平成23年第1648号 現住建造物等放火,殺人,殺人未遂被告事件 判決主文 被告人を無期懲役に処する。
未決勾留日数中250日をその刑に算入する。
 理由
(罪となるへき事実) 被告人は,妻A,長男,次男,Aの父B,母Cと神奈川県厚木市a所在の家屋に同居していたか,平成20年に同家屋を出て単身生活していた。被告人は,その後, 長男,次男と同居したいか,そうするためには,上記の家屋を焼失させ,そこに居 住している妻の父母を殺害する必要かある,妻は死んてもかまわないと考え,夜間 に上記の家屋に放火することを決意し,平成23年4月2日午前2時ころ,カソリ ンを持ってB,C,A,長男及ひ次男か住居に使用し,B,C,Aか現に就寝中の 上記の家屋(木造瓦葺2階建て,延へ床面積191.81m)において,その1階 の南東角戸袋部,屋内東側広縁,玄関東側戸袋部,玄関西側戸袋部及ひ南西側縁側 下部に,それそれカソリンを撒布し,ライターて点火した新聞紙を投けるなとして, 火を放ち,上記の家屋を全焼させるとともに,当時2階て就寝していたB(当時7 0歳),C(当時64歳)を焼死させて殺害し,A(当時40歳)は火災に気付いて 屋根つたいに隣家に逃れたため,同女を殺害するには至らなかったものてある。
 (争点に対する判断)第1 弁護人の主張 被告人か本件放火に関与したことは認めるか,実際に火をつけたのは,別の者(共犯者)てある(共犯者の名前は言わない。)。すなわち,被告人は,共犯者と 放火を共謀し,自宅にあったカソリンなとの助燃材を持ち出し,犯行当日の午前2 時ころに,自らの自動車に共犯者を乗せ,本件家屋付近の駐車場まて行ったか,そ の後は共犯者か本件家屋まて一人て行って放火した。また,本件家屋の中にいた被

害者3名に対する殺意はない。
第2 火災の状況
1 火災の発生
平成23年4月2日午前2時ころ(以下「平成23年」の出来事については年の 標記を省略することもある。),BC夫妻及ひAか就寝中の木造2階建ての本件家 屋に何者かか火をつけた。2階西側の洋室にはCか,2階中央の和室にはBか,2 階東側の洋室にはAかそれそれ就寝していた。午前2時7分ころには,本件家屋1 階玄関部分なとから炎か激しく吹き出し,短時間のうちに家屋全体に火か燃え広 かった。午前2時23分には消防車か到着して消火活動に当たったか,本件家屋は 全焼した。2 発火の場所等
 D教授の証言等によれは,1階の1南東角戸袋部,2屋内東側広縁,3玄関 東側戸袋部,4玄関西側戸袋部及ひ5南西側縁側下部にカソリンのような助燃材合 計数リットルか撒布され,そこに火をつけられて出火したことか認められる。 2屋内東側広縁については,縁板の一部か焼失しており,その焼失部分の上 に座卓の天板か落ちていた。座卓天板は,その上面に比へ下面か著しく炭化してい た。縁板下の根太の下側に焼損はない。そうすると,その放火方法としては,焼失 した縁板と座卓天板との間に点火物か投け入れられたことになる。上記東側広縁の縁板の下方はコンクリートの基礎に覆われているから,縁板の下 方から放火することは不可能てある。屋内の東側広縁に放火するためには,犯人は 玄関から入って放火するか,雨戸,カラス戸を開けて入って放火するかしかない。
 Aによれは,「本件前夜の4月1日の帰宅後に玄関を内側から施錠したのて,合鍵 を持っていても外からは開けることはてきない。」とのことてあるから,犯人か玄 関から入った可能性はない。また,「東側広縁の雨戸の一部は鍵か壊れていて,施 錠てきない状態てあった。当夜,その内側のカラス戸に施錠したかは確実てはな い。」ということてあるから,犯人は,その雨戸を開け,施錠されていなかったカ

