主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一 当事者の申立
控訴人は「原判決を取消す。被控訴人らは大野町に対し、各自金四二〇万円及び内金三八五万円に対する昭和五二年三月二六日から、内金三五万円に対する同年四月二三日から、それぞれ支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求め、被控訴人両名及び参加人は主文同旨の判決を求めた。
第二 当事者の主張
当事者双方の主張は、次のとおり付加するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
一 控訴人は次のとおり主張した。
被控訴人Aは、かねてじつ懇の間柄にあり、自己の町長選挙に際し選挙参謀として多大の貢献をした訴外Bの遠せきに当る被控訴人Cとの間で本件契約を締結し、もつてこれに報いようとしたものである。したがつて、本件契約はその動機において公序に反し、法律全体の趣旨に照らし許容されないものであるから、無効といわなければならない。このことは以下の事実から明らかである。
1 有限会社和光運送は、昭和四五年から五一年まで誠実に一般廃棄物の収集業務を遂行してきており、その間右業務に関して和光運送に対する町民の苦情はなかつた(もしも苦情があつたとすれば、町当局は和光運送の代表者である控訴人に対し注意、指導をしたはずであるが、そのようなことは全くなかつた。)。そして和光運送はそれ相当の設備投資もしている。
ところが昭和五一年度については、突如、理由も示されずに、和光運送以外の者との間で委託契約が締結されたのである。
2 一方、昭和五一年度委託契約の相当方とされた被控訴人Cは、本件契約締結時は失職中であり、廃棄物収集に必要な車両も保有していなかつたし、右業務についての経験も皆無であつた。
被控訴人らの主張によれば、昭和五一年度の受託希望者は六名であつたというのであるが、そのうちDは昭和五〇年度も希望していたものであり、Eはし尿清掃業者、Fは運送業者であつて、いずれも被控訴人Cと比較した場合に、年齢、経験、設備の点で優れているのであるから、仮に和光運送が不適格であつてこれを変更する必要があつたとしても、前年度も希望していたDらが選定されるのが道理である。
少なくとも、委託業者の選定に当つては、これら希望者について詳細な事情聴取を行うべきである。
ところが被控訴人Cは、昭和五一年二月二〇日ごろ町役場窓口に赴いて口頭で申込みをしただけで、同年三月一八日には町長、助役及び担当課長と面接の上、契約締結を言い渡されたというのである。このように、昭和五一年度の業者選考の手続は、ずさんかつ不明朗なものであつた。
3 昭和五一年度の受託業者の決定過程に疑惑を抱いた控訴人らは、昭和五一年三月三〇日被控訴人Aらと業者選考の経過について話合いをしたが、その際被控訴人Aは、被控訴人Cを選定した旨述べただけで退席し、町民の苦情が多かつたからであるとは告げなかつたばかりでなく、誤解を解こうとする真しな態度を全く示さなかつた。また、右会談の際、大野町の担当課長は、和光運送について苦情の申し出を耳にしたことはないと言明している。
被控訴人らは本訴において、和光運送と契約しなかつたのは町民の苦情が多かつたからであると主張しているが、右のような町側の態度は、この主張と明らかに矛盾している。
二 被控訴人両名及び参加人は、右主張に対して次のとおり答弁した。訴外Bが被控訴人Aの町長選挙の際、同人を支援した者の一員であること、同訴外人が被控訴人Cの遠せきに当ること、被控訴人Cには従前廃棄物収集業務の経験がなかつたこと、昭和五一年度の受託希望者が六名おり、その中にD、E、Fが含まれていること、Dが昭和五〇年度も受託を希望していたこと、Eがし尿清掃業者、Fが運送業者であることは認めるが、その余の事実は否認する。
本件契約の締結について控訴人主張のような事実のないことは、B自身がその子Gを作業従事者として受託の申込みをしたにもかかわらず、その希望が容れられなかつたことに照らして明らかである。
第三 証拠(省略)
理由
一 被控訴人Aが大野町長として、被控訴人Cとの間で昭和五一年三月二四日、昭和五一年度一般廃棄物収集委託契約(本件契約)を締結したこと、昭和五一年度の大野町の一般廃棄物収集業務については六名の受託希望者がいたが、本件契約は随意契約の方法により、二人以上の者から見積書を徴することなく、締結されたこと、被控訴人Cは一般廃棄物の収集業務の実施に関し経験を有していなかつたこと、被控訴人Aが被控訴人Cへの業務委託料の支払として四二〇万円の公金を支出させたこと、控訴人は大野町の住民であるが、本件契約の締結は違法であるとして、大野町監査委員に対し地方自治法二四二条一項所定の措置請求をしたところ、監査委員は昭和五二年二月一七日、本件契約に違法な点はないとしてこれを拒絶したことは、当事者間に争いがない。
二 控訴人は、本件契約の締結は地方自治法二三四条二項及び大野町財務規則一二八条二項に違反すると主張する。
地方自治法二三四条の規制の対象となる「契約」とは、同条が売買、賃借及び請負契約を例示していることからみて、地方公共団体が私人と対等の立場において締結する私法上の契約をいうものであることは明らかであつて、いわゆる公法上の契約を含むものではないと解される。
