主文
1 原判決を取り消す。
2 本件訴えを却下する。
3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 控訴人の求める裁判
1 本案前
 主文第1,2項と同旨
2 本案
(1) 主文第1項と同旨
(2) 被控訴人の請求を棄却する。
第2 当事者の主張
1 原判決の引用
 当事者の主張は,下記2のとおり附加するほかは,原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要」摘示のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決4頁18行目「A」の後に「(以下「A」という。)」を加える。
2 当審における控訴人の附加主張
(1) 本案前の主張
 被控訴人には,訴えの利益がない。
 控訴人は,Aに対し,平成10年6月29日付けで,同年7月1日から平成13年6月30日までを有効期間とする小型機船底びき網漁業の許可をした。その後,被控訴人は,平成11年3月4日,Aから当該許可の承継を受けたとして,徳島県漁業調整規則(以下「本件規則」という。)28条1項4号に基づき,控訴人に対し,許可申請を行ったが,控訴人が,平成11年9月29日付けで当該申請を不許可としたのに対し,その取消を求めて提起されたのが本件訴訟である。
 そして,上記のとおり,被控訴人が承継を受けたとする許可は,平成13年6月30日をもって有効期間が満了した。
 定数漁業(漁業法66条3項,農林省公示第499号,本件規則25条3項)である小型機船底びき網漁業にあっては,本件規則28条1項の規定により,当該許可の有効期間中でなければ承継を受けることができず,承継許可,すなわち,承継を受けたとする者への許可と前者の許可の消滅を受け得たとしても,その有効期間は承継にかかる許可の期間に限られるから,最終的に控訴人が勝訴となった場合においても,控訴人には許可をなしうる余地がなく,訴えの利益がないこととなる。
 したがって,被控訴人の本件訴訟は,不適法であり,却下されるべきである。(2) 本案の主張
ア 上記(1)と同旨。
イ 本件規則23条1項3号は,高豊度の漁場から競争的に漁獲を目指す自由な漁業とは異なり,ほぼ資源管理型の漁業となっている小型機船底びき網漁業にあっては,極めて重視されなければならない規定である。そして,小型機船底びき網漁業許可の申請者個人が小型機船底びき網漁業に適するか否か,同申請者を許可しても資源管理型漁業の漁業調整上又は水産資源培養上の秩序に支障を来すことはないか等について,上記3号に含めて検討することは相当である。
 そして,資源管理型漁業の推進は,漁業協同組合の枠を超えたすべての底びき網漁業者の実行によってのみ実効性を有する。そして,中部協会は,活動内容も多岐にわたり,また,民主的な組織運営に不可欠な規則も整備されており,徳島県水産行政担当者も,中部協会の会合にできるかぎり出席し,資源管理型漁業に円滑に移行していくよう,協力,指導を続けている。中部協会は,漁業についての民主的,公共的な性格を有する団体であると言い得る。
 一方,被控訴人は,長原漁業協同組合内で紛争を生じ,同人の父からの漁協組合員の地位の承継が認められていない状況にある。本件申請についても,被控訴人の中部協会への入会の努力もせず,同協会の副申書の添付もなかったし,Aの働きかけもなかった。これらの事情に鑑みれば,被控訴人は,地元漁業組合員らとの間に対立があり,中部協会が,小型機船底びき網漁業者全員で構成する中部協会の円滑な運営,事業の円滑な推進に支障を来すおそれがあると考えて副申書を発行しなかったもので,控訴人としても,小型機船底びき網漁業にあって,その漁業調整や資源の保護培養上の紛争を招くおそれのある許可は,本件規則23条1項3号に該当すると判断し,法的調整機関である委員会も同一の意見だったので,これを不許可としたものである。
 したがって,本件不許可処分は,相当であり,違法性はない。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は,被控訴人の本件訴えは,訴えの利益を欠き,不適法であると判断する。
2 先に引用した原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要」2記載の各事実及び証拠(甲1,2の3,乙73,弁論の全趣旨)によれば,被控訴人は,平成11年3月4日,Aから,平成10年7月1日から平成13年6月30日までを有効期間とする,原判決別紙記載の内容の小型機船底びき網漁業の許可(以下Aの受けた許可を「本件許可」という。)の承継を受けたとして,本件規則28条1項4号に基づき,控訴人に対し,本件申請を行ったこと,控訴人は,本件申請に対し,平成11年3月29日付けで,本件規則23条1号3号により,本件不許可処分を行ったこと,本件規則9条2項,8条2項により,控訴人は,小型機船底びき網漁業の許可期間が一斉に満了する前の平成13年5月25日に徳島県告示第378号をもって,小型機船底びき網漁業の許可の申請期間を平成13年6月1日から同月15日までと定めて公示したが,A及び被控訴人は,同許可申請をしなかったことが認められる。
 また,平成13年6月30日が経過したことは,当裁判所に顕著である。3 訴えの利益が認められるためには,処分の取消によって回復されるべき法律上の利益が存在することが必要である。
