平成25年2月15日判言渡 同日原本領収 裁判所書記官 平成22年(ワ)第3461号 損害賠償請求事件 口頭弁論終結日 平成24年11月9日判
住所
原 告 X1
 (以下「X1」という。)
住所
原告X1及ひ同X4法定代理人 兼原告 X2
 (以下「X2」という。)
住所
原告X1及ひ同X4法定代理人 兼原告 X3
 (以下「X3」という。)
住所
原 告 X4
(以下「X4」という。) 上記4名 訴訟代理人弁護士 大 政 徹 太 郎 同福森元住所
被告Y
同代表者理事長 Y1
同訴訟代理人弁護士 西 島 幸 延
主文
1 原告らの請求をいすれ棄却する。
 
2 訴訟費用は,原告らの負担とする。
 事実及ひ理由
第1 請求
1 被告は,X1に対し,2億2706万3575円及ひうち2億2346万6627円に対する平成20年5月3日から支払済て年5%の割合による金員を支払え。
2 被告は,X2,X3及ひX4に対し,それそれ1100万円及ひこれに対する平成20年5月3日から支払済て年5%の割合による金員を支払え。
 第2 事案の概要1 本件は,被告か設置するY高等学校(以下「本件高校」という。)及ひ本件 高校における部活動てある柔道部(以下「本件柔道部」という。)に1年生と して在籍していたX1か,神奈川県高等学校柔道大会兼関東高等学校柔道大会 の県予選会(以下「本件大会」という。)の前に行われたウォーミンクアッフ 練習において本件柔道部員に投けられた際,急性硬膜下血腫を発症した事故(以 下「本件事故」という。)に関し,本件柔道部の顧問教諭に本件事故の発生を 未然に防止すへき指導上の注意義務違反かあったとして,不法行為による損害 賠償請求権に基つき,被告に対し,X1か2億2706万3575円及ひうち 2億2346万6627円に対する不法行為の日てある平成20年5月3日か ら支払済て民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を,X1の両 親てあるX2及ひX3並ひにX1の妹てあるX4か,それそれ1100万円及 ひこれに対する不法行為の日てある平成20年5月3日から支払済て民法 所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求た事案てある。2 前提事実(証拠の記載のないのは,争いのない事実てある。) (1)当事者等ア X1は,平成5年3月23日にX2及ひX3との間の子として生れ,本 件事故発生時には15歳てあった。X1は,平成20年4月8日(以下,年 
度の記載のない日時は,平成20年を指すのとする。),本件高校に入学 し,同月9日,本件柔道部に入部した。X1は,本件柔道部に入部する以前 に柔道の経験はなかった。イ X4は,原告の妹てある。
ウ 被告は,本件高校の設置者てある。
エ 本件高校の教諭てあるA(以下「A教諭」という。)及ひB(以下「B教諭」という。)は,本件事故発生時,いすれ本件柔道部の顧問を務ていた。
オ C(以下「C部長」という。)は,柔道5段を有し,本件事故当時,神奈川県高等学校体育連盟柔道専門部長を務,本件大会の大会委員長として,本件大会に出席していた(甲26,証人C)。
 (2)X1は,4月16日の柔道の練習により投けられ,頭痛を自覚したことから,同月18日の練習を見学し,同月19日,練習を欠席して横浜宮崎脳神経 外科病院を受診した。X1は,同院において,脳震盪と診断され,頭痛に対し て鎮痛剤の処方を受けた(甲22)。(3)X1は,5月3日,本件大会に選手として出場することを目的とせす参加 した。た,本件大会には,B教諭か参加した。(4)X1は,本件大会の試合前に,本件柔道部員て本件大会当時本件高校1年 生てあったD(以下「D」という。)とウォーミンクアッフとして投け込練 習を行ったか,Dから大外刈り及ひ払腰の打ち込により投けられた後,し かこんて倒れた。X1は,救急車て横浜労災病院に搬送され緊急入院し,同 院において急性硬膜下血腫と診断され,開頭血腫除去術等の施術(以下「本件 手術」という。)を受けた(甲30の2)。(5)原告は,上記施術後,次の病院て入院治療を受けた(甲5ないし16(枝 番を含。以下同し。),弁論の全趣旨)。ア 5月3日から6月30日 横浜労災病院
 
イ 6月30日から9月1日
ウ 9月1日から同月18日
エ 9月18日から同月26日
オ 9月26日から11月3日
カ 11月3日から平成21年7月10日 キ 同年7月10日から同年9月30日 ク 平成22年1月6日から同月25日 ケ 同年2月12日から同年3月3日初台リハヒリテーション病院 横浜労災病院 西横浜国際総合病院 横浜労災病院 西横浜国際総合病院 鶴巻温泉病院横浜労災病院
日本大学医学部附属板橋病院 (6)原告は,平成21年9月10日,鶴巻温泉病院において,急性硬膜下血腫 後遺症による意識障害のた,発語なく,経口摂取は困難てあり,尿失禁,四 肢麻痺の状態て,右上肢は痙性か強く伸展しており,食事,入浴,用便,更衣 について常に介護か必要て,回復の見込はほとんとないとして,症状固定と診断された(甲16)。
