平成25年12月19日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成25年(行ケ)第10203号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成25年11月28日

判決
原告 X
被告 Y
訴訟代理人弁理士 豊栖 康司
同 豊栖 康弘

主文
  1. 原告の請求を棄却する。
  2. 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
1 特許庁が取消2012-300897号事件について平成25年6月14日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。

第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等
(1) 被告は,以下の商標(登録第4323578号。以下「本件商標」とう。)の商標権者である。
(本件商標)
百壱五

百壱五 ももいちご ヒャクイチゴ

登録出願:平成10年4月10日
設定登録:平成11年10月8日
更新登録:平成21年9月15日
指定商品:第31類「いちご」
(2) 原告は,平成24年11月25日,特許庁に対し,本件商標は,その指定商品である「いちご」について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないから商標法50条1項の規定により取り消されるべきであるとして本件商標の商標登録(以下「本件商標登録」という。)の取消しを求めて審判(以下「本件審判」という。)を請求し,当該審判の請求は,同年12月13日に登録された。
 特許庁は,上記審判請求を取消2012-300897号事件として審理し,平成25年6月14日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,原告に対し,同月22日,送達された。
(3) 原告は,平成25年7月13日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。

2 本件審決の理由の要旨
 本件審決の理由は,別紙審決書の写しのとおりであり,その要旨は以下のとおりである。
 徳島市農業協同組合(以下「JA徳島市」という。)の佐那河内(徳島県名東郡佐那河内村)選果場及びJA佐那河内支所ハウス苺部会は,被告から本件商標について通常使用権の許諾を受けているものと推認することができる。そして,本件審判の請求の登録日(平成24年12月13日)前3年以内である平成23年11月17日に,JA徳島市佐那河内選果場は,「ももいちご」の商標(以下,本件商標と区別するため「ももいちご商標」という。)を付して販売している「いちご」(以下,商標と区別するため「ももいちご商品」という。)の化粧箱に貼るための訂正シール(以下「百壱五訂正シール」という。)を大塚包装工業株式会社(以下「大塚包装」という。)から納品を受け,また,JA佐那河内支所ハウス苺部会は,同年12月26日から平成24年3月25日の期間中,徳島バス株式会社(以下「徳島バス」という。)が定期便として運行する高速バスの後部に表示した「ももいちご商品」の広告について,同年1月10日,「株式会社本州堂」に対して広告料の支払をしている。上記百壱五訂正シール及び徳島バスの後部の広告は,「ももいちご」の平仮名と「百壱五」の漢字を二段に書したものを表示するものであるから,これらは,本件商標と社会通念上同一と認められる商標であり,かつ,商品の包装に標章を付する行為及び商品に関する広告であるということができる。したがって,被告は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,本件商標の通常使用権者と推認し得る「JA徳島市佐那河内選果場」及び「JA佐那河内支所ハウス苺部会」が本件商標と社会通念上同一と認められる商標を本件審判の請求に係る指定商品「いちご」について使用していたことを証明したものということができるから,本件商標登録は,商標法50条の規定により取り消すことができない。

