平成25年11月27日判決言渡 平成24年(行ケ)第10282号 審決取消請求事件 口頭弁論終結日 平成25年10月30日判決
原 告
シンテース ケセルシャフト ミト ヘシュレンクテル ハフツンク 浜田治雄西 口 克 赤津悌二
訴訟代理人弁護士・弁理士
訴訟代理人弁理士
同 同田辺稜 被 告特許庁長官 指定代理人長﨑洋一 同 瀬津太朗 同 氏原康宏 同 堀内仁子主文
 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及ひ上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及ひ理由
第1 請求 特許庁か不服2010-27835号事件について平成24年3月27日にした審決を取り消す。
第2 前提となる事実
1 特許庁における手続の経緯
発明の名称を「髄内釘」とする発明について,平成15年10月21日に国際出 願かされ(以下「本願」といい,本願に係る明細書を「本願明細書」という。), 平成22年3月19日,特許請求の範囲を変更する旨の手続補正か行われたか(甲 7),同年8月16日,拒絶査定された(甲9)。これに対し,原告は,拒絶査定 不服審判(不服2010-27835号事件)を請求し(甲10),特許庁は,平 成24年3月27日,請求不成立の審決(以下「審決」という。)をし(甲11), その謄本は,同年4月6日,原告に送達された。2 特許請求の範囲
本願に係る,平成22年3月19日付け手続補正後の特許請求の範囲の請求項1 は,以下のとおりてある(以下,請求項1に係る発明を「本願発明」という。) (甲7)。「特に脛骨用の髄内釘(1)てあって,近位端部(2)と,髄腔への導入に適し た遠位端部(3)と,中心軸(6)とを有し, A)200~500mmの範囲の全長Lを有し,かつ B)長さG≦Lの湾曲部(4)を有する髄内釘(1)において, C)前記長さGの湾曲部(4)か300~1300mmの範囲の曲率半径を有し, D)比L/Rか0.2~0.8の範囲にあり,かつ E)遠位端部(3)か,長さ「l」≦Lの直線部(5)として構成されており, F)前記湾曲部(4)の両終点の接線か,7°~12°の範囲の角度アルファを含 むことを特徴とする髄内釘(1)。」3 審決の理由
審決の理由は,別紙審決書写しに記載のとおりてあり,その要旨は,以下のとお りてある。(1) 審決の認定した本願発明とスイス国特許出願公開第674613号明細書 (以下「刊行物」という。)に記載された発明(以下「引用発明」という。)の内 容,引用発明と本願発明との一致点及ひ相違点は,以下のとおりてある。ア 引用発明の内容
「脛骨髄内釘てあって,中央部1に対して,近端部2と,後部皮質に打ち込まれ る時にスライタの役割をする遠端部3とを有し,管状てあり,220~420mmの範囲の全長Lを有し,
全長Lよりも短い,直線状中央部1と,中央部1に接続されるわん曲片6からな る部分を有し,わん曲片6と中央部1とからなる部分のうち,わん曲片6は,その部分長A′′か 全長Lに合わせて調整され,180~220mmの曲率半径rを有し,全長L/曲率半径rか1.0~2.33の範囲てあり, 遠端部3か直線状に形成されており, 近端部2と遠端部3とか中央部1の中心軸4に対して折れ曲かることにより,近端部2と遠端部3とは中央部1を介して12°~24°たけ偏る, 解剖学的条件に最適の形状を有する脛骨髄内釘。」イ 一致点 「特に脛骨用の髄内釘てあって,近位端部と,髄腔への導入に適した遠位端部と,中心軸とを有し,A)220~420mmの範囲の全長Lを有し,かつB)長さG ≦Lの湾曲部を有する髄内釘において,C)長さGの湾曲部か所定の曲率半径を有 する部分を有し,E)遠位端部か,長さ「l」≦Lの直線部として構成されており, F)前記湾曲部の両終点の接線か,12°の角度アルファを含むことを特徴とする 髄内釘(1)。」ウ 相違点
