平成24年7月19日判言渡 同日原本交付 裁判所書記官 平成22年(ワ)第2497号 解約違約金条項使用差止請求事件(第1事件) 平成23年(ワ)第917号 不当利得返還請求事件(第2事件) 平成24年(ワ)第555号 不当利得返還請求事件(第3事件) (口頭弁論終結の日 平成24年4月26日)判
主文
1 被告は,消費者との間て,au通信サーヒス契約を締結するに際し,別紙1記載の解約金条項を内容とする意思表示を行ってはならない。
2 被告は,原告Aに対し,1975円及ひこれに対する平成23年3月29日から支払済みまて年5分の割合による金員を支払え。
3 被告は,原告Eに対し,5975円及ひこれに対する平成23年3月29日から支払済みまて年5分の割合による金員を支払え。
4 原告らのその余の請求をいすれも棄却する。
5 訴訟費用は,第1・第2・第3の各事件を通し,下記のとおりとする。原告ら及ひ被告に生した費用のうち,
(1) 原告法人に生した費用の2分の1と被告に生した費用の6分の1を同原告の負担とし,
(2) 原告Aに生した費用の4分の3と被告に生した費用の14分の1を同原告の負担とし,
(3) 原告Eに生した費用の3分の1と被告に生した費用の63分の2を同原告の負担とし,
(4) 原告C,同B,同D,同F及ひ同Gに生した費用と被告に生した費用の21分の2を同原告らの各負担とし, (5) その余を被告の負担とする。6 この判は,第2項及ひ第3項に限り,仮に執行することかてきる。
 事実及ひ理由第1 請求の趣旨
(第1事件)
1 被告は,消費者との間て,au通信サーヒス契約を締結するに際し,別紙1記載の解約金条項なと,下記の事項を内容とする意思表示を行ってはならな い。記 au通信サーヒス契約における2年の定期契約を締結した消費者は,同契約か自動更新される前に,被告又は消費者か同定期契約を解除したときは,被告に対し,9975円(消費税転稼分を含む。)以上の解約金を支払う。2 被告は,消費者との間て,au通信サーヒス契約を締結するに際し,別紙1 記載の解約金条項なと,下記の事項を内容とする意思表示を行ってはならない。
au通信サーヒス契約における2年の定期契約を締結した消費者は,au通信サーヒス契約か2年経過して自動更新された後,被告又は消費者か同定期契約を解除したときは,被告に対し,解約金を支払う。
3 仮執行宣言
(第2事件)
1 被告は,原告A,同B,同C,同D,同Eに対し,それそれ9975円及ひこれに対する平成23年3月29日から支払済みまて年5分の割合による金員を支払え。
2 被告は,原告Fに対し,1万9950円及ひこれに対する平成23年3月29日から支払済みまて年5分の割合による金員を支払え。
 3 仮執行宣言(第3事件)
1 被告は,原告Gに対し,9975円及ひこれに対する平成24年2月29日から支払済みまて年5分の割合による金員を支払え。
 2 仮執行宣言第2 事案の概要 本件は,
1 消費者契約法(以下「法」という。)13条に基つき内閣総理大臣の認定 を受けた適格消費者団体てある原告法人か,電気通信事業等を目的とする 株式会社てある被告に対し,被告か消費者との間て携帯電話を利用する通 信サーヒス契約を締結する際に現に使用し又は今後使用するおそれのある, 消費者か2年間の定期契約を契約期間の途中に解約する際に解約金を支払 うことを定める契約条項か,法9条1号及ひ10条により無効てあると主 張して,法12条3項に基つき,被告か消費者との間て上記定期契約を締 結する際,上記解約金条項を内容とする意思表示をすることの差止めを請 求する事案(第1事件),及ひ
2 被告との間て約2年間の定期契約てある上記通信サーヒス契約を締結し,契約期間途中の解約の際に9975円(消費税転嫁分を含む。以下,同様 とする。)の解約金の支払義務かあることを定める契約条項に基つき,被告 に対し解約金を支払った第2事件原告ら及ひ第3事件原告(以下,併せて 「個人原告ら」という。)か,上記解約金条項は,法9条1号及ひ10条に より無効てあると主張して,被告に対して,不当利得返還請求権に基つき, 上記解約金相当額及ひこれに対する訴状送達日の翌日を起算日とする民法 所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案(第2事件,第 3事件)てある。
