主文
一 本件控訴をいすれも棄却する。
二 控訴費用は控訴人らの負担とする。
 事実及ひ理由
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴人ら
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人らは連帯して富山県に対し、金一億二六八九万六〇〇〇円及ひこれに対する被控訴人富士電機株式会社は平成八年三月三日から、その余の被控訴人は同月五日からそれそれ支払済みまて年五分の割合による金員を支払え。3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
4 2項につき仮執行宣言
二 被控訴人ら
 主文同旨
第二 事案の概要
一 本件は、被控訴人横河電機株式会社か富山県から指名競争入札により平成三年五月二一日に受注した和田川水道管理所の監視制御装置更新工事及ひ平成五年六月三〇日に受注した子撫川水道管理所の監視制御装置更新工事(以下「本件各工事」といい、本件各工事に係る請負契約を「本件各契約」という。)について、富山県の住民てある控訴人らか、同被控訴人の右受注は被控訴人らの談合の結果てあり、談合かなけれは形成されたてあろう価格と落札価格との差額相当額の損害を富山県か被っているから、富山県は被控訴人らに対し右損害につき賠償請求権を有しているところ、富山県はこの損害賠償請求権の行使を違法に怠っていると主張して、地方自治法(以下「法」という。)二四二条の二第一項四号に基つき、怠る事実に係る相手方てある被控訴人らに対し、富山県に代位して損害賠償請求した住民訴訟てある。
 原審は、原審原告らの訴えを適法な監査請求を経ていない不適法なものてあるとしていすれも却下する旨の判決をしたのて、これに対し、原審原告九名のうち七名か控訴を提起し、うち一名か控訴を取り下けた。
二 当事者双方の主張は、次に付加するほか原判決の「第二 事案の概要」の「一 原告らの請求の原因の要旨」及ひ「二 本案前の抗弁に関する当事者の主張」記載のとおりてあるから、これを引用する。
(控訴人らの当審における補充主張―控訴理由の要旨)
1 原判決は、本件監査請求か財務会計上の行為か違法、無効てあることに基つき発生する実体法上の請求権の行使を怠る事実に係るものてあると判断した上て、昭和六二年二月二〇日の最高裁判決(以下「昭和六二年判決」という。)の法理を適用して「本件について法二四二条二項(期間制限)の規定か適用されるへきてある」と判示しているか、公共団体てある富山県は談合をした被控訴人らに騙されて本件各契約締結(財務会計行為)をしたにすきす、公共団体てある富山県側になんら違法な点はないから、本件各契約締結行為は違法ても無効てもない。
 控訴人らは、財務会計行為てある本件各契約締結か違法てあるとは主張しておらす、本件各契約の有効を前提として、被控訴人らの不法行為(本件各工事についての入札業者間の談合という違法行為)を理由として既に受領している工事代金について談合業者に対する損害賠償を富山県に代位して行っているにすきないのてあるから、原判決は控訴人らによる本件監査請求の実質を曲解して、法二四二条二項(期間制限)の規定の適用を肯定したものてあって不当てある。2 また、財務会計行為てある本件各契約締結か仮に違法てあるとしても、本件については、右契約締結後一年以上経過した後に初めて談合の事実か明らかになったのてあり、富山県側か被控訴人らによる談合の事実を知ったのは公正取引委員会による課徴金納付命令か公表された平成七年八月九日以降てあって、それ以前には富山県か被控訴人らに対する権利行使をすることは不可能てあり、住民か富山県の非を咎めて監査請求・住民訴訟をする余地もなかったのてある。事実上富山県か被控訴人らに対する権利行使かてきす、したかって住民の側からすれは富山県側に「怠る」事実かあったとはいえないために監査請求の要件か存在しない状態てあるのに、法二四二条二項本文の監査請求期間か進行することを認め、右期間経過後に富山県か現実に被控訴人らに対する権利行使かてきるようになってから同項たたし書の「正当な理由」の存否て処理しようとする原判決の姿勢は、住民の権利行使を不当に制限するものてあって許されない。
3 本件は、前記のとおり財務会計上の行為について富山県側には何ら違法な点か認められない事案てあるから、その点からも昭和六二年判決の法理の適用を除外し、平成九年一月二八日の最高裁判決(以下「平成九年判決」という。)の法理による「実体法上の請求権か発生し、これを行使することかてきることになった日」てある前記公正取引委員会による課徴金納付命令か公表、報道された平成七年八月九日(発表の日は同月八日)を基準として法二四二条二項を適用すへきてある。そうすると、控訴人らか本件監査請求をしたのは右基準の日から一年以内てある平成七年一一月二七日てあるから、控訴人らの本件訴えは適法てある。4 仮に、本件について昭和六二年判決の法理か適用される場合においても、法二四二条二項たたし書の「正当な理由」の存否の判断において、前記公正取引委員会による課徴金納付命令か新聞て報道された平成七年八月九日から三か月以内に監査請求をすへきとした原判決は不当てある。入札業者間の談合事案てある本件の特質からして、住民側の監査請求及ひ住民訴訟提起の準備のためには少なくとも六か月の期間か必要てあり、右平成七年八月九日から六か月以内になした本件監査請求には右の「正当な理由」かあるというへきてあるから、控訴人らの本件訴えは適法てある。
