平成25年11月27日判決言渡
平成25年(ネ)第10001号 損害賠償請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所平成22年(ワ)第40006号)
口頭弁論終結日 平成25年10月7日
判決
控 訴 人 大王製紙株式会社
 旧商号:タイオーヘーハーコンハーティンク株式会社
控訴人
上記両名訴訟代理人弁護士



上記両名訴訟代理人弁理士
上記両名補佐人弁理士
被控訴人
訴訟代理人弁護士



訴訟代理人弁理士
エリエールフロタクト株式会社
村林隆一 井上裕史 田上洋平 佐合俊彦 永井義久 和泉久志
ユニ・チャーム株式会社
近藤惠嗣 萩尾保繁 山口健司 薄葉健司 古賀哲次
補佐人弁理士 蛯谷厚志 同 森本有一 同 小野田浩之
主文
 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。
 事実及ひ理由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人ら
(1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人は,控訴人らに対し,それそれ1億円及ひこれに対する平成22年10月1日から支払済みまて年5分の割合による金員を支払え。
 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。2 被控訴人 主文同旨
第2 事案の概要
1 本件は,発明の名称を「使い捨て紙おむつ」とする特許権(特許第4198313号)を有する控訴人らか,被控訴人か製造・販売する紙おむつは同特許 の特許請求の範囲の請求項1及ひ3記載の各発明の技術的範囲に属しており, その紙おむつの製造・販売は上記特許権を侵害すると主張して,被控訴人に対 し,不法行為に基つき,損害賠償を請求した事案てある。原審は,上記紙おむ つは,上記各発明の技術的範囲に属しないとして,控訴人らの請求をいすれも 棄却したため,控訴人らか,上記の裁判を求めて控訴した。2 前提となる事実,争点及ひ争点についての当事者の主張は,次のとおり原判 決を補正し,後記3のとおり当審における当事者の主張を付加するほかは,原 判決「事実及ひ理由」の第2の1ないし3記載のとおりてあるから,これを引用する(以下,原判決を引用する場合は,「原告」を「控訴人」と,「被告」 を「被控訴人」と,それそれ読み替える。)。(1) 原判決6頁2行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。
 「ア 文言侵害の成否(争点2-1)イ 均等侵害の成否(争点2-2)」
(2) 原判決6頁5行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。
「(5) 時機に後れた攻撃方法か否か等(争点5)」
(3) 原判決6頁22行目の「争点2(各被告製品か本件各発明の技術的範囲に属するか否か)について」を「争点2-1(文言侵害の成否)」と改める。
(4) 原判決6頁26行目冒頭から7頁6行目の「存在せす」まてを次のとおり改める。
「 本件発明1における「ウエスト部」は,吸収主体10の長手方向端部(透液性トッフシート11の端部)付近とウエスト開口縁との間の領域て ある。ところて,本件明細書の【0010】には,本件発明の作用効果とし て,「さらに,請求項
 1 記載の発明は,縦方向に沿って腰下部まて延在す る半剛性の吸収コアを有し,腰下部の伸縮部材は,腰下部の中央部を除く左右脇部に配置されている。吸収コアは可撓性のシートに比較して半剛性を示すのて,伸縮部材による収縮力の伝達により変形したり皺を生したり することか少ない。その結果,製品として目立つ中央部か変形したり皺を生したりすることかないのて,見栄えに優れた製品となる。」との記載かある(注・下線は控訴人らによる。この項において以下同し)。すなわ ち,構成要件Cて,腰下部の伸縮部材を「中央部を除く左右脇部に配置」 するのは,前記作用効果を求めるためてあり,とすれは,「中央部を除く 左右脇部に配置」とは,弾性伸縮部材か,「吸収コア
 13 か位置する中央
部には存在しない」ことを意味することは,当業者に明白てある。
 このことは,本件発明の実施例を説明した【0050】の記載からも明 らかてある。すなわち,本件明細書の【0050】には,「図12の (F)に別の実施の形態として示すように,ウエスト伸縮部材20F,2 0B,ならひに腰下部伸縮部材21F,21Bを,吸収コア13か位置する中央部には存在せす,製品の左右脇部のおいてのみ配置固定し,さらに股部伸縮部材23を設ける形態なとも採用てきる。このように伸縮部材の 配設形態は適宜てあることを付言する。腰下部伸縮部材21F,21B, または股部伸縮部材23を,吸収コア13か位置する中央部には存在せす,製品の左右脇部のおいてのみ配置固定する場合において,腰下部伸縮部材21F,21B端部,または股部伸縮部材23の端部か吸収コア13 の側縁部に重なる場合と,吸収コア13の側縁に達しないて離間する場合 との両者を含む。」との説明かあり,「中央部を除く」との意味か,正確 には「吸収コア13か位置する中央部には存在せす」との意味てあること を明確にしている。これに対し,本件明細書の【0032】には「図3の符号において, 『縦方向』とは,腹側と背側を結ふ方向を意味し,『周方向』とは前記縦 方向と直交する方向を意味する。…また,『中央部』とは,製品の中央線 を含む側部を除く中間領域を意味する。『脇部』とは,胴周り部Tにおけ る両側部を意味する。」との記載かある。しかしなから,【0032】 は,紙おむつの各部の名称を,図3を用いて一般的に説明したものにすき す,紙おむつの周方向か,概念上「中央部」と「脇部」の二つの領域に区 分てきることを説明したものてあるか,紙おむつの縦方向のとこまてか 「中央部」てあるかを規定したものてはない。よって,「腰下部の中央 部」との用語か,周方向の中央を意味するとしても,縦方向において,腰 下部のうちとの部分を意味するのかは,本件発明1の構成要件Cに関する
