主文
1 一審被告らの控訴及ひ一審原告の控訴をいすれも棄却する。
 2 一審被告Bの当審における反訴請求を棄却する。3 控訴費用は各自の負担とし,当審における反訴訴訟費用は一審
被告Bの負担とする。
 事実及ひ理由
第1 当事者の求めた裁判 (一審被告らの控訴)
 1 控訴の趣旨(1) 原判中,一審被告ら敗訴部分をいすれも取り消す。
 (2) 一審原告の請求をいすれも棄却する。(3) 訴訟費用は,第一,二審とも一審原告の負担とする。
2 控訴の趣旨に対する答弁
(1) 一審被告らの控訴をいすれも棄却する。
 (2) 控訴費用は,一審被告らの負担とする。(一審原告の控訴)
 3 控訴の趣旨
(1) 原判中,一審原告敗訴部分を取り消す。
(2) 一審被告Bは,一審原告に対し,160万円及ひこれに対する離婚判確定の日の翌日から支払済みまて年5分の割合による金員を支払え。
 (3) 訴訟費用は,第一,二審とも一審被告Bの負担とする。4 控訴の趣旨に対する答弁
(1) 一審原告の控訴を棄却する。
(2) 控訴費用は,一審原告の負担とする。
(一審被告Bの当審における反訴請求)
 5 反訴請求の趣旨
一審原告の離婚請求か却下,棄却されることを解除条件として
(1) 一審原告は,一審被告Bに対し,160万円及ひこれに対する離婚判確定の日の翌日から支払済みまて年5分の割合による金員を支払え。
 (2) 反訴訴訟費用は,一審原告の負担とする。6 本案前の答弁
(1) 一審被告Bの反訴に係る訴えを却下する。
 (2) 反訴訴訟費用は,一審被告Bの負担とする。7 反訴請求の趣旨に対する答弁
(1) 一審被告Bの反訴請求を棄却する。
(2) 反訴訴訟費用は,一審被告Bの負担とする。
第2 事案の概要
1 請求の内容と訴訟の経緯等
本件は,一審被告Bの夫てある一審原告か,一審被告Bの子て一審原告か認 知した一審被告Aに対し,認知の無効を求める(原審平成21年(家ホ)第4 9号)とともに,妻てある一審被告Bに対し,離婚とこれによる慰謝料160 万円(附帯請求は判確定後の遅延損害金)の支払を求めた(原審平成22年 (家ホ)第18号)事案に係る控訴事件てある。本件のうち,認知無効請求事件の争点は,1同請求か民法785条に違反す るか,2同請求か権利濫用となるかの各点に,離婚等請求事件の争点は,3一 審被告Bによる悪意の遺棄又は一審原告と一審被告Bとの婚姻関係の破綻か認 められるか,4同請求か信義則に反するかの各点にあり,これらに関し,原審 は,1,2を否定し,3の婚姻関係の破綻を認め,4を否定する判断をした上, 一審原告の一審被告Aに対する認知無効請求と一審被告Bに対する離婚請求を いすれも認容し,一審被告Bに対する慰謝料請求を棄却する旨の原判を言い 渡した。これに対し,一審被告Aか認知無効請求を認容した部分を,一審被告Bか離婚請求を認容した部分をそれそれ不服として控訴し,また,一審原告か慰謝料 請求を棄却した部分を不服として控訴したのか本件てある。なお,一審被告Bは,当審において,一審原告の離婚請求か認容された場合 の予備的請求として,一審原告に対し,離婚慰謝料160万円の支払を求める 反訴を提起した。2 前提事実と争点及ひ争点に関する原審における当事者の主張 次のとおり補正するほかは,原判2頁25行目から同6頁18行目に記載のとおりてあるから,これを引用する。
(1) 原判3頁3行目末尾に「なお,一審原告は,昭和**年**月**日生まれてあり,一審被告Bは,昭和**(19**)年**月**日生まれて ある。」を,同5行目の末尾に「一審原告の血液型はA型,一審被告Bの血 液型はO型,一審被告Aの血液型はB型てあり,一審原告と一審被告Aとの 間には血縁上の親子(父子)関係はない(甲2ないし4)。なお,一審被告 Aは,来日前,フィリヒンにてフィリヒン人てある血縁上の実父とともに生 活していたか,その実父は,平成20年ころ死亡した。」を,同6行目の「届 出」の次に「(以下「本件認知」ということかある。)」をそれそれ加え, 同7行目の「日本国籍を取得した。」を「平成20年法律第88号による改 正前の国籍法3条所定の届出をしたことにより日本国籍を取得したか,生来 的に有していたフィリヒン国籍を喪失,離脱したか否かはらかてない。」 にそれそれ改める。(2) 同4頁5行目から同6行目にかけての「性的虐待」を「体に触る,陰部に 触るなとの性的虐待」に改める。3 当審における当事者の主張 (1) 一審被告ら
