平成19年12月20日判決言渡 東京簡易裁判所平成19年(ハ)第6612号 損害賠償請求事件主文
1 被告らは,原告に対し,連帯して,83万9000円及びこれに対する平成19年4月5日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
 2 訴訟費用は被告らの負担とする。3 この判決は仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請 求 主文と同旨 第2 事案の概要
 1 請求の原因
別紙訴状の請求の原因欄記載のとおり
なお,被告らに対する訴状送達の日の翌日は,平成19年4月5日である。
 2 争いのない事実等 (1)被告Aは,平成15年2月6日,B株式会社(以下「販売店」という。)から別紙物件目録記載の自動車(以下「本件自動車」という。)を,毎月 の割賦払いによる方法で購入し(以下「本件売買契約」という。),その引 き渡しを受けた。(2)本件売買契約締結当時,原告と被告Aとの間には,本件自動車の所有権は, 本件売買契約及び被告Aの原告に対する保証委託契約(以下「本件保証委託 契約」という。)の効力発生と同時に販売会社から原告に移転するという約 定(以下「所有権移転の約定」という。)があった。(甲1,6)(3)原告は,本件売買契約締結日に被告Aから保証委託を受けた(甲1,6, 被告A)。(4)被告Aは,平成18年7月6日,被告Cに対し,被告Cからの貸金の担保 として本件自動車を同人に引き渡すことに同意し,即日これを引き渡した( 以下「本件取引」という。)。3争点 (1)本件自動車所有権の販売店から原告への移転の有無
(被告Cの主張) 仮に原告と被告A間に,本件自動車の所有権は,本件売買契約及び本件保証委託契約が有効に成立したときに販売会社から原告に移転するという約定 があったとしても,それらの契約書の文言は極小活字で表されており,拡大 鏡無しには読むことができないので,無効である。(原告の主張)
本件自動車販売契約書は,その申込書と一冊になっているものであり,申 込書には本件契約内容が8ポイントの大きさの文字で記載されている。(2)被告らの共同不法行為の有無 (原告の主張)
被告Aは,原告から本件自動車の使用保管を認められていたに過ぎないか ら,同人が被告Cに本件自動車を貸金の担保として引き渡した行為は,本件 自動車の横領にほかならない。そして,被告Cが本件自動車を受領した行為 は,被告Aの横領行為を容易にしたことになるから,横領の幇助行為に該当 し,当該行為は,被告Aとの共同不法行為を形成するから,被告らには,原 告の損害について連帯して賠償する義務がある。また,被告Cは不法行為者であるから,登記・登録の欠けつを主張するに ついて正当な利益を有する第三者には該当せず,原告は,登記,登録なくし て被告Cに本件自動車の所有権を主張できる。(被告Cの主張)
被告Aは,本件取引時,被告Cに,本件自動車がローン中であることなど 2何も言っていなかったから,被告Cは,本件自動車の所有権は被告Aにある と思っていたのであり,被告Cに共同不法行為の故意若しくは過失はない。
 仮に本件自動車がローン中で,その所有権が原告に留保されていたとして も,被告Aは,本件自動車の利用権をもって,これを自己の権利とし,他に 担保化したり売却したりする自由を有するし,民法560条により,他人の 物の売買は有効であるから,被告Cへの本件自動車の売買が違法ということにはならない。 また,原告は,所有権を主張しようとするなら,まずその登録をしなければ,第三者である被告Cに対抗できないのに(道路運送車両法5条1項), これをしていない。よって,原告は,被告Cに対する何の対抗要件も備えて いないから,本件は,原告の登録なき所有権と被告Cの登録なき担保権との 優劣関係になり,両者とも登録がない以上,占有の優劣で権限の有無を決め るべきである。第3 当裁判所の判断
1 争点(1)について
