平成25年11月21日判言渡
平成25年(ネ)第10054号 特許を受ける権利帰属確認請求控訴事件(原審・ 東京地方裁判所平成24年(ワ)第14905号)口頭弁論終結日 平成25年9月26日

控訴人(原告) X
訴訟代理人弁護士  謙 一
被控訴人(被告) 新日鐵住金株式会社
訴訟代理人弁護士増井和夫 橋口尚幸 齋藤誠二郎
主文
 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及ひ理由
第1 控訴の趣旨
1 原判を取り消す。
2 控訴人と被控訴人との間において,控訴人か,原判別紙発目録記載の請求項1~7の各発(以下「本件各発」と総称する。)について,特許を受ける権 利を有することを確認する。第2 事案の概要
1 本件は,被控訴人・株式会社日鐵テクノリサーチ社(テクノリサーチ社)間の覚書に基ついて,同社か職務発規定(本件発考案規定)により控訴人から承 継したとして特許を受ける権利に係る本件各発について特許出をしたことにつ いて,テクノリサーチ社の従業員てあった控訴人か,本件各発は控訴人による自 由発に当たると主張して,被控訴人に対し,控訴人に特許を受ける権利の属する ことの確認を求めた訴訟てある。原判は,控訴人の請求を棄却した。
2 前提となる事実 原判の「事実及ひ理由」欄の第2,1項のとおりてある。3 争点及ひこれに対する当事者の主張 本件の争点は,以下の2点てある。1 本件各発は職務発に該当するか否か。
2 本件発考案規定により特許を受ける権利か承継されたか否か(1) 争点1(本件各発は職務発に該当するか否か)について (控訴人の主張) 本件各発は,以下のとおり,控訴人の自由発てあって,職務発に当たらない。
ア 本件各発は,トラフトサーヘイに用いるものてあるところ,トラフトサーヘイは,港湾運送事業法の規定上,国土交通大臣の許可を受けた者しかその事 業を行うことかてきない。ところか,テクノリサーチ社は,その許可を受けておら す,将来的にもそのような許可を受けてトラフトサーヘイを行う予定はないから, 本件各発はテクノリサーチ社の業務範囲に属しない。また,本件各発に係る傾 斜測定器は,トラフトサーヘイに関する特定計量器に当たり,これを製造する場合 には,あらかしめ計量法40条1項の届出をしなけれはならないところ,テクノリ サーチ社は当該届出をしていなかった。このような製造か,テクノリサーチ社の業務範囲に属することはなく,また,控訴人の業務範囲に属するはすかない。さらに, テクノリサーチ社の商業登記簿謄本に係る履歴事項全部証書の「目的」欄には, 測定器の開発・発は記載されていないから,本件各発は同社の業務範囲に属し ない。加えて,控訴人は,被控訴人・テクノリサーチ社間の業務委託契約に係る業務に 従事し,テクノリサーチ社に多大な利益をもたらしたのに,テクノリサーチ社から 適正な報酬を得られておらす,このことは,テクノリサーチ社か,控訴人の構築し た体制及ひ是正活動は同社の業務範囲に属しない発と考えていたためてあろうか ら,是正業務等はテクノリサーチ社の業務範囲に属しないというへきてある。イ テクノリサーチ社は,控訴人に対してトラフトサーヘイに用いる本件各 発を職務として行うよう命令したことはなかった。また,控訴人は,テクノリサ ーチ社への転籍以降,その職務として,あくまてトラフトサーヘイの是正活動(厳 正化活動)に従事していたのてあって,トラフトサーヘイ自体を行っていたのては ない。また,控訴人か引き受けた是正活動は,1Constant の是正,2Tank 内の残水 量の確定についての船長との話合い,3積載量か少なくならないよう船長に要請す ることの3点のみてあり,それ以外の是正業務は引き受けていない。さらに,本件各発によると,喫水検査の結果は不正確なものとなるのてあり, 喫水検査の是正活動を阻害するのてあるから,控訴人の職務(同是正活動)には属 しない発てあった。しかも,本件各発につきテクノリサーチ社か負担したのは, 約9000円にすきない。そうすると,本件各発は,控訴人の職務に属するものとはいえないから,職務 発てはなく,控訴人の自由発に当たる。(被控訴人の主張) 原判3頁20行目から4頁2行目まてのとおりてある。(2) 争点2(本件発考案規定により特許を受ける権利か承継されたか否か) について(被控訴人の主張) 本件発についての特許を受ける権利は,本件発考案規定により,控訴人からテクノリサーチ社に移転している。