 (7)X1は,独立行政法人日本スホーツ振興センターから,災害共済給付に基つく医療費給付として292万2560円,障害見舞金として3770万円の 合計4062万2560円を受領した。た,X1は,公益財団法人全日本柔 道連盟(以下「全日本柔道連盟」という。)から障害補償・見舞金制度に基つ く補償金・見舞金として2500万円を受領し,神奈川県高等学校体育連盟か ら傷病見舞金制度に基つく見舞金として130万5000円を受領した。(8)X1は,本件事故後,横浜労災病院に救急受診して入院したか,救急受診 時には,意識レヘルJCIII-200,除脳硬直,両側瞳孔散大の状態てあっ た(乙4の2)。X1は,本件手術を受けたか,その際に,静脈洞に注く架橋 静脈かいたるところて断裂し,多量の出血か頭蓋内に認られ,既に血腫の量 多量てあり脳ヘルニアを起こしていた(乙4の1)。X1の受傷機転については争いかなく,X1の受傷は,急性硬膜下血腫を原 因とするのてあるか,その急性硬膜下血腫は,X1か,4月16日,本件柔 
道部の練習中に投けられることにより架橋静脈に微小な損傷を負うことて架 橋静脈か脆弱化し,その損傷に加え,本件大会前の練習において投けられた際 に頭部に加えられた回転加速度によって引き起こされたのてある(第3回弁 論準備手続調書参照)。3 争点及ひ争点に関する当事者の主張 (1)B教諭の指導義務違反の有無(原告らの主張) B教諭は,本件柔道部の顧問として,生徒の安全にかかわる事故の危険性をてきる限り具体的に予見し,その予見に基ついて当該事故の発生を未 然に防止する措置を執り,クラフ活動中の生徒を保護すへき注意義務を有 する。すなわち,1B教諭は,体格,体力,技能か十分てはない初心者を 試合直前の投け込稽古に参加させるにあたっては,上級者から投け技を かけられて十分に受身か取れるかとうか,自ら練習状況を監視・指導す へき義務,2仮に,を得す自ら練習状況を監視・指導てきないのてあ れは,他の部員に対し初心者は強く投けつけないよう適切かつ具体的な指 示をするなとして,初心者か上級者から投け技をかけられて十分に受身 か取れるよう,練習状況を指導すへき安全配慮義務,3柔道のような内在 的に頭部外傷への危険を伴うスホーツにおいては,一度目の衝撃により脳 震盪様の症状か認られた際に,競技を継続して行った場合,二度目の頭 部への衝撃によって,重篤な頭部外傷を発生する危険性かあるのてあるか ら,生徒か脳震盪様の症状を呈した場合には,競技に復帰する際には,メ ティカルチェックを踏え慎重に判断して,重篤な頭部外傷の発生を回避 する安全配慮義務を有するところ,B教諭は,X1か4月16日の練習て 投けられて頭を打ち,脳震盪を起こしたことを知っていたにかかわらす, X1を同月23日から通常稽古に参加させた上,本件大会前のウォームア ッフ練習において,本件大会の試合に大将として出場する予定てあり,X 
1と体格差及ひ柔道の経験・技能に格段の差かあり,かつ,利き手か異な るた受身を取ることか困難な喧嘩四つの態勢をとらさるを得なくなるD と組せて,Dから相当強い勢いて投けられるに至ったのてあるから,B 教諭には,上記1ないし3の安全配慮義務を怠った過失か認られる。(被告の主張)
ア 1及ひ2について
本件大会前のウォーミンクアッフ練習は約束稽古てあって,受身を取る ことか容易な練習てあり,なんら危険を伴う練習てはない上,X1は,本 件柔道部に入部してから1か月間の間,B教諭から慎重かつ段階的な指導 を受けて練習を行い受身の技術を習得しており,上記練習を行う上て危険 はなかった。た,本件事故は,単なるウォームアッフ練習中に発生した のてあり,DかX1を著しい速度て投けたことはなく,X1かDの投け によって頭部を打ち付けたことない。イ 3について B教諭は,X1から,医師か脳震盪について特に問題かないと言っていた旨報告を受け,X1は,同月23日から10日間以上にわたり本件柔道 部の練習に出席して何ら問題なく稽古を行っていたこと,脳震盪症状の出 現から本件大会か2週間以上経過していたこと,脳震盪症状は柔道の練習 において頻繁に認られるありふれた症状てあることからすれは,B教諭 か,X1か脳震盪の診断を下されていたからといって,本件大会前のウォ ーミンクアッフの練習に参加させた判断か誤った判断てあるといえない。ウ 上記事実に加え,X1の頭部傷害の原因か,二度目の受傷によって頭部 に生した回転加速度によるのてあり,その回転加速度極て緩い回転 力てあると考えられることからして,B教諭に,本件大会前のウォーミ ンクアッフの練習において,X1とDを組せたことて,X1に急性硬膜 下血腫か惹起されると予見することは不可能なのてあって,B教諭に安全 
配慮義務違反を認ることはてきない。
 (2)B教諭の指導義務違反の過失とX1の損害との因果関係(原告らの主張) B教諭か適切に監督ないし指示をしていれは,X1かDと投け込稽古をすることはなかったのてあるから,B教諭の過失と原告らの損害との間に因果関係は認られる。 (被告の主張)
仮に,B教諭に原告らか主張するような注意義務違反かあったとして, そのような注意をすれは事故か回避てきたとは言えないから,注意義務違 反と原告らの損害との間に因果関係は認られない。(3)損害 (X1の主張)
本件事故によりX1に生した損害は次のとおりてあり,損害額の合計(但 し,後記キの確定遅延損害金を除く。)は2億2346万6627円てある。ア 治療関係費 1838万5497円 (ア)症状固定前及ひ固定後の治療費は,別紙「治療費一覧表」及ひ別紙「症状固定後の治療関係費」に記載のとおり,各1096万8019円及ひ138万6005円てある。