1 前提事実(証拠等の掲記のない事実は争いかない。) (1) 当事者ア 原告法人は,法13条の規定に基つき,内閣総理大臣の認定を受けた 適格消費者団体てある。イ 被告は,電気通信事業等を目的とする株式会社てあり,不特定かつ多 数の消費者との間て,携帯電話端末を利用する通信サーヒス契約(au 通信サーヒス契約。以下「本件通信契約」という。)を締結している。(2) 本件通信契約における定期契約の内容等 本件通信契約に適用される約款(以下「本件約款」という。)には,次の内容の定めかある(甲3)。
 ア 契約期間
消費者は,被告との間て本件通信契約を締結する際,契約期間の定め のない一般au契約(以下「通常契約」という。)のほか,契約期間の定 めのあるau定期契約を選択することかてきる(本件約款6条)。このう ち,第4種定期au契約(以下「本件定期契約」という。)は,契約締結 日の属する月から数えて24か月目の月の末日をもって期間満了となる約 2年間の定期契約てある(同23条)。イ 定期契約の更新 本件定期契約は,契約期間の満了日の翌日(以下「更新日」という。)に自動的に更新される(本件約款24条1項)。たたし,更新日の属する 月に解約をした場合は,更新日に通常契約を締結したものとみなされ, 更新の効果は生しない(同2項)。ウ 本件定期契約と通常契約の契約内容の差異
(ア) 本件定期契約の月々の基本使用料金の額は通常契約の月々の基本使用料金の額の半額に設定されている(本件約款78条,料金表第1表 第1,1の(4)の4,2-1-1の(1)及ひ(5))。(イ) 本件定期契約の契約者は,本件定期契約を解約する際には,更新日 の属する月に解約する場合,解約に伴い契約種別を変更して本件通 信契約を継続する場合等,本件約款別記20に定める場合を除き,被 告に対し,契約解除料(以下「解約金」という。)として9975円を 支払わなけれはならない(本件約款80条,料金表第1表第4,2, 別記20。以下「本件解約金条項」という。)。(3) 個人原告らの解約金の支払等(弁論の全趣旨) ア 原告A(ア) 原告Aは,平成18年2月20日,被告との間て,本件定期契約を 締結した。(イ) 上記契約は,平成20年2月1日に,更新された。
(ウ) 同原告は,平成21年12月8日,本件定期契約を解約し,平成22年1月9日,本件解約金条項に基つき,被告に対し,9975円を支払った。
 イ 原告B
(ア) 原告Bは,平成19年3月15日,被告との間て,本件定期契約を 締結した。(イ) 上記契約は,平成21年3月1日に,更新された。
(ウ) 同原告は,平成22年3月23日,本件定期契約を解約し,平成22年5月10日,本件解約金条項に基つき,被告に対し,9975円を支払った。
 ウ 原告C
(ア) 原告Cは,平成19年10月3日,被告との間て,本件定期契約を 締結した。(イ) 上記契約は,平成21年10月1日に,更新された。
(ウ) 同原告は,平成22年4月1日,本件定期契約を解約し,平成22年6月17日,本件解約金条項に基つき,被告に対し,9975円を支払った。
 エ 原告D
(ア) 原告Dは,平成22年1月18日,被告との間て,本件定期契約を 締結した。(イ) 同原告は,平成22年5月20日,本件定期契約を解約し,平成2 2年7月26日,本件解約金条項に基つき,被告に対し,9975円 を支払った。オ 原告E
(ア) 原告Eは,平成20年8月13日,被告との間て,本件定期契約を締結した。
(イ) 同原告は,平成22年7月7日,本件定期契約を解約し,同月31日,本件解約金条項に基つき,被告に対し,9975円を支払った。
 カ 原告F(ア) 原告Fは,平成19年3月20日及ひ同年9月6日,被告との間て, それそれ本件定期契約を締結した。(イ) 同原告は,平成20年12月22日,上記各契約を解約し,平成2 1年2月2日,本件解約金条項に基つき,被告に対し,1万9950 円を支払った。キ 原告G
(ア) 原告Gは,平成23年3月18日,被告との間て,本件定期契約を締結した。
(イ) 同原告は,平成23年6月7日,本件定期契約を解約し,同日,本件解約金条項に基つき,被告に対し,9975円を支払った。
 (4) 書面による事前の請求原告法人は,平成22年3月1日,被告に対し,法41条所定の書面により,消費者との間て本件通信契約を締結するに際し,本件解約金条項を内容とする意思表示を行わないことを請求した。
 2 争点及ひこれに関する当事者の主張(1) 本件解約金条項か法9条1号により無効てあるか (原告らの主張)ア 本件解約金条項の性質
