平成25年6月27日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 平成25年(ワ)第82号 受信料等請求事件 口頭弁論終結日 平成25年4月11日判 決 東京都渋谷区神南2丁目2番1号
原告
同代表者会長
同訴訟代理人弁護士
 日本放送協会 X
A 他8名
相模原市(以下省略)
被 告 Y
主 文
 1 原告の主位的請求を棄却する。
2 被告は,原告に対し,被告が肩書住所地に設置したテレビジョン受信機に ついて,受信契約者を被告,契約種別を衛星契約とする別紙1「日本放送協 会放送受信規約」を内容とする放送受信契約締結の申込みを承諾せよ。3 被告は,原告に対し,前項の判決確定を条件として,10万9640円を 支払え。4 原告のその余の予備的請求1を棄却する。
 5 訴訟費用は被告の負担とする事実及び理由
第1 請求の趣旨
 1 主位的請求
(1) 被告は,原告に対し,10万9640円を支払え。 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。(3) 仮執行の宣言
2 予備的請求1
(1) 主文2項と同旨
(2) 被告は,原告に対し,10万9640円を支払え。 (3) 訴訟費用は被告の負担とする。3 予備的請求2
(1) 被告は,原告に対し,10万9640円を支払え。 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。(3) 仮執行の宣言
第2 当事者の主張
 1 原告の主張
(1) 請求の原因は,別紙「請求の原因」記載のとおりである。(2) 平成23年3月11日の東日本大震災によりテレビジョン受信機が故障した旨の被告の主張は客観的証拠を欠き,信用できない。 また,仮に,被告のテレビジョン受信機の故障が事実であったとして も,被告は,受信機設置連絡日の属する月の翌月である平成21年2月 から受信機が故障したとされる平成23年3月11日までの期間の不当利得返還請求を免れることはできない。
 2 被告の主張
陳述が擬制された被告の答弁書には,「第1 原告の請求を棄却する。第2認めない。」との記載のほか,1平成23年3月11日の東日本大震災によ り10階にある被告の自宅の家具や電化製品は壊れてしまい,給料収入が少な い被告においては,未だテレビなど欠いても生活に支障のないものは購入でき ない状況にあるから,平成23年3月11日以前の受信料については,被告の 支払能力に応じて支払うが,同日以降の受信料の支払請求は納得できない,2 被告は,税金については滞納していない善良な納税者であるから,そのような 者に対して,税金を使って本件のような訴訟を起こす原告(NHK)は許せな い旨の記載がある。第3 当裁判所の判断
1 請求の原因1の事実及び同2(1)の放送法の規定は,いずれも公知の事実であり,同2(2)の受信規約の定め等の存在は,証拠(甲1ないし10)に より認めることができる。同3の事実は,証拠(甲11)及び弁論の全趣旨により,同4の事実は証拠 (甲12,13の各1,2)及び弁論の全趣旨により,いずれもこれらを認め ることができる。被告は,平成23年3月11日の東日本大震災により被告のテレビジョン受 信機が故障した旨主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。2 以上の事実に基づき,原告の各請求の当否について検討する。
 (1) 主位的請求について原告は,被告のように原告からの窓口変更通知による受信契約締結の申込 みに対し受信契約の締結手続(受信契約書の提出)に応じない場合でも,窓 口変更通知到達日から相当期間が経過した時点で,原告と被告との間に受信 契約が成立したとみるべきである旨主張する。しかし,請求の原因2(1)掲記の放送法の定めによれば,放送法は,受 信施設の設置によって,直ちに受信者と原告との間に受信料債務関係を含む 一般的な法律関係が成立したものとせず,受信者の側に契約締結義務を定め ているにとどまることからすると,原告が指摘する放送法の趣旨,すなわち, 原告の公共放送機関としての役割の重要性に照らし原告が広く受信者一般か ら受信料を受領できるよう受信者の受信契約締結義務を定めたものであるこ と,及び受信契約に基づき受信料を支払っている多数の受信者との間の公平 の観点を考慮したとしても,窓口変更通知到達日から相当期間が経過したと いうことのみで,その時点で直ちに原告と被告との間に受信契約が成立した ものと解することは困難である。 したがって,原告の主位的請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。