具体的な説明(【0050】)によるへきてある。
 よって,構成要件Cの「中央部を除く」とは,「吸収コア13か位置する中央部には存在せす」との意味てあることは,明らかてある。 そして,各被控訴人製品のフィットキャサー221 の一部てある 221-1 は,腰下部て周方向に連続して配置されているものの,配置されている箇 所は吸収コア上てはなく,吸収コアを避けて配置されており,「吸収コア13か位置する中央部には存在しない」のてある。また」 (5) 原判決7頁9行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。「a 「伸張応力」「太さ」について 前記(ア)のとおり,「ウエスト部」は,吸収主体10の長手方向端部(透液性トッフシート11の端部)付近とウエスト開口縁との間の領域 てあり,「腰下部」は,吸収主体11の長手方向端部(透液性トッフ シート11の端部)付近とレック開口始端との間の領域てあるから,各 被控訴人製品における腰下部に配置された伸縮部材はフィットキャサー
 221 てあり,ウエスト部に配置された伸縮部材はウエストキャサー220 てある。そして,各被控訴人製品のフィットキャサー221 の伸張応力かウエス トキャサー220 より小さいこと,及ひ,フィットキャサー221 の太さか 620dtex 以下てあることについては,当事者間に争いはない。したかって,各被控訴人製品は,いすれも構成要件Dの「伸張応力… は,前記ウエスト部に配置された前記伸縮部材の伸張応力…よりも小さ く,かつ太さか 620dtex 以下て」を充足する。」(6) 原判決7頁10行目冒頭の「a」を「b」と改める。
(7) 原判決7頁17行目冒頭から同8頁8行目末尾まてを次のとおり改める。
「 そして,各被控訴人製品の腰下部に配置された伸縮部材(フィットキャサー221)の断面外径は,ウエスト部に配置された伸縮部材(ウエストキャサー220)の断面外径よりも小さい。」
(8) 原判決8頁12行目冒頭の「b」を「c」と改める。
(9) 原判決8頁14行目冒頭から同9頁6行目末尾まてを次のとおり改める。
「 本件発明1における「伸長率」は,JIS規格のとおり,伸ひた長さを元の長さて割った値を意味するものてあり,自然長のときは伸長率0%て あって,「伸長率か150~350%」は,自然長の2.5倍ないし4. 5倍を意味するとの被控訴人の主張を認める。」(10) 原判決9頁14行目の「100%」を「0%」と改める。(11) 原判決9頁25行目の「1.5倍ないし3.5倍」を「2.5倍ないし4.5倍」と改める。
(12) 原判決10頁22行目冒頭から同頁末尾まてを次のとおり改める。「 本件発明1における「ウエスト部」は,吸収主体10の長手方向端部 (透液性トッフシート11の端部)付近とウエスト開口縁との間の領域てあ り,「腰下部」は,吸収主体10の長手方向端部(透液性トッフシート11 の端部)付近とレック開口始端との間の領域てある。」(13) 原判決11頁5行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。「 控訴人らは,構成要件Cの「中央部を除く」とは,「吸収コア13か位 置する中央部には存在せす」との意味てあると主張する。同主張は,腰下 部のうち吸収コアの存在しない上端部を除く部分を「中央部」と呼ふもの てあり,「中央部」という用語を横方向てはなく,縦方向の「中央部」と 解釈しているものてある。
 しかし,控訴人らは,「ウエスト部」は,吸収主体10の長手方向端部 (透液性トッフシート11の端部)付近とウエスト開口縁との間の領域て あると主張しており,これは,控訴人らか,構成要件Cにおける縦方向の領域てある「腰下部」か,吸収主体10の長手方向端部(透液性トッフ シート11の端部)付近とレック開口始端との間の領域てあることを認め たということてある。そうてあれは,構成要件Cにおける「腰下部」とは 上記の意味の領域てあるから,「腰下部の中央部」の縦方向の領域につい ては,特許請求の範囲の記載から一義的に明確てあって,控訴人らの主張 するような限定解釈の余地はない。
 また,構成要件Cの文言によれは,「前記腰下部の前記伸縮部材」は, 「(中央部を除く)左右脇部に配置」されていなけれはならない。本件明 細書には,「脇部」との用語について,「『脇部』とは,胴周り部Tにお ける両側部を意味する。」(【0032】)と記載されており,紙おむつ の周方向のみならす縦方向の範囲も含めて明確に定義されている。控訴人 らの上記主張は,構成要件Cの要件てある「左右脇部に配置され」との文 言と整合しない。」
3 当審における当事者の主張
(1) 争点2-2(均等侵害の成否)について
ア 控訴人らの主張
仮に,各被控訴人製品か,そのフィットキャサー221 の一部(221-1)か,腰下部て周方向に連続して配置されていることにより,本件発明1の 構成要件Cを文言解釈上充足しないとしても,各被控訴人製品は,次のと おり,いわゆる均等の5要件を充たしているから,本件発明1と均等てあ り,その技術的範囲に属するものてある。(ア) 非本質的部分(第1要件) 本件明細書の【0010】にもあるように,本件発明1の構成要件Cにおいて,腰下部の伸縮部材を,腰下部の中央部を除く左右脇部に配置 するのは,半剛性の吸収コアを伸縮部材の収縮力により変形させたり皺 を生しさせたりすることを防止し,「その結果,製品として目立つ中央部か変形したり皺を生したりすることかないのて,見栄えに優れた製品 となる。」との作用効果を奏するためてある。よって,当該作用効果に 関連する本件発明1の本質的な部分は,半剛性の吸収コア上に伸縮部材 を配置しない点にある。各被控訴人製品は,半剛性の吸収コア上に伸縮部材を配置しておら す,伸縮部材(フィットキャサー221-1)は,吸収コアから外れた吸収 主体上に周方向に連続して配置されているにすきない。したかって,本件発明1と各被控訴人製品との異なる部分(フィット キャサー221-1 か,腰下部て周方向に連続して配置されていること) は,本件発明1の本質的部分てはない。(イ) 置換可能性(第2要件) 従来製品において,腰下部に伸縮部材か配置されている場合,当該製品の吸収コアか変形し,大きな皺か生しることから,キャラクターなと のテサインは,伸縮部材の配置かない後身頃なとに印刷されていた。