ア 認知無効請求について
(ア) 民法785条,786条の解釈
原判は,民法785条の趣旨を認知の撤回を認めないという点にと とめ,血縁上の親子関係か存在しない場合てあっても,認知者の認知の 取消し無効の主張を許さないとの趣旨を含まないとした上,同法78 6条の利害関係人には認知者を含むと解されるのて,認知者による認知 無効請求は許されると判断した。しかし,この判断は,大審院大正11 年3月27日第二民事部判・民集1巻4号137頁,東京高裁昭和6 3年8月31日判・判例タイムス694号161頁に反する。民法785条は,気まくれな認知を防止するとともに,一旦認知され た後の法的安定性を確保する点にあると解されるのてあり,本件におい ても,認知無効を認めることによって一審被告Aの身分関係,居住関係 か不安定になり,それにより精神的,経済的に不利益を受けることとな るのてあって,一審被告Aの運命はもてあそはれ,その福祉か害される 結果を招来することとなるのてあるから,原判のような解釈は妥当て ない。(イ) 権利の濫用 原判は,1同居期間か1年8か月程度てあること,2一審被告Aかフィリヒンて実兄らとともに生活し,一審原告か実父てないことを理解 していたこと,3一審原告の認知か連れ子養子に近いものて,認知には 離縁のような事後的な関係解消制度か予定されていないこと,4今後の 親子関係の修復可能性か低いことを強調して,一審原告の認知無効請求 か権利の濫用に当たらないと判断した。しかし,1は,一審原告か派遣社員として1年6か月間富山県静岡 県に働きに出ていたからてあり,過度に強調される事情とはいえない。
 2は,一審被告Aと実父との同居期間は短く,実父は既に死亡していることか考慮されるへきてある。 3については,養子縁組てはなく,あえて虚偽認知という犯罪を犯したのは一審原告てあり,その不利益は一審原告自身か甘受すへきてある。 4も,今後の親子関係の修復可能性か低いのは,一審原告の一審被告 Aに対する性的虐待暴力という一審原告自身の責められるへき行為か 原因となっているのてあるから,これについては,むしろ一審原告の請求か権利の濫用となる理由の一つになり得る事情てある。 本件において,一審原告の認知無効請求か権利の濫用となるか否かを 判断するに当たっては,一審原告の請求か,性的虐待から避難するため に一審原告のもとを去った一審被告らに対する報復目的てされているこ と,一審原告か一審被告Aを認知した動機か,性的興味の対象を手元に 置こうとしたことか重視されなけれはならない。また,認知無効か認め られないとしても,その不利益を受けるのは認知者たる一審原告以外に は存在しない。さらに,認知無効か認められれは,一審被告Aは,完全 に日本人として生活しているにもかかわらす,日本国籍を失い,フィリヒンへ退去強制されることになり,その不利益は計り知れない。 以上の事情によれは,本件は,認知無効を認めることか著しく不当な 結果をもたらす場合に該当するから,一審原告の認知無効請求は,権利の濫用に当たるというへきてある。 イ 離婚等請求について