(2) 予備的請求1について
ア 受信契約締結承諾の意思表示を求める部分について 放送法は,原告という特別の法人を設立し,これに国内放送を中心とする事業を行う権能を与え,原告の国家や経済界等からの独立性を確保する ために,原告の放送の受信者に費用分担を求め,さらに,徴収確保の技術 的理由に鑑み,原告の放送を受信し得る受信設備を設置した者から,その 現実の利用状態とは関係なく,一律に受信料を徴収することを原告自体に 認めているものといえる。そして,このような制度に現れた結果からする と,受信料は,国家機関ではない原告という特殊法人に徴収権を認めた特 殊な負担金というべきであり,当該受信料の支払義務を発生させるための 法技術として,受信設備設置者と原告との受信契約の締結強制という手法 を採用したものと解される。そうすると,原告は,原告からの受信契約締 結の申込みに対し,契約締結を拒否するなどして契約をしない受信設備設 置者に対しては,民法414条2項ただし書により,受信契約の締結に応 諾する意思表示を命ずる判決を得ることによって,当該受信契約を締結さ せ,当該受信契約に基づいて,受信料の支払を求めることができるものと いうべきである。しかして,前記認定の請求の原因3及び4掲記の事実経過に照らすと, 被告は,原告との間で,契約種別を衛星放送とし,別紙1「日本放送協会 放送受信規約」を内容とする放送受信契約を締結すべき義務があるといえ るところ,被告は,原告からの当該受信契約締結の申込みに応じようとし ていない。したがって,被告のテレビジョン受信機が故障した旨の被告の主張は認 められないし,他に被告が原告からの当該受信契約締結の申込みに応じな いことを正当と評価し得るような事情についての主張立証がない本件にお いては,被告に対し当該受信契約締結の申込みを承諾する旨の意思表示を求める原告の請求は理由がある。 イ 受信料の支払請求について上記アの受信契約締結承諾の意思表示を命ずる判決が確定した場合には, 原告と被告の間に,契約種別を衛星放送とし,別紙1「日本放送協会放送 受信規約」を内容とする放送受信契約が成立することになり,被告は,同 契約に基づいて,原告に対し,受信料の支払義務を負うことになる。この点について,原告は,別紙1「日本放送協会放送受信規約」(現行 受信規約)5条1項に,「放送受信契約者は、受信機の設置の月から(中 略)放送受信料(消費税および地方消費税を含む。)を支払わなければな らない。」と規定されていることを根拠として,原告及び被告の間では, 当該受信契約は受信機の設置の日に遡って効力を有し,被告は,当該受信 契約に基づき受信機の設置の月から受信料を支払う義務を負うこととなる 旨主張する。しかし,債務関係の確定の日と契約成立の日にずれが生ずる ことの根拠を上記規約のみに求めることは疑問であり,加えて,放送法6 4条1項(平成22年改正前放送法32条1項)自体の解釈として,現在, 契約締結義務の履行につき特別の担保手段がないこと,そもそも個々の受 信者の対応如何によって受信料債務の成立時点が異なってくることを法が 予定しているものとすることも合理的でないこと等を考慮すると,同条項 が,現実の契約締結は契約関係確定手続であり,したがって,その効果が 受信設備設置の時点にさかのぼるというシステムを前提としているものと 解するのが相当である。