平成25年12月10日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成25年(行ケ)第10108号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成25年11月21日
判決 原告X 訴訟代理人弁理士廣江武典 同西尾務 同 服部素明 同橋本哲同 谷口直也
同 廣江政典
被 告 特許庁長官 指定代理人 藤原直欣
同 同 同
主文
 1 原告の請求を棄却する。
中村達之 窪田治彦 山田和彦
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及ひ上告受理の申立てのための付加期間を3 0日と定める。
 事実及ひ理由
第1 請求
 特許庁か不服2011-18759号事件について平成24年12月3日に した審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等
(1) A は,発明の名称を「直線運動を回転運動に変換する装置」とする発明 について,平成13年(2001年)1月2日(優先権主張日平成11年( 1999年)12月30日,優先権主張国スウェーテン王国)を国際出願日 とする特許出願(2001-549889号。以下「本願」という。)をし た。
その後,原告は, A から,本願に係る特許を受ける権利の譲渡を受け,平 成18年9月12日,その旨の出願人変更届を提出した。
 原告は,平成22年4月26日付けの拒絶理由通知を受けた後,更に平成 23年1月4日付けの拒絶理由通知を受けたため,同年4月8日付けて本願 の願書に添付した明細書の全文(特許請求の範囲を含む。)を変更する手続 補正(甲10)をしたか(以下,この手続補正後の明細書を,図面を含めて 「本願明細書」という。),同年5月13日付けの拒絶査定を受けた。原告は,同年8月30日,拒絶査定不服審判を請求するとともに,同日付 けて特許請求の範囲を変更する手続補正(甲5)(以下「本件補正」という。) をした。(2) 特許庁は,上記請求を不服2011-18759号事件として審理を行 い,平成24年12月3日,本件補正を却下した上て,「本件審判の請求は, 成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,同月18日, その謄本か原告に送達された。(3) 原告は,平成25年4月16日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提 起した。2 特許請求の範囲の記載 (1) 本件補正前のもの
 本件補正前の特許請求の範囲(平成23年4月8日付け手続補正による補 正後のもの。以下同し。)の請求項1の記載は,次のとおりてある(以下,同請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。
「【請求項1】 直線運動を回転運動に変換する装置てあって,1つ又はそ れ以上のヒストン・シリンター機構(1)を有し,
 前記ヒストン・シリンター機構(1)はそれそれ,
 1つのシリンタ(2)と,
 前記シリンター内に可動に配置された直線運動用1つのヒストン(3)と, 前記ヒストンと回転運動用のクランクシャフト(4)を連結する1つのコネ クティンクロット(5)と,
 を有する装置において,
 それそれの前記ヒストンにおいて,それそれの移動可能な線(10)から或 距離(F)の変位をもって前記クランクシャフトの回転中心か配置され, そして,前記クランクシャフトの長手方向に前記装置を見た場合,それそれ の前記ヒストンの移動線に関して前記クランクシャフトの回転中心の反対側 に位置する前記クランクシャフトの部分か,それそれの前記ヒストンの移動 線と平行て且つそれそれの前記シリンター(2)から離れる方向の運動成分 (13)を有するように,前記クランクシャフトか回転方向(14)を有す ることを特徴とする装置。」
(2) 本件補正後のもの 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりてある(以 下,同請求項1に係る発明を「本願補正発明」という。なお,下線部は,本 件補正による補正箇所てある。)。
「【請求項1】 直線運動を回転運動に変換する装置てあって,1つ又はそ れ以上のヒストン・シリンター機構(1)を有し, 前記ヒストン・シリンター機構(1)はそれそれ, 1つのシリンター(2)と, 前記シリンター内に可動に配置された直線運動用1つのヒストン(3)と,
前記ヒストンと回転運動用のクランクシャフト(4)を連結する1つのコネ クティンクロット(5)と,を有する装置において, それそれの前記ヒストンにおいて,それそれの移動可能な線(10)から或 距離(F)の変位をもって前記クランクシャフトの回転中心か配置され, そして,前記クランクシャフトの長手方向に前記装置を見た場合,それそれ の前記ヒストンの移動線に関して前記クランクシャフトの回転中心の反対側 に位置する前記クランクシャフトの部分か,それそれの前記ヒストンの移動 線と平行て且つそれそれの前記シリンター(2)から離れる方向の運動成分 (13)を有するように,前記クランクシャフトか回転方向(14)を有し, 変位距離(F)か0.01をヒストン行程(SL)の長さに乗した値以上て あり,0.9をヒストン行程(SL)の長さに乗した値未満てある, ことを特徴とする装置。」
3 本件審決の理由の要旨
(1) 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりてある。要するに, 本願補正発明は,本願の優先権主張日前に頒布された刊行物てある実願昭5 8-21666号(実開昭59-127834号)のマイクロフィルム(甲 1。以下「引用文献」という。)に記載された発明に基ついて当業者か容易 に発明をすることかてきたものてあって,特許法29条2項の規定により特 許出願の際独立して特許を受けることかてきないから,本件補正は却下すへ きものてあり,また,本願発明は,引用文献に記載された発明てあるから, 同条1項3号の規定により特許を受けることかてきないというものてある。(2) 本件審決か認定した引用文献に記載された発明(以下「引用発明」とい う。),本願補正発明と引用発明の一致点及ひ相違点は,以下のとおりてあ る。ア 引用発明

 「直線運動を回転運動に変換する装置てあって,1つのヒストン・シリ ンター機構を有し,
 ヒストン・シリンター機構は,
 1つのシリンター12と,
 シリンター12内に可動に配置された直線運動用1つのヒストン10と, ヒストン10と回転運動用のクランクシャフト18を連結する1つのコネ クティンクロット16と,
を有する装置において, ヒストン10において,ヒストン10か沿って往復動する中心線A-Aか ら,距離e2の偏心をもってクランクシャフト18の回転中心か配置され, そして,クランクシャフト18の長手方向に装置を見た場合,ヒストン1 0の沿って往復動する中心線A-Aに関してクランクシャフト18の回転 中心の反対側に位置するクランクシャフト18の部分か,ヒストン10の 沿って往復動する中心線A-Aと平行て且つそれそれのシリンター12か ら離れる方向の運動成分を有するように,クランクシャフト18か回転方 向Rを有し,偏心距離e2か,約1~3mm程度てある装置。」
イ 本願補正発明と引用発明の一致点 「直線運動を回転運動に変換する装置てあって,1つ又はそれ以上のヒス トン・シリンター機構を有し,
 前記ヒストン・シリンター機構はそれそれ,
 1つのシリンターと,
 前記シリンター内に可動に配置された直線運動用1つのヒストンと, 前記ヒストンと回転運動用のクランクシャフトを連結する1つのコネクテ ィンクロットと,
を有する装置において,
それそれの前記ヒストンにおいて,それそれの移動可能な線から或距離の 変位をもって前記クランクシャフトの回転中心か配置され, そして,前記クランクシャフトの長手方向に前記装置を見た場合,それそ れの前記ヒストンの移動線に関して前記クランクシャフトの回転中心の反 対側に位置する前記クランクシャフトの部分か,それそれの前記ヒストン の移動線と平行て且つそれそれの前記シリンターから離れる方向の運動成 分を有するように,前記クランクシャフトか回転方向を有する装置」 てあ る点。ウ 本願補正発明と引用発明の相違点
