少年及ひ上記同室の在院者に対し,面接指導を 行い,その結果を踏え,それそれの特性を踏えた指導方法について他の法 務教官らに指示をしていることにかんかれは,本件少年の上記言動について は,特に保安上の観点から緊急に対処する必要かあったのてあり,被告人は, 基本的に,本件少年の特性に応し,指導の目的をって前記(2)アの各行為 に及んたのてあったと認られる。しかしなから,前記(2)アの各行為, すなわち,本件少年に対し,シーツをその頸部に巻き付け,自身て絞付けて 死ぬように迫る旨の文言を申し向け,次いて,遺書を作成するよう申し向け, これを拒れると,そはにいた法務教官に,本件少年の遺書に当たるような書 面を作成させてこれを読上けさせ,加えて,有毒な気体か発生しているかの ように装ったヒニール袋を顔面に近つけ,そこから発生している有毒な気体を吸えは死ねるなとの文言を申し向けたという一連の行為は,少年院において, 法によって強制的に在院させられている本件少年に対する法務教官という,本 件少年を法律上実力的に支配する関係に立つ被告人か,いかなる目的ないし意 図に基つくのにせよ,それ自体の態様からして行為の向けられた対象者自身 における死及ひそれに必然的に伴う恐怖心不安感を認識させるのてあるこ とは否定てきない行為を,本件少年を対象として一方的かつ立て続けに行った のてあって,指導目的てされたのてあること,本件少年の特殊性,緊急 に対処する必要性をいかに考慮して,社会通念に照らし,職務上行うことか 必要かつ相当なのてあるとは到底いい難く,公務の適正とこれに対する国民 の信頼の観点からして,およそ容認することはてきす,現に,被告人自身, 原審及ひ当審公判廷を通して,本件において指導目的て上記一連の行為を行う ことを是認することはてきないと供述しているのてあり(原審第7回被告人2 21,222,242,243,247項,当審第2回被告人159,160 項),被告人による前記(2)アの各行為は,本件少年か,その行為により, 死の現実的危険を感したか否かという点に左右されることなく,特別公務員暴 行陵虐罪の暴行又は陵虐行為に当たり,違法性認られ,同罪か成立すると いうへきてある。これに対し,所論は,1少年院の法務教官か,在院者に対して行った行為か, 特別公務員暴行陵虐罪に当たるか否かについて,行為態様に単純に重点を置く 考え方は,指導,教育の実情にそくわす,教育の過程ては,たとえ,本人か精 神的な苦痛を受けるのてあって,必要かあれは,教育活動として実行する 必要かあり,特に身体に対する暴力事案とは異なり,身体への暴力かされていない場合には,仮に子との側に何らかの苦痛精神的なインハクトかあった として,単純に行為態様を基本にして検討するということはてきす,2少年 の属性,被告人の日常の指導姿勢,その目的及ひ動機,本件における緊急性, さらには,本件少年における精神的苦痛指導に伴う精神的なインハクト等に ついてるる主張し,被告人による前記(2)アの各行為は,特別公務員暴行陵 虐罪の暴行又は陵虐行為に当たらす,原判のように,裁判所か指導の流れ 意味なとを無視し,暴行陵虐行為かあったと軽々に認定するようてあれは,被 告人か行ったような発達の視点を取り入れた科学的根拠に基つく積極的な指導 を否定することにほかならす,矯正教育の現場は萎縮し,当たり障りのない指 導しかてきなくなると主張する。しかし,1については,社会通念上違法,有責な行為を類型化した構成要件 における該当性を判断するに際して,行為態様そののを基本とすることは必 然てあり,行為責任の原則に照らして正当てあるところ,原判は,この当 然の法理に照らし,特別公務員暴行陵虐罪の構成要件該当性を判断するに際し て,当該行為の態様そののを基本としたのてあって,さらに,具体的事情 を総合し,少年院における矯正教育という特殊性を踏えつつ,当該行為を職 務上行うことか必要かつ相当といえるかという見地から,社会通念に従って, 個別に判断していくへきてあるとしていることかららかなように,行為態 様に単純に重点を置いているというのなとてはなく,なお,本件において被 告人か行った一連の行為は,本件少年か,それらの行為により,死の現実的危 険を感したか否かという点に左右されることなく,特別公務員暴行陵虐罪に該 当するというへきてある。2については,所論か主張する事情にかんか,前記(2)アの各行為,すなわち,本件少年に対し,シーツをその頸部に巻き付 け,自身て絞付けて死ぬように迫る旨の文言を申し向け,次いて,遺書を作 成するよう申し向け,これを拒と,そはにいた法務教官に,本件少年の遺書 に当たるような書面を作成させてこれを読上けさせ,さらに,有毒な気体か 発生しているかのように装ったヒニール袋を顔面に近つけ,そこから発生して いる有毒な気体を吸えは死ねるなとの文言を申し向けたという一連の行為か, 少年院において法務教官により指導目的て行われることを許容しなけれはなら ないというのてあれは,およそ容認し難い主張という以外になく,被告人自身 ,原審及ひ当審公判廷において,指導目的て上記一連の行為か行われること は容認てきない旨述へている。そして,既に説示したところかららかなとお り,被告人か前記(2)アの各行為に及んたとの認定は,被告人の指導理念な いし指導理論及ひそれに基つく指導方法自体を否定するのなとてはなく,こ の認定により,被告人の指導か否定され,矯正教育の現場か萎縮するとの所論 採り得ない。(4) 以上のとおりてあり,原判示の事実を認定し,特別公務員暴行陵虐罪の 成立を認,被告人を有罪とした原判に事実の誤認はない。 論旨は理由かない。よって,刑訴法396条により本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判 する。 平成23年6月30日
 広島高等裁判所第1部
裁判長裁判官竹田 隆
裁判官 野原利幸
裁判官 結城剛行
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