 (イ)X1は,寝たきりの状態にあったことから近親者の付き添いは必須てあって,その付添介護費本件事故と相当因果関係を有する損害てある と認られる。その費用は,日額1万円として496日間の入院により, 合計496万円となる。(ウ)入院雑費は,日額1500円か相当てあり,496日間の入院機関の 合計額は,74万4000円となる。(エ)X1の治療には,頭蓋の保護のたの頭部保護帽,下肢の拘縮予防 のたの装具か必要てあり,これら装具の購入費用合計は27万872 
3円てある。
 (オ)X1の転院時の介護タクシー代として4万8750円か本件事故と相当因果関係を有する。
イ 将来の付添介護費 9650万1620円
(ア)原告の現在の症状は,生活の全般にわたって介護か必要な状況にあり, 将来にわたって介護か必要不可欠てあり,将来の付添介護費は,本件事 故と相当因果関係を有する損害てある。(イ)そして,X1の家族かX1を自宅において介護する希望を持っている ことを考慮すると,X2か67歳になるての自宅における家族介護の 費用は,3612万9890円(=日額1万円×365日×9.898 6(14年間に対応するライフニッツ係数))となる。た,X2か6 7歳となって以降の職業介護人による介護費用は,6037万1730 円(=日額2万円×365日×(18.1687-9.8986)(上 記14年間を控除した49年間に対応するライフニッツ係数))となり, 将来の付添介護費の合計は9650万1620円となる。ウ 後遺症逸失利益 9070万2070円 X1は,症状固定時において16歳てあり,後遺障害等級第1級てあるから,労働能力喪失率は100%てある。基礎収入を平成20年度賃金セ ンサス全労働者平均年収額550万3900円,ライフニッツ係数を16. 4796(就労期間の始期を18歳,終期を67歳とする。)として計算 すると,原告の逸失利益は9070万2070円となる。エ 入通院慰謝料 350万円
オ 後遺症慰謝料 3500万円
カ 上記アないしオの合計額2億4408万9187円から,X1か,独立行政法人日本スホーツ振興センターから災害共済給付に基つく医療費として 合計292万2560円,障害見舞金として3770万円の合計4062
万2560円を受領しており,それらを損益相殺すると,X1の損害額は2億0346万6627円となる。
キ 確定遅延損害金 359万6948円
カの災害共済給付金に対する本件事故の日から給付金か給付された日 ての年5%の割合による遅延損害金は,別紙「災害共済給付金及ひ確定遅 延損害金一覧表」に記載のとおり,359万6948円となる。ク 弁護士費用 2000万円 本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は,本件の難易度等を考慮して,2000万円か相当てある。
 ケ 損益相殺について
被告は,全日本柔道連盟からの補償金・見舞金2500万円及ひ神奈川県 高等学校体育連盟からの見舞金130万5000円について損益相殺を主 張するか,上記見舞金等は,損害の填補を目的としたのということはて きないから,これらを損害から控除することは許されない。(X2,X3及ひX4の主張) 本件事故により,X1か一生介護を要する障害を負ったことなとに鑑れは,民法711条所定の近親者てあるX2及ひX3は,本件事故によって,X1か死 亡したときに比肩しうるほとの精神的の苦痛を受けたということかてきるから, それを慰謝するに足りる慰謝料として1000万円か相当てある。た,X4は, X1と民法711条所定の近親者と実質的に同視し得る身分関係を有する者とし て,X2及ひX3と同様の慰謝料を被告に対し請求てきる。そして,上記原告ら か負担する各弁護士費用のうち,各100万か相当因果関係にある損害といえる。(被告の主張) 上記X1の主張カについては,X1は,損害の填補として,独立行政法人スホーツ振興センターから4062万2560円の支払を受けたほか,全日本柔道連 盟から補償金・見舞金2500万円,神奈川県高等学校体育連盟から見舞金13
0万5000円か支払われているのてあり,その合計は6692万7560円と なり,同額を損益相殺すへきてある。た,原告らは,本件事故前日及ひ当日において頭痛等の症状かあることを本 件高校に報告すへきところ,これを怠っているのてあるから,相当程度の過失相 殺かされるへきてある。第3 判断
1 認定事実
証拠(甲3,22,26ないし33,39ないし41,乙1,3ないし5,1 1,13,14,16,21,22,29,33,証人C,証人D,証人B,X 2,X3)及ひ弁論の全趣旨によれは,次の事実か認られる。(1)本件柔道部員等
ア 本件柔道部には,本件事故当時,男子部員か6名おり,部長を3年生のEか務,2年生には,F,G及ひHかおり,1年生には,X1及ひDと女子部員のIかいた(甲3,証人D)。
イ X1は,本件事故当時,身長164cm,体重52kgてあり(争いかない),Dは,身長170cm,体重105kgてあった(甲3)。Fは,身長168cm,体重55kgてあった(甲3)。
ウ Dは,中学校1年生から柔道を習い始,中学生の頃には高校生を相手として乱取り練習を行っており,本件事故当時は初段相当の実力を有してお り(甲3,証人B,X2),本件大会には本件柔道部の大将として出場す る予定てあった(争いかない)。エ E,F,G及ひHは,本件事故当時,柔道初段てあった(甲3)。オ B教諭は,中学3年生から柔道を始,平成11年4月には3段の段位を 取得し,同16年4月より本件高校に就職し,本件柔道部の顧問となり,同17年からは,同部の監督を務た(乙21,22,証人B)。
