主文
本件各控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実
控訴人ら代理人は、「原判決を取消す。被控訴人は、控訴人Aに対し金八万〇一〇〇円を、控訴人Bに対し金七万二〇〇〇円を各支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。
当事者双方の事実上及び法律上の主張ならびに証拠の関係は、次に付加するほかは原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。
控訴人ら代理人は、左記一ないし四のとおり述べた。
一 源泉徴収制度の違憲性
1 租税法律主義の沿革からして徴税手続においても憲法三一条の適用があり、従つて同手続は適正、公平であることが必要であるところ、源泉徴収制度は、納税者の主体性に依拠している民主的な制度である申告納税制度を、給与所得者にのみ認めていないから、源泉徴収制度は実質上の租税法律主義に反しており、違憲なものといわなければならない。
また、近代における租税原則の内容を成す「便宜の原則」とは納税者の便宜をいうのであつて、もし給与所得者についても申告納税者と同じように豫定納税を含めて年三回の納税という手続がとられるならば、少くとも、金利に相当する額の経済的利益がある筈であるから現制度は右利益及び納税者の税制ないし税法を知る便宜を奪つている。更に、右租税原則の内容の一つである「最少費用の原則」についても、(イ)課税最低限度額を引き上げることによつて納税者数が大巾に減少すること、(ロ)欧米諸国において給与所得者につき申告納税制度もしくは源泉徴収制度と申告納税制度の選択制を採つたことにより徴税費か増加した事実のないこと、(ハ)わが国においても源泉徴収による費用は給与支給者に転稼負担させているだけで、かえつて税務知識のない給与支給者に事務処理をさせているために余分の費用を要していること、等の事実からして「便宜の原則」「徴税費用最少の原則」も源泉徴収制度を採るべき理由とはなり得ない。
2 (憲法一四条違反)
(一) 源泉徴収制度は、給与所得者に確定申告納税権及び不服申立権を認めていない点においで不利益、不平等である。
(二) 源泉徴収制度のもとにおいて、従業員である受給者が給与支給者を相手として納税義務の存在及び額について争訟を提起するということは現実的には不可能であり、また納税義務者即ち給与支払者の多くは民間一般企業、中小企業、個人事業者であるため常に倒産の危険があり、もし源泉徴収された税金が国に納付されずに運転資金等として費消された場合、給与受給者としては既に徴収されたこと、また過払いがあつた事実を証明する手段がなく、結局実質的救済手段が機能しない。(三) 申告納税者の場合には国税通則法及び国税徴収法においてさまざまな納税緩和措置の適用を受けることができるようになつているのに対し、給与所得者の場合にはわずかに所得税法一九二条二項に規定する徴収繰延措置があるにとどまり、しかも右の措置はその要件からみて通例殆んど利用できないものとなつている。二 生計費課税の違憲性
1 生計費か必要経費にあたることは、その年度の決算が赤字でも投下資本の必要経費性が承認される事業所得や法人所得の場合と異なり、給与所得の場合、時間外労働、深夜労働、休日労働のように労働力の損耗が激しい場合には労働基準法上も明確に割増賃金の支出が義務づけられていて労働力再生産費の支出の増大か収入の増大と関連性のあることからも明らかである。
また、わが国では社会保障の立ち遅れ、医療、公共住宅政策の後進性のために、本来社会ないしは国が負担すべき費用か個人の家計から支出することを余儀なくされ、それだけ実質的可処分所得が減少しているうえ、社会生活上必ず支出せざるを得ない家賃、地代、水道代、電気ガス代、教育費等の社会的固定費が増大し、その結果所得階層の別なく家計支出の弾力性喪失という現象が一般化しており、これらの事実からして勤労者の生計費がまさに生存のために切りつめられた必要最少限度の費用=経費としての本質を有していることが明らかである。
