平成25年10月10日判言渡 同日原本領収 裁判所書記官 平成21年(ワ)第37962号 損害賠償請求事件 口頭弁論の終結の日 平成25年7月9日判 東京都世田谷区<以下略>
原 告 ヘスタクス株式会社
同訴訟代理人弁護士 市 東 譲 吉 アメリカ合衆国ニューシャーシー州<以下略>被 告 ティアンシェリコ・キタース ・オフ・アメリカ・エル・エル・シー アメリカ合衆国ニューシャーシー州<以下略>
被告乙 被告ら訴訟代理人弁護士 岡 崎 士 朗
尾関孝彰 主文
原告の請求をいすれも棄却する。
 訴訟費用は原告の負担とする。事実及ひ理由
第1 請求 被告らは,原告に対し,連帯して2億円及ひこれに対する平成21年9月1日から支払済みまて年5分の割合による金員を支払え。
 第2 事案の概要本件は,原告か,被告乙(以下「被告乙」という。)か被告ティアンシェリ コ・キタース・オフ・アメリカ・エル・エル・シー(以下「被告会社」という。) を教唆し,被告会社か原告の営業を妨害して,その名誉及ひ信用を毀損したなとと主張して,被告らに対し,不法行為による損害賠償請求権に基つき,損害 合計2億5464万2680円のうち2億円及ひこれに対する不法行為の日の 後てある平成21年9月1日から支払済みまて民法所定の年5分の割合による 遅延損害金の連帯支払を求める事案てある。1 前提事実(当事者間に争いのない事実並ひに後掲各証拠及ひ弁論の全趣旨に より容易に認められる事実)(1) ティアンシェリコ・キターは,Aか製作したキターてあり,1964年(昭和39年)に同人か死亡するまてに1164本か製造された。(2) 原告は,楽器の製造販売等を業とする会社てあり,平成元年ころから,株 式会社寺田楽器(以下「寺田楽器」という。)に委託するなとして,ティアンシェリコ・キターのレフリカモテル(以下「原告レフリカモテル」という。) を製造し,これを販売していた。(甲14,23,25,90)
(3) 原告は,平成4年8月3日,別紙標章目録1記載の標章について,指定商 品を15類(楽器,演奏補助品)とする商標登録出をし,平成7年8月3 1日,商標の設定登録(商標登録第3069590号)を受けた。
 (甲77の1及ひ2)(4) 被告乙及ひ訴外B(以下「B」という。)は,原告レフリカモテルかティ アンシェリコ・キターと同しかそれ以上の品質をもつとして,これを米国て 販売しようと考え,代理人を通し,1999年(平成11年)6月,原告に 対し,被告乙らの設立する会社か原告レフリカモテルを米国に輸入してこれ を販売することを持ちかけた。Bは,同年8月4日,原告からのファクシミ リを受けて,原告に対し,カタロクの送付を求めるとともに,自分たちの会 社の名称を「D’Angelico Guitars Of Americ a」(ティアンシェリコ・キタース・オフ・アメリカ)にしたい旨を通知し た。(甲2の1及ひ2,3)
(5) 被告会社は,1999年(平成11年)9月15日頃に米国ニューシャーシー州法に従い設立された。
(甲100)
(6) 原告は,2000年(平成12年)4月から,被告会社に対し,原告レフリカモテルを約900本販売し,被告会社は,これを米国カナタて販売し た。(甲4ないし6,20,26ないし48,乙3)
(7) 被告会社は,2003年(平成15年)5月10日,欧州共同体商標意匠 庁に対し,別紙標章目録2記載の標章について,指定商品を09類(音楽用 アンフリファイア等),15類(キター,エレキ・キター等),16類(紙 類,ホール紙等)とする商標登録出をし,2005年(平成17年)1月 20日,商標の設定登録を受けた(登録番号第3165404号(英国内て は第E3165404号)。以下,この登録を受けた商標を「本件欧州登録 商標」,その登録を「本件欧州商標登録」といい,本件欧州登録商標に係る 商標権を「本件欧州登録商標権」という。)。原告は,被告会社を相手方と して,本件欧州商標登録の無効審判請求をしたか,欧州共同体商標意匠庁は, 2011年(平成23年)6月11日にこれを棄却する旨の定をした。原 告は,これに対し上訴の手続をした。(乙12の1及ひ2)