3 取消事由
 本件商標の使用の有無に係る判断の誤り

第3 当事者の主張の要旨
〔原告の主張〕
1 百壱五訂正シールについて
 被告は,ピンク地の長方形に黒文字で「ももいちご/百壱五」と書かれた百壱五訂正シールを作成し,既存の「ももいちご商品」の化粧箱在庫分の,側面の内,底面側の右下隅部に貼付して,平成23年12月頃より販売し,また,同月頃から,上記と同じ位置に「ももいちご/百壱五」と印刷した新たな化粧箱を使用して,「ももいちご商品」を販売していると主張する。
 しかし,乙11によれば,百壱五訂正シールは,白地に黒文字で「百壱五」と書かれ「ももいちご」とルビの振られたものである。化粧箱の「ももいちご商品」が高級品として高額で販売されていることからすれば,訂正したことが目立つ百壱五訂正シールが化粧箱側面に貼られて販売されることは考え難く,実際は,被告及びJA徳島市佐那河内支所は,百壱五訂正シールを注文したが,地の色を化粧箱の側面と同色にしなかったという発注ミスをしたため,百壱五訂正シールを貼付せず,古い化粧箱のまま在庫分がなくなるまで,販売を続けたものと推測される。
 このことは,本件商標の通常使用権者であると被告が主張する株式会社ともだが,平成25年2月25日時点で,新たな化粧箱(乙14)ではない,側面に「登録4323578号/平成10年商標登録願30450号」と表示のある古いタイプで,かつ,百壱五訂正シールが貼付されていない化粧箱を写真掲載してネットショップで「ももいちご商品」を販売していること(甲6),同じく本件商標の通常使用権者であると被告が主張するフルーツキングミズノにおける平成25年2月7日の販売状況の写真(乙23)からは,新たな化粧箱の使用も,化粧箱に百壱五訂正シールが貼付されていることも,いずれも確認できないことからも,裏付けられる。
 そして,百壱五訂正シールの納品は1万枚であるから(乙13の1・2),古い化粧箱の在庫が1万個近く残っているというのに,百壱五訂正シールの納品と同時期(平成23年12月頃)に,新たな化粧箱が製作・使用されたというのも奇妙である。
 なお,百壱五訂正シールの送り状(乙13の1)は,扱者印も押されておらず,発行者が不明であって,誰でもパソコンのワープロソフトで作れ,日付けも自由に打てるものであり,さらに百壱五訂正シールの使用状況写真(乙12,28)は撮影日及び撮影者が特定されておらず,いずれも何の証拠力もない。

2 徳島バスの後部広告について
 被告は,JA佐那河内支所ハウス苺部会は広告代理店である株式会社本州堂(以下「本州堂」という。)を通じて高速バスの後部形状シートへの「ももいちご商品」の広告を依頼し,平成23年12月26日から平成24年3月25日の期間中,徳島バスが定期便として運行するJR徳島駅と大阪間の高速バスの後部窓ガラス下の広告枠で本件商標を表示したと主張する。
 しかし,徳島バスの後部広告の使用状況写真(乙16,18)は,撮影日及び撮影者が特定されておらず,証拠力がない(ただし,これらの撮影日は平成25年上旬と推定できる。)。
 本州堂の請求書及び領収書(乙17の1・2)から,JA佐那河内支所ハウス苺部会が何らかの「ももいちご商品」の広告を本州堂に依頼し,平成23年12月25日から平成24年3月25日までの間,徳島バスの後部形状シートの形で宣伝したものと思われるが,上記領収書及び請求書からは,そこに本件商標が使われていたかどうかは判断できない。通常,広告のデザインは毎年新しく変えるのが普通であるから,使用状況写真(乙16,18)の広告デザインは,上記領収書及び請求書のものとは,別の契約期間の違う契約により新たに製作されたものであって,徳島バスの後部広告に関する上記証拠では,本件審判の請求の登録日前3年以内に日本国内において商標権者又は通常使用権者のいずれかが,本件商標の使用をしていることを証明したことにはならない。
 また,徳島バスの証明書(乙27)は,本件審判の段階では提出されなかった証拠であるから,被告が本件訴訟の段階でこれを提出することは認められない。この点をおいても,本州堂の請求書及び領収書(乙17の1・2)の広告期間の日付が平成23年12月26日から平成24年3月25日となっているのに対して,徳島バスの証明書(乙27)に記載された運行期間は平成23年12月25日から平成24年3月25日であって,上記請求書及び領収書の記載とは,期間及び始期について,それぞれ1日のそごがあるから,徳島バスの証明書(乙27)は,偽装されたものであり証拠力がない。

