平成25年10月31日判言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成24年(ワ)第3817号 特許権侵害行為差止請求事件
口頭弁論終結日 平成25年7月4日
判 北九州市若松区<以下略>
原告 日鉄トヒーフリッシ株式会社 同訴訟代理人弁護士 清 永 利 亮 同訴訟代理人弁理士 柳 野 隆 生 同 森岡則夫 同補佐人弁理士関口久由 同 柳野嘉秀 同 小原英一東京都渋谷区<以下略>
被 告 株式会社ニチワ 同訴訟代理人弁護士 中 村 智 廣 同 三原研自 同訴訟代理人弁理士 久 保 健 同補佐人弁理士 佐々木 功 同 川村恭子主文
1 被告は,別紙物件目録記載の製品を製造し,貸し
 渡し,製造又は貸渡しの申出をしてはならない。
2 被告は,別紙物件目録記載の製品を廃棄せよ。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
4 この判は,第1項に限り,仮に執行することか
てきる。
第1 請求 主文同旨
事実及ひ理由
第2 事案の概要 本件は,発の名称を「端面加工装置」とする特許権を有する原告か,被告か業として製造及ひ貸渡しをする別紙物件目録記載の製品(以下「被告製品」 という。)か上記特許権に係る発の技術的範囲に属し,その製造等か上記特 許権の侵害に当たると主張して,被告に対し,特許法100条1項及ひ2項に 基つき,被告製品の製造,貸渡し等の差止め及ひ廃棄を求める事案てある。1 争いのない事実等(各項目末尾掲記の証拠及ひ弁論の全趣旨により容易に認 定することかてきる事実を含む。)(1) 当事者
ア 原告は,橋梁等の鋼構造物の工事の請負等を目的とする株式会社てあ る。イ 被告は,各種建設用の機械工具類の貸渡し及ひ販売等を目的とする株式 会社てある。(2) 原告の特許権
ア 原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,本件特許権に係る特許を「本件特許」という。)を有している。
特 許 番 号 特許第4354006号
発の名称 「端面加工装置」
出日 平成20年11月26日(特2008-30080
 3)
 原出の出日 平成19年3月14日(特2007-65247,以下「原出」という。) 登録日 平成21年8月7日
イ 本件特許権に係る特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりてあ る(以下,当該発を「本件発」という。)。「【請求項1】 母材(Mf)のホルト取付孔(Mh)を貫通し,そしてナット(2)て固定されたトルシアホルト(1)の破断面(1c)に生 したハリ(1d)を除去するための端面加工装置において,ハリ除去用 工具(10,10CA~10CK)と,そのハリ除去用工具(10,1 0CA~10CK)を回転する回転機構(,14,70)と,円筒状 のフート部(12,12A,12B)とを備え,その円筒状のフート部 (12,12A,12B)は金属粉収集機構(12H,16,19A, 19B)を有しており,ハリ除去用工具(10,10CA~10CK) は破断面(1c)のコーナー部(E)にエッシを形成しないように,破 断面(1c)のコーナー部(E)を加工する部分(102C,103C, 104C,41a,42a,43)は,コーナー部(E)以外の破断面 (1c)を加工する部分(101C,104C,41b,42b,43) よりも,母材(Mf)に近い側に位置していることを特徴とする端面加 工装置。」ウ 本件発を構成要件に分説すると,次のとおりてある。
A 母材(Mf)のホルト取付孔(Mh)を貫通し,そしてナット(2)て固定されたトルシアホルト(1)の破断面(1c)に生したハリ(1d)を除去するための端面加工装置において,
B ハリ除去用工具(10,10CA~10CK)と,
C そのハリ除去用工具(10,10CA~10CK)を回転する回転機構(,14,70)と,
D 円筒状のフート部(12,12A,12B)とを備え,
E その円筒状のフート部(12,12A,12B)は金属粉収集機構(1 2H,16,19A,19B)を有しており,
F ハリ除去用工具(10,10CA~10CK)は破断面(1c)のコ ーナー部(E)にエッシを形成しないように,破断面(1c)のコーナ ー部(E)を加工する部分(102C,103C,104C,41a, 42a,43)は,コーナー部(E)以外の破断面(1c)を加工する 部分(101C,104C,41b,42b,43)よりも,母材(M f)に近い側に位置しているG ことを特徴とする端面加工装置。
 (3) 本件特許権の出経過等ア トヒー工業株式会社(以下「本件出人」という。)は,平成19年3 月14日に原出をし,平成20年11月26日に原出の分割出とし て,本件特許の特許出をした。イ 本件特許の特許出時の特許請求の範囲の請求項1は次のとおりてあ った。(乙1)「【請求項1】 ハリ除去用工具と,ハリ除去用工具を回転するための回 転機構と,金属粉を捕集する金属粉収集機構とを有し,ハリ除去用工具は トルシアホルトの中心軸方向へ移動可能に構成されていることを特徴と する端面加工装置。」ウ 特許庁審査官は,本件特許の特許出について,平成21年4月28日 付けて拒絶理由通知書(乙2。以下「本件拒絶理由通知書」という。)を 起案し,その頃これを送付した。エ 本件出人は,本件拒絶理由通知書に対し,平成21年7月6日に,意 見書(乙4。以下「本件意見書」という。)及ひ手続補正書(乙3。以下 「本件補正書」という。)を提出し,同年8月7日,本件特許の設定の登 録を受けた(上記補正後の本件特許の細書及ひ図面を総称して,「本件 細書」という。図面の一部は別紙「本件発の図面」のとおりてある。)。オ 原告は本件出人から本件特許権の譲渡を受け,平成22年6月17日受付の特定承継による本権の移転登録を経た。(甲1) (4) 被告の行為被告は,業として,被告製品の製造及ひ貸渡しをしている。 (5) 被告製品の構成等ア 被告製品の構成は,別紙「被告製品の構成」記載のとおりてある(たた し,第5図は欠番てある。)。イ 被告製品は,本件発の構成要件AないしD,F及ひGを充足している。
 2 争点(1) 被告製品か構成要件Eを充足するか(争点1)
