平成23年4月14日判言渡 同日原本領収 裁判所書記官 平成22年(ネ)第278号 損害賠償請求控訴事件〔原審・名古屋地方裁判所平 成19年(ワ)第3946号〕口頭弁論終結日 平成22年10月13日

主文
1 原判中,控訴人らの敗訴部分を取り消す。
2 上記の部分につき,被控訴人の請求をいすれも棄却する。
 3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。事実及ひ理由 第1 当事者の求めた裁判
1 控訴の趣旨  控訴人国
ア 原判中,控訴人国の敗訴部分を取り消す。
イ 上記の部分につき,被控訴人の請求を棄却する。
ウ 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
 控訴人県
ア 原判中,控訴人県の敗訴部分を取り消す。
イ 上記の部分につき,被控訴人の請求を棄却する。
ウ 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
2 控訴の趣旨に対する答弁
 本件各控訴をいすれも棄却する。
  控訴費用は控訴人らの負担とする。第2 事案の概要(以下,略称は原則として原判の表記に従い,原判の記載箇 所を適宜示す。)1 本件は,被控訴人か,平成18年7月24日に当時17歳9か月てあったA子と性行為をしたこと(本件性行為〔原判2頁20行目〕)について, 18歳未満の青少年の健全育成を目的とする愛知県青少年保護育成条例(本 件条例〔同2頁22行目〕)29条1項,14条1項(本件規定〔同2頁2 3行目〕)違反の罪により逮捕,勾留,公訴提起され,その後,その事件(本 件被告事件〔同2頁24行目〕)について無罪判か確定したところ,被控 訴人か,1控訴人県所属の警察官か違法な逮捕状の請求(本件逮捕状請求〔同 5頁4行目〕)及ひ逮捕(本件逮捕〔同5頁24行目〕)をし,被控訴人の 弁解を供述調書(本件各員面調書〔同7頁24行目〕)に記載せす,かえっ て同人の意思に反する自白の文言を原判別紙8(一覧表2〔同11頁21 行目〕)のNo1ないし6欄の各書類(員面調書)に作文して同人に署名・押 印させたとして,2控訴人国所属の検察官か違法な勾留請求(本件勾留請求 〔同6頁22行目〕)及ひ勾留状の執行(本件勾留状執行〔同7頁5行目〕) 並ひに公訴提起(本件公訴提起〔同8頁17行目〕)をし,被控訴人の弁解 を供述調書(本件各検面調書〔同8頁8行目〕)に記載せす,かえって同人 の意思に反する本件被疑事実(同2頁25行目)に沿う文言を一覧表2のNo 7ないし12欄の各書類(検面調書)に作文して同人に署名・押印させたと して,控訴人らに対し,国家賠償法1条1項に基つき,連帯して,慰謝料5 00万円及ひこれに対する不法行為後の平成19年6月7日から支払済みま て民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案てある。 原判は,1被控訴人とA子との関係は,被控訴人に妻子かおり,被控訴 人か妻と離婚してA子と結婚するつもりはなかったという点を除けは,いわ ゆる恋人同士の関係と全く異なるところはなく,被控訴人か,A子を「単に 自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められな い」ものてはないことからかてある旨,2控訴人県所属の担当警察官ら(本 件警察官ら〔原判4頁4行目〕)は,犯罪の嫌疑の相当な理由についての 合理的根拠か客観的に欠如しているのに,本件逮捕状請求をし,かつ本件逮捕をしているところ,それは違法てあり,必要な捜査を怠り,らかに不合 理な構成要件への当てはめをしているから過失か認められる旨,3控訴人国 所属の担当副検事(本件副検事〔同6頁18行目〕)の本件勾留請求及ひ本 件勾留状の執行については,違法なものとは認められない旨,4控訴人国所 属の本件副検事は,有罪判を期待しうる合理的な根拠か客観的に欠如して いるのに,本件公訴提起をしているところ,それは違法てあり,必要な捜査 を怠り,らかに不合理な構成要件への当てはめをしているから過失か認め られる旨,5控訴人県所属の警察官による取調へ(本件各警察官調へ〔同7 頁23行目〕。一覧表2のNo1ないし6欄の各書類の作成を含む。)に違法 性は認められない旨,6本件副検事による取調へ(本件各副検事調へ〔同8 頁7行目〕)について,一覧表2のNo7ないし12欄の各書類に関し,誘導 により虚偽の自白を取得したものて違法てあり,その点に過失も認められる 旨,7慰謝料額は控訴人国関係て100万円,控訴人県関係て100万円か 相当てある旨判示し,被控訴人の請求を,控訴人ら各自か,被控訴人に対し, 100万円及ひこれに対する平成19年6月7日から支払済みまて年5分の 割合による遅延損害金の支払(連帯関係にはない。)を求める限度て認容し たところ,控訴人らかこれを不服として控訴した。2 前提事実,争点及ひ当事者の主張は,後記3のとおり当審における当事者の 主張(原審ての主張を敷衍するものを含む。)を付加するほかは,原判「事 実及ひ理由」欄の「第2 事案の概要」の1及ひ2に記載のとおりてあるから, これを引用する。3 当審における当事者の主張  控訴人国の主張
ア 本件公訴提起に国家賠償法上の違法は認められす,本件副検事には過失 もないこと 公訴提起に要求される犯罪の嫌疑は,有罪判に要求される嫌疑とは異なるから,無罪判か確定したという事実をもって直ちに公訴提起か 違法てあるとすることはてきす,公訴提起時において有罪判を期待し 得る合理的理由か欠如していない限り,検察官には注意義務違反は認め られない。そして,検察官の判断の合理性の有無を検討するに当たり, 証拠評価及ひ法的評価の性質を考慮する必要かあり,単に検察官か実際 にした証拠評価及ひ法的評価と異なる評価をなし得ることをもって,当 該検察官の判断の合理性か否定されるものてはない。 本件条例中の本件規定における「いん行」の意義は,青少年を誘惑し, 威迫し,欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗した不当な手段 により行う性交又は性交類似行為(第1形態の性行為〔原判14頁1 0行目〕)のほか,青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対 象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為 (第2形態の性行為〔同14頁10行目〕)をいうものと解される。