 (2)本件大会以前のX1の練習内容等
ア 打ち込練習及ひ投け込練習とは,柔道の練習において,攻防をハター ン化して練習する,いわゆる約束稽古といわれる種類の練習てあり,それら 練習において投けられる者は,相手方か繰り出す技とタイミンクを予想する ことかてきるた,強引な技をかけられ無理な体勢の受身を余儀なくされる ということかないことから,攻撃と防御をランタムに表裏一体て行う実践練 習てある乱取り練習と比へると安全な練習方法てある(乙11,証人C)。イ 本件事故当時,高等学校における柔道部の練習において,体重か倍程度異 なる者同士か組んて練習を行うことは通常てあった(証人C)。ウ X1は,4月9日,本件柔道部に入部し,同月9日から同月16日ての 間,毎日本件柔道部の練習に参加した。X1は,同月9日から同月14日 ての6日間は,受身の練習のを行った。同月15日及ひ同月16日の練習 ては,受身の練習に加えて,打ち込練習及ひ投け込練習を行った(乙1, 5,29,証人D,証人B)。エ 喧嘩四つとは,右組の選手と左組の選手か組んた場合の組手のこと をいい,通常の組手に比し,受身を取ることか難しくなる(証人C)。X 1は,右組てあり,Dは左組てあって,両名か組んた場合には喧嘩四つ となる(証人C)。た,F左組てあって,X1とFか組んた場合に 喧嘩四つとなる(証人B)。(3)X1の本件大会前の症状等
ア X1は,4月16日の練習において投けられた後,頭痛を認,以後頭痛か継続した(なお,X1か,当該練習において頭部を畳等に打ち付けた事 実については,これを認るに足りる証拠はない。)。そして,4月18 日の練習中に頭痛か増悪したことから,その旨をA教諭に報告し,その後 練習を見学した(甲30の1,乙16,21,証人B,X3)。イ X1は,4月19日,横浜宮崎脳神経外科病院を受診し,担当の医師に対 し,同月16日に柔道の練習て投けられ,帰宅してから頭部全体の頭痛か 
認られたこと,柔道の練習ては頭部を打ったか否かは判然としない旨を 話した(甲30の1)。同院の担当医師の指示により,X1に対し頭部CT 検査等か施行されたか,諸検査において異常所見は認られす,X1は脳 震盪と診断され,鎮痛剤を処方され帰宅した(甲22,30の1,X2, X3,弁論の全趣旨)。ウ X1は,同月20日,頭痛の症状か軽減したことから,関東大会個人の部 に出席し,見学した(甲39,乙1,乙16,証人D,証人B,X3)。
 X1は,この際,B教諭に対し,概要,頭痛に対して病院を受診して医師 の診察を受け,脳CT検査を施行したか,異常所見は認られす,脳震盪と 診断されたのて,大丈夫てある旨の報告を行った(甲39,証人B,X3)。エ X1は,4月21日,22日に,本件高校か主催する宿泊研修に参加し, スホーツインストラクターの指導の下て,レクリエーションとして走った り,綱引きをするなとの運動を行ったか,引率の教諭に対し,何らかの症 状を訴えることはなかった(乙16)。オ X1は,4月23日から同月26日て,た,同月28日から5月2日 ての合計9回の練習に参加し,他の柔道部員と同様の通常練習に参加し た(乙1,証人D,証人B)。上記9回の練習のうち,A教諭か4回,B 教諭か5回,本件柔道部の指導を行い,本件柔道部員らに乱取り練習含 た練習を行なわせた。B教諭は,同月24日,X1に対し,打ち込練 習はなるへく1年生同士てるように指示を出した(乙1)。X1は,上 記練習に参加した際に,A教諭及ひB教諭に対し体調の不良を訴えること はなかった(乙1,証人D,証人B)。カ X1は,4月26日の練習後,頭痛か再発した旨のメールをX3に送った (甲39,X3)。キ X1は,5月2日,本件高校から帰宅後,頭痛,吐き気及ひ食欲不振をX 3に伝え,食事を摂らすに就寝した(甲39,X3)。 
ク X1は,5月3日,起床後の頭痛は相当程度軽減し,吐き気消失してい たか,食欲は低下したてあった(甲39,X3)。ケ X1は,4月20日以降,B教諭をはしとする本件高校関係者に対し, 頭痛等の症状を訴えなかった(証人B,弁論の全趣旨)。(4)本件事故当日の練習の経緯等
ア 本件柔道部は,5月3日午前9時頃,本件大会の会場てある神奈川県立武道館の柔道場(以下,「本件武道館」という。)に集合した(甲27)。
 本件武道館は,別紙添付本件武道館図面のとおり,小道場に遠いところか ら,順に第1ないし第4試合会場か並んて配置しており,本部席か第2試 合会場と第3試合会場に近いところに設置されていた(甲28,乙3)。イ 本件柔道部員らは,同日午前9時55分頃から,第4試合会場において ウォーミンクアッフのた,打ち込及ひ投け込練習等(以下「本件練 習」という。)を行った。X1は,本件練習か開始されてから,本件高校の制服を着て荷物番をし ていたか,Dに呼はれたことから,柔道着に着替え,準備運動をすること なく,本件練習に参加した(証人C)。なお,B教諭は,本件練習か行わ れている際,第4試合会場から約15m離れている本部席に在席しており, 本件練習を見ることかてきる場所にいなかった(甲26ないし28,X3, X2。この点,Dは,X1か柔道着を着て荷物番をしていたと証言するか, 後記ウて説示するとおり,Dの上記証言を信用することはてきない。た, B教諭は,本部席から本件練習を見ることかてきたと証言するか,その内 容は一貫性を欠き不合理てあることから,信用することかてきない。すな わち,B教諭は,5月7日に作成した「報告書」と題する書面(甲27, 以下「本件報告書」という。)においては,X1か倒れたのは第4試合会 場てある旨を記載しているか,9月6日に作成した本件武道館の図面にお いては,X1か倒れたのは,第3試合会場の第2試合会場寄りてあったこ 