ところで、廃棄物の処理及び清掃に関する法律六条三項に定める、市町村が一般廃棄物の収集、運搬又は処分を市町村以外の者に委託する行為は、市町村の固有事務、すなわち市町村の処理すべき本来の行政事務を私人に委託するという行為であるから、公法上の契約であることは明らかである。したがつて、本件契約については、地方自治法二三四条の規定は適用されないものと解される。
これをより実質的な観点から考えてみると、地方自治法二三四条は契約締結の方法として一般競争人札を原則としているが、これは、第一に契約事務の執行の公正を確保し、第二に地方公共団体と契約する機会を均等に与え、第三にできる限り地方公共団体に有利な条件で契約を締結して経済性の要請にも応えるという理由によるものであるところ、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令四条六号は、同法六条三項の規定による市町村が一般廃棄物の収集、運搬又は処分を市町村以外の者に委託する場合の基準の一つとして、「委託料が受託業務を遂行するに足りる額であること。」と定めており、廃棄物処理法は、一般廃棄物の収集等の業務の公共性にかんがみ、右の経済性の確保等の要請よりも、業務の遂行の適正を重視しているものと解される。すなわち、廃棄物処理法は、最低価格の入札と契約を締結する一般競争入札の制度とは異なる建前をとつているのである。
もつとも、地方自治法施行令一六七条の一〇は、一般競争入札において最低価格の入札者以外の者を落札者とすることができる場合を認めており、一般廃棄物の処理業務の委託契約についてこの規定が適用されるとすれば、委託料の額を一定額以上のものにすることは可能であるが、右規定が適用されるのは「工事又は製造の請負の契約」に限られており、一般廃棄物の処理業務委託契約がこれに含まれると解することは困難である。
また、廃棄物処理法施行令四条一号は、受託者の資格要件として、「受託者が受託業務を遂行するに足りる設備、器材、人員及び財政的基礎を有し、かつ、受託しようとする業務の実施に関し相当の経験を有する者であること。」と定めている。これに対して地方自治法施行令一六七条の五第一項は、「必要があるときは、一般競争人札に参加する者に必要な資格として、あらかじめ、契約の種類及び金額に応じ、工事、製造又は販売等の実績、従業員の数、資本の額その他の経営の規模及び状況を要件とする資格を定めることができる。」と定めるにすぎないのであつて、この両規定は明らかに矛盾するものといわなければならない。この点からしても、一般廃棄物処理業務の委託契約については、廃棄物処理法及び同法施行令のほかに、更に重ねて地方自治法二三四条及び同法施行令第五章第六節(契約)の規定が適用されるものではないと解するのが相当である。
要するに、廃棄物処理法は、一般廃棄物の処理業務を委託する場合の基準として、受託者の資格要件、能力、委託料の額、委託の限界、委託契約に定めるべき条項等について詳細に規定し、右基準に則り委託業務が適切に遂行されることを予定しているものであつて、右基準においては契約締結の方法については何ら触れられていないが、それは地方自治法二三四条の適用を前提としているからではなく、契約締結の方法を一般競争入札、指名競争入札又は随意契約のいずれにするかは市町村の裁量に委ねている趣旨と解するのが相当である。
したがつて、本件契約の締結が随意契約の方法によつてされたことをもつて違法ということはできない。
また、成立に争いのない甲第六号証によれば、大野町財務規則一二八条は、地方自治法二三四条及びこれを受けた同法施行令一六七条の二を更に受けた規定であつて、地方自治法二三四条に定める契約について、その締結方法を定める細則であることが明らかであるから、右財務規則一二八条も本件契約に適用されるものではない。したがつて、本件契約の締結について見積書等を徴しなかつたからといつて違法ということはできない。
三 被控訴人Cが一般廃棄物収集業務の実施に関し全く経験を有していなかつたことは当事者間に争いがないから、この点において被控訴人Cは廃棄物処理法施行令四条に定める基準に適合していないことは明らかである。
しかし、この基準はあくまでもよるべき基準であるから、その一にでも適合しない場合には一般廃棄物収集等の業務をその者に絶対に委託してはならないという趣旨のものではないと解される。
したがつて、受託者が業務の実施に関して経験を有しないとの一事で本件契約が無効となるということはできない。
四 本件契約の締結は、被控訴人Aの選挙運動に対する報償であるとの控訴人の主張については、この事実を直接認めるに足りる証拠は何もないから、右主張を推認させるような間接事実があるか否かについて検討することにする。
