平成25年11月21日判決言渡 平成25年(行ケ)第10114号 審決取消請求事件 口頭弁論終結日 平成25年11月5日判決
原 告
訴訟代理人弁理士
被 告 指定代理人
有限会社大長企画
熊 田 和 生
特許庁長官 前 田 佳与子 川上美秀 中島庸子 堀内仁子
主文 原告の請求を棄却する。
 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及ひ理由
第1 原告か求めた判決 特許庁か不服2009-14411号事件について平成25年3月7日にした審決を取り消す。
第2 事案の概要 本件は,拒絶査定不服審判不成立審決の取消訴訟てある。争点は,1後記本願発明の容易想到性判断の誤りの有無及ひ2後記本願発明と先願発明との同一性判断の 誤りの有無てある。1 特許庁における手続の経緯
原告は,名称を「栄養剤,消化器剤」とする発明につき,平成14年10月7日, 特許出願したか(特願2002-293904号,請求項の数12),平成21年4 月6日に拒絶査定を受けたのて,同年8月10日,不服審判請求をし(不服200 9-14411号),平成24年7月11日付けて手続補正をした(請求項の数5。
 平成21年8月10日付け手続補正については補正却下の決定かされている。)。特許庁は,平成25年3月7日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決 をし,その謄本は同年4月1日に原告に送達された。 (甲1,6,7,9,10)
2 本願発明の要旨
上記平成24年7月11日付け手続補正書による補正後の請求項1の発明(本願 発明)に係る特許請求の範囲の記載は,次のとおりてある。(甲1,9)「 A.シムノールまたはシムノール硫酸エステル
B.大豆イソフラホンまたは大豆イソフラホン配糖体 C.クルクミン のA,BおよひCの成分を含むことを特徴とする栄養剤。
 」3 審決の理由の要点 (1) 容易想到性判断
ア 引用発明 特開2002-255823号公報(引用例1〔甲2〕)には,次の発明(引用発明)か記載されている。
「 シムノールおよひ/またはシムノール硫酸エステルと,
大豆イソフラホンおよひ/または大豆イソフラホン配糖体 を含む栄養剤,消化器剤。
 」イ 一致点 本願発明と引用発明との一致点は,次のとおりてある。「 A.シムノールまたはシムノール硫酸エステル, B.大豆イソフラホンまたは大豆イソフラホン配糖体 を含むことを特徴とする,栄養剤。 」ウ 相違点 本願発明と引用発明との相違点は,次のとおりてある。「 本願発明は成分Cとしてクルクミンを含むのに対し,引用発明はクルクミンを 含まない点。 」エ 相違点の判断
1 引用例1には,中国伝統医学の「気血水」という概念における「血の作用」をもつシムノール又はシムノール硫酸エステルと,「水の作用」をもつ大豆イソフラ ホン又は大豆イソフラホン配糖体とを組み合わせて用いることにより,「水の作用」 に関連すると思われる便通改善作用か相乗的に現れたことか記載されているのて (【0002】【0003】【0025】~【0027】),引用例1のシムノール又は シムノール硫酸エステルは,大豆イソフラホン又は大豆イソフラホン配糖体か有す る便通改善作用を増強する有効成分てある。2 特開平10-114649号公報(引用例2〔甲3〕)には,クルクミンを活 性成分とする経口投与用組成物か,消化液分泌促進作用や便通促進作用等の「津液 作用」を改善,すなわち増強することか記載されており(【請求項1】~【請求項7】 【0005】【0033】【0046】~【0050】),「津液作用」は,引用例1に おける「水の作用」に相当する。さらに,引用例2には,クルクミンのような「津 液改善剤」を1種又は2種以上用いることか記載されている(【0028】)。3 12のとおり,引用発明におけるシムノール又はシムノール硫酸エステルと引用例2に記載のクルクミンとは,いすれも便通促進作用のような「津液作用」を 増強させるものてある点,及ひ,他の有効成分と組み合わせて用いる点て共通して いる。4 引用例1には,シムノール,シムノール硫酸エステル,大豆イソフラホン, 及ひ大豆イソフラホン配糖体以外のその他の成分を混合してよいことか記載されて いる(【0009】【0021】)。5 34を勘案すれは,引用発明の有効成分に引用例2に記載のクルクミンを更 に組み合わせて用いるのに特段の支障となるような事項は見当たらない。6 以上から,便通促進作用のような「津液作用」を増強させるための更なる有 効成分として,引用発明の有効成分に引用例2に記載の「津液改善作用」を有する クルクミンを組み合わせて用い,本願発明の組成物を得ることは,当業者か容易に 想到し得た事項にすきす,格別の創意工夫を要したとは認められない。オ 発明の効果 引用例1には,シムノール又はシムノール硫酸エステルと大豆イソフラホン又は大豆イソフラホン配糖体の組合せにより,2つの有効成分のそれそれのもつ効果か 相乗的に現れたこと(【0025】~【0027】),引用発明により,病気の予防, 自然治癒能力の増強,病後の回復促進を同時に達成することかてきること(【003 0】)か記載されており,引用例2には,クルクミンか便通促進作用のような津液作 用を増強する有効成分てあることか記載されているのてあるから,本願明細書の段 落【0043】に記載されているような効果は,引用例1及ひ引用例2の記載から みて,当業者か予測し得た程度のものてあり,予測の範囲を超える程の格別顕著な 効果てあるとはいえない。(2) 同一性判断 ア 先願発明
特願2002-42639号の特許明細書(特許第4609875号〔甲15〕。
 先願明細書)の特許請求の範囲(【請求項1】)には,次の発明(先願発明)か記載されている。
「 (a) クルクミン,
(b) コール酸または,シムノールまたはシムノールエステル,およひ(c) 大豆イソフラホンまたは大豆イソフラホン配糖体を含んており, 一日の摂取量か,クルクミンは20~70mg,コール酸は10~100mg,シムノールおよひ/またはシムノールエステルは0.3~10mg,大豆イソフラ ホンおよひ/または大豆イソフラホン配糖体は10~100mgてあることを特 徴とする健康食品。
 」イ 対比
(ア) 有効成分について
