平成25年9月30日判言渡 同日原本領収 裁判所書記官 平成24年(ワ)第33525号 著作権侵害差止等請求事件 口頭弁論終結日 平成25年7月4日判 当事者の表示 別紙当事者目録のとおり 主文
1 被告株式会社サントリームは,第三者から委託を受けて別紙作品目録1ない し7記載の作品か印刷された書籍を電子的方法により複製してはならない。
 2 被告有限会社トライハレッシシャハンは,第三者から委託を受けて別紙作品目録1ないし7記載の作品か印刷された書籍を電子的方法により複製してはならない。
3 被告株式会社サントリーム及ひ被告Y1は,連帯して,各原告に対し,それそれ金10万円及ひこれに対する被告株式会社サントリームにつき平成24年 12月2日から,被告Y1につき同月4日から支払済みまて年5分の割合によ る金員を支払え。4 被告有限会社トライハレッシシャハン及ひ被告Y2は,連帯して,各原告に 対し,それそれ金10万円及ひこれに対する被告有限会社トライハレッシシャ ハンにつき平成24年12月2日から,被告Y2につき同月7日から支払済み まて年5分の割合による金員を支払え。5 原告らのその余の請求をいすれも棄却する。
6 訴訟費用は,これを5分し,その1を原告らの負担とし,その余は被告らの負担とする。
7 この判は,1項ないし4項に限り,仮に執行することかてきる。事実及ひ理由
以下,被告株式会社サントリームを「被告サントリーム」,被告Y1を「被告Y 1」,被告有限会社トライハレッシシャハンを「被告トライハレッシ」,被告Y2を「被告Y2」という。また,被告サントリーム及ひ被告Y1を併せて「被告サン トリームら」,被告トライハレッシ及ひ被告Y2を併せて「被告トライハレッシ ら」,被告サントリーム及ひ被告トライハレッシを併せて「法人被告ら」という。
 第1 請求1 主文1項及ひ2項と同旨
2 被告サントリーム及ひ被告Y1は,連帯して,各原告に対し,それそれ金21万円及ひこれに対する被告サントリームにつき平成24年12月2日から,被告Y1につき同月4日から支払済みまて年5分の割合による金員を支払え。
 3 被告トライハレッシ及ひ被告Y2は,連帯して,各原告に対し,それそれ金 21万円及ひこれに対する被告トライハレッシにつき平成24年12月2日か ら,被告Y2につき同月7日から支払済みまて年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,小説家・漫画家・漫画原作者てある原告らか,法人被告らは,電子 ファイル化の依頼かあった書籍について,権利者の許諾を受けることなく,ス キャナーて書籍を読み取って電子ファイルを作成し(以下,このようなスキャ ナーを使用して書籍を電子ファイル化する行為を「スキャン」あるいは「スキ ャニンク」という場合かある。),その電子ファイルを依頼者に納品している から(以下,このようなサーヒスの依頼者を「利用者」という場合かある。), 注文を受けた書籍には,原告らか著作権を有する別紙作品目録1~7記載の作 品(以下,併せて「原告作品」という。)か多数含まれている蓋然性か高く, 今後注文を受ける書籍にも含まれている蓋然性か高いとして,原告らの著作権 (複製権)か侵害されるおそれかあるなとと主張し,1著作権法112条1項 に基つく差止請求として,法人被告らそれそれに対し,第三者から委託を受け て原告作品か印刷された書籍を電子的方法により複製することの禁止を求める とともに,2不法行為に基つく損害賠償として,ア被告サントリームらに対し,弁護士費用相当額として原告1名につき21万円(附帯請求として訴状送達の 日の翌日〔被告サントリームにつき平成24年12月2日,被告Y1につき同 月4日〕から支払済みまて民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の連帯 支払,イ被告トライハレッシらに対し,同様に原告1名につき21万円(附帯 請求として訴状送達の日の翌日〔被告トライハレッシにつき平成24年12月 2日,被告Y2につき同月7日〕から支払済みまて民法所定の年5分の割合に よる遅延損害金)の連帯支払を求めた事案てある。1 前提事実(証拠等を掲記した事実以外は当事者間に争いかない。) (1) 原告ら原告らは,小説家,漫画家,漫画原作者てある(弁論の全趣旨)。
 (2) 被告ら被告サントリームは,第三者から注文を受けて,小説,エッセイ,漫画等 の様々な書籍をスキャナーて読み取り,電子ファイル化する事業を行う株式 会社てある。被告Y1は,被告サントリームの代表取締役てある。被告トライハレッシは,上記と同様の事業を行う特例有限会社てある。被 告Y2は,被告トライハレッシの取締役てある。(3) 原告らの著作権 原告X1は別紙作品目録1記載の作品を,原告X2は同目録2記載の作品を,原告X3は同目録3記載の作品を,原告X4は同目録4記載の作品を, 原告X5は同目録5記載の作品を,原告X6は同目録6記載の作品を,原告 X7は同目録7記載の作品をそれそれ創作した者てあり,上記各作品の著作 権をそれそれ有している(弁論の全趣旨)。2 争点
(1) 著作権法112条1項に基つく差止請求の成否(争点1)ア 法人被告らか原告らの著作権を侵害するおそれかあるか(争点1-1) イ 法人被告らのスキャニンクか私的使用のための複製の補助として適法といえるか(争点1-2)
ウ 原告らの被告サントリームに対する差止請求か権利濫用に当たるか(争点1-3)
(2) 不法行為に基つく損害賠償請求の成否(争点2) (3) 損害額(争点3)3 争点に関する当事者の主張
(1) 著作権法112条1項に基つく差止請求の成否(争点1)ア 法人被告らか原告らの著作権を侵害するおそれかあるか(争点1-1) (原告らの主張)(ア) 著作権(複製権)侵害のおそれ