 ところで,小型機船底びき網漁業は,定数漁業(漁業法66条3項,1項,農林省公示第499号,本件規則25条3項)であると認められるところ,都道府県知事は,漁業取締その他漁業調整のため,水産動植物の採捕または処理に関する制限または禁止についての規則や漁業者の数又は資格に関する制限を設けることができるとされ(漁業法65条1項1号,4号),それを受けて制定された本件規則28条1項によれば,仮に,被控訴人が本件許可を承継したとしても,被控訴人が承継を申請している本件許可に基づく漁業自体は,平成13年6月30日までしか行うことができないこととなる。したがって,本件許可の有効期間最終日である平成13年6月30日を経過した現時点においては,仮に,本件不許可処分を取り消したとしても,被控訴人は,本件申請に基づく本件許可の承継によっては,小型機船底びき網漁業を行うことのできる余地はないこととなる。
 また,上記2及び控訴人作成の「小型機船底びき網漁業許可等に伴う取扱方針」(乙2。以下「本件取扱方針」という。)によれば,控訴人において,小型機船底びき網漁業の許可処分の有効期間経過後の許可については,いわゆる「更新」の方法ではなく,新たに許可するか否かについて検討するという方法を採用しているものと認められるので,取消が問題となっている不許可処分における有効期間経過後に,同不許可処分を取り消す法律上の利益は存しない。
 したがって,被控訴人の本件訴えは,訴えの利益を欠き,不適法として却下されることとなる。
4 被控訴人は,控訴人に対して,平成11年4月12日付けでした本件申請は,本件規則8条の漁業の許可及び21条の起業の認可の申請であって,同規則28条にのみ基づくものではないと主張する。
 しかしながら,上記3のとおり,小型機船底びき網漁業は定数漁業であるところ,本件規則8条2項,21条2項及び3項によれば,本件規則8条1項及び21条1項の許可或いは認可申請は,控訴人が定める期間内にしなければならないとされており,その例外として,本件規則28条1項の規定により許可或いは認可の承継をする場合等が挙げられているのみである。証拠(甲2の1ないし11,弁論の全趣旨)によれば,被控訴人の行った本件申請は,上記控訴人の定めた期間内になされたものではなく,まさに,本件規則28条1項に基づいてなされた申請であって,同規則8条1項或いは21条1項に基づいてなされた申請であると解する余地はないと認められる。
 また,漁業法65条及び66条を前提とすれば,本件規則の内容自体は合理的であって,これらの違法・不当は問題とならない(被控訴人は,上記のとおり,本件規則が小型機船底びき網漁業及び同起業の許可或いは認可申請は,控訴人が定める期間内にしなければならないと規定するのは,控訴人の一方的な都合であり,例外が認められるべきである旨主張するが,上記のとおり,本件規則の内容自体は合理的であると認められるので,被控訴人の同主張は理由がない。)。
 したがって,被控訴人の上記主張は理由がない。
5 また,被控訴人は,今後,被控訴人が,本件規則8条及び21条の許可或いは認可を申請するに際し,本件申請による承継許可を得ることがその前提条件となるのであるから,本件不許可処分の取消は必要であり,訴えの利益は失われない旨主張する。
 確かに,本件規則及び本件取扱方針によれば,控訴人において,全くの新規参入者に小型機船底びき網漁業及び起業の許可或いは認可を行うことはできないこととなる。しかしながら,上記3のとおり,本件規則及び本件取扱方針によっても,小型機船底びき網漁業の許可処分の有効期間経過後の許可について,控訴人は,いわゆる「更新」の方法ではなく,新たに許可するか否かについて検討するという方法を採用しているものと認められ,被控訴人が主張するように,今後の被控訴人の本件規則8条及び21条の許可或いは認可申請に際して,本件申請についての本件不許可処分取消がその前提条件となるということはできない。
 また,本件不許可処分が取り消されたとしても,それのみで,被控訴人に本件規則8条に基づく申請の許可を得る資格があることが認められるものではないし,現時点では,本件不許可処分を取り消すことによっては,被控訴人が小型機船底びき網漁業を行うことができないのであるから,本件規則8条に基づく申請の許可を得る資格の有無については,被控訴人が新たにする申請の際に,控訴人において判断されるべき要件であって,本件不許可処分取消によって回復されるべき法律上の利益であるとはいえない。
 したがって,被控訴人の上記主張は認められない。
6 さらに,被控訴人は,控訴人が,不当に本件訴えを遅延させ,結果として被控訴人の訴えの利益を消滅させたものであり,衡平の原則からして許されない,また,期間を厳格に解すれば,控訴人の誤った判断により,本件規則28条1項の承継申請が不許可とされた場合,被控訴人の権利の回復が非常に困難となってしまい,妥当でないと主張する。
 しかし,控訴人が,本件訴えを不当に遅延させたと認めるに足りる証拠はないし,仮に,控訴人が被控訴人に対して和解の働きかけをしていたとしても,それをもって,控訴人が不当に本件訴えを遅延させたとは認められない。そして,上記2のとおり,控訴人は,平成13年5月25日に徳島県告示第378号をもって,小型機船底びき網漁業の許可の申請期間を平成13年6月1日から同月15日までと定めて公示したのであるから,被控訴人にも上記申請の機会を与えている以上,控訴人が,被控訴人の訴えの利益を不当に消滅させたとは認められない。また,証拠(乙1)によれば,有効期間が3年間であるとされている以上,権利回復が非常に困難になるということもできない。
 被控訴人のこれらの点に関する主張も認められない。
7 結論
 以上のとおりであるから,原判決を取り消し,本件訴えは不適法であるので却下することとし,主文のとおり判決する。
高松高等裁判所第4部
裁判長裁判官 松本信弘
裁判官 佐藤明
裁判官 種村好子
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