 本願補正発明においては,変位距離(F)か0.01をヒストン行程(SL)の長さに乗した値以上てあり,0.9をヒストン行程(SL)の長 さに乗した値未満てあるのに対し,引用発明においては,偏心距離e2か, 約1~3mm程度てある点。第3 当事者の主張
1 原告の主張
(1) 取消事由1(本願補正発明の容易想到性に係る判断の誤り) ア 引用発明の認定の誤り 引用文献には,「実用新案登録請求の範囲」に「ヒストンヒンの中心線 をシリンタの中心線からスラスト側に偏位させると共に,クランク軸の中 心線を上記シリンタ中心線に対し反スラスト側に偏位させたことを特徴と するエンシン」か記載されている。
 そして,引用文献の「考案の詳細な説明」には,「そこて,従来ヒスト ンスラッヒンクを低減するために,ヒストンヒン14の中心線B-Bを, シリンタ12の中心線A-Aから偏位させることか試みられている。これ は,往復動エンシンの機構上不可避的に発生するヒストンスラッヒンクの タイミンクを,シリンタ内の燃焼カス圧力か最高値に達するタイミンクから外して,衝突力を小さくしようとしたものてあり,それなりの効果は収 めているか,なお十分とは謂い難い。即ち,図中点線て示したように,従 来の装置ては,クランクシャフト18′の中心線か,シリンタ中心線A- A上にくるように配設され,コネクティンクロット16か,図示のように シリンタ中心線A-Aに対して略平行する側圧セロの位置にあるときのク ランク角はβてあって,続いて発生するヒストンスラッヒンクのタイミン クは,第2図に例示したシリンタ内圧力波形における最高圧力値からのす れか小さい。」(明細書4頁~5頁),「これに対し本考案によれは,ヒ ストンヒン14に上記偏心量e1を与えるたけてなく,クランクシャフト 18にも偏心量e2か与えられているのて,第1図の実線て示すように, ヒストン10に対する側圧かセロとなるコネクティンクロット16の位置 てのクランク角αか従来より著しく大きくなり,従って,続いて起るヒス トンスラッヒンクのタイミンクか第2図の圧力線図てヒーク値から大巾に すれ,低いカス圧の下てヒストンスラッヒンクか発生する。これにより, ヒストンスラッヒンク時の衝突力を著しく小さくすることかてき,それた けエンシンの振動,騒音を減少することかてきるのてある。なお,第2図 において,縦軸はシリンタ内の圧力P(kg/cm2)を,又横軸はクラ ンク角R(deg)を示す。」(同5頁~6頁)との記載かある。この記 載によれは,引用文献記載のエンシンは,「ヒストンヒンの中心線をシリ ンタの中心線からスラスト側に偏位させる」構成たけては解決てきない「 ヒストンスラッヒンクを低減することにより,エンシン騒音の発生を効果 的に抑止する」ことを課題とし,その課題を解決するため必須の構成とし て,「ヒストンヒンの中心線をシリンタの中心線からスラスト側に偏位さ せる」構成と共に,「クランク軸の中心線を上記シリンタ中心線に対し反 スラスト側に偏位させる」構成を採用し,これにより「ヒストンスラッヒ ンク時の衝突力を著しく小さくすることかてき,それたけエンシンの振動,騒音を減少することかてきる」という作用効果を発揮するものといえる。
 一方て,引用文献には,「クランク軸の中心線を上記シリンタ中心線に対し反スラスト側に偏位させる」構成たけて上記作用効果を発揮するとの記載や示唆はない。
 そうすると,引用文献には,「ヒストンヒンの中心線をシリンタの中心線からスラスト側に偏位させる」構成及ひ「クランク軸の中心線を上記シリンタ中心線に対し反スラスト側に偏位させる」構成の両構成を備えて初めて上記作用効果を発揮することか技術思想として開示されており,引用文献記載のエンシンにおける「クランク軸の中心線を上記シリンタ中心線に対し反スラスト側に偏位させる」構成は,「ヒストンヒンの中心線をシリンタの中心線からスラスト側に偏位させる」構成を前提とするものといえるから,引用文献の記載事項から「クランク軸の中心線を上記シリンタ中心線に対し反スラスト側に偏位させる」構成のみを有するエンシンを取り出すことには阻害要因かあるというへきてある。
しかるところ,本件審決か認定した引用発明のうち,「ヒストン10に おいて,ヒストン10か沿って往復動する中心線A-Aから,距離e2の 偏心をもってクランクシャフト18の回転中心か配置され,そして,クラ ンクシャフト18の長手方向に装置を見た場合,ヒストン10の沿って往 復動する中心線A-Aに関してクランクシャフト18の回転中心の反対側 に位置するクランクシャフト18の部分か,ヒストン10の沿って往復動 する中心線A-Aと平行て且つそれそれのシリンター12から離れる方向 の運動成分を有するように,クランクシャフト18か回転方向Rを有し」 との部分は,引用文献の記載事項から「クランク軸の中心線を上記シリン タ中心線に対し反スラスト側に偏位させる」構成のみを取り出し,「ヒス トンヒンの中心線をシリンタの中心線からスラスト側に偏位させる」構成 を捨象するものてあるから,誤りてある。
 したかって,本件審決における引用発明の認定に誤りかある。イ 一致点の認定の誤り及ひ相違点の看過
前記アのとおり,本件審決か認定した引用発明のうち,「ヒストン10 において,ヒストン10か沿って往復動する中心線A-Aから,距離e2 の偏心をもってクランクシャフト18の回転中心か配置され,そして,ク ランクシャフト18の長手方向に装置を見た場合,ヒストン10の沿って 往復動する中心線A-Aに関してクランクシャフト18の回転中心の反対 側に位置するクランクシャフト18の部分か,ヒストン10の沿って往復 動する中心線A-Aと平行て且つそれそれのシリンター12から離れる方 向の運動成分を有するように,クランクシャフト18か回転方向Rを有し」 との部分は誤りてあるから,本願補正発明と引用発明か「それそれの前記 ヒストンにおいて,それそれの移動可能な線から或距離の変位をもって前 記クランクシャフトの回転中心か配置され,そして,前記クランクシャフ トの長手方向に前記装置を見た場合,それそれの前記ヒストンの移動線に 関して前記クランクシャフトの回転中心の反対側に位置する前記クランク シャフトの部分か,それそれの前記ヒストンの移動線と平行て且つそれそ れの前記シリンターから離れる方向の運動成分を有するように,前記クラ ンクシャフトか回転方向を有する装置」てある点て一致するとした本件審 決における本願補正発明と引用発明の一致点の認定にも誤りかある。
 そうすると,上記部分は,本願補正発明と引用発明の一致点てはなく, 相違点として認定すへきあったのに,本件審決には,この相違点を看過し た誤りかある。
ウ 容易想到性の判断の誤り
 前記アのとおり,引用文献記載のエンシンは,「ヒストンスラッヒンク を低減することにより,エンシン騒音の発生を効果的に抑止する」ことを 課題とし,その課題を解決するため必須の構成として,「ヒストンヒンの中心線をシリンタの中心線からスラスト側に偏位させる」構成と共に,「クランク軸の中心線を上記シリンタ中心線に対し反スラスト側に偏位させる」構成を採用したものてあるから,引用文献の記載事項から「クランク軸の中心線を上記シリンタ中心線に対し反スラスト側に偏位させる」構成のみを有するエンシンを取り出すことには阻害要因かあり,前記イの相違点に係る本願補正発明の構成を当業者か容易に想到することかてきたものとはいえない。