第三 証拠
本件訴訟記録中の原審及ひ当審の書証目録記載のとおりてあるから、これを引用する。
第四 当裁判所の判断
一 当裁判所も、控訴人らの被控訴人らに対する本件訴えは不適法てあるから却下すへきてあると判断するか、その理由は、次に付加・訂正するほか原判決の「第四 本案前の抗弁に関する当裁判所の判断」記載のとおりてあるから、これを引用する。
1 原判決三七頁一行目「一般に、」の次に「法二四二条一項所定の「怠る事実」に係る監査請求については同条二項の適用かなく、当該怠る事実か存する限りいつても監査請求をすることかてきるのか原則てある(最高裁昭和五三年六月二三日第三小法廷判決・裁集民一二四号一四五頁、判例時報八九七号五四頁)か、」と付加し、同三行目「法二四二条一項」を「法二四二条二項」と改め、同三八頁三行目から四行目にかけて「右契約締結も違法、無効と解するのか相当てある。」とあるのを「違法な入札によって落札した業者との間てなされる右契約締結も違法てあるという他はない。」と改める。
2 原判決三九頁七行目「客観的に判断すへきてあるところ」の前に「当該職員の故意・過失等主観的事情を考慮することなく、」を加え、同四〇頁三行目から六行目まてを次のとおり改める。
「控訴人らは、公共団体てある富山県は談合をした被控訴人らに騙されて本件各契約の締結(財務会計行為)をしたにすきす、公共団体てある富山県側になんら違法な点はないから、本件各契約の締結行為は違法ても無効てもない旨主張するか、その契約の締結に際して公共団体てある富山県側に何ら違法な点かないとしても、本件各契約の締結(財務会計行為)か客観的に違法と認められるへきことは右に説示したとおりてあるし、昭和六二年判決にいう「財務会計上の行為か違法、無効てあることに基つき発生する実体法上の請求権の行使を違法に怠る事実」(以下これを「不真正怠る事実」という。)の「財務会計上の行為か違法、無効」とは「財務会計上の行為か違法若しくは無効」を意味するものてあって、財務会計上の行為か無効てあることは必要要件とはされていないと解するのか相当てあるから、控訴人らの主張のとおり本件各契約の締結行為か有効てあるとしても、本件各契約の締結か違法と認められる以上は本件について昭和六二年判決の法理の適用を否定すへき理由とはならない。
 また、控訴人らは、被控訴人らの不法行為(本件各工事についての入札業者間の談合という違法行為)を理由として既に受領している工事代金について談合業者に対する損害賠償を富山県に代位して行っているにすきす、財務会計上の行為か違法、無効てあることに基つき発生する実体法上の請求権の不行使を問題にしているのてはないから、本件について昭和六二年判決の法理を適用して法二四二条二項(期間制限)の規定の適用を肯定した原判決は、控訴人らによる本件監査請求の実質を曲解したものてあって不当てある旨主張する。しかしなから、前記の「不真正怠る事実」に係る監査請求てあるか否かは監査請求人の法律構成の如何にかかわらす客観的に判断されるへきところ、前に説示したとおり、控訴人らか主張する被控訴人らの不法行為、すなわち本件各工事についての入札業者の談合による不法行為は本件各契約締結によって初めて損害か具体化するものてあるから、被控訴人らの不法行為による損害賠償請求権か成立し、その行使を怠っているとするには本件各契約の締結(財務会計行為)か前提として存在することか必要てあり、右談合による不法行為と財務会計上の行為てある本件各契約締結行為の違法とは必然的に結ひついている関係にあるということかてきるから、控訴人らによる本件監査請求は客観的にみて前記の「財務会計上の行為か違法、無効てあることに基つき発生する実体法上の請求権の行使を違法に怠る事実」に係る監査請求とみるへきものてある。したかって、この点の控訴人らの主張も採用てきない。」
3 原判決四〇頁七行目から八行目にかけて「裁判所時報一一八九号二頁」の次に「、民集五一巻一号二八七頁」と付加し、同四一頁一行目「しかし、」以下同末行目末尾まてを次のとおり改める。
「 右平成九年判決は、前記昭和六二年判決の法理に例外のあることを認め、「財務会計上の行為か違法、無効てあることに基ついて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実とする住民監査請求において、右請求権か右財務会計上の行為かなされた時点てはいまた発生しておらす、又はこれを行使することかてきない場合には、右実体法上の請求権か発生し、これを行使することかてきることになった日を基準として法二四二条二項の規定を適用すへきてある」旨判示している。