とを書き込(乙3),さらに,当法廷における証言においては,第3試 合場の「あたりという言い方しかてきせん。」と述へるなと,本件事故 発生位置に関する証言の内容に一貫性を欠いているところ,B教諭は,上 記一貫性を欠いた理由について,上記図面への書き込を,本件柔道部員 から話しを聞いたことに起因すると述へるか,本部席から本件練習を見る ことかてきる位置にいたのてあれは,本件事故発生位置について自ら確認 することは容易てあるのに,本件柔道部員から聞いた内容をって上記図 面へ書き込んたと述へる点は,不自然不合理てあって,上記一貫性を欠い た理由について合理的な理由かあるとはいえない。)。ウ X1は,本件練習において,最初にFと組んて投け込練習を行い,背負 い投けて1回投けられた後に,Dと組んて投け込練習を行った(甲27, 証人D)。Dは,手加減をすることなく全力てX1を,下かる相手に対し て足をかけて後方に倒す柔道の投け技の一つてある大外刈りて投け,その 後,相手を腰の片側にのせた後に,相手の足を払い上けて回し込なから 前に投ける柔道の投け技の一つてある払い腰て投けたところ,X1はし か込んて倒れ,起き上かれなくなった(乙29,証人D。この点,被告 は,Dか全力て投けたことを否認し,Dの証言及ひ陳述書(乙29)の記 載はそれに沿うのてある。しかしなから,Dの証言及ひ陳述書の記載は, 1神奈川県警察港北警察署署員か,本件事故後,武道館に臨場しDから事 情を聴取した事実(下記キ)を「いいえ,ありせん。」と確に否定す るなと,体験した者の記憶から容易に消え去るとは考え難い事実に関する 証言内容か,他の証拠によって認られる事実と反している点,2Fの身 長体重について上記認定事実(1)において認られる事実と大きく異な る証言をする点,3柔道の大会へ出場したか否かという事実は通常記憶に 残りすい種類の事実てあるにかかわらす,4月20日の関東大会個人 の部に出場したか否かは記憶にないと証言する点,4横浜労災病院におい 
て,Dの両親と本件高校の校長と同席していたにかかわらすX2及ひX 3に意に反した発言を強制的に言わせられたと証言する点なと,Dの証言 及ひ陳述書の記載の内容は,重要な部分について不自然不合理な内容とな っており,そのような証言を行う証言態度は真摯なのとは到底いえす, その証言は,全体として信用することはてきない。)。エ 神奈川県立小田原高校の柔道部顧問てあるJ(以下「J教諭」という。) は,X1か倒れたことを神奈川県立市ヶ尾高校の生徒から聞き,第4試合 会場に駆け付けた(甲26,35,証人J)。その後,Dから報告を受け たB教諭か,第4試合会場に駆け付けた(証人D)。オ B教諭は,携帯電話て救急車を要請し,X1と救急車に同乗し,搬送先 の横浜労災病院において救急担当医師に対して本件事故の状況について説 を行った(証人B,甲30の2)。カ B教諭は,同日午前10時過きにX3に電話てX1か投けられて倒れ, 救急搬送された旨を伝えた(甲39,X3)。キ 神奈川県警察港北警察署署員は,本件事故後,C部長から通報を受け, 本件武道館に臨場し,Dら本件柔道部生徒から事情を聴取した(証人C, 甲27,40。この点について,Dは異なった証言をするか,C部長か6 月13日に作成した事故報告書てある甲第40号証には,「港北警察署署 員か武道館に来館し,横浜商科大学高等学校柔道部生徒なとから事情を聞 いた。」との記載かあること,臨場した警察官か本件事故に関与したDか ら事情を聴取するのは自然てあるといえることなとからすると,上記Dの 証言は信用することかてきない。)。(5)本件事故後の経緯
ア X2及ひX3(以下「X2ら」という。)は,5月4日,事情を知るた,Dから直接事情を聴きたい旨を本件高校に対し電話て伝えた(X2,X3)。
 イ Dは,5月5日,Dの両親及ひ本件高校の校長てあったKと共に横浜労災 
病院にX1の見舞いに訪れ,同院の集中治療室の控え室において,X2ら から本件事故の経緯について事情を聴かれた。Dは,その際,X2らに対 し,本件練習においてX1を手加減せすに投けた旨話した(甲39,証人 B,証人D,X2,X3)。ウ 本件高校は,本件柔道部部員らに対し,X1の見舞いに行くことを禁しる 指示をした(X2)。エ C部長は,5月7日,本件高校を訪れ,本件報告書を受け取った(証人C)。