 また,伸縮部材か配置されている箇所にキャラクターなとのテサインを 印刷した製品なとも存在したか,伸縮部材の伸長力により発生した皺の 為,見栄えは必すしも良いものてはなかった。これに対し,本件発明1の実施品は,腰下部の伸縮部材か,腰下部の 中央部を除く左右脇部に配置されており,吸収コア上か平面になってお り,印刷されたキャラクターも明確に判別てきる。また,各被控訴人製 品ても同様に吸収コア上か平面になっており,印刷されたキャラクター は明確に判別てきる。このように,各被控訴人製品は,本件発明1の 「製品として目立つ中央部か変形したり皺を生したりすることかないの て,見栄えに優れた製品となる。」との作用効果を奏している。したかって,本件発明1の構成要件Cの一部を各被控訴人製品の上記 異なる部分に置き換えても,本件発明1と同一の作用効果を奏するため,置換可能性かある。 (ウ) 置換容易性(第3要件)
各被控訴人製品製造当時,製造上の理由から,構成要件Cの「腰下部 の中央部を除く左右脇部に配置」することに代えて,吸収コアを避けた 吸収主体の一部に伸縮部材を配置することは,当業者か容易に想到する 構成てあるから,各被控訴人製品との前記異なる部分については置換容 易性かある。(エ) 公知技術からの想到非容易性(第4要件) 少なくとも本件発明1の構成要件Dは,本件特許の出願前の公知技術にはない独創的な構成てあるから,構成要件Dを備える各被控訴人製品 の構成は,本件特許の出願前の公知技術から,当業者か容易に想到てき たものてはない。(オ) 意識的除外等の特段の事情(第5要件) 本件特許の出願審査の過程て,各被控訴人製品の構成をその技術的範囲から除外した等の特段の事情はない。
 被控訴人は,出願当初明細書には,各被控訴人製品のように,伸縮部材か,腰下部の一部において吸収主体10を横断して周方向に連続して 配置固定され,腰下部の残部においては中央部に存在せす,製品の左右 脇部においてのみ配置固定されるという構成をも含めた開示・示唆か あったにもかかわらす,これを意識的に除外したものてあると主張す る。しかしなから,構成要件Cには,「腰下部の全領域において中央部を 除く」と記載されているわけてはなく,また,「左右脇部にのみ」とも 記載されているわけてはないのてあるから,出願経過において,意識的 に「吸収コア13か位置しない中央部にも伸縮部材を存在させない」と の構成を記載したものてはないから,意識的除外には該当しない。イ 被控訴人の主張 各被控訴人製品は,以下のとおり少なくとも均等論の第1,第4及ひ第5要件を充足しないから,均等侵害は成立しない。 (ア) 非本質的部分(第1要件)について控訴人らは,フィットキャサー(221-1)か腰下部て周方向に連続し て配置されている点て異なるとしても,同部分は,本件発明1の本質的 部分てはないと主張する。しかし,同主張は,特許請求の範囲に記載さ れたとの構成とフィットキャサー(221-1)とを対比しているのかか明 瞭てはない。仮に,控訴人らか,フィットキャサー(221-1)は腰下部にあっても, 吸収コアか存在しない部分はウエスト部と異なるところかないから,フ ィットキャサー(221-1)か腰下部にあることは本件発明1の本質的部分 に関するものてはないと主張するのてあれは,同主張は,「ウエスト部 は,吸収主体10の長手方向端部(透液性トッフシート11の端部)付 近とウエスト開口縁との間の領域てある」との控訴人らの主張を裏口か ら覆すことにほかならす,失当てある。また,仮に,控訴人らか,フィットキャサー(221-1)は吸収コアか存 在しない部分にあるから,「腰下部の中央部を除く左右脇部に配置さ れ」た伸縮部材と均等てあると主張するのてあれは,同主張も明らかに 本件発明1の本質と矛盾している。本件発明1の本質の少なくとも一部 は,腰下部の中央部から伸縮部材を除くことによって中央部に皺を生し させないことにある。したかって,中央部に伸縮部材か存在しても均等 てあるといえる場合かあるとすれは,控訴人らの主張とは正反対に,伸 縮部材か板のような剛性のある部材に固定されているために伸縮性を全 く発揮てきないような場合に限られるはすたからてある。いすれにせよ,本件明細書の【0010】の「製品として目立つ中央部か変形したり皺を生したりすることかないのて,見栄えに優れた製品 となる。」との作用効果の観点からすれは,吸収コア上に配置される伸 縮部材を「中央部を除く左右脇部」に配置することよりも,吸収コア上 てはない箇所に配置される伸縮部材を「中央部を除く左右脇部」に配置 することの方かより技術的に重要てある。また,同しく【0010】の 記載の「さらに,製品を見るとき,目立つのは中央部(周方向の中央 部)てあるところ,この形態においては中央部を除く左右脇部において のみ伸縮部材か存在するのて,製品の見栄えに優れる。」という作用効 果の観点からは,伸縮部材か吸収コアの上に配置されているか否かは技 術的に無関係てあり,伸縮部材か中央部の全体において中央部を除く左 右脇部に配置される必要かあること等を考慮すれは,「縦方向に沿って 腰下部まて延在する半剛性の吸収コアを有し」との構成と,「腰下部の 伸縮部材は,腰下部の中央部を除く左右脇部に配置されている」との構 成の双方とも本件各発明の本質的部分てあると解される。さらに,後記 (ウ)て述へる本件特許の出願経過を考慮すれは,構成要件Cの「前記腰 下部の前記伸縮部材は,前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置さ れ」との点は,少なくとも本件各発明の本質的部分てあると解される。よって,周方向に連続して配置されるフィットキャサー(221-1)の 一部か腰下部に配置されていることから,「前記腰下部の前記伸縮部材 は,前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置され」(構成要件C)と の点て本件各発明と相違する各被控訴人製品は,本件各発明の本質的部 分において相違するものてあるから,均等論の第1要件を充足しない。(イ) 公知技術からの想到非容易性(第4要件)について 本件各発明か,花王発明に基つき進歩性欠如の無効理由を有すること は,前記(原判決15頁下から6行目から同19頁10行目)のとおりてある。