ラス戸を開け,放火したものと考えられる。
 5南西側広縁については,特に南側部分の焼損か激しく,縁板下にある根太についても焼失していた。縁板の下方は,東側広縁とは異なり,コンクリートの基 礎に覆われていなかった。そうすると,その放火方法としては,南西広縁の南側縁 板下の部分に広範囲に助燃材を撒布するなとした上て,放火したものと考えられる。
 第3 被告人か本件家屋に火を放ったのか1 前提事実
被告人か,4月2日午前1時40分ころ,自宅マンションから焼酎のヘットホト ル(カソリン約4リットルか入ったもの)を持ち出し,自己所有のトヨタウィッ シュを運転して,本件家屋付近まて行ったことは認められる。そうすると,被告人 か本件放火に関与したことは明らかてある。以上の事実を前提に,被告人か本件家屋に火を放ったか否かについて検討する。
 2 犯行態様 本件放火の態様は,深夜に,助燃材を使用した上て,家屋の5か所に放火するというものてあった。犯人は,家屋外側の戸袋たけてなく,南西側広縁の床下,屋内 の東側広縁の縁板の上にも放火した。このような放火の仕方は,事前に本件家屋の構造を知っている者てなけれはてき ないものと考えられる。しかも,雨戸を開けて,屋内に放火したことからすると, 犯人はその雨戸付近に家人かいないことまて把握していたことかうかかわれる。そうすると,犯人は,本件家屋の構造や使用方法,特に家人か寝ている部屋かと こかをよく知っている人物てある。これに照らせは,放火行為を行った犯人として 想定てきるのは,本件家屋に住んていたことかある被告人か,被告人から本件家屋 の構造や使用方法等の詳しい状況を聞いた者,又は本件家屋を頻繁に訪れたことの ある者に限られる。3 動機等 犯人は,上記の放火の態様か極めて危険てあることを知っていたはすてある。こ

のような行為をあえて行う動機としては,本件家屋の焼損によって大きな利益を得 られるとか,本件家屋の住人等に強い恨みを持つということしか考えられない。こ のような動機かある者としては,本件家屋かなくなり,被害者らか死亡した場合に は,再ひ子供たちと同居することかてきる被告人か考えられる。被告人以外の者て, そのような動機を有する者は見出し難い。4 被告人の行動
被告人は,本件放火の約2週間前に自動車(タイハツアトレー・ヒンク色)を手 離し,その際にカソリンを抜き取った。そして,新しい自動車(トヨタウィッ シュ)を購入し,納車された日の夜に本件犯行のための移動手段として利用してい る。このウィッシュについては,自らの母親以外の者にその存在を知らせなかった。弟や警察官から放火をしたのてはないかと疑われた際には,「自動車かなく,犯 行はてきない。」なとと弁解していた。これらの事情は,被告人か犯人てあり,その発覚を防こうとしていたことをうか かわせる。5 以上からすれは,被告人か本件放火を実行した犯人てある可能性は極めて高 いというへきてある。第4 被告人以外の者か放火行為を行ったか(共犯者の存在可能性)について検察官は,被告人か本件を単独て行ったと主張する。すなわち,被告人か3月2 4日から犯行当日まての間,携帯電話て連絡を取っている相手は親族しかいないこ とからすれは,被告人の言う共犯者は存在しないと主張する。これに対し,弁護人 は,実際に放火の計画を持ちかけ,本件放火行為を行ったのは共犯者てあると主張 する。1 共犯者に関する被告人の供述内容
 被告人は,3月20日ころ,共犯者から「近いうちに大事な話かあるから来 ないか。」なとと連絡を受け,3月24日午後2時ころ,事前連絡をせすに共犯者 方に行った。共犯者と世間話をしていたところ,共犯者から「(本件家屋か火事な

とて燃えてなくなれはいいという)気持ちに変わりはないか。あなたか会社をやめ ることになったのは家か原因か。私かやってもいい。」なとと言われた。さらに, 「私か一人てやってもいい。私のためにやる。人も死亡しないし,全焼もしな い。」とも言われた。被告人は,共犯者か,長男,次男か本件家屋にいるいないに かかわらす,放火を実行しかねないと考えて心配になり,3月31日午後1時ころ, 再ひ事前連絡なく共犯者方に行き,「長男か4月1日に被告人方に泊まることに なった。次男か泊まりに来るかはまた決まっていない。放火の前に被告人方に来て, 長男と次男か来ているかとうか確認してほしい。」なとと話した。共犯者は,放火 の方法について,「被告人か持っているカソリンを使う。放火の場所については本 件家屋の南側の部分にする。」と言っており,「全焼はしない。大丈夫た。」とも 言っていた。なお,この時点ては本件家屋まての移動手段は決まっておらす,それ は共犯者か決めること,放火は被告人か逮捕されないように共犯者か一人て行うこ となとか決まった。 4月2日午前1時過きころ,被告人は,共犯者の車か自宅のマンションの敷 地内に入ってきたのを見て,カソリン,新聞紙等を持って玄関を出て,階段を降り ていった。この時,長男と次男は被告人方に泊まりに来ており,部屋て眠っていた。被告人は,共犯者か酒に酔っているように見えたことから,「今日はやめよ う。」と言ったか,共犯者か「やる。」と言うのて,急きょ被告人か共犯者を乗せ て自動車を運転していくことになった。その際,共犯者か「車は,被告人の車かい い。」なとと言ったことから,被告人のトヨタウィッシュて出発することになった。本件家屋付近の駐車場に到着すると,共犯者は,タハコをくわえ,カソリンと新 聞紙等を持って,小走りて本件家屋に向かっていった。共犯者は,5,6分後に 戻ってきて,「戸袋2か所に火をつけてきた。」なとと言った。被告人は,本件放火の後,共犯者と連絡を取り合っていない,共犯者か被告人の ために火をつけることにした理由は,「被告人を好きたから。」ということてある。2 被告人の供述内容の検討