2 生計費を経費とした場合、給与所得者と事業所得者その他勤労によつて収入を得る者との間で均衡を失するのではないかとの点については、今日の貧困化現象は単に給与所得者にとどまらず、中小自営業者、農民等勤労諸階層に全面的に現われているから、むしろこれらの者にも生計費控除を認めることこそ生存権を保障した現憲法下の所得税制のあるべき姿であり、また、消費額の多寡による控除額の不均衡は、生計費の費目ごとに上限を設定すれば容易に解決できる問題である。三 最低生活費課税の違憲性
1 わが国憲法二五条一項は、社会権としての生存権を保障している当然の前提として、自由権としての生存権即ち生存権の自由権的機能をも保障しており、右の自由権としての生存権が侵害された場合、その行為は直ちに同条違反として無効の問題を生ずるのであつて、そこには国会の立法裁量の働く余地がなく、右侵害があつたか否かの判断にあたつては「一見明白性の原則」の適用はない。
2 何が「健康で文化的な生活」であるかは、当該社会の文化的水準、生活様式、国民経済の動向、国民の生活感情等の社会的諸条件を総合考量して初めて決し得るものではあるが、ある特定時点における「健康で文化的な最低限度の生活」を営むために要する費用即ち最低生活費がいくらであるかという問題は、そう困難な問題ではなく、十分数量的に確定できるものであるから、本件においても右費用を探究し、本件課税最低限の定めがそれを下回つているか否かを判断すべきである。3 そして、右課税最低限度額は国民が生活費として処分し得るものに限定されるべきで、必要経費の概算控除としての性格が主要なものと考えられる給与所得控除や一種の公的負担として給与所得の額に応じて自動的に負担を強制されている社会保険料は右課税最低限に含めて考えるべきでない。
仮に、給与所得控除額を課税最低限に含めるとしても、給与所得控除に必要経費の概算控除の性格がある以上全額を合算することは許されない。
4 税制調査会の昭和三九年のいわゆる「長期答申」においても最低生活費を真に保障する課税最低限の決定に難色を示し、その後も時代の推移とともに最低生活費の水準に見合う課税最低限の引き上げがなされたことは一度もなく、立法府たる国会も昭和四六年度の課税最低限を決定するにあたり最低生活費非課税という憲法上の原則を一切考慮しなかつたもので、それがため課税最低限は最低生活費を下回り、控訴人らの自由権としての生存権を侵害しているものである。
四 適用の違憲性
共働きの場合見かけの収入は増えるが、その反面妻の家庭外就労によつて外食費、保育教育費、被服費、交通費、小遣いその他就労によつて強制される所得税、社会保障費等の支出増が生に、労働力再生産費の増加は、妻の就労による実収入と非共働き世帯のそれとの差の八〇パーセントを超えるといわれており、しかも課税上は子持ちの単身者と独身者の合成として扱われ、右のような共働き世帯の特質を考慮した課税最低限として定められていない。
控訴人らの場合、総理府統計局の家計調査の結果と比較して、雑費としての教養娯楽費、交際費、タクシー及び外食利用による費用、老親扶養による支出が多く、そのほか住宅取得のための借入金返済があるが、それらは決して生活の余裕を示すものではなく、いずれも共働きをするのに不可欠な職業費、必要経費的性格の強いもので、それらのため控訴人らの生活は相当に切り詰められ、健康で文化的な生活からはゆがめられたささやかなものであり、本件課税が控訴人らの最低生活費に喰い込んでいることは明らかである。
被控訴代理人は、控訴人らの当審における右主張はすべて争うと述べた。控訴人ら代理人は、当審において新たに、甲第四一ないし第七二号証を提出し、証人C、同D、同Eの各証言を援用した。
被控訴代理人は、右甲号証中、第五二号証については書込み部分の成立は不知、その余の部分については原本の存在及び成立を認める、第五三、第五四号証の成立は不知、その余の各甲号証の成立(第四二ないし第五一号証を除くその余の各甲号証については原本の存在とその成立)はいずれも認めると述べた。
理由