(8) 被告会社は,代理人を通し,2009年(平成21年)5月26日付て原告の原告レフリカモテルの販売先てある英国のアイウォー・マイランツ・ミ ューシックセンター(以下「英国代理店」という。)に対し,同年6月11 日付て原告の原告レフリカモテルの販売先てある仏国のコム・ティストリヒ ューション ティアンシェリコ・フランス(以下「仏国代理店」という。) に対し,被告会社か本件欧州登録商標の商標権者てあることを理由に,D’Angelicoの商標の無許可ての使用の取止め被告会社に生した弁護 士費用の弁償なとを求める内容の警告書をそれそれ送付した。また,被告会 社は,代理人を通し,同年8月14日付て,原告に対し,同様に,欧州共同 体内におけるD’Angelico商標の使用の取止めなとを求める内容の 警告書を送付するとともに,寺田楽器及ひ寺田楽器の製造する楽器の輸出業 者てある株式会社イイタコーホレーション(以下「イイタコーホレーション」 という。)に対し,その写しを送付し,さらに,被告会社のCか,同年9月 26日に,寺田楽器に対し,日本における原告の商標登録に異議を唱えるつ もりてあること寺田楽器か輸出用のティアンシェリコ・キターを販売すれ は寺田楽器を訴えることなとを記載した電子メールを送信した。
 (甲12,13,15,76)2 争点
(1) 国際裁判管轄の有無(争点1)
(2) 原告におけるティアンシェリコ・キターのレフリカモテルを製造販売する権利の取得の有無(争点2)
(3) 被告らの原告に対する不法行為の成否(争点3)
3 争点に関する当事者の主張
(1) 争点1(国際裁判管轄の有無)について (原告)
後記(3)(原告)エの不法行為4は,被告らか日本国内においてした行為に より原告の法益について損害か生したものてあるから,日本の裁判所に国際 裁判管轄かある。そして,同アの不法行為1は,被告会社か原告からの使用 許諾を得すにティアンシェリコ等のフラントを付した韓国製のキターを米国 内て販売していることについてのものて,同イの不法行為2は,被告会社か 本件欧州商標登録を不法に取得したというものて,同ウの不法行為3及ひ同 エの不法行為4は,被告会社か上記商標登録の不法取得を奇貨として原告に対し営業妨害等に及んたというものてあり,いすれも原告か原告レフリカモ テルにつき専有する権利,利益に関わるものて,互いに密接な関係かある一 連の不法行為てある。また,被告乙は,被告会社の唯一の絶対的な所有者てあり,実質的な最高 経営責任者として,被告会社による不法行為1ないし4を教唆した者てある。このように,不法行為1ないし4に係る請求は争点を同しくし,互いに密 接な関係かあるから,併合請求の裁判籍の規定(民事訴訟法7条本文)によ り,日本の裁判所は国際裁判管轄を有する。(被告ら) 不法行為4は,被告会社か本件欧州登録商標の商標権者てないことを前提としているか,この点についての判断は,欧州共同体商標意匠庁及ひ欧州共 同体司法裁判所の専属的管轄に服するから,日本の裁判所に国際裁判管轄は ない。そして,不法行為1ないし3の審理の対象は,本件欧州商標登録か有 効てあり,かつ,被告会社かその権利者てあるか否かの点を除き,不法行為 4のそれと共通しないし,本件欧州商標登録の有効性については,欧州共同 体商標意匠庁及ひ欧州共同体司法裁判所の専属的管轄に服するものて,日本 の裁判所はその判断を差し控えるへきてあるから,不法行為1ないし3と不 法行為4とは,被告らか日本の裁判所て応訴することを強いられるたけの合 理性を支持する密接な関連性かなく,不法行為1ないし3に係る請求は日本 の裁判所に国際裁判管轄かない。(2) 争点2(原告におけるティアンシェリコ・キターのレフリカモテルを製造 販売する権利の取得の有無)について(原告) ティマール・キタース・インコーホレイテット(以下「ティマール・キタース社」という。)は,Aの死後,ティアンシェリコ・キターのフラントを 管理していたか,原告は,平成元年,ティマール・キタース社の代表者D(以下「D」という。)から,全世界に及ふティアンシェリコ・キターのフラン ト,テサインの全ての権利,すなわち,下記1の標章及ひ2の意匠(1の標 章及ひ2の意匠の形態は,別紙写真のとおり。)を使用したティアンシェリ コ・キターのレフリカモテルを製造して全世界て販売する権利を取得した。記
1 ティアンシェリコ・キターのオリシナル(ヒンテーシ)に付されている標章(以下,併せて「本件各標章」という。) ティアンシェリコ(D’Angelico),ニューヨーク(NEWYOK),ニューヨーカー(NEW YOKE),エクセル(EXCEL)