〔被告の主張〕
1 百壱五訂正シールについて
 被告及びJA徳島市佐那河内支所は,化粧箱の製造を依頼している大塚包装に対し,百壱五訂正シールの作成を依頼したが,化粧箱と百壱五訂正シールとでは紙の素材が違うため,両者の地の色が全く同じとなるように合致させるのは不可能とのことであったため,百壱五訂正シールの色として,比較的化粧箱に近い色を選択した。そして,原告の妻である A から被告に対し,別件として平成22年7月27日付けで不使用を理由に本件商標登録取消しの審判が請求がされた以上は,今後,さらに第二,第三の審判請求がされることも考えられたため,本件商標の使用を明確にする必要性,重要性を意識した結果として,目立つことを承知の上で,むしろあえて目立つような態様で,大きな文字で「ももいちご/百壱五」と表示する百壱五訂正シールのデザインを選択した。被告及びJA徳島市佐那河内支所が大塚包装に対して,百壱五訂正シールの地の色について発注ミスをした事実はない。
 また,株式会社ともだが,ホームページで「ももいちご商品」の写真(甲6)を差し替えていないからといって,百壱五訂正シールの不使用を断定することはできず,実際,同社は,百壱五訂正シールを貼付した化粧箱で販売していた。実際に販売する商品と,ホームページで掲載されている写真とが一致しないことはよくあることであり,特に本件のように百壱五訂正シールの貼付の有無のみしか変更されておらず,外観上は従前のままのデザインの新たな化粧箱に切り替わったような場合には,写真を差し替えるほどの必要性もなく,このようなことは往々にして生じる。
 フルーツキングミズノにおける販売状況を示す写真(乙23)についても,店舗で展示されている状態のままを撮影した結果,そのような写真となったにすぎず,実際には乙23で撮影された化粧箱は百壱五訂正シールを貼付したものではなく,「ももいちご/百壱五」を直接印刷した新たな化粧箱(乙14)であったと思われる。いずれにせよ,乙23の撮影日は平成25年2月7日であるから,使用の事実の直接の証明とはならないし,本件審決も同証拠に依拠していない。
 また,百壱五訂正シールの送り状(乙13の1)は,百壱五訂正シールの注文数が1万枚であったことを示すだけであり,この数は古い化粧箱の在庫数ではない。
 百壱五訂正シール発注時の化粧箱の在庫数は,4000ないし5000枚であった。
 しかし,被告及びJA徳島市佐那河内支所が,大塚包装に当初見積りを依頼したところ,百壱五訂正シールを5千枚注文しても,1万枚注文しても,数千円(2250円)の違いにしかならないことが判明したため,百壱五訂正シールは,化粧箱に貼付する以外にも直売所の値札や宣伝等にも転用できることや,上記のとおり不使用取消審判を受けた直後であって本件商標を使用する意識が高かったこともあいまって,化粧箱の在庫数よりも多いが,1万枚で注文したのである。
 百壱五訂正シールの送り状(乙13の1)には,扱者印が押されていないが,送り状には捺印しないことが一般的と思われ,他方,送り状とともに送付された複写式の受領書(乙13の2)には,受領印としてJA徳島市佐那河内支所職員の「 B 」の押印が確認できるから,百壱五訂正シールの受領の事実を裏付ける。また,送り状及び受領書(乙13の1・2)は,納品の日付,伝票番号のほか,注文主の「全国農業協同組合連合会(徳島)」及び「御届け先」の「JA徳島市 佐那河内選果場」について大塚包装の管理する顧客コード番号が印字され,発行者である大塚包装の名称が印刷された同社の既製品であるから,偽造は容易でなく,偽造の事実はない。
 なお,被告は,百壱五訂正シールの使用状況写真(乙12,28)の撮影日時によって,本件商標の使用時期を証明しているものではなく,本件審決も撮影日時に依拠しているものではない。

2 徳島バスの後部広告について
 被告は,徳島バスの後部広告の使用状況写真(乙16,18)の撮影日時によって,本件商標の使用時期を証明しているものではなく,本件審決も撮影日時に依拠しているものではない。
 そして,徳島バス作成の証明書(乙27)によれば,徳島バスはJA徳島市佐那河内支所の依頼に基づき,本件商標である「ももいちご/百壱五」が右下に表示された広告(乙16,18と同一のもの)の掲出された高速バスを,計5台,平成22年12月26日から平成23年3月25日,同年12月26日から平成24年3月25日,同年12月26日から平成25年3月25日の各期間,徳島駅から大阪駅間で運行していたことが明らかである。
 したがって,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において本件商標が使用されていたことは明らかであり,本件審決の判断に誤りはない。