 被告人は,3月24日に共犯者方に行った際,事前連絡をしなかったという か,共犯者か初めて被告人に放火を提案したのか同日てあるとすれは,その前には, 共犯者との連絡をためらう理由はなかったのてあるから,事前連絡することなく共 犯者方に行ったというのは不自然てある。また,共犯者か,被告人に対して,突然 本件家屋の放火を提案してきたというのは理解し難い。 当日に共犯者か酒に酔ってやってきたというのも不自然てある。また,共犯 者は事前に「自分か一人てやる。被告人には迷惑を掛けない。」と述へており,自 分の車て被告人方マンションまて運転してきた。その後,本件家屋に行くとすれは, 共犯者の車を使用するのか自然てある。にもかかわらす,疑いをかけられやすい被 告人の車に乗って本件家屋近くまて行くことを提案したというのも極めて不自然て ある。さらに,被告人は本件放火か発覚しないように意を払い,共犯者に対して携 帯電話て連絡しないようにしていたにもかかわらす,共犯者の提案を受け入れ,犯 人として疑われる可能性のある自らのウィッシュを急きょ運転していくことを承諾 したというのも理解し難い。 共犯者は,犯行前は,「全焼しないから大丈夫。」と述へていたにもかかわ らす,実際には全焼の危険性の高い方法て放火を行った。また,共犯者は,放火直 後に,被告人から放火した場所を尋ねられて,5か所てあったにもかかわらす2か 所てあると答えたことになるか,被告人のために放火するという共犯者かこのよう なうそを被告人に述へる理由はない。カソリンを使う放火の直前に,タハコをくわ えなから小走りていったというのも不自然という他ない。 このように,共犯者かいたという被告人の供述には多くの不自然な点かある。
 3 本件現場から発見されたタハコの吸い殻について 弁護人は,本件現場からタハコの吸い殻か発見されているところ,これは被告人の主張する共犯者か実在することを裏付けていると主張する。 上記のタハコの吸い殻は,平成23年6月,燃えた本件家屋の一部なとのかれき等を除いた後に発見された。もし,共犯者かこれを放火の際に落としたとすれは,

その時には,かれきはなかったのてあるから,そのタハコの吸い殻は消火の際に放 水を浴ひたはすてある。しかし,そのタハコの吸い殻には放水を受けたような痕跡 はない。そうすると,その吸い殻も消火活動後に現場に投棄されたものと考えられ るのてあって,これは被告人の述へる共犯者の存在を裏付けるものとはいえない。4 被告人の周辺者について
共犯者か実在したとすると,それは放火行為の態様から明らかなように,本件家 屋の構造,使用状況をよく知っている者てあり,さらに被告人の供述を前提にする と,被告人かうつ状態てあることなともよく知っている者ということになる。被告人の周囲にいる者のうち,被告人の父及ひ弟は,本件家屋を訪れたことかあ り,現場に関する知識かある上,3月にはかなりの頻度て被告人と連絡を取ってい る。しかし,いすれも公判廷て被告人に対し,「名前の言えない共犯者なとという 不合理な弁解をせすに,素直に罪を認めてほしい。」旨述へている。その供述内容, 供述態度等(弟については放火の直後,Aに対して被告人のトヨタウィッシュの存 在を伝えるなとしている。)に照らして,同人らか共犯者てあるとは到底考えられ ない。5 まとめ
以上によれは,被告人か供述するような共犯者は具体的に想定することはてきす, 共犯者は実在しないというへきてある。結局,被告人のいう共犯者は架空の人物を作り上けたものといわさるを得ない。
 第5 殺意の有無について1 本件放火行為の危険性
本件放火は,家人か就寝中の午前2時ころに実行された。しかも,その態様は, カソリンを使用して木造家屋の5か所に火をつけるというものてあった。火は短時 間て立ち上かり,午前2時7分ころには炎か玄関周辺から噴き出していた。そのこ ろ,2階東側の部屋て寝ていたAは,異様なにおいを感し,火災に気付いて,窓か ら脱出し,屋根つたいに隣家に逃れた。隣室て寝ていたBもAとほほ同時に火災に
 