そ して,第2形態の性行為に当たるかを検討するに際し,従来の一般的な 考え方によれは,当該性行為か結婚を前提としないものか否かか重要な 判断要素とされていたところ,本件被告事件についての名古屋簡易裁判 所の無罪判(以下「本件無罪判」という。)は,時代の変化を踏ま えた新しい判断を示したといえる。本件性行為は,結婚を前提としない ものてある上,被控訴人には第2子を妊娠中の妻と子かおり,妻と別れ る意思は全くなく,被控訴人とA子との付合い性交渉かいすれも被控 訴人による誘いをきっかけとしているなと,両者の年齢,性交渉に至る 経緯,両者間の付合いの態様等に徴すると,本件性行為は,少なくとも 従来の一般的な考え方に依拠すれは,第2形態の性行為に当たるとみる 余地はあったから,本件公訴提起か国家賠償法上違法とはいえないし, 本件副検事に過失かあったともいえない。 原判は,被控訴人か有罪か否かを裁判官の立場から判断したものてあり,有罪と認められる嫌疑かあると判断した検察官の証拠評価及ひ法 的判断か,法の予定する一般的検察官を前提として,通常考えられる検 察官の個人差による判断の幅を考慮に入れても,なおかつ行き過きて, 経験則,論理則に照らして到底その合理性を肯定することかてきない程 度に達しているか否かという観点から判断したものてはなく,不当てあ る。イ 本件各副検事調へは合理的かつ相当てあって国家賠償法上の違法は認め られないこと 原判は,本件副検事か本件条例に規定する「いん行」の該当性判断について誤った前提をもって,誘導により被控訴人に虚偽の自白を迫り,これを取得したことか国家賠償法上違法てある旨判示する。
 しかし,取調官か取調への際に,内心ていかなる事情を前提としていたかは,当該前提事情に基つく取調官の発言か偽計等に該当しない限り, 取調への違法に直ちに影響するとはいえない。本件被疑事件(原判2頁24行目)において,被控訴人に妊娠中の 妻かいるという客観的事実は,少なくとも従来の考え方によれは,一般 社会通念上,「A子と恋愛関係にある」という被控訴人の供述とは相容 れないものてある。このような供述を得た検察官としては,この点につ いて解するため,被控訴人に対し,妻の存在を前提とすれは,被控訴 人の上記供述を直ちに信用することはてきない点を指摘した上て,妻と の関係を踏まえた質問を行うのは取調官として当然てある。このような 質問かおよそ「偽計による取調へ」と評価される余地はなく,取調官の 裁量として合理的かつ社会的相当性の範囲内と認められ,当然に許され るへきものてある。また,本件条例における「いん行」の規定か,行為者及ひ青少年の年 齢,性行為に至る経緯及ひ行為の状況等客観的事情を基にして判断される評価的な構成要件てあることも併せて考えると,各人によってその評 価か分かれる可能性を有する内容について,取調官か一定の価値観に基 つき,被疑者に対して当該証拠に基つく事実関係を根拠に一定の評価を 示してこれを誘導し,被控訴人に認めさせたとしても,その取調へは, 法の予定する一般的な検察官を前提とすると,合理性か認められ,かつ 社会通念上も相当てあるといえる。 原判か違法てあると指摘した被控訴人の個別の供述部分について, 被控訴人の供述の自由の侵害の有無という観点から検討してみても, 「淡い」,「真摯な」という表現は各人の価値観による幅か大きく,被 控訴人の供述を録取するに当たり,本件副検事かこうした表現を使用し たことにより,被控訴人の供述の自由か侵害されたとは考えられない。また,「・・・と言われても,むを得ません。」との表現は,当該 評価を受け入れることも仕方かないとの意味にすきないから,被控訴人 か当該評価に対して納得していないことか窺われ,本件副検事か当該供 述を録取したことにより被控訴人の供述の自由か侵害されたとは考えら れない。さらに,「処罰については,素直に受けます。」との内容についても, 処罰されることになったら処罰を受けるという趣旨てあり,これをもっ て処罰を受ける必要のない被控訴人に自白を迫り,本件副検事の事実評 価を認めさせたなとということはてきないし,被控訴人の供述の自由か 侵害されたとはいえない。 控訴人県の主張
ア 被控訴人とA子との関係か真摯な交際には当たらないこと
原判は,被控訴人とA子との付合いか性行為のみを目的とするものて はなく,愛情を持った真摯なものてあった旨判断している。しかし,被控訴人とA子は,平成18年5月に初めて2人たけて会うテートをし,その後の5月終わりないし6月初めころから,同年7月24日 の本件性行為まての間に,合計7回の性行為をしているほか,トライフ等 は性行為をする場所への単なる移動手段にすきす,被控訴人は31歳の社 会人て妊娠中の妻と子をもち,離婚する意思もないのてあるから,被控訴 人とA子との関係か性行為のみを目的としたものてあったことはらかて ある。イ 本件警察官らか第2形態の性行為の解釈を誤っていないこと 本件警察官らは,被控訴人とA子の各年齢,被控訴人かA子のアルハイ ト先の副店長としてA子ら青少年の従業員の保護,育成を図るへき立場に ありなから,自らの仕事のシフトの権限を利用し,A子の仕事を調整して A子をテートホテルに誘い,本件性行為に至ったという経緯本件性行 為に至るまての性行為の回数頻度,被控訴人のA子との付合いの態様か 普通の恋人同士のような付合いてはなく,一時の遊ひ友達のような付合い て,両者の愛情人格的交流に欠けるものてあったことから,被控訴人と A子との本件性行為か第2形態の性行為に該当すると判断したのてあり,本件警察官らは第2形態の性行為の解釈を誤っていない。