(ア) 相違点1 「全長Lか,本願発明ては,200~500mmの範囲てあるのに対して,刊行物に記載された発明ては,220~420mmの範囲てある点。」(イ) 相違点2 「湾曲部か,本願発明ては,300~1300mmの範囲の曲率半径を有し,比L/Rか0.2~0.8の範囲にあるのに対して,刊行物に記載された発明ては, 中央部1とわん曲片6とからなる部分のうち,わん曲片6は,その部分長A′′か全 長Lに合わせて調整され,180~220mmの曲率半径rを有し,全長L/曲率 半径rか1.0~2.33の範囲てある点。」(ウ) 相違点3 「湾曲部の両終点の接線か,本願発明ては,7°~12°の範囲の角度アルファを 含むのに対して,刊行物に記載された発明ては,近端部2と遠端部3とか中央部1 の中心軸4に対して折れ曲かることにより,近端部2と遠端部3とは中央部1を介 して12°~24°たけ偏る点。」(2) 審決の容易想到性判断の内容は,以下のとおりてある。
すなわち,審決は,1相違点1については,髄内釘の技術分野において,髄内釘 を解剖学的条件に最適の形状とするために,年齢や個人差により異なる患者の骨形 状に対応する広い範囲の形状の髄内釘を予め作成しておき,治療に際して患者に最 適の髄内釘を選択可能とすることは本願前に周知の技術事項てあり,引用発明にお いて,解剖学的条件に最適の形状を有する髄内釘を得るために,上記周知の技術事 項を考慮して,骨折に伴う治療に際して,年齢や個人差により異なる患者の脛骨に 対して解剖学的条件に最適な形状の脛骨髄内釘を幅広く選択てきるように,全長L を220~420mmの範囲から,200~500mmの範囲に広けて作成するこ とは当業者か適宜なし得たとし,2相違点2については,引用発明において,解剖 学的条件に最適の形状を有する髄内釘を得るために,上記周知の技術事項等を考慮 して,骨折に伴う治療に際して,年齢や個人差により異なる患者の脛骨に対して解 剖学的条件に最適な形状の脛骨髄内釘を幅広く選択てきるように,相違点2に係る 構成とすることは,当業者か適宜なし得たとし,3相違点3についても,脛骨用髄 内釘の技術分野において,近位端部と遠位端部とのそれそれの中心軸の偏りを7° ~12°の範囲とすることは,本願前に周知の技術事項てあり,引用発明において, 解剖学的条件に最適の形状を有する髄内釘を得るために,前記周知の技術事項及ひ上記周知の技術事項を適用して,骨折に伴う治療に際して,年齢や個人差により異 なる患者の脛骨に対して解剖学的条件に最適な形状の脛骨髄内釘を幅広く選択てき るように相違点3に係る構成とすることは,当業者か適宜なし得たとした。また, 本願発明の奏する効果も,引用発明及ひ周知の技術事項から,当業者か予測てきた 効果の範囲内のものてあると判断した。第3 取消事由に関する当事者の主張
1 原告の主張 本願発明には当業者か予測し得ない格別の効果かあり,本願発明か容易想到てあるとした審決の判断には,以下のとおりの誤りかある。
(1) 本願発明の解決課題等について 本願発明の課題は,脛骨の―その長さに対する―解剖学的比率を考慮し,特にその髄管経路に最適化されている髄内釘を提供することてある。
 本願発明によって達成される利点は,本願発明による髄内釘を使用することにより, a)一定の適応における挿入力か―特に非穴あけ法において―削減されており, b)より小さな挿入力によってより小さな整復損失か生し, c)髄内釘か挿入か行われた後に髄管における生化学的に理想の状態にあり, d)髄内釘か挿入に際して後壁に突当たると,その屈曲か有効となる(従来技術て はこの点て歪められ,または整復損失を甘受しなけれはならない)点にある。また,本願発明における髄内釘の遠位端部は長さ「l」≦Lの直線部として構成 されている。それによって,以下の利点,すなわち a)生体力学的な軸との一致,b)整復損失のない遠位骨折治療の可能性,及ひ
c)遠位骨断片の転位の回避
かもたらされる。
(2) 本願発明の容易想到性の有無について 5
本願発明に係る髄内釘は,各相違点(特に相違点2及ひ相違点3)の構成を組み 合わせることにより,わすかな曲率を備えた髄内釘となるため,挿入力か小さくて 済み,また,髄内釘挿入の際に骨断片の互いに対する移動か,皆無となるか最小限 に留まることとになり,当業者か予測し得ない相乗的な効果を奏する。これに対し,刊行物並ひに甲12及ひ13には,単に患者の長骨に合わせて髄内 釘の数値を変動させる発明か記載されており,本願発明の相違点に係る構成を組み 合わせることにより上記のような相乗効果か生しることについての記載も示唆もな い。したかって,本願発明は,容易に想到することはてきない。
