主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及ひ理由
第1 請求 尼崎市福祉事務所長か平成20年9月17日付けて原告に対し行った生活保護費返還定処分を取り消す。
 第2 事案の概要
1 本件は,生活保護の被保護者てある原告か,平成18年12月1日に障害基 礎年金の支給事由か発生したとして平成19年1月分からの障害基礎年金の支 給を平成20年3月13日に受けることとなったことに対し,尼崎市福祉事務 所長(以下,「福祉事務所長」といい,同事務所を「福祉事務所」という。) か,生活保護法(以下「法」という。)63条を適用して,遡って支給された 障害基礎年金97万2059円(以下「本件遡及支給分」という。)に相当す る支給済みの保護費に相当する額の返還を命しる平成20年9月17日付けの 処分(以下「本件処分」という。)を行ったところ,原告か,原告に同条を適 用するのは誤りてある,本件処分には福祉事務所長の裁量権の逸脱,濫用かあ る,調査義務違反かあるなとと主張して,行政事件訴訟法3条2項に基つき, 本件処分の取消しを求める事案てある。2 前提事実(証拠等の掲記かない項は,当事者間に争いかない。) (1) 当事者等原告は,昭和▲年▲月▲日生まれの女性てある。
原告は,平成14年7月,と結婚し,平成▲年▲月▲日,同人との間に を儲けたか,平成19年6月26日,と離婚した。(乙1の1,7)(2) 生活保護の開始 原告は,平成19年7月10日付けて,同年6月20日を開始時期とする生活保護開始定を受け,同日から生活扶助,住宅扶助及ひ医療扶助に係る保護費を受給している。(甲1,乙15) (3) 障害基礎年金受給の経緯ア 原告は,平成18年12月1日,社会保険庁長官に対し,平成16年1 0月ころから○症状かあるとして,同月を受給権発生日とする障害基礎年 金の裁定請求(予備的に事後重症による請求)をしたか,社会保険庁長官 は,平成19年1月30日,障害基礎年金を支給しない旨の処分をした。
 (甲12,弁論の全趣旨)イ 原告は,同年2月9日,社会保険審査官に対し,上記不支給処分に対す る審査請求をしたか,社会保険審査官は,同審査請求を棄却する旨の定 を行った。ウ 原告は,同年11月8日,社会保険審査会に対し,上記不支給処分に対 する再審査請求をした。エ 社会保険庁長官は,平成20年3月13日,原告に対し,原告の傷病に よる障害の状態か裁定請求日てある平成18年12月1日において国民年 金法施行令別表2級の程度に該当するとして,同日を受給権発生日とする 2級の障害基礎年金を支給する旨の処分をした。なお,原告は,その後,ウの再審査請求を維持したか,社会保険審査会 は,平成20年3月31日,同再審査請求を棄却する旨の裁を行った。 オ 原告は,同年4月15日,平成19年1月分から平成20年3月分まて の障害基礎年金として110万4075円を受給した。(乙17,弁論の全趣旨) (4) 本件処分
原告は,保護の開始から平成20年9月1日まてて,231万6363円 の保護費を受給していた。福祉事務所長は,同年9月17日,原告に対し,前記(3)オて受給した110万4075円のうち,同年2月分及ひ同年3月分の13万2016円に ついては,同年4月15日か本来の支払日てあったことから,通常支給分の 障害基礎年金として収入認定をし,平成19年1月分から平成20年1月分 まての97万2059円(本件遡及支給分)については,法63条に基つ き,同額に相当する支給済みの保護費に相当する額の返還を命しる処分(本 件処分)を行い,次の内容を書面て通知した。(甲2,乙15,弁論の全趣 旨)1 資力発生後扶助額
 2 返還対象額
3 自立更生資金認定額
 4 返還定額
231万6363円 97万2059円 0円 97万2059円 平成20年10月31日5 返還期限
6 返還方法 同封の納付書て最寄の指定金融機関等に納
付してくたさい。なお,一括返還か困難な場 合には分割ての返還等相談に応しますのてこ 連絡くたさい。(5) 審査請求 原告は,平成20年11月17日,兵庫県知事に対し,本件処分に対する審査請求を行ったか,兵庫県知事は,平成21年10月1日,同審査請求を棄却する旨の裁を行った。(甲1) (6) 訴訟提起
原告は,平成22年3月29日,本件訴訟を提起した。(当裁判所に顕 著)3 争点
(1) 法63条適用の可否(争点1)
(2) 裁量権の逸脱,濫用の有無(争点2)
(3) 調査義務違反の有無(争点3)
 4 争点に対する当事者の主張(1) 争点1(法63条適用の可否)について 【原告】
ア 法63条の適用場面てはないこと 法63条の趣旨に照らせは,同条は,1本来受けるへきてなかった保護金品を受けた場合て,かつ,2保護の実施機関か,<ア>法4条3項の急迫 した事由かあるとして保護を行った場合,<イ>調査不十分のため資力かあ るにもかかわらす,資力なしと誤認して保護を定した場合又は<ウ>保護 の程度の定を誤って不当に高額な定をした場合に限定して適用される 規定てある。原告は,後記(2)【原告】イ(イ)のとおり,本来平成18年10月13 日には保護を受けることかてきたのてあるから,本件は,1本来受けるへ きてなかった保護金品を受けた場合に当たらないし,原告に対する保護は 2のいすれの場合にも当たらない。したかって,原告に法63条を適用することはてきない。
 イ 「資力」に該当しないこと法63条の「資力」とは,法4条1項の「その利用し得る資産,能力そ の他あらゆるもの」と同義てあって,「その利用し得る資産」とは,保護 開始時において現実に使用,収益,処分の権能を持っているもの,「その 他あらゆるもの」とは,現実には資産になっていないか容易に資産となし 得るものをいい,その性質上直ちに現実に活用することか困難てある資産 は,「その利用し得る資産」にも「その他あらゆるもの」にも含まれな い。本件遡及支給分は,平成20年3月13日になって初めて支給する旨の 処分かなされたのてあり,保護の開始時てある平成19年6月20日の時点においては,現実に使用てきる権能を持っている資産てはなかったし, 容易に資産となし得るものてもなかったから,「その利用し得る資産」に も「その他あらゆるもの」にも当たらない。したかって,本件遡及支給分に係る年金受給権は,法63条の「資力」 には当たらす,これを「資力」として行われた本件処分は違法てある。ウ 「資力」の発生時期の認定の誤り 本件遡及支給分に係る年金受給権か「資力」に当たるとしても,本件処分は,「資力」か発生した時期を障害基礎年金の受給権発生日てある平成 18年12月1日と認定した誤りかある。障害基礎年金の場合,老齢基礎年金と異なり,本人家族なとも年金の 支給対象となる障害かあることを自覚していないことも多く,その障害認 定を受けるためにも複雑な手続を要するから,裁定かされてはしめて受給 権かあることからかとなる。特に原告の場合,再審査請求後に裁定かな されたのてあって,原告の障害基礎年金の受給権の存在自体か極めて不確 実てあったといえるから,原告の障害基礎年金の受給権の存在か客観的に 確実性を有するに至った,すなわち,「資力」か発生したと判断されるの は,裁定かなされた平成20年3月13日というへきてある。したかって,原告に法63条を適用するとしても,平成20年3月13 日以降に支給された保護費を標準として返還額を定すへきてあって,保 護開始日(平成19年6月20日)からの保護費全額を標準としてなされ た本件処分は違法てある。エ 実施機関か「資力」の存在を認識していないこと 厚生労働省は,法63条を資力かあることを認識しなから保護費を支給した場合の事後調整の規定と解釈しており,実施機関か保護の開始当初か ら資力の存在を認識していたことを適用の前提としている。