本件解約金条項は,本件定期契約を解約する際には,理由の如何を問 わす,解約金として9975円を支払うことを定めており,解約に伴う 違約金としての性質を有する。イ 本件解約金条項に係る解約金の額か,解約に伴い被告に生しる「平均 的な損害」(法9条1号。以下「平均的損害」ということかある。)の額 を超過すること(ア) 基本使用料金の累積割引額について
被告は,本件定期契約か期間満了前に解約されると,2年間の定期契 約てあることを前提に割引をした基本使用料金の累積割引額か,平均 的損害として生しると主張する。しかし,被告は,本件定期契約に加入した場合の基本使用料金の額 を50%割引てあるとして,あたかも割引サーヒスを提供しているか のように見せているか,実際には,同業他社との関係て,基本使用料 金を競争可能な価格てある従前の半額程度に設定せさるを得なくなっ たにすきない。新規契約者のほとんと,又は,全ての者か本件定期契 約に加入しているのか実態てあり,本件定期契約の本質・実態は,競 争可能な基本使用料金の価格に不当な2年間拘束を付加したたけのも のてある。このような本件定期契約の本質・実態に照らせは,本件定 期契約は,基本使用料金の割引という利益を消費者に付与するものて はなく,基本使用料金の累積割引額を本件定期契約の中途解約に伴う損害とみることはてきない。
(イ) 得へかりし通信料収入等について
被告は,本件定期契約か解約された場合,契約か継続していれは契 約期間満了まてに得られたてあろう通信料収入等か損害として生しる と主張する。しかし,解約により,被告は,将来にわたって通信サーヒスの提供 を免れるのてあるから,被告には損害か生しない。また,被告は,解 約後の得へかりし通信料等の収入の内訳は,1代理店へのコミッショ ン等,2設備投資・運用費用等,3逸失利益てあると主張するか,次 のとおり,これらか平均的損害になるとはいえない。1 代理店へのコミッション等 具体的な内容からかてはない。また,消費者か全く関与しない被告と代理店との間ての取りめに基つく支払いは,消費者の中途解約との関係て相当因果関係のある損害ということかてきない。
 2 設備投資・運用費用等具体的な内容か全く不てある。また,個別の契約毎に発生する 費用てはないから,個別の契約の解約による損害とはならない。3 逸失利益 準委任契約はいつても自由に解約することかてきるから(民法656条,651条1項),得へかりし通信料収入は損害とはならない。 また,平均的損害に逸失利益か含まれるのは,当該消費者契約の 目的か他の契約において代替ないし転用される可能性のない場合に 限られるというへきてある。携帯電話事業は,大量の新規契約,解 約か予定されていることから,解約に伴う逸失利益は平均的損害には含まれないというへきてある。 ウ 更新後について
本件定期契約においては,契約後2年を経過すると,自動的に契約か 更新される。仮に,契約から2年以内に解約をする際に解約金を徴収す ることか,被告に生しる平均的損害を補するものとして許容されると しても,更新かされた後には,契約者は既に2年間の契約期間に拘束さ れた以上,解約金を徴収されることに合理性はない。少なくとも,本件 解約金条項のうち,更新後の本件定期契約に適用される部分は,法9条 1号に反し,無効てある。(被告の主張)
ア 本件解約金条項の性質
本件定期契約においては,契約者か死亡した場合等,一定の場合には, 解約金の支払いを要しないのてあるから,理由の如何を問わす解約金を支 払わなけれはならないことを理由として本件解約金条項か違約金に当 たるとする原告らの主張は誤りてある。イ 解約に伴い被告に生しる平均的損害の額 本件定期契約か解約された場合,被告には,(ア)月々の基本使用料金の累積割引額と(イ)通信料収入等の減少額か平均的損害として生し,下記の とおり,その額は9975円を優に超える。(ア) 基本使用料金の累積割引額について
a 本件定期契約は,契約者か中途解約をしないことを前提として, 通常契約の基本使用料金の割引をする制度てあるか,有期契約たる 本件定期契約を中途解約するということは,当初から期間の定めの ない契約を締結したのと同しことてあると評価し得るものてある。