さらには,本願の出願当初の明細書(甲4)には,本願補正発明の解決 すへき課題として,「特にヒストン燃焼機関において直線運動を回転運動 に変換する装置てあって,たとえは膨張している燃焼カス等の,ヒストン に作用する力か最大になるヒストンの膨張行程の段階において,直線運動 をしているヒストンから回転運動をしているクランクシャフトにコネクテ ィンクロットを介して力か順調に伝達される装置を提供することに有る。」 (段落【0004】),本願補正発明の格別な効果として,「これにより, クランクシャフトは,ヒストンか上死点にある時,既にヒストンの移動線 に対して傾斜している。上死点ては,ヒストンにおけるコネクティンクロ ットの連結およひ回転の点,クランクシャフトにおけるコネクティンクロ ットの連結およひ回転の点,およひクランクシャフトの回転中心は全て同 一線に沿って位置する。しかし,ヒストンか僅かに上死点から移動すると すくに,クランクシャフトにおけるコネクティンクロットの連結点かクラ ンクシャフトと共に回転することにより当初はヒストンの移動線から離れ る方向に移動するのて,コネクティンクロットは上死点における位置に対 して傾斜する。このように上死点における位置に関して付与されるコネク ティンクロットの一定傾斜度により,クランクシャフトの回転中心か変位 していない従来の対応する装置の場合と比較して,本発明による装置は, 初期にこの傾斜度を得るのに上死点からのヒストンの少ない移動を要す る。膨張行程中に燃焼カスかヒストンに及ほす効果に関して前記したこと に従い,より短い必要ヒストン運動は,上死点における位置に関して与え られたコネクティンクロットの前記一定傾斜度により,本発明による装置 ては従来の装置より高い圧力かシリンタ内に存在し,従って,より大きい 力かヒストンに作用することを意味する。本発明による装置てはヒストン か移動する時,クランクシャフトの一定角度偏差か上死点からのヒストン のより長い移動に対応する。総括すると,これか意味することとして,点 火の直後に,ヒストンからの力の順調な伝達の開始に帰着し得る傾斜度か ヒストンの比例して小さい移動に対して得られること,およひ,膨張行程 中に,ヒストンの一定移動量かクランクシャフトのより小さい角度偏差に 帰結することて歯車減か得られ,それにより膨張行程全体において力の より順調な伝達か得られる。」(段落【0005】)との記載ある。
 本願補正発明の上記のような課題と格別の効果は,引用文献に記載かな い。特に,本願補正発明の格別の効果てある「ヒストンか僅かに上死点か ら移動するとすくに,クランクシャフトにおけるコネクティンクロットの 連結点かクランクシャフトと共に回転することにより当初はヒストンの移 動線から離れる方向に移動する」との点は,引用文献に記載かないから, 本願補正発明は,当業者か引用文献に記載された発明に基ついて容易に想 到することかてきたものとはいえない。
 したかって,本願補正発明は当業者か引用文献に記載された発明に基つ いて容易に想到することかてきたとした本件審決の判断は誤りてある。エ 小括
 以上によれは,本願補正発明か当業者か引用文献に記載された発明に基 ついて容易に想到することかてきたことを理由に特許出願の際独立して特 許を受けることかてきないとして本件補正を却下した本件審決の判断は, 誤りてある。
(2) 取消事由2(本願発明と引用発明との同一性に係る判断の誤り) 前記(1)アのとおり,本件審決か認定した引用発明のうち,「ヒストン10 において,ヒストン10か沿って往復動する中心線A-Aから,距離e2の 偏心をもってクランクシャフト18の回転中心か配置され,そして,クラン クシャフト18の長手方向に装置を見た場合,ヒストン10の沿って往復動 する中心線A-Aに関してクランクシャフト18の回転中心の反対側に位置 するクランクシャフト18の部分か,ヒストン10の沿って往復動する中心 線A-Aと平行て且つそれそれのシリンター12から離れる方向の運動成分 を有するように,クランクシャフト18か回転方向Rを有し」との部分は, 引用文献の記載事項から「クランク軸の中心線を上記シリンタ中心線に対し 反スラスト側に偏位させる」構成のみを取り出し,「ヒストンヒンの中心線 をシリンタの中心線からスラスト側に偏位させる」構成を捨象するものてあ るから,誤りてある。
 そうすると,引用文献記載のエンシンは,上記部分の構成を備えたものと はいえないから,この点において,本願発明と同一てあるとはいえない。
 したかって,本願発明か引用文献に記載された発明と同一てあるとの本件審決の判断は誤りてある。 (3) まとめ
 以上のとおり,本件審決には,本願補正発明の容易想到性に係る判断を誤 って,本件補正を却下した誤りかあり,また,本願発明は引用文献に記載さ れた発明と同一てあると判断した誤りかある。
 したかって,本件審決は,違法てあるから,取り消されるへきてある。2 被告の主張
(1) 取消事由1に対し
ア 本件補正後の請求項1によれは,本願補正発明は,「移動線(10)」を基準として「変位距離(F)」の位置に「クランクシャフトの回転中心」かあるというものてあり,この変位距離(F)は,一端を移動線(10), 他端をクランクシャフトの回転中心として規定される距離てあること,こ の移動線(10)は,変位距離(F)の一端を規定するためのものてある とともにヒストンの移動線(10)てあって,「運動成分(13)を有す る」「クランクシャフトの部分」に対して,「クランクシャフトの回転中 心」の反対側に位置することか分かる。
 一方て,本件補正後の請求項1を全体としてみても,本願補正発明の移動線(10)か,装置のとこに位置する線てあるかについては,具体的に特定されていないか,本願明細書の段落【0011】及ひ【0012】の記載を参酌すると,「ヒストン3」か「沿って移動」する「シリンターの縦中心線」又は「シリンターの長手方向中心線」てあることか具体的に想定されていることを理解てきる。
しかるところ,引用文献には,「そこて,従来ヒストンスラッヒンクを 低減するために,ヒストンヒン14の中心線B-Bを,シリンタ12の中 心線A-Aから偏位させることか試みられている。…それなりの効果は収 められているか,なお十分とは謂い難い。…これに対し本考案によれは, ヒストンヒン14に上記偏心量e1を与えるたけてなく,クランクシャフ ト18にも偏心量e2か与えられているのて…ヒストンスラッヒンク時の 衝突力を著しく小さくすることかてき,それたけエンシンの振動,騒音を 減少することかてきるのてある。」(明細書4頁13行~6頁3行)との 記載かある。この記載によれは,引用文献には,シリンタ中心線を一端と し他端をヒストンヒンとする「従来技術」の「偏心量e1」(「距離e1」) に係る技術思想とシリンタ中心線を一端とし他端をクランクシャフトの回 転中心とする「本考案」の「偏心量e2」(「距離e2」)に係る技術思想 とかそれそれを独立した技術思想として記載されていることを把握するこ とかてきる。そうすると,引用文献の記載事項から「距離e2」に係る技術思想を独 立して取り出すことに阻害要因かあるとはいえす,本件審決の引用発明の 認定及ひこれに基つく一致点の認定に誤りはないから,本件審決における 引用発明の認定の誤り,一致点の認定の誤り及ひ相違点の看過をいう原告 の主張は,理由かない。イ(ア) 乙1(「熱機関体系第6巻 ティーセル機関[1]」昭和35年1 月31日5版発行)には,小型車両用ティーセル機関の一般的な寸法例 として,110mm及ひ140mmのヒストン行程か記載されている。この ヒストン行程の寸法を基に,本願補正発明の「変位距離(F)か0.0 1をヒストン行程(SL)の長さに乗した値以上てあり,0.9をヒス トン行程(SL)の長さに乗した値未満てある」という発明特定事項に 照らして,変位距離を算出すると,以下のとおりとなる。
 「110mm」×「0.01」=1.1mm 「140mm」×「0.01」=1.4mm 「110mm」×「0.9」=99mm 「140mm」×「0.9」=126mm(イ) 本願補正発明の「0.01」の下限値により算出された変位距離1. 1mm及ひ1.4mmは,引用文献の「e2は約1~3mm程度」(明細書 3頁14行)に整合するものてあるから,一般的なヒストン行程の寸法 を採用する引用発明における変位距離(e2)は,本願補正発明と何ら 異なるところかない。 ところて,本願明細書の段落【0004】には,本願補正発明の課題 について,「本発明の目的は,直線運動を回転運動に変換する装置てあ って,特にヒストン燃焼機関において,直線運動をしているヒストンか ら回転運動をしているクランクシャフトへのコネクティンクロットを介 した好適な力の伝達か,力,たとえは膨張している燃焼カス等,かヒストンに対して最大限に作用する時のヒストンの膨張工程の位相におい て,好適に伝達される装置を提供することてある。」との記載かある。 しかるに,最大限に作用する時の力を含め膨張行程に作用する力を好 適に伝達するように装置を構成することは,ヒストンを用いたエンシン において当業者か普通に採用し検討し得る技術的事項てあるから,一般 的な技術的事項に基つく上記課題は,引用文献において,当然の前提課 題てあるといえる。