(ア) 婚姻関係の破綻 一審被告Bか一審原告と別居した理由は,一審原告の性的虐待から一審被告Aを避難させるためてあった。そうすると,一審被告Aか成人し て独立し,一審原告か自らの非を認めて態度を改めれは,同居の障害か なくなるから,今後の婚姻関係の修復可能性かまったくないとはいいき れない。したかって,一審被告Bと一審原告との婚姻関係か破綻しているとま てはいえない。(イ) 信義則違反 一審原告の離婚請求か信義則に反しているかとうかを判断する上て最も考慮されるへき事情は,一審原告か一審被告Aに性的虐待を加えたこ とてあり,一審原告か有責配偶者てあることてある。一審原告は,一審被告Aか小学校3年生ころから4年生ころにかけて, その胸股に触るという行為を繰り返しており,この行為は,13歳未 満の男女に対するわいせつ行為てあるから,強制わいせつ罪か成立する。
 しかも,一審被告Aについて虚偽認知をし,自分の手元に置いて性的虐 待の対象としたのは,ほかてもない加害者たる一審原告てある。また,一審原告の離婚請求か許容されると,一審被告Bは在留資格を 失い,日本からの退去を強制される恐れか生し,そうなれは,一審被告 Aも日本ての生活を継続てきなくなるか,これ以上,有責者てある一審 原告の都合て一審被告らの運命を左右することは,絶対に避けなけれは ならない。このように,一審原告の有責性か極めて重い以上,その離婚請求は, 信義則に反しているといえる。ウ 一審被告Bの当審における反訴請求について 前記のとおり,一審原告は有責配偶者てあり,一審被告Aに対する性的虐待に起因して,一審被告Bは多大なる精神的苦痛を受けてきた。また, 一審原告の離婚請求か認められると,一審被告らは,退去を強制される事 態に陥ってしまう。それらの精神的苦痛を慰謝するに足りる金額は,少なくとも160万円 を下回らない。よって,一審被告Bは,一審原告に対し,不法行為による損害賠償とし て,160万円及ひこれに対する離婚判確定の日の翌日から支払済みま て民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。(2) 一審原告
ア 慰謝料請求について
原判は,一審原告か一審被告Aに性的虐待を加えたと認定し,婚姻関 係か破綻した主たる責任は一審原告にあるとして,一審原告の慰謝料請求 を棄却したか,この認定,判断は誤っている。一審原告と一審被告Bとの婚姻関係か破綻した原因は,1一審被告Bか 日本ての滞在を続ける目的て一審原告と結婚したとしか考えられないこ と,2ハチンコなとによる一審被告Bの著しい浪費とこれを原因とする多 数の知人からの借金のため,一審原告まてもか支払の催促を受けるなとの 金銭的トラフルに巻き込まれたこと,3一審被告Bか一審被告Aの実父の 葬儀に参列するため,自分の子か亡くなったと虚偽の事実を告け,帰国費 用を負担させてフィリヒンに帰国していたことなとから,一審原告か一審 被告Bに対する信頼を失ったことか原因てある。また,一審被告Bか平成21年2月12日に自宅を出て行ったのは,一 審原告か失職し,就職先か見つかる目処も立っていなかったためてあって, 一審原告との婚姻生活を続ける理由か失われたことによる。このように,婚姻関係破綻の原因は一審被告Bにあり,しかも,一審被 告Bは,資力のない一審原告か生活の場所さえ失ってしまうことを認識し ていなから,そのような行動に及んたのてある。したかって,一審原告の一審被告Bに対する慰謝料請求は認容されるへ きてある。イ 一審被告Bの当審における反訴請求に対する本案前の答弁について 一審被告Bの当審における反訴請求は,控訴審においてされたものてあ るから,相手方の同意か必要とされている(民事訴訟法300条1項)。
 しかし,一審原告は,これに同意しないから,同請求に係る訴えは,却下されるへきてある。
第3 当裁判所の判断
1 一審原告及ひ一審被告らの控訴について
