平成25年12月19日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成25年(行ケ)第10231号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成25年11月28日
判決
原告X
被告Y 訴訟代理人弁理士豊栖康司 同 豊栖康弘 同 木谷弘行
主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
 事実及ひ理由
第1 請求
1 特許庁か無効2013-890022号事件について平成25年7月9日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等
(1) 被告は,以下の商標(登録第4323578号。以下「本件商標」という。)の商標権者てある。
(本件商標)
登録出願:平成10年4月10日
設定登録:平成11年10月8日
更新登録:平成21年9月15日
指定商品:第31類「いちこ」
(2) 原告は,平成25年3月23日,特許庁に対し,本件商標の商標登録(以下「本件商標登録」という。)を無効にすることを求めて審判(以下「本件審判」という。)を請求した。特許庁は,これを無効2013-890022号事件として審理した上,平成25年7月9日,「本件審判の請求を却下する。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月20日,原告に対して送達された。
(3) 原告は,平成25年8月12日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起 した。2 本件審決の理由の要旨
 本件審決の理由は,別紙審決書の写しのとおりてあり,その要旨は以下のとおりてある。
 原告は,本件商標か商標法3条1項2号,3号及ひ5号に該当すること,本件商標の使用か同法74条1項1号に違反する使用てあること,さらに同法74条1項1号違反の違法か重大明白てあることを無効理由として主張し,本件商標登録を無効にすることについて審判を請求している。
 しかし,本件商標は,平成11年10月8日に設定登録されたものてあるか,本
件審判請求は同設定登録日から5年以上経過した平成25年3月23日にされたものてある。したかって,本件商標か商標法3条1項2号,3号及ひ5号に該当することを理由とする審判請求については,同法47条1項に規定する設定登録の日から5年の除斥期間経過後にされた不適法なものてある。
また,商標法46条1項各号に掲けられた無効理由は限定的列挙てあって,これ らに該当しない限り無効審判により商標登録か無効にされることはあり得す,商標 登録の当然無効ということはない。しかるに原告の主張する商標法74条1項1号 違反との理由は,商標法46条1項に規定されているものてはない。また,原告は, 商標法74条1項1号違反の違法は重大てあると主張するか,商標登録の無効審判 において,当然無効を理由にその登録を無効とすることはてきない。したかって, 原告による同法74条1項1号に違反したとの請求及ひ本件商標登録について重大 な違法かあるとの請求は,いすれも不適法な審判の請求てある。
 以上のとおり,原告か本件商標登録か無効てあるとして主張する理由は,いすれも不適法てあって,その補正をすることかてきないものてあるから,同法56条て準用する特許法135条の規定により却下すへきものてある。
3 取消事由
(1) 商標法47条1項の除斥期間を適用した判断の誤り
(2) 商標法74条1項1号違反の違法確認をしなかったことの誤り第3 当事者の主張の要旨
〔原告の主張〕
1 取消事由1(商標法47条1項の除斥期間を適用した判断の誤り)について 商標法47条1項は,同法46条1項各号の無効理由のうち除斥期間の適用かあるものについての規定てあるか,その中て,商標登録か同法4条1項10号の規定に違反してされたときについては不正競争の目的て商標登録を受けた場合を,商標登録か同法4条1項15号の規定に違反してされたときについては不正の目的て商標登録を受けた場合を,それそれ除斥期間の適用から除外している。また,ハリ条約6条の2(3)は,他人の周知商標について「悪意」て登録を受けた場合には,この登録を無効にすることについて除斥期間を設けないこととしている。
 したかって,本件商標の登録時において,他人の周知商標か存在し,不正の目的又は不正競争の目的かあり,さらに本件商標か需要者の間に広く認識されているといえないのてあれは(同法47条2項),上記各規定によって,除斥期間の適用はないというへきてある。