先願明細書の段落【0013】の【化8】に,「シムノールエステル」としてシム ノール硫酸エステルナトリウムか記載され,実施例てもシムノール硫酸エステルナ トリウムか用いられていることから,先願発明の「シムノールエステル」かシムノ ール硫酸エステルを包含することは明らかてある。したかって,本願発明と先願発明の有効成分は,いすれも,シムノール又はシム ノール硫酸エステル,大豆イソフラホン又は大豆イソフラホン配糖体,並ひにクル クミンてある点て重複する。(イ) 用途について 先願発明は「健康食品」てあるか,一般に,「健康食品」は,栄養成分を補給し,又は特定の保健の用途に適するものとして販売の用に供する食品てあること,通常 の食事て不足している栄養素や食品成分を補うという役割を有すること,栄養改善 法等の法令に適合するものてあることは,先願発明の優先日当時の技術常識てある。上記技術常識を勘案すれは,「健康食品」と「栄養剤」か栄養を補給するための組 成物てある点て重複することは明らかてあるから,本願発明の用途と先願発明の用 途か異なるとすることはてきない。(ウ) 摂取量について
本願発明ては各成分の一日の摂取量を特定していないか,本願明細書の発明の詳 細な説明には,「【0010】シムノールおよひ/またはシムノールエステルの一日の 投与量は,・・・・・0.3~10mg かとくに好ましい。」「【0006】イソフラホンお よひイソフラホン配糖体の一日の投与量は,・・・・・10~100mg かとくに好まし い。」,クルクミンを包含する辛味物質について「【0008】辛味物質の一日の投与 量は,・・・・・10~70mg かとくに好ましい。」と記載されており,本願発明におけ る各成分の一日の摂取量か,先願発明における各成分の一日の摂取量を包含してい る。そうすると,本願発明において各成分の1日の摂取量を特定していない点をもっ て,本願発明か先願発明と異なる発明てあるとすることはてきない。ウ 小括 本願発明と先願発明とには実質的に相違する事項はない。(3) 審決判断のまとめ 本願発明は,引用発明及ひ引用例2に記載された発明(引用発明2)に基ついて,当業者か容易に発明をすることかてきたものてあるから,特許法29条2項の規定 により,特許を受けることかてきない。また,本願発明は,先願発明と同一てあるから,特許法39条1項の規定により 特許を受けることかてきない。したかって,その余の請求項について論及するまてもなく,本願は拒絶されるへ きものてある。第3 原告主張の審決取消事由
1 取消事由1(容易想到性判断の誤り)
(1) 構成の容易想到性について
1 引用例2には栄養剤に関する記載はなく,引用発明の栄養剤に,栄養剤か記載されていない引用発明2を組み合わせる動機付けはない。
2 本願発明及ひ引用発明は便通改善に関する発明てはないところ,便通改善効 果を高めるには下剤を加えることか普通てあり,便通改善剤てはない便通改善増強 剤てある引用例2記載のクルクミンを組み合わせる動機付けかない。3 引用例2記載の津液作用を有する成分(【0024】)に更に加えて津液改善 剤てあるクルクミンを引用発明に加える動機付けかないし,引用例2の記載(【00 09】)から水の科学に関連する他の有効成分は示唆されない。4 シムノール又はシムノール硫酸エステルか津液改善剤とすれは,引用発明に はシムノール又はシムノール硫酸エステルか含まれているから,更に加えて津液改 善剤てあるクルクミンを引用発明に加える動機付けかない。5 引用例2には多くの津液改善剤か記載され,その実施例にもクルクミンたけ てなく,カフサイシン,シナヒンか記載されており,特開2000-103718 号公報(甲16)にも多種類の津液改善剤か記載されているから,引用発明に加え る津液改善剤として特にクルクミンを選択する動機付けかない。6 引用例2の実施例において,クルクミンは,カフサイシン,シナヒンよりも 劣った成績を有し,引用例2の津液改善剤からクルクミンを選択することには阻害 要因かある。また,これまてクルクミンを配合しても配合禁忌か発現していないと しても,引用発明にクルクミンを組み合わせたときに配合禁忌の問題か生しないと はいえない。以上のとおり,審決には誤りかある。
 (2) 効果の顕著性について1 本願発明は栄養剤に関する発明てあって,便通改善に関する発明てはなく, 便通改善と栄養剤とに関連はない。したかって,引用例1及ひ引用例2記載の便通 改善に関する効果から,本願明細書に記載された体力の増強,精力減退や慢性疲労 の改善等の効果を予測することはてきない。2 本願発明は,引用発明を発展させたものてあって,甲第6号証記載のとおり, 引用例1又は引用例2からは予測てきない優れた効果を有する。なお,後記甲6参考資料5にある「スクアランオイル」とは,シムノールのことてある(甲21)。 また,引用発明は医療現場て使用されていないか,本願発明は医療現場て使用されているから,本願発明には引用発明に比へて有利な効果かある。 以上のとおり,審決には誤りかある。2 取消事由2(同一性判断の誤り)
本願発明は栄養剤てあって医薬品に関する発明てあるのに対して,先願発明は健 康食品てあって食品に関する発明てある。「医薬品」とは,「人又は動物の疾病の診 断,治療又は予防に使用されることか目的とされている物てあって,機械器具,歯 科材料,医療用品及ひ衛生用品(以下「機械器具等」という。)てないもの(医薬部 外品を除く。)」(薬事法2項1項2号)てあるのに対して,「食品」は,「・・・・・すへ ての飲食物をいう。たたし,薬事法(・・・・・)に規定する医薬品及ひ医薬部外品は, これを含まない」(食品衛生法4条1項)ものてあって,医薬品と食品は異なる。第4 取消事由に対する被告の反論
1 取消事由1(容易想到性判断の誤り)に対して
(1) 構成の容易想到性について
1 下記3のとおり。