したかって,各被控訴人製品の構成か本件各発明の技術的範囲に属す るのてあれは,各被控訴人製品の構成か,本件各発明の出願時における 公知技術(花王発明)と同一又は容易に推考てきたものてあることは明 らかてある。よって,均等論の第4要件も充足しない。
(ウ) 意識的除外等の特段の事情(第5要件)について
構成要件Cの「前記腰下部の前記伸縮部材は,前記腰下部の中央部を 除く左右脇部に配置され」との要件は,出願当初明細書の特許請求の範 囲の記載には存在せす,平成20年6月19日付けの拒絶理由を回避す るため,平成20年8月26日付け手続補正書による補正(以下「本件 補正」という。)によって追加されたものてある。当該手続補正書と同日付けて提出された意見書において,出願人は, 「構成Cは,段落0043に依拠」する補正てあると説明している。出 願当初明細書の【0043】の記載とは,【0040】から始まる一連 の文章の一部てあることは明らかてあるから,図4に関する説明てあ る。そして,図4においては,腰下部Uの吸収コアか存在する部分のみ ならす,吸収コアか存在しない吸収主体部分も含めて,腰下部Uの全領 域において,中央部を除く左右脇部に腰下部伸縮部材21F,21Bか 配設されている様子か図示されていることから,構成要件Cの要件の追 加か,このような図4の形態を意図して追加されたものてあることか明 らかてある。また,出願当初明細書には,現在の明細書(本件明細書)の記載と同 しく,「上記の第1~第4の実施の形態を概念的に纏めると,それそれ 図12の(A)~(D)に示すとおりとなる。これらを比較して推測て きるように,ウエスト伸縮部材20F,20B,ならひに腰下部伸縮部 材21F,21Bは,吸収主体10を横断して周方向に連続して配置固定する形態と,吸収コア13か位置する中央部には存在せす,製品の左 右脇部のおいてのみ配置固定する形態とを選択的に採ることかてき る。」,「このように伸縮部材の配設形態は適宜てあることを付言す る。」(いすれも【0050】)との記載かある。そうすると,各被控 訴人製品のように,腰下部の一部は吸収主体10を横断して周方向に連 続して配置固定,腰下部の残部は中央部には存在せす,製品の左右脇部 においてのみ配置固定という構成をも含めた開示・示唆かあったとい え,また,伸縮部材の配設形態を特許請求の範囲の記載においてとのよ うに特定するかも出願人の任意てあったことか明らかてある。そのよう な状況の中,出願人は,上記のとおり,構成要件Cを追加する本件補正 を行ったのてある。以上の出願経過に鑑みれは,構成要件Cの「前記腰下部の前記伸縮部 材は,前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置され」との形態以外の 伸縮部材の配設形態,すなわち,各被控訴人製品のように吸収主体10 を横断して周方向に連続して配置固定,腰下部の残部は中央部には存在 せす,製品の左右脇部においてのみ配置固定という構成を含むその他の 伸縮部材の配設形態の構成は,本件補正によって,本件各発明の技術的 範囲から意識的に除外されたことか客観的・外形的に明らかてある。以上によれは,本件については,意識的除外等の特段の事情かあり, 均等を認めることはてきない。(2) 争点5(時機に後れた攻撃方法か否か等)について ア 被控訴人の主張(ア) 控訴審における控訴人らの主張は,いすれも時機に遅れた攻撃方法 の提出てある。控訴人らは,「ウエスト部は,吸収主体10の長手方向端部(透液性 トッフシート11の端部)付近とウエスト開口縁との間の領域てある」との原判決の認定を前提とした上て,1構成要件Cの「中央部を除く」 とは,「吸収コア13か位置する中央部には存在せす」との意味てある との新たな文言侵害の主張,及ひ2各被控訴人製品について均等侵害か 成立するとの新たな主張を,控訴審になって初めて提出した(以下,1 の主張と2の主張を併せて「本件攻撃方法」という。)。しかしなから,控訴人らは,原審においては,「ウエスト部は,胴回 り部のうちウエスト開口縁側の領域てあり,かつ,吸収コア13の長手 方向端部と重ならない部分と解するへきてある。」として,原判決の上 記認定とは異なる「ウエスト部」の解釈を一貫して主張し,この解釈を 前提として,各被控訴人製品か構成要件Dの「前記腰下部に配置された 前記伸縮部材の伸張応力及ひ断面外径は,前記ウエスト部に配置された 前記伸縮部材の伸張応力及ひ断面外径よりも小さく」との要件を充足す ることについての主張に専心してきた。これに対して,被控訴人も,原審においては,「ウエスト部」に関す る控訴人らの解釈を前提とした構成要件D非充足の主張か認められるこ とを前提に,「ウエスト部」の解釈に関する控訴人らの主張を争わない とした上て,専ら,各被控訴人製品か構成要件Dの「前記腰下部に配置 された前記伸縮部材の伸張応力及ひ断面外径は,前記ウエスト部に配置 された前記伸縮部材の伸張応力及ひ断面外径よりも小さく」との要件を 充足しないとの主張及ひこれに対する控訴人らの反論への再反論に注力 するとともに,予備的に,原判決か採用した構成要件C非充足の理由と 同様の主張も適時に提出していた。したかって,控訴人らは,原審において,構成要件Cについて,原判 決か採用した「ウエスト部」の解釈を前提として,本件攻撃方法と同様 の主張を提出する機会は十二分にあった。のみならす,控訴人らは,原 審か開始されるよりも前から本件攻撃方法と同様の主張を検討していた(乙61参照)。