a 法人被告らは,利用者から依頼のあった書籍については,著者,タイトル,シャンル,出版社等のいかんに関わらす注文を受け付け,権 利者の許諾を得ることなく,書籍をスキャンして電子ファイルを作成 し,その電子ファイルを依頼者に納品している。当該行為は著作物を有形的に再製するものてあり,複製権の侵害に 当たる。そして,原告らは,いすれもわか国を代表する著名な作家てあるか ら,法人被告らか注文を受けた書籍には原告作品か多数含まれている 蓋然性か高いし,今後注文を受ける書籍にも含まれている蓋然性か高 い。b 原告らは,本件訴訟提起に先立つ平成23年9月5日,他の作家1 15名及ひ出版社7社(株式会社角川書店,株式会社講談社,株式会 社光文社,株式会社集英社,株式会社小学館,株式会社新潮社,株式 会社文藝春秋)と連名て,法人被告らを含む「自炊代行サーヒス」な とと名乗るスキャン事業者約100社に対して,各事業者の事業の内 容等に関する質問書(甲18)を送付した(甲19,21)。また,平成23年10月17日には,上記115名の作家に原告ら を含めた122名の作家は,質問書に回答を行わなかった被告サント リームに対し,通知人作家の作品について,スキャン事業を行うこと は著作権侵害となる旨を告けた上て,今後は通知人作家の作品につい て,依頼かあってもスキャン事業を行なわないよう警告するとともに, 上記質問書における質問への回答を再度要請する通知書(甲25)を 送付した(甲26)。c 被告サントリームは,これらの質問書通知書に対し,何らの回答 を行わなかった。他方,被告トライハレッシは,今後は原告らを含む 122名の差出人作家についてはスキャン事業を行わない旨回答し (甲23),そのウェフサイトにスキャン対応不可の著作者一覧とし て原告らを含む122名の差出人作家のリストを掲載しつつ(甲2 4),実際には原告作品を含む書籍についてスキャン事業を継続し, 現に原告らの書籍について注文を受けてスキャニンクを行っている。したかって,今後も,原告らの複製権か侵害されるおそれか認めら れ,原告らは,その侵害の停止又は予防を請求する権利を有する。(イ) 被告サントリームらに対する再反論 原告らは,スキャン事業の実態及ひ侵害行為の事実を把握・確認するため,平成24年7月13日に,被告サントリームの運営する「ヒルス スキャン」に対して試験的な発注を行っている。被告サントリームは, 当該発注に応して,同年8月下旬にスキャン済みテータ及ひ裁断済み書 籍を返却した(甲36)。当該発注に係る書籍の著作権者は,著作者かスキャン事業を許諾しな い旨を言した作家てある(甲18)。それに対して被告サントリーム は質問書には回答もせす,スキャン及ひ裁断済み書籍の返却を行ってい る。被告サントリームか現在は一時的に原告らの書籍のスキャンを行って いなくとも,再開のおそれ(将来における著作権侵害のおそれ)は依然 として存在するのてあるから,差止めの必要性か存することはらかて ある。(ウ) 被告トライハレッシらに対する再反論
a 被告トライハレッシは,著作権法上の「複製」といえるためには複製物の数の増加か必要てあると主張するか,独自の見解にすきない。
 b 原告らは,スキャン事業の実態及ひ侵害行為の事実を把握・確認す るため,平成24年7月31日に,被告トライハレッシの運営する 「スキャホン」に対して試験的な発注を行った。被告トライハレッシ は,当該発注に応して,スキャン済みテータ及ひ裁断済み書籍を返却した(甲36)。 被告トライハレッシは,発注された書籍か原告らなとスキャン不可作家の作品てあるか否かを目視によりチェックし,該当するものは返 却していたと主張するか,原告らの作品のスキャン依頼に応していた 点は,上記のとおりらかてある。被告トライハレッシか現在は一部の書籍のスキャンを行っていなく とも,著作権侵害のおそれ,差止めの必要性の判断において何ら影響 を及ほさない。c 被告トライハレッシらは,「(スキャン事業は)ユーサーか購入し た書籍を対象としているから,その過程において,原告らには経済的 損害は全くなく,損害発生のおそれかない」と主張するか,これ自体 正しくない。当該主張を善解すれは,「1ユーサーは新書籍購入の対 価を支払済みてあり,2スキャンテータはユーサーか自己使用するた けなのて」原告らに損害はないという趣旨てあろうか,そもそも,こ れらか事実てある保障は何ら存しない。また,1についていえは,書籍とこれをスキャンした電子テータとは質的に異なる媒体てあるから, 当初の価格設定(ないし著作権使用料の額)か異なる可能性は十分に ある。さらに,2についていえは,事後的な複製物の大量増加及ひ 転々流通のおそれからすれは,少なくとも損害発生の「おそれ」は厳 然として存する。(被告サントリームらの主張)
(ア) 原告らの主張(ア)に対する認否
原告らの主張(ア)aは否認ないし争う。同(ア)bのうち,質問書(甲 18)及ひ通知書(甲25)か被告サントリームに送付されたこと(甲 19,26)は認める。同(ア)c第1段落のうち,被告サントリームか 何らの回答を行わなかったことは認め,原告作品を含む書籍についてス キャン事業を継続し,現に原告らの書籍について注文を受けスキャニン クを行っていることは否認する。同(ア)c第2段落は否認ないし争う。(イ) 反論 被告サントリームは,現在,原告らの書籍は取り扱っておらす,原告らに対する権利侵害行為そのおそれはない。具体的には,ホームヘー シの会員専用ロクイン・ヘーシ(甲4のロクイン欄)に,その旨を記 しており(乙1),原告らの書籍か送付された場合は,スキャン(電子 テータ化)せすそのまま返送する対応を取っている。(被告トライハレッシらの主張)
(ア) 原告らの主張(ア)に対する認否
原告らの主張(ア)a第1段落のうち,「著者,タイトル,シャンル, 出版社等の如何を問わす注文を受け付け」の部分を否認し,その余は認 める。同(ア)a第2段落は否認ないし争う。同(ア)a第3段落は,原告 らか我か国を代表する著名な作家てあることは認め,その余は否認する。
 同(ア)bは認める。同(ア)c第1段落は,被告トライハレッシか原告作品を含む書籍についてスキャン事業を継続している旨の主張は否認し, その余は認める。被告トライハレッシは,そのサーヒスを許容しない作 家の作品については,スキャン等の複製を実施しない方針てある。被告 トライハレッシは,平成23年10月から平成25年1月まての間にチ ェック漏れにより,原告ら書籍557冊をスキャンしたことは認めるか, 同期間の納品数と比較すると多数とはいえない。同(ア)c第2段落は否 認ないし争う。(イ) 「複製」の不存在 「複製」といえるためには,オリシナル又は複製物に格納された情報を格納する媒体を有形的に再製することに加え,当該再製行為により複 製物の数を増加させることか必要てある。けたし,当該再製行為により 複製物の数か増加しない場合(情報と媒体の1対1の関係か維持される 場合)には,市場に流通する複製物の数は不変てあり,著作者の経済的 利益を害することかないからてある。言い換えれは,「有形的再製」に 伴い,その対象てあるオリシナル又は複製物か廃棄される場合には,当 該再製行為により複製物の数か増加しないのてあるから,当該「有形的 再製」は「複製」には該当しない。これを本件について見ると,本件訴訟において問題となっている小説 及ひ漫画に関する限り,「スキャホン・サーヒス」(被告トライハレッ シのスキャン事業)においては,複製物てある書籍を裁断し,そこに格 納された情報をスキャニンクにより電子化して電子テータに置換した上, 原則として裁断本を廃棄するものてあって,その過程全体において,複 製物の数か増加するものてはないから,「複製」行為は存在しない。以上のとおり,本件訴訟において問題となっている小説及ひ漫画に関 する限り,スキャホン・サーヒスにおいては,「複製」か存在せす,著 作権(複製権)侵害は成立しない。(ウ) 著作権(複製権)侵害のおそれ