2 審決は,本願発明を便通改善に関する発明てあるとは認定していない。3 引用発明は,「血の科学」に関連する作用を有する成分てあるシムノール又はシムノール硫酸エステルと,「水の科学」に関連する作用を有する成分てある大豆イ ソフラホン又は大豆イソフラホン配糖体とを含有する栄養剤・消化器剤てあって, 両成分の相乗作用によって両作用か共に促進され,各種症状か改善され,顕著な疲 労回復効果か得られたものと理解される。引用例1には,その他の成分を追加して もよいとの記載かあるから(【0009】),当業者は,引用発明に,「水の科学」に 関連する作用を促進する他の有効成分を追加することを自然に想起する。一方,引用例2には,クルクミンを有効成分とする「津液改善剤」か記載されて いるか,引用例2ていう「津液改善作用」とは,漢方思想における「水(津液)」の 働きを基本とする体内水分の体外への分泌に関連する作用てあって,引用例1てい う「水の科学」に関連する作用と同等と解されるから,クルクミンは,「水の科学」 に関連する作用を促進,改善する成分てあるといえる。上記の引用例1及ひ引用例2の記載に加えて,クルクミン(ウコンに存在する有 効成分)は,ヒトへの適用実績か豊富にあり,他の有効成分と併用しても安全て汎 用性か高い成分てあるという本願出願日当時の技術常識を勘案すれは,引用発明に 追加する成分として引用例2記載の「津液改善剤」てあるクルクミンを採用するこ とは,当業者か容易に想到し得た。4 引用例1に接した当業者てあれは,引用例1に記載された各種症状の改善を 更に高めることを期待して,引用例1にいう「水の科学」に関連する作用すなわち 引用例2にいう「津液改善作用」を有する他の有効成分を更に追加して用いること を,自然に想起するといえる。5 引用例2には,カフサイシン,シナヒン,クルクミンのいすれもか「津液改 善剤」として明記されており,「津液改善作用」か最も強い成分たけか引用例2の「津 液改善剤」として認定され,少しても作用か劣る成分は引用例2の「津液改善剤」 として認定されないというものてはない。そうすると,カフサイシン,シナヒン, クルクミンは,いすれも「津液改善作用」を有する有効成分てある点て同等てあり, これらのいすれもか引用発明に追加し得る他の有効成分として用いることかてきる。6 引用例2の実施例において得られた各種改善作用の程度を示す指標として用 いられた平均評点の数値を検討すると,カフサイシン,シナヒン,クルクミンの間 て大きな差はなく,当業者てあれは,このような平均評点の数値からみて,クルク ミンの津液改善作用かカフサイシンあるいはシナヒンに比して著しく劣っていると は解さす,むしろ,クルクミン,カフサイシン,シナヒンそれそれの津液改善作用 は,いすれも同程度てあると解するのか相当てある。したかって,引用例2の実施例の平均評点の値を参酌しても,「津液改善剤」としてクルクミンを用いることを断 念するような事情は全く見当たらない。そして,クルクミンは,ヒトへの適用実績 か豊富にあり,他の有効成分と併用しても安全て汎用性か高い有効成分てあるとい う本願出願日当時の技術常識を勘案すれは,引用発明にクルクミンを追加して用い た場合に,各有効成分の作用か阻害されたり,重篤な副作用か出るといった配合禁 忌のような悪影響か生しるとは考え難い。以上のように,引用発明に,引用例2記載のクルクミンを追加して用いることに ついての阻害要因は見当たらない。以上のとおり,審決に誤りはない。
 (2) 効果の顕著性について1 審決は,本願発明を栄養剤に関する発明と認定しており,便通改善に関する 発明てあるとは認定していない。また,本願発明の栄養剤は,中医学の思想を基本とし,人体内の必要な部分によ り多くの養分を送ることを目指すものてあり,血行障害なとのために発生したトラ フルによって発生する栄養不良を改善するものてある。また,引用発明の栄養剤・ 消化器剤は,中国伝統医学の思想,すなわち,本願発明と同様に中医学の思想を基 本とし,人体機能発揮のための必要物質を体内各部に供給するものてある。したか って,引用発明における「人体機能発揮のための必要物質」は,本願発明における 「養分」を包含すると解されるのて,本願発明の栄養剤と引用発明の栄養剤とは, いすれも中医学の思想を基本とし,人体内の必要な部分に養分を供給することを目 指すものてあるといえる。そして,本願発明の慢性疲労等の改善効果は,引用発明の疲労回復効果と同質て ある。また,クルクミンは,引用例2記載のとおり,中医学の「水の科学」に関連する 作用を促進・改善する有効成分てあり,引用発明の2成分と併用しても配合禁忌等 の問題かあるとは考え難い。そうすると,本願発明の栄養剤の効果は,引用例1及ひ引用例2に記載された事 項から当業者か予測し得る程度のものにすきない。2 本願明細書には,本願発明の実施てある実施例6の組成からクルクミンのみ を除いた引用発明の組成に相当する組成により得られる効果か,実施例6の組成か ら得られる効果と比較して,との程度の差異かあるのかについて,当業者か確認て きる根拠か何ら記載されていない。また,原告か提出する資料は,次のとおり,発 明の効果を検討するに当たり参酌すへきものてないか,又は本願発明の効果と引用 発明の効果の違いを客観的に確認することかてきないものてある。[1] 甲6参考資料1(甲6の31~43頁,三浦於菟=岡田研吉「気血水健康法」 〔冬青社 2005年1月〕抜粋)上記刊行物は本願出願後2年3か月も経過した後に公知になっているほか,本願 発明の構成からクルクミンを除いた2成分併用てある引用発明に相当する場合の効 果を示すテータか記載されておらす,同構成の効果と比較して,クルクミンを含む 3成分併用てある本願発明の効果にとの程度の差異か生しるのかについて,当業者 か客観的に判断することはてきない。[2] 甲6参考資料2(甲6の44~46頁,「『カルテ No.』『年齢』『性別』『病 名』『投薬期間』『効果』『副作用』か記載されているテータ一覧」)上記書面には,その作成時期も,用いた試料も記載されておらす,とのような有 効成分により得られた結果てあるかか不明てあるから,そもそも参酌てきるような ものてはない。仮に,甲6参考資料3(甲6の47頁,医師A作成の平成19年9月22日付け 証明書)から甲6参考資料2か本願発明の3成分を含む試料を用いて得られたテー タてあることか認められたとしても,甲6参考資料3は本願出願後4年11か月も 経過した後に作成された証明書てあるほか,甲6参考資料2の作成時期は不明てあ り,同資料2には,本願発明の構成からクルクミンを除いた2成分併用てある引用 発明に相当する場合の効果を示すテータか記載されておらす,同構成の効果と比較して,クルクミンを含む3成分併用てある本願発明の効果にとの程度の差異か生し るのかについて,当業者か客観的に判断することはてきない。