したかって,控訴人らか時機に後れて本件攻撃方法を 提出したことにつき「故意又は重大な過失」かあったことは明らかてあ る。また,本件攻撃方法は,原審における控訴人らの主張と重なるところ か全くないものてあり,特に均等論については五つもの各要件の充足性 について当事者間て新たに攻撃防御を重ねなけれはならないことになる から,「訴訟の完結を遅延させる」ものてあることは明らかてある。よって,被控訴人は,控訴人らの本件攻撃方法につき,民事訴訟法1 57条1項に基つく却下を申し立てる。(イ) 控訴審における控訴人らの主張は,禁反言の法理ないし訴訟上の信 義則に反し許されないこと被控訴人は,原審において,「ウエスト部」の解釈に関する原審にお ける控訴人らの主張を条件付きて認めた上て,これを前提とした防御に 多大な負担を強いられてきたか,それか奏功して,被控訴人は,原審に おいて,構成要件C非充足の主位的判断,及ひ原審における控訴人らの 「ウエスト部」の解釈に関する主張を前提とした構成要件D非充足の予 備的判断を勝ち取った。したかって,「ウエスト部」の解釈に関して,原審における控訴人ら の主張と明らかに矛盾する新たな主張を許すことは,原審において,控 訴人らの「ウエスト部」の解釈を前提とした主張に誠実に対応してきた 被控訴人の,もはや控訴人らか「ウエスト部」ないし構成要件Cについ て別異の主張をすることはないたろうという保護されるへき合理的な期 待に反するものてあるから,控訴人らか本件攻撃方法を主張すること は,禁反言の法理ないし訴訟上の信義則に反し,許されないというへき てある。イ 控訴人らの主張
(ア) 時機に後れた攻撃方法てあるとの主張について 訴訟において事実関係に争いかある場合に,当事者の一方か,相手方の主張を認めて争点を減らし,審理を促進させることは一般的になされ ることてあり,「審理の完結を遅延させる」ものに該当しないから,被 控訴人の主張には理由かない。(イ) 禁反言の法理ないし訴訟上の信義則違反てあるとの主張について 同一訴訟手続内において,控訴審において原審の認定を争わないとし たたけて,禁反言の法理ないし訴訟上の信義則に反するとするいわれは ない。まして,原審は控訴人らの請求を棄却しているのてあるから,原 審の認定を争わないことにより,被控訴人の利益を損なうおそれもな い。よって,控訴人らか本件攻撃方法を主張することか,訴訟上の信義則違反等の法理て制限される理由はない。
 また,控訴人ら文言侵害に関する新主張及ひ均等侵害の主張は,控訴理由書て主張されているものてあり,適時においてなされているから, 控訴審の「審理の完結を遅延させる」ものてはなく,被控訴人の主張に は理由かない。第3 当裁判所の判断 当裁判所も,各被控訴人製品は,本件各発明の技術的範囲に属しないから,控訴人らの請求はいすれも理由かないものと判断する。その理由は,次のとお りてある。
1 争点2-1(文言侵害の成否)について
(1) 本件発明1の構成要件Cについて ア 本件明細書の記載等る。
(ア) 本件明細書(甲2,3)の発明の詳細な説明には,次の記載かあ「【0010】
(作用効果)・・・請求項1記載の発明は,縦方向に沿って腰下部ま て延在する半剛性の吸収コアを有し,腰下部の伸縮部材は,腰下部の中 央部を除く左右脇部に配置されている。吸収コアは可撓性のシートに比較して半剛性を示すのて,伸縮部材に よる収縮力の伝達により変形したり皺を生したりすることか少ない。その結果,製品として目立つ中央部か変形したり皺を生したりするこ とかないのて,見栄えに優れた製品となる。製品の中央部には,キャラ クターなとのテサインを施すか,この部分か変形したり皺を生したりす ることかないためにそのテサインか崩れることなく鮮明に分かるものと なる。また,製品の周方向の締め付け力は,主に胴周り部の脇部に作用し, 肌との摩力により吸収コアの中央に向かうに従って減衰されるのて, 吸収コアのほほ全体領域においては周方向の締め付け力か小さいものと なり,お腹を過度に圧迫することかない。さらに,製品を見るとき,目立つのは中央部(周方向の中央部)てあ るところ,この形態においては中央部を除く左右脇部においてのみ伸縮 部材か存在するのて,製品の見栄えに優れる。」「【0032】
図3の符号において,「縦方向」とは,腹側と背側を結ふ方向を意味 し,「周方向」とは前記縦方向と直交する方向を意味する。「ウエスト 開口縁」とはウエスト開口部WOの縁を意味し,「レック開口縁」とは レック開口部LOの縁を意味する。「レック開口始端」とはレック開口 部LOのレック開口縁と接合部30とか交差する位置を意味し,レック 開口縁の始まり個所の意味てある。「胴周り部」Tとは,ウエスト開口 縁からレック開口始端に至る長さ範囲の全体領域を意味する。胴周り部 Tは,概念的に「ウエスト部」Wと「腰下部」Uとに分けることかてきる。これらの縦方向の長さは,製品のサイスによって異なるか,ウエス ト部Wは15~40mm,腰下部Uは65~120mmてある。「股 部」Lとは,レック開口部LOを形成する長さ範囲の全体領域を意味す る。また,「中央部」とは,製品の中央線を含む側部を除く中間領域を 意味する。「脇部」とは,胴周り部Tにおける両側部を意味する。」 「【0043】そしてかかる構成のもと,本発明に従って前身頃F及ひ後身頃Bのウ エスト部Wから股部Lまての間の領域たる腰下部Uにおける,前身頃F の下腹部及ひ後身頃Bの臀部に,周方向に沿って腰下部伸縮部材21 F,21Bか設けられている。そして,腰下部伸縮部材21F,21B はそれそれ,前身頃F及ひ後身頃Bにおいて,一方側の接合部30から 他方側の接合部30まての部分のうち吸収コア13のほほ全体を除く製 品の左右脇部に設けられている。」「【0050】 (ハンツ型使い捨ておむつの各形態についての補足説明及ひ他の実施の形態) 上記の第1~第3の実施の形態を概念的に纏めると,それそれ図12の(A)~(C)に示すとおりとなる。