第4 当裁判所の判断
1 証拠(甲1,2,5,6,乙2,7〜12,13の1〜4,乙16,17の1・2,乙18,22,23,27,28)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1) 被告は,JA徳島市佐那河内支所の組合員であり,佐那河内村産の「ももいちご商品」を生産している。被告及びJA徳島市の他の組合員が生産した「ももいちご商品」には,「ももいちご商標」が付され,平成5年から販売されている。なお,JA徳島市佐那河内支所は,「ももいちご商品」の姉妹品として,「さくらももいちご」の商標を付したいちごをも生産・販売している。
 本件商標の商標権者である被告は,JA徳島市佐那河内支所に設立され,JA徳島市組合員で構成された「ももいちご部会」の元部会長であるが,JA徳島市佐那河内支所やももいちご部会が法人格を有しないことから,ももいちご部会の中心メンバーであった被告の名義で本件商標の設定登録がされた。
(2) 被告は,本件商標について,JA徳島市に対し,平成22年4月1日付けで,日本国内において,本件商標の存続期間中(平成31年10月8日まで),「ももいちごに標章を付し販売する行為」につき,通常使用権を許諾する旨の証書を作成した。もっとも,被告は,JA徳島市に対しては,当初から,本件商標につき口頭で使用許諾をしていた(甲5)。
 また,被告は,本件商標につき,フルーツキングミズノ及び株式会社ともだに対し,平成20年4月1日付けで,日本国内において,同日から平成24年3月31日まで,「ももいちごに標章を付し販売する行為」につき,通常使用権を許諾する旨の証書をそれぞれ作成し,両者に対して本件商標について使用許諾をしている(甲5)。
(3) A は,平成22年7月27日,特許庁に対し,本件商標の不使用を理由に本件商標登録の取消しを求めて審判を請求し(以下「第1次審判請求」という。),特許庁は,同請求を取消2010-300840号事件として審理し,平成23年6月21日,本件商標登録を取り消す旨の審決(乙7。以下「第1次審決」という。)をし,その謄本は同年6月30日,被告に送達された。
 第1次審決の理由の要旨は,①「ももいちご商品」の包装箱の上蓋に,左上に横書きの「佐那河内の」,中央に左上から右下に向かって赤字で大きく「ももいちご」,右下に「JA徳島市」の各文字が,また,包装箱の側面に横書きの「佐那河内の」,赤字で大きく「ももいちご」とそれぞれ表記されているものがあるところ,このうち「ももいちご」の平仮名は「ももいちご商品」について使用されている商標(以下「使用商標1」という。)と認められるが,称呼及び観念の異なる「ももいちご」及び「百壱五」の文字を二段に表してなる本件商標と,その構成中の「ももいちご」の文字からなる使用商標1とは,社会通念上同一の商標と認めることはできない,②「ももいちご商品」の包装箱の側面又は商品タグに,上から,緑色で「佐那河内の」,赤字で大きく「ももいちご」,緑色で小さく「登録第4323578号」,「平成10年商標登録願第30450号」,右下に小さく「百壱五」とそれぞれ表記されているものがあるところ,このうち「ももいちご」の平仮名及び「百壱五」の漢字は,いずれも「ももいちご商品」について使用されている商標(以下,これらの平仮名と漢字を併記してなる商標を「使用商標2」という。)と認められ,使用商標2は,文字の大きさなどその構成態様は異なるものの,本件商標と社会通念上同一の商標と認めることができるが,第1次審判請求の登録前3年以内に使用していたと認めるに足りる証拠は見いだせない,というものであった。
(4) 被告は,第1次審判請求の登録前3年以内に使用商標2を使用していたと認めるに足りる証拠は見いだせないとした第1次審決には誤りがあるとして, A を相手方として第1次審決の取消しを求める審決取消訴訟を当庁に提起し,原告は, Aを補助するために同訴訟に補助参加した。
 当庁は,平成24年2月21日,被告から本件商標につき通常使用権の設定を受けたフルーツキングミズノが,少なくとも第1次審判請求の登録日(平成22年8月16日)前3年以内である平成19年,平成20年,平成21年の各12月31日に,本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標2を,指定商品「いちご」につき使用していたものと認められるから,同使用の事実が認められないとした第1次審決は誤りであるとして,第1次審決を取り消す旨の判決を言い渡し,同判決は,その後,確定した(乙7,8)。
(5) 特許庁は,前記(4)のとおり,第1次審決を取り消すとの判決言渡しがあったことから,第1次審判請求についてさらに審理の上,平成24年9月6日,前記(4)の判決と同旨の判断を行い,本件商標登録は,商標法50条の規定により取り消すことができない旨の審決をした(乙9)。
(6) 被告及びJA徳島市佐那河内支所は,特許庁が,平成23年6月21日,本件商標登録を取り消す旨の第1次審決をし,その中で,「ももいちご」の文字のみからなる使用商標1の使用では本件商標の使用とは認められないと判断したことを受け,「ももいちご商品」の包装箱で使用商標2の表記がされておらず,使用商標1の表記のみがされているものについては,薄いピンク地の長方形の紙に,上段に「ももいちご」,下段に「百壱五」といずれも黒文字を二段に書してなる別紙1の「百壱五訂正シール」を貼付することとし,同シール1万枚の作成を大塚包装に発注し,同年11月17日,同社から納品を受けた(乙11,13の1〜4)。JA徳島市佐那河内支所は,その後,同年12月頃から,使用商標1の表記のみがされている「ももいちご商品」の包装箱の在庫分の側面の底面側の右下隅部に百壱五訂正シールを貼付して,「ももいちご商品」を販売した(乙12)。
(7) 被告及びJA徳島市佐那河内支所は,広告代理店である本州堂に対して,徳島バスの後部形状シート広告に「ももいちご商品」の広告を依頼し,平成22年12月26日から平成23年3月25日,同年12月26日から平成24年3月25日,同年12月26日から平成25年3月25日の各期間,徳島バスが定期便として運行するJR徳島駅と大阪間の高速バスのうち計5台について,その後部窓ガラス下の後部形状シート広告に,別紙2のとおり,白地で横長の長方形状の枠を設け,その中央上段に横書きで黒文字の行書体で「徳島 佐那河内産」,その下部に赤文字の手書き調で大きく左下から右上にかけて緩やかに傾斜させた横書きで「ももいちご」又は「さくらももいちご」,さらに右下にやや小さくゴシック体で「JA徳島市」,その右にやや大きく行書体で「百壱五」,さらにその上部に小さくルビのように「ももいちご」と表記されていた(乙17の1・2,乙27)。