(2) 本件特許は特許無効審判により無効にされるへきものか(争点2) (3) 差止めの可否(争点3)3 争点に関する当事者の主張
(1) 構成要件Eの充足性(争点1) (原告の主張)
ア 本件細書中の第1実施形態の記載には,本件発の金属粉収集機構の 実施形態としてフート部12の下方にフート部12の半径外方に膨らむ ように表現された凹部12Hか図示され(図1,図2),当該凹部12H はフート部12の円周方向全周にわたって設けられていることか好適て あるとされている(【0025】)。また,本件細書中の第5実施形態 の記載には,本件発の実施形態として,フート部12Aの先端側(母材 表面Mf側)に取り付けられたヘロース120か図示されているところ (図11,【0047】,【0048】),ヘロース120の内面の凹部 は金属粉収集機構を示している。イ 被告製品の専用刃(ハリ除去用工具)(10CG’)により切削加工さ れたトルシア形高力ホルト(1’)の切削屑は,フート部(12’)を構 成する蛇腹状のカハー(24)の内面の凹部(12H’)に収容される。ウ 以上によれは,被告製品の凹部(12H’)は構成要件Eの「金属粉収 集機構(12H,16,19A,19B)」に当たり,被告製品は構成要 件Eを充足する。エ これに対し,被告は後記のとおり主張するか,特許請求の範囲の「金属 粉収集機構」に付された符号「(12H,16,19A,19B)」は, 特許法施行規則24条の4及ひ様式29の2の〔備考〕14のロに従って 付されたものてあり,金属粉収集機構の構成を符号により特定される実施 形態に限定するものてはない。(被告の主張)
ア 本件出人は,特許出時の特許請求の範囲の請求項1に,出当初は付されていなかった符号を付し,「金属粉収集機構」を「金属粉収集機構 (12H,16,19A,19B)」と補正した。上記出経過に照らせは,本件出人は,本件発の技術的範囲を,符 号により特定される実施形態の範囲に意識的に限定したことからかて あり,構成要件Eの「金属粉収集機構(12H,16,19A,19B)」 は,これらの符号により特定される実施形態に限定して解すへきてある。そして,本件細書の図11記載のヘロース120の内面の凹部には 「12H,16,19A,19B」の符号は付されていないから,ヘロー スすなわち蛇腹状のカハー内面の凹部は本件発の技術的範囲に含まれ ない。イ 被告製品は,使用中使用後の装置の向きによっては凹部(12H’) に切削屑かたまらないこともあるし,凹部(12H’)にたまった切削屑 も装置の動きによって移動することもあるから,凹部(12H’)は金属 粉を収集する機能はない。また,被告製品の蛇腹状のカハー(24)は,作業体勢を問わすに切削 屑の外部への拡散を防止して切削屑を保持する機能と伸縮により母材との密着性を高める機能を有するか,フート部(12’)の内部のとこかに 切削屑を溜めておくことかてきれは切削屑の回収という目的は達成てき るのてあって,凹部(12H’)は金属粉を収集する機能を奏するものて はない。さらに,被告製品の凹部(12H’)は蛇腹の谷部てあるから,第1実 施形態におけるフート部に設けられた凹部とは大きさか異なり,両者を同 列に論しることはてきない。以上によれは,被告製品の凹部(12H’)は「金属粉収集機構(12 H,16,19A,19B)」に当たらない。ウ 被告製品の凹部(12H’)に金属粉の収集機能かあるとしても,本件 細書には,ヘロース120の凹部か金属粉収集機構に当たるとの記載は なく,ヘロース120の凹部には符号か付されていない(【0047】, 【0048】,図11)ことから,本件出人には,ヘロース120の内 面の凹部か金属粉収集機構に当たるとの認識かなかったことはらかて ある。したかって,いわゆる認識限度論によれは,ヘロース120と同しく蛇 腹状の構成を有する被告製品のカハー内面の凹部か構成要件Eの金属粉 収集機構の技術的範囲に含まれると解することは,本件出人の出時の 認識を超えるものてあり,許されない。エ 以上によれは,被告製品は,構成要件Eを充足しない。
(2) 本件特許は特許無効審判により無効にされるへきものか(争点2) (被告の主張)ア 乙5文献に基つく進歩性の欠如(無効理由1)について (ア) 乙5文献乙5文献(特許第3017984号公報)に開示される発(以下「乙 5発」という。)は次のとおりてある。a 乙5発
(a) 眼鏡フレーム101及ひ眼鏡レンス103のホルト取付孔を貫通し,そしてねし部装着具6の先端部63て固定されたホルト9 の破断面の鋭利な縁部96を除去するためのホルトのねし部面取 り装置において,(b) 面取り加工具7と,
(c) 面取り加工具7を回転させる回転機構とを備え,
(d) 面取り加工具7は,ねし部94の先端95の縁部96を削ってエッシを形成しないように,刃81のうち面取りを行う部分か,そ れ以外の加工する部分よりも眼鏡フレーム101及ひ眼鏡レンス 103に近い側に位置している(e) ホルトのねし部面取り装置。
 b 本件発と乙5発との対比ホルトの破断面のハリ除去とホルトを切断したことにより形成さ れた破断面の鋭利な縁部を除去する面取りは同し意味てあり,乙5文 献の図10に記載された面取り部73は,本件細書の図29の砥石 43と全く同し構成てある。よって,本件発と乙5発は,「母材 のホルト取付孔を貫通してナットて固定されたホルトの破断面に生 したハリを除去するための端面加工装置において,ハリ除去用工具 と,そのハリ除去用工具を回転する回転機構を有しており,ハリ除去 用工具は破断面のコーナー部にエッシを形成しないように,破断面の コーナー部を加工する部分は,コーナー部以外の破断面を加工する部 分よりも母材に近い側に位置していることを特徴とする端面加工装 置。」という点て一致し,次の点て相違する。1 本件発ては加工の対象かトルシアホルトてあるのに対し,乙5 発てはそのような限定のないホルトてある点2 本件発は円筒状のフート部を備え,その円筒状のフート部か金 属粉収集機構を有するのに対し,乙5発はフート部及ひ金属粉収 集機構を有しない点(イ) 相違点1について
a トルシアホルトは乙8文献(特開2005-133336号公報)及ひ乙9文献(特開2005-155768号公報)に記載された周知技術てある。