a 被告トライハレッシは,原告らを含むスキャン対応不可の作家の作品については,目視によりチェックを行い(丙1),該当する書籍に ついては着払いにて返却しているから,原告らの複製権か侵害される おそれはない。b 仮にスキャホン・サーヒスにおいて,複製権の侵害かあるとしても, ユーサーか購入した書籍を対象としているから,その過程において, 原告らには経済的損害は全くなく,損害発生のおそれかなく,差止請 求権は発生しない。イ 法人被告らのスキャニンクか私的使用のための複製の補助として適法と いえるか(争点1-2)(被告サントリームらの主張) 著作権法30条1項は,個人的等の限られた範囲内において使用することを目的とする複製を認めており,被告サントリームは,その使用者のた めに,その者の指示に従い,手足として補助者的立場て電子テータ化を行 っており,基本的に同項の範囲内を逸脱していない。書籍の所有者か,既に所有している本を個人的に読むことを目的として おり,書籍の著作権者に,実質的な意味ての権利侵害実損害は存在しな いからてある。(被告トライハレッシらの主張)
(ア) 著作権法は,私的利用に伴う複製については著作権者の権利は及はない旨を規定している。その趣旨は,私的領域に関する法の介入を排除 することによって個人のフライハシーを保護することにある。したかっ て,この趣旨を全うするために必要な範囲において,第三者か私的利用 の抗弁を援用することか認められるへきてある。スキャホン・サーヒスにおけるユーサーは個人てあり,そのフライハ 9シーは保護されるへきてあるところ,被告トライハレッシのスキャホ ン・サーヒスにおける行為か著作権侵害と判断されると,ユーサーかと のような種類の本を嗜好しているかなとのフライハシーに属する事項か 開示される危険かあり,この危険を排除するために,被告トライハレッ シはユーサーの有する私的利用の抗弁を援用する。(イ) 著作権法30条1項の「使用する者か複製する」とは,使用者自身 か物理的に自ら複製する場合たけてはなく,「補助者による複製」をも 含むへきてある。けたし,主体性の判断の際には,物理的な行為を行う 者てはなく,「複製」に向けての因果の流れを開始し支配している者か 「複製」の「主体」と判断されるへきてあるし,「複製の自由」か書籍 の所有権に由来するものてあることに照らしても,書籍の所有者か複製 の主体てあるというへきたからてある。そして,各種業務のアウトソース化か拡大した今日においては,「補 助者」には,秘書事務員のように使用者の業務を日常的に補助してい る者に限定されす,「複製」のみを業務として委託される「業者」をも 含むというへきてある。これを本件についてみると,被告トライハレッシは,ユーサーから書 籍を送付してもらい(所有権の移転はない),その依頼に応して市販の 裁断機を利用して書籍を裁断し,スキャナーを利用してスキャンを行い, 生成されたテシタルテータをユーサーに納品している。しかも,その単 価は他の業者よりも高額てあり,電子テータ及ひ裁断本の販売も行って いない。さらに,被告トライハレッシの顧客は,医者・弁護士等の専門 家てあり,当該専門家の情報へのアクセスを容易にするため専門書の電 子化を図ることは社会的に有用てある(多忙な専門家に「自炊」を強い ることは社会的コストか高すきる)。以上の点を総合的に考慮すれは, 規範的にみて,スキャン等の行為の主体はユーサーてあって,被告トライハレッシてないことはらかてある。
 (原告らの主張)(ア) 被告サントリームらの主張について
a 被告サントリームらの主張は否認する。
b 被告サントリームらは,スキャン事業は「個人か自己の所有する書籍のスキャン(電子テータ化)を行うこと」と同様て「実質的な意味 ての権利侵害実損害は存在しない」と主張するか,両者かいかなる 意味て「同様」なのか,何ら具体的な論証をしていない。被告サント リームらは,「書籍の所有者か,既に所有している本を個人的に読む ことを目的として」いるから,「実質的な意味ての権利侵害実損害 は存在しない」と主張したいようてあるか,個々のユーサーの個別の 発注目的なと被告らには把握てきていないはすてあり,目的云々は被 告サントリームらの希望的観測にすきない。c 複製の主体は法人被告らてあって,その行為か著作権法30条1項 の要件を欠くことはらかてある。法人被告らの利用者は,単に書籍を法人被告らに送付しているにと とまり,スキャン等の複製に関する作業に関わることは一切ない。一方,法人被告らは,1書籍かまた裁断されていない場合は複製作 業の準備作業として裁断を行い,2裁断された書籍をスキャナーて読 み取って,電子ファイルを作成し,3オフションサーヒスか選択され た場合には,その電子ファイルに対し,書籍名等を識別可能なファイ ル名の設定,OC処理の実行等の様々な処理も行って,電子ファイ ルを加工する,という複製にかかる一連の作業のすへてを実行してい る(甲4,5,12~17)。そして,法人被告らは,独立した事業者として,自らサーヒス内容 を定し,インターネット上て宣伝広告を行うことにより利用者を誘引し,法人被告らに注文した不特定多数の利用者から対価を得て,上 記の作業を行っている。以上に照らせは,法人被告ら自身か複製にかかる作業のすへてを行 っているのてあって,法人被告らか複製の主体てあることはらかて あり,利用者の「手足」とみることはてきない。そして,著作権法30条1項は,1個人的に又は家庭内その他これ に準する限られた範囲内において使用することを目的とし,かつ2そ の使用する者か複製することを要件としている。複製行為の主体は, 上記のとおり法人被告らてあるから,法人被告らについてこれらの要 件を判断すへきこととなる。そうすると,法人被告らは,不特定多数の利用者に電子ファイルを 使用させることを目的として複製しているから,法人被告ら自身か個 人的に又は家庭内その他これに準する限られた範囲内において使用す ることを目的としている場合には当たらす,上記1の要件を欠くこと からかてある。また,電子ファイルを使用する者は利用者てあるの に対し,複製の主体は法人被告らてあるから,上記2の要件も欠くこ とからかてある。(イ) 被告トライハレッシらの主張について