1 成立に争いのない甲第一号証と原審における控訴人本人尋問の結果によれば、和光運送は昭和三七年ごろ設立され、運送業を営むことを目的とする有限会社であつて、昭和四五年から私的な団体である大野町衛生組合の依頼で一般廃棄物の収集業務を始め、昭和四六年もその収集業務を続けたこと、昭和四七年度から昭和五〇年度までは一年ごとに大野町との間で一般廃棄物収集業務の委託契約を締結し、その業務を実施してきたこと、昭和五三年当時、和光運送の従業員は二四名、保有する車両は一七台であつたこと、もつとも右の一般廃棄物の収集業務に従事する従業員は二名、車両は一台であつたことが認められ、右認定に反する証拠はない。2 訴外Bが被控訴人Aの町長選挙の際、同人を支援した者の一員であり、同訴外人が被控訴人Cの遠せきに当ることは被控訴人らの認めるところである。そして、原審における被控訴人Cの本人尋問の結果によれば、被控訴人CはBの妻の甥になるという関係であることが窺われる。更に、原審における証人Hの証言、被控訴人Aの本人尋問の結果及び当審証人Iの証言によれば、昭和五一年度の大野町の一般廃棄物収集業務を委託する業者の選考に当つた右A町長、I助役及びH担当課長は、いずれもBと被控訴人Cとが親せきであることを知つていたことが認められる。
しかし、Bが被控訴人Aの町長選挙において、
どのような役割を果たしたのか、証拠上必ずしも明らかではない。
すなわち、原審本人尋問において控訴人は「BはA町長の有力な支持者であり、選挙の地方参謀として奔走している。」と供述し、当審証人対Jは「Bは前回の町長選挙において被控訴人Aの裏参謀であつた。裏参謀とは直接表に出ないで、陰で運動員等に指示をする者である。」と証言している。また、当審証人Kは「BはA町長の強力な支持者の一人であり、積極的に町長の選挙運動をしている者である。」と証言している。
しかし、これらの供述中の「地方参謀」とか「裏参謀」とかいうものの実態は必ずしも明らかではなく、Bの具体的な活動、役割は漠然としている。
かえつて、当審証人Iの証言によれば、Bは被控訴人Aの町長選挙において、公職選挙法にいう出納責任者ではないし、少なくとも選挙運動の最高責任者といえるような地位にはなかつたことが認められる。ちなみに、被控訴人Aは原審本人尋問において、Bは多数いる有力な後援者の一人にすぎないと供述している。以上のとおり、Bが被控訴人Aの町長選挙において極めて重要な役割を果したことを認めるに足りる的確な証拠はないといわざるをえない。
もつとも、原審における被控訴人Cの本人尋問の結果によれば、被控訴人Cは、本件契約締結前から、被控訴人Aのもとへ正月に年始のあいさつに出向いていたことが認められる。
3 原審証人Hの証言とこれによつて成立を認めうる乙第五号証の二、原審における被控訴人Cの本人尋問の結果及び当審証人Iの証言によれば、被控訴人Cは昭和五〇年七月までは建設会社の自動車運転手をしており、約一〇年の運転経験があつたが、同年八月に交通事故を起こして負傷、入院し、退院後は家業の農業を少し手伝う程度で無職であつたこと、昭和五一年二月二〇日、保健環境課長Hの所へ出向いて、昭和五一年度の一般廃棄物取集業務を受託したい旨口頭で申し込んだが、申込書等は特段提出しなかつたこと、町当局は他の受託希望者からも申込書等の書類は全く提出させていないこと、町当局は同年三月一八日に被控訴人Cを町役場に呼び出して、町長、助役及び担当課長が面接し、受託する意思の有無を改めて確認したほか、業務に使用する自動車の準備が可能であるかどうかなどの点について種々質問をした上で、同日被控訴人Cを昭和五一年度の受託者とすることを内定し、その場で被控訴人Cにその旨告知したこと、右二月二〇日から三月一八日までの間に、右の面接のほかは、被控訴人Cは町当局から何らの事情聴取、照会等を受けていないこと、町当局は他の希望者についても事情聴取等の調査はしていないこと、もつとも、希望者の前科については、町役場備付の犯罪人名簿により、これを知ることができたこと、被控訴人Cは、右内定後に担当課長から見積書の提出を求められ、三月二三日、月額委託料を三五万円とする見積書を提出したこと、右金額は三月二四日に締結された本件契約における委託料と同一額であること、他の希望者からは見積書を全く徴していないことが認められる。
原審における控訴人本人尋問の結果中には、昭和五一年三月一二日(すなわち、受託者を被控訴人Cとすることが内定する以前)、自動車会社のセールスマンが、被控訴人Cが廃棄物の収集を始めるので、和光運送所有の車と同じものを購入したいといつているから、自動車を見せてもらいたいといつて控訴人(和光運送の代表者)宅を訪れたとの部分がある。しかし、原審における被控訴人Cの本人尋問の結果によれば、被控訴人Cが自動車会社との間で廃棄物収集に使用する自動車の購入契約をしたのは三月一九日であり、それ以前には車の購入について自動車会社との折衡等はしていないことが認められ、この事実に照らして控訴人の右供述は採用することができない。
他に前記認定を覆すに足りる証拠はない。
なお、原審における控訴人本人尋問の結果によつて成立を認めうる甲第七号証には、昭和五一年三月三〇日に控訴人らとI助役、H課長らが昭和五一年度の一般廃棄物収集委託契約について話し合つた際に、控訴人らが「某業者に対して、その準備資金調達にまで関与したことに問題があると思うが。」と質問したところ、町当局者は「新年度からゴミ処理事業ができるようにするためである。」と回答した旨の記載があり、原審における本人尋問において控訴人は、右の甲第七号証に記載されているような問答は確かに行われた旨供述している。