b トルシアホルトは,頭部か丸頭てある点及ひヒンテールと呼はれる先端部か締め付けトルクにより破断する点以外は通常のホルトと同 してあるから,乙5発の加工の対象をトルシアホルトにすることは 容易てあり,また,加工の対象となるホルトを小さなものから大きな ものに置換することにより新たな技術的な困難性か生しるなとの事 情は存在しないから,かかる置換は当業者の通常の創作能力の発揮に すきない。(ウ) 相違点2について
a 乙6文献との組み合わせ
(a) 乙6文献(特開2001-38622号公報)の図1及ひ【0 014】に記載された囲繞部25bは本件発のフート部に相当 し,乙6文献の図1,【0015】及ひ【0018】に記載された 負圧によってカハー25の内部の粉塵を吸い込む機構は本件発 の金属粉収集機構に相当する。(b) 乙5発はホルトのねし部を切断する装置及ひ切断したこと により形成された切断面の面取りを行う面取り装置に関するもの てあり,乙6文献は切断切削等によって発生する粉塵を除去する 装置に関するものてあるから,乙5発と乙6文献とは,切断・切 削に関するものてあるという点において技術分野か一致している。さらに,切断面取りを行えは粉塵か生しるのは自の理てある から課題も共通しており,乙5発と乙6文献とを組み合わせるこ との動機付けか存在する。b 乙11文献又は乙12文献との組み合わせ
(a) 乙11文献(日立電動工具カタロク2000)及ひ乙12文献(同2002-9)に記載された円筒状の集しんカッフは,本件発のフート部及ひ金属粉収集機構に相当する。
(b) 乙11文献及ひ乙12文献の集しんカッフは,切削加工時に使用されるものてあるから,乙5発と乙11文献及ひ乙12文献と は,切削加工に関するものてある点において技術分野か共通してい る。さらに,切削加工を行えは粉塵か生しるのは自の理てあるから 課題も共通しており,乙5発と乙11文献又は乙12文献とを組 み合わせることの動機付けか存在する。(エ) 乙5発か「ハリ除去用工具は破断面のコーナー部にエッシを形成 しないように,破断面のコーナー部を加工する部分は,コーナー部以外 の破断面を加工する部分よりも母材に近い側に位置している」という構 成を有していないとしても,乙7文献(実昭62-187003号(実 開平1-92311号)のマイクロフィルム)には,このような構成を 有するハリ取り装置の記載かある。(オ) 乙5発か「回転機構」の構成を有しないとしても,乙6文献には このような構成の記載かある。(カ) よって,本件発は,乙5発と,乙6文献又は乙11文献若しく は乙12文献及ひ周知技術並ひに乙7文献を組み合わせることにより, 当業者か容易に発することかてきたものてあるから,本件特許は,特 許法29条2項に違反して登録されたものてあり,無効理由かある。イ サホート要件違反(無効理由2)について 本件細書にはヘロース120の内面の凹部か金属粉収集機構に当たることの言及はないし,図面に符号も付されていないから,蛇腹状のカハ ーの内面の凹部か金属粉収集機構てあることは,本件特許の特許請求の範 囲,細書及ひ添付図面のいすれにも記載されていない。したかって,こ れか金属粉収集機構に当たるとすれは,本件特許には特許法36条6項1 号所定のいわゆるサホート要件違反の無効理由かあることになる。(原告の主張)
ア 乙5文献に基つく進歩性の欠如(無効理由1)について
(ア) 乙5文献 乙5文献に,「面取り加工具を回転させる回転機構」と,「刃のうち面取りを行う部分か,それ以外の加工する部分よりも眼鏡フレーム及ひ 眼鏡レンスに近い側に位置している」ことは記載されていない。そうす ると,本件発と乙5発を対比すると,被告の主張する相違点2に加 え,次のような相違点かあることになる。1’本件発ては,加工の対象かトルシアホルトてあるのに対し,乙 5発ては手動て切断面取りか行える小径のホルトてある点3’本件発はトルシアホルトの破断面に生したハリを確実に除去す る端面加工装置てあるのに対し,乙5発は縁部の面取り量を一定 にするように工夫した面取り装置てある点4’本件発てはナットて固定されたトルシアホルトの破断面のハリ 取りを行うのに対し,乙5発にはナットに相当する構成を有しな い点5’本件発は,ハリ除去用工具は破断面のコーナー部にエッシを形 成しないように,破断面のコーナー部を加工する部分は,コーナー 部以外の破断面を加工する部分よりも母材に近い側に位置しているのに対し,乙5発はこのような構成を有しない点 6’本件発には回転機構かあるか,乙5発には回転機構かない点(イ) 被告の主張する相違点1について トルシアホルトか周知技術てあることは認めるか,乙5発において,加工の対象を眼鏡フレーム用ホルトから鋼構造建築物の構築に用い られるトルシアホルトにすることに,当業者か想到することかてきると は到底考えられない。(ウ) 被告の主張する相違点2について a 乙6文献について
乙6文献に記載のカハー25は,空気か負圧部分に向かう流れを補 うために,囲繞部25bの下端と床面との隙間かある構成てあり,端 面を母材の表面に当接させるものてはないから,乙6文献には相違点 2に相当する構成の開示はない。乙5発の課題(簡単操作による,眼鏡フレーム用ホルト切断位置 の精度向上及ひねし部面取りの精度向上)と,乙6文献に記載された 課題(圧縮空気式工具において,比較的安価なコストて除塵機構を一 体化すること)は異なり,乙5発と乙6文献とを組み合わせること に動機付けかあるという被告の主張は失当てある。b 乙11文献及ひ乙12文献について 乙5発において眼鏡フレーム用ホルトのねし部の面取りを行った際に切り屑か発生するとしても,眼鏡フレーム用ホルトに関する乙 5発に,乙11文献又は乙12文献のようなコンクリートに穴をあ けるトリル等と組み合わせて用いる筒状の集しんカッフを適用する ことに,当業者か想到することかてきるとは考えられない。イ サホート要件違反(無効理由2)について 本件細書の図11のヘロース120には内面の凹部の記載かされているのからかてあるから,本件細書の発の詳細な説の記載に照ら し,蛇腹の内面の凹部か金属粉収集機構に当たることか容易に分かる。したかって,本件発か特許法36条6項1号所定のサホート要件を欠 くということはてきない。(3) 差止めの可否(争点3) (原告の主張)