したがって,いずれにしても,被告は,原告に対し,受信設備設置の時 点から前記受信契約に基づいて定められた受信料の支払義務を負っている ところ,前記認定(請求の原因3掲記の事実)のとおり,被告は,遅くと も受信機設置連絡日である平成21年1月13日までには肩書住所地に衛星系によるテレビジョン放送を受信できるカラーテレビジョン受信機を設 置しているから,被告は,遅くとも受信機設置連絡日以降,原告に対し, 受信料の支払義務を負っていることになる。そして,受信規約の規定する月ごとの受信料額は別紙2「受信規約・受 信料額一覧」記載のとおりであるから,原告が予備的請求1において被告 に支払を求めている受信機設置連絡日の属する月の翌月である平成21年 2月から訴状提出日の属する月の前月である平成25年1月までの期間の 受信料は,平成21年2月から平成24年9月までの44か月分について は月額2290円,平成24年10月から平成25年1月までの4か月分 については月額2220円,合計10万9640円となる。月額2290円×44か月=10万0760円 月額2220円×4か月=8880円 10万0760円+8880円=10万9640円 したがって,原告の予備的請求1における受信料の支払請求は,被告に対し,上記アの受信契約締結承諾の意思表示を命ずる判決の確定を条件として,10万9640円の支払を求める限度で理由があることとなる。 ウ 原告は,予備的請求1につき,一部理由がないとされた場合にも当該部 分について予備的に不当利得の返還を請求する旨主張するが,基本的に, 予備的請求1が全部棄却にならないと次順位の予備的請求の判断は不要で あるし,上記ア,イの判断は,実質的には原告が予備的請求1において求 めた内容に沿うものであり,原告がさらに判断を求めている上記の「一部理由がないとされた場合」には該当しないものと解される。 したがって,予備的請求2についての判断はしない。 なお,被告は,原告の請求に対し上記第2,22のとおり主張するが,主張自体失当である。
3 よって,原告の主位的請求を棄却し,予備的請求1を上記2ア及びイの限度で認容することとして,主文のとおり判決する。 横浜地方裁判所相模原支部
裁判官 小 池 喜 彦
(別紙)
請求の原因
1 当事者 原告は,放送法に基づいて設立された特殊法人であり,公共放送機関として「公共の福祉のために,あまねく日本全国において受信できるように豊かで,かつ,良 い放送番組による国内基幹放送(中略)を行うとともに,放送及びその受信の進歩 発達に必要な業務を行い,あわせて国際放送及び協会国際衛星放送を行うことを目 的とする」(放送法15条)ものである。2 放送法及び受信規約
(1) 放送法64条1項(平成22年法律第65号による改正(平成23年6月30日施行)前の放送法(以下「平成22年改正前放送法」という。)において は32条1項)は,「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は, 協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」と規定する(以下, 同項にいう受信設備の設置者を「受信者」といい,原告(協会)及び受信者間の放 送受信契約を「受信契約」という。)。また,受信契約の契約条項について,放送 法64条3項(平成22年改正前放送法においては32条3項)は,「協会は,第 一項の契約の条項については,あらかじめ,総務大臣の認可を受けなければならな い。」と規定する。(2) これを受けて,原告は,受信契約の条項として,総務大臣の認可を受け た上で,日本放送協会放送受信規約(以下、「受信規約」という。)を定め,ウェ ブサイト等を利用してその内容を一般に公開している。受信規約は,適宜,総務大 臣の認可を受けて改定されているが,本件訴状提出の日時点で有効な受信規約(以 下「現行受信規約」という。)においては、受信者が設置した受信設備(現行受信 規約においては,「受信機」又は「テレビジョン受信機」と規定されている。)の 種別に応じて,地上契約又は衛星契約のいずれかを締結するものとされている。す なわち,「地上系によるテレビジョン放送のみを受信できるテレビジョン受信機を設置(使用できる状態におくことをいう。以下同じ。)