しかし、成立に争いのない乙第一三号証によれば、大野町当局が、町議会の議員全員協議会に提出する資料として取りまとめた文書には、「助役は、そのような事実は全くないと答えた。」と記載されていることが認められるし、当審証人I及び被控訴人C(原審における本人尋問)は、いずれも、被控訴人Cが自動車の購入について大野町から資金的援助を受けるなど、便宜を図つてもらつた事実はないと供述している。これらの証拠と対比して、前記甲第七号証の記載及び控訴人本人尋問の結果は採用することができない。
4 成立に争いのない甲第二号証によれば、控訴人らは昭和五一年八月一八日、地方自治法七五条に基づいて大野町監査委員に対し監査請求をしたが、その監査請求書の「監査請求の要旨」中に、昭和五一年度の契約については四人の希望者がいたとされているが、「これも始めから一人の契約者のためのかいらいだといわれている。」との記載があることが認められる。また、原審及び当審における本人尋問において控訴人は、希望者の一人とされているEはBと縁故関係があり、Dも被控訴人Aと縁故関係がある、Fは縁故関係はないが、同人は控訴人に対し、「自分の名前を使つたことについては納得できないが、自分も種々の面で町の世話になつているから、このことを公にする訳にはいかない。」と述べた旨供述している。しかし、希望者とされている六人中、被控訴人C及び控訴人以外の四人がかいらいであつたという点については他に的確な裏付けがなく、確かに六名の希望者があつたとする証拠として原審における証人Hの証言、被控訴人Aの本人尋問の結果及び当審証人Iの証言があること、前記甲第二号証によれば、前記監査請求に基づく監査の結果報告書においても六人の委託希望者があつたと認定されていることに照らしても、直ちにそのように断定することはできない。
5 原審における控訴人本人尋問の結果中には、「被控訴人Cの助手として廃棄物収集の業務に従事している者が、自分は昭和五〇年八月に、五一年度は被控訴人Cが廃棄物の収集業務を担当するから、助手になつてもらいたいと頼まれていた、と第三者に述べたということを周知している。」との部分があり、当審証人Kの証言中にも、これと符節を合せるかのように、「控訴人は町長選挙で被控訴人Aの反対派であつたが、昭和五〇年夏ごろから、町長選挙の後遺症ということで、今度は和光運送が変わるんだという風評、噂を耳にしたことかある。」との部分がある(そして同証人は、他に特段の根拠を示すことなく、
和光運送から被控訴人Cに変つたのは、選挙の後遺症であると断言している。)。また、当審証人対Jの証言中には、「Bがその友人に、ごみの収集は被控訴人Cがやつているのではなく、自分がやつているのだ、と述べた旨同証人は聞いている。」との部分がある。
しかし、これらはいずれも伝聞ないし風評の域を出ないものであつて、とうてい信用に値するものではないことは多言を要しない。
6 以上検討したところによれば、和光運送は一般廃棄物の収集業務につき相当の経験と実績を有していたのに対し、被控訴人Cは自動車の運転については経験があつたものの、廃棄物の収集業務についての経験は皆無であつて、その業務に使用する車両も保有していなかつた。そして、大野町当局が受託者を被控訴人Cと決定するについて行つた事前の調査は、とうてい周到なものとはいえないし、申込みから契約締結に至る手続は形式的には必ずしも厳格に行われているとはいえない。更に、Bは被控訴人Aの少なくとも有力な後援者の一人であり、町当局者は被控訴人CがBの親せきであることを承知していたものである。被控訴人C自身も、少なくともA町長のもとへ年始のあいさつに赴く程度の間柄ではあつた。
しかし、Bが被控訴人Aの町長選挙に際し、極めて重要な役割を果たしたとまでは認めることばできないし、町当局は昭和五一年度の契約を被控訴人Cと締結することをすでに前年夏ごろには決定し、被控訴人Cもこれを前提とする準備をすすめており、他の希望者は全くのかいらいであつたとか、被控訴人Cが町当局から自動車の購入について便宜を受けたとかいう点については、これを認めるに足りる的確な証拠はない。
五 右に認定した事実だけを見る限り、昭和五一年度の契約を被控訴人Cとの間で締結したことの相当性を疑わせる事実が絶無とはいえない。そこで次に被控訴人らが右契約を和光運送との間で締結しなかつた理由として主張する事実の有無について検討する。
成立に争いのない乙第四号証、原審証人Hの証言によつて成立を認めうる乙第八号証、原審における証人Hの証言及び被控訴人Aの本人尋問の結果、当審証人I、同Lの各証言を総合すれば、以下の事実が認められる。
和光運送の廃棄物収集業務の実施方法についてはすでに昭和四九年度から、町民の間に、ごみを完全に収集していかない、ごみを自動車から路上に落したまま行つてしまう、従業員の態度が威圧的である等の苦情、不満があり、電話であるいは直接に町の担当課等にその旨の申出があつた。昭和四九年の町議会の議員全員協議会、あるいは昭和五〇年の町議会において、議員から町当局に対して、業者を変更する意思はないのかという質問がされたこともあつた。
昭和五一年二月九日から同月一四日まで、大野町内の一七か所の会場において町政懇談会が行われた。この懇談会は毎年行われているものであつて、町民の意見を町政に反映させることがその目的であり、町長、各課長が町政の方針等について説明をした後に、町民の質問を受け、意見、要望を聴くことにしていた。この年は町長と助役が一七か所の会場のほぼ半分ずつを担当し、合計約四〇〇人の町民が出席した。そして、萩野、一本木、東前、役場等の会場において、町民の間から和光運送のごみ収集について多数の苦情が出た。その主なものは、ごみ収集車の速度が速すぎる、ごみを入れた袋が破れて散らばつたごみを収集車に積載していかない、従業員の態度が悪い等であつた。