前記(1)のとおり被告製品は本件発の技術的範囲に属するから,被告の 行為は本件特許権の侵害に当たる。よって,原告は,被告に対し,特許法100条1項及ひ2項に基つき,被 告製品の製造,貸渡し,製造及ひ貸渡しの申し出の差止め並ひに被告製品の 廃棄を求める。(被告の主張) 被告製品の凹部(12H’)か金属粉収集機構に当たるとしても,上記凹部は被告製品の使用の向きによっては金属粉を収集しないから,被告製品は 本件発の技術的範囲に属しない使い方をすることか可能てある。そうすると,被告製品について,その製造及ひ貸渡しの段階て侵害のおそ れを客観的に判断することは困難てある上,使用の向きは第三者か定する ものてあるから,被告において侵害の可能性を予期することも困難てある。以上のとおり,被告製品は本件特許権を侵害しない態様て使用される可能 性かあるから,差止めを認めるのは不当てある。第3 当裁判所の判断
1 構成要件Eの充足性(争点1)について
(1) 前記争いのない事実等に後掲各証拠及ひ弁論の全趣旨を総合すると,次 の事実か認められる。ア 本件細書の発の詳細な説の記載(甲2)
 本件細書には,発の詳細な説として,次の記載かある。
(ア) 【背景技術】 「【0008】…ハリ1dは,鋭利てあり,そのままにしておくことは作業者にとって危険てあるため,除去する必要かある。また,破断面 の防錆処理(錆防止のために塗装を施す)を施す際に,そのようなハ リ1dの存在により,防錆処理塗装の塗膜厚か不十分な厚さとなって しまう場合か多く,当該箇所(ハリ1dか存在し,塗膜厚か不十分な 個所)から錆か発生し易い。」「【0010】…クラインター等て加工した場合は,作業性か悪い。
 また,加工の際に金属粉か飛散し,そのような金属粉か周囲の母材 に付着すると,金属粉か付着した箇所から錆ひてしまう(いわゆる「もらい錆ひ」)という不都合か生しる。」 (イ) 【発か解しようとする課題】「【0012】本発は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案された ものてあり,作業現場においてトルシアホルトの破断面に生したハリ を確実に除去することか出来て,しかも,周辺に金属片か飛散しない 端面加工装置の提供を目的としている。」(ウ) 【課題を解するための手段】 「【0014】ここて金属粉収集機構は,フート部(12A)に空気侵入系統(15)と空気排出系統(16)を設け,フート部(12A) 内部に空気流を発生して,その空気流により金属粉を連行するように 構成することか好ましい(図13,図14)。 あるいは,フート部(12)内に磁力発生機構(永久磁石19A, 電磁石19B)を備えていることか好ましい。」
(エ) 【発の効果】 「【0019】上述する構成を具備する本発の端面加工装置によれは,ハリ除去用工具(10)をトルシアホルト(1)の中心軸方向(矢印Y)へ移動して,トルシアホルト(1)の破断面(1c)に押し当て ることにより,破断面(1c)に生したハリ(1d)を確実に除去す ることか出来る(図2参照)。」「【0020】ここて,フート部(12)は,ナット(2)及ひトルシ アホルト(1)の余長部分(図3の符号Lの部分)を包囲するように 構成されているのて,ハリ除去用工具(10)によりトルシアホルト (1)の破断面(1c)からハリ(1d)か除去される際に金属粉か 発生しても,その金属粉か端面加工装置(100)の外部に漏れ出し て,周囲に拡散してしまうことはない。金属粉か拡散しないため,金属粉か周辺の母材に付着して「もらい 錆ひ」の原因となることも防止される。」「【0022】また本発ては,金属粉収集機構(12H,15,16, 19A,19B)を有しているのて,端面加工装置(100,107, 108,109,110)の外部に金属粉か拡散する以前の段階て, 当該金属粉か収集される。そのため,金属粉か端面加工装置(100, 107,108,109,110)外部に拡散してしまうことか,確 実に防止される。」(オ) 【発を実施するための最良の形態】 「【0023】…図1,図2は本発の第1実施形態を示す。」 「【0025】フート部12の下方には,フート部の半径外方に膨らむように表現された凹部12Hか形成されている。凹部12Hは,端面 加工時に発生する金属粉を収集するための機構てある。図1,図2ては,簡略化のために凹部12Hかフート部12の下方 にのみ設けられて図示されているか,当該凹部12Hはフート部12 の円周方向全周にわたって設けられていることか好適てある。」「【0028】図2て示すように,端面加工装置100のフート部12の端面12eか,トルシアホルト1て締結されている母材(たとえは 鋼材)の表面Mfに当接しているのて,トルシアホルト1端部は,端 面加工装置100によって,完全に包囲されている。そのため,ハリ除去用工具10によりハリ1dか除去される際に発 生する金属粉は,端面加工装置100の外部に漏れ出す恐れかなく, 周囲に拡散してしまうことか防止される。そして,金属粉か拡散しな いため,金属粉か周辺の母材Mfに付着して「もらい錆ひ」の原因と なることもない。なお,ハリ1dか除去される際に生する金属粉は,端面加工装置1 00に設けた凹部12H(金属粉収集機構)により収集される。」「【0046】図11は第5実施形態を示す。図11において全体に符 号105て示す端面加工装置も,ハリ除去用工具10をトルシアホル ト1の破断面1cに近接し,あるいは離隔するように構成している。
 図11において,端面加工装置105は,ハリ除去用工具10と,ケ ーシンク一体のフート部12Aと,回転軸14を有する電動モータ 14とを備えている。モータ回転軸14の先端に,ハリ除去用工具 10か支持されている。」「【0047】フート部12Aの先端側(母材表面Mf側:図11ては 左側)に,ヘロース120の一端(図示の右端)か取付けられている。 ヘロース120の他端(左端)は,母材表面Mfに当接している。」「【0048】図11て示す状態から,ハリ除去用工具10かトルシア ホルト破断面1cに当接するまて押し込むと,ヘロース120か収縮 する。ヘロース120か収縮しても,ヘロース120の先端は母材表 面Mfに当接した状態を維持する。図11の第5実施形態ては,ヘロース120によって,ハリ取り加 工部を覆っているため,ハリを除去する際に発生する金属粉は,装置105外へ散乱することか防止される。」 「【0053】図13は第7実施形態を示す。図1,図2の第1実施形態ては,金属粉収集機構として,フート部12の下方に形成された凹 部12Hを設けている。しかし,たとえは垂直に延在するトルシアホルト1の破断面1cの ハリを除去する際に発生する金属片の除去に際しては,図1及ひ図2 て示す様な凹部12Hては,金属粉の収集には不充分てある。」イ 本件特許権の出経過(乙2~4)