2 前記1の認定事実によれば,被告から本件商標につき通常使用権の設定を受けたJA徳島市の佐那河内支所が,本件審判の請求の登録日(平成24年12月13日)前3年以内である平成21年12月13日から平成24年12月13日までの間のうち,少なくとも,平成23年12月頃,指定商品の「いちご」に該当する「ももいちご商品」の包装箱に前記1(6)の百壱五訂正シールを貼付して販売し,さらに,平成22年12月26日から平成23年3月25日,同年12月26日から平成24年3月25日の各期間,徳島バスの後部形状シートに同じく指定商品の「いちご」である「ももいちご商品」及び「さくらももいちご」に関して前記1(7)の広告をしたことが認められる。
 そして,前記1(6)の百壱五訂正シール(別紙1)の「ももいちご」の平仮名と「百壱五」の漢字を二段に書した商標は,本件商標と社会通念上同一の商標と認めるのが相当であり,これを「ももいちご商品」の包装箱に貼付する行為は,商標法2条3項1号の「商品の包装に標章を付する行為」に当たるということができ,また,前記1(7)の徳島バスの後部広告(別紙2)のうち,「ももいちご」の平仮名と「百壱五」の漢字を二段に書した商標は,本件商標と社会通念上同一の商標と認めるのが相当であり,これを「ももいちご商品」又は「さくらももいちご」に関する広告として展示することは,同法2条3項8号の「商品に関する広告に標章を付して展示する行為」に当たるということができる。