そこで町当局は、町政懇談会終了後、和光運送のごみ収集車がごみ焼却場に到着する時間、すなわち作業終了の時間を調査したところ、ほぼ午前中に到着していること、すなわち午前中でごみ収集業務を終えていることが判明し、和光運送は、その業務を処理するに当つて作業の能率のみを重視しており、それが町民の苦情の原因ではないかと判断するに至つた。
以上の事実が認められ、右認定に反する原審証人Mの証言、原審及び当審における控訴人本人尋問の結果は措信できない。
当審における本人尋問において控訴人は、町政懇談会において苦情があつた旨大野町広報(乙第四号証)に発表された萩野、一本木、東前の各地区について、真実町民の間に苦情があつたか否かを調査したところ、萩野、東前の両地区についてはいずれも和光運送側の責に帰すべき事由はなく、町民側の要求が不合理なものであつたことが判明したし、一本木地区については苦情の内容は広報記載のとおりであつたが、和光運送としてはそのような業務の処理をした事実はないと供述している。しかし、この供述は、原審本人尋問における控訴人の供述と矛盾するものである。すなわち、原審における本人尋問においては、控訴人は、控訴人らが調査した結集、ごみ収集車に袋を持たせてもらいたいとの要望以外は、広報に記載されているような苦情は実際には出ていないことが判明したと供述しているのである。また控訴人は、原審及び当審における本人尋問において、昭和五一年三月二四日にH課長が控訴人方を訪れて、昭和五一年度の委託契約は和光運送とは締結できない旨告げた際に、町民から苦情が出ている訳ではないし、自分としては和光運送をやめさせる理由はないと考えていると述べた旨供述しているが、この点は原審証人Hの証言と対比して措信できない。
他に前記認定を覆すに足りる証拠はない。原審における控訴人本人尋問の結果及び当審証人対Jの証言によつて成立を認めうる甲第八号証の一ないし六は、町政懇談会において細入、市渡第一会館、市渡、稲里、白川、清水川の各会場ではごみ処理についての苦情が出なかつたとするものであつて、必ずしも前記認定と矛盾するものではない。
次に、前出甲第二号証、乙第一三号証、原審における証人Hの証言及び控訴人本人尋問の結果、当審証人I、同Lの各証言によれば、控訴人が昭和五一年三月二五日に昭和五一年度の委託契約について和光運送が受託者となれなかつた理由をA町長に問いただしたところ、同町長はその理由として、町政懇談会において町民からの苦情が多かつたからであると述べたこと、同年三月三〇日に控訴人らと町当局者との話合いが行われた際にも、助役らは、和光運送に対しては従前文書での注意はしていないが、電話又は口頭で注意、指導をしていること、それにもかかわらず町政懇談会において多数の町民から苦情が出ていることを明らかにしていることが認められる。
当審における本人尋問において控訴人は、三月二五日の町長の説明は、すでに他に委託することに決定したから和光運送との契約はできないとの一点張りであつて、控訴人は旅から来た流れ者であるからだめだとも述べていたと供述しているが、原審における本人尋問においては、前記認定に沿う供述をしており、当審における本人尋問の結果は措信できない。
また、前出甲第七号証、当審証人K、同対Jの各証言は、三月三〇日、助役は町政懇談会において苦情が多かつたと述べたが、担当課長は、その在任中に町民の苦情は耳にしていないし、したがつて町が和光運送に対して注意、指導をしたことはないと述べたというものであり、原審における控訴人本人尋問の結果中にも同旨の部分があるが、乙第一三号証、原審証人H、当審証人I、同Lの各証言と対比して措信できない。
他に前記認定を覆すに足りる証拠はない。
そして右認定の事実によれば、町当局は、和光運送と昭和五一年度の委託契約を締結しなかつた理由として、終始一貫して町民からの苦情が多かつたからであると述べていたことが明らかである。
なお、控訴人は、三月三〇日の話合いの際、被控訴人Aは十分な説明をしないままに退席したと主張しているが、原審における被控訴人Aの本人尋問の結果及び当審証人Lの証言によれば、A町長は当日他の公務のために途中で退席したものであることが認められるから、この点を非難するのは当らない。
ところで、右にみたところによれば、和光運送の業務についてはかねてから町民の苦情があつたが、特に昭和五一年二月の町政懇談会の席上、これが表面化したことは明らかであり、これが和光運送と昭和五一年度の委託契約を締結しなかつた理由であるとの町当局の説明も一貫して変わらないのであつて、このことを勘案すると、前記四において認定した事実をもつてしても、控訴人の主張を認めるには十分ではないといわざるをえない。
なお控訴人は、仮に和光運送が不適格であつたとしても、被控訴人Cよりも他の希望者の方が適格であつたと主張しているが、受託業者の選定は本来町長の裁量に属する事柄であり、被控訴人Cと和光運送以外の他の希望者とを比較して、被控訴人Cを選定したことが著しく不合理であることを認めるに足りる証拠はないから、大野町が被控訴人Cと契約を締結したことが違法であるとはいえない。六 以上のとおり、本件契約が違法無効であり、被控訴人らの行為は不法行為に該当するとの控訴人の主張は理由がないから、本訴請求はその余の点について判断するまでもなく理由がなく、これを棄却した原判決は相当である。
よつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 輪湖公寛 寺井 忠 矢崎秀一) (原裁判等の表示)
○ 主文 一 原告の請求はいずれもこれを棄却する。
 二 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告らは大野町に対し、各自金四二〇万円と、内金三八五万円に対し昭和五二年三月二六日から、内金三五万円に対し昭和五二年四月二三日からそれぞれ支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告らの負担とする。
31 項につき仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
主文と同旨
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 原告は<地名略>の住民である。
2 被告Aは大野町町長として、被告Cとの間で昭和五一年三月二四日昭和五一年度一般廃棄物収集委託契約(以下「本件契約」という。)を締結した。3 本件契約はつぎの理由により違法無効である。
(一) 昭和五一年度の大野町一般廃棄物収集委託契約については六名の希望者が存した。この場合、同町としては地方自治法二三四条二項、同法施行令一六七条の二第一項各号の要件に該当する事由がないので、同法二三四条にもとづき競争人札をもつて契約の受託者を決定しなければならないのにかかわらず、被告らは随意契約の方法により本件契約を締結した。
(二) 仮に右随意契約が適法であつたとしても、大野町財務規則一二八条二項によれば、随意契約による場合には、契約書案その他見積りに必要な事項を指示し、予定価格一万円未満の場合を除くほか、なるべく二人以上の者から見積書を徴さなければならないと定めているのに、昭和五一年度の契約に際しては六名の希望者がいたのにもかかわらず、見積書等を徴せずに被告らは本件契約を締結した。(三) 一般廃棄物収集を大野町が第三者に委託する場合、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」と略称する。)六条三項、同施行令四条の基準によらなければならないのに、被告Aは、同施行令四条一項後段の「・・・・・・かつ受託しようとする業務の実施に関し相当の経験を有するものであること」の資格要件を無視して他に経験者がいるのにかかわらず、経験のない被告Cとの間で本件契約を締結した。
4 前項のように本件契約が違法無効であるところ、被告Cは本件契約が違法無効なものであることを知りながら大野町に対しその業務委託料を請求し、被告Aはその支払として昭和五二年三月五日までに金三八五万円の、同月二四日ころ金三五万円の支出を命じて公金を支出せしめ、よつて大野町に対し金四二〇万円の損害を与えたものであるから、被告らは共同不法行為者として、その賠償の責に任ずべきでおる。
5 被告らの違法な本件契約について、原告は地方自治法二四二条一項の措置請求をしたところ、大野町監査委員は、昭和五二年二月一七日本件契約に違法な点はないとしその措置を拒絶した。
6 よつて原告は大野町に代位して被告らに対し、各自右損害金四二〇万円と内金三八五万円に対する昭和五二年三月二六日から、内金三五万円に対する同年四月二三日からそれぞれ支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1、2、5の各事実は認める。
2 同3(一)ないし(三)の事実は認め、本件契約が違法無効であることは争う。
廃棄物処理法六条三項が「市町村が行うべき一般廃棄物の収集、運搬及び処分に関する基準・・・・・・並びに市町村が一般廃棄物の収集、運搬又は処分を市町村以外の者に委託する場合の基準は、政令で定める。」と規定したのは、市町村がその区域内において一般廃棄物を一定の計画に従つて収集、処分することは市町村の公共事務(いわゆる固有事務)として、その責務であるが、これをすべて市町村が自ら処理することは実際上できないため、第三者に委託して右市町村の事務を代行させることにより、自ら処理したのと同様の効果を確保しようとしたものである。かかる趣旨にかんがみれば、市町村が一般廃棄物の処理について定めた一定の計画にもとづいて市町村長が第三者に事務処理を委託するにあたり、その第三者を誰にするかは廃棄物処理法の目的と当該市町村の処理計画とに照らして、市町村がその責務である一般廃棄物の処理の事務を円滑完全に遂行するのに必要適切であるかどうかという観点から、これを決すべきものであつて、原告の主張する「一般廃棄物収集委託契約」は、地方公共団体の行政事務を私人に委託する契約として講学上「公法上の契約」といわれ、その契約の締結についての方法と手続とは、市町村長の自由裁量に委ねられているので、地方公共団体が私人と対等の地位において締結する「売買、貸借、請負その他の私法上の契約」について、契約の方法、契約の相手方の決定方法、入札保証金の帰属、契約確定の時期等を定めた地方自治法二三四条の規定が当然適用されるものではないから、被告Aが町長として右法条に依拠しなかつたからといつて何ら違法の廉はない。