 ウ 本件逮捕状請求及ひ本件逮捕か適法てあること本件被疑事件の捜査は,A子かその母親と a 署(原判3頁23行目) を訪問して届け出たことを端緒として開始されたところ,A子は,被控訴 人には妻子かおり,A子のアルハイト先の副店長てあること,被控訴人と の関係は結婚を前提としない一時の遊ひ友達てあると思っていたこと,被 控訴人もA子とは一時の遊ひ友達てある旨をA子に言っていたこと等を供 述しているのてあり,A子による a 署への届出かその意思に反したような 事情は全く窺われなかった。また,被控訴人かA子と食事をし,映画に行 き,ティスニーラントに行く約束をすることかあったとしても,これらの ことから,直ちに,被控訴人かA子を単に自己の性的欲望を満足させる対象として扱っていたわけてはないということにはならない。さらに,前記 ア及ひイを併せ考慮すると,被控訴人かいん行の罪を犯したと疑うに足り る相当な理由かあったといえるし,被控訴人か身辺に捜査か及ふのを察知 すれは逃走のおそれ罪証隠滅のおそれも認められ,逮捕の必要性もあっ たから,本件逮捕状請求及ひ本件逮捕は適法てある。 被控訴人の主張
ア 被控訴人の行為はいん行に当たらないこと
本件無罪判は,検察官か控訴することなく確定しているから,被控訴 人の行為かいん行に当たらないことは裁判て確定しているというへきて, これを蒸し返すことは許されない。実質的に見ても,検察官か控訴せすに 本件無罪判を確定させたのは,警察官又は検察官か作り上けたストーリ ーに合わせた供述をA子から再度得ようと試みたかてきなかったためと考 えられるし,A子を法廷に出頭させることて,被控訴人とA子か真摯に交 際していたこと,A子の親らか被控訴人から金員を恐喝しようとしたか てきすに,その腹いせとしてA子の親らかA子に暴力を振るって無理に告 訴をさせたことからかになると考えたからてある。したかって,被控訴 人の行為かいん行に当たらないことはらかてある。イ 本件警察官ら及ひ本件検察官による違法な行為について
a 署のC(原判4頁1行目)本件副検事は,原審て18歳未満の女 子と性交渉をすれはいん行に該当するか,例外的に結婚前提て性交渉をし たのてあれはいん行に当たらないと述へるなと,いん行の定義について最 高裁判例その他の正しい知識を持っていなかったことはらかてある。本 件警察官ら及ひ本件副検事は,被控訴人とA子の交際状況等の事実関係を 何らかの不注意て認定を誤ったというより,被控訴人A子からいくら話 をされても本件をいん行て立件するのに都合の良いストーリー以外の一切 を聞かなかったのてあり,このことは,被控訴人代理人かいん行の定義を説しても取り合わなかったことからもらかてある。本件警察官ら及ひ 本件検察官は,いん行について正しい知識を持っていないのに,キャンヘ ーン月間中のために検挙件数を上けたいという動機から,自分達の考える ストーリーに都合の良い勝手な作文をして事件処理を進めたのてあるか ら,本件逮捕状請求及ひ本件逮捕,本件勾留請求及ひ本件勾留状の執行並 ひに本件公訴提起等か違法てあることはらかてある。第3 当裁判所の判断 当裁判所は,原判と異なり,被控訴人の請求はいすれも理由かないと判断する。その理由は以下に記載のとおりてある。
 1 「いん行」の意義について 本件規定は,「何人も,青少年に対して,いん行又はわいせつな行為をし てはならない」と規定しているところ,「いん行」の意義については,福岡 県青少年保護育成条例違反事件に関する昭和60年大法廷判(原判13 頁9行目)か判断しており,この法理か本件条例にも及ふと解されることは, 原判13頁のに記載のとおりてあるから,これを引用する。 昭和60年大法廷判について 昭和60年大法廷判か判断する「いん行」の意義の具体的内容及ひその理由等は,原判13頁から15頁まてのに記載のとおりてあるから,こ れを引用する。すなわち,昭和60年大法廷判は,「いん行」とは広く青少年に対する 性行為一般をいうものと解すへきてはなく,1青少年を誘惑し,威迫し,欺 罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗した不当な手段により行う性交 又は性交類似行為(第1形態の性行為)のほか,2青少年を単に自己の性的 欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性 交又は性交類似行為(第2形態の性行為)をいうものと解される旨判示して いる。 第2形態の性行為について 原判16頁から18頁まてのに記載のとおりてあるから,これを引用する(たたし,同17頁18,19行目の「とし,」から21行目の「(同 ・58頁)。」まてを「としている。」と改める。)。すなわち,第2形態の性行為に該当するためには,「結婚を前提としない 性行為」てあることか必要てあるか,結婚する意思かなけれは直ちに「いん 行」に該当するというのてはなく,昭和60年大法廷判か具体的判断要素 として挙けている,当時における両者のそれそれの年齢,性交渉に至る経緯, その他両者間の付合いの態様等の諸事情を考慮して,健全な常識を有する一 般社会人の立場から判断する必要かある。2 認定事実(補足説を含む。)
 証拠(甲1,24,30ないし37,43,44,49ないし51,乙イ1,3,乙ロ1,4の1・2,原審証人C,原審証人D〔原判6頁17行 目〕,原審被控訴人本人)及ひ弁論の全趣旨によると,本件性行為及ひ本件 申告(同3頁24行目)に至る経緯等について,以下の事実か認められる(補 足説は後記に記載)。ア 被控訴人とA子の年齢等 被控訴人は,本件性行為時,31歳の会社員てあり,平成15年6月27日に結婚した妻と1歳になる子供かおり,妻は妊娠していた。被控訴人 は,A子と初めて性行為をした後,平成18年6月終わりころ,妻か妊娠 した事実を知った。A子は,本件性行為時,17歳9か月の高等学校の生徒てあり,被控訴 人と初めて性行為をするより前にも性行為の経験かあった。イ 本件性行為に至るまての経緯及ひ付合いの態様
 被控訴人は,平成18年2月,勤務するB社か経営する飲食店(以下「本件店舗」という。)に副店長として異動になった際,本件店舗てアルハイトをしていたA子と知り合った。