本件ては,本件商標の出願時,既に奈良県及ひ周辺の関西地域て「大和桃苺」か 周知商標として存在していた。そして,被告は,この周知商標の存在を知りなから も大和桃苺か未登録商標てあることを奇貨として本件商標登録を行い,また,平仮 名「ももいちこ」の商標(以下,本件商標と区別するため「ももいちこ商標」とい う。)のみては本件商標と社会通念上同一の商標とは認められないのに,「ももい ちこ商標」に本件商標の商標登録番号を表示して使用するなと商標法74条1項1 号違反の行為をし,また,「ももいちこ商標」を付した「いちこ」(以下,商標と 区別するため「ももいちこ商品」という。)はイチコの一品種てある「あかねっ娘」 てあるにもかかわらす,あたかも「あかねっ娘」を品種改良した「ももいちこ」と いう品種てあると偽って販売するなと不正競争防止法2条1項13号違反の行為を し,さらに周知商標てある「大和桃苺」と類似の商標を用いて同商品と混同を生し させるなと不正競争防止法2条1項1号違反の行為をしており,悪意又は不正の目 的若しくは不正競争の目的かあった。その上,本件商標は,需要者や取引者の間に 広く認識されているとはいえない。そうすると,本件商標は,商標法4条1項10号,15号の規定に違反して商標 登録されたものてあり,かつ,被告には悪意又は不正の目的若しくは不正競争の目 的かあったのてあるから,商標法47条1項又はハリ条約6条の2(3)の規定により, 除斥期間の適用はなく,上記各規定及ひ同法46条1項1号に基つき,本件商標登 録の無効の判断かされなけれはならない。2 取消事由2(商標法74条1項1号違反の違法確認をしなかったことの誤り)について
 行政事件訴訟法4条は公法上の法律関係に関する確認を明文化しており,本件ては,商標法74条違反の有無か同法47条1項の除斥期間を適用するかとうかの判断の基準となるのてあるから,被告か商標法74条1項1号に違反したとの違法確認かされるへきてある。
〔被告の主張〕
1 取消事由1(商標法47条1項の除斥期間を適用した判断の誤り)について原告は,商標法4条1項10号又は15号違反について述へているようてあるか, 原告自身か本件審判てこれらを無効理由として挙けていない以上は,本件審決取消 訴訟の審理の対象たり得ない。さらに原告は,商標法74条違反に加えて,本件審 判ても主張されていない不正競争防止法2条1項違反まて持ち出しており,失当て ある。また原告は,商標法47条2項の周知性についても言及しているか,同条項 は地域団体商標に適用されるものてあって,地域団体商標てない本件商標か対象と ならないことはいうまてもない。地域団体商標制度は平成18年に導入されたもの てあって,本件商標か出願された平成10年には当該規定自体か存在せす,当然な から存在しない制度に対する除斥期間の適用もあり得ない。付言すると,被告か先に「ももいちこ」フラントの商品販売を開始し,周知となっ た後に,「ももいちこ」フラントを模倣したのか「大和桃苺」なのてあって,被告 か「大和桃苺」を模倣したのてはない。原告は時系列を誤解又は意図的に取り違え ているのてあって,大和桃苺か被告よりも先に販売された証拠もない。2 取消事由2(商標法74条1項1号違反の違法確認をしなかったことの誤り) について 原告の商標法第74条1項1号違反の主張については,そもそも同法46条1項各号て列挙された無効審判の理由として挙けられていないのてあり,失当てある。第4 当裁判所の判断
1 証拠(甲8,18,乙5)及ひ弁論の全趣旨によれは,以下の事実か認められる。
(1) 被告は,徳島市農業協同組合(以下「JA徳島市」という。)の佐那河内支所(徳島県名東郡佐那河内村)の組合員てある。被告及ひJA徳島市の他の組合員 は,平成5年ころから,「ももいちこ商標」を付した「ももいちこ商品」を生産し, 販売している。
 本件商標の商標権者てある被告は,JA徳島市佐那河内支所に設立され,JA徳島市組合員て構成された「ももいちこ部会」の元部会長てあるか,JA徳島市佐那河内支所やももいちこ部会か法人格を有しないことから,ももいちこ部会の中心メンハーてあった被告の名義て本件商標の設定登録かされた。(2) 被告は,本件商標について,JA徳島市に対し,平成22年4月1日付けて, 日本国内において,本件商標の存続期間中(平成31年10月8日まて),「もも いちこに標章を付し販売する行為」につき,通常使用権を許諾する旨の証書を作成 した。もっとも,被告は,JA徳島市に対しては,当初から,本件商標につき口頭 て使用許諾をしていた。(3) 原告は,本件審判において,概要,以下のとおり,本件商標か商標法3条1 項2号,3号及ひ5号に該当すること,本件商標の使用か同法74条1項1号に違 反する使用てあること,さらに同法74条1項1号違反の違法か重大明白てあるこ とを,本件商標登録の無効理由として主張した。ア 商標法46条の無効理由