当裁判所も,一審原告の一審被告Aに対する認知無効請求と一審被告Bに対 する離婚請求はいすれも正当てあるから認容し,一審被告Bに対する慰謝料請 求は失当てあるから棄却すへきものと判断する。その理由は,次のとおり補正 するほかは,原判「事実及ひ理由」,「第3 当裁判所の判断」に記載のと おりてあるから,これを引用する。(1) 原判7頁11行目の最初の「フィリヒン法」の次に「(フィリヒン家族 法175条,172条,なお,同法には認知の制度は存在しない。)」を加 え,同21行目の「9,10」を「9ないし11,12の1ないし3,14 の1ないし4」に同行目の「乙1ないし6」を「乙1ないし7」にそれそれ 改める(なお,書証番号はすへて認知無効請求事件のものてある。以下,同 様)。(2) 同8頁8行目の「入局管理局」を「入国管理局」に改め,同11行目から 同12行目にかけての「虚偽のもの」の次に「,なお,一審被告Aは平成1 6年6月25日に一審原告を父とする出生登録かされたか,その手続は一審 被告Bか行った。」を加え,同12行目の「被告」を「一審原告」に,同1 5行目から同16行目にかけての「同居を始めた。」を「広島市d区eの自 宅(一審被告Bの勤務先の従業員寮てあった。)に同居し,日本ての生活を 始めた。」にそれそれ改める。(3) 同8頁17行目から同21行目まてを以下のとおりに改める。「(8) 一審被告Aは,上記のとおり,平成17年10月に来日した後,F小 学校に入学したか,当時は日本語か不自由てあったため,本来てあれは 3年生てあったか,1学年下の2年生に編入された。また,一審被告A は,当時,日本ての生活に馴染んておらす,箸を使わすに手て食へ物を 食へたり,自分のことを「オレ」と呼んたりしていたため,これを見とかめ,聞きとかめた一審原告から厳しく叱責され,次第に一審原告を疎 ましく思うようになった。そのような中,一審原告から禁しられていた にもかかわらす,一審被告Aかいとこ(一審被告Bの妹の子とも)に一 審原告のハソコンのハスワートを教え,そのいとこかフロクラムに手を 加えたことから,ハソコンか起動てきなくなったことかあり,その際に は,一審原告も怒りを抑えられす,一審被告Aの髪の毛を引っ張るなと したことかあった。このようなことから,一審原告と一審被告Aとは, 当初から一貫して不仲てあった。なお,一審被告Bは,一審被告Aか同居するようになった3か月後の 平成18年1月12日,広島市児童相談所を訪ね,次の点について相談 をしている。ア 一審原告か一審被告Aに一緒に入浴するように言い,断り続けているか,連日なのて心配かある。
イ 一審被告Aか学校から帰宅すると,一審原告か抱きすくめてキスをするため,一審被告Aか嫌かっている。
ウ 一審原告か一審被告Aの日常生活に干渉し,意に沿わないと機嫌か悪くなる。
エ 正月には,一審被告Aか騒いたため,一審原告か足て一審被告Aを蹴った。
オ 一審原告か,一審被告Aをフィリヒンに帰すとか,一審被告Bと離婚すると発言する。」
(4) 同8頁24行目の次に行を改めて以下を加える。
「 なお,一審被告Bは,平成19年7月4日,再ひ広島市児童相談所を 訪ね,次の点について相談をしている。ア 一審原告は,一審被告Bかいても,一審被告Aに触るため,一審被告Aか嫌かっている。
イ 一審被告Bは,離婚して引っ越したいか,離婚後も,一審被告Aと 一緒に広島市に住み,今の店て働きたい。ウ 一審原告は,離婚を了解したか,離婚届はまた出していない。」 (5) 同8頁25行目の「妹の夫」を「妹の夫てあるC」に改める。(6) 同9頁4行目の次に行を改めて以下を加える。
「 なお,一審原告は,富山県と静岡県て稼働した平成19年6月ころか ら平成21年1月まての間,一審被告B名義の郵便貯金にほほ毎月入金 (多い月て10万円,少ない月て5000円ないし1万円)し,一審被 告らの生活費を援助していた。」(7) 同9頁5行目の「原告との同居再開に恐怖感を持ち」を「不仲てあった一 審原告との同居再開を嫌い」に,同6行目の「同年」を「同月」にそれそれ 改め,同16行目の末尾に「そこて,一審原告は,当時,前記のとおり,派 遣切りにあい,無職て就職先もまっていなかったため,労働金庫から派遣 切り支援資金を借り受けて転居したか,その後も就職先に恵まれす,現在も 福祉に頼って生活している。」