 被控訴人は,平成18年4月ころ,勤務の空いた時間にA子と話す機会か多くなったところ,A子は,被控訴人に対し,仕事学校の話をし たほか,A子の母か2回離婚し,当時,別の男性と交際していること, 母とけんかをした際に,施設に入ったらとか,出て行けなとと言われた ことなとを話し,また,A子か過去に付き合っていた男性の話,当時, A子にしつこくつきまとっている男性の話相談をするうちに,次第に 被控訴人と親しくなっていった。被控訴人は,当初,A子に対し,特別な感情を有していなかったもの の,A子の顔も雰囲気も自分の好みのかわいい子てあると感し,A子の 仕事ふりを見て,あるいは話をして親しくなるにつれ,A子に次第に好 意を持つようになった。A子は,被控訴人か一緒にいて楽て,波長か合うタイフてあると感し, 被控訴人に自然に惹かれていった。 被控訴人は,平成18年4月ころ(認定理由は後述),A子から見た い映画かあると言われ,A子と共に映画を見に行くことになり,A子と 携帯電話のメールアトレスを交換し,後日映画を見に行く日をめた。被控訴人は,同年4月末ないし5月初めころの仕事か休みの平日(認 定理由は後述),A子か学校か終わった後,A子の自宅の近くまて車て 迎えに行き,A子と共に映画を見に行った。被控訴人は,映画の後,A 子を車て送って帰る途中,A子に対して了解を求めた上て,A子と初め てキスをした。なお,A子は,同月初めころ,A子の母に対し,被控訴人から付き合 ってほしいと言われていることを話したところ,A子の母から,普通に 友達として付き合うのは良いか,肉体関係になってはためと言われてい た。 被控訴人とA子は,その後,携帯電話のメール交換により,今度いつ 会うといった連絡のほか,仕事の些細な話趣味の合った音楽の話なと を通してお互いの感情を伝え合うようになり,メールの回数も徐々に増 え,また,トライフテートなとをし,キスの回数も多くなり,お互いに 好きたという話をして,感情か盛り上かり体を触れ合うこともあった。また,被控訴人とA子は,休みかなかなか合わなかったため,A子か アルハイトの日を削るなとして2人て会う時間を作っていた。 被控訴人は,A子と何回かテートをした後,同人に対し,気持ちか高 ふっており性行為をしないかとメールて尋ねたところ,また早いとの返 事てあったか,その後A子に対し,正式にA子と付き合っているつもり ている旨の話をして性行為の同意を得たため,日程を調整し,平成18 年5月11日(認定理由は後述),本件ホテル(原判3頁16行目) てA子と性行為をした。 被控訴人とA子は,その後,平成18年5月31日,同年6月8日, 同月19日,同月26日,同年7月5日,同月17日,本件ホテルて性 行為をした(認定理由は後述)。被控訴人とA子は,本件ホテルて,3 0分くらいテレヒを見たり話をしたりすることもあり,性行為か終わっ た後は,他愛もない会話をし,ホテルを出ると途中て食事をするなとし て,被控訴人は,A子を同人の自宅まて送っていた。被控訴人とA子は, 性行為を持つようになった後も,性行為をするたけてはなく,トライフ 映画に行くなとのテートをし,ホテルに行った帰りに食事をすること もあり,2人てティスニーラントに行くという約束もしていた。なお,A子の母は,同年6月に入ったころには,A子か被控訴人の話 はかりをするようになり,A子か被控訴人と肉体関係になっているのて はないかと心配するようになっていた。 被控訴人は,平成18年7月24日にA子と会って本件ホテルに行く約束をしていたため,本件店舗ての仕事のシフトを調整し,同日午後7 時ころ,A子を車て迎えに行き,すくに本件ホテルに向かい,同日午後 8時30分ころ,本件ホテルの b 号室において,A子と性行為(本件性 行為)をした。被控訴人とA子か本件ホテルを出た後,A子は,同日午後10時30 分ころ,A子の母に,被控訴人と遠くまてトライフをしているのて帰り か遅くなる旨のメールを入れたところ,A子の母から電話て,すくに帰 宅するように言われたため,被控訴人は,A子を同人の自宅に送った。ウ 本件申告に至る経緯等
 A子の母は,平成18年7月24日,前記イの経緯てA子か帰宅した際,被控訴人とA子との交際状況に不審を持ち,A子を問いたたした ところ,A子か被控訴人との性行為の事実を認めたため,被控訴人を呼 ひ戻した。被控訴人は,A子の母及ひ同人の交際相手(以下「A子の母ら」とい う。)から問いたたされ,A子との性行為の事実を認めて謝罪し,A子 の母は,被控訴人に対し,二度とA子に近つかないように求めた。その 際,A子の母は,A子に対して暴力を振るい,A子の母の交際相手と共 に被控訴人に対しても暴力を振るい,被控訴人に全治2週間の顔面打撲 の傷害を負わせた。 A子の母らは,被控訴人かA子との関係を絶つ旨の発言をしたものの, 平成18年7月24日午後11時過きころ,A子と共に本件店舗に向か い,本件店舗の店長(以下「店長」という。)に抗議した。店長は,A 子の母らの要求か,被控訴人の勤務先に対し,暗に金銭の支払を要求す るものてあり,店長の一存てめられることてはなかったため,一度上 の人間と相談する旨返答した。被控訴人の勤務先のマネーシャーは,2ないし3日後,A子の自宅を
訪れ,A子の母らに被控訴人を異動させることなとを告けたものの,金 銭の支払についてはフライヘートの問題てあるとして要求を拒絶した。
 A子の母らは,同マネーシャーの対応に納得せす,被控訴人を連れて 再度謝罪に来るよう要求した。同マネーシャーか,約1週間後,被控訴人を含めて3名てA子の自宅を訪問し,被控訴人と共に謝罪したものの, A子の母らは,被控訴人被控訴人の勤務先の態度に誠意かみられない として,A子の母らの主導により a 署に本件申告をするに至った。エ 被控訴人及ひA子の認識等 被控訴人は,職務上,A子と知り合った当初から,A子か17歳てあることを知っており,A子も,被控訴人に妻と子供1人かいることを知って いた。A子は,被控訴人とは,年齢も離れているし,被控訴人か結婚して 妻もいることを知っていたのて,結婚することは考えておらす,被控訴人 も,妻子供と別れてA子と結婚することを考えておらす,A子に対して も妻と離婚するつもりはない旨を告けていた。また,被控訴人は,A子に対し,性行為の対価として,金銭を渡したこ とはなく,A子を騙して同人と性行為に至ったという事実もなかった。 補足説ア 被控訴人は,平成18年5月ころからA子との交際を開始し,同月末な いし同年6月初めころ,A子と初めて性行為をするようになった旨を司法 警察員に対する供述調書(甲33)及ひ公判供述調書(甲36)等て供述 している。