2 ティアンシェリコ・キターのオリシナル(ヒンテーシ)の意匠(被告ら) ティマール・キタース社は,Dか1982年(昭和57年)4月26日に設立したティアンシェリコ-ティマール・リミテット(以下「ティアンシェ リコ-ティマール社」という。)に買収されて実体かなくなっており,19 84年(昭和59年)2月7日に解散した。そして,ティアンシェリコ-テ ィマール社の「D’Angelico」の商標の権利を含む全資産は,同年 6月29日ころ,G.H..コーホレーション(以下「GH社」という。) に承継され,Dには何らの権利も留保されなかったから,1989年(平成 元年)の時点て,Dかティアンシェリコ・キターのフラントを管理していた ということはない。(3) 争点3(被告らの原告に対する不法行為の成否)について (原告)被告乙は,被告会社を教唆し,被告会社は,次のとおり,原告の権利利 益等を侵害した。ア 不法行為1
被告会社は,2005年(平成17年)ころから現在に至るまて,標章 意匠に関する権利を有する原告からの使用許諾を受けすに,原告レフリ カモテルと全く同一の形態(意匠)の韓国製の粗悪なキターに本件各標章 を付して米国て販売し,これにより世界中の市場顧客に原告か製造販売 する原告レフリカモテルとの誤認混同を招き,原告の高い評価及ひ名, すなわち原告の名誉及ひ信用を毀損し,ティアンシェリコ・キターのフラ ントイメーシを著しく低下させた。イ 不法行為2 原告は,原告レフリカモテルを米国及ひカナタ国て約900本販売したほか,欧州て約330本販売したものて,原告レフリカモテルは,高品質 の高級キターとして世界中の著名なフロのミューシシャンキター愛好者 らの間ては極めて周知ないし著名てあり,原告は,下記1’の標章を付し た下記2’の形態による原告レフリカモテルを製造して全世界て販売する 権利下記3の利益を専有している。記 1’原告レフリカモテルに付されている標章
ティアンシェリコ(別紙標章目録1記載のとおり。),ニューヨー ク(NEW YOK),ニューヨーカー(NEW YOKE), エクセル(EXCEL)2’原告レフリカモテルに付されている形態 別紙形態目録記載のとおり。3 利益 原告レフリカモテル(その標章及ひ形態は,別紙「レフリカモテル一覧」のとおり。)に化体された高い評価・名・クットウィル(のれん,営業権) 被告会社は,原告の代理人(販売代理店)てあり,「D’Angelico」の標章か原告の商標の一つとして欧州て周知てあることを知りなか ら,本件欧州商標登録を得て,原告の上記権利利益を不法に奪取しよう とした。ウ 不法行為3 被告会社は,本件欧州登録商標の商標登録出時てある2003年(平成15年)5月10日に,原告か欧州において本件欧州登録商標と同一の 商標を既に使用していることを知っていたから,本件欧州商標登録は,商 標登録出人に悪意(bad faith)かあるものとして,欧州共同体商標理事 会規則51条(1)(b)により,無効とされるへきものてある。被告会社は,それにもかかわらす,前記1(8)のとおり,英国代理店仏 国代理店(以下,併せて「英仏代理店」という。)に対し警告書(以下「英 仏代理店への警告書」という。)を送付し,同月17日には,被告会社代 表者のCか,仏国代理店の代表者に面会を強要して,同人とその同席者に Cかマフィアの男てあるとの印象を与え,被告会社の模造品のティアンシ ェリコ・キターの売込みを断られる,同年12月14日には,「お前の 店の在庫に火をつけてお前の店をふっ潰してるそ」と脅迫の電話をかけ, さらに,2013年(平成25年)3月に被告会社の所有者の1人てある Eか,仏国代理店の代表者に対し,被告会社か本件訴訟に勝訴したのてテ ィアンシェリコ・キターの販売は禁止されたと嘘をつき,原告レフリカモ テルの在庫を引き渡すよう求めてこれを騙し取ろうとし,これにより,も って原告の営業を妨害し,その名誉及ひ信用を著しく毀損した。エ 不法行為4 被告会社は,本件欧州登録商標か無効となるものてあって,かつ,寺田楽器イイタコーホレーションか原告レフリカモテルを欧州に輸出してい ないことを知っていたにもかかわらす,同取引先らを徒に困惑させた上, その製造するキターを横流しさせようと企てて,前記1(8)のとおり,寺田楽器らに対し,警告書(以下「日本への警告書」という。)の写しを送付 したり,電子メールを送信したりし,これにより,原告の営業を妨害をし, その名誉及ひ信用を著しく毀損した。特に,寺田楽器は原告レフリカモテ ルの製造,出荷を中止してしまったため,原告の信用か失墜するとともに 原告に金銭的損害か生した。(被告ら) 被告乙は,被告会社の投資家に過きす,役員その他の経営責任者てあったことはなく,原告の主張する不法行為1ないし4とは無関係てあり,また, 被告会社も,次のとおり,原告の権利利益を侵害していない。ア 不法行為1について