一 控訴人らは夫婦で、昭和四六年当時その間に幼児一名をもうけていたこと、控訴人Aは昭和四六年一月から同年九月二〇日まで訴外株式会社精工舎に、同月二一日から同年末まで訴外全国金属労働組合精工舎支部にそれぞれ勤務し、右の間に賃金として合計金一四八万一九四五円を、控訴人Bは同年一月から同年一二月まで右訴外精工舎に勤務し、右の間賃金として合計金一二三万四六七一円をそれぞれ得たこと、控訴人らは昭和四六年分所得税として、控訴人Aが金八万〇一〇〇円、控訴人Bが金七万二〇〇〇円を各源泉徴収手続により国に収納されたことは、いずれも当事者間に争いがない。
二 控訴人らは、源泉徴収制度は納税義務成立以前に天引き納付を強いられるうえ、事業所得者等に認められている確定申告制度と異なつて自主申告権及び不服申立権が認められていないから憲法一四条一項、三一条、八四条に違反する旨主張するが、同主張についての当裁判所の判断は、次のとおり付加するほかは原判決三三丁表二行目から四二丁表二行目まで(第二の一)に説示するところと同一であるから、ここにこれを引用する。
1 控訴人らは、源泉徴収制度が申告納税制を認めていない点において実質上の租税法律主義に違反しているほか、納税者の便宜を奪い、かつ、容易に解決できるのにかかわらず他に転稼するのみで徴税費用の最少化を図らず、近代租税原則の内容を成す「便宜の原則」及び「最少費用の原則」に反していると主張する。しかしながら、租税法律主義とは納税義務者、課税物件、課税標準、税率等の課税要件及びその賦課徴収手続が豫め法律で定められていることを内容とするものであつて、当然に申告納税制を採るべきことを内容とするものでないのみならず、前記引用説示のとおり源泉徴収制度は能率的かつ合理的な制度で、納税者である給与所得者として著しい不利益を受けているとはいえないから、同制度が申告納税制を認めていないことをもつて租税法律主義に反しているとみることはできない。また「便宜の原則」「最少費用の原則」の点についても、引用説示のとおり源泉徴収制による金利面の不利益はそれ程大きいものではないうえ、申告納税制度の方が税制ないし税法を知る機会が多い傾向にあることは否めないが、税制ないし税法を知るか否かは基本的に各個人の意慾にかかわる面が多く、申告納税制を採つていないことをもつて直ちに税制ないし税法を知る機会を奪つていることにはならず、また費用の点については、課税最低限度額をいかなるところにとどめるかは後記の健康で文化的な最低限度の生計費をいくらとみるかに関わるものの、その決定は国家財政に直接影響を及ぼすだけに徴税費用の面からのみこれを引き上げることはできず、欧米各国において源泉徴収制を採つていないのに徴税費がそれ程多額化することがないとしても、国によつて歴史的風俗習慣、社会制度、経済事情、国民の対税意識が異なるうえ、能率その他の面における負の要因の存在も容易にうかがわれるところであるから、欧米各国の例をもつて直ちにわが国の制度を律することはできず、更に徴税費用転稼の点についても、徴税費用が主として給与支払者の負担となつていることは望ましい事態とはいえないが、所得税法一八三条によれば給与支払者は徴収した所得税をその徴収の日の属する月の翌月一〇日までに国に納付すれば足りることになつているから、この点で給与支払者としても利益が全くないわけではない。従つて、現制度が「便宜の原則」「最少費用の原則」に反しているとはいえず、控訴人らの右主張はいずれも採用できない。
2 控訴人らは、源泉徴収制度のもとにおいては納税者である給与所得者が納税義務の存在及び範囲について争いないしは過払金の返還を求めることは困難で実質的救済手段が機能しないから、右制度は憲法一四条に違反する旨主張するが、右困難は事実上の問題にとどまり法律上のものではないから、右のような事情の存在から源泉徴収制度が憲法一四条に違反するとまではいえない。
3 また控訴人らは、源泉徴収制度の場合申告納税制度と異なつて納税緩和措置がないから、右制度は憲法一四条に違反する旨主張する。