a 被告トライハレッシらの主張は否認する。
 b 上記(ア)cと同し。ウ 原告らの被告サントリームに対する差止請求か権利濫用に当たるか(争 点1-3)(被告サントリームらの主張)
(ア) 書籍については,治初期(1880年代)から古本売買という商取引か行われ,その場合,著作権者には対価か全く還元されない。年間 1300億円超とも言われる古本の流通量との比較から考えると,私的使用を前提とするスキャン代行の規模自体は微々たるものてある。
 また,かつては,レンタルレコート(CD)コヒー業者をめくり, 権利者への対価支払か業界的に制度化されてきた経緯もある。その意味 ては,スキャン代行は,対価支払制度の将来の実現に向けた模索的,過渡的,価値不確定な段階という評価もてきる。 そこて,著作権者への対価還元の仕組みを作ることは,著作権者側にとっても,本の所有者を含めたスキャンを行う側にとっても,有益なこ とてある。例えは,日本複写機センター出版社著作権管理機構(JC OPY)その他の事業者かスキャンを対象とし,包括契約を結んている 著作物のスキャン代行を一度に申し込めるようにする仕組みはとうかと いう提案意見もある。(イ) 以上のとおり,本件は,法的に見ても,社会的に見ても,評価将 来の制度設計について多様な意見かあり得る問題といえる。そのような問題について,原告らか,権利侵害行為損害の具体的な 主張立証もなしに,本の所有者「本人」かスキャンしているわけてはな いという一事をもって,あたかもすへてのスキャン代行行為スキャン 代行業者か一律に「社会悪」てあるかのような請求を行うことは,仮に スキャン代行か私的使用に該当しないと判断される場合てあっても,権 利の濫用に該当する。(原告らの主張)
(ア) 被告サントリームらの主張は否認する。
(イ) 被告サントリームらは,スキャン事業か「多様な意見かあり得る問題」てあること等をもって,原告らの請求を権利濫用と主張するか,異 論の存在の故に法律上の権利行使か権利濫用とされてしまうのならは, 民事訴訟制度なと成り立たないてあろう。そもそも,権利濫用のような一般条項は,被告サントリームらの主張 13するような抽象的理由て軽々に適用されるものてはない。裁判例をみて も,著作権の行使か権利濫用とされるのは,権利者か自ら当該著作権の 侵害となる行為をしていたなとの特段の事情かある限界事例に限られて おり(東京地裁平成11年11月17日判参照),本件かそれに比肩 するような事案てあるとは到底いえない。(2) 不法行為に基つく損害賠償請求の成否(争点2) (原告らの主張)ア 著作権法112条1項は,「…著作権者…は,その…著作権…を侵害す るおそれかある者に対し,その侵害の…予防を請求することかてきる。」 旨を定めている。したかって,著作権を現に侵害する行為はもちろん,著 作権侵害をするおそれかある状況を作出することも,著作権法上,差止請 求の対象となる違法な行為てある。イ 法人被告らは,原告ら多数の著作権者から,質問書通知書によって, 法人被告らの行為か著作権侵害行為となることを指摘され,その中止を求 められたにもかかわらす,著作権侵害のおそれかある状況を自ら作出して いる。法人被告らは,質問書通知書を無視して,その事業をそのまま継 続し,ホームヘーシ等において広く顧客を募集するなとして,自ら作出し た著作権侵害のおそれかある状況を任意には解消しない姿勢を確にして いたのてあって,原告らに,訴訟手続をもって,原告作品のスキャニンク 行為の停止を求めさるを得なくせしめたのてある。ウ また,被告Y1は,被告サントリームの代表者としてスキャン事業に主 導的な関与をし,被告Y2は,被告トライハレッシの代表者として,自ら 原告らの質問書に回答し(甲23),事業の運営統括責任者(甲12), 唯一の役員となり(甲3),同しくスキャン事業に主導的な関与をしてい るのてあるから,被告Y1は被告サントリームと,被告Y2は被告トライ ハレッシと,それそれ共同して,上記ア及ひイの違法行為を行っているものてある。
エ 被告らは,法人被告らの事業か,原告らの著作権を侵害するおそれのある行為てあることを知りなから,原告らからの質問書通知書なとを無視 して事業を継続しているのてあって,上記違法行為について,未必の故意 (少なくとも過失)か存する。また,違法な事業を継続し,広く顧客を募集し続けて,原告らの著作権 を侵害するおそれのある状況を作出し,それを継続していれは,原告らか 侵害のおそれのある行為の停止を求めて訴えを提起すること,その場合に は,相当の弁護士費用の支出を余儀なくされることは当然てあり,被告ら の対応と原告らの弁護士費用の支出とは相当因果関係か認められる。オ 本件においては,被告らの対応によって発生せさるを得なくなった原告 らの弁護士費用の支出について賠償を求める。(被告サントリームらの主張) 原告らの主張は否認する。
(被告トライハレッシらの主張)
ア 原告らの主張は否認する。
イ スキャン代行業者か増加する中,著作権者サイトの実務家から,その違法性について議論か提起されていたか,その主要な問題点は,テシタルテ ータ及ひ裁断本か転々流通することにより,作家及ひ出版社に収益か還元 されないという点てあった。被告トライハレッシかスキャン代行事業を開始した当時から現在に至る まて,スキャン代行か違法てあるとする法制度は整備されていないはかり か,スキャン代行を違法とする裁判例も存在しない。さらに,スキャン代 行業者の最大手「フックスキャン」を含む大手業者及ひ老舗業者に対して は訴訟提起自体もされていなかった。被告トライハレッシは,上記のような動向を認識して事業を開始するこ 15ととし,もともと個人的又は家庭内使用を目的とするスキャン代行,具体 的には医学書等の専門書を中心としたスキャン代行サーヒスを開始した。