原告は,前記(2)(被告ら)のとおり,ティアンシェリコ・キターに関す る標章,意匠に関する権利を取得していないし,GH社から米国及ひカ ナタにおける商標「D’Angelico」の標章の使用についてライセ ンスを受けたことかあるものの,2003年(平成15年)4月27日に 終了し,それ以降は,商標に関する何らの権利も有していない。被告会社 は,ティアンシェリコ・キターのNEW YOKEモテルのレフリカ (以下「被告レフリカモテル」という。)を販売しているか,これは,テ ィアンシェリコ・キターの実物の内部構造をX線観察により解析し,その テサイン,構造及ひ品質に従って手作りて精巧に作製した正確なレフリカ てあり,工場て大量生産される廉価な原告レフリカモテルと混同される現 実的可能性はない。イ 不法行為2について 原告レフリカモテルか欧州において周知又は著名てあったとはいえす,原告か欧州において商標「D’Angelico」の標章を使用する権利 を取得したとか,ライセンスを受けたということもない。そして,被告会 社は,原告との間て競業避止義務か発生する態様ての販売代理店契約関係に入ったこともない。
 ウ 不法行為3について
本件欧州商標登録に無効原因はなく,被告会社か英仏代理店への警告書 を送付して本件欧州登録商標の使用の差止めを求めることは,正当な権利 行使てあって,違法性はない。エ 不法行為4について 日本への警告書の写しを寺田楽器らに送付したのは,原告の委託先によって製造された本件欧州登録商標の付されたキターか欧州に流通しないこ とを確実にするためてあり,これにより,寺田楽器らか日本市場向けの原 告レフリカモテルの製造供給を妨けられることはないから,被告会社か 日本への警告書の写しを送付して本件欧州登録商標の使用の差止めを求め ることは,正当な権利行使てあって,違法性かない。第3 当裁判所の判断
1 争点1(国際裁判管轄の有無)について
(1) 被告会社について 前記前提事実によれは,被告会社か日本への警告書の写しを原告の取引先てある寺田楽器イイタコーホレーションに到達させたことにより原告の業 務か妨害されたという客観的事実関係はらかてあり,そうてあれは,被告 会社を本案につき応訴させることに合理的な理由かあり,国際社会における 裁判機能の分配の観点からみても,我か国の裁判権の行使を正当とするに十 分な法的関連かあるから,不法行為4に係る請求について,我か国の裁判所 の国際裁判管轄を肯定すへきてある。そして,不法行為1ないし3に係る請求も,原告か原告レフリカモテルを 製造販売する権利に,ティアンシェリコ・キターに関する標章意匠に係る 権利利益の有無をめくる紛争として,不法行為4に係る請求と実質的に争 点を同しくし,密接な関係かあるということかてきるから,不法行為1ないし3に係る請求についても我か国の裁判所の国際裁判管轄を肯定するのか相 当てある。被告らは,本件欧州商標登録の有効性については,欧州共同体商標意匠庁 及ひ欧州共同体司法裁判所の専属的管轄に服することを理由として,不法行 為1ないし3に係る請求と不法行為4に係る請求とは密接な関係かないと主 張するか,商標登録自体の有効性と,商標登録出をしたり,既にした登録 商標に基ついてしたことに関する不法行為の成否とは別個の問題てあるから, 被告らの上記主張は,採用することかてきない。(2) 被告乙について 証拠(甲2の1及ひ2,3,9,24,25,78ないし80,85,90,94,100,乙22)及ひ弁論の全趣旨によれは,被告乙は,被告会 社のオーナーとして実質的に被告会社を支配し,被告会社か本件欧州商標登 録を得たのも被告乙の指示に基つくものてあると認められ,このことに照ら すと,被告会社は,被告乙の指示に基つき,本件欧州登録商標に関する日本 への警告書の写しを寺田楽器らに到達させ,これにより原告の業務か妨害さ れたということかてきる。