[3] 甲6参考資料4(甲6の48頁,医師A作成の平成20年4月15日付け証 明書)上記書面は本願出願後5年6か月も経過した後に作成された証明書てあるほか, 甲6参考資料2を引用するものてあるから,甲6参考資料3と同様の問題点を有す る。[4] 甲6参考資料5(甲6の49~51頁「,(社)日本東洋医学会 第65回 関 東甲信越支部学術総会 平成20年10月26日(日) アヒオ甲府」と題する冊 子中の「発表A-1-4」と題する書面)上記書面は本願出願後6年も経過してから公知になったものてあるほか,同書面 中の「使用薬剤」に本願発明の有効成分の1つてあるシムノール又はシムノール硫 酸エステルを含有するのか否かは不明てあるし,この「使用薬剤」か本願発明の3 成分をすへて含有するものてあったとしても,本願発明の構成からクルクミンを除 いた2成分併用てある引用発明に相当する場合の効果を示すテータか記載されてお らす,同構成の効果と比較して,クルクミンを含む3成分併用てある本願発明の効 果にとの程度の差異か生しるかについて,当業者か客観的に判断することはてきな い。なお,医療現場ての使用に際しては,併用する有効成分の種類や数たけてなく, 単位製剤当たりの有効成分の量,製剤の価格設定,医療業界への宣伝,製剤の需要 動向等,他の要因も考慮されるものてあるから,引用発明の構成にクルクミンを加 えて3成分併用とした本願発明か,当業者か予測し得る範囲を超えるほとの効果を 示さなかったとしても,当業者か予測し得る程度の効果を示していれは,医療現場 ては本願発明か使用され,引用発明は使用されない可能性かある。本願発明か医療 現場て実際に使用されていることを根拠として,本願発明の効果か引用例1及ひ引 用例2のそれそれに記載された事項から当業者か予測し得る範囲を超えるほとに格別顕著な効果を示すものてあると推認し得るとはいえない。
2 取消事由2(先願発明との同一性に関する判断の誤り)に対して 本願明細書には,本願発明の栄養剤か医薬品に限定され,食品を含まないことを 定義する記載はないし,本願出願当時,栄養剤てあっても所望により医薬品と食品 とに使い分けかされていたから,「栄養剤」という記載を根拠に本願発明か医薬品に 限定されるとはいえない。また,本願明細書には,本願発明の栄養剤の剤型として, 顆粒剤,錠剤,ハートカフセル,ソフトカフセル,トリンク剤,注射剤か記載され ているところ,本願出願日当時,食品の一種てある栄養補助食品の剤型として,ソ フトカフセル,ハートカフセル,錠剤,丸剤,顆粒剤,トリンク剤等か用いられて いたのたから,剤型を参酌しても,本願発明の栄養剤か医薬品のみに限定されるとはいえない。
 そして,本願発明の「栄養剤」と先願発明の「健康食品」とは,それそれの有効成分か重複していることに加えて,いすれも「栄養を補給するための組成物」てあ る点て重複している。 したかって,審決に誤りはない。
第5 当裁判所の判断
1 取消事由1(容易想到性判断の誤り)について
(1) 認定事実
ア 本願明細書の記載
本願発明は,前記第2,2のとおりてあるところ,平成24年7月11日付け手 続補正書による補正後の明細書(本願明細書)には,次の記載かある。(甲1,9)「【0001】【発明の属する技術分野】この出願発明は新しい栄養剤,消化器剤に関する。」 「【0002】【従来の技術】・・・・・ところて,気とは人体の総ての機能を指すかその機能は大別して2種に分かれる。その一つ は自律神経によって支配されている機能て各臓器,ホルモン分泌,血管なとのもつ機能てある。
 今一つは脳思考の機能と脳思考によって発せられる指令によって動く随意筋なとの機能てある。中医学て補気,理気て表現されている気は前者の自律神経支配の機能のみを指すことは早 くから指摘されていた。・・・・・私達は補気薬か体内血液を臓器なとに偏在させることを見出して いるか,これも延髄の重要な作用の一つてある血管の収縮,拡張の作用か働いて自律神経支配 系に向う血管を拡張し,脳や脳支配系器官に向う血管を収縮することによって達成し,補気薬 の副次的な作用として必要な部分により多くの養分を送ることを目指したものてある。」「【0003】【発明か解決しようとする課題】年齢を重ねるにしたかって,いろいろな症状 か発生する。これらの障害の原因は脳指令の局所への伝達の不十分によるものてあり,血行障害なとのた めに発生したトラフルてある。この出願発明は,このようなトラフルによって発生する栄養不良,消化器不全を治療するこ とを目的とする。」「【0004】【課題を解決するための手段】この出願発明は,A. シムノールまたはシムノ ール硫酸エステル,B.大豆イソフラホンまたは大豆イソフラホン配糖体,C.クルクミンのA, BおよひCの成分を含むことを特徴とする栄養剤に関する。」「【0005】【発明の実施の形態】この出願発明は,辛味物質,苦味物質又は酸味物質か含 まれていれはよいか,イソフラホンおよひイソフラホン配糖体か含まれていることか好ましく, イソフラホンおよひイソフラホン配糖体は,大豆に含まれる大豆イソフラホンおよひ大豆イソ フラホン配糖体かとくに好ましい。」「【0006】イソフラホンおよひイソフラホン配糖体の一日の投与量は,1~500mg か 好ましく,5~200mg かより好ましく,10~100mg かとくに好ましい。」「【0007】この出願発明の辛味物質,苦味物質又は酸味物質は,辛味物質てあることか好 ましい。 辛味物質は,ウコンのクルクミン,
【化1】
・・・・・てあることか好ましく,クルクミンかとくに好ましい。」 「【0008】辛味物質の一日の投与量は,1~1000mg か好ましく,5~300mg かより好ましく,10~70mg かとくに好ましい。・・・・・また,十全大補湯なとの扶正の効果を持 つ漢方製剤又は漢方薬との併用のときの一日の投与量は,100~200mg か好ましい。」「【0010】シムノールおよひ/またはシムノールエステルの一日の投与量は,0.1~1 00mg か好ましく,0.1~50mg かより好ましく,0.3~10mg かとくに好ましい。」「【0011】その他の成分として,医薬品一般か使用され,ヒタミン類,抗生物質,抗カン 剤,ヘム鉄,フルーンエキス,生薬か使用される。」「【0018】この出願発明の栄養剤,消化器剤を投与する剤形としては,とくに限定されな いか,錠剤,粉末剤,固形剤,液剤等の内服薬,座薬,注射薬その他として投与される。また,乳糖,テンフン等の賦形剤,植物油,その他か使用される。」 「【0025】実施例6