証拠(甲1,6)の割賦販売契約・保証委託契約共通条項第1条(2)に記 載されている文字の大きさからすると,被告Aが本件売買契約及び本件保証委 託契約締結当時,前記条項の文字が小さすぎて判読不能であったと認めること はできないから,被告Cの主張は採用することができない。そして,前記各証 拠及び争いのない事実等並びに弁論の全趣旨によれば,被告Aは,本件自動車 の所有権が原告に移動することを充分理解したうえで本件売買契約及び本件保 証委託契約を締結した事実並びに前記各契約は平成15年2月6日,当事者間 で有効に成立し,同日,被告Aは原告に保証委託をし,その頃,原告は前記委 託を承認して,その旨を販売会社に通知した事実が認められる。よって,前記日頃,本件自動車の所有権は販売店から原告に移転した。
 2 争点(2)について(1)認定事実 証拠(甲1ないし3,5ないし10,証人D,被告A,被告C)及び前記争いのない事実等並びに弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア 被告Cは,自動車を担保に簡単に融資を受けることができる旨をうたい文句にし,現在まで約25年間営業を続けている金融業者である。 被告Cは,「お金は車で即融資」「使用も相談」「ローン中OK!高価査 定即現金」などの広告を出して,他の者が所有権を留保している自動車であ っても,これを担保として簡単に借入れができる旨を強調し,顧客を集めていた。
イ 販売店は,平成15年2月6日,本件自動車を被告Aに,205万8228円(割賦手数料込み)で売り渡し,その頃,原告は,前記認定1のとおり 本件自動車の所有権を取得した。本件売買契約及び本件保証委託契約には,被告Aが本件自動車の売買代金 支払債務をすべて履行した時点で,本件自動車の所有権が原告から被告Aに 移転する旨及び被告Aは,原告が本件自動車の所有権を留保している間,原 告に無断で本件自動車を譲渡または担保に供することはできず,これに反し た場合には,被告Aは分割弁済について期限の利益を失い,本件自動車を直 ちに原告に引き渡さなければならない旨の約定がある。ウ 販売会社は,本件自動車を被告Aに引き渡したが,本件自動車の登録され た所有者は,販売店のままとなっていた。エ 被告Aの本件取引当時の収入は,月20万円ほどであったが,いわゆるサ ラ金業者数社から合わせて約400万円ほどの借り入れがあり,その返済に あてるための現金を必要としていた。被告Aは,平成18年7月頃,自動車を担保に融資をするという被告Cを 知り,同18年7月6日,被告Cから,同年8月4日までに18万円を一括 して返済するという約定により17万5620円を借り入れ,貸付金の担保として本件自動車を被告Cに引き渡した。その際,被告Aは,被告Cに対し, 本件自動車の所有権者が販売店となっている車検証を提示し,本件自動車は 月々原告に支払いをしているローン中のものであることを説明し,「金が必 要だから,車を担保に金を貸して下さい。」と言ったところ,被告Cは,車 検証を見て,販売店が所有者であることを確認したが,被告Aに本件自動車 のローン残債額を聞くこともせず,完済証明書を求めることもなく,原告に 対しては,被告Aの残債の有無を確認したりすることもしないまま,「問題 ないよ。金は出しますよ。」と述べた。オ 被告Aは,平成18年8月4日までに被告Cに返済ができなかったことか ら,被告Cは,同年9月ころ,被告Aに対する貸金の回収を図るため,本件 自動車を訴外第三者に20万円から25万円くらいの金額で売り渡したが, その資料は存在しない。(2)被告らの不法行為と原告の損害 ア 被告Aの不法行為