2 被告の反論
(1) 本願発明の解決課題等に係る主張に対して 本願発明の課題は,脛骨の長さに対する解剖学的比率を考慮し,特にその髄管経路に最適化されている髄内釘を提供することにある。
 本願発明において,髄内釘の全長Lを200~500mmの範囲とするのは,患者ことの脛骨の長さに対応するためてあるか,本願明細書には,全長Lを上記数値 の範囲内とすることの臨界的意義について,記載も示唆もない。また,本願発明に係る髄内釘の湾曲部の長さGを「G≦L」の範囲とすることに 実質的な意義はない。本願発明において,髄内釘(1)の曲率半径Rを髄内釘の全長Lに応して変える ことは,髄内釘(1)の挿入に際し,低いエネルキー消費と整復の損失を低くてき るという意義を有するといえる。しかし,本願明細書には,「曲率半径Rの下限値 を300mmとし,その上限値を1300mmとすること」,及ひ,「『全長L/ 曲率半径R』の下限値を0.2とし,その上限値を0.8とすること」の臨界的意 義について,記載も示唆もない。本願発明において,湾曲部(4)の両終点の接線かなす角度アルファαを7°~ 12°の範囲とすることの技術的意義は,遠位端(直線部)を有すること及ひ曲率半径を特定の値とすることとともに,髄内釘(1)の進入点に対して,髄管におけ る髄内釘(1)の最適な状態を生しることにあるといえる。そして,湾曲部(4) の両終点の接線,遠位端部(3)及ひ湾曲部(4)の曲率半径か一定の相関する関 係を有することにより効果を生しることか考えられる。しかし,本願明細書には, 上記角度アルファαの下限値を7°とし,その上限値を12°とすることの意義に ついて,何ら記載も示唆もない。(2) 本願発明の容易想到性に係る主張に対して
ア 引用発明 引用発明における解決課題は,髄腔と植え込み方法との解剖学的条件に最適の形状を有し,かつ全ての症状の下腿骨折の治療に使用するための髄内釘を提供するこ と,塑性変形せすに導入てき,導入の後に安定な副木固定をもたらす脛骨髄内釘を 提供することてある。引用発明は,脛骨髄内釘の全長Lを220~420mmの範 囲とすることにより,すへての症状の下腿骨折の治療に使用てきるとの効果を奏す る。引用発明ては,曲率半径rを180~220mmの範囲とし,「全長L/曲率半 径r」を1.0~2.33の範囲とし,さらに,近端部2と遠端部3との偏り角を 12°~24°としたことにより,脛骨髄内釘をすへての症状の下腿骨折の治療に 使用てきるように,骨に余計な負担を掛けすに,かつ,塑性変形させすに比較的簡 単に髄腔に導入することかてき,さらに,導入後の打ち込んた状態て骨と形状的に 最終結合されることて,安定な副木固定をもたらすことかてきるとの効果を奏する。引用発明における遠端部はスライタの役割をし,脛骨の軸に相当する髄腔の幾何 学的形状に従う傾向を強くし,かつ,比較的遠位の骨折の手当の際に解剖学的に最 適に適応したものてあるという意義を有する。引用発明は,上記の構成を採用することにより「解剖学的に適応した形状のお陰 て比較的簡単に,内植体または骨に余計な負担をかけすに髄腔に導入することかて き,打ち込んた状態て骨と経常的に最終結合される」との効果を奏する。イ 本願発明に格別の効果かないことについて
本願明細書には,本願発明全体の効果として, 「a)一定の適応における挿入力か―特に非穴あけ法において―削減されており, b)より小さな挿入力によってより小さな整復損失か生し, c)髄内釘か挿入か行われた後に髄管における生化学的に理想の状態にあり, d)髄内釘か挿入に際して後壁に突当たると,その屈曲か有効となる(従来技術て はこの点て歪められ,または整復損失を甘受しなけれはならない)。」 と記載されている。引用発明の効果は上記のとおりてあり,両者か奏する効果に実質的な相違はない。
 本願発明の奏する効果は,引用発明から予測し得る範囲内のものてあり,格別なも のてはない。第4 当裁判所の判断
当裁判所は,各相違点の構成を採用することによって,本願発明には当業者か予 測し得ない格別の効果かあるとする原告の主張は採用の限りてないと判断する。そ の理由は,以下のとおりてある。1 認定事実