ソフトカフセル
 クルクミン
 シムノール硫酸エステルNa
 大豆イソフラホン
 タラ肝油
 酢酸トコフェロール
 人参エキス
25mg 1mg 125mg 80mg 5mg 200mg
ミツロウ 55mg 食用油 適量 合計 1200mg
同様に,大豆イソフラホンの代わりに大豆イソフラホン配糖体を使用してソフトカフセル を製造した。」「【0043】実施例6のソフトカフセル剤を1日1回服用した。その結果つきのような効果 かみられた。74才の女性か16週間服用することにより体力か増強された。精力減退・慢性疲労の72 才の男性か8週間服用することにより改善された。48才の男性か2週間服用することにより 慢性疲労,精力減退か改善された。74才の食欲不振て激痩せし,慢性性疲労,意欲かわかな い女性か,6週間服用することにより改善された。慢性疲労性症候群の54才の女性か7週間 服用することにより改善された。発作性頭位変換性めまい症の43才の女性か6週間服用する ことにより改善された。たるさと無気力を訴えていた50才の男性か6週間服用することによ り改善された。無気力,体力の無さを訴えていた36才の女性か12週間服用することにより 改善された。」イ 引用例1の記載 引用例1(甲2)には,次の記載かある。
「【特許請求の範囲】 【請求項1】シムノールおよひ/またはシムノールエステルを含むことを特徴とする栄養剤,消化器剤。
 【請求項2】イソフラホンおよひ/またはイソフラホン配糖体を含むことを特徴とする請求項1に記載の栄養剤,消化器剤。 【請求項3】イソフラホンおよひイソフラホン配糖体か大豆イソフラホンおよひ大豆イソフラホン配糖体てあることを特徴とする請求項2に記載の栄養剤,消化器剤。」「【従来の技術】中国伝統医学は身体を常に正常な状態に保つことを一つの基本としているか, その目的を達成するための『気血水』という概念かあり,また,その概念に基ついた具体的な 手段手法もあることは昔から知られていた。しかし,その概念の説明は中国特有の哲学的表現 てなされ,その手段方法としては天然の素材を乾燥したものたけを用いるという科学的文明の 世界ては理解され難い概念と受け入れかたい手段手法てあったのて,貴重な中国伝統医学も中 国以外ては殆と用いられていない医学てあった。1999年4月中国の医学機関誌てある中国 薬信息雑誌(英文名,Chinese Journal of Information on Traditional Chinese Medicine)の Vol.6 No.4 に,『「世人期待的中医薬-論医薬科研的思維与方法学』という一文か発表された。この論文は, 『気血水』の概念に含まれていた科学に関連する部分について世界の共通語てある科学の言葉 を用いて説明されたものてある。気血水なる概念に含まれていた科学について簡単に説明する と,『気』という言葉に含まれている科学とは,人体か持つ総ての機能をしっかりと作動させる ことてあり,『血』という言葉に含まれている科学とは,それらの機能を発揮するために必要な 物質を血管を通して体中に供給することてあり,又,『水』という言葉に含まれている科学とは, 血管て運はれたそれらの必要物質をさらに血管のない部分にも十分供給することてあるか,こ の時の必要物質の搬路は体の内から外に向かって形成されている水分の流れてある。・・・・・この 新しい医学理論は従来,中国伝統医学て素材として用いられた各生薬に含まれているその医学 的理論部分を達成するための有効成分を決定することを極めて容易とし・・・・・た。」「【0003】【発明か解決しようとする課題】 総ての人か利用てきる栄養剤,消化器剤とし て最も重要な条件は,製品の価格か少なくとも現在市販されている総合ヒタミン剤より廉価て あることてある。この出願発明者は,シムノール(cymnol)およひ/またはシムノールエステ ル(cymnolester)か血管を通して人体機能発揮に必要な物質の体内配送を保証するために有効 成分てあることを見い出した。また,この出願発明者は,イソフラホンおよひイソフラホン配 糖体,とくに,大豆イソフラホンおよひ大豆イソフラホン配糖体か,血管て運はれた機能発揮 のための必要物質を更に血管のない体内各部へ供給するための手段てある体内の水流を促進す る作用を持つものてあることを見い出した。さらに,この出願発明者は,シムノールおよひ/ またはシムノールエステルと,イソフラホンおよひ/またはイソフラホン配糖体,とくに,大豆イソフラホンおよひ/または大豆イソフラホン配糖体とを併用することにより相乗効果のあ る優れた栄養剤,消化器剤てあることを見い出した。この出願発明は,この新しい医学理論を 基に,古来,中国伝統医学か達成していた効果に近い極めて有効な医薬品を提供することを目 的とする。」「【0025】この出願発明の目的は,身体を常に正常な状態に保つことによって病気を予防 し,病気に対する自然治癒力を増し,病後の回復を促進することてあるか,その医学的テータ を得るためには数万人の被験者と一人の人間の一生に近い長時間か必要てその実現は極めて難 しい。両成分の予備的な使用実験てシムノールおよひ/またはシムノールエステル単独摂取者 の数人に血の科学に関連すると思われる飲酒によるトラフルの改善か見られ,大豆イソフラホ ンおよひ大豆イソフラホン配糖体群の単独摂取者の数人に水に含まれる科学に関連すると思わ れる便通改善か特徴的に見られた。また,さらに,この出願発明の両者併用の効果を立証する ためにシムノール硫酸エステルナトリウム塩(表てSNaと略称する。),大豆イソフラホンそ れそれの単独,シムノール硫酸エステルナトリウム塩と大豆イソフラホンを混合した3種のサ ンフルを準備して,各々30人の被験者に2か月間服用させた結果は以下の表のようてあっ た。」「【0026】【表1】
また,シムノール,大豆イソフラホン配糖体についても大豆イソフラホンと同様の結果か得 られた。」
「【0027】この表から明らかなように,大豆イソフラホンとシムノール硫酸Naとを混合 した場合には,大部分か顕著な疲労回復を示しており,この結果は,大豆イソフラホンとシム ノール硫酸Naとを混合した場合には,大豆イソフラホンとシムノール硫酸Naとを単独て使 用した場合に比へて,各々の単独成分ては見られなかった新しい効果かあることを示している。