 そして,一般的なヒストン行程の寸法を採用する引用発明における変位距離(e2)は,本願補正発明と何ら異なるものてはなく,本願補正 発明と同し作用効果を奏することは技術的に明らかてあるから,本願補 正発明か奏する作用効果は,引用発明から当業者か予測可能な範囲のも のてあるといえる。
 したかって,本願補正発明か格別の効果を奏するとの原告の主張は理 由かない。
ウ 以上によれは,本願補正発明は引用発明に基ついて容易に発明をするこ とかてきたものてあって,特許出願の際独立して特許を受けることかてき ないとした本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由1は理 由かない。
(2) 取消事由2に対し 前記(1)アて述へたとおり,本件審決の引用発明の認定及ひこれに基つく一 致点の認定に原告主張の誤りはない。
 したかって,本願発明は引用発明と同一てあるとの本件審決の判断に誤り はないから,原告主張の取消事由2は理由かない。
第4 当裁判所の判断
1 取消事由1(本願補正発明の容易想到性に係る判断の誤り)について (1) 本願明細書の記載事項等についてア 本願補正発明の特許請求の範囲(本件補正後の請求項1)の記載は,前 記第2の2(2)のとおりてある。イ 本願明細書の「発明の詳細な説明」(甲10)には,次のような記載か ある(下記記載中に引用する図1ないし3については別紙1を参照)。
 (ア) 「発明の分野およひ先行技術 本発明は,直線運動を回転運動に変換する装置に関し,シリンターおよ ひシリンター内に可動に配置された直線運動用ヒストンを有する少なく とも1個のヒストン・シリンター機構,回転運動用クランクシャフト, およひヒストンとクランクシャフトを連結するコネクティンクロットを 含む。本発明は,内燃ヒストンエンシンにおける,かかる装置の使用に も関する。」(段落【0001】),
 「従来のヒストンエンシンの動作順序はエンシンのタイフおよひシリン ターの数によって異なる。例えは,4行程エンシンと2行程エンシンか あり,燃焼方式にも,例えは,オットーサイクルやティーセルエンシン かある。しかし,全てのヒストンエンシンに共通することは,膨張行程 において,燃料から発生する熱エネルキーか機械仕事に変換されること てある。オットーエンシンにおける(動作)過程は,上死点と呼はれる 位置まてヒストンを移動させることによってシリンター内における燃料 と空気の混合物のスヘースを減少させて混合物を圧縮し,この位置の直 前て燃料と空気の混合物を火花て点火する。そして,燃焼カスの膨張に より生しる膨張行程は,ヒストンか上死点から下死点に向かって移動す る過程て燃焼カスのエネルキーをクランクシャフトの回転に使用し得る ことを意味する。本発明を,先すオットーサイクルエンシンに関連して 説明するか,ティーセルエンシンにも応用し得る。
 今日の燃焼機関の欠点として,燃焼カスかヒストンに対して最大の力を 生しる膨張行程中,即ち点火の僅かに後において,ヒストンからクラン クシャフトへの力の好ましい伝達か困難てある。本発明は,燃焼か次の ようなものてあるという知識に基ついている。膨張燃焼カスは,点火か ら僅かに後の膨張行程の初期に最大限の,即ち割合として大きい力をヒ ストンに加える。この点火は,ほほヒストンか上死点にある時,より好 適には,その僅かに前て,燃料と空気の混合物か最大限に圧縮された時 に起きる。膨張行程の後の部分ては燃焼カスは,ヒストンに対してより 小さな力しか加えない。最高可能出力を望む場合,ヒストンか燃焼カス から最大の力を付与される膨張行程の部分を効率的に利用し,この部分 てクランクシャフトに対して力の好ましい伝達か行われるようにするこ とか重要てある。」(段落【0003】)
(イ) 「発明の目的 本発明の目的は,直線運動を回転運動に変換する装置てあって,特にヒ ストン燃焼機関において,直線運動をしているヒストンから回転運動を しているクランクシャフトへのコネクティンクロットを介した好適な力 の伝達か,力,たとえは膨張している燃焼カス等,かヒストンに対して 最大限に作用する時のヒストンの膨張工程の位相において,好適に伝達 される装置を提供することてある。この点に関連して,本発明は,現在 の位相における力の好適な伝達を達成する原理の構造的解決策を与える ことを目的とする。上記目的は,ヒストンか移動てきる線から或距離の 変位をもってクランクシャフトの回転中心か配置され,クランクシャフ トの長手方向に装置を見た場合,ヒストンの移動線に関してクランクシ ャフトの回転中心の反対側に位置するクランクシャフトの部分か,ヒス トンの移動線と平行て且つシリンターから離れる方向の運動成分を有す るようにクランクシャフトの回転方向を定めるように本発明による装置 を設計することによって達成される。」(段落【0004】)(ウ) 「これにより,クランクシャフトは,ヒストンか上死点にある時,既にヒストンの移動線に対して傾斜している。上死点ては,ヒストンの コネクティンクロットとの連結およひ回転の点,クランクシャフトのコ ネクティンクロットとの連結およひ回転の点,およひクランクシャフト の回転中心は全て同一線上に位置する。しかし,ヒストンか僅かに上死 点から移動するとすくに,クランクシャフトのコネクティンクロットと の連結点は,クランクシャフトと共に回転することにより,当初はヒス トンの移動線から離れる方向に移動するのて,コネクティンクロットは 上死点における位置より傾斜する。このように上死点の位置に対して与 えられるコネクティンクロットの所与の傾斜により,クランクシャフト の回転中心か変位していない従来の対応する装置の場合と比較して,本 発明による装置は,初期において上死点からのヒストンの少ない移動て この傾斜度を得ることか出来る。膨張行程中に燃焼カスかヒストンに及 ほす効果に関して前記したことに従って,より短い必要ヒストン運動は, 上死点における位置に対する所与のコネクティンクロットの傾斜度によ り,本発明による装置ては,従来の装置より高い圧力かシリンター内に 存在し,従って,より大きい力かヒストンに作用することを意味する。
 本発明による装置てはヒストンか移動する時,クランクシャフトの所与 の角度偏差か,ヒストンの上死点からのより長い移動に対応する。総括 すると,これか意味することとして,点火の直後に,ヒストンからの力 の好適な伝達か開始される傾斜度かヒストンの割合として小さな移動に よって得られること,およひ,膨張行程中において,ヒストンの所与の 移動量か,より小さいクランクシャフトの角度偏差てよいことにより, キア比の減少か得られ,それにより膨張行程全体において力のより好適 な伝達か得られる。」(段落【0005】), 「しかし,前記内容は,本発明による装置の有利性を生しる内在的な関 係や機構を完全に記載する大望をもって述へられたものてはないことを指摘しておく。むしろ,前記記載は,本発明による装置か上記のような従来の対応する装置より良い性能を有する理由を説明し得る理論の概要を示していると言える。しかし,前記有利性は,本発明を4気筒オットーエンシンに適用した実験を通して明瞭に立証されている。燃焼機関に適用した本発明の具体的な有利性は,エンシンかクランクシャフトに対してより高いトルクを付与し得ることてあり,それは,エンシンか低回転度て一定の出力を供給し得ることを意味し,その結果,燃費消費か減少する。さらに,本発明によるエンシンはノッキンクか生しにくい。すなわち,未燃焼の燃料と空気の混合物か自己点火するリスクか軽減される。立証済みのこととして,本発明によるエンシンにより,燃料と空気の混合物を在来のオットーエンシンより高い圧力に圧縮することか可能てあり,場合によっては,ノッキンク(自己点火)を生しることなく15ハールを超える圧力を達成てきる。さらに,ラムタフローフによるエンシン排気測定によれは,より完全な燃料の燃焼か達成されることか示される。さらに留意すへきこととして,本発明によるエンシンは通常の場合よりも冷却か少なくて済む。これは,燃料のエネルキーのより大きい部分かクランクシャフトに対する有用な仕事に変換され,より小さい部分か熱に変換されることを示す。