した者は地上契約,衛星系 によるテレビジョン放送を受信できるテレビジョン受信機を設置した者は衛星契約 を締結しなければならない。」(現行受信規約1条2項本文)とされている。また,現行受信規約が施行される以前の受信規約(別紙2「受信規約・受信 料額一覧」は,平成13年2月1日以降の受信規約を一覧にまとめたものである。) においても,同様に,受信者が設置したテレビジョン受信機の種別に応じて,受信 契約を締結しなければならない旨の規定が置かれていた。すなわち,平成13年2 月1日から平成19年9月30日までの間に有効であった受信規約においては、地 上放送のみを受信できるテレビジョン受信機を設置した者は,カラーテレビジョン 受信機か否かに応じて,現在の地上契約に相当するカラー契約又は普通契約を締結 しなければならず,衛星放送を受信できるテレビジョン受信機を設置した者は,カ ラーテレビジョン受信機か否かに応じて,現在の衛星契約に相当する衛星カラー契 約又は衛星普通契約を締結しなければならない旨の規定が置かれていた。また,平 成19年10月1日から,平成24年10月1日に現行受信規約が施行される直前 の平成24年9月30日までの間に有効であった受信規約においても,地上放送の みを受信できるテレビジョン受信機を設置した者は地上契約を締結しなければなら ず,衛星放送を受信できるテレビジョン受信機を設置した者は衛星契約を締結しな ければならない旨の規定が置かれていた。そして,受信契約を締結した受信者は,当該受信契約に基づき,原告に対し て放送受信料(以下「受信料」という。)を支払わなければならず,その受信料の 額は,当該時の受信規約において,契約種別,支払区分及び支払方法に応じて定め られている。3 被告による受信機の設置 原告は,被告からのテレビジョン受信機の設置の連絡を受けて,平成21年1月13日に当該連絡に対応する登録処理を行った(以下,原告が当該登録処理を行 った日を「受信機設置連絡日」という。)。なお,被告が原告に対して設置を連絡したテレビジョン受信機は,衛星系によるテレビジョン放送を受信できるカラーテ レビジョン受信機である。したがって,被告は,遅くとも受信機設置連絡日までに肩書住所地の自己の住 居に,衛星系によるテレビジョン放送を受信できるカラーテレビジョン受信機を設 置したのであり,この時点で、平成22年改正前放送法32条1項及び受信機設置 連絡日当時有効であった受信規約(以下「受信機設置連絡当時受信規約」という。
 別紙2「受信規約・受信料額一覧」参照。)1条2項本文に基づき,原告との間で, 受信契約を締結し,当該受信契約に基づき受信料を支払う義務を負った。しかるに,被告は,受信契約の締結手続(受信契約書の提出)に応じず,原告 に対して受信契約に基づく受信料を支払っていない。なお,当該受信契約の契約種別は,別紙2「受信規約・受信料額一覧」の「契 約種別」欄(別紙2「受信規約・受信料額一覧」の「契約種別」欄は,各時点にお ける受信規約において,衛星系によるテレビジョン放送を受信できるカラーテレビ ジョン受信機を設置した受信者が締結しなければならない契約種別を記載したもの である。)のうち,受信機設置連絡当時受信規約に対応する欄に記載された契約種 別である(以下,単に「受信契約」という場合には,特段の記載がない限り,別紙 2「受信規約・受信料額一覧」の「契約種別」欄のうち当該時の受信規約に対応す る欄に記載された契約種別の受信契約を指す。)。4 原告による受信契約締結及び受信料支払の請求 原告は,被告から上記受信機設置の連絡を受けたことから,それ以降,多数回にわたり,被告方に訪問員を派遣し,又は電話連絡の方法により,被告に対し,受 信契約書の用紙及び受信契約制度に関する説明資料を交付するとともに,受信機を 設置した者は放送法上受信契約を締結して受信料を支払う義務を負うことを説明し, 受信契約の締結手続(受信契約書の提出)に応じるよう求めたが,被告がこれに応 じることはなかった。 そこで,原告は,被告に対し,受信契約書及び現行受信規約を送付するとともに,平成24年11月22日付けで,被告との間の受信契約締結手続に関する原告 の対応窓口を受信料特別対策センターに変更する旨を通知し,被告に対して受信契 約書及び現行受信規約の内容に対応した受信契約(衛星契約)締結の申込みを行う 旨の通知(以下「窓口変更通知」という。)