しかし,被控訴人の本件ホテルの利用状況を捜査した捜査報告書(乙ロ 4の1)によれは,平成18年5月11日から同年7月24日まての8回 にわたり,前記イないしのとおり,被控訴人か本件ホテルを利用し ており,上記のとおり被控訴人かA子と本件ホテルて性交渉を行ったこと か認められる。そして,被控訴人とA子との最初の性交渉か,上記のとおり同年5月11日と認められることなとからすると,被控訴人とA子か初 めて映画に行った日(交際を開始した日)は,同年4月末ないし同年5月 初めころと認められる。イ 被控訴人は,前記エに関し,妻に対しては愛情はないとか,A子と恋 愛関係にあったとか,A子に夢中てあったとか供述し,あるいはその旨を 陳述書に記載する(甲37,44)。しかし,子細に検討すると,本件性 行為かA子の母ら被控訴人の妻に発覚後の被控訴人の気持ちとそれ以前 の感情とを正確には区別せすに供述しているのてあり,加えて,本件検面 調書(甲34,35)の内容に異議かなかったと認められる(原審被控訴 人本人36頁)のてある。したかって,本件性行為時の気持ちとして上記 の供述内容とおりてあったとの趣旨てあるとすると,上記供述は採用する ことはてきない。3 本件逮捕状請求及ひ本件逮捕の違法性の有無について  判断基準標記については,原判25頁から26頁まてのに記載のとおりてある から,これを引用する。すなわち,逮捕状請求及ひ逮捕は,刑事事件において無罪の判か確定し たというたけて直ちに違法になるものてはなく,逮捕状請求及ひ逮捕状によ る逮捕の各時点において,犯罪の嫌疑について相当な理由かあり,かつ,必 要性か認められる限りは適法てあり,反対に警察官か現に収集した証拠資料 及ひ通常要求される捜査を遂行すれは収集し得た証拠資料を総合勘案して, その各時点て,犯罪の嫌疑についての相当な理由及ひ逮捕の必要性に関する 合理的根拠か客観的に欠如している場合には,違法になると解するのか相当 てある。 本件警察官らか把握していた事実 標記については,原判26頁から29頁まてのイに記載のとおりてあるから,これを引用する(たたし,27頁20行目の「(たたし」から23行 目の「うかかわれる。)」まてを削除する。)すなわち,本件逮捕状請求時及ひ本件逮捕時において,本件警察官らの把 握していた事実は,本件性行為当時,被控訴人か31歳の会社員て,A子か 高校生(17歳9か月)てあったこと,被控訴人とA子は被控訴人か副店長 をしていた本件店舗てA子かアルハイトとして働いていたことて知り合い, 被控訴人とA子とか初めてテートをしてから1か月余り(実際には約2週間 程度〔前記2イないし〕)て性行為に至り,本件性行為まての間に少 なくとも4ないし5回の性行為を持ったこと(実際には平成18年5月11 日から同年7月24日まてに8回〔前記2イないし〕),被控訴人に は妊娠している妻と1歳になる子供かおり,A子と婚姻する意思はなく,A 子も被控訴人とは婚姻する意思はなかったことなとてあったと認められる。 違法性の有無 ア 判断
 犯罪の嫌疑の有無 前記によれは,被控訴人には妻かあるから,被控訴人とA子との性行為は,単に成人と18歳未満の青少年との性行為というにととまらす, 被控訴人の妻に対する関係て民事上不法行為を構成する違法行為てあ り,このような関係を継続すれは,A子において被控訴人の妻から損害 賠償を請求され得るのてあり,双方独身(あるいは婚姻関係か破綻して いる場合)の恋人同士の関係とは質的にらかに異なっているところ, 31歳の社会人て妻子のある被控訴人は,被控訴人とA子とかこのよう な関係てあることを理解していたはかりか,妻と離婚してA子との婚姻 に発展することは望んていなかったと認められる。そして,被控訴人は, A子かアルハイトとして働く店舗の副店長という立場てA子を管理監督 する立場にあり,その職務上もA子との関係か一定範囲から逸脱しないようにすへき立場にあった。他方て,A子は高校生てあり,前記のと おり,被控訴人と婚姻に発展することは望まないか,被控訴人か真剣に 付き合うというのてあれは妻子かあっても性的関係にも同意するという のてあり,被控訴人との交際の社会的・法的意味の理解は十分てなく, 被控訴人の真剣度に関心かあったと認められる。したかって,被控訴人 は,上記のとおりその身分的・雇用関係上の立場を顧みることなく,被 控訴人との性行為か法的にいかなる意味を持つかを十分に理解していな い18歳未満のA子との間て本件性行為に至ったということかてきる。
 殊に本件においては,被控訴人かA子と初めてのテートをしてからわす か1か月余り(本件警察官らの認識。実際には約2週間程度)て性行為 に至っており,本件性行為まての2か月弱の間て少なくとも4ないし5 回(本件警察官らの認識。実際には8回)の性行為を持っている。この ような場合,本件規定にいう「いん行」のうち,昭和60年大法廷判 かいう第2形態の性行為に当たる蓋然性か高いということかてきる。 本件警察官らの認識・判断と相当性の有無 前記の事実及ひ上記の判断を踏まえると,被控訴人かA子を専ら性行為のための一時の遊ひ友達として扱っているとの判断を本件警察官 らかすることは無理からぬということかてき,そのように判断するのか 合理性を欠くということはてきす,本件警察官らか,本件性行為につい て,被控訴人において青少年(A子)を単に自己の性的欲望を満足させ るための対象として扱っているとしか認められないような場合(第2形 態の性行為)に当たると判断したこと(犯罪の嫌疑の相当な理由)に合 理的根拠か欠如しているとは認められない。 逮捕の必要性の有無 被控訴人には勤務先妻子かあるものの,妻子のもとを出奔するおそれもあるから,逮捕の必要性に合理的根拠か欠如しているとも認められない。
イ 被控訴人の主張に対する判断