法63条の「資力かあるにもかかわらす」との文言並ひに実施機関に法28条,29条及ひ61条か被保護者の資産について調査する権限を与え ていることからすれは,法63条は,実施機関か被保護者の資産を調査し た結果,直ちに活用することはてきないか,手続を経れは活用てきる資産 かあることか判した場合てあっても,必要な保護を行うことを妨けるへ きてないことを前提とするものて,実施機関か,上記調査をしても認識す るに至らない資産については,法63条の「資力かあるにもかかわらす」 の要件を満たさないというへきてある。福祉事務所長は,原告の保護を開始する以前に上記調査を行ったか,そ の時点て本件遡及支給分か存在することを認識することは不可能てあった し,平成20年3月13日まてその存在することを認識することはてきな かった。したかって,原告につき同日以前に法63条を適用する余地はなく,本 件処分は違法てある。オ 憲法29条に違反すること 保護か開始される以前は,原告の有する資産に対する管理処分権能に何ら制約はないはすてある。本件処分は,未た原告か保護を受けていなかっ た時期に対応する障害基礎年金の遡及支給分について,法63条の「資 力」に該当するとして,原告の管理処分権能について制約を加える処分て あるから,憲法29条の私有財産の不可侵の保障に反する。したかって,本件処分は,憲法29条に反し,違法てある。 【被告】ア 法63条の適用 法63条は,「急迫の場合等」と規定しているほか,保護の補足性の原則から資力を有する状態て受給した保護金品について事後的に調整する点 にその趣旨かあるから,同条の適用は原告かアて主張する場合に限られる ものてはない。イ 「資力」に該当すること 生活保護制度は,資本主義社会における基本原則の一つとして自己責任の原則を前提とした上て,生活に困窮するすへての国民に対し,その困窮 の程度に応して必要な保護を行い,その最低限度の生活を保障することに よって,その自立を図る補足的な制度てあって,法4条1項は,保護の補 足性の原則を定めている。そして,法63条は,保護の補足性の原則から,資力を有する状態て保 護を受けた場合に後に保護金品を返還させ,事後的に調整を図る点にその 趣旨かあるから,同条の「資力」とは,法4条1項の「その利用し得る資 産,能力その他あらゆるもの」,すなわち,最低限度の生活を維持するた めに活用されるへきものを有することと同義てあって,現金等直ちに現実 に活用することか可能な資産のみならす,その性質上直ちに現実に活用す ることか困難てある資産をも含むというへきてある。したかって,本件遡及支給分に係る年金受給権は,法63条の「資力」 に当たる。ウ 「資力」の発生時期 年金受給権は,その裁定請求及ひ支給定の有無にかかわらす,年金支給事由か生した日に当然に発生する具体的権利てあり,年金か遡及支給さ れる場合は,その支給定かなされるまては当該年金を直ちに現実に活用 することは困難てあるか,支給定かなされると年金支給事由か生した日 の属する月の翌月分から支給されることからすれは,年金支給事由か生し た日に「資力」か発生したものとして取り扱われるへきてある。したかって,本件遡及支給分に係る年金受給権は,その支給事由か生し た平成18年12月1日に発生したというへきてあり,同日より後の保護 開始日(平成19年6月20日)以降に支給された保護費を返還の対象と する本件処分は適法てある。エ 資力についての実施機関の認識 原告は,実施機関か保護の開始当初から資力の存在を認識していることか法63条の適用の前提となると主張するようてあるか,そのような要件は,同条の文言上も同条の趣旨からも要求されない。 オ 憲法29条に反しないこと法は,被保護者の財産に関する管理処分権そのものを制約するものては なく,保護の補足性の原則から,他に活用すへき資力をもってしても生活 に困窮する場合に保護を実施することを趣旨とするものてある。仮に保護 開始前に支給された年金額に相当する金銭か被保護者の手元に残っている 場合は,原則として,それを活用した後に保護か開始されるか又は直ちに 保護か実施される場合ても収入認定かあった場合と同様に一定額か控除さ れて保護費か支給されるのてあって,保護開始前に取得した財産は,生活 費に充当されることか予定されている。原告は,保護開始前に年金受給権か発生していたものてあるか,現実に はこれを受給していなかったため,生活費を賄うため,立て替えて保護費 か支給されたのてあって,これを法63条て事後的に調整することは,法 の予定するところてあり,憲法29条に反しない。(2) 争点2(裁量権の逸脱,濫用の有無)について 【原告】
ア 法63条は,「保護の実施機関の定める額」として,返還額の定を被 保護者の状況を知悉し得る保護の実施機関の裁量に委ねているか,この裁 量は,全くの自由裁量てはなく,保護費か被保護者の自立更生のために むを得ない用途に使われた場合,使用額か社会通念上容認される程度てあ る場合,全額返還を行うことか自立を著しく阻害する場合においては,返 還額からその分を控除すへきて,保護の実施機関の判断に合理性かない場 合には,その裁量権の逸脱,濫用として違法となるというへきてある。イ 本件処分は,次の理由から,福祉事務所長に与えられた裁量権の逸脱, 濫用かあり,違法というへきてある。(ア) 自立更生資金に当たること
原告は,それそれ借金の返済として,平成20年4月16日に従兄弟 のに対し60万円を,同月17日に友人の及ひ(以下,上記3名 を併せて「ら」という。)に対し各10万円を,本件遡及支給分から 支払った。被保護者か借金を返済することを認めすに返還を求めるのは 被保護者の経済的更生を阻害するため,かかる借金の返済に充てた部分 は,自立更生資金として返還額から控除すへきてある。また,原告は,同年5月末ころ,との離婚問題について相談した弁 護士と司法書士に対し,その相談料として本件遡及支給分から合計8万 円を支払った。離婚問題は法律問題てあり,法律の専門家への相談料 は,原告の自立更生に必要な費用てあるから,自立更生資金として返還 額から控除すへきてある。(イ) 保護の申請権か侵害されたこと 原告からから借金をするに至ったのは,原告の保護の申請権か被告の職員によって約8か月間も侵害され,適切に保護か開始されなかった 結果,生活費居宅を確保する費用を賄う必要かあったからてある。保 護の申請権を侵害する行為は,憲法25条に反する重大な違法行為てあ るから,法63条の適用に当たっては,このような事情も考慮しなけれ はならない。すなわち,原告は,当時,○て就労することか不可能て収入かなく, からV(トメスティックハイオレンス)を受け,からも実母実 姉からも生活費の援助を受けることかてきない要保護状態てあったた め,平成18年10月13日,福祉事務所の保護課を訪れ,保護を申請 したい旨述へた。しかし,職員は,原告に対し,高齢てないと保護を受けることはてきないなとと虚偽の受給要件を述へて,上記申請を受け付 けなかった。原告は,同年11月ころにも保護課を訪れて保護を申請したい旨述へ たか,職員は,原告か離婚していないこと,実母と同居していることを 理由に上記申請を受け付けす,原告かのVを説しても,と連絡 をとるように述へるのみてあった。原告は,同年12月ころにも保護課を訪れて保護を申請したい,住居 を確保するための費用かない旨述へたか,職員は,一時扶助として転居 費用を出す制度かあるにもかかわらす,転居費用を援助する制度はない と説をして,上記申請を受け付けなかった。原告は,平成19年1月19日,同年5月中旬,同年6月12日にも 保護課を訪れ,その都度保護を申請したい旨述へたか,職員は,原告か 保護を受けられるかとうか何ら調査することなく,原告に婚姻関係の破 綻について過度の説を求めるなと,故意に保護の開始時期を遅らせ, 同月20日まて申請を受け付けなかった。以上のような被告による原告の保護申請権侵害行為によって原告か8 0万円の借金を負ったことはらかてあり,被告は,法63条による返 還額定の際に自らの違法を是正するために少なくとも80万円につい ては返還を免除すへきてある。(ウ) 本件処分か重い処分てあること 本件処分は,平成20年10月31日まてに,97万2059円を一括て支払うことを求める処分てあり,原告には極めて酷てある。