を加える。(8) 同10頁2行目の「登録」を「戸籍の記載」に改め,同3行目から同13 行目まてを以下のとおりに改める。「3 ところて,一審被告らは,一審原告か一審被告Aに対し,体に触る,陰部に触るなとの性的虐待を加えたと主張し,乙5,6及ひ一審被告ら 各本人尋問の結果中には,これに沿う陳述ないし供述かある。よって検討するに,上記各証拠によれは,一審原告の一審被告Aに対 する性的虐待か行われたというのは,一審被告Aか小学校2年生の終わ りころから小学校3年生の時期(乙5の4頁,乙6の5頁,一審被告A 本人59項)てあるというのてあるから,平成17年の年末から平成1 9年の3月まての間ということになるか,前記認定の事実によれは,一 審被告Bは,平成18年1月12日,広島市児童相談所を訪ね,一審原告と一審被告Aのことについて相談したか,その際の相談内容は,一審 原告か一審被告Aに連日にわたって一緒に入浴するように言うとか,一 審被告Aか学校から帰宅すると,一審原告か抱きすくめてキスをすると いうことてあって,一審被告らか主張するような性的虐待に係る行為て はない。また,少なくとも日本ては,父親か小学校2,3年生の娘に一 緒に入浴しようと誘うことは奇異なことてはなく,しかも,一審原告の 本人尋問の結果(203項)によれは,一審被告Aと一緒に風呂に入っ たのは,シラミ(虱)取りのために入った1回たけたというのてあるし (この点に関する一審被告Aの本人尋問の結果(118項以下)は甚た 曖昧てあり,採用てきない。),抱きすくめるというのも,一審原告の 本人尋問の結果(205項)によれは,ハク(hug)てあり,通常,親愛 の情を表すとされている行為てあるから,いすれも直ちに性的な行為か されたということはてきない。したかって,上記乙5ほかの証拠はたすく採用することかてきす, 一審原告か一審被告Aに対し,平成18年1月12日まての間に性的虐 待を加えたと認めることはてきない。次に,その後,平成19年3月まての間のことてあるか,上記乙5ほ かの証拠によれは,一審原告か一審被告Aに性的虐待を加えたとすれは, この間か最もその可能性か高いことになるか,前記認定の事実によれは, 一審被告Bかこの間に児童相談所を訪ねて相談をした事実はなく,一審 原告か派遣社員として働くために富山県に転居し,一審被告Aの被害か なくなったはすの同年7月4日に至り,一審被告Bは,児童相談所を訪 ねた上,初めて一審原告か一審被告Aに触る旨を訴えているのてあって, 真に性的虐待かあったにしてはあまりに不自然な経緯というへきてあ り,しかも,その際には,一審被告Bの離婚離婚後の生活についても 相談していることにかんかみると,一審原告の一審被告Aに対する性的虐待というのは,離婚のための単なる口実として持ち出されたにすきな いとの疑いか残る。したかって,上記乙5ほかの証拠はたすく採用することかてきす, 平成19年3月まての間についても,一審原告か一審被告Aに性的虐待 を加えたと認めるに足りる証拠はない。なお,前記認定の事実によれは,平成20年12月,一審被告Bの妹 の夫てあるCか一審原告に対し,一審原告か一審被告Aの身体に触るこ とを非難した事実かあるか,Cにおいても,一審被告らの話を信してそ の旨非難したにすきす,上記のとおり,一審被告らの陳述供述の信用 性に疑問かある以上,上記事実かあるからといって,一審原告か一審被 告Aに性的虐待を加えたと認めるには足りない。以上のとおりてあり,一審被告らの主張は,これを認めるに足りる証 拠かない。」(9) 同12頁5行目の「不実保護者」を「不実認知者」に,同9行目の「こと からすれは」から同11行目末尾まてを「上,個々の事案において具体的妥 当性を欠くことになる場合には,後記のとおり,権利濫用の法理の適用によ ってこれに対処することか可能てあり,かつ,そのようにすへきてもあるか ら,上記の身分関係の安定不実認知者への非難を理由として,認知者自身 による認知無効請求を一切許容しないと解するのは相当てない。」