 C部長は,その後,自らか本件事故当日に本件柔道部員から聞いた内容と 本件報告書の内容との間に異なる点か認られることから,本件高校に電 話し,B教諭に本件事故の事実関係について問い合わせたか,電話口から B教諭以外の者か,「本件高校の主張する事実か正しくそれ以外の事実を 受け付けない」旨話しているのを聞き,本件高校からそれ以上の事情を聴 くことを諦,神奈川県高等学校体育連盟会長宛の事故報告書(甲40) を作成した(証人C)。(6)X1の退院後の病状 X1は,平成21年9月30日に鶴巻温泉病院を退院後,平日は2か所の介護施設に通いなから,その余は自宅にてX2らか介護を行っているか,自らの 意思て身体を動かすことかてきないことから,介護は,おつ交換,着替え, 褥瘡予防のたの体位交換,胃瘻による栄養摂取,車いすを利用した移動なと の生活全般について必要てある。X2は,本件事故以前は,コルフのレッスン フロとして週5日程度稼働していたか,本件事故後においては,上記介護のた ,週に1,2日程度に減らして稼働している(甲36,37,39,X2, X3)。(7)脳震盪についての知見 脳震盪とは,頭部に外力か加わることによって起こる,意識障害,記銘力障害を中心とした一過性の脳機能障害をいう。脳震盪は,意識障害を伴わない 
軽傷ののかほとんとてあるか,重度の脳震盪は急性硬膜下血腫の発生率との 間て正の相関か認られる。た,たとえ軽傷の脳震盪てあって,頭部外傷 か繰り返されることによって,脳へのタメーシか蓄積され,不可逆的,器質的 な脳損傷,神経機能障害をきたすことかある。特に,軽傷の頭部外傷を受けた後に,その症状か完全に消失しないうち,あ るいは消失した直後に頭部外傷を受け,重篤な状態に陥るのをセカントイン ハクト症候群という。二度目の外傷自体軽度なのか多く,急激に昏睡状態 に陥り,死亡率は50%と報告されている重篤な症状か認られる。セカント インハクト症候群において,一度目の頭部外傷後に,頭痛を主体とした脳震盪 と同様の症状を呈すことか多いとの報告ある。それゆえ,脳震盪の症状か, コンタクトスホーツによってたらされた場合には,脳震盪後の競技への復帰 時期を適切に判断する必要かある(甲29,乙13,14)。実際に,ラクヒ ーフットホールの国際競技規則ては,試合,練習を問わす,脳震盪を起こした 場合には,3週間以内の復帰を禁止し,復帰に際しては専門医の診断を必要と している(甲29)ように,競技への復帰は,一定期間の休息を設けた後,段 階的に復帰することか望しいと考えられている(乙13)。以上の,脳震盪及ひセカントインハクト症候群に関する知見は,概ね日本 臨床スホーツ医学会学術委員会脳神経外科部会か平成15年5月に出版(第2 版)した「頭部外傷10か条の提言」(甲29)において既に示されていた。なお,セカントインハクト症候群の原因は未た判していないか,一度目 の頭部外傷により薄い急性硬膜下血腫かたらされ,二度目の頭部外傷により, 癒着した架橋静脈から致命的な大出血を起こすことか原因てあるとの説示 されている(乙14)。(8)柔道部顧問教諭の安全指導に関する指針等
ア 全日本柔道連盟作成の柔道指導における指針について
全日本柔道連盟に加盟する団体の指導者に,柔道部の指導について周知す 
ることを目的として,平成18年4月に全日本柔道連盟から出版された「~ 事故をこうして防こう~柔道の安全指導」の初版(乙11,以下「柔道の安 全指導初版」という。)には,次の記載かある。(ア)「1 指導者の責任と安全配慮義務」の「(1) 指導者への期待」において,「柔道の指導者に対する社会の期待は大きく,それたけ重い 責任かありす。」「特に柔道は,相手を投け,抑え込,首を絞, 関節を挫く技を用いて攻防を行うのて,他の運動に比へ危険度は高いと 考えられす。したかって,柔道の指導者は,こうした運動特性を把握 し,内在する危険性を回避することによって事故防止に万全を期すこと か求られていす。」(イ)同しく「(3)指導者に求られる安全配慮義務」「危険予見義務 柔 道における危険要因を予知,予見して安全を確保する義務」「危険回避 義務 柔道における危険要因を取り除いたり,要因か重なり合わないよ う危険を回避する義務」(ウ)「3 柔道て起こりすい怪我と事故」「(1) 怪我と事故の特徴」 「1 頭部の怪我 後頭部を強打すると,血管か切れたり(脳出血), 脳実質の損傷(脳挫傷)か起こることかありす。た,一時的に意識 かなくなり,頭を打った前後のことを後て全く覚えていない(逆行性健 忘)ということか起こることありす。頭部の怪我は,相手に投けら れたとき,受身かてきすに後頭部を打つことによって起こるケースかほ とんとてす。」(エ)同しく「(2) 怪我と事故の例」において,中学校の柔道部の練習 中に後頭部を打撲し,急性硬膜下血腫と診断されて入院し,退院後に主 治医の承諾のとて行った練習て頭部を打撲し,急性硬膜下血腫により 意識不となった事例の記載(オ)「4 怪我事故を未然に防くたに」「(3)練習に必要な配慮」
「4初心者への配慮」「怪我事故は,初心者か周囲に合わせようとし て無理をしたり,経験者か初心者への配慮を欠いたときに起き易くなり す。」(カ)同しく「(4)安全に配慮した指導例」には「3攻防方法を身につけ る約束練習」として「約束練習は,技能レヘルに応した多様なハターン 化か可能てあり,安全な乱取かてきるようにするたには省略てきない 練習方てす。」(キ)「(5)健康管理とコンティショニンク」「健康観察のチェックホイ ント例」には,頭痛の症状の有無の記載柔道の安全指導初版は,平成21年7月に改訂され(甲32,以下「柔道 の安全指導改訂版」という。),平成23年6月に再改訂(甲33,以下「柔 道の安全指導再改訂版」という。)されているか,柔道の安全指導再改訂版 には,柔道の安全指導改訂版に加えて,次の記載かある。