(1) 本願明細書の記載 本願明細書には,以下の記載かある。また,本願に係る図面の図1は別紙図1のとおりてある。(甲1,2)
「【背景技術】 【0002】特許文献1により,近位端部およひ遠位端部を有し,これら両方か中央部から曲けられている一般的な髄内釘か周知てある。近位端部は,最大半径2 20mmの屈曲を有しうる。脛骨は自然のままては各患者においてさまさまに形成されており,特にさまさな 長さおよひ脛骨フラトーの大きさを―互いに依存して―有するため,髄内釘もそれ それの長さに応してさまさまなハラメータを有する必要かある。したかって,すへての髄内釘の長さに有効な一定の曲率半径は,高いエネルキー消費とともに整復の 高い損失をもたらすため挿入には最適てはない。
 【特許文献1】スイス特許第A674613号明細書【発明の開示】
【0003】この点て本発明は改善を提供する。本発明の課題は,脛骨の―その 長さに対する―解剖学的比率を考慮し,特にその髄管経路に最適化されている髄内 釘を提供することてある。本発明は,請求項1の特徴を有する髄内釘て上記の課題を解決する。本発明によって達成される利点は,本発明による髄内釘のおかけて, a)一定の適応における挿入力か―特に非穴あけ法において―削減されており, b)より小さな挿入力によってより小さな整復損失か生し, c)髄内釘か挿入か行われた後に髄管における生化学的に理想の状態にあり, d)髄内釘か挿入に際して後壁に突当たると,その屈曲か有効となる(従来技術て はこの点て歪められ,または整復損失を甘受しなけれはならない)。
 点において実質的に確認される。特定の実施形態においては,髄内釘の遠位端部は長さ「l」≦Lの直線部として 構成されている。それによって,さまさま利点,すなわち a)生体力学的な軸との一致, b)整復損失のない遠位骨折治療の可能性,およひc)遠位骨断片の転位の回避
かもたらされる。」
「【0004】特定の実施形態においては,湾曲部か髄内釘の直線部とともに, 7°~12°,好ましくは,8°~10°の範囲の角度アルファを含む。遠位端お よひ特定の曲率半径とともに―髄内釘の進入点に対して―髄管における髄内釘の最 適な状態か生しる。」「【0005】別の実施形態においては,湾曲部の曲率半径Rは350~120 90mmの範囲,好ましくは,400~1100mmの範囲にある。比L/Rは,適 切に0.3~0.7の範囲,好ましくは,0.4~0.6の範囲にある。」「【0008】図1およひ2に示されている髄内釘1は,脛骨における使用に意 図されている。これは近位端部2と,髄腔への導入に適した遠位端部3と,中心軸 6とを有する。近位端部2には,通常の照準補助を受入れことかてきるネシ穴11 か備えられている。髄内釘1の全長Lは255mmてある。さらに,髄内釘は,長 さG=127.5mmの湾曲部を有し,これは380mmの曲率半径を有する。し たかって,比L/Rは0.67てある。図面における髄内釘の屈曲は―髄内釘1の 移植か行われた後―解剖学的な中外側面に対応し,すなわち,髄内釘1は移植か行 われた後に前後方向に曲けられる。遠位端部3は,長さ「l」=127.5mmの直線部5として構成されている。
 湾曲部4は,直線部5とともに8°の角度アルファを含む。」(2) 刊行物の記載
刊行物には,以下の記載かある(甲15。以下,対応する国内特許出願(特願平 1-55249)の公開特許公報に基ついて記載する。)。「2.特許請求の範囲
1.中央部1に対して折れ曲かった近端部2と遠端部3を有し,一体に形成され た脛骨髄内釘において,近端部2か中央部1の中心軸4から角-(注:マイナス)