このことは、この事務が一般競争入札のように地方公共団体に最も有利な価格で申込した者と契約すれば足りるといつた性質のものでないことは、廃棄物処理法施行令四条一項六号が「委託料が受託事務を遂行するに足りる額であること。」と規定していることによつても理解できる。大野町においては、昭和四七年度から昭和五〇年度までの間毎年原告が代表者である有限会社和光運送と廃棄物収集委託契約を締結し、その事務を処理させたが、同会社の事務処理の実情は、廃棄物処理法一条の目的にてらし住民サービスの徹底の面からして必ずしも適格でないと判断されたのに対し、被告Cは、過去において経験を有しなかつたが、その目的を十分達成しうべき設備と何よりも誠意、能力を具有するものと判断されたので、被告Aは町長として、昭和五一年度の業務委託契約を被告Cと締結したものであり、かつ一年間の実績は大野町の計画を円滑完全に遂行して期待に答えたものであつたから、本件契約は町長の前記裁量権行使の正当な範囲内にとどまるものである。
3 同4につき、被告Cが本件契約にもとづき業務委託料を請求したこと、被告Aがその支払として金四二〇万円の公金を支出させたことは認め、その余の事実は否認する。
4 同6は争う。
第三 証拠(省略)
理由
一 請求原因1、2、5の各事実および3のうち、本件契約が随意契約の方法により、六名の希望者に対して事前に見積書等を徴することなく締結されたこと、および被告Cは従前ゴミ収集の業務をした経験がないことは当事者間に争いがない。二 成立に争いのない甲第一ないし第四号証、乙第一、二号証、同第四号証、同第七号証、証人Hの証言により真正に成立したものと認められる同第八号証、被告A本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる同第一二号証、証人Hの証言、原告(但し後記措信しない部分を除く。)、被告A、同C各本人尋問の結果に弁論の全趣旨を総合すると次の事実が認められる。
大野町では昭和四七年以前は住民が各部落毎に自主的に衛生組合を設立して部落内のごみ等を収集しこれを町の塵芥焼却場に運び焼却等の処分をしていたが、昭和四五年に廃棄物の処理及び清掃に関する法律が制定されたのに伴い、昭和四七年三月二一日大野町廃棄物の処理及び清掃に関する条例を制定し、これによつて同法所定のごみ等の一般廃棄物の収集業務を業者に委託することを決定し、同年四月一日からこれを実施することになつた。しかして原告が代表者である有限会社和光運送は昭和三七年に設立されて以来、従業員二四名を擁し、且つ一七台の車両を保有して大野町において手広く運送業を営んでいたものであり、且つ昭和四五年以降前記衛生組合から依頼を受け車両一台をもつて一般廃棄物収集をなしてきた実績を有していたため、大野町は和光運送に対し随意契約の方法によつてその履行期間を翌四八年三月三一日までの一年間と定めて右収集業務を委託した。その後、大野町と和光運送との間で昭和五一年三月三一日まで四回に亘つて右委託契約が締結されてきたが、その間同四八年、四九年、五〇年の各更新時には他に受託申込者が一、二名いたにも拘らず和光運送との間で随意契約の方法によつて委託がなされ、且つ右各契約の際和光運送から特別見積書を徴することはなかつた。ところで、和光運送の業務については昭和四九年度までは問題はなかつたが、昭和五〇年春からごみを可燃物と不燃物に分けて収集するように改められてから、和光運送の業務について、町民から大野町に対し、ごみを路上に落す、ごみを完全に収集していない、ごみ収集の態度が悪い等の苦情が電話ないし直接口頭で寄せられ、更に昭和五一年二月に実施された萩野、一本木、東前、役場各地区の町政懇談会において住民から直接町長ないし助役に右同様の苦情が寄せられたことから、大野町では昭和五一年二月一八日から二六日ころまで和光運送のごみ収集業務の実態を調査したところ、ほとんど午前中でごみ収集を終えており、非常に早く能率のみを重視していることを知つた。そこで町長である被告Aは、右能率重視の方法に前記苦情の原因があると判断し、苦情を解消するためには住民の意向に沿つたサービスに徹する気持で誠実に業務を遂行する者を受託者としなければならないと考え、昭和五一年度の一般廃棄物収集業務委託契約を締結するに際し、受託を申し出ていたG、D、N、F、前記和光運送、被告Cの六名について、本人の年令、本人自身が車を運転してごみ収集に携わるか、家族の協力は得られるか、時間にこだわらずごみ収集に専念できるかの観点から審査し、助役、保健環境課長、総務課長の協力を得て希望者らの人物、家庭環境の資料を収集して検討した結果、和光運送は前記のとおり苦情が出ていること、Nはし尿清掃業を行つていること等から除外していき、最終的に最も誠実にごみ収集業務をなしうる者として被告Cに決定した。なお、ごみ収集業務委託契約については、北海道内の九〇町村において随意契約の方法によりなされているのが実情である。以上の事実が認められ、右認定に反する証人Mの証言、原告本人尋問の結果は措信できず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。