しかしながら、源泉徴収制においても、要件上厳しいものとはいいながら、所得税法一九二条二項において徴収繰延措置が設けられていることは控訴人らの自認するところであるうえ、徴税の確実性の面から給与所得者と事業所得者との間に制度上若干の差異があつたとしてもやむを得ないところであり、右のような差異があることをもつて直ちに源泉徴収制度が憲法一四条に違反するとすることはできない。三 次に、控訴人らは、源泉徴収制度は給与所得控除のみで生計費を含む必要経費の控除を認めていないから、憲法一四条、三〇条、八四条に違反する旨主張するが、同主張に対する当裁判所の判断は次のとおり付加するほかは原判決四二丁表三行目から五三丁表五行目まで(第二の二)に説示するところと同一であるから、ここにこれを引用する。
1 控訴人らは、生計費が必要経費であることは時間外労働、深夜労働、休日労働の場合に労働基準法上も割増賃金の支払が義務づけられており、労働力再生産費の支出の増大が収入の増大と関連性のあることからも明らかであると主張するが、右時間外労働等の場合割増賃金は右労働の対価として支払われるもので、それが直ちに労働力再生産費の支出の増大と結びつくものとはいえないから、控訴人らの右主張はその前提を欠き理由のないことが明らかである。
2 また控訴人らは、わが国では社会保障の立ち遅れ、医療、公共住宅政策の後進性のために実質的可処分所得が減少し、社会的固定費が増大する結果家計支出の弾力性が喪失し、勤労者の生計費が生存のために必要最少限度の費用=経費としての本質を有する旨主張するが、右のような政治、経済上の事情が仮にあるとしても、そのことから生計費が労働力再生産のための費用として必要経費にあたるとすることはできないから、右主張も理由がない。
3 更に控訴人らは、生計費を必要経費とした場合の、勤労性の強い事業所得者等との間の不均衡は、事業所得者等にも生計費控除を認めれば足り、また消費額の多寡による控除額の不均衡は費目ごとに上限を設定することによつて解決できる旨主張する。
しかしながら、生計費がそもそも必要経費にあたらないことは前記引用にかかる原判決理由説示のとおりであるうえ、事業所得者における勤労性の度合いについては千差万別であるから個々について具体的に判断することは繁雑で非能率であり、さりとて一定の基準を設けるとしてもその設定は頗る困難であるといわなければならず、費目ごとに上限を設ける点についても費目の設定、具体的支出の分類が問題で、その決定について紛議の生ずることは容易に豫想されるところであるから、控訴人ら主張の方策を制度として設けることは頗る困難と言わざるを得す、右主張は採用できない。
四 控訴人らは、給与所得者に対する所得税の課税は憲法二五条の保障する健康で文化的な最低限度の生活を侵害するものであるから、同条に違反すると主張するが、同主張に対する当裁判所の判断は次のとおり改め、付加するほかは原判決五四丁表一行目から六八丁表末行まで(第二の三の1ないし3及び4の(一)ないし(三))に説示するところと同一であるから、ここにこれを引用する。1 五五丁裏六行目「ただ」以下九行目までを「ただ、現実の生活条件を無視して右課税最低限を著しく低い額に定める等裁量権の限界を超えた場合または裁量権を濫用した場合には違憲な行為として司法審査の対象となることを免れないと解するのが相当である。」と、六一丁表一〇行目「定めた課税最低限が」以下同一一行目「場合にのみ」までを「定めた課税最低限が現実の生活条件を無視した著しい低額である等裁量権の限界を超えた場合または裁量権を濫用した場合には」と、更に六四丁表八、九行目を「現実の生活条件を無視した著しく低い額であるとは到底いえない。」とそれぞれ改める。
2 控訴人らは、ある特定時点における最低生活費の額は十分数額的に確定できるものであるから本件においてもその額を確定し、課税最低限の定めがそれを下廻つているか否かを判断すべきであると主張するが、前記のとおり課税最低限が現実の生活条件を無視し最低生活費よりも著しく低額に定められた場合にのみ違憲の問題を生ずるのであるから、違憲判断にあたつては課税最低限がおよそ概算的に考えられる最低生活費を著しく下廻つているか否かを判断すれば足り、最低生活費の数額を具体的に確定する要はないものというべきである。従つて控訴人らの右主張は採用できない。