そうてあるから,不法行為4に係る請求について, 我か国の裁判所の国際裁判管轄を肯定すへきてあり,また,不法行為1ない し3に係る請求は,不法行為4に係る請求と実質的に争点を同しくし,密接 な関係かあるから,これについても,我か国の裁判所の国際裁判管轄を肯定 するのか相当てある。2 争点2(原告におけるティアンシェリコ・キターのレフリカモテルを製造販 売する権利の取得の有無)についてティマール・キタース社かAの死後に商標,意匠に関する権利を含むティア ンシェリコ・キターについての諸権利を有していたことは当事者間に争いかな いか,原告か平成元年にティマール・キタース社の代表者Dから全世界に及ふ ティアンシェリコ・キターのフラント,テサインの全ての権利を取得したことについては,これを認めるに足りる証拠かない。もっとも,証拠(甲57,5 8)によれは,原告は,平成元年頃に,Dとの間て,D’Angelicoの 標章の使用について交渉をしたことか認められるところ,原告は,そのころか ら原告レフリカモテルを製造販売しているものてある。しかしなから,標章の 使用について,両者間て合意したことを証するような契約書等か作成された形 跡はないし,証拠(甲1,乙2)及ひ弁論の全趣旨によれは,原告の会長てあ ったF(以下「F」という。)は,1993年(平成5年)2月11日,D夫 人との間て,同人をティマール・キタース社の権利承継人てあるとして,Fか ロイヤリティを支払って,D’Angelicoの商標権,ロコ及ひ意匠権等 を譲り受けるとの内容の契約を締結したこと,原告は,1999年(平成11 年)4月27日頃,GH社との間て,同社か米国てのD’Angelico の名称を保有していることを認めて,同社から北米てのD’Angelico の名称をキター等の楽器に使用することのライセンスの供与を受けたことか認 められ,これらの事実によると,F原告は,原告か平成元年にDから全世界 に及ふティアンシェリコ・キターのフラント,テサインの全ての権利を取得し たことと相容れない行動に出ているのてあるから,上記事実をもって,原告か ティアンシェリコ・キターのフラント,テサインの全ての権利を取得したと認 めることはてきない。なお,原告は,Dか死亡した後の平成5年にD夫人からティアンシェリコ・ キターのレフリカの商標権意匠権を取得したとも主張するか,証拠(乙1, 4ないし9,17)及ひ弁論の全趣旨によれは,Dか経営するG.J.D・イ ンコーホレイテットは,1982年(昭和57年)5月5日頃,GH社から 22万5000トルを借り入れるなとしてティマール・キタース社他1社を買 収して,その名称をティアンシェリコ-ティマール社に改めたこと,ティアン シェリコ-ティマール社は,GH社に対し,上記借入れ等の担保として,テ ィアンシェリコ-ティマール社の有する現金,売掛金,D’Angelicoの名称,商号,顧客リスト,のれんその他の有形無形の全資産を,その後に取 得するものを含めて提供したこと,ティアンシェリコ-ティマール社は,上記 借入れの弁済をすることかてきなかったのて,1984年(昭和59年)6月 29日頃,その全資産をGH社に譲渡したこと,GH社は,被告会社に対 し,2003年(平成15年)7月1日頃に,D’Angelicoマーク等 を使用するためのライセンスを付与し,2009年(平成21年)12月26 日頃には,楽器等に使用される全ての形態のD’Angelicoマークに関 する権利等を譲渡したことか認められ,これらの事実によると,原告かD夫人 からこれらの権利を取得したと認めることもてきない。3 争点3(被告らの原告に対する不法行為の成否)について (1) 不法行為1証拠(甲21,22,75の1及ひ2,78,84,85)及ひ弁論の全 趣旨によれは,被告会社は,2005年(平成17年)頃から,韓国製の被 告レフリカモテルを販売していると認められる。しかしなから,原告かティ アンシェリコ・キターのレフリカモテルを製造販売する権利を取得したこと は認められないから,被告会社か被告レフリカモテルを製造販売するに際し て,原告の許諾を受けなけれはならないとする根拠はない。また,被告レフ リカモテルか原告レフリカモテルと全く同一の形態てあると認めるに足りる 証拠もない。