(ア) 本件特許権の出経過は前記争いない事実等(3)のとおりてあるところ,本件拒絶理由通知書には,次の指摘かある。
 特開2005-238417号公報(引用文献1)及ひ実昭55-18682号(実開昭55-103143号)のマイクロフィルム(引 用文献2)について,引用文献1のハントクラインターには,ハリ除去 用工具,回転機構,金属粉収集機構,フート部に相当する構成か記載さ れ,引用文献2には「回転砥石か集塵カハーに対して軸方向に変位可能 な構成」か記載されているところ,クラインターをハリの除去に用いる ことは本出前に周知の技術的事項てあり,トルシアホルト端面のハ リ取りに適用すれは,引用文献2の軸方向に変位可能な構成によって, トルシアホルト端面のハリ取りについて,本件発と同等の効果か得ら れることは,当業者か予測し得る程度のものてあるから,本件発は進 歩性を欠如している。(イ) これに対し,本件出人か提出した本件意見書においては,本件補 正書による補正後の本件発の作用効果について,ハリを除去した後に 破断面のコーナー部に新たなエッシか生しることを防止することかて きること,トルシアホルトの破断面に生したハリを簡単かつ確実に除去 することかてきること,フート部に金属粉収集機構を設けたのて,加工により生した金属粉かフート部において収集てき,外部への拡散を防止 てき,粉塵の発生を防止てきることを挙け,前記(ア)の各引用文献には 本件発の構成要件A,E,Fの開示はなく,また,本件発の上記作 用効果を奏することもてきないから,進歩性を否定てきない旨記載され ている。本件意見書及ひ本件補正書には,特許請求の範囲を,補正により付加 した符号により特定される実施形態に限定する旨の記載はない。ウ 被告製品の構成(甲15) 被告製品の構成は,別紙被告製品の構成のとおりてあり,被告製品のフート部(12’)を構成する蛇腹状のカハー(24)の内面には,蛇腹の 谷部として,円周方向全周にわたって半径外方に膨らんた凹部(12H’) か複数存在している。トルシアホルトは橋梁等の部材の垂直面,水平面等に用いられるから, 被告製品は,ハリを除去するトルシアホルトか延在する方向に応して水平 方向垂直方向なと様々な向きて使用することか想定される。また,使用 者は,被告製品の使用中使用後に被告製品の向きを変えることもある。 したかって,ハリ除去により生した切削屑は,使用の向きによっては凹部 (12H’)に収容されないこともあるし,使用中及ひ使用後を通しフー ト部(12’)の内部を移動することもある。もっとも,例えは被告製品を水平方向にした場合には,通常,凹部(1 2H’)に切削屑か収容された状態になる。(2) 原告は,被告製品の凹部(12H’)か構成要件Eの「金属粉収集機構 (12H,16,19A,19B)」に当たり,被告製品は構成要件Eを充 足すると主張するのて,これを検討する。ア 本件特許の特許請求の範囲には,構成要件Eとして単に「金属粉収集機構」と記載されており(なお,符号「(12H,16,19A,19B)」については後述する。),その文言上は,ハリ除去用工具かトルシアホル トの破断面に生したハリを除去する際に発生する金属粉を収集する機能 を有する構造てあれは足り,その構成に格別の限定はないということかて きる。また,本件細書の発の詳細な説の記載によると,本件発は, フート部により金属粉か装置の外部に漏れ出して周囲に拡散することか なく,金属粉収集機構により装置の外部に金属粉か拡散する以前に金属粉 か収集され,金属粉か装置外部に拡散してしまうことか確実に防止される との効果を有するものてあるから(【0020】,【0022】),この ような効果を奏するものてあれは,「金属粉収集機構」に当たるとみるこ とか可能てある。しかし,特許請求の範囲の「金属粉収集機構」という上記文言は,発 の構成をそれか果たすへき機能によって特定したものてあり,いわゆる機 能的クレームに当たるから,上記の機能を有するものてあれはすへて技術 的範囲に属するとみるのは必すしも相当てなく,本件細書の発の詳細 な説に開示された具体的構成を参酌しなからその技術的範囲を解釈す へきものてある。そこて,本件細書の発の詳細な説の記載をみると,金属粉収集機 構としては,1空気侵入系統及ひ空気排出系統を設け,空気流を発生させ て金属粉を連行するようにした構成(第7及ひ第8実施形態),永久磁 石又は電磁石を設け,磁力を発生させて金属粉を収集するようにした構成 (第9及ひ第10実施形態)か開示され,これらの構成か好ましいと記載 されているものの(【0014】,【0053】~【0066】,図13 ~16),これらに加え,2フート部の半径外方に膨らむようにフート部 の円周方向全周にわたって凹部を設けた構成も記載されている(第1実施 形態。【0025】,図1及ひ2)。そして,上記2の構成については, 例えは垂直に延在するトルシアホルトの破断面1cのハリを除去する際に発生する金属粉の収集には不充分てあるとも記載されているか(【00 53】),これは上記1の構成と比較した場合に効果か劣る旨を記載して いるにととまり,2の構成てあっても金属粉を収集してその拡散を防止す るという本件発の効果を奏しないとはいえないから,上記記載をもって 本件発の構成要件Eにいう「金属粉収集機構」を上記1の構成に限定し たとみることは困難てある。以上によれは,構成要件Eにいう「金属粉収集機構」は,上記1及ひ2 の各構成を含むものと解することかてきる。一方,前記(1)ウて認定したとおり,被告製品の凹部(12H’)は, 円筒状のフート部の半径外方に膨らむようにフート部の円周方向全周に わたって存在するものてある。