気付いたようてあるか,部屋から出ることかてきなかった。2階西側の部屋て寝て いたCも部屋から出ることかてきす,両名とも自室て焼死した。本件放火の態様は,屋内にいた者か脱出することを著しく困難にするものてある。
 就寝中の家人か,家屋か全焼するような火災に遭遇すれは,火災に気付くのか遅れ, 一酸化炭素を吸い込むなとして,逃け遅れて死亡する危険性か極めて高いことは明 らかてある。そうすると,本件放火の態様は,就寝中の家人の生命を奪う可能性の 極めて高いものてあったといえる。2 危険性の認識
 被告人は,平成20年5月まて本件家屋に住んていたのてあるから,本件家 屋か木造てあること,本件の放火地点にカソリンを用いて火をつけれは,短時間て 火か立ち上かり,屋内にいる者の逃け場かなくなる可能性か高いことは当然認識し ていたはすてある。さらに,午前2時ころには,BC夫妻はもちろん,Aも就寝し ていることは,子供たちから聞いて知っていたというのてあるから,放火の時点て, 上記3名か就寝中てあることも認識していた。そうすると,被告人には本件放火の危険性のみならす,上記3名か家屋から脱出 てきない可能性か極めて高いことも認識していたといえる。 なお,弁護人は,被告人は,自分か住んていたときと同様に,BC夫妻は1 階北西側の部屋て寝ているものと考えており,同室の腰高窓から逃けることかてき ると思っていたと主張する。確かに,被告人の放火後の言動(被告人は,現場の後片付けの際に,同室か次男 の部屋になっていたことを知り,Aに対し,「万か一次男か被告人方に泊まりに来て なかったならは,次男か死ぬ可能性かあったたろう。勝手に部屋を変えるな。」と述 へていた。)からすると,被告人は,放火当時,BC夫妻か1階北西側の部屋に寝て いると考えていた可能性はある。しかし,高齢のBC夫妻か火災に気ついたとして も,腰高窓から逃けることか容易にてきたとは考え難い。被告人自身の上記発言か らも明らかなように,就寝中て火災に気付くのか遅れて死亡する可能性かあること
 
は誰しもか思い至ることてある。弁護人の主張する事情は殺意を否定するものとは いえない。3 動機かあること
 本件犯行に至る経緯 被告人は,平成16年にBC夫妻と半分すつ代金を出し,本件家屋を購入した。被告人は,本件放火当時まてそのローンを支払い続けていた。同居後,被告人は, Cとの間て考え方の違いを感し,さらには被告人自身か従姉妹と不倫関係になった こともあって,本件家屋を出ようと決意し,平成20年5月に一人暮らしを始めた。
 しかし,同年8月ころには不倫関係かうまくいかなくなった。さらに平成21年5 月,精神科医に受診して,うつ状態と診断され,Eの仕事を休職することになった。 同年夏ころには,弟に「本件家屋を燃やして,しいさんとはあさん(BC夫妻のこ と)を殺してくれないか。」なとと言った。被告人のうつ状態はその後も改善しな かった。翌平成22年夏にも弟に上記と同様のことを言った。平成23年2月には, 約20年ほと勤務した仕事を,傷病による就労不能により退職した。なお,被告人は,別居後にAに,「本件家屋に普通に戻っていいかな。」と言った こともあった。これに対し,AからBC夫妻に挨拶をするように求められたか,挨 拶を拒み,本件家屋に戻ることはなかった。また,被告人の住むマンションて4人 てやり直すことをAに提案したこともあったか,「本件家屋を子供たちか気に入って いる。」なとと断られている。 動機について
被告人は,別居後はBC夫妻と話す機会はなかった。別居に至る経緯を見ても, それのみをもって,BC夫妻に強い恨みを抱いたとは考え難い。特にBは,被告人 に意見を言うこともなく,同人との間ては何らのいさかいもなかった。しかしなから,別居後の被告人の状況を考えると,不倫関係もうまくいかす,う つ状態になり,仕事にも行けす,一人て過こす時間か多かったと思われる。そのよ うな中て,子供たちと同居していたころのことを思い出すなとして,再ひ子供たち
 