 本件発考案規定については,平成19年10月ころからテクノリサーチ社内のイントラネット上に掲載しており,テクノリサーチ社の社員は,本件発考案規定 をタウンロートする方法により,いつても本件発考案規定を確認し得る状態てあ った。また,テクノリサーチ社の知的財産管理の担当者てあったAか,控訴人に対 し,平成20年4月9日ないし18日の間に,同規定についての説も行った。 (控訴人の主張)控訴人は,本件発考案規定の存在を知らない。
控訴人は,Aと会ったことはあるか,そのときに本件発考案規定の説を受け たかとうかは記憶にない。第3 当裁判所の判断 当裁判所も,原判の認定判断は正当てあって,控訴人の請求は理由かないものと判断する。その理由は,次に付加訂正するほか,原判の「事実及ひ理由」中の 「第3 当裁判所の判断」1及ひ2(4頁18行目から8頁10行目まて)に記載 のとおりてある。1 4頁22行目「後記2項」を「後記3項」と改める。
2 4頁26行目「認められれは,」の次に「本件発考案規定の適用のある限り,」 を加える。3 5頁2行目「検討する」の次に「(争点1)」を加える。
4 5頁4行目「ア 」の次に「控訴人は,検査機関によるトラフトサーヘイか 数十年前からほとんと変わらない方法て実施されており,その結果は甚た不正確な ものてあり,船か積んている実際の鉄鉱石等の重量か実際よりも大きく計算されて いることを認識していたため,トラフトサーヘイの是正のために活動することは,鉄鉱石等の原料輸入の公正な把握につなかり,被控訴人の利益にもなると考えて, トラフトサーヘイの是正活動を被控訴人に提案し,控訴人は被控訴人の子会社てあ るテクノリサーチ社に出向してトラフトサーヘイの是正活動を実施することとなっ た。そこて,」を加え,同頁6行目「行っていた。」を「行うようになった。」と改め る。5 5頁22行目「平成20年2月ころ,」の次に「テクノリサーチ社の従業員に 依頼して,原料試験課において,」を加え,同23行目「測定器を作成した」を「測 定器か作された」と改める。6 6頁6行目末尾に行を改め「控訴人は,同月31日付けて『アクアチューフ 傾斜計開発について』と題する書面を作成し,各本船・検査会社等に対して製品化 した傾斜測定器の活用を求め,水チューフの水に含まれる空気か泡となって,チュ ーフ内の高所に溜まることにより正確な測定かてきないという問題点を解消する目 的て製品か作成された旨述へた。その中て,当該製品について,『当社製品は恒久的 に誤差の出ないハントリンクに優れた測定器てす。』と記載し,末尾に,『問い合わ せ先』として,テクノリサーチ社の電話番号を記し,担当者として,自らの名前と テクノリサーチ社の従業員てあるBの名前を記した。(甲7)」を加える。7 6頁19行目「被告は,本件各発について,テクノリサーチ社との間の覚 書に基つき」を「被控訴人とテクノリサーチ社との間には,上記業務委託契約に基 つき実施された業務に関連して生した発等は全て被控訴人に帰属し,テクノリサ ーチ社の従業員等かした成果は,テクノリサーチ社か従業員等から承継し,これを 被控訴人に譲渡する旨の覚書(以下「本件覚書」という。)か締結されているところ, 被控訴人は,本件各発について,本件覚書に基つき,」と改める。8 7頁9行目「被告の施設等において」の次に「,テクノリサーチ社の従業員 を補助者とするなとして,」を加える。9 7頁10行目「本件各発を完成させた」を「本件各発を完成させ,さら に,本件各発に係る実施品を『当社製品』と呼んてトラフトサーヘイにおける使用を勧め,また,その問合せに際してテクノリサーチ社の従業員を補助者とするな としているほか,テクノリサーチ社の従業員を交えて,担当弁理士と本件各発に 係る出について打合せをし,特許を受ける権利かテクノリサーチ社に帰属するこ とを前提とする言動をとった」と改める。10 7頁26行目末尾に行を改め,以下を加える。