また,この凹部は,フート部のうち,被告 製品においてトルシアホルトの破断面のハリを切削加工する際に切削屑 か発生し,これか飛散する箇所,すなわち,別紙「被告製品の構成」の第 3図,第4図及ひ第6図に示された専用刃(ハリ除去用工具)(10CG ’)の第1の刃(101C’)及ひ第2の刃(102C’)かトルシアホ ルトの破断面(1c’)に当接し,切削加工により切削屑か生しると,こ れかアウターソケット(22)側面の開口部(22a)を通って飛散する 箇所に対応する部分に位置していると認められる。そうすると,被告製品 の凹部(12H’)は,本件細書に記載された上記2の構成と同様に, 金属粉を収容することによって金属粉を収集する機構てあるということ かてきるから,構成要件Eにいう「金属粉収集機構」に当たると解するの か相当てある。イ これに対し,被告は,(ア) 本件特許の特許請求の範囲には「金属粉収 集機構(12H,16,19A,19B)」と記載されており,その出 経過に照らしても,これらの符号により特定される実施形態に限定される こと,(イ) 被告製品を使用する向きによっては凹部(12H’)に切削屑かたまらないし,切削屑はカハー(24)内を移動するから,凹部には 金属粉収集の機能はないこと,(ウ) 被告製品の蛇腹状のカハー(24) は,切削屑の外部への拡散を防止して切削屑を保持する機能及ひ伸縮によ り母材との密着性を高める機能を有するものてあること,(エ) 本件細 書の第1実施形態の凹部(【0025】)と蛇腹の谷部てある被告製品の 凹部(12H’)は大きさか異なること,(オ) 本件細書には,本件発 の第5実施形態(【0046】~【0048】,図11)におけるヘロ ース120か金属粉収集機構てあることを示す記載かなく,本件出人に おいて蛇腹状のカハーの内面の凹部か金属粉収集機構に当たるとの認識 かなかったことを理由に,被告製品の凹部か構成要件Eにいう「金属粉収 集機構」に当たらない旨主張するか,以下のとおり,いすれも採用するこ とかてきない。(ア) 特許請求の範囲の括弧内に符号を記載することに関しては,特許法 施行規則24条の4及ひ様式29の2の〔備考〕14のロに「請求項の 記載の内容を理解するために必要かあるときは,当該書に添付した図 面において使用した符号を括弧をして用いる。」と規定されているとこ ろてあり,これによれは,特許請求の範囲中に括弧をして符号か用いら れた場合には,特段の事情のない限り,記載内容を理解するための補助 的機能を有するにととまり,符号によって特許請求の範囲に記載された 内容を限定する機能は有しないものと解される。 この点に関し,被告は,本件出人は,本件補正書に係る補正によっ てこれらの符号により特定される実施形態以外の構成を意識的に除外し たから,「金属粉収集機構(12H,16,19A,19B)」は,こ れらの実施形態の構成に限られ,蛇腹状のカハーの内面の凹部は構成要 件Eにいう「金属粉収集機構」に当たらない旨主張する。
 しかし,これらの符号は本件補正書に係る補正の前から細書及ひ図面中て使用されていたものてあり(乙1),前記(1)イ記載の本件特許の 出経過に照らし,本件出人か拒絶理由の回避のために特定の構成を 除外する意図てこれらの符号を付したとは認め難い。そうすると,本件 において上記特段の事情かあると認めることはてきないから,符号「(1 2H,16,19A,19B)」の記載は,特許請求の範囲に記載され た内容をこれらの符号により特定される実施形態の構成に限定するもの てはないと解すへきてある。(イ) 本件発の実施形態のうち上記2のフート部に凹部を設けた構成 は,トルシアホルト1か垂直に延在する場合等において,上記1の空気 流又は磁力を利用する構成に比し,金属粉を回収する機能か劣るものて はあるか,構成要件Eにいう「金属粉収集機構」に当たると解し得るこ とは上記アに判示したとおりてある。そうすると,構成要件Eにいう金 属粉の「収集」は,装置の向きを問わす常に金属粉を収集てきることを 必須とするものてはなく,また,装置の向きを変えた場合に,一旦収集 した金属粉か移動しないことを要件とするものてもないから,被告の指 摘する点は,被告製品の凹部(12H’)か金属粉収集機構に該当する と解することの妨けにならないと考えられる。(ウ) 被告製品の蛇腹状のカハー(24)か切削屑の外部への拡散を防止 して切削屑を保持する機能及ひ伸縮により母材との密着性を高める機能 を有するとしても,その内面の凹部か金属粉を収集する機能を有するこ とは上記アのとおりてある。したかって,これと同時に他の機能を有す ることによって金属粉収集機構に該当することか否定されることはない と解すへきてある。(エ) 被告か指摘する第1実施形態の図面(第1図)は,本件発の実施 例の一つてあるにととまるから,これと凹部の大きさか異なるとしても 技術的範囲の属否の判断に影響を及ほすものてはないことはらかてある。
(オ) 被告製品における蛇腹状のカハー(24)の内面の凹部(12H’) か構成要件Eにいう「金属粉収集機構」に当たると解すへきことは上記 アて判示したとおりてある。そして,本件細書の第5実施形態は,本 件発の一実施例てあるにととまるから,ヘロース120か金属粉収集 機構てあり,本件出人かその旨を認識していたかとうかは,上記の判 断に何ら影響するものてはない。
 すなわち,特許発の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基ついて 定められ,その用語の意義は細書の記載及ひ図面を考慮して解釈すへ きものてあるから(特許法70条1項,2項),技術的範囲を判断する に際しては,出人の主観的認識てはなく,特許請求の範囲及ひ細書 の記載によって定めるへきてある。本件細書においては,蛇腹状の部 材てあるヘロース120を含む第5実施形態について,ハリ除去用工具 10を破断面1cに近接し,あるいは離隔し,かつ,金属粉か装置10 5外へ散乱することを防止するために,フート部12Aの先端側にヘロ ース120を取り付けた旨記載され(【0046】~【0048】,図 11),ヘロース120の凹部か金属粉収集機構てあることを示する 記載は見当たらないか,フート部の円周方向全周にわたって設けた凹部 か金属粉収集機構に当たるとの記載かあること(【0025】),蛇腹 状の円筒の内面には当然に円周方向全周にわたって凹部か形成されるこ とに照らせは,本件細書の記載から,蛇腹状の部材か構成要件Eにい う「金属粉収集機構」から除外されていると読み取ることはてきない。(3) 以上によれは,被告製品は,本件発の構成要件Eを充足するものと解 するのか相当てある。そして,被告製品か本件発のその余の構成要件を充 足することは,前記争いのない事実等(5)に記載のとおりてあるから,被告 製品は,本件発の構成要件AないしGをいすれも充足し,本件発の技術的範囲に属するということかてきる。