 また,シムノール,大豆イソフラホン配糖体についてもシムノール硫酸Na,大豆イソフラホ ンと同様の結果か得られた。表に現れたこれらの結果は,二つの成分の組み合わせによって, 二つの成分のそれそれのもつ効果か相乗的に現れたことを示している。」「【0030】【発明の効果】この出願発明により,病気の予防,自然治癒能力の増強,病後 の回復促進を同時に達成することかてきる。」ウ 引用例2の記載 引用例2(甲3)には,次の記載かある。
「【特許請求の範囲】【請求項1】下記一般式(I)て表される化合物及ひ/又はその生理的に許 容される塩からなる,津液改善剤。【化1】
[式(I)中,R1,R3 はそれそれ独立に低鎖長アルキル基,低鎖長アルキルオキシ基,水酸 基又は水素原子を表し,R2 は低鎖長アシルオキシ基又は水酸基を表し,R4 は窒素原子又は芳 香族基を有していてもよいカルホニルアルケニル基もしくはアルケニルカルホニル基を表す。]【請求項2】前記一般式(I)て表される化合物か,下記一般式(II)て表されるカフサイシン, 下記一般式(III)て表されるシナヒン,もしくは下記一般式(IV)て表されるクルクミン又はこれら のアシル化物てある,請求項1記載の津液改善剤。
・・・・・ 【化4】
【請求項3】請求項1又は2記載の津液改善剤を含有する,経口投与用組成物。
 【請求項4】食品てある,請求項3記載の組成物。 【請求項5】医薬てある,請求項3記載の組成物。【請求項6】 津液作用の改善に用いられる,請求項3~5のいすれかに記載の組成物。 【請求項7】 前記津液作用か,・・・・・消化液分泌促進作用,発汗促進作用,便通促進作用,及ひ利尿作用からなる群から選はれる作用てある,請求項6記載の組成物。」 「【0002】【従来の技術】漢方思想における気,血,水の考え方は,その薬理作用の捉え 方のユニークさと,漢方薬選択時の合理的な指標てあるために,古くより研究されてきた。こ れらの内,気,血の意味するものについては,多くのことか解明されてきた。例えは,血とは 酸素,栄養等エネルキーを中心とする補給・代謝を表すキーワートてあり,気とは生命活動の恒常性機構の活動状況と生命活動の原動力の状況を表すキーワートてあることか知られている。 【0003】しかし,水(津液)の働きについては老廃物の代謝・排泄作用のみしか知られ ておらす,気・血・水の論理体型において遅れて認識された為,その真の作用(津液作用)の 解明は未完てあった。また,津液作用と現代医学て認識されている種々の薬理作用等との関係 や津液の現代医学における役割なとはあまり知られておらす,現代医学の分野における津液作用の解明及ひ津液作用の改善をもたらす食品や医薬等の開発か望まれていた。」 「【0004】【発明か解決しようとする課題】本発明はこのような状況を踏まえてなされた ものてあり,津液の真の作用を明らかにし,津液作用を改善しうる物質及ひそれを含有する食品,医薬等の経口投与用組成物を提供することを課題とする。」

「【0005】【課題を解決するための手段】本発明者等は,このような状況に鑑み,津液の 真の作用を求めて鋭意研究を重ねた結果,津液作用か,ある種の物質の働きによって水分の体 外への分泌を司る器官を刺激し,体内水分の体外への分泌を促進させる作用を意味しているこ とを見いたした。そして,そのような分泌器官を刺激し津液作用を促進・改善しうる物質てあ る津液改善剤を見出し,本発明を完成した。」「【0010】本発明の津液改善剤とは,水分の体外への分泌を司る器官を刺激して体内水分 の体外への分泌を促し津液作用を促進・改善する作用,すなわち津液改善作用を有する物質を いう。本発明者らは,津液作用か真皮から表皮への水分分泌を促進し表皮に十分な水分を保持 させることによって起こる・・・・・各種皮膚疾患治療作用・・・・・胃壁,腎臓,腸管ての水分分泌を 促進させることによって起こる消化液分泌促進作用,利尿作用,便通促進作用にかかわる作用 てあることを見出した。」「【0024】津液作用は,その発現形態としてしゃ下作用,利水作用,補陰作用,消導作用 として生体に発現することか知られている。これらの作用を有する漢方生薬としては,しゃ下 作用てあれは,タイオウ,ハンシャヨウ,ロカイ,マシニン,ケンコシ,カンスイ,ケンカ, ソクスイシ,ウキュウコンヒ等か知られており,利水作用を有する漢方生薬としては,チョレ イ,フクリョウ,タクシャ,インチンコウ,ヨクイニン,トウカニン,シフシ,トウキヒ,キ ンセンソウ等か知られており,補陰作用を有する漢方生薬としては,シャシン,セイヨウシン, テンモントウ,ハクモントウ,セッコク,キョクチク,ヒャクコウ,ソウキセイ,カンレンソ ウ,ショテイシ,コマ,コクス,キハン,ヘッコウ等か知られており,消導作用を有する漢方 生薬としては,サンサシ,クレンコンヒ,ヒシ,カクシツ,ライカン,ヒンロウシ,ナンカシ, タイサン等か知られている。」「【0028】(2)本発明の経口投与用組成物
本発明の経口投与用組成物は,上記津液改善剤から選はれる1種乃至は2種以上を含有する ことを特徴とする。」「【0032】【実施例1~5】<配合例>表1に示す成分を用いその処方に従って錠剤を作 成した。・・・・・尚,表1中の数値の単位は重量部てある。」「【0033】【表1】
「【0038】【実施例16】<試験例1:美肌改善作用>・・・・・上記実施例1~3の錠剤(1 g 錠)を・・・・・評価した。評価の基準は,非常に改善した(評点5)~改善しない(評点0),て ある。・・・・・結果を平均評点として・・・・・示す。」「【0046】【実施例20】 <試験例5:胃液分泌促進作用>麻酔犬を用いて胃液の分泌促 進を見た。即ち,ヘントハルヒツールて麻酔した犬の胃に投与装置付き内視鏡を導入し,本発 明の津液改善剤10mg を生理食塩水10ml に溶解又は分散させて投与し,その前後の胃液の分 泌を観察した。対照は生理食塩水のみを用いた。観察の基準は,++(評点4):対照に比へて 著しく胃液分泌か増大,+(評点2):対照に比へて胃液分泌か増大,±(評点1):対照に比 へてやや分泌か増大,-(評点0):分泌か対照に比へて増大せすてあった。結果を表5に示す。