を送付し,窓口変更通知は,同月27 日に被告に到達したが(以下,窓口変更通知が被告に到達した日を「窓口変更通知 到達日」という。),被告は,それでも受信契約の締結手続(受信契約書の提出) に応じなかった。さらに,原告は,被告に対し,平成25年1月24日付けで,被告が受信契約 の締結手続(受信契約書の提出)に応じない場合には法的手続をとる旨を予告する 内容の通知(以下「提訴予告通知」という。)を送付し,提訴予告通知は被告に到 達したが,被告は,やはり受信契約の締結手続(受信契約書の提出)に応じなかっ た。なお,原告は,窓口変更通知を送付した後も,被告方に訪問員を派遣し,又は 電話連絡の方法により,被告に対し,受信機を設置した者は放送法上受信契約を締 結して受信料を支払う義務を負うことを説明し,受信契約の締結手続(受信契約書 の提出)に応じるよう求めたが,被告がこれに応じることはなかった。5 原告の請求
(1) 主位的請求(受信契約に基づく受信料請求)
ア 上記のとおり,原告は,被告に対し,窓口変更通知により受信契約締結の 申込みを行い,窓口変更通知は,窓口変更通知到達日に被告に到達した。これに対し被告は,受信契約の締結手続(受信契約書の提出)に応じない が,このような場合でも,窓口変更通知到達日から相当期間を経過した時点 で,原告及び被告の間には受信契約が成立したというべきである。そして, 上記相当期間としては,長くとも2週間を超えることはないというべきであ る。なぜなら,受信者が放送法64条1項に基づく受信契約締結義務を負うことに照らせば,原告から受信契約締結の申込みがされた場合には,これを承 諾する義務を負うのであるから,受信者が申込みに応じないからといって, 受信契約の成立を否定すべきではないからである。放送法は,原告の公共放 送機関としての役割の重要性に照らし,原告が広く受信者一般から受信料を 受領できるよう,受信者の受信契約締結義務を定めたのであって,このよう な放送法の趣旨及び受信契約に基づき受信料を支払っている多数の受信者と の間の公平の観点からすれば,原告の申込みに受信者が応じない場合であっ ても,当該受信者が受信料の支払義務を負わないなどという結論を取ること ができないことは明らかである。したがって,本件においても,遅くとも被告が窓口変更通知を受領した窓 口変更通知到達日から2週間を経過した時点で,原告及び被告の間に現行受 信規約に規定された内容の受信契約(衛星契約。以下「本件受信契約」とい う。)が成立している。イ 本件受信契約の内容は現行受信規約のとおりであるところ,現行受信規約 5条1項には「放送受信契約者は,受信機の設置の月から(中略)放送受信料(消 費税および地方消費税を含む。)を支払わなければならない。」と規定されている から,原告及び被告の間では,本件受信契約は受信機の設置日に遡って効力を有し, 被告は,本件受信契約に基づき受信機の設置の月から受信料を支払う義務を負うこ ととなる。そして,被告は,遅くとも受信機設置連絡日には肩書住所地に衛星系によ るテレビジョン放送を受信できるカラーテレビジョン受信機を設置しているから, 原告は,被告に対し,本件受信契約に基づき,受信機設置連絡日の属する月の翌月 である平成21年2月以降の期間について,当該時における受信規約が規定すると ころに従い,受信料の支払を請求する。受信規約の規定する月ごとの受信料額は,別紙2「受信規約・受信料額一 覧」記載のとおりであるところ,本訴請求の対象期間について,本件受信契約に適用される受信料額は,受信機設置連絡日の属する月の翌月である平成21年2月か ら平成24年9月までの44か月分については月額2290円,平成24年10月 から訴状提出の日の属する月の前月である平成25年1月までの4か月分について は月額2220円である。これらの合計額は,以下のとおり10万9640円であ る。