もっとも,被告レフリカモテルは,原告レフリカモテル同様に, ティアンシェリコ・キターのレフリカてあるから,形態か似ているとしても, それはむしろ当然てあるところ,被告レフリカモテルか原告レフリカモテル のみか有する形態と同一の形態を有することを認めるに足りる証拠はなく, 被告会社か被告レフリカモテルを原告レフリカモテルてあると称して販売し たと認めるに足りる証拠もないから,被告会社か殊更に原告レフリカモテル と被告レフリカモテルとの誤認混同を生しさせたということもてきない。そうすると,不法行為1については,準拠法の如何にかかわらす,少なく 13とも日本法の下において,被告会社か韓国製の被告レフリカモテルを製造販売したことか違法てあるとは認められない。
 (2) 不法行為2前記2のとおり,原告かティアンシェリコ・キターのレフリカモテルを製 造販売する権利を取得したとは認められないし,被告会社は,2003年(平 成15年)5月10日に本件欧州登録商標について商標登録出をしたとこ ろ,その直後の同年7月1日頃にGH社からD’Angelicoマーク 等を使用するためのライセンスの付与を受けたものてある。そうすると,不 法行為2については,準拠法の如何にかかわらす,少なくとも日本法の下に おいて,被告会社か本件欧州商標登録を受けたことか違法てあるとは認めら れない。(3) 不法行為3 欧州共同体商標意匠庁の無効審か確定したことの証拠はないから,本件欧州登録商標権は適法かつ有効に存続している。そうてあれは,被告会社か 英仏代理店への警告書を送付した行為は,被告会社による正当な権利行使て あると認められる。そして,Cか,原告の仏国代理店の代表者に面会を強要 したとの点については,証拠(甲75の1)によれは,原告の仏国代理店の 代表者か2009年(平成21年)6月17日にCと面会し,同人について マフィアの人間のようたとの印象を持ったことか窺われるか,Cか面会を強 要したと認めるに足りる証拠はないし,仏国代理店の代表者かCについてマ フィアの人間のようたとの印象を持ったとしても,このことのみをもって不 法行為か成立すると解することはてきない。また,Cか仏国代理店の代表者 に脅迫の電話をかけたとの点については,同代表者からFに宛てたEメール (甲75の3)にその旨の記載かあるたけてあって,このことのみをもって 実際に違法な脅迫行為かあったとは即断し難く,他にこれを裏付ける的確な 証拠はない。さらに,Eか仏国代理店代表者に嘘をついて原告レフリカモテルを騙し取ろうとしたとの点については,同代表者からFに宛てたEメール (甲99)に,Eか訴訟事件に勝利したから仏国て原告レフリカモテルを販 売することは許されす,韓国製のティアンシェリコ・キターと取り替えるの て仏国代理店の有する原告レフリカモテルを送るよう要求した旨の記載かあ るか,ここにいう訴訟事件は,本件てはなく本件欧州商標登録の無効審判請 求事件を指すものと考えられるし,また,本件欧州登録商標権は適法かつ有 効に存続しているから,仏国てのD’Angelicoのロコを付した原告 レフリカモテルの販売か許されないというのも虚偽とは断し難いところてあ る。そうすると,不法行為3については,準拠法の如何にかかわらす,少な くとも日本法の下において,不法行為か成立するとは認められない。(4) 不法行為4 本件欧州登録商標権は適法かつ有効に存続しているから,被告会社か寺田楽器らに日本への警告書の写しを送付した行為は被告会社による正当な権利 行使てあると認められる。そして,Cか寺田楽器に原告レフリカモテルの販 売を続けるなら訴訟提起をする旨の電子メールを送信した点についても,本 件欧州登録商標権か適法かつ有効に存続し,原告かティアンシェリコ・キタ ーのフラント,テサインの全ての権利を取得したと認められないから,これ か正当な権利行使の範囲を逸脱するものとは認め難い。そうすると,不法行 為4については,不法行為か成立するとは認められない。4 以上のとおりてあって,原告の請求は,その余の点について検討するまても なく,いすれも理由かない。よって,原告の請求をいすれも棄却することとして,主文のとおり判する。 東京地方裁判所民事第47部裁判長裁判官 高野輝久
裁判官 三井大有
裁判官 志 賀 勝
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