 原告は,本件遡及支給分の大部分を費消しているのて,本件遡及支給 分全額に相当する保護費の返還を求められれは,今後受給する保護費か ら差し引かれる形て返還をするということになり,長期にわたり,最低生活費を下回る生活を続けることを余儀なくされる。
【被告】
ア 法は,最低限度の生活保障及ひ要保護者の自立助長という目的と保護の補足性の原則との調整を,被保護者の生活状況等に通暁する保護の実施機 関の裁量に委ねている。生活保護行政の実務においては,被保護者に対する収入認定に当たって は,その収入か被保護者の自立助長に資する場合は収入として認定せす, 必要経費として収入から控除することとし,法63条の返還額について も,原則として当該資力を限度として支給した保護費の全額を返還額とす へきとしつつ,一定の範囲て自立更生資金として,返還額から控除するこ ととしている。イ 本件処分に,福祉事務所長の裁量権の逸脱,濫用はない。
 (ア) 自立更生資金に当たらないこと被保護者か保護開始前の借金を返済することは,自立更生に必要とは いえない。債務超過の場合は,本来破産手続等により経済的更生を図る ことかてきるし,借金の返済に必要な額を自立更生資金とみてこれに相 当する保護費を返還させないとすると,税金を財源とする保護費によっ て第三者の私債権の満足を得させる結果となるほか,被保護者の保護開 始前の生活をも保障する結果となり,保護を要する状態に立ち至ったと きから将来に向かってその最低限度の生活の維持を保障しようとする法 の目的から著しく逸脱し,妥当てない。(イ) 保護の申請権の侵害の事実はないこと 原告か福祉事務所の保護課を初めて訪れたのは平成19年1月19日てあって,それ以前には,平成18年9月にの養育等の相談のため, 被告のα支所内の尼崎市保健センターα地域保健担当(以下「α地域保 健担当」という。)を訪れ,同年10月13日に原告の今後の身の振り 方等の相談のためソーシャルワーカーとともに福祉事務所の福祉課を訪れたのみてあり,平成19年1月19日以前に原告か保護課を訪れた事 実及ひ原告かα地域保健担当又は福祉課を訪れた際に原告か保護を受け たい旨の意思を示したといった事実はない。職員は,同日,原告かと離婚しておらす,転居を予定しているとの ことてあったのて,直ちに保護の定に必要な扶養関係・生計関係家 賃等の必要生活費の判断をすることかてきなかったことから,これらの 整理を行って再度相談するよう原告に伝えたか,原告は,同年6月12 日まて保護課に訪れることはなかった。職員は,同日において離婚の成 否か不てあったため,原告にに対して離婚届の提出を書面て催告す るように述へ,その後,原告か催告をしたとして同月20日に訪れ,保 護の申請をしたため,同日から保護を開始することになったものてあ る。以上のとおり,福祉事務所長保護課の職員か,原告の保護の申請権 を侵害した事実はない。(ウ) 本件処分は重い処分てはないこと 本件処分は,本件遡及支給分を原資として支給済みの保護費を返還させるものにすきす,原告か日々の生活に必要な毎月の保護費の支給には 影響を及ほさないものてある。職員は,原告に本件遡及支給分を費消することのないように説して おり,原告かこれを費消しないてさえいれは,容易に返還することかて きたはすてあり,本件処分か原告にとって極めて酷とはいえない。被告 は,原告か本件遡及支給分の大半を費消しているから,原告の資力に応 した分割による返還も検討している。(3) 争点3(調査義務違反の有無)について 【原告】
法1条,5条及ひ9条等に照らせは,保護の実施機関は,法63条を適用するに際して被保護者の生活実態及ひその需要を調査する義務を負って いる。原告は,平成20年4月15日,福祉事務所に赴き,本件遡及支給分を 受領したことを報告し,これをらからの借金の返済に充てたいと述へた ところ,職員は,原告から当時の生活実態及ひその需要について一切聴取 することなく,本件遡及支給分を借金の返済に充てることはてきない,費 消しないようにと指示するのみて,実際に原告を訪問するなとの調査を行 わなかった。その後も,福祉事務所は,原告その代理人弁護士から原告の生活実 態及ひその需要について聴取をすることなく,本件遡及支給分は全額返還 されなけれはいけないという態度に終始していた。福祉事務所長は,本件処分を行うまての間に,当時の原告の生活実態及 ひその需要を把握することを怠り,原告の借金の経緯についての具体的な 検討を行わす,漫然と本件処分を行ったものてあり,調査義務違反という 手続上の瑕疵か存在する。したかって,本件処分は,手続的違法かあり,取り消されるへきてあ る。【被告】 法63条の適用に当たって,保護の実施機関に被保護者の生活実態及ひその需要を調査する義務かあるとしても,その義務違反かあるか否かは, 個別具体的な事情を総合的に勘案して判断されなけれはならない。すなわち,職員は,原告か保護の申請時に借金かない旨を申告していた ことから,原告に借金かないことを前提にその後も家庭訪問等により継続 的に原告の生活実態の把握を行い,その際,特段自立更生のために必要な 経費の支出は予定されていなかった。原告及ひ弁護士は,破産手続等に より経済的更生を図りうる過去の私的な借金の返済に関して述へるのみて,本来の自立更生のために必要な経費への充当する必要かあることにつ いて何ら述へなかった。そのため,職員は,原告から保護費を返還させる に当たり,特段,原告の自立を著しく阻害すると認められるような事情は 見当たらないとして,上記に加えて更に原告の生活実態等を聴取する必要 性はなかったものてある。福祉事務所長は,原告か受けた本件遡及支給分に相当する保護費につ き,自立更生資金として返還免除とすへき部分かあるか否かを,それまて に把握していた全事情に基つき慎重に検討して本件処分に至ったものてあ って,調査義務に反すると評価すへき事情は見当たらない。第3 当裁判所の判断
1 争点1(法63条適用の可否)について
(1) 法63条の趣旨及ひ適用場面 法63条は,被保護者か,急迫の場合等において資力かあるにもかかわらす,保護を受けたときは,保護費を支給した都道府県又は市町村に対して, すみかに,その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実 施機関の定める額を返還しなけれはならないと規定し,本来受けるへきてな かった保護金品を受けた場合の費用返還義務を定めている。すなわち,法4条1項は,保護は,生活に困窮する者か,その利用し得る 資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用 することを要件として行われる旨規定して保護の補足性の原則を定め,ま た,法8条1項は,保護の程度について,厚生労働大臣の定める基準により 測定した要保護者の需要を基とし,そのうち,その者の金銭又は物品て満た すことのてきない不足分を補う程度において行う旨規定し,法60条は,被 保護者は,常に,能力に応して勤労に励み,支出の節約を図り,その他生活 の維持,向上に努めなけれはならない旨規定している。これらの規定は,法 の定める生活保護制度か,資本主義社会における基本原則の一つとしての自己責任の原則を前提とした上て,憲法25条の理念に基つき,生活に困窮す るすへての国民に対し,その困窮の程度に応し,必要な保護を行い,その最 低限度の生活を保障することによって,その自立を図る補足的な制度てある ことをらかにしたものということかてきる。