これを達成するには,上記の定義に従ったクランクシャフトの回転中心の変位およひクランクシャフトの回転方向か,相互に関係していることか重要てあることか判明している。さらに,勿論,変位の大きさはエンシンの他の実際的な条件に適応させねはならない。これは,たとえ最大変位距離か所望ても,変位距離は,多くの場合はヒストン行程の長さに0.9を乗した積未満てあり,適切にはヒストン行程の長さに0.01から0.8を乗した積てあり,好適には変位距離は,ヒストン行程の長さに0.2から0.6を乗した積まての間から選択される。」(段落【0006】)
(エ) 「添付図面を参照して,例示した本発明の実施形態を詳細に説明する。
発明の好適実施形態の詳細な説明 図1は,ヒストン・シリンター機構1,回転運動用クランクシャフト4 およひコネクティンクロット5を概略的に示している。機構1は,シリ ンター2およひシリンター2内に直線運動可能に設けられたヒストン3 を有している。コネクティンクロット5は,ヒストン3とクランクシャ フト4を連結している。ヒストン3は,ヒストンリンク6て適当にカス シールされ,シリンター2内を移動する。ヒストン3は,上死点OVおよ ひ下死点UVと呼はれる二つの最端位置間て前後運動を繰り返すように 設けられている。したかって,上死点OVと下死点UVの距離は,ヒスト ン行程SLの長さてある。コネクティンクロット5は,その一端8てヒ ストン3に回動可能に連結され,その他端8’てクランクシャフト4に 回動可能に連結されている。コネクティンクロット5は,従来の方法て, クランクシャフト4の回転中心7から一定距離Rにおいてクランクシャ フト4のいわゆるクランクウェフに連結されている。
 図1において,コネクティンクロット5は,上下死点間のあるヒストン 位置て概略的に示されている。図示されたヒストン位置およひ上下死点 に対応する位置の,ヒストン3とコネクティンクロット5の連結点の異 なる位置はOV,8およひUVて示され,それに対応するコネクティンク ロット5とクランクシャフト4の連結点の位置は,異なるヒストン位置 に対して,それそれOV’,8’およひUV’て示されている。図1に示 された実施形態は,従来の装置てあり,そこてはクランクシャフト4の 回転中心7かヒストンの移動方向と一致した位置に有る。言い換えると, ヒストン3は線10に沿って移動し,線10の延長線上にクランクシャ フト4の回転中心7か有る。さらに,本書てコネクティンクロット長と も称する,ヒストンとコネクティンクロット5の連結点8とクランクシ ャフト4とコネクティンクロット5の連結点8’との距離Lとヒストン 行程SLの長さとの関係は,約1.81:1(コネクティンクロット長 =145mm,ヒストン行程長=80mm)てある。」(段落【000 8】)
(オ) 「図2に示された本発明による装置1ては,ヒストン3は線10に 沿って移動し,クランクシャフト4の回転中心7か,線10から距離F たけ変位している。クランクシャフト4は回転方向14を有し,クラン クシャフト4の長手方向に装置を見た場合に,ヒストン3の移動線10 に関してクランクシャフト4の回転中心7の反対側に位置するクランク シャフトの部分か,移動線10と平行てシリンター2から遠さかる方向 の運動成分13を有する。変位距離Fは,0より大きく0.9より小さ い数にヒストン行程の長さを乗した値か適当てあり,0.01から0. 8にヒストン行程の長さを乗した値か一般的てあり,0.2から0.6 にヒストン行程の長さを乗した値か好ましい。したかって,強調すへき こととして,図2による実施形態は一例に過きない。この実施形態ては, 変位距離Fは,0.38にヒストン行程SLの長さを乗した値にほほ等 しい。クランクシャフト4の回転中心7の変位距離Fか,先に定義され たようなクランクシャフト回転方向14と関連していることか本発明の 基本てあることを強調したい。これは,図2およひ3に示されるように 見た場合,すなわちクランクシャフトの縦方向に見た場合,シリンター 2かクランクシャフト4の上方に位置し,クランクシャフト回転中心の 変位かヒストン移動線10の右側に有る装置のクランクシャフト4の回 転方向14は,時計回りてある。」(段落【0010】)(カ) 「変位距離Fを有する,言い換えると,シリンター2の傾斜角αを有する本発明による装置は,上死点におけるコネクティンクロット5の 位置に対するコネクティンクロットの傾斜か,図1に示されたような従 来技術の装置の場合より小さいという特徴を有する。している(判決注 ・原文のママ)。この傾斜は,線11と線12の間の角度βとして画定 される。線11は,ヒストン3か上死点にある時の,ヒストン3のコネ クティンクロット5との連結点OVおよひクランクシャフト4のコネク ティンクロット5との連結点OV’(およひクランクシャフト4の回転中 心7)を通る線てある。線12は,ヒストン3の位置か上死点と異なり, ヒストン3の移動量Aに対応する時の,コネクティンクロットの両連結 点8およひ8’を通る線てある。図2ては,β=10°てあり,Aは約 10mmてある。ヒストン3か移動する時,上死点からのヒストンのよ り大きい移動かクランクシャフト4のより小さい角度偏差に対応するの て,キア比の減少か得られる。膨張段階のこの部分て,力の極めて好ま しい伝達か得られ,その結果,エンシンの割合として高いトルクか生し る。図3を参照して,移動量Aとクランクシャフト4の角度偏差γとの 関係をより詳しく説明する。注目すへきこととして,図1による従来の 装置ては,ヒストンか移動てきる線,すなわちシリンターの長手方向中 心線は,ヒストンか上死点に位置している時にコネクティンクロットの 両連結点を結ふ線と一致し,言い換えると,この装置ては角度αは0に 等しい。」(段落【0011】)(キ) 「上記のように,クランクシャフト4の回転方向14を考慮しなか らクランクシャフト4の回転中心7に関するシリンター2の傾斜角度α として変位を定義することもてきる。図2およひ3ては,ヒストン3は 線10に沿って移動し,角度αは,線10と,ヒストン3か上死点OVに ある時のヒストン3のコネクティンクロット5との連結点OVから(クラ ンクシャフト4のコネクティンクロット5との連結点OV’を通って)クランクシャフト4の回転中心7に延ひる線11との間て得られる鋭角と 定義される。
 既述のように,本発明は,それか応用されるエンシンに関する他の状況 や環境により異なる程度に応用し得る。図2ては,変位距離Fは,ほほ 0.38にヒストン行程の長さを乗した値てあり(αは9.5°に略等 しい),コネクティンクロット5の長さLとヒストン行程SLの長さと の関係は1.77:1てある(コネクティンクロット長=145mm, ヒストン行程長=82mm)。変位Fの結果として生しる一つの変化と して,下死点UV’におけるクランクシャフト4とコネクティンクロッ ト5の連結点の位置は上死点OV’におけるクランクシャフト4とコネク ティンクロット5の連結点の位置に対して変位しており,その結果,全 膨張行程中のクランクシャフト4の回転は180°未満となる。」(段 落【0012】)ウ 前記ア及ひイの記載を総合すれは,本願明細書には,次の点か開示され ていることか認められる。(ア) 圧縮行程て圧縮されたシリンター内の燃料と空気の混合物か点火さ れて発生する燃焼カスの膨張による圧力により,ヒストンか上死点から 下死点まて移動する膨張行程においては,ヒストンか上死点から下死点 に向かって移動を開始する行程の初期に,燃焼カスかヒストンに対して 最大の力を付与するか,従来の燃焼機関ては,この初期の部分における ヒストンからコネクティンクロットを介してのクランクシャフトへの力 の好ましい伝達か困難てあるという課題かあった。
(イ) 本願補正発明は,ヒストンか燃焼カスから最大の力を付与される膨 張行程の初期の部分を効率的に利用し,この部分てクランクシャフトに 対して力の好ましい伝達か行われる装置を提供することを目的とし,そ の目的を達成するための手段として,ヒストンの移動可能な線から或距 離の変位をもってクランクシャフトの回転中心か配置され,クランクシ ャフトの長手方向に装置を見た場合,ヒストンの移動線に関してクラン クシャフトの回転中心の反対側に位置するクランクシャフトの部分か, ヒストンの移動線と平行て且つシリンターから離れる方向の運動成分を 有するようにクランクシャフトか回転方向を有する構成を採用した。(ウ) クランクシャフトの回転中心か変位していない従来の装置ては,ヒ ストンか上死点にあるとき,ヒストンか移動てきる線,すなわちシリン ターの長手方向中心線,ヒストンにおけるコネクティンクロットの連結 点とクランクシャフトにおけるコネクティンクロットとの連結点とを結 ふ線,クランクシャフトの回転中心か全て同一線上に位置するため,コ ネクティンクロットかヒストンの移動線に対して傾斜していないのに対 し,本願補正発明ては,上記構成を採用したことにより,ヒストンか上 死点にあるとき,ヒストンにおけるコネクティンクロットの連結点とク ランクシャフトにおけるコネクティンクロットとの連結点とを結ふ線 は,クランクシャフトの回転中心と同一線上に位置するか,ヒストンの 移動線に対してクランクシャフトの回転中心か変位している側に傾斜し ているため,コネクティンクロットか既にヒストンの移動線に対して一 定傾斜度を有している。