 被控訴人は,本件警察官らか,合理的根拠なく本件逮捕状請求及ひ本 件逮捕を行った旨主張するところ,A子は,本件性行為時,既に17歳 9か月てあり,以後3か月を待たすに18歳になること,A子は,被控 訴人と性行為を持つより前に,性行為の経験を有していたこと,被控訴 人とA子か数回の食事なとのテートを重ねて性行為に至ったことなとを 本件警察官らか把握していたと認められるし,証拠(甲1,30ないし 37,44,原審証人C,原審被控訴人本人)及ひ弁論の全趣旨による と,本件警察官らか,A子A子の母から事情聴取をすれは,本件警察 官らか既に収集した証拠資料により把握していた事実以外にも,A子か 被控訴人に対し悩みを話したり相談したりして,自然に惹かれていき, お互いの感情を伝え合い,映画トライフなとの数回のテートを重ねて, 性行為に至ったこと,性行為を持った後もトライフ映画に行くなと のテートをし,ホテルに行った帰りに食事をすることもあり,2人てテ ィスニーラントに行くという約束もしていたことからかになったと認 められる。しかし,被控訴人かとのような内心の意思てA子との本件性行為に至 っているかは,被控訴人の供述のみから判断すへきてはなく,他の客観 的な事実関係をも基礎にすへきところ,被控訴人は,少なくともA子の 母らから暴力を受ける際まては,妻と離婚するつもりかなかったという のてあり(甲37の16頁),A子との交際は,被控訴人の妻に知られ るとか,A子の親に知られて(そのとおりの事実か生した)反対される と,それに抗してても婚姻するつもりか被控訴人にはなかったものと窺 われるのてあり,その意味て,この交際は,被控訴人にとって真剣度の 乏しいものてあったといわさるを得ない。現に,被控訴人とA子は,初めてのテートをしてから性行為に至るまての期間は1か月余り(実際に は約2週間程度)と長くはないし,被控訴人とA子か性行為を持った後 もトライフ映画に行くなとのテートをし,ティスニーラントに行く約 束をしていても,被控訴人かA子の歓心を買って関係を継続するために 行っていたにすきないとみることも可能というへきて,前記説示のとお り,被控訴人か所詮A子を自己の性的欲望を満足させるための対象とし て扱っているとしか認められない場合に当たると本件警察官らか判断し たことに,合理的根拠か欠如しているということはてきす,この点につ いての被控訴人の主張は採用てきない。 被控訴人は,本件警察官らかいん行についての正しい定義を理解して いなかったと主張するところ,a 署所属のCの原審証人尋問中には,被 控訴人とA子か真剣に付き合っていても結婚するつもりかなけれは第2 形態の性行為に該当するとの認識をCか有していた旨述へている部分か ある。しかし,Cの証言には,真摯な交際か認められていれは問題ないと思 う旨をいったんは述へている部分(原審証人C24頁から25頁)第 2形態の性行為てあるかは被控訴人かA子に対して一時的な遊ひ友達て ある旨話していたことなとを総合的に判断したと述へる部分(同8頁か ら9頁)等もあり,Cにおいて,被控訴人とA子か真剣に付き合ってい ても結婚するつもりかなけれは第2形態の性行為に該当するとの認識を 有していたかには疑問かある上,そもそもCは,被控訴人A子の供述 をはしめ,その他の客観的な事実関係等も総合考慮し,被控訴人の本件 性行為か第2形態の性行為に当たると判断したと認められ,その判断か 合理的根拠を欠いていると認められないことは前記説示のとおりてあ り,この点についての被控訴人の主張は採用てきない。 被控訴人は,本件警察官らか,キャンヘーン月間中のために検挙件数を挙けたいという動機から,本件逮捕状請求及ひ本件逮捕を行った旨主 張するか,これを認めるに足りる証拠はなく,被控訴人の主張は採用て きない。 被控訴人は,本件被告事件において無罪判を得ている旨主張する。
 しかし,本件無罪判は,昭和60年大法廷判から20年以上か経過 し,結婚のあり方成人男女の出会いと交際,結婚生活同棲生活,離 婚に対する考え方意識等も大きく変化し,多様化している状況下の判 てあり,時代の変化価値観の多様化等を前提にすれは,真摯な交際 てないというためには,現在の社会通念から見て「結婚を前提としない」 ことたけてめるのは難しいとした上て,被控訴人とA子との本件性行 為について,第2類型の性行為というには,なお相当な疑問か残ると言 わさるを得ないとしており(甲1),時代の変化を踏まえた上て事実の あてはめを示しているというへきてある。しかし,本件性行為は,結婚 を前提としないものてある上,被控訴人には第2子を妊娠中の妻と子供 かおり,被控訴人には妻と別れる意思は全くなく,両者の付合い性交 渉はいすれも被控訴人による誘いをきっかけとしているほか,前記説示 のとおり,両者の年齢,性交渉に至る経緯,両者間の付合いの態様等を 勘案すると,本件無罪判の考え方とは異なり,本件性行為については, 第2形態の性行為に当たるとのあてはめをする余地は十分にあったとい うへきてあるから,本件警察官らのそのような判断に合理的根拠か欠如 しているといえないことはらかて,この点についての被控訴人の主張 は採用てきない。 被控訴人は,本件について,A子の母親らか被控訴人から金員を恐喝 しようとしたかてきす,その腹いせとしてA子の親らかA子に暴力を振 るって無理に告訴をさせた旨主張する。しかし,本件条例は青少年の健 全な育成を阻害するおそれのある行為を防止し,もって青少年を保護し,その健全な育成に寄与することを目的として定められ,その中て本件規 定か設けられており,その違反の罪は親告罪てもないから,被控訴人の 上記主張か本件規定違反の罪の成否を左右することはなく,この点につ いての被控訴人の主張は採用てきない。 まとめ したかって,控訴人県所属の本件警察官らの本件逮捕状請求及ひ本件逮捕に違法性はないから,この点について,控訴人県か被控訴人に損害賠償義務を負うことはない。
4 本件勾留請求及ひ本件勾留状執行の違法性の有無について
 控訴人国所属の本件副検事の本件勾留請求及ひ本件勾留状執行に違法性か なく,この点について,控訴人国か被控訴人に損害賠償義務を負わないこと は,後記のとおり原判を補正するほかは,原判33頁から38頁まて の5に記載のとおりてあるから,これを引用する。 原判の補正 原判37頁19行目の「認められない。」を以下のとおり改める。「認められないし,前記説示のとおり,そもそもこれらの事実を把握してい たとしても,被控訴人の本件性行為を第2形態の性行為に当たると判断し たことか合理的根拠を欠いているとは認められない。」5 本件公訴提起の違法性の有無について  判断基準
標記については,原判38頁から39頁まてのに記載のとおりてある から,これを引用する。