他方,法4条3項は,同条1 項の規定は,急迫した事由かある場合に,必要な保護を行うことを妨けるも のてはない旨規定しているか,これは,生活に困窮する者か,法4条1項に いう利用し得る資産等を有する場合においても,これを直ちに現実に活用す ることか困難な場合に当該生活困窮者の最低限度の生活を保障する観点か ら,保護の補足性の原則の例外として,保護を行うこととしたものと解され る。上記のとおり,生活保護制度か補足的な制度てあり,法4条3項か利用し 得る資産等を有する場合においても保護を行うこととしていることに照らせ は,法63条は,法4条3項に基つき保護費を受給した場合等において,当 該受給者においてその資力を現実に活用することかてきる状態になったとき には,当該受給者に対し,保護費の返還義務を課すこととしたものと解され る。そして,かかる法63条の趣旨及ひ同条の文言か「急迫の場合等」とあ って法4条3項所定の「急迫の場合」に限定していないことに照らせは,法 63条は,法4条3項による保護か行われた場合のみならす,先に行われた 保護の時点ては必要てあるとして保護か行われたか,後に資力かあったこと か判した場合に,これを事後的に調整するためにも適用されるものと解す るのか相当てある。原告は,法63条は,本来受けるへきてなかった保護金品を受けた場合 て,かつ,法4条3項による保護の場合,調査不十分のため資力かあるにも かかわらす資力なしと誤認して保護を定した場合及ひ保護の程度の定を 誤って不当に高額な定をした場合のいすれかの場合に限定して適用される へきてあると主張するか,独自の理論てあって採用することはてきす,原告か主張する理由て,原告への法63条の適用か否定されることにはならない。
(2) 法63条の「資力」該当性
ア 前記(1)のとおり,生活保護制度か補足的な制度てあることに照らせ は,法4条1項にいう「利用し得る資産,…その他あらゆるもの」とは, 現金等,直ちに現実に活用することか可能な資産はもとより,その性質上 直ちに処分することか事実上困難てあるとか,その存否及ひ範囲か争われ る等の理由により,直ちに現実に活用することか困難てあるものも含まれ るというへきてある。そして,法63条の趣旨及ひ同条と法4条との関係に照らせは,法63 条の「資力」とは,法4条1項の「利用し得る資産,…その他あらゆるも の」と同義てあって,法63条の「資力かあるにもかかわらす,保護を受 けたとき」に該当するためには,保護を受けた時点において「利用し得る 資産,…その他あらゆるもの」を有していることを要するものと解するの か相当てあり,現実に直ちに活用することかてきるか否かはこの「資力」 該当性を左右しないものというへきてある。原告は,法63条の「資力」とは,法4条1項の「その利用し得る資 産,…その他あらゆるもの」と同義て,現実に使用,収益,処分の権能を 持っていることか必要てあると主張する。しかし,前記(1)のとおり,法 4条3項は,同条1項の規定は急迫した事由かある場合に必要な保護を行 うことを妨けるものてはない旨規定するところ,これは,生活に窮する者 において同項にいう利用し得る資産等を有するか直ちにこれを現実に活用 することか困難な場合を想定していると考えられることからしても,同項 の「その利用し得る資産,…その他あらゆるもの」は,現実に使用,収 益,処分の権能を有するものに限られないというへきてある。イ 本件についてみると,前提事実(2)(3)のとおり,原告は,平成19年6月20日を開始時期として保護か開始されたか,平成20年3月13日, 社会保険庁長官から平成18年12月1日に支給事由か発生したとして障 害基礎年金を支給する旨の処分を受けており,本件遡及支給分に係る年金 受給権は,法63条の「資力」に当たるというへきてある。(3) 法63条の「資力」の発生時期
ア 法8条1項は,保護は,厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし,そのうち,その者の金銭又は物品て満たすことのて きない不足分を補う程度において行うものとし,同条2項は,その基準 は,要保護者の年齢別,性別,世帯構成別,所在地域別その他保護の種類 に応して必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なも のてあって,かつ,これをこえないものてなけれはならないとして,具体 的な保護の基準及ひ程度について規定していることに照らせは,法は,保 護の要否及ひ程度については,当該保護を行う時点において,客観的に定 まり得ることを前提としているものと解される。そうすると,法4条1項の「利用し得る資産,…その他あらゆるもの」 とは,前記(2)のとおり,現実に直ちに活用し得るものてある必要はない ものてあるか,当該保護を受ける時点においてその内容か客観的に確定し 得るものてあることか必要てあり,換言すれは,当該保護を受ける時点に おいて,客観的に存在し,かつ,当該要保護者に帰属していることを要す るものというへきてあって,法63条の「資力」も,保護を受けた時点に おいて,客観的に存在し,当該被保護者に帰属していることを要するもの というへきてある。イ そして,障害基礎年金は,その支給事由か生した日に受給権か発生する ものてあり(平成19年法律第109号による改正前の国民年金法16 条,18条1項,30条,同条の2ないし4参照),当該年金受給権は, 支給事由か生した日から客観的に存在するものといえるから,障害基礎年金か遡って支給されることとなった場合については,支給事由か生した日 に年金受給権という法63条の「資力」か発生したものとして,同条を適 用すへきと解するのか相当てある。原告は,障害基礎年金は,老齢基礎年金と異なりその障害認定を受ける にも複雑な手続を要する,特に本件は再審査請求後てある平成20年3月 13日になってはしめて年金受給権か存在することか認められたのてあっ て,年金受給権の存在か客観的に確実性を有するに至ったと判断されるの は同日とすへきと主張する。しかしなから,国民年金法の定める給付は, その種類(老齢基礎年金,障害基礎年金,遺族基礎年金等)にかかわら す,その支給事由か発生すれは同法に従った給付か行われるのてあって, その意味て年金受給権は,その支給事由か生した日から客観的に存在する ものといえるのてある。本件ては,平成18年12月1日に事後重症によ る年金支給請求をしたことによって,原告に年金受給権か発生したのてあ って,請求の当初にはそれか認められす,再審査請求後に認められたもの てはあるか,客観的には同日から年金受給権か確実に存在していたという へきてあり,原告の主張するように支給事由かあるとの裁定を受けるまて の過程をもって,その存在か客観的に確実てあるか否かを判断するものて はない。ウ したかって,原告は,障害基礎年金の支給事由か生したとされた平成1 8年12月1日,本件遡及支給分の年金受給権を法63条の「資力」とし て取得したものと認めるのか相当てある。(4) その他の原告の主張及ひ指摘について
ア 原告は,平成18年10月13日には保護を受けることかてきたのてあるから,本来受けるへきてなかった保護金品を受けた場合に当たらす,本 件は法63条の適用場面てはないと主張する。しかし,法63条の適用については前記(1)て述へたとおりてあり,また,後記3のとおり,原告か同日において保護を受けることかてきたと認めることはてきす,原告の主張を採用することかてきない。イ 原告は,「生活保護手帳別冊問答集2009」(乙14)を根拠とし て,厚生労働省は,法63条を受給者に資力のあることを認識しなから保 護費を支給した場合の事後調整の規定と解釈しており,実施機関か保護の 開始当初から資力の存在を認識していたことを適用の前提とするものて, 本件ては,被告は平成20年3月13日まて年金受給権の存在を認識して いなかったから,同日以前において法63条を適用することはてきないとも主張する。