これらを比較して推測てきるよ うに,ウエスト伸縮部材20F,20B,ならひに腰下部伸縮部材21 F,21Bは,吸収主体10を横断して周方向に連続して配置固定する 形態と,吸収コア13か位置する中央部には存在せす,製品の左右脇部 の(ママ)おいてのみ配置固定する形態とを選択的に採ることかてきる。ま た,股部伸縮部材23の配設の有無についても選択可能てある。さら に,前身頃Fと後身頃Bとの間て伸縮部材の配設形態を相違させること もてきる。したかって,図12の(E)に他の実施の形態として示すよ うに,ウエスト伸縮部材20F,20B,ならひに腰下部伸縮部材21F,21Bを,吸収コア13か位置する中央部には存在せす,製品の左 右脇部においてのみ配置固定し,さらに股部伸縮部材23を設けない形 態や,図12の(F)に別の実施の形態として示すように,ウエスト伸 縮部材20F,20B,ならひに腰下部伸縮部材21F,21Bを,吸 収コア13か位置する中央部には存在せす,製品の左右脇部の(ママ)お いてのみ配置固定し,さらに股部伸縮部材23を設ける形態なとも採用 てきる。このように伸縮部材の配設形態は適宜てあることを付言する。
 腰下部伸縮部材21F,21B,または股部伸縮部材23を,吸収コア 13か位置する中央部には存在せす,製品の左右脇部の(ママ)おいての み配置固定する場合において,腰下部伸縮部材21F,21B端部,ま たは股部伸縮部材23の端部か吸収コア13の側縁部に重なる場合と, 吸収コア13の側縁に達しないて離間する場合との両者を含む。」 「【0056】他方て,製品の中央部(吸収コアのほほ全体領域)に,図14に示す ように,不透液性ハックシート12の裏面側にキャラクターなとのテサ インをたとえは印刷により施すことかてきる。このテサイン部分は,あ る程度の剛性を有する吸収コア13を有し,かつ本発明にしたかって外 形シート1か変形したり皺を生したりすることかないために,そのテサ インか崩れることなく鮮明に分かるものとなる。また,図14に示すよ うに,製品の正面と裏面とに対応して,当該キャラクターの正面と背面 とを施すと,誰ても一目て前後を判別てき,おむつ換えか楽しくなり, 着用者も喜ふものとなる。テサインを施したテサインテサイン(ママ) シートを外形シート間に介在させることてもよい。また,外形シート1 にテサイン印刷することもてきる。」(イ) また,図4(第1の実施の形態の展開状態使用面側からの平面図) 及ひ図9(第3の実施の形態の展開状態使用面側からの平面図)は,吸収主体10の長手方向端部(透液性トッフシート11の端部)付近を もってウエスト部Wと腰下部Uとを区分し,ウエスト部Wにウエスト伸 縮部材20F,20Bを配置し,腰下部Uに腰下部伸縮部材21F,2 1Bを配置していることを図示している。イ 「ウエスト部」と「腰下部」の意味について 上記ア認定の本件明細書及ひ図面の記載によれは,本件発明1における「ウエスト部」は,吸収主体10の長手方向端部(透液性トッフシート1 1の端部)付近とウエスト開口縁との間の領域てあり,「腰下部」は,吸 収主体10の長手方向端部(透液性トッフシート11の端部)付近とレッ ク開口始端との間の領域てあると認められる(この点は,控訴人らも争わ ないところてある。)。ウ 「腰下部の中央部」の意味について 上記ア認定の本件明細書及ひ図面の記載よれは,本件発明1における「腰下部の中央部」とは,製品の中央線を含む,側部を除く周方向の中間 領域を意味するものと認められる(【0032】)。控訴人らは,「腰下部の中央部」との用語か周方向の中央を意味すると しても,縦方向において腰下部のうちとの部分を意味するのかは,本件明 細書【0050】の説明によるへきてあるとして,構成要件Cの「腰下部 の中央部を除く」とは「吸収コア13か位置する中央部には存在せす」の 意味てあると主張する。控訴人らの主張は,「腰下部の中央部」とは,製 品の中央線を含む,側部を除く周方向の中間領域のうち,吸収コアの存在 する領域たけを意味するというものと解される。なるほと,本件明細書の【0050】には「ウエスト伸縮部材20F, 20B,ならひに腰下部伸縮部材21F,21Bは,吸収主体10を横断 して周方向に連続して配置固定する形態と,吸収コア13か位置する中央 部には存在せす,製品の左右脇部のおいてのみ配置固定する形態とを選択的に採ることかてきる」との記載かあり,また,【0056】には「製品 の中央部(吸収コアのほほ全体領域)に,図14に示すように,・・・キ ャラクターなとのテサインをたとえは印刷により施すことかてきる」との 記載かあって,「腰下部の中央部」に吸収コア13か位置すること及ひ 「腰下部の中央部」か吸収コアのほほ全体領域てあることか記載されてい る。しかし,これらの記載は,吸収コア13か位置する部分のみ,あるいは 吸収コアの全体領域のみか,「腰下部の中央部」てあることを示すものて はない。また,本件明細書の【0050】には,「ウエスト伸縮部材20F,2 0B,ならひに腰下部伸縮部材21F,21Bは,…吸収コア13か位置 する中央部には存在せす,製品の左右脇部のおいてのみ配置固定する形 態」,「ウエスト伸縮部材20F,20B,ならひに腰下部伸縮部材21 F,21Bを,吸収コア13か位置する中央部には存在せす,製品の左右 脇部においてのみ配置固定し」なとの記載かある。これらの記載によれ は,「腰下部の中央部」は,腰下部(すなわち胴周り部)の縦方向の範囲 全体において,「左右脇部」と相対立する概念して位置付けられているこ とか認められる。さらに,後記2(2)のとおり,構成要件Cは,平成20年8月26日付 けの本件補正によって付加された要件てあり,控訴人らの同日付けの意見 書において「請求項1発明の・・・構成Cは,段落0043に依拠し」と 記載されているところ,本件補正における構成要件Cの根拠とされた出願 当初明細書の【0043】(本件明細書の【0043】)において説明さ れている図4には,腰下部Uの吸収コアか存在する領域のみならす,吸収 コアか存在しない吸収主体の領域を含めて,腰下部Uの全領域において, 左右脇部にのみ腰下部伸縮部材21F,21Bか配設されている様子か図示されている。すなわち,「腰下部の中央部」か,製品の中央線を含む, 側部を除く周方向の中間領域のうち,吸収コアの存在する領域たけを意味 するという控訴人らの上記主張は,出願経過における控訴人ら自身の上記 意見書における説明及ひ本件明細書の記載と上記図4とも矛盾するものて ある。以上によれは,構成要件Cの「前記腰下部の前記伸縮部材は,前記腰下 部の中央部を除く左右脇部に配置され」における「腰下部の中央部」を, 吸収コアの位置する中央部のみに限定することはてきす,控訴人らの上記 主張を採用することはてきない。エ 各被控訴人製品か構成要件Cを充足するかについて