に,同2 6行目の「身分関係,居住関係か不安定になり」を「法律上の父かいなくな り(なお,一審被告Aの血縁上の実父か既に死亡していることは,前提事実 において確定したとおりてある。)」にそれそれ改める。(10) 同13頁3行目の「積極的に不実認知を行い」から同7行目末尾まてを「一 審被告B(たたし,フィリヒンにおいて,一審原告か一審被告Aの父てある との虚偽の出生登録の手続をしたのか一審被告Bてあることは,前記認定の とおりてある。)とともに積極的に不実認知を行ってもいる。」に,同10行目の「被告」を「一審被告A」に,同12行目の「実親子関係」を「しか も,一審原告と一審被告Aとは当初から一貫して不仲てあったのてあるから, その関係か実親子関係」にそれそれ改める。(11) 同13頁18行目から同22行目まてを以下のとおりに改める。「 そして,以上に加えて,一審原告か一審被告Aに性的虐待を加えたと認 めるに足りる証拠はなく,他に性的な行為を加えたともいえないこと,一 審原告か一審被告Aの髪の毛を引っ張った事実かあるとしても,一審原告 からすれはそれなりの理由かあったことは前記認定の事実かららかてあ り,一審被告A(50項以下,98項以下)同B(49項以下)の各本 人尋問の結果によっても,他に一審原告か一審被告Aに対して違法と評価 されるほとの暴行を加えていたとは認め難いこともまた,本件における権利濫用の法理の適用上,考慮されなけれはならない。
 他方,本件認知の無効請求か認容されたとすれは,それによって一審被告Aと一審原告との法律上の父子関係か一審被告Aの出生に遡って存在し なかったこととなり,ひいては前記届出による一審被告Aの日本国籍の取 得も無効となると解されるか,既に説示したところによれは,一審原告と 一審被告Aとは一貫して不仲てあり,今後ともその修復の可能性はほとん と考えられないというのてあるし,一審被告A(現在14歳てある。)は, 8歳まてフィリヒンて実兄らと生活しており,しかも,甲9の1ないし4, 一審原告(50項,68項以下,117項,152項以下),一審被告B (138項)及ひ一審被告A(115項)の各本人尋問の結果によれは, フィリヒンには実兄も,祖母もいるほか,一審被告Bとは母語てあるタカ ロク語て会話する日常生活を送っていることか認められるのてあるから, 一審被告Aの日本国籍の取得か無効となり,これにより,在留資格を喪失 してフィリヒンに退去強制されたとしても,看過し難いほとの重大な不利 益を被ることになるわけてはない。そうすると,本件認知の無効請求を認容することにより,既に血縁上の 父と死別した一審被告Aか更に法律上の父を失うことになるとしても,そ れにより一審被告Aか被る精神的,経済的不利益か大きいということはて きす(現在,一審原告か福祉に頼って生活していることは前記認定のとお りてある。),また,本件認知か一審原告と一審被告Bとの婚姻に伴って された連れ子養子の実質を有するものてあり,後記のとおり,その婚姻関 係か破綻した場合てあっても,これを解消する制度かないことなとの本件 認知その無効請求かされた諸事情にかんかみると,一審原告による本件 認知の無効請求か権利の濫用に当たるということはてきない。」(12) 同13頁26行目から同14頁2行目まてを以下のとおりに改める。「 一審原告は,一審被告Bか平成21年2月12日に一審原告に告けるこ となく自宅を出て,以後,自らの生活場所等を知らせないことか悪意の遺 棄に当たると主張するか,一審被告Bか自宅を出たのは,一時保護されて いた一審被告Aとともに避難生活を送るためてあったことは前記認定のとおりてあるから,これをもって直ちに悪意の遺棄ということはてきない。」 (13) 同14頁6行目の末尾に「一審被告らは,一審被告Bと一審原告との婚姻 関係の修復可能性かまったくないとはいえないと主張するか,到底にわかに採用てきるところてはない。」を加え,同8行目から同10行目まてを削り, 同11行目の「しかしなから」を「一審原告か一審被告Aに性的虐待を加え たことを認めるに足りる証拠かないことは前記のとおりてあり,他に一審原 告か有責配偶者てあると認めるへき事情証拠はない。他方」に,同17行 目と同18行目を以下のとおりにそれそれ改める。「 一審原告は,一審被告Bか日本ての滞在を続ける目的て一審原告と結婚 したとしか考えられないとか,一審被告Bの浪費と借金のため,一審原告 まてもか金銭的トラフルに巻き込まれたと主張する。しかしなから,一審 原告と一審被告Bとは,少なくとも4年強は実質的な同居生活を送っていたことは前記のとおりてあるから,一審被告Bか上記目的て一審原告と結 婚したとしか考えられないとの一審原告の主張を採用することはてきない し,一審被告Bの借金等に関する一審原告の主張か認め難いことは既に説 示したとおりてある。また,一審原告は,一審被告Bか,自分の子か亡く なったと虚偽の事実を告けて,一審被告Aの実父の葬儀に参列したなとと 主張するか,それたけては,一審被告Bに慰謝料の支払を要するほとに, 違法てあるとまては認められない。次に,一審原告は,一審被告Bか自宅を出て行ったのは,一審原告か失 職し,就職先か見つかる目処も立っていなかったためてあるとか,その際, 資力のない一審原告か生活の場所さえ失ってしまうことを認識していた旨 を主張するか,一審被告Bか自宅を出たのは前記の事情のためてあり,こ れか違法てあるとは認められない。なお,一審原告か一審被告Aに性的虐待を加えたとの一審被告Bの主張 事実を認めるに足りる証拠かないことは前記のとおりてあるか,たからと いって,一審被告Bか裁判所を欺罔しようなととの不正な意図のもとにあ えて虚偽の主張をしたことを認めるに足りる証拠はないから,最高裁判所 昭和63年1月26日第三小法廷判・民集42巻1号1頁の趣旨に照ら すと,一審被告らか上記主張をしたからといって,これか違法と認めるこ とはてきない。以上のとおりてあり,一審原告の一審被告Bに対する慰謝料請求は失当 てある。」2 一審被告Bの当審における反訴請求について 本件においては,一審原告の一審被告Bに対する離婚請求を認容すへきてあるから,一審被告Bの当審における反訴請求について判断する。 (1) 本案前の答弁について一審原告は,一審被告Bの当審における反訴請求に同意しないから,同請求に係る訴えは,却下されるへきてあると主張するか,人事訴訟法18条に よれは,人事訴訟に関する手続においては,民事訴訟法300条の規定にか かわらす,控訴審の口頭弁論の終結に至るまて,反訴を提起することかてき る旨か規定されているから,一審原告の上記主張は失当てある。(2) 本案について 一審原告か有責配偶者てあると認めることかてきないことは,既に説示したとおりてあり,また,一審被告Bと一審原告との婚姻関係か破綻したこと に関し,一審原告に慰謝料の支払を要するほとの違法な行為かあったことを 認めるへき事情も証拠もない。したかって,一審被告Bの一審原告に対する慰謝料請求もまた失当てある。 第4 結論よって,原判は相当てあり,本件控訴はいすれも理由かないから棄却し,一 審被告Bの当審における反訴請求は理由かないから棄却することとし,控訴費用 及ひ訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判する。広島高等裁判所第4部
裁判官 近下秀
裁判官 松葉佐隆之
裁判長裁判官田聰は,退官につき,署名押印することかてきない。裁判官 近下秀
判例本文 判例別紙1

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