3 控訴人らは、課税最低限を考えるにあたつては、給与所得控除及び社会保険料控除は含めるべきではなく、仮に給与所得控除を含めるとしても少くともその全額を含めるべきではないと主張するが、給与所得控除を含めるべきか否かについての当裁判所の判断は前記引用にかかる原判決理由説示(第二の三の3の(一))のとおりであり、社会保険料控除についても、同保険料は不時の疾病もしくは老後の生計に備え医療費もしくは年金受給のため積立てるものであることが明らかであるから、最低生活費の関係で課税最低限を考えるにあたつては、当然右社会保険料も含めて考えるべきであり、控訴人らの右主張は採用できない。
4 控訴人らは、これまで最低生活費の水準に見合う課税最低限の引き上げが行われたことは一度もなく、立法府において昭和四六年度の課税最低限の決定にあたり最低生活費非課税の原則を一切考慮しなかつた旨主張するが、同主張に対する当裁判所の判断は前記引用にかかる原判決理由説示(第二の三の3)のとおりである。五 控訴人らは、昭和四六年度の控訴人らに対する所得税の課税が控訴人らの最低生活費に喰い込んでいるから、控訴人らに所得税徴収に関する各法条を適用して所得税を徴収した行為は明らかに違憲無効であると主張するが、同主張に対する当裁判所の判断は次のとおり付加するほかは原判決六八丁裏一行目から七〇丁表二行目まで(第二の4の(四))に説示するところと同一であるから、ここにこれを引用する。
控訴人らは、控訴人らが共働きであるため見かけの収入は多いが共働きであるがため教養娯楽費、交際費、タクシー及び外食利用による費用等共働きに不可欠な職業費、必要経費的出費が多いうえ老親扶養による支出、住宅取得のための借入金返済があり、本件課税が控訴人らの最低生活費に喰い込んでいることは明らかであると主張する。
成立に争いのない甲第四五ないし第四七号証、原本の存在及び成立に争いのない甲第五六号証、原審における控訴人B本人尋問の結果によつて成立の認められる甲第一号証の一、二、当番証人Dの証言によつて成立の認められる甲第五三号証、原審証人F、当審証人Dの各証言、原審における控訴人ら各本人尋問の結果を総合すると、控訴人らの昭和四六年当時における家計は年間の総計で収支が殆んど均衡するという状態であつたこと、一般的に共働き世帯の場合収入は非共働き世帯より多くなるが、その反面妻の家庭外就労によつて非共働き世帯の場合よりも保育教育費、被服費、交通費、交際費、妻の小遣い、外食費等の支出が増加するため妻の収入がそのまま世帯の純収入の増加につながらず、また共働きの場合税法上は子持ちの単身者と独身者の合体したものとして扱われるためその支出中に所得税の占める割合が非共働き世帯の場合よりも高いことがそれぞれ認められ、他に右認定を左右する証拠はない。
しかしながら、一方前示各証拠によると、控訴人らの場合、交際費、タクシー及び外食利用による費用の支出が共働き世帯としても多いこと、その他持家取得のための借受金返済として年間約五五万二〇〇〇円、控訴人Aの親への仕送りとして年間金一二万円をそれぞれ支出していること、また昭和四六年度に控訴人ら両名で通算六回の一泊旅行をしていることが認められ(他に右認定を左右する証拠はない。)、これらの事実に当事者間に争いのない控訴人らの昭和四六年中の給与収入が合計金二七一万六六一六円で、納付した所得税額が合計金一五万二一〇〇円であるとの事実を併せ考えるならば、控訴人らの家計がどちらかといえば切り詰められた家計で決してそれ程余裕のある家計とはいえないが、さりとて右程度の所得税の課税により直ちに控訴人らの憲法二五条にいう健康で文化的な最低限度の生活が侵害されたものとは到底認め難い。従つて控訴人らの右主張も採用できない。六 以上の次第で、控訴人らの本訴請求はその余の点につき判断するまでもなく理由がないから、これらを棄却した原判決は相当であつて、本件控訴はいずれも理由がない。
よつて、本件各控訴を棄却し、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、九三条、八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 川上 泉 小川昭二郎 山崎健二)
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