「即時抗告申立書」及び「準備書面」は省略 主文
本件抗告を棄却する。
 理由
第1 抗告の趣旨及び理由 本件抗告の趣旨及び理由は,別紙「即時抗告申立書」及び「準備書面」(各写し)記載のとおりである。
 第2 当裁判所の判断
1 当裁判所の判断
(1) 当裁判所も,抗告人の申立ては理由がないものと判断する。その理由は,次のとおり補正し,下記(2)において抗告の理由に対する判断を付加するほ か,原審判「理由」欄の1及び2に記載のとおりであるから,これを引用す る。(原審判の補正)
ア 原審判1頁23行目冒頭から2頁1行目末尾までを次のとおり改める。
 「 本人と任意後見人は,平成14年12月25日,名古屋法務局所属公証人B作成にかかる公正証書により任意後見契約を締結し,同月27日上記 契約は登記された。任意後見人は,平成15年9月29日,名古屋家庭裁 判所に任意後見監督人の選任を申し立て,平成16年7月12日,弁護士 Cが任意後見監督人に選任された(名古屋家庭裁判所平成●●年(家)第● ●●●号)。なお,抗告人は,上記事件に参加し,上記任意後見契約は本 人の判断能力がない状態でなされたものであって無効であること,任意後 見人がその任務に適しないことなどを主張していた。」イ 同2頁6行目の「任意後見監督人選任後の事由」を「任意後見監督人が 選任されて任意後見受任者が任意後見人になった後の事由」に改める。 ウ 同2頁15行目の「齟齬があること」に続けて「(なお,ア,イについては,任意後見人が施工業者に水増し請求させて,任意後見人及びその長 女の賃貸物件の営繕工事費の一部を捻出している可能性があること)」を 加える。エ 同2頁16行目の「齟齬があること」に続けて「(また,管理が容易な 駐車場を管理委託している点,管理費が高額である点も疑問であるこ と)」を加える。オ 同2頁16,17行目の「そこで,検討するに,」から22行目の「認 めることができる。」までを改行の上,次のとおり改める。「 そこで検討するに,一件記録によると次のとおりいうことができる。ア の補修工事については補修の必要性を一応認めることができるが,費用が 通常に比べて著しく高額であると認めるに足る資料はない。イの内装工事 についても同様に補修の必要性を一応認めることができ,クロス貼面積と 部屋の面積に齟齬が認められるものの,そのことによる差額は本人の資産 全体からみれば些少である。また,ア,イの各工事について,任意後見人 が施工業者に水増し請求させ,その分を私的に流用していることをうかが わせる資料は全くない。ウについても,抗告人主張のように任意後見人作 成にかかる家賃一覧表の記載と実際の入金に若干の齟齬が見られるが,差 額自体は僅少であるし,駐車場の管理を委託していることや管理費の設定 等が,任意後見人の裁量を逸脱しているとは認められない。」(2) 抗告の理由に対する判断 抗告人は,大要,次のとおり主張する。1任意後見契約が効力を生じる前に本人の財産に不利益を及ぼす行為をした者は,任意後見人に就任した後本 人の財産に危険を生じさせる可能性が極めて高いのだから,任意後見契約に 関する法律8条の「任務に適しない事由」は,任意後見契約が効力を生じる 以前の事由も含まれると解すべきである。2本件では,そもそも任意後見契 約締結時から本人は事理弁識能力を欠いていたのであって,任意後見監督人選任までの間に任意後見契約を自ら解除することができなかった。このよう な事情があるにもかかわらず,任意後見契約が効力を生じる前の事由は任意 後見人を解任する事由にならないとすると,本人の保護に著しく欠ける結果 となる。3原審判別紙(1)ないし(4)の行為は任意後見契約締結前約1年の間に, 同(5)及び(7)ないし(10)の行為は任意後見契約締結後になされたものであり,こ のような時期にかかる不正行為をしているのは任意後見人に本人の財産を適 正に管理する意思がなく,またその職務に必要な素養が欠けていて,本人の 財産に危険を生じさせるおそれが大きいことを示している。そこで検討してみるに,任意後見契約に関する法律8条は「任意後見人」 の解任事由を規定しているが,同法は任意後見監督人が選任されて任意後見 契約が効力を生じた後の「任意後見人」と,それ以前の「任意後見受任者」 とを定義上明確に区別している(同法2条3号,4号)ところ,「任意後見 受任者」については,任意後見監督人の選任に関する同法4条において,そ の選任ができない場合として,任意後見受任者に同法8条に定められたもの と同じ事由がある場合を規定しており(同条1項3号ハ),かつ,任意後見 監督人を選任する審判については不服申立ができないとされている(なお, 任意後見監督人選任申立ての却下審判に対する即時抗告は可能であることに ついて,特別家事審判規則3条の5参照)から,このような同法の文理と, また,任意後見人の解任事由として,任意後見受任者の段階及びそれ以前の 事由の主張を許すことは,上述したとおり任意後見監督人の選任審判におい て審査がなされており,かつ,その選任審判に対する不服申立が許されてい ない同法及び上記規則の構造と相容れないものというべきである。したがって,抗告人の上記主張はいずれも採用することができない。2 よって,原審判は相当であり,本件抗告は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり決定する。 平成22年4月5日
名古屋高等裁判所民事第2部
裁判長裁判官 中村直文
裁判官 福井美枝
裁判官下嶋 崇
判例本文 判例別紙1

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