 ます,被告トライハレッシは,テシタルテータの販売を行うことのない よう利用者から送付された本をスキャンした後はサーハーからテシタルテ ータの削除を行った。被告トライハレッシは,ユーサーの側て裁断本の転 売か行われることのないよう,裁断本の返却は行わないこととした。さら に,顧客ターケットは医師,弁護士等の専門職にある者を中心とし,テシタルテータ転売の危険性を防止した。 以上のとおり,被告トライハレッシ及ひ被告Y2に法益侵害の認識はなかった。
(3) 損害額(争点3) (原告らの主張)
原告らか,原告ら代理人弁護士に支払うへき弁護士費用のうち,少なくと も別紙弁護士費用計算記載の金額は,不法行為と相当因果関係の認められる 損害てある。したかって,原告らは,被告サントリームらと被告トライハレッシらそれ それに対し,損害賠償金として,各21万円(147万円の7分の1)の支 払を求める。(被告サントリームらの主張)
ア 原告らの主張は否認する。
イ 本件訴訟において,原告らは,そもそも実損害の発生を主張せす,権利侵害に関する金銭賠償請求を行っていない。そのような場合,損害金額か 認められないのてあるから,弁護士費用の相手方負担を認める法的理由は ない。(被告トライハレッシらの主張) 原告らの主張は否認する。第3 当裁判所の判断
1 著作権法112条1項に基つく差止請求の成否(争点1)について(1) 後掲の証拠等によれは,以下の各事実かそれそれ認められる。
 ア 被告サントリームの事業概要被告サントリームは,「ヒルススキャン24」の名称てスキャン事業を 行っている。被告サントリームのウェフサイトの記載(平成24年11月現在のも の)ては,そのスキャン事業の概要は以下のとおりてある。1利用者は, ウェフサイトにおいて,無料会員登録をした後,会員ヘーシにロクインし て利用を申し込む。2対象の書籍は,最大A3サイスまての書籍てある (たたし,辞書,専門書等て極度に薄い紙質のものなとは除く。)。3サ ーヒス料金は,5営業日以内に納品される「通常納品」の場合は1冊24 0円,15営業日以内に納品される「15営業日納品」の場合は1冊18 0円,90営業日以内に納品される「のんひり納品」の場合は1冊100 円,72時間以内に納品される「特急納品」の場合は1冊360円,24 時間以内に納品される「超速納品」の場合は1冊480円てあり(1冊の 基準は500頁),カハースキャン等の有料オフションサーヒスも用意さ れている。4利用者は,指定された住所に書籍を送付するか,アマソン等 のオンライン書店から直送することもてきる。5被告サントリームは,書 籍を裁断した上て,スキャナーて読み取ることにより,書籍を電子的方法 により複製して,電子ファイルを作成する。電子ファイルのフォーマット は,PDF形式又はJPEG形式(有料オフション)かある。6完成した 電子ファイルは,利用者かインターネット上のタウンロート用サイトから タウンロートするか,希望により電子ファイルを収録したDVD,UB メモリ等の媒体を配送する方法により納品される。被告サントリームは,スキャン作業の具体的な詳細についてはらかに 17していない。 なお,その後の被告サントリームのウェフサイト(平成24年12月29日のもの)ては,会員専用ロクイン画面の最下部に,原告らの書籍のス キャンには対応していない旨か記載されている。(以上につき甲4,5,乙1,弁論の全趣旨) イ 被告トライハレッシの事業概要被告トライハレッシは,「スキャホン」の名称てスキャン事業を行って いる。被告トライハレッシのウェフサイトの記載(平成24年11月現在のも の)ては,そのスキャン事業の概要は以下のとおりてある。1利用者は, ウェフサイトにおいて,無料会員登録をした後,会員ヘーシにロクインし て利用を申し込む。2対象の書籍は,A4サイスまての書籍てある(雑誌 のように静電気か発生してスキャンに支障か出るもの,辞書タウンヘー シ等のように薄い頁の書籍等を除く。)。被告トライハレッシのウェフサ イトの「著作権について」と題するヘーシには,スキャン対応不可の著作 者一覧として,原告らを含む著作者120名の氏名か記載されている。3 サーヒス料金は,「スキャン料金」か1冊200円,書籍到着後7~10 日て納品を行う「お急き便」(フックカハースキャン,OC処理かセッ ト)か1冊380円てあり(1冊は350頁まててあり,以降200頁こ とに1冊分の追加料金か付加される。),他に「通販直送便」のフランか あるほか,フックカハースキャン等の有料オフションサーヒスも用意され ている。4利用者は,書籍を指定された住所に送付するか,アマソン等の オンライン書店から直送することもてきる。5被告トライハレッシは,書 籍を裁断した上て,スキャナーて読み取ることにより,書籍を電子的方法 により複製して,電子ファイルを作成する。電子ファイルのフォーマット は,PDF形式(セルフサーヒスてJPEG形式に変換可能)てある。6完成した電子ファイルは,利用者かインターネット上のタウンロート用サ イトからタウンロートするか,希望により電子ファイルを収録したDVD を配送する方法により納品される。上記5のスキャン作業については,被告トライハレッシの事務所に設置 されたスキャナーとコンヒュータを接続したシステムにおいて,電動裁断 機等て裁断した書籍をスキャンし,その結果をPDFファイルて保存し, 保存されたPDFファイルはJPEG形式に変換される。上記システムて は,JPEG形式のファイルに対して,Hough変換処理(紙粉による スシノイス検知)各頁の縦横サイス計算(縦横のサイスか異なる頁を検 知)を行う。上記システムによるテータ不良のチェックか完了すると,検 品システムに目視検品か可能なリストか表示され,主に外注スタッフか検 品システムにロクインし,リストに表示されたファイルを目視て全頁検品 する。この検品により,頁折れ,コミの付着の有無,紙粉スシの有無,傾 斜,歪み,糊の跡,頁の順番,落丁,重複等かチェックされる。目視によ る検品の後,書籍をありのまま再現し,スキャンにより生したノイスを取 り除くために,事務所内のスタッフか画像ソフトによる修正作業を行う。 修正作業後,PDFファイルのファイル名入力作業か行われる。(以上につき甲12~17,24,丙2) ウ 作家122名の質問に対する法人被告らの対応(ア) 原告らを含む作家122名と出版社7社は,平成23年9月5日付 け質問書(以下「本件質問書」という。)をもって,法人被告らを含む スキャン事業者約100社に対し,作家122名はスキャン事業におけ る利用を許諾していないとした上て,作家122名の作品について,依 頼かあれはスキャン事業を行う予定かあるかなとの質問を行った。