(ア) 証拠(甲4,5,乙2,3)及ひ弁論の全趣旨によれは,各被控訴人製品1のフィットキャサー(221)の本数は,前身頃か12本ないし1 4本,後身頃か13本てあり,そのうち周方向に連続して配置されてい るものの本数は,前身頃か1本ないし3本,後身頃か4本ないし5本て あり,各被控訴人製品2のフィットキャサー(221)の本数は,前身頃か 12本ないし14本,後身頃か11本てあり,そのうち周方向に連続し て配置されているものの本数は,前身頃か3本ないし4本,後身頃か3 本ないし5本てあること,各被控訴人製品のフィットキャサー(221)の うち周方向に連続して配置されているフィットキャサー(221-1)は, 吸収コア(213)の長手方向端部よりも上部(ウエスト開口縁の側)の領 域に配置され,その一部か吸収主体(210)を横断して配置され,フィッ トキャサー(221)からフィットキャサー(221-1)を除いたフィットキャ サー(221-2)は,吸収コア(213)の長手方向端部よりも下部(股部の側) の領域において,吸収コア(213)を横断することなく,中央部を除く左 右脇部に配置されていることか認められる。(イ) そうすると,各被控訴人製品の吸収主体(210)は,本件発明1の吸収主体10に該当するから,各被控訴人製品は,フィットキャサー (221-2)か腰下部の左右脇部に配置されているものの,フィットキャ サー(221-1)は,腰下部においてその周方向に連続して配置されてい て,腰下部の左右脇部のみならすその中央部にも配置されているものて ある。したかって,各被控訴人製品は,本件発明1の「前記腰下部の前 記伸縮部材は,前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置され」との構 成要件Cを充足しない。(2) 本件発明2の構成要件Gについて 本件発明2の構成要件Gは「前記腰下部の前記伸縮部材は,…前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置され,」てあり,本件発明1の構成要件Cの 構成を含むものてあるから,前記のとおり各被控訴人製品か構成要件Cを充 足しない以上,各被控訴人製品は,本件発明2の構成要件Gも充足しない。(3) 小括 よって,各被控訴人製品について,本件各発明との関係において文言侵害 は成立しない。
2 争点2-2(均等侵害の成否)について
(1) 各被控訴人製品と本件各発明との相違点 前記1のとおり,各被控訴人製品は,腰下部に配置されたフィットキャサー(221)の一部てあるフィットキャサー(221-1)か,周方向に連続して配 置されていて,本件発明1の構成要件Cの「前記腰下部の前記伸縮部材は, 前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置され」との要件を文言上充足しな い。各被控訴人製品は,少なくともこの点において,本件各発明と相違す る。そして,均等侵害については,最高裁判所平成6年(オ)第1083号同1 0年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁か示す五つの要件 について判断する必要かあるところ,本件ては,事案の内容に鑑み,ます,意識的除外等の特段の事情(第5要件)から判断する。
 (2) 意識的除外等の特段の事情(第5要件)についてア 本件特許の出願経過の概要 控訴人らは,平成12年12月8日に本件特許を出願し(特願2000-374190,甲1),平成14年6月18日に出願公開されたものの (特開2002-172134,甲2),平成20年6月19日に拒絶理 由通知を受けた(乙6の1)。控訴人らは,平成20年8月26日,手続補正書(乙6の5)を提出し て本件補正をするとともに同日付けて意見書(乙6の2)を提出した。控訴人らは,上記出願について,平成20年9月11日,特許査定を受 けた(乙6の3)。イ 本件補正の内容 控訴人らは,平成20年6月19日付けて,請求項1ないし8について,引用文献1(特開平8-280739号公報)及ひ引用文献2(特開 2000-126229号公報)を理由とする拒絶理由通知を受け(乙6 の1),請求項1を次のとおり補正した。(本件補正前のもの)
「【請求項1】 使用状態においてウエスト開口部及ひ左右レック開口部か形成され,少なくとも前記ウエスト開口縁から前記レック開口始端に至る長さ範囲 の胴周り部において周方向に沿い,かつ縦方向に間隔を有する多数の伸 縮部材を有する使い捨て紙おむつてあって,少なくとも前身頃において,太さか620dtex以下の前記伸縮部 材か,前記間隔を7.0mm以下とされた状態て製品の外面を構成する シートに対して取り付けられた領域か,前記胴周り部の60%以上の長 さ範囲にわたって存在する, ことを特徴とする使い捨て紙おむつ。」
 (本件補正後のもの)
 「【請求項1】
使用状態においてウエスト開口部及ひ左右のレック開口部か形成さ れ,前記ウエスト開口縁を含むウエスト部と,該ウエスト部の下端から前記レック開口始端に至る腰下部とからなる胴周り部において,周方向に沿い,かつ縦方向に間隔をもって配置された多数の伸縮部材を有し,かつ縦方向に沿って前記腰下部まて延在する半剛性の吸収コアを有する使い捨て紙おむつてあって, 前記伸縮部材は,前記胴回り部の60%以上の長さ範囲にわたって前 記間隔を7.0mm以下とされた状態て配置され,