 しかし,上記問答集には,収入申告か過少てあった等のため保護費の不当な受給か行われた場合に,法63条と法78条のいすれを適用すへきか という問いに対する答えとして,本来,法63条は実施機関か受給者に資 力かあることを認識しなから保護費を支給した場合の事後調整の規定と解 すへき旨の記載はあるか,これは,法63条の適用場面か,不正な手段に より保護を受けた場合の法78条の適用場面とは異なることを説しよう としたにすきないというへきてある。法63条の文言及ひ前記(1)て述へ た同条の趣旨に照らせは,同条の適用か,実施機関か資力の存在を認識し なから保護を開始した場合に限られると解することはてきない。ウ 原告は,本件処分は,未た原告か保護を受けていなかった時期に対応す る障害基礎年金の受給権を法63条の「資力」に該当するとして,原告の 財産に対する管理処分権能について制約を加える処分てあるから,憲法2 9条の私有財産の不可侵の保障に反すると主張する。しかしなから,そもそも,本件処分は,保護開始時点て本件遡及支給分 の年金受給権か存在しており,事後的にみれは資力かあったにもかかわら す保護費を支給していたのて,保護開始後に支給した保護費に相当する額 の返還を求めるものてあって,遡及支給された年金自体か返還請求の対象てはないのてあるから,保護開始前の原告の財産に対する管理処分権能に 制約を加えるものとはいえない。すなわち,原告の場合,保護開始前てあ る平成18年12月1日には年金受給権か発生し,平成19年1月分以降 は障害基礎年金を受給てきたはすてあったか,現実にはこれを受給してい なかったため,立て替えて保護費か支給されたものてあって,後に本件遡 及支給分か支給されることとなった場合に法63条て調整することは法か 予定することてあって,憲法29条に反するということはてきない。エ 原告は,「生活保護手帳別冊問答集2009」(乙9,14)に,保護 費の額を遡及変更して過渡分を返還させる場合は法的安定性の観点から2 か月分程度を限度とすへき旨の記載かあることを根拠に,本件処分か2か 月分の保護費を超えて返還するよう求めるものてあり,原告の法的安定性 を著しく脅かしていると指摘する。しかしなから,本件処分は,本件遡及支給分を原資として既に支給され た保護費に相当する額の返還を求めるものにすきないから,原告として は,支給された本件遡及支給分を返還すれは足りるのてあり,これによっ て原告の法的安定性か害されるわけてはない。オ 原告は,本件ては法63条によって返還を求めるのてはなく,本件遡及 支給分を原告の収入として認定し,法26条によって保護を一時的に停止 するという方法を採るへきてあった,法63条の返還の場合は,遡及支給 分を既支給の保護費相当額に満つるまて返還しなけれはならす,将来的に 受給する保護費の一部から分割の方法により返還することを強いられ,最 低限の生活か実質的に侵害されると指摘する。しかしなから,本件処分は,原告か保護費を受給しているところに,本 件遡及支給分か支給されることとなったため,それを原資として支給済み の保護費に相当する額の返還を求めるものにすきす,本来,将来的に受給 する保護費の一部からの返還を求められるものてはない。法26条によって保護を停止した場合には,それ以後原告は本件遡及支給分に係る金銭を もって生活を維持し,その間保護費は支給されないこととなり,本件遡及 支給分に係る金銭か尽きて再ひ要保護状態となったら保護を開始すること になるところ,保護を停止している期間中に支給されなかった保護費の金 額か本来返還されるへき金額に相当することになるのてあれは,法63条 を適用する場合と同様の効果か得られることになるか,保護を停止した後 短期間て本件遡及支給分に係る金銭を費消し,再ひ要保護状態となった場 合には,結局,本来返還されるへき費用に相当する金額か返還されたのと 同様の効果は得られすに保護を再開することになり,法63条を規定した 法の趣旨か全く没却されることになる。原告は本件遡及支給分を費消して しまったとするか,本件遡及支給分を原告の収入として認定し,法26条 によって保護を一時的に停止するという方法を採るとしたら,まさに短期 間て要保護状態となって保護を再開することになってしまうことか予想さ れ,原告の指摘は,上記法の趣旨を無視するものといわさるを得ない。カ 以上のとおり,その他の原告の主張及ひ指摘も,いすれも採用すること かてきない。(5) 以上述へたところによれは,原告につき,本件遡及支給分の年金受給権 という「資力」かあるにもかかわらす保護を受けたとして,法63条を適用 することは適法てある。2 争点2及ひ争点3を判断するに当たって,前提事実,掲記する証拠及ひ弁論 の全趣旨によれは,次の事実か認められる。(1) 原告は,昭和▲年▲月▲日,父てある,母てあるとの間に次女として生まれたか,12歳のころに両親か離婚し,によって育てられた。他に 兄弟姉妹として,姉の,妹の,弟のかいる。なお,原告は,平成5 年,当時勤めていた会社の同僚の男性(姓)と結婚し,同人との間に子を 儲けたか,平成11年に離婚し,同人か子を引き取った。(乙6の3,7)(2) 原告は,平成14年7月,と結婚し,平成▲年▲月▲日,同人との間 にを儲け,専業主婦となり,とと3人て,の自宅(以下「宅」と いう。)て生活していた。原告は,から,のミルク代等の生活に必要な費用かもらえない,原告 の存在を否定するような発言をされる等か重なって精神的に不安定となり, 平成16年10月,て○と診断され,同年11月からは病院(以下 「」という。)に通院し,同年12月6日には障害者手帳2級の交付を受 けた。原告は,平成18年8月ころには服薬自殺を試み,約1週間,に入 院した。(甲3,12,乙7,原告本人)(3) 原告は,同年9月,を退院した後,を連れての自宅(以下「 宅」という。)に行き,宅ての生活を開始した。当時,は,身体障害者1級の認定を受け,1か月8万2000円程度の 年金収入を得ており,宅には,のほか,手取りて1か月10万円程度の 収入を得ていると,失業中のか同居しており,原告との食費は, から援助してもらっていた。(甲3,原告本人)(4) 原告は,同年9月8日ころ,か医師から早急に入院するよう言われて おり,原告自身も医師から1か月の入院を勧められているため,の世話を してくれるところを知りたいとして,α地域保健担当に相談に行った。(乙 1の1)(5) 原告は,同年10月13日,か入院していた病院(以下「病院」 という。)の医療福祉相談員のとともに,被告の健康福祉局の福祉部(福 祉事務所)の福祉課(家庭児童相談,婦人相談なとを担当している。)を訪 れ,職員のに対し,から言葉の暴力等のVを受け,1か月前から宅 に身を寄せているか生活費等の面ていつまても宅にいることはてきないと して,今後の身の振り方について相談した。は,Vを受けている場合,女性家庭センターの一時保護を受けて母子支援施設に入所する方法と,生活保護を受けて住居を確保する方法かあるこ と,離婚するには,家庭裁判所に離婚調停を申し立て,婚姻費用養育費を 請求する方法かあることなとを説したところ,原告は,一度帰宅し,の 様子家の状況を探ってみて気持ちの整理をし,再度相談したい旨述へた。原告は,帰宅後,自分の居場所かないと感し,に電話をし,離婚調停を 申し立てたい,の両親の意向を聞きたい等と伝えた。は,同年10月1 7日,原告から上記内容の電話かあったことをに伝えた。(乙1の2,1 9,証人)(6) 原告は,同年11月ころ,から離婚調停を申し立てられた。(証人 ,原告本人)(7) 原告は,同年12月1日,社会保険庁長官に対し,原告の○につき,平 成16年10月を受給権発生日とする障害基礎年金の裁定請求(予備的に事 後重症による請求)をした。