これ に対し,被告トライハレッシは,同月15日付け回答書をもって,作家 122名の作品について,利用者の依頼かあってもスキャン事業を行うことかない旨回答した。その後,被告トライハレッシは,そのウェフサ イトの「著作権について」と題するヘーシに,スキャン対応不可の著作 者一覧として原告らを含む著作者120名を掲載した。被告サントリー ムは本件質問書に回答しなかった。(甲18,23,24,弁論の全趣旨) (イ) 原告らを含む作家122名と出版社7社は,被告サントリームか本 件質問書に回答しなかったため,平成23年10月17日付け通知書 (以下「本件通知書」という。)をもって,本件質問書にも記載したと おり,作家122名か自らの作品をスキャンされることを許諾していな いなととして,被告サントリームかスキャン事業において通知人作家の作品をスキャンすることは著作権(複製権)侵害に該当するとした上て, 今後は,作家122名の作品について,依頼かあってもスキャン事業を 行なわないよう警告するとともに,本件質問書と同内容の質問書を添付 して回答するよう求めた。しかし,被告サントリームは,本件通知書に 対しても回答しなかった。(甲25,弁論の全趣旨) (ウ) 原告ら代理人てある前田哲男弁護士は,調査会社に対し,スキャン 事業における利用を許諾していない作家の作品について,法人被告らか スキャンに応しるか否かの調査を依頼した。調査会社に依頼された協力 者は,平成24年7月13日,被告サントリームに対し,原告X6の作 品てある「課長島耕作」(全17巻)及ひ甲(本件質問書及ひ本件通知 書の作家122名の一人てある。)の作品てある「沈黙の艦隊」(漫画 文庫版全16巻)のスキャンを申し込んた。被告サントリームは,同年 8月24日,協力者に対し,スキャンによって作成されたPDFファイ ルを収録したUBメモリを納品するとともに,同月28日,裁断済み の書籍を返送した。また,協力者は,同年7月31日,被告トライハレッシに対し,原告X6の作品てある「部長島耕作」(全13巻)及ひ甲 の作品てある「沈黙の艦隊」(全32巻)のスキャンを申し込んた。被 告トライハレッシは,協力者に対し,同年8月14日,スキャンによっ て作成されたPDFファイルを収録したDVDを納品するとともに,同 年9月2日,裁断済みの書籍を返送した。(甲36) (2) 以上に基ついて,法人被告らか原告らの著作権を侵害するおそれかあるか(争点1-1)について検討する。 ア 複製の主体等について
(ア) 著作権法2条1項15号は,「複製」について,「印刷,写真,複 写,録音,録画その他の方法により有形的に再製すること」と定義して いる。この有形的再製を実現するために,複数の段階からなる一連の行為か 行われる場合かあり,そのような場合には,有形的結果の発生に関与し た複数の者のうち,誰を複製の主体とみるかという問題か生しる。この問題については,複製の実現における枢要な行為をした者は誰か という見地から検討するのか相当てあり,枢要な行為及ひその主体につ いては,個々の事案において,複製の対象,方法,複製物への関与の内 容,程度等の諸要素を考慮して判断するのか相当てある(最高裁平成2 1年(受)第788号同23年1月20日第一小法廷判・民集65巻1 号399頁参照)。本件における複製は,上記(1)ア及ひイて認定したとおり,1利用者 か法人被告らに書籍の電子ファイル化を申し込む,2利用者は,法人被 告らに書籍を送付する,3法人被告らは,書籍をスキャンしすいよう に裁断する,4法人被告らは,裁断した書籍を法人被告らか管理するス キャナーて読み込み電子ファイル化する,5完成した電子ファイルを利用者かインターネットにより電子ファイルのままタウンロートするか又 はDVD等の媒体に記録されたものとして受領するという一連の経過に よって実現される。この一連の経過において,複製の対象は利用者か保有する書籍てあり, 複製の方法は,書籍に印刷された文字,図画を法人被告らか管理するス キャナーて読み込んて電子ファイル化するというものてある。電子ファ イル化により有形的再製か完成するまての利用者と法人被告らの関与の 内容,程度等をみると,複製の対象となる書籍を法人被告らに送付する のは利用者てあるか,その後の書籍の電子ファイル化という作業に関与 しているのは専ら法人被告らてあり,利用者は同作業には全く関与して いない。以上のとおり,本件における複製は,書籍を電子ファイル化するとい う点に特色かあり,電子ファイル化の作業か複製における枢要な行為と いうへきてあるところ,その枢要な行為をしているのは,法人被告らて あって,利用者てはない。したかって,法人被告らを複製の主体と認めるのか相当てある。
 (イ) この点について,被告サントリームらは,著作権法30条1項の適 用を主張する際において,被告サントリームは,使用者のために,その 者の指示に従い,補助者的な立場て電子テータ化を行っているにすきな いとし,また,被告トライハレッシらは,同項の「使用する者か複製す る」の解釈について,「複製」に向けての因果の流れを開始し,支配し ている者か複製の主体と判断されるへきてあるし,複製の自由か書籍の 所有権に由来するものてあることに照らしても,書籍の所有者か複製の主体てあると判断すへきてあると主張する。 著作権法30条1項は,複製の主体か利用者てあるとして利用者か被告とされるとき又は事業者か間接侵害者若しくは教唆・幇助者として被 22告とされるときに,利用者側の抗弁として,その適用か問題となるもの と解されるところ,本件においては,複製の主体は事業者てあるとされ ているのてあるから,同項の適用か問題となるものてはない。もっとも, 被告らの主張は,利用者を複製の主体とみるへき事情として主張してい るものとも解されるのて,この点について検討する。確かに,法人被告らは,利用者からの発注を受けて書籍を電子ファイ ル化し,これを利用者に納品するのてあるから,利用者か因果の流れを 支配しているようにもみえる。しかし,本件において,書籍を電子ファイル化するに当たっては,書 籍を裁断し,裁断した頁をスキャナーて読み取り,電子ファイル化した テータを点検する等の作業か必要となるのてあって,一般の書籍購読者 か自ら,これらの設備を準備し,具体的な作業をすることは,設備の費 用負担労力・技術の面において困難を伴うものと考えられる。このような電子ファイル化における作業の具体的内容をみるならは, 抽象的には利用者か因果の流れを支配しているようにみえるとしても, 有形的再製の中核をなす電子ファイル化の作業は法人被告らの管理下に あるとみられるのてあって,複製における枢要な行為を法人被告らか行 っているとみるのか相当てある。また,被告らは,法人被告らか補助者にすきないと主張する。利用者 かその手足として他の者を利用して複製を行う場合に,「その使用する 者か複製する」と評価てきる場合もあるてあろうか,そのためには,具 体的事情の下において,手足とされるものの行為か複製のための枢要な 行為てあって,その枢要な行為か利用者の管理下にあるとみられること か必要てある。本件においては,上記のとおり,法人被告らは利用者の 手足として利用者の管理下て複製しているとみることはてきないのてあ るから,利用者か法人被告らを手足として自ら複製を行ったものと評価することはてきない。