三 ところで地方自治法二三四条によれば、地方公共団体が第三者と契約を締結する場合は、その公正性と機会均等を担保するため原則として一般競争入札の方法によるべきこと、そして政令で定める場合に該当するときに限り随意契約等によることができる旨規定されている。そしてこれを受けて同法施行令一六七条の二第一項に例外的に随意契約の方法によることができる場合が六項にわたつて列挙され、同条一項二号によれば、その他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しない場合には随意契約によることができる旨規定されている。したがつて地方自治体の長に右適否の判断がゆだねられているところ、右判断にあたつては結局住民全体の利益又は福祉に寄与することが最終的な判断基準となるものであつて根本的にはその政治的裁量にゆだねられているものというべきである。そうであれば、右適否の判断の是非については通常は政治的裁量の当否の問題であつて司法判断の対象外であり、これが恣意にながれ右裁量権を著るしく逸脱し又はこれを濫用した場合にのみ違法の評価を受けることになる。
ところで、本件契約は前記の如く数名の申込者があるにも拘らず随意契約の方法によつてなされたものであるが、廃棄物処理法施行令四条六号が委託基準として「委託料が受託業務を遂行するに足りる額であること」と規定している趣旨に鑑れば、委託料が低額になることにより業務の完全を期することができなくなり、住民の保健衛生等に支障をきたす事態が予想されることから、そのような事態を阻止しようとしたものとみられるところ、これが一般競争入札の方法によれば右法の趣旨がそこなわれるおそれがあるから、官商結託という一方の弊害をきたすものでない限り、右委託契約自体は地方自治法施行令一六七条の二第一項二号に規定する「その他の契約で、その性質又は、目的が競争入札に適しないものとするとき」に該当するものということができる。しかも前記認定の如く、大野町は前記委託の当初から住民に対するサービスを第一義としてこれにこたえられる業者を競願者のうちから独自の立場で選定し、その業者と随意契約の方法で委託してきたものであり、原告自身右受託者の代表者であつたものであるから、結局、大野町長が随意契約の方法によつて本件契約をなしたこと自体については、なんら違法不当な点はないものというべきである。
四 次に成立に争いのない甲第六号証の大野町財務規則一二八条二項によれば、随意契約による場合は、予定価格一万円以上の場合は二人以上の者から見積書を徴さなければならない旨定めていることが認められるが、この趣旨は公金の浪費、又は不公正な出費を防止せんとするものであると考えられるところ、前掲二の各証拠によれば、大野町では被告Cに対する委託料金について、従前の各年度の委託料金(昭和四七年度-月額金二〇万円、同四八年度-月額金二二万円、同四九年度-月額金二五万円、同五〇年度-月額金三二万円)を参考として独自に算出決定し、予算編成したうえで、被告Cに見積書を提出させたところ、ほぼ町の決定額と一致したので結局これを月額金三五万円と決定し約定するに至つたことが認められ、他に右認定に反する証拠はない。右認定事実によれば、右委託料は昭和四七年度以降の委託料の推移からみて異常に高額という訳ではなくほぼ妥当な額ということができるから、あらかじめ申込者から見積書を徴さなかつたという一事をもつて本件契約を違法無効ということはできない。
五 次に廃棄物処理法施行令四条一号後段によれば、委託基準として受託者は受託業務の実施に関し相当の経験を有する者であることと規定しているところ、被告Cにごみ収集業務の経験がないことは前記のとおりであるが、右はあくまでも基準であるから、右基準に適合しないからといつて直ちに違法無効の評価を下すのは相当ではない。しかるところ、前掲二の各証拠によれば、本件契約は一般廃棄物であつて産業廃棄物ではなく、その収集範囲も大野町内に限られ、その業務自体もごみを車に積みこれを焼却場まで運搬するだけの簡単な作業であつて特別の技術能力を要求されるものではなく、現に岡被告が経験がないことによつて業務遂行に支障を来しているとか、住民に迷惑をかけ苦情がきているとかの事情は一切ないことが認められるから、前記無経験の一事をもつて直ちに本件契約が違法無効ということはできない。
さらに前掲二の各証拠によれば、前記Gは、被告Aの町長選挙における有力な後援渚であり、被告Cの親戚関係にあたることが認められるが、右事実のみをもつてしては未だ本件契約が違法な官商結託の場合ということはできず、また前記認定のとおり助役、保健環境課長、総務課長の意見を収約して受託者を決定した経緯からみても、官商結託の場合と断ずることはできない。仮に被告町長の右選定に不明朗な点があり、原告の本件訴の主旨がこの点にあるとしても、原告の前記主張にとどまる限りは、右選定の政治的裁量の当否の域を出ず、政治の場で解決されるべき問題であつて司法権の判断の対象にならないのである。
六 以上の次第で、本件契約はその当否はともかく違法無効のものとは認められない。よつて原告の本訴請求はいずれもその余について判断するまでもなく理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
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