(ア) 商標法3条違反
a 被告か本件商標を出願した時点ては,奈良県て「大和桃苺」の名称てイチコか販売されており,そのうち「大和」は奈良県地域を表す地方名てあるから識別性を有する要部は「桃苺」てある。そうすると,先に奈良県てイチコか「桃苺」と称されて一般的に販売されていたときに,被告か,徳島県てイチコに「ももいちこ」と名付けて本件商標の登録を受けたのてあるから,商標法3条1項2号に違反して登録されたものてある。
b また,本件商標において「百壱五」の部分は,「ひゃくいちこ」とも読み得るものてあるから,「100g当たり101.5円」とか,「1箱当たり101.5匁」といった数量を表すものてもあり得るから,商標法3条1項3号に違反して登録されたものてある。
c 加えて,本件商標「百壱五」には,一応そうと読み得るルヒか振られているにすきす,単なる数字の羅列てあるともいえ,商品番号や生産者番号等ともみなせるから,商標法3条1項5号に違反して登録されたものてある。
(イ) 商標法74条1項1号違反
 被告か,ももいちこ商品の贈答用化粧箱側面に,商標登録を拒絶された「ももいちこ商標」とともに,本件商標の商標登録番号等てある「登録第4323578号/平成10年商標登録願30450号」の二段併記をすることは,商標登録表示又はこれと紛らわしい表示を付する行為に当たる。したかって,被告は,登録商標以外の商標の使用をする場合において,その商標に商標登録表示又はこれと紛らわしい表示を付する行為をしたのてあるから,商標法74条1項1号違反に当たる。イ 商標法46条によらない違法か重大明白なことによる無効
 行政処分は,瑕疵(違法)か重大かつ明白てあれは無効てある。「ももいちこ商標」は非登録商標てあり,これに本件商標登録表示と紛らわしい表示かされたものてあって商標法74条1項1号に違反し,その罰則は罰金300万円てあって,違法か重大かつ明白てあるから,本件商標は,即,無効てある。(4) 特許庁は,本件審判請求における原告の前記(3)の各主張に対して,前記第 2の2のとおりの理由て,本件審決をした。2 取消事由1について
 原告は,本件商標は,商標法4条1項10号,15号の規定に違反して商標登録されたものてあり,かつ,被告には悪意又は不正の目的若しくは不正競争の目的かあったのてあるから,商標法47条1項又はハリ条約6条の2(3)の規定により,除斥期間の適用はなく,上記各規定及ひ同法46条1項1号に基つき,本件商標登録の無効の判断かされなけれはならない旨主張する。
 しかし,商標登録無効審判の審決に対する取消しの訴えにおいてその判断の違法か争われる場合には,専ら当該審判手続において現実に争われ,かつ,審理判断された特定の無効原因に関するもののみか審理の対象とされるへきものてある。本件においては,前記1(3)及ひ(4)のとおり,原告は,本件商標か自他商品識別 力を有しないとして商標法3条1項2号,3号及ひ5号に該当すること,本件商標 の使用か同法74条1項1号に違反する使用てあること,さらに同法74条1項1 号違反の違法か重大明白てあることを,本件商標登録の無効理由として,本件審判 を請求し,本件審判手続においても,上記無効原因のみか現実に争われ,審理判断 されたのてあって,本件商標登録か商標法4条1項10号,15号の規定に違反す るか,ハリ条約6条の2の規定か適用されるかについては,本件審判手続ては何ら 審理判断の対象とされていない以上,本件審決の取消しの訴えにおいて,これにつ いて裁判所の判断を求めることはてきない。したかって,原告の上記主張は主張自体失当てあり,取消事由1には理由かない。
 3 取消事由2について 原告は,審決において商標法74条1項1号の違法確認をすへきてある旨主張するけれとも,同条項違反の違法確認をすることについて審判請求かてきるとする実定法上の根拠はなく,また,同法46条1項各号に掲けられた無効理由は限定的列挙てあって,同条項各号に該当しない商標法74条1項1号違反を理由に無効審判を請求てきるとする実定法上の根拠もないから,原告のこの点に関する主張も失当てあり,取消事由2には理由かない。
4 結論
 以上によれは,原告主張の取消事由はいすれも理由かなく,本件審決は相当てあるから,原告の本訴請求は棄却されるへきものてある。
 よって,主文のとおり判決する。
 知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 富田善範
裁判官 大鷹一郎
裁判官 田中芳樹
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