と同居したいとの思いを強めていたものと思われる。さらに,子供たちと同居てき すに,自分たけ寂しい生活をし,うつ状態になっている状況を悲観する一方,別居 することになった原因の一端を作りなから,本件家屋て子供たちと楽しく暮らして いるBC夫妻に恨みを募らせていったと考えられる。上記の被告人の弟に対する発 言もこれらの気持ちを裏付けるものてある。さらに,被告人の放火の目的の一つは,被告人か認めているように,子供たちと 同居することにあった。そして,本件当時,Aとの関係を修復することは難しかっ た。これらの事情からすると,BC夫妻かいる限りAや子供たちと同居することは 困難てあった。そうすると,被告人には,子供たちと同居するためにBC夫妻を殺 害する動機かあることになる。なお,Aに対しては,BC夫妻に対するものと比較すると,恨みの程度はそれほ と強くなかったし,子供たちと同居する上てもBC夫妻ほとは障害となる存在ては なかったと思われる。しかし,上記のとおり4人てやり直すことは困難てあったし, 平成23年3月にはAか被告人からのメールにも返信しないことか多かった。これ らによれは,被告人はAに対しても悪感情を募らせていたことかうかかわれる。4 まとめ
本件放火の態様か極めて危険てあり,その危険性を被告人か認識していたことか らすれは,被害者3名に対して殺意をもって犯行に及んたものと認められる。さらに,BC夫妻か高齢てあって逃け遅れる可能性か高いこと,被告人にはBC 夫妻を殺害する動機かあったと認められることからすれは,同人らに対しては強固 な殺意かあったというへきてある。(法令の適用)
罰条 判示所為のうち
 現住建造物等放火の点 刑法108条
 各殺人の点 いすれも刑法199条

 
殺人未遂の点 刑法203条,199条 科刑上一罪の処理 刑法54条1項前段,10条(各殺人はいすれも現住建造物等放火,殺人未遂より犯 情か重いか,各殺人の犯情に軽重の差はないから,一 罪として殺人罪の刑て処断。)刑種の選択 無期懲役刑を選択 未決勾留日数の算入 刑法21条 訴訟費用の不負担 刑訴法181条1項たたし書 (量刑の理由)1 本件は,深夜,3名か就寝中の家屋にカソリンを撒いて放火し,2名を殺害し, 1名については殺人未遂にととまったという現住建造物等放火,殺人,殺人未遂 の事案てある。2 犯行態様は,木造家屋の5か所に数リットルのカソリンを撒いて放火したもの てあり,本件は強固な意思に基つく極めて危険な犯行てある。BC夫妻は,本件当夜,就寝していたところ,火災に気付いたものの,煙や炎 の勢いて逃けることもてきす,焼死した。夫妻か感した恐怖感,絶望感,無念さ は言葉て言い表すことはてきない。夫妻には落ち度は全くなく,突然命を奪われ たのてあり,その結果は余りにも重大てある。Aも,突然火災に遭遇し,死の危険を感したか,隣人の助けを借りて,かろう して火災から逃れることかてきた。その恐怖感,父母か家屋に取り残されている ことを知ったときの絶望感には計り知れないものかある。Aか子供たちの父親て もある被告人に対して極刑を望むほと強い処罰感情を抱くのも当然てある。3 被告人は,自らの行いを一切顧みることなく,自分か置かれた状況を被害者ら のせいてあると考え,一方的に恨みを募らせ,子供たちと同居するために本件犯 行に及んた。人に対する思いやりや命の重さを尊ふ気持ちは微塵も感しられない。
 法廷においても,被害者に対して申し訳なかったと述へるものの,架空の共犯者
 
の存在を述へるなと,真摯な反省の態度をうかかうことかてきない。悔悟の情も乏しいといわさるを得ない。
4 本件犯行の残酷さや結果の重大性のみならす,現在においても弁解に終始し,反省か全く深まっていない態度からすると,被告人に対し,死刑を選択すること も十分考えられるところてはある。しかしなから,本件犯行は,必すしも事前の段階から確定的な犯意を有し,周 到に準備を進めていって実現したものとまてはいえない。被告人は,本件犯行当 時はうつ状態と診断されており,被告人を支える人物か周囲にいなかった。子供 たちに対しては父親としての愛情を注き,被告人なりに接してきたことなとの事 情も認められる。5 以上の事情からすれは,本件の犯情は極めて悪質て,犯行の結果は余りにも重 大てあるか,死刑を選択することは躊躇せさるを得す,被告人を無期懲役に処す ることとした。(検察官の求刑 無期懲役)
平成25年1月16日
 横浜地方裁判所第6刑事部
裁判長裁判官 秋 山 敬
裁判官 景山太郎
裁判官 満 田 悟


判例本文

この判例ページのURL

LINEで送る
Pocket