(ウ) さらに,被告トライハレッシらは,「複製」といえるためには,オリシナル又は複製物に格納された情報を格納する媒体を有形的に再製す ることに加え,当該再製行為により複製物の数を増加させることか必要 てあり,言い換えれは,「有形的再製」に伴い,その対象てあるオリシ ナル又は複製物か廃棄される場合には,当該再製行為により複製物の数 か増加しないのてあるから,当該「有形的再製」は「複製」には該当し ない旨主張する。しかし,著作権法21条は,「著作者は,その著作物を複製する権利 を専有する。」と規定し,著作権者か著作物を複製する排他的な権利を 有することを定めている。その趣旨は,複製(有形的再製)によって著 作物の複製物か作成されると,これか反復して利用される可能性・蓋然 性かあるから,著作物の複製(有形的再製)それ自体を著作権者の排他 的な権利としたものと解される。そうすると,著作権法上の「複製」は,有形的再製それ自体をいうの てあり,有形的再製後の著作物及ひ複製物の個数によって複製の有無か 左右されるものてはないから,被告トライハレッシらの主張は採用てき ない。イ 被告サントリームか原告らの著作権を侵害するおそれについて 上記(1)アのとおり,被告サントリームは,平成24年11月現在にお いて,そのスキャン事業として,会員登録をした利用者から利用申込みか あると,有償て,書籍をスキャナーて読み取ることにより,電子的方法により複製して,電子ファイルを作成している。
 そして,上記(1)ウのとおり,原告らを含む作家122名及ひ出版社7社は,被告サントリームに対し,本件質問書において,作家122名は, スキャン事業における利用を許諾していないとした上て,作家122名の作品について,依頼かあれはスキャン事業を行う予定かあるかなとの質問 を行ったか,被告サントリームは,本件質問書に対して回答しなかった。 また,原告らを含む作家122名及ひ出版社7名は,被告サントリームに 対し,本件通知書において,今後は,作家122名の作品について,依頼 かあってもスキャン事業を行なわないよう警告するなとしたか,被告サン トリームは,本件通知書に対しても回答しなかった。その後の調査会社の 調査によると,被告サントリームは,原告X6及ひ甲の作品について,ス キャンを依頼され,スキャンによって作成されたPDFファイルを収録し たUBメモリを納品した。以上に照らすと,被告サントリームのウェフサイト(平成24年12月 29日のもの)ては,会員専用ロクイン画面の最下部に,原告らの書籍の スキャンには対応していない旨か記載されている(上記(1)ア)としても, 被告サントリームか原告らの著作権を侵害するおそれかあると認めるのか 相当てある。また,被告サントリームに対する差止めの必要性を否定する 事情も見当たらない。ウ 被告トライハレッシか原告らの著作権を侵害するおそれについて 上記(1)イのとおり,被告トライハレッシは,平成24年11月現在に おいて,そのスキャン事業として,会員登録をした利用者から利用申込み かあると,有償て,書籍をスキャナーて読み取ることにより,書籍を電子 的方法により複製して,電子ファイルを作成している(丙2によると,現 時点における被告トライハレッシのスキャン事業も同様てあると認められる。)。 上記(1)ウ(イ)及ひ(ウ)のとおり,原告らを含む作家122名及ひ出版社7社は,被告トライハレッシに対し,本件質問書において,作家122 名は,スキャン事業における利用を許諾していないとした上て,作家12 2名の作品について,依頼かあれはスキャン事業を行う予定かあるかなとの質問を行った。被告トライハレッシは,作家122名の作品について, 利用者の依頼かあってもスキャン事業を行うことかない旨回答し,その後, そのウェフサイトの「著作権について」と題するヘーシに,スキャン対応 不可の著作者一覧として原告らを含む著作者120名を掲載した。その後 の調査会社の調査によると,被告トライハレッシは,原告X6及ひ甲の作 品について,スキャンを依頼され,スキャンによって作成されたPDFフ ァイルを収録したDVDを納品した。このように,被告トライハレッシは,本件質問書に対し,作家122名 の作品について,利用者の依頼かあってもスキャン事業を行うことかない 旨を回答するなとしている。しかし,調査会社の調査によると,被告トラ イハレッシは,原告X6及ひ甲の作品について,スキャンを依頼され,ス キャンによって作成されたPDFファイルを収録したDVDを納品してい るし,被告トライハレッシは,チェック漏れとしなからも,平成23年1 0月から平成25年1月まての間において,原告作品を合計557冊スキ ャンしたことを認めている。以上に照らすと,被告トライハレッシか原告らの著作権を侵害するおそ れかあると認めるのか相当てある。また,被告トライハレッシに対する差 止めの必要性を否定する事情も見当たらない。(3) 次に,法人被告らのスキャニンクか私的使用のための複製の補助として 適法といえるか(争点1-2)について検討する。被告らは,法人被告らのスキャニンクについて,そのスキャン事業の利用 者か複製の主体てあって,法人被告らはそれを補助したものてあるから,著 作権法30条1項の私的使用のための複製の補助として,法人被告ら行為は 適法てある旨主張する。しかし,上記(2)のとおり,本件において著作権法30条1項の適用は問 題とならないし,また,本件における書籍の複製の主体は法人被告らてあって利用者てはないから,被告らの主張は事実関係においてもその前提を欠い ている。したかって,被告らの主張は理由かない。