 (a)「(2)怪我事故の特徴と事例」の「1頭部の怪我」「ア.頭部の怪我の種類」に「・脳しんとうか多いことは,重大な急性硬膜下血腫な と起こり得ること。」「・脳しんとう症状の中には,見当識障害ほ ーとするなと軽い意識障害と区別かつかない症状,頭痛・嘔吐なと頭蓋 内圧亢進を疑う症状含れており,発症直後は硬膜下血腫なとの重大 なの疑う必要かあること」「結果的に完全に回復して脳しんとう か疑われたときは,きちんと医師にかかり頭部の画像検査(CTたは MI)を受け,異常かないことを確認しておく必要かありす。た, 脳しんとうを起こした後の練習への復帰に関して,脳しんとうの症状 程度,頭部画像検査の結果によって考慮すへきてす。」(b)同しく「イ.頭部外傷の重大事故の特徴」「これて「障害補償・見 舞金制度」に報告された重症の頭部外傷32例の解析によって,以下の ことからかとなっていす。」「(ア)事故は初心者,特に中学1年
生高校1年生か乱取りを始た5~7月ころに多く見られす。」 「(イ)大外刈大内刈,背負投なとて投けられ後頭部を打撲する場合 に多く見られす。」「脳か前後方向にゆすふられる力(回転加速度損 傷)て脳表と硬膜(骨に固定されている)間の架橋静脈か断裂し,急性 硬膜下血腫か発生する場合か多く見られす(87.5%)」,「(オ) 過去に同しような頭部外傷を起こしている場合10%ありす。」(c)「5 怪我事故か起きた時の対応」「(1)応急処置の仕方」の「2 頭部打撲異変発見直後の対応」「イ.脳しんとう症状かある場合」「病 院て異常なしと診断されて,1~数日間は練習を休,再開前には, 再度医師の診断を受ける必要かありす。」(d)同しく「3頭部外傷後の練習休止と復帰の基準」として,「イ.脳し んとう」「医師の診察と頭部画像検査て脳しんとうと診断された場合に は,2~4週間練習を休止しす。」「練習復帰前には,頭痛気分不 良なとかないことを確認し,再度医師の診察と頭部画像検査を受け,医 師の許可を得る必要かありす。頭部画像検査て異常かなくて,頭痛 疲れなとの自覚症状かあれは,練習復帰は許可しないようにしす。」イ 神奈川県高等学校体育連盟による柔道指導の指針について (ア)神奈川県高等学校体育連盟柔道専門部は,平成20年5月8日頃,本 件事故を受けて,本件高校を含上記連名加入高等学校の柔道部顧問に 宛てて,「練習時等の事故防止について」と題する文書(甲41)を送 付し,「生徒の体力技能等を考慮した練習計画を立てる」こと,「約 束練習及ひ自由練習なとては,生徒の体力差を配慮して行う」こと,「初 心者については,安全に対処てきる技能を十分に身につけたうえて,約 束練習及ひ自由練習へ参加させる」ことなとを柔道部顧問,コーチ及ひ生徒に周知するよう指導した(甲41,証人C)。
 (イ)神奈川県高等学校体育連盟柔道専門部は,平成24年4月7日,本件
高校を含上記連名加入高等学校の学校長に宛てて,「試合,練習中に 脳震盪を起こした生徒の対応について」と題する文書(乙33)を送付 し,柔道の試合及ひ練習中に脳震盪を認た生徒の対応について,1か 月以内に練習及ひ大会て脳震盪を認た選手か大会に出場する場合又は 練習を再開する場合には,脳神経外科医の許可を義務つける旨を柔道部 顧問,コーチ及ひ生徒に周知するよう指導した。なお,上記文書の送付 以前に,神奈川県高等学校体育連又は全日本柔道連盟等か,柔道の練習 て脳震盪を認た生徒の対応について,何らかの指針を示したことはな かった(乙33,証人B,弁論の全趣旨)。2 争点(1)について (1)柔道部指導教諭の注意義務
教育活動の一環として行われる学校の課外のクラフ活動(部活動)において は,生徒は,担当教諭の指導監督に従って行動するのてあるから,担当教諭は, てきる限り生徒の安全にかかわる事故の危険性を具体的に予見し,その予見に 基ついて当該事故の発生を未然に防止する措置を採り,クラフ活動(部活動) 中の生徒を保護すへき注意義務を負うというへきてある(最高裁判所平成18 年3月13日第二小法廷判・裁判所時報1407号145頁参照)。そして, 技能を競い合う格闘形式の運動(格闘技)てある柔道には,本来的に一定の危 険か内在しているから,柔道の指導,特に,心身共に発達途上にある高等学校 の生徒に対する柔道の指導にあっては,その指導に当たる者は,柔道の試合又 は練習によって生するおそれのある危険から生徒を保護するたに,常に安全 面に十分な配慮をし,事故の発生を未然に防止すへき一般的な注意義務を負う のというへきてあり,このことは,本件柔道部における活動のように,教育 課程に位置付けられてはいないか,学校の教育活動の一環として行われる課外 のクラフ活動(いわゆる部活動)について,異なるところはないというへき てある(最高裁判所平成9年9月4日第一小法廷判・集民185号63頁参 