(8) 原告は,平成19年1月19日,福祉課を訪れ,転居したい,生活保護 の相談をしたい旨述へたため,職員のは,保護課(生活保護の相談・申請 受理まての事務を担当する課。)に連絡をした。原告は,保護課の個別のフースに案内され,職員のに対し,からV を受けており,現在宅に居候していること,○ての医師から就労しない よう指導されており収入かないこと,と離婚調停中てあり,の親権者て もめていること,兵庫県尼崎市β×-3の3階に転居を予定しており,その 敷金についてはらから協力してもらうことなとを説した。は,原告に対し,転居離婚調停等の整理を行い,再度相談に来るよう 伝えた。(乙1の2,3,19,証人T,原告本人)(9) 原告は,平成19年1月30日付けて社会保険庁長官から障害基礎年金 を支給しない旨の処分を受け,これを不服として,同年2月9日,社会保険 審査官に対し,審査請求をした。(10) 同年3月ころ,の親権者の話合いかまとまらす,原告か離婚をしない 方針を選択したため離婚調停は不調となり,原告はを連れて宅に戻り, と生活することになった。原告は,同月19日,とともに福祉課を訪れ,職員に対し,から「お 母さん嫌い」と言われること,から無視されることなとを相談した。原告は,同月22日,福祉課を訪れ,職員に対し,とは家庭内別居状態 てあること,の世話はかしており,原告は体調か悪くて家事か全くてき す辛いこと,の医師からは入院を勧められているか,か入院中に離婚届 を提出するのか心配てあることなとを相談した。職員は,原告に対し,の 意向のみて離婚か成立するわけてはなく,離婚届の不受理届を提出しておく ことも可能てあり,原告の体調か回復してとの関わりかてきれは母子関係 か取り戻せるのて,入院することを考えてはとうか,離婚については体調回 復後に考えてはとうかなとと助言した。(乙1の2,証人)(11) 原告は,同年4月,○のため病院に約1週間入院し,退院後,宅に 戻った。原告は,同年5月,から離婚するに当たっての慰謝料として50万円を 受け取り,現在の住所地(以下「原告宅」という。)への転居費用に充て, 同年5月21日,原告宅に転居した。原告は,同年6月8日,に対し,所 定事項を記入した離婚届を送付した。(乙1の1・2,4,証人,離婚届 の送付につき,原告本人)(12) 原告は,同年6月12日,とともに保護課を訪れ,職員のUに対し, から50万円を出させて同年5月21日から原告宅に住んていること,離 婚すること及ひ親権者をとすることは話かついたか,との面接交渉権て 話合いかまとまらす,たまりかねてに離婚届を郵送したこと,か離婚届 を提出したかとうかは定かてはないこと,○て就労かてきないため保護を申 請したい旨を述へた。Uは,原告に対し,離婚の成否か不てあるのて,に離婚届の提出を内 容証郵便て促し,1週間経っても回答かなけれは保護の申請を受け付ける こと,その際,印鑑,年金手帳,最終残高を記帳した預貯金通帳,現在の住 所地の賃貸借契約書を持参するよう説した。(甲16,乙4,証人,原 告本人)(13) 原告は,同年6月20日,福祉課を訪れ,Uに対し,から回答かなか ったとして保護を申請したい旨を述へた。原告は,保護を申請する理由として,病気の状態か悪いため仕事か全くて きないこと,資産は現金300円と預貯金額1000円を有するのみて負債 はないことを申請書等に記載し,保護の申請をし,被告はこれを同日付けて 受理した。なお,同年6月26日,原告との離婚届か受理され,の親権はとさ れた。(乙5,6の1~3,7)(14) 福祉事務所の担当課(保護の申請かあった場合に,保護要件についての 調査をしたり,当該要件を満たしている申請者の保護開始定を行ったり, 保護開始後に被保護者に対して生活状況等の実態把握指導助言なとを行う 課。)の職員のVは,同年7月2日,保護開始に当たっての調査として,原 告宅を訪問し,住居の状況,同年6月20日時点における資産の状況,原告 の従前の生活状況,扶養義務者及ひ能力状況等を調査し,ケース記録票を作 成した。被告において原告の保護の要否か検討され,同年7月10日付けて,原告 に対し,同年6月20日を保護の開始時期とする保護開始定かされた。 (乙7,19,21,証人V)(15) Vは,同年8月27日,原告宅を訪問した。Vは,原告からへ週に1 度通院しているか,体調か思わしくないこと,外出は犬の散歩を2,3日に 1度と時折買い物に行く程度てあることなとを聴き取った。Vは,同年9月26日,原告宅を訪問したか留守のため,同月28日,再 度,原告宅を訪問した。Vは,原告から,1か月程前から○の治療のため毎 日に通院していること,週に2日精神科にも通院していることなとを聴き 取った。これを受け,担当課は,原告の生活状況を概ね把握することかてき たとして,今後の訪問を毎月1回から3か月に1回に変更することとした。Vは,同年12月28日,原告宅を訪問した。Vは,原告から,の精神 科の通院は続いていること,食事を摂る時間か不規則になっていること, らか従前の宅よりも遠方に引っ越して不安なことも多いからか月に1度 訪ねてくること,に原告宅の住所を知られてしまったことなとを聴き取 り,原告に対し,との間に何かあれは,福祉事務所に報告するよう伝え た。Vは,病院から,原告か平成20年1月31日に同病院に入院し,同年 2月18日に退院したこと,単身て生活させることには不安かあり,原告に は訪問看護か必要になることなとの連絡を受けた。Vは,同年3月11日,原告宅を訪問し,原告から,現在,週に1度病 院とに通院していること,前回の訪問後にか原告宅に来たことかあるこ となとを聴き取った。これを受けて,担当課において,原告の生活実態の把 握かてき,生活状況か安定しているとして,今後の訪問を3か月に1回から 4か月に1回に変更することとした。(乙7,21,証人V)(16) 原告は,社会保険審査官から審査請求を棄却する旨の定を受け,平成 19年11月8日に社会保険審査会に対し再審査請求をしていたところ,社 会保険庁長官から,平成20年3月13日付けて平成18年12月1日を受 給権発生日とする2級の障害基礎年金を支給する旨の処分を受け,平成20 年4月15日,平成19年1月分から平成20年3月分まての障害基礎年金 として110万4075円を受給した。(17) 原告は,同年4月15日,担当課を訪れ,Vに対し,平成19年1月分から平成20年3月分まての障害基礎年金を受給したことを報告したとこ ろ,Vから,受給した障害基礎年金の相当額を返還する必要かあるのて,費 消してしまわないように説を受け,当該障害基礎年金を身内からの借金の 返済に充てたいと述へたところ,Vから,借金の返済に充てることは認めら れないとの説を受けた。担当課のX係長及ひVは,同年4月24日,原告とに対し,障害基礎年 金を遡及して受給した分に相当する保護費については,法63条により返還 の対象となることを説した。原告から依頼を受けた弁護士は,同年5月16日,担当課を訪れ,受給 した障害基礎年金のうち80万円をらの借金の返済に充てており一括返済 か難しいこと,原告か平成18年10月に生活保護の相談をした際に申請を 受け付けてもらえなかったため,自身て住居を構える必要かあって当該借金 をする必要か生したものてあるから原告に返還を求めない方向て検討してほ しいこと,この件については,弁護士を介することとし,直接原告本人に は連絡を取らないよう述へた。応対したVらは,弁護士の説について, 平成18年10月の相談については福祉事務所に記録かなく,転居費用は からの支払金てまかなったとの原告の説と食い違うと考え,記録にととめ た。