(4) 続いて,原告らの被告サントリームに対する差止請求か権利濫用に当たるか(争点1-3)について検討する。
 被告サントリームらは,本件は,法的に見ても,社会的に見ても,評価将来の制度設計について多様な意見かあり得る問題といえるなととして,仮 にスキャン代行か私的使用に該当しないと判断される場合てあっても,権利 の濫用に該当する旨主張する。しかしなから,被告サントリームらの主張によっても権利の濫用に該当す る事情は見当たらないし,上記(1)において認定した事実に加え,本件記録 を精査しても,同様に権利の濫用に該当する事情は見当たらないから,被告 サントリームらの主張は理由かない。(5) 小括 以上のとおり,法人被告らか原告らの著作権を侵害するおそれかあると認めるのか相当てあり,法人被告らに対する差止めの必要性を否定する事情も 見当たらない。他方て,私的使用のための複製及ひ権利濫用の抗弁はいすれ も理由かない。したかって,原告らの法人被告らに対する著作権法112条1項に基つく 差止請求は理由かある。2 不法行為に基つく損害賠償請求の成否(争点2)及ひ損害額(争点3)につ いて(1) 不法行為に基つく損害賠償請求の成否(争点2)についてア 著作権者か,その著作権を侵害する者(又は侵害するおそれかある者) に対し,著作権法112条1項に基つく差止請求をする場合には,著作権 侵害を理由とする不法行為に基つく損害賠償を請求する場合と同様,その著作権者において,具体的事案に応し,著作権取得に係る事実に加え,著 作権侵害(又はそのおそれ)に係る事実を主張立証する責任を負うのてあ って,著作権者か主張立証すへき事実は,不法行為に基つく損害賠償を請 求する場合とほとんと変わるところかない(損害賠償請求ては,故意又は 過失に加え,損害の発生及ひその額を主張立証する責任を負う点か異な る。)。そうすると,著作権法112条1項に基つく差止請求権は,著作 権者かこれを訴訟上行使するためには弁護士に委任しなけれは十分な訴訟 活動をすることか困難な類型に属する請求権てあるということかてきる。したかって,著作権者か,著作権法112条1項に基つく差止めを請求 するため訴えを提起することを余儀なくされ,訴訟追行を弁護士に委任し た場合には,その弁護士費用は,事案の難易その他諸般の事情を斟酌して 相当と認められる額の範囲内のものに限り,著作権侵害(又はそのおそ れ)と相当因果関係に立つ損害というへきてある。イ 以上に基ついて,被告サントリームらに対する不法行為に基つく損害賠 償請求の成否について検討する。前記1(1)ウに認定した被告サントリームの対応に照らすと,このよう な被告サントリームの対応によって,原告らは,被告サントリームに対す る差止請求を余儀なくされ,訴訟追行を弁護士に委任したものと認められ るし,被告サントリームの過失も認められるというへきてある。また,証拠(甲1,乙6)によれは,被告Y1は,被告サントリームの 代表者てあるとともに,そのスキャン事業の責任者てあったことか認めら れるから,被告サントリームと同様に過失か認められ,被告サントリーム と共同して不法行為を行ったものと認めるのか相当てある。したかって,原告らの被告サントリームらに対する不法行為に基つく損 害賠償請求は成立する。ウ 続いて,被告トライハレッシらに対する不法行為に基つく損害賠償請求 28の成否について検討する。 前記1(1)ウ(ア)及ひ(ウ)に認定した被告トライハレッシの対応に照らすと,このような被告トライハレッシの対応によって,原告らは被告トラ イハレッシに対する差止請求を余儀なくされ,訴訟追行を弁護士に委任し たものと認められるし,被告トライハレッシの過失も認められるというへ きてある。また,証拠(甲3,12,丙2)によれは,被告Y2は,被告トライハ レッシの唯一の取締役かつ代表者てあるとともに,そのスキャン事業の運 営統括責任者てあったことか認められるから,被告トライハレッシと同様 に過失か認められ,被告トライハレッシと共同して不法行為を行ったと認 めるのか相当てある。したかって,原告らの被告トライハレッシらに対する不法行為に基つく 損害賠償請求は成立する。(2) 損害額(争点3)について 上記(1)のとおり,法人被告らに対する差止請求に係る弁護士費用相当額か因果関係のある損害てある。 そして,被告サントリームらと被告トライハレッシらかそれそれ負担すへき弁護士費用相当額は,上記差止請求の内容,経過等に照らすと,原告1名につき10万円か相当てある。 (3) 小括
以上のとおり,原告らの被告サントリームらに対する不法行為に基つく損 害賠償請求は,原告1名につき10万円(附帯請求として被告サントリーム につき訴状送達の日の翌日てある平成24年12月2日から,被告Y1につ き前同様の同月4日から支払済みまて民法所定の年5分の割合による遅延損 害金)の連帯支払を求める限度て理由かある。また,原告らの被告トライハレッシらに対する不法行為に基つく損害賠償 29請求は,原告1名につき10万円(附帯請求として被告トライハレッシにつ き訴状送達の日の翌日てある平成24年12月2日から,被告Y2につき前 同様の同月7日から支払済みまて民法所定の年5分の割合による遅延損害 金)の連帯支払を求める限度て理由かある。3 結論 よって,主文のとおり判する。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀 滋
裁判官 小川雅敏
裁判官 西村康夫
(別紙)
当事者目録
東京都千代田区<以下略>
原 告 X1
東京都文京区<以下略>
原 告 X2
東京都新宿区<以下略>
原 告 X3
東京都新宿区<以下略>
原 告 X4
東京都千代田区<以下略>
原 告 X5
東京都文京区<以下略>
原 告 X6
東京都千代田区<以下略>
原 告 X7
上記7名訴訟代理人弁護士 伊 藤 真 同 平井佑希 同 前田哲男 同 福井健策 同 北澤尚登 同 久保利英 同上山浩東京都港区<以下略>
被 告 株式会社サントリーム
東京都港区<以下略>
被 告 Y1
上記2名訴訟代理人弁護士 本 山 信 二 郎 東京都葛飾区<以下略>被 告 有限会社トライハレッシシャハン 東京都品川区<以下略>被 告 Y2 上記2名訴訟代理人弁護士 髙 橋 淳
同訴訟復代理人弁護士
西 郷
直 子
以上
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