月額2290円×44か月=10万0760円 月額2220円×4か月=8880円 10万0760円+8880円=10万9640円ウ したがって,原告は,被告に対し,本件受信契約に基づき,上記未払受信 料合計10万9640円の支払を求める。(2) 予備的請求1(受信契約締結承諾の意思表示及び受信契約に基づく受信 料の請求)仮に,上記(1)アの受信契約の成立が認められず,主位的請求が認められ ない場合には,原告は,次のとおり,被告に対し,受信契約締結承諾の意思表示を 求めるとともに,当該意思表示により成立する受信契約に基づく受信料を請求する。ア 原告は,被告に対し,窓口変更通知により受信契約(衛星契約)締結の申 込みを行い,当該窓口変更通知は,窓口変更通知到達日に被告に到達したが, 被告は,受信契約の締結手続(受信契約書の提出)に応じない。しかして,放送法64条1項は,「協会の放送を受信することのできる受 信設備を設置した者は,協会とその放送の受信についての契約をしなければ ならない。」と規定しており,被告は,遅くとも受信機設置連絡日には肩書 住所地に衛星系によるテレビジョン放送を受信できるカラーテレビジョン受 信機を設置したのであるから,放送法に基づき,原告との間で受信契約(衛 星契約)を締結する義務を負い,したがって,被告は,原告の上記窓口変更 通知による受信契約の申込みに対し,承諾の意思表示をする義務を負う。そこで,原告は,被告に対し,上記受信契約締結の申込みに対する承諾の意思表示を求める。
イ 上記アの受信契約締結承諾の意思表示を命ずる判決が確定した場合には,原告と被告の間に受信契約(衛星契約)が成立することになるところ,その内容は, 別紙1「日本放送協会放送受信規約」(現行受信規約)記載のとおりであり,現行 受信規約5条1項には,「放送受信契約者は、受信機の設置の月から(中略)放送 受信料(消費税および地方消費税を含む。)を支払わなければならない。」と規定 されているから,原告及び被告の間では,当該受信契約は受信機の設置の日に遡っ て効力を有し,被告は,当該受信契約に基づき受信機の設置の月から受信料を支払 う義務を負うこととなる。そして,被告は,遅くとも受信機設置連絡日には肩書住所地に衛星系によ るテレビジョン放送を受信できるカラーテレビジョン受信機を設置しているから, 原告は,被告に対し,当該受信契約に基づき,受信機設置連絡日の属する月の翌月 から訴状提出日の属する月の前月までの期間について,当該時における受信規約が 規定するところに従い,受信料の支払を請求する。その請求額は,主位的請求にお ける請求額と同額である。(3) 予備的請求2(不当利得を理由とする受信料相当額の支払請求) 仮に,主位的請求及び予備的請求1が認められない場合,被告は,受信料を 支払うことなく原告の提供する放送番組を視聴できるという「利益」(民法703 条)を得たことになり,他方,原告は受信料の支払を受けることができないという 「損失」を被ったことになる。被告は,放送法64条1項(平成22年改正前放送 法においては32条1項)の明文の規定に違反して受信契約を締結せず,不当に受信料の支払義務を免れたのであって,このような被告の「利益」に「法律上の原因」 がないことは明白である。そこで,原告は,被告に対し,民法703条に基づく不当利得の返還を請求 する。その請求額は、受信機設置連絡日の属する月の翌月から訴状提出日の属 する月の前月までの期間に関する受信料相当額であり、主位的請求及び予備的請求1における請求額と同額である。 なお,主位的請求又は予備的請求1につき,一部理由がないとされる場合にも,当該部分について予備的に不当利得の返還を請求する。
(4) よって,原告は,被告に対し,1主位的請求として,本件受信契約に基 づき10万9640円の支払を,2予備的請求1として,放送法64条1項に基づ き受信契約締結承諾の意思表示を求めるとともに,当該承諾の意思表示によって成 立する受信契約に基づき主位的請求における請求額と同額の支払を,3予備的請求 2として,民法703条に基づき主位的請求及び予備的請求1における請求額と同額の支払を求める。

以 上
判例本文 判例別紙1

この判例ページのURL

LINEで送る
Pocket