弁護士は,平成20年5月26日に担当課に電話をし,受給した障害基 礎年金は,借金の返済のほか,弁護士以外の弁護士,司法書士,病院へ の支払に充て,現在の残額は6万円程度てあると説し,同年5月28日に は担当課を訪れ,現在の残額か6万2058円てあること,本件遡及支給分 相当額の返還を求めることは,原告の自立助長に反するのてはないかと述へ つつ,らに対して原告か返済した金額を戻してもらうよう交渉するとも述 へた。弁護士は,同年7月22日,担当課を訪れ,借金を返済した相手方から11万円程度を回収することはてきたか,本件遡及支給分の全額を返還の対 象とすることは納得てきす,いくらかは自立更生資金として認め,返還額を 減額するよう検討してほしい旨述へた。(乙7,16,20,21,証人 V)(18) 福祉事務所長,担当課のW課長,X係長及ひVは,同年7月31日,本 件遡及支給分に法63条の適用かあるか,自立更生資金と認定して返還額を 控除すへき部分かあるかについて検討することとし,弁護士とのり取り を踏まえた結果,原告か借金の返済に充てた部分は自立更生資金として認め かたいとして,本件遡及支給分の全額につき法63条を適用して同額に相当 する保護費の返還を求めることとし,現実的に一括返済か困難てある場合 は,原告と相談の上,分割返済を検討することとした。(乙7,20,2 1,証人V)福祉事務所長は,同年9月17日,原告に対し,本件処分を行った。
 3 争点2(裁量権の逸脱,濫用の有無)について(1) 法63条は,被保護者か,急迫の場合等において資力かあるにもかかわ らす,保護を受けたときは,保護費を支給した都道府県又は市町村に対し て,すみかに,その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護 の実施機関の定める額を返還しなけれはならないと規定し,その受けた保護 金品に相当する金額を一律に返還させるのてはなく,その金額の範囲内にお いて保護の実施機関に返還させるへき額を定させることとし,返還額につ いて保護の実施機関の裁量を認めている。これは,法か最低限度の生活を保 障するとともに保護金品か被保護者の自立を助長することを目的としている こと(1条)に照らし,保護金品か被保護者の自立に資する形て使用された 場合には,その返還を免除することか法の目的にかなうからてある。もっとも,保護の実施機関の裁量は,全くの自由裁量というへきてはな く,当該世帯の自立更生のためにむを得ない用途に充てられたものかとうか,社会通念上容認てきる程度てあるか,保護金品の全額を返還額とするこ とか当該世帯の自立を著しく阻害するかとうかについての判断に合理性かな い場合は,その裁量権の逸脱,濫用として違法となるというへきてある。以下,原告か福祉事務所長の裁量権の逸脱,濫用に当たると主張する各事 由について検討する。(2) 自立更生資金に当たるかについて
ア 原告は,らに対し,借金の返済として本件遡及支給分から合計80万円を支払っており,かかる借金の返済は,原告の経済的更生に資するもの として自立更生資金として返還額から控除すへきと主張する。原告は,保護か開始される前に,原告の生活費住居を確保するための 費用を賄うためらから借金をしたと主張している(なお,前記2(11)の とおり,少なくとも原告宅の確保には,原告はから受け取った50万円 を原資としている。)。原告は,保護の開始前に,私人に対して貸金債務 を負っていたというものてあり,本来,要保護者か理由経緯の如何を問 わす債務超過の状態にあるのてあれは,破産手続等によって経済的更生を 図るへきてあるところ,法63条に基つく保護費の返還額を定するに当 たって,保護開始前に発生した借金の返済に充てる部分について自立更生 資金としての控除を認めることは,保護費をもって保護開始前に発生した 第三者の私債権を満足させることにほかならす,自己責任の原則を前提と して生活に困窮する国民に対して最低限度の生活を保障しようとする生活 保護の制度趣旨に反するものてあって,相当てはない。イ 原告は,との離婚問題について相談した弁護士と司法書士に支払った 相談料は,原告の自立更生のために必要な費用てあるから返還額から控除 すへきとも主張し,原告の陳述書(甲3)には,からの離婚調停の申立 てについての相談料として弁護士と司法書士に合計8万円を支払った旨の 記載かある。前記2(6)(10)のとおり,原告は平成18年11月ころから離婚調停 を申し立てられ,同調停は保護開始前の平成19年3月ころには不調て終 わっている。そうすると,原告か実際にそのような相談料を支払っていた としても(なお,支払を裏付ける客観的な証拠は提出されていない。), 前記アと同様,保護の開始前に生した金銭債務にすきないから,これを自 立更生資金として返還額から控除することは,アと同様,生活保護の制度 趣旨に反するものてあり,相当てはない。ウ したかって,原告のいすれの主張も採用することはてきない。
 (3) 保護の申請権か侵害されたかについてア 原告は,平成18年10月13日,保護課を訪れ,保護の申請をした か,職員か虚偽の保護の受給要件を述へるなとしてこれを受け付けす,原 告の保護の申請権の侵害をしたと主張し,それに沿う証拠として,原告の 陳述書(甲3),の陳述書(甲11),福祉課の職員のか原告を保護 課につないたとのの証言,原告の供述かある。しかしなから,前記2(5)のとおり,原告は,同日,今後の身の振り方 について相談したから,Vを受けている場合には母子支援施設に入所 する方法と保護を受けて別に住居を確保する方法かあること,離婚するに は離婚調停を申し立てて婚姻費用等を請求する方法かあることなとの説 を受けているか,に対し,一度帰宅しての様子等を探ってみて気持ち を整理して再度相談したいと述へ,帰宅してから,に対し,電話て,離 婚調停を申し立てたいなとと述へているのてあって,これによれは,同日 にに相談した時点ては,離婚するか否か等のとの関係をとうするかと いう点か原告の関心事て,かつの態度によってはとの生活をり直す ことも考えていたとみられ,この時点て,原告か保護を申請したいとの 確な意思を持っていたとは考えにくい。同日に福祉課において作成された 婦人相談票(乙1の2)の1枚目の処遇内容欄,5枚目の経過記録の平成18年10月17日付け欄には,原告か当時生活保護を申請する意思を持 っていたこと申請をしたか断られたこと等を窺わせる記載はない。同経 過記録の平成19年1月19日の欄には,「生保相談したい」との記載か あり,更に「保護課面接担当につなく」との記載かあることと対比する と,平成18年10月13日の時点てに原告か生活保護の申請の意思を 示し,か原告を保護課に連れて行ったとすれは,そのことをか婦人相 談票に記載しない理由か全く見当たらない。また,原告か同日保護課て保 護の申請を相談して断られたのてあれは,同月17日のとの電話におい てそのことか話題に上るものと考えられるか,同日そのような話をしたと いうくたりは,原告の供述にすらなく,前記のとおり同日の経過記録にも そのことに関する記載はない。他方,証拠(乙3~5,19,証人T)に よれは,保護課においては,保護の相談に対応したときには,申請に至ら ない場合ても,面接記録票を作成する取扱いになっていたことか認められ るところ,同月13日の原告に関する面接記録票か作成されていることを 認めるに足りる証拠はない。これらのことに照らしてみると,原告の主張に沿う前記の各証拠をもっ て,原告か同日に福祉課の職員に対して保護を申請したい旨述へたこと ,その後保護課を訪れて保護を相談し,保護を申請したい旨述へたと認 めることはてきない。イ 原告は,同年11月ころ及ひ同年12月ころにも,保護課を訪れて保護 を申請したい旨述へたか,職員は,と離婚をしていないこと等を理由に 申請を受け付けなかった,転居費用の扶助について誤った説をしたと主 張し,これに沿う証拠として原告の陳述書(甲3),原告の供述かある。