 本願補正発明は,ヒストンか上死点にあるときに,上記のようにコネ クティンクロットか既にヒストンの移動線に対して一定傾斜度を有して いることに基ついて,点火の直後にヒストンからの力の好適な伝達か開 始される傾斜度かヒストンの割合として小さな移動によって得られ,し かも,膨張行程中において,ヒストンの所与の移動量か,より小さいク ランクシャフトの角度偏差てよいことにより,キア比の減少か得られ, それにより膨張行程全体において力のより好適な伝達か得られるという 効果を奏する。
(2) 引用文献の記載事項について 引用文献(実願昭58-21666号(実開昭59-127834号)の マイクロフィルム)(甲1)には,次のような記載かある(下記記載中に引 用する第1図及ひ第2図については別紙2を参照)。
ア 「2.実用新案登録請求の範囲
 ヒストンヒンの中心線をシリンタの中心線からスラスト側に偏位させる と共に,クランク軸の中心線を上記シリンタ中心線に対し反スラスト側に 偏位させたことを特徴とするエンシン。」(明細書1頁)
イ 「3.考案の詳細な説明
 本考案は,振動及ひ騒音を顕著に低減し得るエンシンに関するものてあ る。
 一般に良く知られているように,エンシンの発生騒音の相当部分は,所謂ヒストンスラッヒンクに基因するものてある。上記ヒストンスラッヒン クは,ヒストンか上死点付近にあるとき燃焼カス圧力の反力によって生す る側圧か,反スラスト側からスラスト側に変化する際に,ヒストンかスラ スト側のシリンタ(勿論シリンタライナを有するエンシンては同ライナを 意味する)壁面に急激に衝突することによって起るものてあり,燃焼圧力 か高いティセルエンシン特に小型のトライライナ形ティセルエンシンて は,その騒音発生要因の略50%か,このヒストンスラッヒンクに基因す るものと考えられる。」(明細書1頁~2頁)ウ 「本考案は,上記ヒストンスラッヒンクを低減することにより,エンシ ン騒音の発生を効果的に抑止するものてあって,ヒストンヒンの中心線を シリンタの中心線からスラスト側に偏位させると共に,クランク軸の中心 線を上記シリンタ中心線に対し反スラスト側に偏位させたことを特徴とす るものてある。」(明細書2頁)
エ 「本考案によれは,上記構成を採用することによって,シリンタ内の燃 焼カス圧力か従来のエンシンよりも可成低くなった時点て,ヒストンかシ リンタのスラスト側壁面に衝突するのて,それたけ起振力か小さくなり, エンシンの振動従って騒音を確実に低減することかてきるのてある。」( 明細書2頁)
オ 「以下本考案の一実施例を添付図面について詳細に説明する。先つ第1 図において,一点鎖線A-Aて示した中心線はエンシンのシリンタ中心線 てあって,10はその一部のみを略図的に示したシリンタ12内に嵌装さ れたヒストンてあって上記中心線A-Aに沿って往復動することかてき る。14はヒストンヒン,16はコネクティンクロット,18はクランク シャフトを夫々図式的に示す。上記ヒストンヒン14の中心線B-Bは, 上記シリンタ中心線A-Aから距離e1たけ偏心しており,一方クランク シャフト18の回転中心線C-Cは上記シリンタ中心線A-Aから距離e 2たけ偏心している。説明の便宜上,上記偏心量el及ひe2は誇張して大 きく示されているか,実際には,例えはトラック用のティセルエンシン( 出力100PS~500PS程度)において,e1は約1~2mm,e2は 約1~3mm程度のものと理解されたい。」(明細書2頁~3頁)カ 「そこて今,エンシンのクランクシャフト18か図中矢印R方向に回転 しているとき,ヒストン10か上死点T.D.Cに接近するまて,同ヒス トンは圧縮空気圧及ひ燃焼カス圧の側圧によってシリンタ12の反スラス ト側T1(図ては,シリンタ中心線A-Aの右側)に押しつけられ,次に 上死点T.D.Cを越えると,逆にシリンタ12のスラスト側T2(図て は,シリンタ中心線A-Aの左側)に押圧されるのてあるか,上死点T. D.C付近てヒストン10に作用する側圧か反スラスト側T1からスラス ト側T2に急激に変化する際に,ヒストン10か激しくスラスト側T2に衝 突し,所謂ヒストンスラッヒンクを起し,エンシンの振動,騒音の有力な 発生要因の一つとなっているのてある。そして,このヒストンスラッヒン クは,シリンタ12内の圧力レヘルか高いティセルエンシンにおいて,殊 に著しい。」(明細書3頁~4頁)
キ 「そこて,従来ヒストンスラッヒンクを低減するために,ヒストンヒン 14の中心線B-Bを,シリンタ12の中心線A-Aから偏位させること か試みられている。これは,往復動エンシンの機構上不可避的に発生する ヒストンスラッヒンクのタイミンクを,シリンタ内の燃焼カス圧力か最高 値に達するタイミンクから外して,衝突力を小さくしようとしたものてあ り,それなりの効果は収めているか,なお十分とは謂い難い。即ち,図中 点線て示したように,従来の装置ては,クランクシャフト18′の中心線 か,シリンタ中心線A-A上にくるように配設され,コネクティンクロッ ト16か,図示のようにシリンタ中心線A-Aに対して略平行する側圧セ ロの位置にあるときのクランク角はβてあって,続いて発生するヒストン スラッヒンクのタイミンクは,第2図に例示したシリンタ内圧力波形にお ける最高圧力値からのすれか小さい。」(明細書4頁~5頁)ク 「これに対し本考案によれは,ヒストンヒン14に上記偏心量e1を与 えるたけてなく,クランクシャフト18にも偏心量e2か与えられている のて,第1図の実線て示すように,ヒストン10に対する側圧かセロとな るコネクティンクロット16の位置てのクランク角αか従来より著しく大 きくなり,従って,続いて起るヒストンスラッヒンクのタイミンクか第2 図の圧力線図てヒーク値から大巾にすれ,低いカス圧の下てヒストンスラ ッヒンクか発生する。これにより,ヒストンスラッヒンク時の衝突力を著 しく小さくすることかてき,それたけエンシンの振動,騒音を減少するこ とかてきるのてある。なお,第2図において,縦軸はシリンタ内の圧力P (kg/cm2)を,又横軸はクランク角R(deg)を示す。」(明細 書5頁~6頁)ケ 「上述したように本考案に係るエンシンによれは,ヒストンヒンの中心線をシリンタの中心線からスラスト側に偏位させると共に,クランク軸の 中心線を上記シリンタ中心線に対し反スラスト側に偏位させたことによ り,ヒストンスラッヒンクの衝突力を大巾に低減し,エンシンの振動,騒 音を小さくすることかてきるのて,極めて有益てある。」(明細書6頁)(3) 引用発明の認定の誤りの有無について 原告は,1引用文献には,「実用新案登録請求の範囲」に「ヒストンヒンの中心線をシリンタの中心線からスラスト側に偏位させると共に,クランク 軸の中心線を上記シリンタ中心線に対し反スラスト側に偏位させたことを特 徴とするエンシン」か記載され,「ヒストンヒンの中心線をシリンタの中心 線からスラスト側に偏位させる」構成及ひ「クランク軸の中心線を上記シリ ンタ中心線に対し反スラスト側に偏位させる」構成の両構成を備えて初めて 「ヒストンスラッヒンク時の衝突力を著しく小さくすることかてき,それた けエンシンの振動,騒音を減少することかてきる」という作用効果を発揮す ることか技術思想として開示されており,引用文献記載のエンシンにおける 「クランク軸の中心線を上記シリンタ中心線に対し反スラスト側に偏位させ る」構成は,「ヒストンヒンの中心線をシリンタの中心線からスラスト側に 偏位させる」構成を前提とするものといえるから,引用文献の記載事項から 「クランク軸の中心線を上記シリンタ中心線に対し反スラスト側に偏位させ る」構成のみを有するエンシンを取り出すことには阻害要因かある,2本件 審決か認定した引用発明のうち,「ヒストン10において,ヒストン10か 沿って往復動する中心線A-Aから,距離e2の偏心をもってクランクシャ フト18の回転中心か配置され,そして,クランクシャフト18の長手方向 に装置を見た場合,ヒストン10の沿って往復動する中心線A-Aに関して クランクシャフト18の回転中心の反対側に位置するクランクシャフト18 の部分か,ヒストン10の沿って往復動する中心線A-Aと平行て且つそれ それのシリンター12から離れる方向の運動成分を有するように,クランクシャフト18か回転方向Rを有し」との部分は,引用文献の記載事項から「 クランク軸の中心線を上記シリンタ中心線に対し反スラスト側に偏位させ る」構成のみを取り出し,「ヒストンヒンの中心線をシリンタの中心線から スラスト側に偏位させる」構成を捨象するものてあるから,誤りてある旨主 張する。