照)。このように,柔道の指導に当たる者は,部活動において,柔道の試合又 は練習によって生するおそれのある危険から生徒を保護するたの一般的な 注意義務を負うところ,柔道は互いに相手の身体を制する技能の習得を中心と して行われるのてあることから,投け技等の技をかけられた者か負傷する事 故か生しすく,柔道における傷害により廃疾死亡に至る事故平成15年 からの8年間て86件発生しており,そのうち55.8%か中高生に発生して いる(甲33)という一般的状況下においては,指導教諭としては,健康状態 体力及ひ技量等の当該生徒の特性を十分に把握して,それに応した指導をす ることにより,柔道の試合又は練習による事故の発生を未然に防止して事故の 被害から当該生徒を保護すへき注意義務を負うというへきてある。したかって, 本件柔道部の顧問教諭てあるB教諭には,練習に参加したX1の健康状態等を 十分に把握し,それに応した適切な指導をして,練習から生するX1の生命及 ひ身体に対する事故の危険を除去し,X1かその事故の被害を受けることを未 然に防止すへき注意義務(以下「本件注意義務」という。)かあったというへ きてある。前記の原告か主張する,1自ら練習状況を監視・指導すへき義務,2練習状 況を指導すへき安全配慮義務,3生徒か脳震盪様の症状を呈した場合に重篤な 頭部外傷の発生を回避する安全配慮義務等は,いすれ本件注意義務の具体的 内容をなす注意義務として,柔道部指導教諭に認られるへきのということ かてきる。(2)B教諭の本件注意義務違反の有無
ア そこて,B教諭に本件注意義務違反かあったかとうかについて検討する。確かに,原告らか主張するように,1B教諭及ひA教諭(以下「B教諭ら」 という。)は,4月20日に,X1から同人か病院てその前日に脳震盪と診 断された旨を伝え聞いていたにかかわらす,X1か頭痛を認た練習から 僅か7日後てある同月23日から通常の練習に参加させ,その後,本件練習 
に参加させ(上記認定事実(3)イないしオ,同(4)アないしウ),2 X1は,本件事故の約1か月前に柔道を始たはかりてあり,X1とDとの 間には大きな技能格差及ひ体格差か存在し(上記前提事実(1)ア,上記認 定事実(1)),Dは,1年生てはあるか,対外試合を直前に控え,大将 を任せられていた(上記認定事実(1))のてあって,Dか試合に準した態 度て本件練習に臨ことを想像すること可能てあったという余地ある。イ しかしなから,本件事故当時,高等学校の柔道部顧問教諭か指導方針と して参照すへき資料といえる全日本柔道連盟か出版する「柔道の安全指導」 は,平成23年改訂の柔道の安全指導再改訂版において初て脳震盪後の競 技復帰の危険性等について触れていること(上記認定事実(8)),神奈 川県高等学校体育連盟柔道専門部か本件高校を含上記連名加入高等学校の 柔道部顧問に宛てて,柔道の試合及ひ練習中に脳震盪を認た生徒の対応に ついて具体的な指針を示したのは,本件事故から約4年後てある平成24年 4月7日てあり,本件事故当時,脳震盪を認た生徒への対応について,具 体的な指針は存在しなかったこと,神奈川県高等学校体育連盟柔道専門部 のC部長,頭痛等の症状を認なけれは競技に復帰させることか一般的て あったと述へていること(証人C)なと併せ考えれは,本件事故当時,脳 震盪を起こした生徒を競技に復帰させる際に,如何なる手順を経て復帰させ るかについて,柔道部顧問教諭に一般的に共通した理解・指導方法か普及し ていたと認ることはてきないし,た,B教諭において,特に上記理解・ 指導方法を認識し得た事情かあったと認ることてきない(なお,脳震盪 とセカントインハクト症候群の関連については,平成15年5月に改訂され た「頭部外傷10か条の提言」において示されている(同(7))か,これ は,医療従事者を対象とした文献てあることから,それらの知見を前提とし た指導を行う注意義務か高校柔道部の指導教諭にあったとするのは相当てな い。)。た,B教諭は,X1から,頭痛のた病院を受診して脳CT検査 
を施行したか,異常所見は認られなかったとの報告を受け(同(3)ウ), その後,X1か頭痛等の症状を訴えることなかったこと(同(3)ケ)か らすれは,B教諭か,X1の架橋静脈か本件練習により加えられる回転加速 度によって断裂することを予見するのは困難てあったといわさるを得ない。そして,X1は,柔道を始てから最初の6日間は受身のを練習し, その後,乱取り練習を含た練習に参加していたこと(上記認定事実(2) ウ,同(3)オ)からすれは,X1か本件柔道部の練習において受身を取る 技術を有していたと推認することかてきること,X1は,4月23日以後 合計9日間通常の練習に参加しており,その際にはDと乱取り練習をしてい たことか推認され,本件練習において初てDと組んて練習したわけてはな いこと(同(3)オ),本件練習て行われた約束稽古は,乱取り練習に比 へると安全な練習方法てあること(同(2)ア),高等学校における柔道 部の練習においては,倍程度の体重差かある者同士か組んて練習を行うこと はあること(同(2)イ),B教諭か,4月24日に,X1に対し, 練習においてDを含他の1年生同士て組よう指導していたこと(同(3) オ),大会に出場する全ての選手か,試合前の練習において,試合に準し た激しい投け込をするということはてきないこと(証人C)なとからすれ は,B教諭に,X1とDを約束稽古において組せないように指導しなかっ たことについて,安全配慮義務を怠った過失かあったということはてきない。ウ 以上のとおりてあるから,B教諭に本件注意義務違反かあったと認るに は十分てないといわさるを得ない。第4 結論 よって,その余の点について判断するてなく,原告らの本件請求は,いすれ理由かないから棄却することとし,主文のとおり判する。
 横浜地方裁判所第8民事部

裁判長裁判官 小 川 浩
裁判官 村松多香子
裁判官 吉岡正豊
 
判例本文

この判例ページのURL

LINEで送る
Pocket