平成21年9月28日判決言渡 東京簡易裁判所
平成21年(少コ)第2379号 損害賠償請求事件
少額訴訟判決
主文
1 被告は,原告に対し,金24万円及びこれに対する平成21年8月18日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,これを5分し,その2を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。
4 この判決は,主文第1項に限り,仮に執行することができる。
ただし,被告が金24万円の担保を供するときは,その仮執行を免れること ができる。事実及び理由
第1 請求 被告は,原告に対し,金60万円及びこれに対する平成21年8月18日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
 第2 事案の概要1 請求の原因の要旨
(1) 訴外Aは,被告との間で次のような運送契約(以下「本件契約」という。) を締結した。
受付日 平成21年5月11日
 お届け予定日 平成21年5月12日
依頼者 A
届け先 原告
品名 ワレモノ(伝票記載)蒔絵高月(以下「本件荷物」という。)運賃 1160円
(2) 被告は,平成21年5月11日にAから本件荷物を受け取り,原告に運んだ。
(3) 本件荷物は,壊れた状態で原告に届けられた。
(4) よって,原告は,被告に対し,本件契約の債務不履行により,損害賠償として,金60万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日である平成21年8 月18日から支払済みまで年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求 める。予備的に,原告は,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償として上記と同 様の損害賠償の支払を求める。2 争点及びこれに対する主張 (1) 被告の契約責任の存否
(被告) Aの申告では「ワレモノ」というのみであった。30万円以上の物は宅急便では送れないこともAには伝えてある。
 (2) 被告の不法行為責任の存否(3) 本件荷物の損害額
(被告) ア「宅配便」には宅配便約款(甲3の2)が適用になり,その25条により,荷物に発生した損害については,送り状に記載された責任限度額である3 0万円の範囲内で賠償するとの規定があり,本件についてもこの約款の適 用があり,責任限度額は30万円である。イ 損害額については,時価によるべきであって,制作者の付けた金額ではな い。本件荷物の時価額は3万円であり,この金額が損害賠償額として相当で ある。第3 争点に対する判断
 1 争点(1)について
原告は,運送契約の当事者ではないが,本件荷物が到達地に達した後であるこ とから,商法583条により荷送人の権利を取得しているものと認められる。ところで,Aの申告では「ワレモノ」のというのみで,高価品としての申告は ない(証拠甲1の4,乙9)。このことから,商法578条の適用があり,同上 に定める「明告」がなかったものとして,被告は高価品の損害賠償については, 免責される。また,高価品については,普通品としての価額を算定することは困 難であることから,普通品としての損害賠償責任も負わないこととなる。2 争点(2)について 被告は,原告に対し,契約責任を負わないとしても,債務不履行責任と不法行為責任とは請求権競合であると解されるので,不法行為責任の成立要件が認めら れるのかについて検討することになる。原告は,本件荷物の所有権については,平成21年3月16日の遺産分割申立 事件中間合意により所有権を取得しており(甲8の1),本件荷物の所有者であ ることが明らかである。また,被告の運送中に本件荷物が破損されたことについ ては,被告も認めている。即ち,被告の原告に対する不法行為責任は一応認める ことができる。ところで,商法578条による運送人の保護の規定は,不法行為責任について も及ぶのかについては見解の分かれるところであるが,同条は運送契約上の債務 不履行責任にのみ関するものであり,運送人の不法行為責任についてまで免責さ れるものではないとみるのが相当である(神戸地判平成2年7月24日)。また, 請求権の競合が認められるには運送人の側に過失あるをもって足り,必ずしも故 意又は重大な過失の存することを要するものではない(最判昭和38年11月5 日)。よって,被告は,原告に対し,原告の所有物たる本件荷物を破損させた不法行為責任を負うことになる。
 3 争点(3)について
まず,本件が一部請求か否かについてであるが,原告は全体額を明示している ものとは言い難く,また,一部請求の明示もないことから,本件は60万円につ いての全部請求であるものと認める。次に,損害額の立証についてみると,原告がその責任を負うものであるところ, F店のGの見積によれば123万9000円(甲5),H店のIの評価では60 万円以上(甲4の1)とある一方,被告は,反証として,時価3万円前後である との査定評価書(乙3)及びインターネット上同種のものが9万8000円で販 売されている(乙4)等の各証拠を示すが,いずれも論拠は不明であり,かつ, 一回審理の少額訴訟という状況下においては,損害額について立証不十分であり, 真偽不明であると言わざるを得ない。このことから,本件荷物の損害発生は明ら かであるものの損害額を定めることができず,損害の性質上その額を立証するこ とが極めて困難な場合であると認め,裁判所は民事訴訟法248条に基づき,口 頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき,その額を60万円と認定する。しかし,原告の損害額は60万円であると評価されるとしても,原告が,本件 荷物をAに送らせるに当たり,内容物の価額を明告することによって,被告側関 係人に特別の注意を払わせ,損害発生を防止できた可能性があったにもかかわら ず,損害発生を防止しようとしなかった原告側にも大きな過失があったものと認 められることから,その損害額の4割に相当する24万円が本件荷物の損害額で あるとするのが相当である。4 よって,主文のとおり判決する。
 東京簡易裁判所民事第9室
裁判官 野中利次
判例本文

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