2 本件特許は特許無効審判により無効にされるへきものか(争点2)について(1) 乙5文献に基つく進歩性の欠如(無効理由1) ア 乙5文献の記載事項原出の前に頒布された刊行物てある乙5文献(特許第3017984 号公報)には以下の記載かある(たたし,誤記と認められる記載は括弧中 に訂正した。また,図面は別紙「乙5発の図面」のとおりてある。)。
 「【0001】本発はホルトのねし部の切断及ひ切断したホルトのねし部の面取りをそれそれ行うホルトのねし部切断装置及ひ切断したホルトのねし部面取り装置に関する。」 「【0042】また,前記面取り加工具7には,前記ねし部装着具本体61の挿入穴部62に挿入し組み合わせた状態て前記面取り加工具本体 71を回動操作する操作部74か設けられている。」
 「【0055】図16において,加工具7の先端部72に形成され(た)面取り部73は,面状の凹部80の内側に複数の刃81,81…を形成したものてある。刃81は,側方から見た場合,円弧状に形成される。」 「【0058】図17において,先端部72の面取り部73には,複数の 刃81,81…か正面から見て放射状に形成されている。このような構 造てホルトのねし部に対して加工具7を回転させることにより,ホルト のねし部の先端の縁部を削ることかてきるようになっている。」 「【0068】図32において,眼鏡レンス103の挿入孔108には,背面側からワッシャ104の挿入部111か挿入され,ホルト9のねし 部91は,表面側から眼鏡フレーム101の挿入孔106,ワッシャ1 02の挿入孔107,眼鏡レンス103の挿入孔108,ワッシャ10 4の挿入孔109,座金105の挿入孔110に挿入し,雌型カッタ2 の先端部23のねし孔24に螺入し,先端かねし孔24から先端部23 の底面に突出した状態となって(い)る。」
 「【0074】図35において,眼鏡フレーム101,ワッシャ102,眼鏡レンス103,ワッシャ104,座金105は,ホルト9のホルト 頭92とねし部装着具6の先端部63に挟まれて固定された状態とな っている。ねし部装着具6の先端部63のねし孔64から螺入したホル ト9のねし部94は,そのまま面取り加工具7の先端部72の面取り部 73に挿入して複数の刃81に接触することになる。ねし部装着具6と 面取り加工具7とを組み合わせた状態て前記面取り加工具7を回動操 作(する)ことにより,ねし部94の先端95の縁部96か複数の刃8 1,81…により削られ,面取りか行われる。」イ 本件発と乙5発の対比
(ア) 前記アの認定事実によれは,乙5文献には,次の発か開示されているものと認められる。
a 眼鏡フレーム101及ひ眼鏡レンス103の挿入孔106,108を貫通し,ねし部装着具6の先端部63て固定されたホルト9の切断 部となる先端95の鋭利な縁部96を除去するためのホルトのねし 部面取り装置において,b 面取り加工具7と,
c 面取り加工具7を回転させる回転機構と,
d 面取り加工具7は,先端部72の面状の凹部80の内側に複数の刃81か放射状に形成され,ねし部94の先端95の縁部96を削る ようにされている
e ホルトのねし部面取り装置。
これを本件発と対比すると,乙5発の「挿入孔」は,本件発の 「ホルト取付孔」に相当し,本件発と乙5発は,1 加工装置か,本件発は「母材のホルト取付孔を貫通し,そしてナットて固定されたトルシアホルトの破断面に生したハリを除去する ための端面加工装置」てあるのに対し,乙5発は「眼鏡フレーム及 ひ眼鏡レンスの挿入孔を貫通し,そしてねし部装着具の先端部て固定 されたホルトの切断部となる先端の鋭利な縁部を面取りするための ねし部面取り装置」てある点,2 本件発は「円筒状のフート部」と「金属粉収集機構」を備えてい るのに対し,乙5発はそのような構成を備えていない点,3 加工工具について,本件発は,「破断面のコーナー部を加工する 部分は,コーナー部以外の破断面を加工する部分よりも母材に近い側 に位置している」「ハリ除去用工具」てあるのに対し,乙5発は「先 端部の面状の凹部の内側に複数の刃か放射状に形成され,ねし部の 先端の縁部を削るようにされている」「面取り加工具」てある点て相違し,本件発のその余の構成を備えている点ては一致しているものと認められる。
(イ) 被告は,相違点1及ひ3に関し,ハリ除去と面取りの技術的意義は同してあるから,乙5発は,ホルトの破断面の鋭利な縁部を除去する ためのホルトのねし部面取り装置の構成と,面取り加工具のホルトの先 端の縁部を加工する部分か縁部以外の切断面を加工する部分よりも母 材に近い側に位置している構成を有していると主張する。しかし,本件発は,トルシアホルトの破断面に形成されたハリか, 作業者にとって危険てあり,錆の原因にもなることから,破断面に生し たハリを確実に除去するという課題(本件細書の段落【0008】, 【0012】)に対し,破断面のコーナー部を加工する部分とそれ以外 の部分を加工する部分を備え,破断面全体を加工するハリ除去を行う発 てあるのに対し,乙5発は,ホルトのねし部の長さ調整のために切 断したねし部先端部の鋭利な縁部の面取りを簡単な操作て高精度に行うという課題に対し,切断したねし部先端部の鋭利な状態となる縁部 (コーナー部)の面取りを均一かつ適切な面取り量て行うことを目的と しており(乙5文献の段落【0003】~【0006】,【0088】), 縁部以外の部分の加工を行うことか開示されていると認めることはて きない。したかって,乙5文献には,「ホルトの破断面に生したハリを 除去するための端面加工装置」及ひ「コーナー部以外の破断面を加工す る部分」の構成の開示はなく,これらの点は相違点に当たると解すへき てある。なお,本件細書の図29の砥石43と乙5文献の図10の面取り部 73に共通する構成かあると認められるとしても,上記説示に照らせ は,乙5文献に破断面のコーナー部以外の部分を加工する技術的思想か 開示されているとみることはてきない。ウ 相違点1及ひ3について 乙7文献(実昭62-187003号(実開平1-92311号)のマイクロフィルム。平成元年6月16日公開)には,「フレス成形品の端 面周縁に形成されているハリを取るために,略すり鉢形状のチッフホルタ に複数のチッフ19を放射状に取り付けること,又はフレス成形品の端面 周縁に形成されているハリを取るためのクラインタ」か記載されている。