「また,控訴人は,本件各発に基ついて計量器を製造するに際して,テクノリ サーチ社か計量法40条1項に基つく届出をしていないこと,履歴事項全部証 書上の『目的』欄に測定器の開発・発か記載されていないことを理由として,本 件各発はテクノリサーチ社の業務範囲に属しない旨主張する。しかし,職務発 に該当するか否かの基準となる「使用者等の業務範囲」とは,定款及ひこれを反映 した商業登記簿上の記載計量法等の行政法規に基つく届出の有無によって判定さ れるものてはなく,使用者か現に行っている,あるいは,将来行うことか具体的に 予定されている業務かこれに該当するものと解される。そして,上記1(2)て認定し たとおり,傾斜測定器の開発製造は,被控訴人から委託を受けたトラフトサーヘイ の改善業務と直接関連するものとして,テクノリサーチ社の現に行う業務に属する ものてあるから,控訴人の上記主張は採用てきない。次に,控訴人は,同人か引き受けた是正活動は,1Constant の是正,2Tank 内の 残水量の確定についての船長との話合い,3積載量か少なくならないよう船長に要 請することの3点のみてあり,それ以外の是正業務は引き受けていないと主張し, 控訴人の職務に本件各発か含まれないと主張する。しかし,控訴人の職務か上記 に限られると認めるに足りる的確な証拠はない。かえって,証拠(甲19ないし2 1)及ひ弁論の全趣旨によれは,控訴人は,各地に出張してテクノリサーチ社の他 の従業員と共に本件各発に係る水チューフの普及に努めていたことか認められる ことを考慮すれは,控訴人は,本件各発を利用してトラフトサーヘイにおける正 確性の確保経費節減を目指して,テクノリサーチ社における控訴人の職務として 取り組んてきたものと認められる。さらに,控訴人は,本件各発によると,喫水検査の結果は不正確なものとなる のてあり,喫水検査の是正活動を阻害するのてあるから,控訴人の職務(同是正活 動)には属しない発てあったと主張するか,証拠(甲1の2,4,7,20,2 1)及ひ弁論の全趣旨によれは,控訴人は,正確な喫水検査を行うための装置を提 供する目的て測定器の開発に取り組み,本件各発を行ったことはらかてあって, これと矛盾する上記主張は採用することかてきない。また,控訴人は,本件各発 につきテクノリサーチ社か負担したのは約9000円にすきない旨主張するか,テ クノリサーチ社の費用負担については,上記1(1)に認定したとおりてあって,90 00円に留まるものてはないから,控訴人の上記主張は採用てきない。その他,控 訴人かるる主張する点については,いすれも本件各発か職務発に該当するか否 かとは関連性を有しない。」11 8頁1行目以下の2項を3項とし,1項の次に以下の2項を加える。「2 控訴人は,本件発考案規定の存在を知らす,本件発考案規定によるテ クノリサーチ社に本件各発の特許を受ける権利は承継されない旨主張するのて, 以下,この点について検討する(争点2)。証拠(乙25)及ひ弁論の全趣旨によれは,テクノリサーチ社ては,社内のイン トラネットに本件発考案規定のワートファイルを掲示しており,従業員かこのフ ァイルをクリックすることて本件発考案規定かタウンロートされ,閲覧てきる仕 組みとなっており,テクノリサーチ社の従業員てあれは,いつてもこれを知り得る ような合理的な方法て示されていたものと認められる。したかって,本件発考 案規定はテクノリサーチ社・控訴人間て有効な勤務規則と解され,同規定に基つい て,控訴人からテクノリサーチ社へ特許を受ける権利か承継されたと認めるのか相 当てある。また,前記1(1)のとおり,控訴人は,試作品作成のための材料代本件 各発の実施品の製作費用について,テクノリサーチ社に対して立替払請求をして その支払を受けていること,検査会社等に対して,自らの所属かテクノリサーチ社 てあることをらかにした上て,乗船申入れをして,本件各発のテストの実施をしていること,本件各発の実施品について「当社製品」と呼ひ,テクノリサーチ 社の依頼した弁理士と打合せをした上て,本件各発についての出準備をしてお り,自らは出費用を全く負担していないことなとを考慮すると,控訴人は,本件 各発についての特許を受ける権利をテクノリサーチ社又は被告に譲り渡すことを 前提として行動していたものと推認されるから,控訴人は本件発考案規定を認識 していたものと認められる。なお,控訴人は,本件覚書(乙2)について不知と主張するところ,仮に本件覚 書の存在を知らなかったとしても,本件覚書はテクノリサーチ社から被控訴人に対 する権利承継等についての規定てあり,控訴人の認識によってその法的効力か左右 されるものてはない。」第4 結論 よって,本件控訴には理由かないから,これを棄却することとし,主文のとおり判する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
裁判官
清水節
中村恭

裁判官
中武由紀
判例本文

この判例ページのURL

LINEで送る
Pocket