 10 ≦α(注:アルファ)≦-20 ,好ましくは-13 ≦α≦-17 たけ 偏り,遠端部3か中央部1の中心軸4から角+2 ≦β≦+4 たけ偏り,近端部 2か122~162mm,好ましくは137~147mmの長さAを有することを 特徴とする脛骨髄内釘。」(1頁左欄4行目ないし12行目)「[産業上の利用分野]本発明は,中央部Bに対して折れ曲かった近端部(A) と遠端部(C)を有し,一体に形成された脛骨髄内釘に関する。」(2頁左上段8 行目ないし11行目)「[発明か解決しようとする課題]本発明はこの点て対策と講しようとするもの 10てある。本発明の根底にある課題は,髄腔と植え込み方法との解剖学的条件に最適 の形状を有し,かつすへての症状の下腿骨折の治療に使用するための髄内釘を提供 することてある。特に一方ては塑性変形せすに髄腔に導入することかてき,他方て は導入の後に安定な副木固定をもたらす脛骨髄内釘を提供する課題か解決される。[課題を解決するための手段]本発明は,特許請求の範囲第1項の特徴を有する 脛骨髄内釘によって上記の課題を解決する。本発明に基つく脛骨髄内釘は,中央部の中心軸に対して屈折した遠端部を有する。
 この遠端部は髄内釘を後部皮質に打ち込む時にスライタの役割をする。このため髄 内釘先端部の進入角は一層鋭角をなし,髄内釘は髄腔の幾何学的形状に従う傾向か 強い。遥かに長く-先行技術と比較して-形成された近端部(ヘルツオークのわん 曲部)は遥かに早期に髄腔内に没入するから,髄内釘の過度のたわみまたは曲け応 力を防止する。髄内釘を完全に打ち込むと,この過長のへルツオークわん曲部か前 部皮質に当接する。それは,骨釘に補助部材を付けなくても,脛骨か最適に副木固 定される利点かある。本発明に基つく髄内釘と先行技術による公知の骨折を比較すれは,公知の脛骨髄 内釘は打ち込みの時に固く入りにくいか,打ち込んた状態て髄腔内てゆるむことか 認められる。本発明に基つく髄内釘は解剖学的に適応した形状のお蔭て比較的簡単 に,内植体または骨に余計な負担を掛けすに髄腔に導入することかてき,打ち込ん た状態て骨と形状的に最終結合される。ねし固定式髄内釘固定術を行なわなけれは ならないときに,この基本的相違か一層顕著に現われる。その場合は植込体か骨の 長さと回転を保証しなけれはならない。このいわゆるねし固定式髄内釘は増加した 肉厚と,それによって約80%高い曲け硬さを有する。このような骨釘を植込むこ とかてきるように,手術医は従来,髄腔を通常の場合より1.0~2.0mm広く 穴あけせさるを得なかった。それにはかなり多くの生きた骨を削り取らなけれはな らす,しかも骨接合の安定の増加か得られない不都合かあった。本発明に基つく骨釘はいわゆる線束式髄内釘固定術と比較しても大きな利点かあ 11る。既に述へたように線束式髄内釘固定術は管状骨の専ら内部の副木固定てある。 この方法ては,たいてい穴あけしない髄腔か太さ約2.0mmの針金て充填され る。・・・髄腔は砂時計状てあり,針金て十分に充填し,こうして安定化てきる部 分は短く狭いから,この骨釘固定術の適応症は極めて局限されている。複雑骨折ま たは層次骨折の場合に脛骨の長さを維持する可能性およひこの種の骨折の場合の回 転の保証は,線束式髄内釘固定術にはない。層次骨折または複雑骨折およひ比較的 遠位または近位の骨折の手当の際に,解剖学的に最適に適応した本発明の脛骨髄内 釘によって長さと回転を保証することかてきる。その場合は脛骨に働く荷重と完全 に引受けることかてきる比較的剛直な植込体か扱われるからてある。」(2頁右側 下段7行目ないし3頁左欄下段11行目)2 容易想到性の判断
上記認定に係る本願明細書及ひ刊行物の記載に基ついて,本願発明は,各相違点 に係る構成を採用することによって,格別の効果か生し,それ故に容易に発明をす ることかてきないとの原告の主張の当否について判断する。(1) 引用発明の解決課題及ひ効果について 上記のとおり,引用発明は脛骨髄内釘に係る発明てある。
 刊行物には,引用発明の課題は,「髄腔と植え込み方法との解剖学的条件に最適の形状を有し,かつすへての症状の下腿骨折の治療に使用するための髄内釘を提供 すること」てあり,特に「一方ては塑性変形せすに髄腔に導入することかてき,他 方ては導入の後に安定な副木固定をもたらす脛骨髄内釘を提供する」ことてあると 記載されている。そして,引用発明は,中央部に対して折れ曲かった近端部と遠端 部を有し,一体に形成された脛骨髄内釘とし,その全長,「わん曲片」の曲率半径 等を調整することにより上記課題を解決すると記載されている。刊行物には,引用発明に係る髄内釘は,解剖学的に適応した形状となっており, 近端部は先行技術より早期に髄腔内に没入することから,髄内釘の過度のたわみ又 は曲け応力か防止され,髄内釘を完全に打ち込むと,近端部(へルツオーク湾曲部)か前部皮質に当接して,脛骨か最適に副木固定されること,内植体または骨に 余計な負担を掛けすに髄腔に導入することかてき,打ち込んた状態て骨と形状的に 最終結合されること,層次骨折又は複雑骨折及ひ比較的遠位又は近位の骨折の場合 ても,脛骨の長さを維持し,この種の骨折の場合の回転を保証することかてきるこ とか,その効果として記載されている。(2) 本願発明の解決課題,効果について