 これより,本発明の津液改善剤は胃液分泌促進作用に優れることかわかる。【0047】【表8】
 表8
 ┌────────┬──────┐
│ 検 体 │ 平均評点 │ ├────────┼──────┤│カフサイシン │
│シナヒン │
│クルクミン │
└─ ──────┴──────┘ 」
なお,【0046】の「表5」は,【表8】を示すものと認められる。2.7 │ 2.6 │ 2.5 │
「【0048】【実施例21】<試験例6:便通・排尿の促進作用> ICRマウスを代謝ケー シて飼育した。投与群は上記実施例1~3の組成物を1g/1匹朝夕2回0.5g すつ経口投与し た。夕方の投与後24時間の尿と糞の量をモニターした。コントロール群は検体を投与しなか った。各サンフル1群10匹とした。検体投与群の尿量の総和をコントロール群の尿量の総和 て除した値と検体投与群の糞量の総和をコントロール群の糞量の総和て除した値とを表6に示 す。これより本発明の一般式(I)て表される化合物及ひ/又はその生理的に許容される塩は便通 促進作用及ひ排尿促進作用(利尿作用)に優れることかわかる。【0049】【表9】
 表9
 ┌────┬──────┬──────┐
│ 検体 │ 尿量比 │ 糞量比 │
 ├────┼──────┼──────┤
 │実施例1│ 1.12 │ 1.21 │
 │実施例2│ 1.07 │ 1.24 │
 │実施例3│ 1.19 │ 1.12 │
 └────┴──────┴──────┘ 」
なお,【0048】の「表6」は【表9】を示すものと認められる。「【0050】「【発明の効果】本発明によれは,・・・・・消化液分泌促進作用,発汗促進作用, 便通促進作用,及ひ利尿作用からなる群から選はれる津液作用を改善する効果を有する津液改 善剤を提供することかてきる。」エ 本願発明について 上記アによれは,本願発明は,加齢による各種症状により発生した栄養不良を治療するために, シムノール又はシムノール硫酸エステルと,大豆イソフラホン又は 大豆イソフラホン配糖体と,クルクミンとを含む構成の栄養剤を提供し,その服用 による効果として,慢性疲労,精力減退,食欲不振,意欲減退等の改善かされたと する発明てある。(2) 構成の容易想到性について
ア 検討 上記(1)イのとおり,引用例1には,中国伝統医学の「気血水」の概念における「血の科学」に関連する作用を有するとするシムノール又はシムノール硫酸エステルと, 「水の科学」に関連する作用を有するとする大豆イソフラホン又は大豆イソフラホ ン配糖体とを組み合わせることて,「血の科学」に関連する作用と「水の科学」に関 連する作用とかそれそれ増強され顕著な疲労回復効果か示されたとする栄養剤か開 示されている。一方,上記(1)ウのとおり,引用例2には,次の一般式(I)て表される化合物か, 漢方思想の「気血水」の考え方における「津液作用」を改善する性質を有し,津液 改善剤として使用てきることか記載され,その一般式(I)に含まれるカフサイシン, シナヒン又はクルクミンのそれそれを投与した結果,胃液分泌促進,便通・排尿促 進等の効果かあったことか具体的に記載されている。引用例1に記載された「水の科学」に関連する作用と引用例2に記載された「津 液作用」とは,共に中国伝統医学の「気血水」の概念に基つくものてあり,引用例 1の「水の科学」に関連する作用か「血管て運はれた機能発揮のための必要物質を 更に血管のない体内各部へ供給するための手段てある体内の水流を促進する作用」 (【0003】)とされ,引用例2の「津液作用」か「水分の体外への分泌を司る器 官を刺激し,体内水分の体外への分泌を促進させる作用」(【0005】)とされてい ることから,両者は同等の作用を有するものに対応することか明らかてある。した かって,引用例2に記載された「津液改善剤」は,引用例1に記載された「水の科 学」に関連する作用を有する成分に相当する。そして,引用例2には「津液作用」を有する生薬か多数列挙され(【0024】),
「津液改善剤」を複数用いることか記載されているから(【0028】),引用例2記 載の「津液改善剤」は「津液作用」(「水の科学」に関連する作用)を有する成分を 複数併せて用いることか予定されているといえ,一方,引用例1にはシムノール, シムノール硫酸エステル,大豆イソフラホン又は大豆イソフラホン配糖体以外のそ の他の成分を混合してよいことか記載されている(【0009】)。そうてあれは,引 用発明の「水の科学」に関連する作用を更に増強するために,引用例2に記載され た「津液改善剤」を引用発明に組み合わせることとし,引用例2において実際に作 用か確認されたとするカフサイシン,シナヒン及ひクルクミンの3種のうちからク ルクミンを選択することは,当業者か容易になし得る程度のことてあり,格別の創 意工夫を要しない。イ 原告の主張について
1 原告は,引用発明の栄養剤に栄養剤てない引用発明2を組み合わせる動機付けはない旨を主張する。
 しかしなから,引用例2の記載の組成物は,「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,津液作用の改善効果を有する津液改善剤,及ひそれを含有する食品,医 薬等の経口投与用組成物に関する」ものてあって,引用発明の栄養剤を含むものて あるから,引用例2に「栄養剤」と記載されていないことは引用発明と引用発明2 とを組み合わせることの支障になるものてはない。原告の上記主張は,理由かない。
2 原告は,便通改善効果を高めるには当業者は下剤を加える旨を主張する。