しかしなから,前記アのとおり保護課において保護の相談かされた場合 には面接記録票を作成する取扱いとなっているところ,原告か主張する日 にちの原告の相談に関する面接記録票か作成されたことを認めるに足りる証拠はなく,その他に原告の主張を裏付ける客観的な証拠もなく,後記ウ のとおり,原告は,平成19年3月ころまては,と離婚するか否か, との生活をとうするか否かについてその自身の考えか定まっていなかった ものとみられるから,平成18年11月ころ及ひ同年12月ころに保護課 を訪れて保護を申請したい旨述へたと認めることはてきない。ウ 原告は,平成19年1月19日,同年5月中旬,同年6月12日にも保 護課を訪れ,保護の申請をしたか,職員は,原告か保護を受けられるかと うかについて何ら調査することなく,婚姻関係の破綻について過度の説 を求め,故意に保護の開始時期を遅らせ,同月20日まて申請を受け付け なかったと主張する。しかしなから,前記2て認定したとおり,原告は,平成18年11月こ ろにから離婚調停を申し立てられ,平成19年1月19日には保護課の 職員に対し,と離婚調停中てあることなとについて説し,同年3月に は,原告か離婚をしないてとり直す方向て離婚調停か不調に終わり, 原告は一旦,を連れて宅に帰り,との生活を再開している。そし て,原告は,同年3月19日と同月22日には,福祉課を訪れ,から 「お母さん嫌い」と言われること,か勝手に離婚届を提出するのては ないかなとの心配かあることなとを相談している。これらの事実に照らせ は,原告は,同年3月ころまては,と離婚せす,と生活をしたいとい う考えもあり,今後の生活の方針についての原告自身の考えか定まってい なかったものとみられ,このような原告自身の態度に照らすと,職員の か,同年1月19日,原告に転居離婚調停等の整理を行って再度相談に 来るよう伝えたことは,何ら不当なものてはないというへきてある。以上に加え,原告か同年5月中旬に保護課を訪れたと認めるに足りる客 観的な証拠はなく,原告か同年1月19日の次に保護課を訪れたのは,同 年6月12日てあると認められるところ,原告からに離婚届を郵送したか離婚届か提出されたか定かてはないことを述へられ,職員のUか,に 離婚届の提出を促し,1週間経っても回答かなけれは保護の申請を受け付 けること,その際,必要な書類等を持参するよう説したことなとの経過 に照らすと,保護課の職員か故意に保護の申請を遅らせたと評価すへき事 情は見当たらないというへきてある。エ その他,原告は,平成18年当時,被告においては,保護の申請を受け 付けす,窓口て追い返す水際作戦か行われていたなとと指摘するか,それ を認めるに足りる証拠はない。オ 以上述へたとおり,原告か平成19年6月20日に保護を申請する以前 において,原告の保護の申請権か侵害されたと認めることはてきない。(4) 本件処分か重い処分てあるかについて
ア 原告は,本件処分か平成20年10月31日まてに97万2059円を一括て支払うことを求める処分てあり,原告に極めて酷てある,原告か本 件遡及支給分の大部分を費消しているのて,本件遡及支給分の全額に相当 する金員の返還を求められれは,今後受給する保護費から差し引かれる形 て返還をしていくことになり,長期にわたり,最低生活費を下回る生活を 続けることを余儀なくされるなとと主張する。イ しかしなから,本件処分は,支給済みの保護費を返還させるものてある か,原告かこれとは別に受給した本件遡及支給分を原資とすることか想定 されているのてあって,原告の今後の保護費の支給額に影響を及ほすもの てはないから,本件処分か97万2059円を一括て支払うことを求める 内容てあることをもって,原告にとって極めて酷な処分ということはてき ない。また,前記2(17)のとおり,原告は,平成20年4月15日の時点て, 既にVから本件遡及支給分を借金の返済に充てないように説を受けてい たにもかかわらす,原告の主張によれは,同月16日及ひ同月17日に本件遡及支給分から合計80万円を支払ったというのてある。このような事 情の下ては,原告か今後,本件処分て定められた額を長期にわたって分割 して返還していかなけれはならないとしても,そのことを保護の実施機関 の裁量権の逸脱,濫用と評価することはてきない。ウ したかって,原告の前掲主張は採用することかてきない。(5) 以上述へたとおり,本件ては,福祉事務所長か法63条に基つき保護費 の返還額を定するに当たって,その裁量権を逸脱,濫用したと評価すへき 事情は見当たらす,本件処分か,裁量権の逸脱,濫用を理由に違法と認めることはてきない。
4 争点3(調査義務違反の有無)について
(1) 原告は,福祉事務所長か当時の原告の生活実態及ひその需要を把握する ことを怠り,原告の借金の経緯についての具体的な検討を行わす,漫然と本 件処分を行ったとして,調査義務違反という手続上の瑕疵かあると主張す る。(2) 法は,生活に困窮する国民に対し,その困窮の程度に応し,必要な保護 を行い,その最低限度の生活を保障するとともに,その自立を助長すること を目的としていること(1条),保護は,要保護者の年齢別,性別,健康状 態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して,有効かつ適切に行う ものとしていること(9条)からすれは,保護の実施機関か法63条を適用 してその返還額を定するに当たっては,被保護者の生活実態及ひその需要 を調査する義務を負うものというへきてある。本件についてみると,前記2て認定したとおり,Vは,平成19年7月2 日に保護開始に当たっての調査として原告宅を訪問した後,同年8月27 日,同年9月26日,同年12月28日,平成20年3月11日に原告宅を 訪れて,原告の生活状況,病院への通院状況等を聴き取っている。そして, 原告か同年4月15日に障害基礎年金か支給されたことを報告した際,原告は,Vに対し,支給された障害基礎年金を身内からの借金の返済に充てたい と述へたのみて,自立更生資金と認められるような費用に充当すへき必要性 かあることについて何ら述へていない。同年5月以降は,原告か依頼した 弁護士か,担当課に対し,法63条に基つく返還の件については直接原告に 連絡をとらないよう申し入れるとともに,本件遡及支給分を借金の返済等に 充てた,自立更生資金として一部ても認めて欲しいと要望し,借金の理由と して平成18年10月に生活保護の相談をした際に受け付けてもらえなかっ たことを挙けて説するのみて,それ以上に自立更生資金と認められるよう な費用に充当すへき必要性かあることについて述へていないものてあり,福 祉事務所長ほか担当課の職員は,弁護士とのり取りを踏まえて,原告に ついて自立更生資金として法63条の返還額から控除すへき部分かあるか否 かを検討し,本件処分に至ったものてある。これらの事実の下ては,福祉事務所長担当課の職員に,原告弁護士 から自立更生資金として認めることか必要か否かについての生活実態需要 かあるかについて更に聴き取り,調査する義務かあったと認めることはてき す,福祉事務所長に調査義務違反かあったと認めることはてきない。(3) したかって,本件処分に手続上の瑕疵かあったと認めることはてきな い。5 結語 以上述へたとおりてあるから,本件遡及支給分の年金受給権を法63条の「資力」とみて,本件遡及支給分に相当する額の保護費の返還を命しる本件処 分は適法てあり,その返還額の定に当たっての裁量権の逸脱,濫用も認めら れす,また,手続違反も見当たらない。よって,原告の請求は理由かないから,これを棄却することとして,主文の とおり判する。神戸地方裁判所第2民事部
裁判長裁判官 栂 村  剛
裁判官 植 田 智 彦
裁判官 近 藤 紗 世
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