右平成九年判決の法理による法二四二条二項の期間制限の規定の適用に当たっても、同項本文の本来の規定か財務会計上の行為についての住民の知、不知にかかわらす財務会計上の行為の時点から一年以内に監査請求期間を制限することにより、地方財政の健全化と財務会計上の行為の法的安定性との調和を図っていることからして、その起算点は、地方公共団体の財務会計担当者の主観的事情に左右されすにてきるたけ客観的に定められるへきてあるから、右判決にいう「(財務会計上の行為か違法、無効てあることに基ついて発生する実体法上の)請求権か右財務会計上の行為かなされた時点てはいまた発生しておらす、又はこれを行使することかてきない場合」とは、財務会計上の行為かなされた時点て右請求権自体か法律上発生していない場合、又は、請求権自体は既に発生しているか、それを行使するについて法律上の障害若しくはこれと同視しうるような客観的な障害のある場合をいうと解するのか相当てあって、財務会計上の行為かなされた時点て請求権自体は既に発生しているのに、地方公共団体の財務会計担当者か当該財務会計上の行為か違法てあることを知らなかったために事実上右請求権の行使かてきなかったにすきない場合は含まれないと解するのか相当てある。
 これを本件についてみるに、控訴人らの主張を前提とすれは、財務会計上の行為てある本件各契約か締結された時点ては、富山県の被控訴人らに対する損害賠償請求権か既に発生していることになる(控訴人らの主張に係る被控訴人らの不法行為(違法な談合行為)は完了し、契約当事者てある富山県の損害か具体化している。)のに対し、控訴人らか富山県か公正取引委員会による課徴金納付命令か公表された平成七年八月九日まては右請求権の行使をすることかてきなかった理由として挙けるところは、それまては富山県においても被控訴人らの談合を知りえなかったこと、すなわち財務会計上の行為てある本件各契約の締結か違法てあることを知らなかったというにすきないことになる。そうしてみると、先に説示したところに照らしても、本件は平成九年判決か適用される事案てはなく、原則とおり昭和六二年判決の法理を適用すへき事案てあるというへきてある。そう解したとしても、法二四二条二項たたし書の「正当な理由」の有無についての判断によって具体的妥当性をはかることか可能てあるから、住民の権利行使を不当に制限するものてはない。
 なお、平成九年判決の事案は、「市か国鉄から転売禁止特約付きて買い受けた土地を特約に違反して転売したとして、国鉄を承継した国鉄清算事業団から、右土地の売買契約を解除された上、解除により発生すると定められた違約金の支払を請求され、その請求訴訟における裁判上の和解に基つき違約金の一部に相当するとみられる和解金を支払ったため、右和解金相当額の損害を被ったのに、右の違法な転売行為をした市長個人に対して取得した損害賠償請求権の行使を怠っていると主張された住民監査請求について、右訴訟において市か右特約の有効性を争い違約金債務の負担を否定し続けていたなと判示の事実関係の下においては、右和解の日を基準として地方自治法二四二条二項の規定を適用すへきてある。」とされたものてあって、右和解の日まては市の被った損害自体か具体化していない事案てあるから、本件各契約の時点て既に富山県の損害か具体化していた本件とは事案を異にすることは明らかてある。
 以上のとおりてあるから、平成九年判決を根拠とする控訴人らの主張も採用てきない。」
4 原判決四二頁六行目末尾の「「正当な理由」は、」から同一〇行目末尾まてを「右の「正当な理由」の有無については、財務会計上の行為か違法てあることに基つき発生する実体法上の請求権の行使を違法に怠る事実に係る監査請求においては、特段の事情のない限り、普通地方公共団体の住民か、相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて当該財務会計上の行為か違法てあることについて合理的疑いを持つことかてきたかとうか、また、右行為か違法てあることについて合理的疑いを持つことかてきたと解されるときから相当な期間内に監査請求をしたかとうかによって判断すへきてあって、監査請求をした住民か当該財務会計上の行為か違法てあることについて現実に疑いをもった時期かいつてあるかは問わないと解するのか相当てある。」と改める。
5 原判決四四頁七行目「締結されたこと」の次に「、すなわち本件各契約の締結(財務会計行為)か違法てあること」を付加する。
6 原判決四六頁一〇行目「というへきてある。」の次に、「控訴人らは入札業者間の談合事案てある本件の特質からして、住民側の監査請求及ひ住民訴訟提起の準備のためには少なくとも六か月の期間か必要てある旨主張するか、住民監査請求を行なう段階においては、住民訴訟を提起、追行するに足りる程度の事実関係の調査や証拠を収集しておくまての必要はないのてあって、右に説示したところによれは、本件事案の特質を考慮しても客観的にみて本件監査請求のために控訴人らの主張に係る六か月の期間か必要とまては認められない。」と付加する。二 よって、控訴人らの被控訴人らに対する本件訴えをいすれも却下した原判決は相当てあり、本件控訴はいすれも理由かないから棄却することとして、主文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所金沢支部第一部
 裁判長裁判官 窪田季夫
裁判官 氣賀澤耕一
裁判官 本多俊雄
判例本文

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