上記認定事実によれば,被告Aが本件自動車を購入するに当たり,本件自 動車の所有権は原告に留保され,被告Aが本件自動車を担保に供することは 禁じられていたわけであり,また,本件保証委託契約上,被告Aが原告に無 断で本件自動車を担保に供した場合,被告Aは,当然に分割弁済の期限の利 益を喪失し,被告Aは本件自動車を原告に引き渡す義務を負うに至っていた のである。そうすると,被告Aが,被告Cに本件自動車を担保に供し,これ を引き渡したことは,原告の所有権を侵害する横領行為に当たり,不法行為 を構成する。イ 被告Cの不法行為 上記認定事実によれば,被告Cは,長年にわたり自動車を担保に融資をする金融業を続けてきた経験上,本件自動車の所有権が販売店から原告に移転 され,原告に留保されているなどの上記の諸事情を知っていたか,または十分知りうる立場にあったと認められるし,少なくとも,被告Aに本件自動車 の処分権限がないことを知っていた事実が認められる。ところで,民法の定める不法行為制度は,被害者の損害の填補を目的とし, 原則として,故意と過失を区別していないことに照らせば,民法719条2 項の定める「幇助した者」には,当該不法行為を故意に幇助した者のみなら ず,過失により幇助した者も含まれると解されるところ,被告Cは,上記の とおりの態様で本件自動車の引き渡しを受け,被告Aの横領という不法行為 に加担,あるいは,これを容易にする行為に及んだのだから,被告Cは,被 告Aの共同不法行為者として,原告の被った損害について,賠償責任を負う と解するのが相当である。ウ 原告の損害 被告らがした上記不法行為と原告が本件自動車の価値に相当する損失を被ったこととの間には,優に相当因果関係があることが認められる。自動車の 価額は,横領行為の開始時点以降時間の経過と共に減少するが,そのような 価額の減少は,被告Aの横領行為によって生じたものと認められるのであり, そうであれば,原告は,被告らに対し,被告Aの横領及び被告Cの不法行為 が始まった時点であって,かつ,被告Aが期限の利益を喪失した時点におけ る価額相当額の損害賠償を求めることができるというべきだからである。そして,被告Aが期限の利益を喪失した平成18年7月6日時点の本件自 動車の価格相当額は83万9000円であると認められるから(甲3),被 告A及び被告Cは,原告に対し,連帯して,83万9000円とこれに対す る平成18年7月6日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を支 払うべき義務がある。(3)被告Aの主張についての判断 上記認定事実に対し,被告Aは,原告の従業員であるDに提出した回答陳述書(甲2)は,同陳述書を記載すれば残債務を免除するというDの甘言に 6より作成されたものであり,被告Cに対して,本件自動車のローンのことは 何も言っていないと主張し,その主張に沿う証拠(乙1,2)も存在するが, 被告Aの当該主張自体,平成19年4月26日の本件弁論期日における同人 の主張と矛盾するし,その後なされた同人の尋問結果及びD証言の内容とも 矛盾しているので,上記認定に反する被告Aの主張及び証拠(乙1,2)は 採用しない。(4)被告Cの主張についての判断
ア 被告Cの本件取引当時の本件自動車の所有権についての認識
被告Cの,本件取引当時,本件自動車の所有権は被告Aにあると思ってい たという主張は前記認定に反するので,これを採用しない。イ 他人の物の売買と本件取引の違法性 他人の物の売買においては,売主は原所有権者よりその権利を取得して,買主に移転する義務を負うのであり,売主がその所有権を取得する前に買主 がその物を滅失・毀損するなどして原所有権者の所有権を侵害したときは, 原所有者に対し不法行為の責任を負うと解されるところ,本件では,本件自 動車の売主である被告Aが,原所有権者である原告から所有権を取得してい ない以上,被告Aは,本件取引をしたことで,原告に対し,不法行為の責任 を負う。ウ 原告が本件自動車の所有権の登録がないことと被告Cとの登録なき担保権 との優劣関係前記(2)で認定のとおり,被告Cは,被告Aの横領という不法行為に加 担する行為に及んだのだから,被告Cは,被告Aとの共同不法行為者という べきであり,被告Aは,原告の本件自動車の登録の欠けつを主張するについ て正当な利益を有する第三者に該当しないので,被告Cの前記主張は理由が ない。3 結論
以上によれば,原告の請求は理由があるからこれを認容することとし,主文 のとおり判決する。東京簡易裁判所民事第2室 裁判官持地明
(別紙省略)
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