ア そこて検討するに,特許法29条2項の適用の前提となる同条1項3号 か「特許出願前に頒布された刊行物に記載された発明」を特許を受けるこ とかてきる発明から除外した趣旨は,刊行物の頒布によって,公衆に対し, 特許出願前に既に公開された刊行物記載の技術内容について新たに特許に より独占権を付与することは,特許法の目的とする産業の発達に寄与する ことなく,かえって技術の発展を阻害することにあるものと解される。
 そうすると,特許法29条1項3号の「刊行物」か特許出願に係る特許 公報又は実用新案登録出願に係る実用新案公報(明細書等のマイクロフィ ルムを含む。)てある場合,「刊行物に記載された発明」に該当し得る技 術内容は,出願の直接の目的とした特許請求の範囲に記載された発明又は 実用新案登録請求の範囲に記載された考案にのみ限定されるのてはなく, 発明の詳細な説明又は考案の詳細な説明に従来技術として示された技術内 容なとも含めた,明細書全体に開示された技術内容てあるといえる。 したかって,本件審決の引用発明の認定に誤りかあるかとうかは,引用 文献(甲1)記載の「実用新案登録請求の範囲に記載された考案」たけて はなく,明細書の記載事項全体に基ついて判断すへきてある。イ 前記(2)によれは,引用文献には,次の点か開示されていることか認めら れる。(ア) 「本考案」は,ヒストンか上死点付近にあるとき,シリンタ内の燃 焼カス圧力の反力によって生するヒストンに作用する側圧の向きか「反 スラスト側」から「スラスト側」に変化する際に,ヒストンか「スラス ト側」のシリンタ壁面に急激に衝突することによって起きる「ヒストン スラッヒンク」の衝突力を低減させることより,エンシン騒音の発生を 効果的に抑止することを課題とするものてある。
(イ) コネクティンクロット16(ヒストンヒン14の中心線(ヒストン 10におけるコネクティンクロット16の連結点)とクランクシャフト 18におけるコネクティンクロット16の連結点とを結んた線に位置す る。)か,別紙2の第1図に示すように,シリンタ中心線A-Aに対し て略平行てあるときは,側圧か0てあるか,クランクシャフト18にお けるコネクティンクロット16の連結点か反スラスト側(T1)に移動 し,コネクティンクロット16か反スラスト側(T1)に傾斜したとき は,側圧かスラスト側(T2)に働き,一方,ヒストン10の往復動に より,クランクシャフト18か矢印R方向に回転して,クランクシャフ ト18におけるコネクティンクロット16の連結点かスラスト側(T2) に移動し,コネクティンクロット16かスラスト側(T2)に傾斜した ときは,側圧か反スラスト側(T1)に働く。そして,ヒストン10の 往復動により,クランクシャフト18か矢印R方向に回転して,クラン クシャフト18におけるコネクティンクロット16の連結点か移動し, コネクティンクロット16の傾斜の向きかスラスト側(T2)から反ス ラスト側(T1)に変化する際に,ヒストンスラッヒンクか発生する。従来の装置ては,ヒストンか上死点にあるとき,ヒストンヒンの中心 線(ヒストンにおけるコネクティンクロットの連結点)とクランクシャ フトにおけるコネクティンクロットの連結点とを結んた線かシリンタ中 心線上に位置し,コネクティンクロットは,シリンタ中心線に対して略 平行の位置にあるため,ヒストンか上死点から下死点に向かって下降を 開始する際のシリンタ内の燃焼カス圧力か最高値に達するタイミンク て,ヒストンスラッヒンク発生し,その衝突力は大きなものとなる。(ウ) そこて,従来,ヒストンスラッヒンクの衝突力を低減させるため, 別紙2の第1図に示すように,ヒストンヒン14の中心線B-Bを,シ リンタ12の中心線A-Aから偏位させることか試みられていた。これ により,コネクティンクロット16か,別紙2の第1図に示すように, シリンタ中心線A-Aに対して略平行となって,側圧か0となるのは, ヒストンか上死点に向かって上昇している段階にあり,引き続き発生す るヒストンスラッヒンクは,シリンタ内の燃焼カス圧力か最高値に達す るヒストンか上死点にあるときからすれることになる。この場合,ヒス トンか上死点にあるときは,ヒストンヒンの中心線に対してクランクシ ャフトにおけるコネクティンクロットの連結点か反スラスト側(T1) に位置し,コネクティンクロットか,既に反スラスト側(T1)に傾斜 し,ヒストンに作用する側圧はスラスト側(T2)に働いており,ヒス トンか上死点から下死点に向かって下降を開始する際にもコネクティン クロットか反スラスト側(T1)に傾斜している点ては変わらないため, 上死点ては,ヒストンスラッヒンクは発生しない。このように,ヒスト ンヒン14の中心線B-Bを,シリンタ12の中心線A-Aから偏位さ せることにより,ヒストンスラッヒンクのタイミンクを,シリンタ内の 燃焼カス圧力か最高値に達するタイミンクから外して,衝突力を小さく しようとしたものてある。このような構成を採用した装置は,それなり の効果は収めているか,コネクティンクロットか,シリンタ中心線A- Aに対して略平行する位置にあるときのクランク角(シリンタ中心線A -A,クランクシャフトの中心線及ひクランクシャフトにおけるコネク ティンクロットの連結点て形成する角。以下同し。)はβてあって,続 いて発生するヒストンスラッヒンクのタイミンクは,第2図に例示した シリンタ内圧力波形における最高圧力値からのすれか小さく,ヒストン スラッヒンクの衝突力を低減させる効果か十分とはいい難かった。(エ) 「本考案」に係るエンシンは,ヒストンヒンの中心線をシリンタの 中心線からスラスト側に偏位させる構成と共に,クランク軸の中心線を 上記シリンタ中心線に対し反スラスト側に偏位させる構成を採用したこ とにより,ヒストンヒン14に偏心量e1(ヒストンヒン14中心線B -Bのシリンタ中心線A-Aからの偏心距離e1)を与えるたけてなく, クランクシャフト18にも偏心量e2(クランクシャフト18の回転中 心線C-Cのシリンタ中心線A-Aからの偏心距離e2)を与えるのて, コネクティンクロットか,シリンタ中心線A-Aに対して略平行する位 置にあるときのクランク角αか従来より著しく大きくなり,続いて発生 するヒストンスラッヒンクのタイミンクは,第2図の圧力線図て示した ヒーク値(最高圧力値)から大巾にすれ,低いカス圧の下てヒストンス ラッヒンクか発生する。これにより,ヒストンスラッヒンク時の衝突力 を著しく小さくすることかてき,エンシンの振動,騒音を減少すること かてきる。ウ 前記イ認定のとおり,引用文献には,ヒストンスラッヒンクか発生する タイミンクを,ヒストンか上死点から下死点に向かって下降を開始する燃 焼カス圧か最大値となる時点からすらして,低いカス圧の下てヒストンス ラッヒンクを発生させることによって,ヒストンスラッヒンクの衝突力を 低減させることにより,エンシン騒音の発生を抑止する技術として,従来, ヒストンヒンの中心線をシリンタの中心線からスラスト側に偏位(偏心距 離e1)させる構成を採用することにより,コネクティンクロット16か, 別紙2の第1図に示すように,シリンタ中心線A-Aに対して略平行とな って,側圧か0となる時点を,ヒストンか上死点に向かって上昇している 段階となるようにして,この段階てヒストンスラッヒンクを発生させ,ヒ ストンスラッヒンクか発生するタイミンクを燃焼カス圧か最大値となるヒ ストンか上死点にあるときからすらした装置か知られていたか,そのすれの幅か小さく,ヒストンスラッヒンクの衝突力の低減か十分てはないとい う問題かあったため,引用文献記載のエンシン(装置)は,ヒストンヒン の中心線をシリンタの中心線からスラスト側に偏位(偏心距離e1)させ る構成とともに,クランク軸の中心線を上記シリンタ中心線に対し反スラ スト側に偏位(偏心距離e2)させる構成を採用したことにより,そのす れの幅をより大きくし,更に低いカス圧の下てヒストンスラッヒンクか発 生させるようにして,従来の装置よりもヒストンスラッヒンクの衝突力を 低減させ,エンシン騒音の発生を効果的に抑止する効果を奏するようにし たことか開示されている。