 すなわち,検察官の公訴の提起は,刑事事件において無罪の判か確定したというたけて直ちに違法となるものてはなく,公訴提起時における証拠資 料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑かあれは違 法性はないか,検察官か現に収集した証拠資料及ひ通常要求される捜査を遂行すれは収集し得た証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と 認められる嫌疑かない,つまり有罪判を期待し得る合理的な根拠か客観的 に欠如しているのに,公訴を提起した場合には違法と解するのか相当てある。 本件副検事か把握していた事実 標記については,原判39頁から43頁まてのイ及ひウに記載のとおりてあるから,これを引用する(たたし,同43頁13行目から23行目まて を削除する。)。すなわち,本件副検事は,本件公訴提起に際し,本件勾留請求時まてに把 握していた事実(引用に係る原判34頁から36頁まてのイ)のほか,以 下の1ないし5の事実を把握していたと認められる。すなわち,1被控訴人 か勾留質問て,「自己の性欲を満足させるたけの目的て」というのは違って おり,互いに恋愛感情をもっていた等を供述していたこと,2準抗告申立書 には被控訴人とA子か互いに恋愛感情を抱いており,A子の母の内縁の夫か 被控訴人に対し,約20発の殴る蹴るの暴行を加え,被控訴人の勤務先を訪 れて暗に金銭を要求した等の記載かあること,3本件各警察官調へては,被 控訴人かA子をホテルに誘ったところ,A子かこれに応したのてホテルに行 ってA子と性行為を持ったか,被控訴人には妻も子供もいるためA子とは結 婚するつもりはなかった等を供述していたこと,4本件各副検事調へては, 被控訴人に「恋愛関係って,とういうものなの?」なとと質問したか,被控 訴人は妻と別れるつもりはなく,A子と結婚するつもりもなかったと供述し たこと,5本件副検事か「17歳てあるにもかかわらす,私と彼女との間に 淡い恋愛関係か生まれたことから,妻子かあり,妻か妊娠しているにもかか わらす,彼女の若さに惹かれてセックスしたのてす」と整理したところ,被 控訴人か確認した上て,供述調書に署名・押印したこと。 違法性の有無 ア 判断
前記によれは,前記3て説示したとおり,高校生(17歳9か月) のA子よりも10歳以上年長て,妊娠中の妻と1歳の子供を有し,妻と別 れてA子と婚姻する意思はない被控訴人か,職場のアルハイト高校生て被 控訴人との性行為を伴う交際か被控訴人の妻との関係て違法となること等 の意味を十分に理解していないA子と初めてのテートをしてからわすか1 か月余り(実際には約2週間程度)て性行為に至り,本件性行為まての2 か月弱の間て少なくとも4ないし5回(実際には8回)の性行為を持って いると認められ,被控訴人とA子とか普通の恋人同士の関係あるいは男女 の真剣な交際関係にあるとはいえす,社会通念上は被控訴人かA子を専ら 性行為のための一時の遊ひ友達として扱っていると判断される蓋然性か高 いから,本件副検事か,本件性行為について,青少年(A子)を単に自己 の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められない ような場合(第2形態の性行為)に当たると判断したこと(有罪と認めら れる嫌疑)に合理的根拠か欠如しているとは認められない。イ 被控訴人の主張に対する判断
 被控訴人は,本件副検事か有罪判を期待し得る合理的根拠か客観的に欠如しているのに,公訴を提起した旨主張する。
 しかし,前記3イのとおり,A子との性行為を伴う交際は,被控訴人にとって,妻に隠れてのものてあって,妻A子の親にるみにな って反対されれは終わることになるような真剣度の乏しいものてあるこ と,他方てA子は,被控訴人の職場のアルハイト高校生て,上記交際の 社会的・法的意味を十分に理解していないこと,交際開始から性行為に 至るまての期間は短いこと等からすると,被控訴人か,トライフ映画 に行き,ティスニーラントに行く約束等をしたのも,A子の歓心を買っ て関係を継続するためにすきないと窺われるのてあり,A子の年齢か1 8歳に近いこと性経験かあることを考慮しても,前記説示のとおり,被控訴人かA子を自己の性的欲望を満足させるための対象として扱って いるとしか認められない場合に当たると本件副検事か判断したことに, 有罪判を期待しうる合理的根拠か欠如しているということはてきす, この点についての被控訴人の主張は採用てきない。 被控訴人は,本件副検事か「いん行」についての正しい定義を理解し ていなかったと主張するところ,これを具体的に認めるに足りる証拠は ない。 被控訴人は,本件副検事か,キャンヘーン月間中のために公訴提起を 行った旨主張するか,これを認めるに足りる証拠はなく,被控訴人の主 張は採用てきない。 被控訴人は,本件被告事件において無罪判を得ている旨主張する。 ます,前記3イのとおり,本件無罪判は時代の変化を踏まえた上 てのあてはめの判断を示しているというへきてある。しかし,本件性行 為は,結婚を前提としないものてある上,被控訴人には第2子を妊娠中 の妻と子供を捨てる意思は全くなく,被控訴人とA子との付合い性交 渉はいすれも被控訴人による誘いをきっかけとしているほか,前記説示 のとおり,両者の年齢,性交渉に至る経緯,両者間の付合いの態様等を 勘案すると,本件性行為については,第2形態の性行為に当たるとのあ てはめをする余地は十分にあったというへきてあるから,本件副検事の その旨の判断に合理的根拠か欠如しているといえないことはらかて, この点についての被控訴人の主張は採用てきない。 まとめ したかって,控訴人国所属の本件副検事の本件公訴提起に違法性はないから,この点について,控訴人国か被控訴人に損害賠償義務を負うとは認められない。
6 本件各警察官調への違法性の有無について
 本件各警察官調へに違法性かなく,この点について,控訴人県か被控訴人 に損害賠償義務を負わないことは,後記のとおり原判を補正するほかは, 原判47頁から49頁まての7に記載のとおりてあるから,これを引用す る。 原判の補正 原判48頁5行目の「前記のとおり」から8行目の「認められ,」まてを削除する。
7 本件各副検事調への違法性の有無について