 しかし,コーナー部以外の部分を加工する加工装置か開示されているとは 認められす,また,このほかに破断面のコーナー部以外の部分を加工する 加工装置に関する証拠は提出されていない。したかって,当業者か,相違 点1及ひ3に係る本件発の構成を容易に想到することかてきたとは認 められない。エ 相違点2について (ア) 乙6文献
乙6文献は,平成13年2月13日公開の公開特許公報(特開2001-38622号公報)てあり,切断切削等に伴って生しる多量の粉 塵か,作業者の視界を遮って作業を困難にしたり,作業者に健康被害を もたらさないように,安価に防塵機構を一体化するという課題(【00 02】,【0004】)を解するための,コンフレッサなとを備えた 空気吸引式の除塵装置か併用されている圧縮空気式工具について,1円 筒状のカハー25は,扁平円筒形状の囲繞部25bを備え,2カハー2 5に一体に形成された集塵管26と,集塵管26の側方から内部に突出 するように設けられた空気噴射管28と,集塵フィルタ3とを備えた集 塵機構を有する構成か記載されている(【0014】,【0015】, 【0018】,【0019】,図1)。そして,カハー25bは本件発 の円筒状のフート部に,集塵機構は本件発の金属粉収集機構に相当 する構成を有する。(イ) 乙11文献及ひ乙12文献 乙11文献及ひ乙12文献は,平成12年3月及ひ平成14年9月現在の「日立電動工具」カタロクてあり,ロータリハンマトリルの付属品 として,円筒状の蛇腹状のカハーの構成を有する集しんカッフか記載さ れている。そして,前記1のとおり,蛇腹状のカハーの内面の凹部は本件発の 金属粉収集機構に当たるから,上記集しんカッフは金属粉収集機構を有 する円筒状のフート部に相当する構成てあるということかてきる。(ウ) 容易想到性 被告は,乙5発と乙6文献,乙11文献及ひ乙12文献は,技術分野を同しくし,また,切削加工を行えは粉塵か生しるのは自の理てあ るから課題も共通しており,乙5発と乙6文献又は乙11文献若しく は乙12文献を組み合わせることにより相違点2に相当する本件発 の構成を容易に想到することかてきると主張する。そこて検討すると,乙5発は,面取りするホルトのねし部をねし部 装着具6のねし孔64に螺合して挿入穴部62内に突出させ,挿入穴部 に挿入した面取り加工具7の先端部72に形成された面取り部73て 面取りを行うものてあるから(【0039】~【0041】,図10, 図16),面取りにより生した金属粉はねし部装着具6の外には飛散し ない。そうすると,乙5発においては切削等により生しる金属粉か周 囲に飛散することを防止するという課題か見いたせないから,乙6文献 に記載された円筒状のカハー乙11文献及ひ乙12文献に記載され た集しんカッフを組み合わせる動機付けか存在するとみることはてき ない。(エ) したかって,乙5発と,乙6文献又は乙11文献若しくは乙12 文献に基ついて,当業者か相違点2に相当する本件発の構成を容易に 想到することかてきたとは認められない。オ 以上のとおりてあるから,特許法29条2項違反の無効理由をいう被告 の主張を採用することはてきない。(2) 無効理由2(サホート要件違反) 被告は,蛇腹の谷部か金属粉収集機構に当たるとすれは,本件細書にはヘロース120の内面の凹部か金属粉収集機構てあるとの記載かないため, 蛇腹の谷部か金属粉収集機構てあるとは理解し得ないから,本件発か特許 法36条6項1号所定のいわゆるサホート要件を欠くと主張する。しかし,本件発の金属粉収集機構か円筒状のフート部を構成する蛇腹状 のカハーの凹部を含むという解釈は,本件細書の記載を参酌し,これとも 整合するものてあることは前記1て論したとおりてある。したかって,本件発か本件細書の発の詳細な説に記載された範囲 を超えたものてあるとはいえないから,被告の上記主張も採用することかて きない。3 差止めの可否(争点3)について
(1) 前記1のとおり,被告製品は本件発の技術的範囲に属するものてあるから,被告製品を業として製造及ひ貸渡しする被告の行為は,原告の有する 本件特許権の侵害に当たる。したかって,原告は,被告に対し,特許法100条1項及ひ2項に基つき, 被告製品の製造,貸渡し,製造及ひ貸渡しの申出の差止め並ひに被告製品の 廃棄を求めることかてきる。(2) これに対し,被告は,被告製品は使用の際に向ける角度により本件特許 権を侵害しない態様て使用される可能性かあるから差止めを認めるのは不 当てあると主張する。そこて判断するに,本件発は「端面加工装置」に係る物の発てあり, これか本件発の技術的範囲に属すると認められる以上,その用法によって は本件発の実施に当たらないことかあり得るとしても,その製造及ひ貸渡 しか本件特許権の侵害となることの妨けにはならないこと,しかも,前記1 (1)ウ認定のとおりの,手持ち式工具てある被告製品の形状からすれは,常 に凹部(12H’)に切削屑か収容されない向きを維持したまま工具として 使用するのは実用性を欠くと解されることからすると,本件において特許法 100条1項及ひ2項に基つく差止め及ひ廃棄を認めるのか不当てあると みるへき事情かあるということはてきない。
 したかって,被告の上記主張も失当というへきてある。
4 結論
以上によれは,原告の各請求はいすれも理由かあるから,これを認容するこ ととし,主文のとおり判する。たたし,主文第2項に係る仮執行宣言の申立 てについては,相当てないのて,これを付さないこととする。
 東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川 浩 二
裁判官 清 野 正 彦
裁判官髙橋 彩
(別紙)
商品名:ハリクリーン
形式番号:BBCK
物件目録
判例本文 判例別紙1

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