 しかしなから,審決かその判断において便通改善効果に触れたのは,引用例1の「水の科学」に関連する作用と引用例2の「津液作用」との同一性を基礎付ける具 体例として摘示したまてのことてあり,便通改善効果のみに着目して引用発明と引 用発明2との関連性を導いたものてはなく,いわんや本願発明,引用発明及ひ引用 発明2を専ら便通改善効果に関する発明と認定したものてもない。原告の上記主張は,審決を正解しないものてあり,理由かない。3 原告は,引用発明2の記載からクルクミンを引用発明と組み合わせる動機付 けかない旨を主張するか,上記アに照らして,上記原告の主張は理由かない。4 原告は,シムノール又はシムノール硫酸エステルか「津液改善剤」とすれは, 引用発明にはシムノール又はシムノール硫酸エステルか含まれているから,更に加 えて「津液改善剤」てあるクルクミンを引用発明に加える動機付けかない旨を主張 するか,審決は,シムノール又はシムノール硫酸エステルか「津液改善剤」てある とは認定していないのてあり(審決8頁12~15行目は,シムノール又はシムノ ール硫酸エステルか「津液作用」を増強させるとしたまててあり,シムノール又は シムノール硫酸エステルか「津液改善剤」てあるとはしていない。),上記原告の主 張は,前提を誤認するものてあり,失当てある。5 原告は,引用例2の「津液改善剤」の中からクルクミンを選択する動機付け かない旨を主張する。そこて,引用例2においてカフサイシン,シナヒン,クルクミンについて示され た各種「津液改善作用」のテータを検討すると,上記(1)ウのとおり,対照例との比 較相対的4段階評価において,胃液分泌促進作用について,カフサイシンを含む実 施例の平均評点か2.7,シナヒンを含む実施例の平均評点か2.6,クルクミンを 含む実施例の平均評点か2.5てあって(【0046】【0047】),クルクミンの効 果はカフサイシンやシナヒンを上回るものてはないか,それらと大差はなく,尿量 比及ひ糞量比を調へた便通・排尿の促進作用に関しても大同小異の結果てある(【0 048】【0049】)。このとおり,引用例2に記載されたテータからクルクミンか 劣ったものとは認められす,カフサイシン,シナヒン,クルクミンは同等の効果を 持ったものと理解される。したかって,具体的に効果か示された上記3種のうち, 殊更にクルクミンを引用発明との組合せの候補から除外すへき事情はなく,いすれ を引用発明と組み合わせるかは,当業者か任意に設定てきることてある。したかって,原告の上記主張は,理由かない。
6 原告は,引用例2において,具体的な効果か示されたカフサイシン,シナヒン,クルクミンの3つの中て最も劣ったクルクミンを選択することには阻害要因か ある旨主張するか,その主張に理由かないことは上記5のとおりてある。また,原告は,引用発明にクルクミンを組み合わせたときに配合禁忌の問題か生 しないとはいえないから,阻害事由かあるとの趣旨の主張をする。しかしなから,[1]引用例1には「【0009】この出願発明は,シムノールおよ ひ/またはシムノールエステル,とくに,シムノールおよひ/またはシムノールエ ステルと,イソフラホンおよひ/またはイソフラホン配糖体か含まれていれはよい か,その他の成分として,医薬品の場合には,医薬品一般か使用され,ヒタミン類, 抗生物質,抗カン剤,ヘム鉄,フルーンエキス,生薬としては自律神経に支配され る器官,腺,血管の機能を賦活するもの,消化を助けるものその他を混合してもよ い。」と広く併用てきる他の成分か記載されているところ,[2]クルクミンは,伝統 的な生薬てあってカレー粉の原料(ターメリック)や各種食品の着色剤としても用 いられるウコンの中に存在する有効成分てあり,ウコン又はクルクミンかヒトへの 適用実績を豊富に有し,他の有効成分と併用しても安全て汎用性か高い有効成分て あるということは本願出願日当時の技術常識てあると認められる(乙1,2)。した かって,引用例1に接した当業者は,引用発明の2成分に更にクルクミンを追加し て用いた場合に,各有効成分の作用か阻害されたり,重篤な副作用か出るといった 配合禁忌のような悪影響か生しるとは考えない。したかって,原告の上記主張は,理由かない。
 (3) 効果の顕著性について1 原告は,引用例1及ひ引用例2に記載された便通改善に関する効果からは, 本願発明の栄養剤の慢性疲労や精力減退の改善,体力増強なとの効果を予測するこ とはてきない旨を主張する。しかしなから,クルクミンを含まないとの点ては本願発明と相違するものの,本 願発明と同様の栄養剤てある引用発明においては,便通改善効果のみならす,顕著 な疲労回復,病気の予防,自然治癒能力の増強,病後の回復促進の効果を有するとされ(引用例1【0027】【0030】),さらに,クルクミン等の「津液改善剤」 てある引用例2の組成物には,消化液分泌促進作用,利尿作用,便通促進作用等の 津液作用を広く改善したとされている(【0010】【0046】~【0050】)。 したかって,本願発明の上記効果は,引用例1及ひ引用例2の記載に基ついて当業 者か予測し得る範囲内のものといえる。原告の上記主張は,前提を誤認するものてあり,理由かない。
2 原告は,甲第6号証の記載又は医療現場て実施されていること自体から,本 願発明には引用発明から予測てきない優れた効果かある旨を主張する。ます,発明か実際に用いられることはその効果の大小によってのみ決せられるこ とてはなく,本願発明か実施されたことか直ちに引用発明及ひ引用発明2に比して 本願発明の効果か顕著てあることを明らかにするものてはなく,医療現場て実施さ れていることから本願発明に顕著な効果かある旨の主張部分は失当てある。次に,甲第6号証について検討するも,甲6参考資料1から甲6参考資料5まて (これに関連する甲8号証の記載〔45頁〕,及ひ甲第17号証から甲第20号証ま てを含む。)に基ついて認定てきることは,シムノール又はシムノール硫酸エステル, 大豆イソフラホン又は大豆イソフラホン配糖体,並ひにクルクミンの3成分を併用 する本願発明の構成か一定の効果を示したことたけてある。したかって,上記各証 拠は,本願発明か,クルクミンを除く,シムノール又はシムノール硫酸エステル並 ひに大豆イソフラホン又は大豆イソフラホン配糖体の2成分を併用する引用発明に 対して,クルクミンを加えて上記3成分を併用する場合に予測される効果と比較し て,予測されないとのような顕著な効果を有するのかについてを客観的に明らかに するところはない。したかって,原告の上記主張は,理由かない。
 (4) まとめ以上のとおりてあるから,取消事由1は理由かない。
第6 結論 以上によれは,本願発明と先願発明との同一性について判断するまてもなく,審決の結論には誤りかないことか明らかてある。
 よって,主文のとおり判決する。知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
裁判官
裁判官
清水節
中村恭
中武由紀

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