3 原告の主張について
(1) 百壱五訂正シールについて
ア 原告は,百壱五訂正シールは,白地に黒文字で「百壱五」と書かれ「ももいちご」とルビの振られたものであるところ,化粧箱の「ももいちご商品」が高級品として高額で販売されていることからすれば,訂正したことが目立つ百壱五訂正シールが化粧箱側面に貼られて販売されることは考え難く,実際は,被告及びJA徳島市佐那河内支所は,百壱五訂正シールを注文したが,地の色を化粧箱の側面と同色にしなかったという発注ミスをしたため,百壱五訂正シールを貼付せず,古い化粧箱のまま在庫分がなくなるまで,販売を続けたものと推測される旨主張する。
 しかし,前記1(6)認定のとおり,被告及びJA徳島市佐那河内支所は,「ももいちご」の文字のみからなる使用商標1の使用では本件商標の使用とは認められないとの平成23年6月21日の第1次審決の判断を受けて,「ももいちご商品」の包装箱で使用商標1の表記のみがされているものについては,「百壱五訂正シール」を貼付することとし,同年11月17日に同シール1万枚の作成を大塚包装に発注してその納品を受けたのであるから,そのような状況下において,百壱五訂正シールの地の色が,包装箱の地の色と多少異なるからといって,包装箱の側面の底面側の右下隅にそれ程の面積をとるものでもない百壱五訂正シールを貼付することを中止して,本件商標と社会通念上同一とは認められない使用商標1が表記された包装箱のまま在庫分がなくなるまで販売を続けたと推認することは著しく不合理であって,原告の上記主張は採用することができない。
イ なお,原告は,本件商標の通常使用権者であると被告が主張する株式会社ともだが,平成25年2月25日時点で,側面に「登録4323578号/平成10年商標登録願30450号」と表示のあるタイプで,かつ,百壱五訂正シールが貼付されていない化粧箱を写真掲載してネットショップで「ももいちご商品」を販売していること,同じく本件商標の通常使用権者であると被告が主張するフルーツキングミズノにおける平成25年2月7日の販売状況の写真からは,新たな化粧箱の使用も,化粧箱に百壱五訂正シールが貼付されていることも,いずれも確認できないことからも,百壱五訂正シールが貼られた事実はないことが裏付けられる旨主張する。
 しかし,株式会社ともだが,ホームページ上の「ももいちご商品」のサンプル写真を差し替えていないからといって,平成23年12月頃に実際に販売されていた「ももいちご商品」の包装箱に百壱五訂正シールが貼付されていなかったことの証左となるものではないし,フルーツキングミズノにおける平成25年2月の販売状況の写真中,包装箱の百壱五訂正シールの箇所が写っていないためにその貼付を確認できないからといって,平成23年12月頃に「ももいちご商品」の包装箱に百壱五訂正シールが貼付されていなかったことが裏付けられるものでもない。したがって,原告の上記主張も採用することができない。
ウ さらに,原告は,百壱五訂正シールの送り状(乙13の1)は,扱者印も押されておらず,発行者が不明であって,誰でもパソコンのワープロソフトで作成し,日付けも自由に付すことができるものであり,何の証拠力もない旨主張する。
 しかし,百壱五訂正シールの送り状(乙13の1)は,大塚包装の本店所在地及び社名その他の記載が不動文字で印刷された,同社が独自に作成した送り状であると考えられ,その記載内容に格別不自然な点は見当たらない上,送り状とともに送付された複写式の受領書(乙13の2)には,被告によれば,受領印としてJA徳島市佐那河内支所職員の「 B 」の押印が確認できるというのであるから,上記各書証によって,百壱五訂正シールの納品及び受領の事実を優に認定することができる。したがって,原告の上記主張も理由がない。
(2) 徳島バスの後部広告について