これによれは,引用文献記載の装置においては,ヒストンヒンの中心線 をシリンタの中心線からスラスト側に偏位(偏心距離e1)させる構成の みを採用した従来の装置よりも,上記構成とクランク軸の中心線を上記シ リンタ中心線に対し反スラスト側に偏位(偏心距離e2)させる構成を共 に採用したことにより,上記のとおりすれの幅か大きくなると同時に,ヒ ストンか上死点にあるときのコネクティンクロットの反スラスト側(T1) への傾斜角度か大きくなることを理解てきるとともに,クランク軸の中心 線を上記シリンタ中心線に対し反スラスト側に偏位(偏心距離e2)させ る構成のみを採用した場合にも,ヒストンスラッヒンクか発生するタイミ ンクを燃焼カス圧か最大値となるヒストンか上死点にあるときからすらす ことかてき,ヒストンか上死点にあるとき,コネクティンクロットか反ス ラスト側(T1)に傾斜していることを理解てきる。
 そうすると,引用文献の記載事項全体から,引用文献には,ヒストンスラッヒンクか発生するタイミンクを,ヒストンか上死点から下死点に向かって下降を開始する燃焼カス圧か最大値となる時点からすらして,低いカス圧の下てヒストンスラッヒンクを発生させることによって,ヒストンスラッヒンクの衝突力を低減させることにより,エンシン騒音の発生を抑止する技術として,1ヒストンヒンの中心線をシリンタの中心線からスラス ト側に偏位(偏心距離e1)させる構成のみを採用した従来の技術,2ヒ ストンヒンの中心線をシリンタの中心線からスラスト側に偏位(偏心距離 e1)させる構成及ひクランク軸の中心線を上記シリンタ中心線に対し反 スラスト側に偏位(偏心距離e2)させる構成を共に採用した技術(「実 用新案登録請求の範囲」記載の考案),3クランク軸の中心線をシリンタ 中心線に対し反スラスト側に偏位(偏心距離e2)させる構成を採用した 技術か開示されていることか認められる。以上によれは,本件審決か,引用文献記載の上記3の技術内容に基つい て,引用文献に,「ヒストン10において,ヒストン10か沿って往復動 する中心線A-Aから,距離e2の偏心をもってクランクシャフト18の 回転中心か配置され,そして,クランクシャフト18の長手方向に装置を 見た場合,ヒストン10の沿って往復動する中心線A-Aに関してクラン クシャフト18の回転中心の反対側に位置するクランクシャフト18の部 分か,ヒストン10の沿って往復動する中心線A-Aと平行て且つそれそ れのシリンター12から離れる方向の運動成分を有するように,クランク シャフト18か回転方向Rを有し」との構成を有する「直線運動を回転運 動に変換する装置」の記載かあると認定したことに誤りはないというへき てある。エ 原告は,この点に関し,引用文献の記載事項から「クランク軸の中心線 を上記シリンタ中心線に対し反スラスト側に偏位させる」構成のみを取り 出し,「ヒストンヒンの中心線をシリンタの中心線からスラスト側に偏位 させる」構成を捨象することは,誤りてある旨主張する。
 しかしなから,前記ウ認定のとおり,引用文献の記載事項全体から,引 用文献には,「クランク軸の中心線を上記シリンタ中心線に対し反スラス ト側に偏位させる」構成を採用した技術か開示されているものと認められ るから,原告の上記主張は採用することかてきない。
オ 以上のとおり,本件審決における引用発明の認定に誤りかあるとする原告の主張は,理由はない。
(4) 容易想到性の判断の誤りの有無について
ア 原告は,本件審決における引用発明の認定に誤りかあることを前提に, 本件審決には,本願補正発明と引用発明との一致点の認定の誤り及ひ相違 点の看過かあるから,引用発明(引用文献に記載された発明)に基ついて 本願補正発明の構成を容易に想到することかてきたとした本件審決の判断 は誤りてある旨主張する。
しかしなから,前記(3)て説示したとおり,本件審決における引用発明の 認定に誤りはないから,原告の上記主張は,その前提を欠くものてあって, 理由かない。イ 原告は,本願補正発明の格別の効果てある「ヒストンか僅かに上死点か ら移動するとすくに,クランクシャフトにおけるコネクティンクロットの 連結点かクランクシャフトと共に回転することにより当初はヒストンの移 動線から離れる方向に移動する」との点は,引用文献に記載かないから, 本願補正発明は,当業者か引用発明(引用文献に記載された発明)に基つ いて容易に想到することかてきたものてはない旨主張する。そこて検討するに,前記(1)ウ(ウ)認定のとおり,本願明細書には,本願 補正発明は,ヒストンか上死点にあるときに,コネクティンクロットの連 結点とクランクシャフトにおけるコネクティンクロットとの連結点とを結 ふ線かクランクシャフトの回転中心か変位している側に傾斜し,コネクテ ィンクロットか既にヒストンの移動線に対して一定傾斜度を有しているこ とに基ついて,点火の直後にヒストンからの力の好適な伝達か開始される 傾斜度かヒストンの割合として小さな移動によって得られ,しかも,膨張 行程中において,ヒストンの所与の移動量か,より小さいクランクシャフ トの角度偏差てよいことにより,キア比の減少か得られ,それにより膨張 行程全体において力のより好適な伝達か得られるという効果を奏する旨の 記載かある。
 一方て,引用文献には,本願補正発明の上記効果の記載はない。しかしなから,引用発明は,「ヒストン10において,ヒストン10か 沿って往復動する中心線A-Aから,距離e2の偏心をもってクランクシ ャフト18の回転中心か配置され」,「偏心距離e2か,約1~3mm程度 てある装置」てあって,前記(3)ウ認定のとおり,ヒストンか上死点にある とき,コネクティンクロットか反スラスト側(T1)に傾斜している。
 そうすると,引用発明の装置は,本願補正発明と同様に,「ヒストンか 上死点にあるときに,コネクティンクロットの連結点とクランクシャフト におけるコネクティンクロットとの連結点とを結ふ線かクランクシャフト の回転中心か変位している側に傾斜し,コネクティンクロットか既にヒス トンの移動線に対して一定傾斜度を有している」構成を有するものといえ るから,これに基ついて本願明細書記載の上記効果を奏するものと認めら れる。
 したかって,原告主張の本願補正発明の効果は格別の効果てあるとはい えないから,本願補正発明の容易想到性の判断の誤りをいう原告の上記主 張は,その前提を欠くものてあって,理由かない。
(5) 小括 以上によれは,本願補正発明は当業者か引用発明に基ついて容易に想到す ることかてきたとした本件審決の判断に原告主張の誤りはない。
 したかって,本願補正発明か当業者か引用文献に記載された発明に基つい て容易に想到することかてきたことを理由に特許出願の際独立して特許を受 けることかてきないとして本件補正を却下した本件審決の判断に誤りはない から,原告主張の取消事由1は理由かない。
2 取消事由2(本願発明と引用発明との同一性に係る判断の誤り)について 前記1(4)アて述へたとおり,本件審決の引用発明の認定及ひこれに基つく一 致点の認定に原告主張の誤りはない。
 したかって,本願発明は引用発明と同一てあるとの本件審決の判断に誤りは ないから,原告主張の取消事由2は理由かない。
3 結論
 以上の次第てあるから,原告主張の取消事由はいすれも理由かなく,本件審 決にこれを取り消すへき違法は認められない。
 したかって,原告の請求は理由かないから,これを棄却することとし,主文 のとおり判決する。
 知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 富田善範
裁判官 大鷹一郎
裁判官 齋 藤 巌
(別紙1)
【図1】

【図2】

【図3】

(別紙2)

判例本文

この判例ページのURL

LINEで送る
Pocket