ア 被控訴人は,本件副検事か,本件副検事調へにおいて,被控訴人の言い 分を一切取り合わす,その弁解を供述調書に記載しなかったから,被控訴 人の人格権,自己定権を蹂躙し,違法てある旨主張するか,裁量権の範 囲を逸脱した違法なものといえないことは,後記イのとおり原判を補正 するほかは,原判49頁のに記載のとおりてあるから,これを引用す る。イ 原判の補正
 原判49頁15行目の「上記原告の」から16行目の「せす,」まてを削除する。
 同49頁16行目の「前記7と同様に,」を削除する。
ア 被控訴人は,本件副検事か,上記と異なり,一覧表2のNo7ないし1 2の各書類につき「2 1の部分の調書作成に関する主張(原告)」欄に 記載のとおり,被控訴人の意に反する本件被疑事実に沿う文言を作文して, 妻かいるのたから真剣な付合いのはすかないなとと理詰めて追及するなと して,これに署名・指印させたものてあるから,被控訴人の人格権,自己 定権を蹂躙するものてあり,違法てある旨主張するのて,次項以下て検 討する。イ 刑事訴訟法198条1項は,検察官か犯罪の捜査について必要かあるときは,被疑者の出頭を求め,これを取り調へることかてきると規定してい るところ,取調へにおける検察官の言動については,被疑者か被疑事実を 否認している場合においてその取調へに当たって行われる検察官の被疑者 への説得行為その他の言動は,取調へ対象事件の内容・性質,取調へ時点 における証拠関係の下ての取調への必要性等の諸事情を勘案し,取調へを 行う上て合理性かあり,かつ,社会通念上相当性を欠くと認められるもの てない限り,許容されるというへきてある。また,取調へをする検察官に は,取調へ方法の選択・実施について,裁量か認められていると解され, 取調への技術として,理詰めの尋問自体は,合理的な必要性かある限り許 され,理詰めの尋問てあるというたけては直ちに被控訴人の供述の自由な との被控訴人の権利利益を侵害することになるわけてはない。ウ 本件ついて,引用にかかる原判3頁から9頁まての前提事実のほか, 証拠(甲34ないし37,44,原審証人D,原審被控訴人本人)及ひ弁 論の全趣旨によれは,1被控訴人は,本件各副検事調へにおいて,本件副 検事に対し,A子と互いに恋愛関係を持っていたと供述したこと,2本件 副検事は,被控訴人に,「恋愛関係って,とういうものなの?」,「恋愛 関係といっても濃淡かあるよね?」,「妻子と別れてもいいと言うくらい の,熱烈な恋愛関係たったの?」なとと質問したところ,被控訴人は妻と 別れるつもりはなく,A子と結婚するつもりもなかったと供述したこと, 3本件副検事か,被控訴人に対し,A子との関係か真摯なものてあったと いえないのてはないかと投けかけたところ,被控訴人かさらに具体的にA 子との恋愛感情について供述しなかったこと,4本件副検事は,被控訴人 は被疑事実を認めるものと判断し,「事実はそのとおり間違いありません」 (一覧表2のNo7),「17歳てあるにもかかわらす,私と彼女との間に 淡い恋愛関係か生まれたことから,妻子かあり,妻か妊娠しているにもか かわらす,彼女の若さに惹かれてセックスしたのてす」(同No8・9),「真摯な付き合いてはありません」(同No10),「A子とセックスする について,正直言って専ら自分の性欲を満たすためたけたと言われても, むを得ません。」(同No11),「処罰については,素直に受けます。」 (同No12)なとと整理した本件各検面調書を作成したところ,被控訴人 は,本件各検面調書の内容を確認した上,いすれも署名・指印をしたもの と認められる。また,原判3頁から9頁まての前提事実のほか,証拠(甲34,35, 原審証人D,原審被控訴人本人)及ひ弁論の全趣旨によれは,本件副検事 は,あらかしめ被控訴人に対し,自己の意思に反して供述をする必要かな い旨を告け,被控訴人の供述した内容を,被控訴人の面前て口頭てまとめ て述へ,検察事務官かこれを入力して録取した上,印刷して被控訴人に手 渡して読ませなから,本件副検事かハソコンの画面て読み聞かせたところ, 内容に誤りかないことを確認し(平成18年10月3日の取調へにおいて は,誤記・誤字・脱字について,被控訴人の確認を受けなから増減変更し た。),これらに署名・指印することを求め,被控訴人はいすれもこれら に署名・指印をしたことか認められる。エ 前記5(前記3も含む。)て説示したとおり,本件被疑事件におい て,高校生(17歳9か月)のA子よりも10歳以上年長て,妊娠中の妻 と1歳の子供を有する被控訴人か,A子と初めてのテートをしてからわす か1か月余り(実際には約2週間程度)て性行為に至り,その後も本件性 行為まての2か月弱の間て少なくとも4ないし5回(実際には8回)の性 行為を持っている上,被控訴人においてA子と婚姻する意思はないと述へ ていることからすると,被控訴人とA子とか普通の恋人同士の関係とはい えす,被控訴人かA子を専ら性行為のための一時の遊ひ友達として扱って いるとの判断をすることか合理性を欠くということはてきない。ところか, 被控訴人か,「A子とは恋愛関係にある」と供述するのて,本件副検事は,「恋愛関係」又は「真摯な交際」か妻との関係等と矛盾するのてはないか との質問をしたのてあるから,これらの質問は当然のことというへきてあ り,取調官の裁量としても合理的かつ社会的相当性の範囲内と認められる。
 そして,一覧表2のNo7ないし12については,被控訴人か前記のとおり 内容に誤りかないことを確認した上て署名・指印していることも踏まえる と,被控訴人か本件副検事からの上記取調へ指摘にいったんは納得した 上て署名・押印したと認められ,被控訴人の人格権又は自己定権を蹂躙 するものとはいえす,違法性かあるとは認められない。 まとめ したかって,控訴人国所属の本件副検事の本件各副検事調へに違法性はないから,この点について,控訴人国か被控訴人に損害賠償義務を負うとは認められない。 第4 結論
以上によれは,被控訴人の請求は,いすれも理由かないから棄却すへきところ, これと異なる原判の控訴人ら敗訴部分を取り消し,上記部分の被控訴人の請求 をいすれも棄却することとして,主文のとおり判する。名古屋高等裁判所民事第1部
裁判長裁判官 岡光民雄
裁判官 片田信宏
裁判官光吉恵子は,転補のため署名押印することかてきない。
裁判長裁判官 岡光民雄
判例本文

この判例ページのURL

LINEで送る
Pocket