ア 原告は,本州堂の請求書及び領収書(乙17の1・2)から,JA佐那河内支所ハウス苺部会が何らかの「ももいちご商品」の広告を本州堂に依頼し,平成23年12月25日から平成24年3月25日までの間,徳島バスの後部形状シートの形で宣伝したものと思われるが,上記領収書及び請求書からは,そこに本件商標が使われていたかどうかは判断できず,使用状況写真(乙16,18)の広告デザインは,上記領収書及び請求書のものとは,別の契約期間の異なる契約により新たに製作されたものであって,徳島バスの後部広告に関する上記証拠では,本件審判の請求の登録日前3年以内に日本国内において商標権者又は通常使用権者のいずれかが,本件商標の使用をしていることを証明したことにはならない旨主張する。
 しかし,本件において,原告主張事実をうかがわせるに足りる証拠はなく,証拠(乙16,17の1・2,乙18,27)及び弁論の全趣旨によれば,前記1(7)の事実を認定することができるのであって,同認定を覆すに足りる証拠はない。原告の上記主張は採用することができない。
イ 原告は,徳島バスの証明書(乙27)は,本件審判の段階では提出されなかった証拠であるから,被告が本件訴訟の段階でこれを提出することは認められない旨主張する。
 しかし,商標登録の不使用取消審判で審理の対象となるのは,その審判請求の登録前3年以内における登録商標の使用の事実の存否であるが,その審決取消訴訟においては,同事実の立証は,事実審の口頭弁論終結時に至るまで許される(最高裁判所平成3年4月23日第三小法廷判決・民集45巻4号538頁参照)。したがって,本件において,乙27が本件審判の段階で提出されなかった証拠であったとしても,これを本件訴訟の段階で新たに提出することは許されるのであって,原告の上記主張は理由がない。
 さらに,原告は,本州堂の請求書及び領収書(乙17の1・2)の広告期間の日付が平成23年12月26日から平成24年3月25日となっているのに対して,徳島バスの証明書(乙27)に記載された運行期間は平成23年12月25日から平成24年3月25日であって,上記請求書及び領収書の記載とは,期間及び始期について,それぞれ1日のそごがあるから,徳島バスの証明書(乙27)は,偽装されたものであり証拠力がない旨主張する。
 しかし,乙27には一見して徳島バスの会社印及び代表者印と思われる印鑑が押捺され,書面の体裁に格別不自然な点が見当たらないこと及び弁論の全趣旨によれば,乙27は真正に成立したものと認められる。原告において乙27が偽装であることの根拠として主張する上記の点は,乙27の成立の真正を覆し,またはその証明力を減殺するに足りる事情とは認められず,他に乙27が偽造ないし偽装されたものであることを認めるに足りる証拠はない。したがって,原告の上記主張も理由がない。
(3) 原告は,百壱五訂正シールの使用状況写真(乙12,28)及び徳島バスの後部広告の使用状況写真(乙16,18)は,撮影日及び撮影者が特定されておらず,証拠力がない旨主張する。
 しかし,被告が証拠説明書において説明しているとおり,上記各写真自体は,いずれも基準時(本件審判請求の登録時)以後に撮影されたものであって,その撮影日時によって本件商標の使用時期を立証しようとするものではなく,百壱五訂正シールが包装箱に貼付されていた態様や徳島バスの後部広告の態様を立証趣旨とするものであることは明らかであり,また,本件では,上記各写真以外の証拠(乙13の1〜4,乙17の1・2,乙27)及び弁論の全趣旨によって,上記基準時以前において,百壱五訂正シールが包装箱に貼付され,徳島バスに後部広告がされていたことが認められる。したがって,原告の上記主張には理由がない。

4 結論
 以上の次第であるから,本件商標の通常使用権者であるJA徳島市佐那河内支所は,本件審判請求の登録前3年以内に,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を指定商品「いちご」につき使用していたものと認められる。したがって,本件審決は相当であって,原告主張の取消事由は理由がなく,原告の本訴請求は棄却されるべきものである。
 よって,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 富田 善範
裁判官 大鷹 一郎
裁判官 田中 芳樹

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