ア 本願発明は,近位端部及ひ遠位端部を有し,これら両方か中央部から曲けら れている一般的な髄内釘において,各患者によって脛骨の長さ及ひ脛骨フラトーの 大きさか様々てあるため,全ての髄内釘の長さに有効な一定の曲率半径を定めるこ とは最適てはないことから,脛骨の長さに対する解剖学的比率を考慮し,特にその 髄管経路に最適化された髄内釘を提供することを解決課題とする発明てある。本願明細書の記載によると,本願発明における髄内釘は,次の効果を有するとさ れている。〔効果1〕
a)一定の適応における挿入力か―特に非穴あけ法において―削減されており, b)より小さな挿入力によってより小さな整復損失か生し, c)髄内釘か挿入か行われた後に髄管における生化学的に理想の状態にあり, d)髄内釘か挿入に際して後壁に突当たると,その屈曲か有効となる(従来技術てはこの点て歪められ,または整復損失を甘受しなけれはならない) 〔効果2〕髄内釘の遠位端部を長さ「l」≦全長Lの直線部とすることにより, a)生体力学的な軸との一致, b)整復損失のない遠位骨折治療の可能性, c)遠位骨断片の転位の回避イ 本願明細書には,本願発明に係る構成を採用することにより効果1を奏し, 髄内釘の遠位端部を直線部とすることにより効果2を奏するとの記載かある。しかし,髄内釘について,1200~500mmの範囲の全長Lを有すること, 2長さG≦Lの湾曲部を有すること,3湾曲部か300~1300mmの範囲の曲 率半径を有すること,4比L/Rか0.2~0.8の範囲とすること,5遠位端部 を,長さ「l」≦Lの直線部とすること,6湾曲部の両終点の接線か,7°~1 2°の範囲の角度アルファを含むものとするとの構成を備えることによって,なせ, 上記のような効果を生しるかを的確に説明した記載も示唆もない。のみならす,本 件訴訟においても,相違点に係る構成か上記効果を生しるとの説明はされていない。以上によると,引用発明の解決課題は本願発明の解決課題と概ね同一てあり,ま た,引用発明に係る髄内釘の効果は本願発明における効果1及ひ2とおおむね共通 する。さらに,本願明細書には,本願発明において前記のような数値を設定するこ とにより,引用発明に比へ著しい効果か生することを推認させる記載もない。そうすると,本願発明に格別な効果かあるとは認められす,本願発明か容易想到 てあるとした審決の判断に誤りはない。ウ 原告は,本願発明は,各相違点に係る構成を組み合わせることにより,相乗 的な効果を奏すると主張する。しかし,前記のとおり,刊行物には本願発明における効果1及ひ2とおおむね共 通する効果か記載されているところ,本願明細書には,各相違点に係る構成を採用 することにより,その相乗的な効果として,引用発明からは予測し得ないような効 果か生するとの記載はなく,原告の主張は失当てある(本件訴訟においても,その 点の具体的な主張もない。)。3 結論
以上のとおり,原告主張の取消事由は理由かなく,審決に誤りはない。その他, 原告は縷々主張するか,いすれも理由かない。なお,本願発明か容易想到とはいえ ないとする原告の訴訟上の主張及ひその理由か,上記争点にととまる以上,審決の 判断に誤りかあったとすることはてきない。よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
 14知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官
裁判官
裁判官
飯村敏明
八木貴美子
小田真治
15
別紙 図1
16
判例本文

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