前記腰下部の前記伸縮部材は,前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置され,
前記腰下部に配置された前記伸縮部材の伸張応力及ひ断面外径は,前記ウエスト部に配置された前記伸縮部材の伸張応力及ひ断面外径よりも小さく,かつ太さか620dtex以下て,伸長率か150~350%ある,
 ことを特徴とする使い捨て紙おむつ。」
ウ 本件補正により意識的に除外されたもの
上記イによれは,本件発明1については,本件補正により,少なくと も構成要件Cの「前記腰下部の前記伸縮部材は,前記腰下部の中央部を 除く左右脇部に配置され,」との要件か加えられたことか明らかてあ る。出願当初明細書の【0050】には,「上記の第1~第4の実施の形 態を概念的に纏めると,それそれ図12の(A)~(D)に示すとおり
となる。これらを比較して推測てきるように,ウエスト伸縮部材20 F,20B,ならひに腰下部伸縮部材21F,21Bは,吸収主体10 を横断して周方向に連続して配置固定する形態と,吸収コア13か位置 する中央部には存在せす,製品の左右脇部のおいてのみ配置固定する形 態とを選択的に採ることかてきる。」,「このように伸縮部材の配設形 態は適宜てあることを付言する。」との記載かある(乙6の4)。本件 補正前と本件補正後の請求項1の前記各記載と図12の(A)~(D) の実施の形態からも明らかなように,本件補正前の請求項1には,腰下 部伸縮部材か吸収主体10を横断して周方向に連続して配置固定する実 施形態と,腰下部伸縮部材か吸収コア13か位置する中央部には存在せ す,製品の左右脇部においてのみ配置固定される実施形態か選択的に存 在し,いすれも請求項1に包含されていたところ,本件補正後の請求項 1においては,このうち,前者(腰下部伸縮部材か吸収主体10を横断 して周方向に連続して配置固定する実施形態)か減縮により除外され, 後者(腰下部収縮部材か中央部には存在せす,製品の左右脇部において のみ配置固定される実施形態)か本件補正による減縮後も残ったことか 認められる。なお,控訴人らの平成20年8月26日付け意見書によれは,本件補 正により加えられた構成要件Cは,本件明細書の【0043】に依拠す るものてあることか明記されており(乙6の2),本件明細書の【00 43】には,「腰下部伸縮部材21F,21Bは・・・一方側の接合部 30から他方側の接合部30まての部分のうち吸収コア13のほほ全体 を除く製品の左右脇部に設けられている」との記載かあり,これと同一 の実施形態についての記載てある【0040】て引用されている図4に 記載された実施形態をみると,腰下部伸縮部材21F,21Bか腰下部 中央部を除く左右脇部にのみ配置されている実施形態か示されている。以上によれは,本件補正を客観的・外形的に見れは,控訴人らにおい て,腰下部における伸縮部材の配置について,構成要件Cの「前記腰下 部の前記伸縮部材は,前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置され」 との実施形態か包含されるものに減縮し,従前の請求項1に記載されて いた,これと異なる実施形態,すなわち,腰下部伸縮部材の一部か吸収 主体10を横断して周方向に連続して配置固定され,その余の腰下部伸 縮部材か製品の左右脇部において配置固定されるという実施態様を,本 件補正により,本件発明1の技術的範囲から意識的に除外したものと認 められる。そして,各被控訴人製品は,腰下部伸縮部材に当たるフィットキャ サー221 の一部(221-1)か吸収主体10を横断して周方向に連続して配 置固定され,その余のフィットキャサー221-2 か中央部を除く左右脇部 において配置固定されるというものてあるから,各被控訴人製品は,本 件補正により請求項1から意識的に除外されたものに包含されるものと いわさるを得ない。したかって,各被控訴人製品については,均等論を 主張し得ない特段の事情か存在するものと認められる。(3) 小括 よって,各被控訴人製品について,本件各発明との関係において均等侵 害は成立しない。
3 争点5(時機に後れた攻撃方法か否か等)について
(1) 被控訴人は,控訴人らの本件攻撃方法の提出は時機に後れたものてあり 却下されるへきてある旨主張する。しかし,本件攻撃方法は,いすれも平成25年3月18日の当審第1回口 頭弁論期日において陳述された控訴理由書に記載されており,既に提出済み の証拠に基つき判断可能なものてある上,当裁判所は,その後2回の弁論準 備手続期日(そのうち1回は技術説明会を実施したもの)を経て,同年10月7日の当審第2回口頭弁論期日において弁論を終結したものてある以上, 本件攻撃方法の提出か「訴訟の完結を遅延させる」(民訴法157条1項) ものとまては認められない。よって,本件攻撃方法を時機に後れたものとして却下する必要はない。
 (2) 被控訴人は,本件各発明の「ウエスト部」の文言解釈に関して,控訴人 らか控訴審において,原審における主張と異なる主張をしたことは,被控訴 人において,もはや控訴人らか「ウエスト部」ないし構成要件Cについて別 異の主張をすることはないてあろうとの合理的な期待に反するものてあり,禁反言の法理ないし訴訟上の信義則に反し許されない旨主張する。 しかし,控訴人らは,「ウエスト部」の解釈に関して,原審において主張 したところか原判決によっていれられなかったことを受けて,控訴審におい ては,原判決の認定を争わないとしたものにすきない。このような控訴人ら の対応をもって,禁反言の法理ないし訴訟上の信義則に反するものというこ とはてきない。
 よって,被控訴人の上記主張を採用することはてきない。
第4 結論 以上によれは,原判決は相当てあり,本件控訴は理由かないからこれを棄却 することとして,主文のとおり判決する。
 知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 設樂一
裁判官 西 理 香
裁判官 田中正哉
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