 そうすると,契約者か本件定期契約を中途解約した場合は,中途解 約しないことを前提に割引をした基本使用料金の累積額に相当する 損害か被告に生しる。b 平成21年度における,本件定期契約の加重平均値(本件定期契約において,契約者か選択し得る料金フランのうち代表的なものに 関し,各料金フランの割引額に,その料金フランを選択している契 約者数の比を乗して得た額を合算した,1か月あたりの平均的な割 引額)は1748円てある。本件定期契約を中途解約した者の契約 時から解約時まての平均月数は11.59か月てあることから,被 告は,基本使用料金の累積割引額に係る損害として,1748円× 11.59=2万0259円の平均的損害を被っているといえる。(イ) 通信料収入等の減少について
a 平成21年度における,本件定期契約におけるARPU(通信事業者の1契約あたりの1か月の売上を表す数値。)は,5624円て ある。また,本件定期契約を契約しなから中途解約した者の契約時 から解約時まての平均月数は11.59か月てあり,予定された契 約期間てある2年間と比較すると,12.41か月間,契約期間か 短くなっている。したかって,被告には,5624円×12.41 =6万9793円の通信料収入等の減少か生している。b 被告のARPUに占める各種コストの内訳としては,1料金を回 収するためのコスト(請求コスト)及ひ通話等の際に他の電気通信 事業者に支払う接続料金(アクセスチャーシ)等,契約者の解約に より被告か以後の支払いを免れるもの,2代理店において契約者か 契約を締結した際に被告から販売代理店に支払われる手数料,設 備投資・運用費用等,解約以降も支出を止められないもの又は既に 支出済みのものかあり,その余か3逸失利益となる。上記1ないし 3の割合は,概ね,1か15~20%,2か55~65%,3か2 0~25%てある。上記によれは,解約に伴い被告に生しる損害額は,通信料収入等 の平均的な減収額てある6万9793円(前記a)から,解約に伴い被告か支出を免れる上記1を控除した額てあるから,通信料収入 等の減収額に係る損害は,5万5834円ないし5万9324円と なる。ウ 更新後について 被告は,契約者に対し,更新するか否かの判断を2年毎に求めており,更新後についても,更新とはいいなからも,本件定期契約を2年毎に新 たに締結するのと同しことてあるから,中途解約により被告に生しる損 害は,更新前と同様てある。エ(原告らの主張)イ,(イ),3に対する反論 電気通信サーヒスの提供契約は,不特定多数の消費者との間て可能な限り多数の契約を締結することにより,契約の一つ一つから得られる利益の 集積によって事業を成り立たせることを前提する契約てあり,ある一人か 解約し,次いて,他の一人か契約したとしても,それは解約された契約か 次の契約によって代替されたとはいえない。したかって,本件通信契約に おいて,逸失利益を平均的損害の中に含めるへきてはないという原告らの 主張は誤りてある。(2) 本件解約金条項か,法10条により無効てあるか (原告らの主張)ア 法10条前段の意義について
(ア) 任意規定の有無によって不当条項の有効・無効か左右されることは 極めて不合理てあることから,「民法1条2項に規定する基本原則に反 して消費者の利益を一方的に害する」という法10条後段の要件を満 たす契約条項は,任意規定の有無にかかわらす,無効てある。(イ) 仮に,同条前段に一定の意義かあるとしても,「民法,商法,その他 の法律の公の秩序に関しない規定」とは,講学上の任意規定に限定さ れす,判例条理に基つく法準則,契約に関する一般法理も含まれると解すへきてある。
イ 法10条前段該当性について
(ア) 本件通信契約は,消費者の需要に応した各種の通信サーヒスを提供 する行為てあり,法律行為以外の事務の委託と解されるのて,準委任 又はこれに類似する非典型契約にあたる。準委任契約においては,民 法656条,651条1項により,有期契約においても解約の自由か 原則てあり,解約者は,相手方にとって不利な時期に解約した場合に のみ,同条2項に基つき,損害賠償義務を負うにすきない。本件解約金条項により,契約者は,民法651条2項によっては損 害賠償債務か発生しない場合において,解約に伴い被告に生しる損害 をはるかに超える額の解約金の支払いを余儀なくされるから,本件解 約金条項は,民法656条,651条に比して,消費者に不利益を与 える契約条項てあるといえ,法10条前段の要件を満たす。(イ) 仮に,本件通信契約か準委任ないし準委任に類似する性質を有しな いとしても,ナンハーホータヒリティー制度(以下「MNP制度」と いう。)の趣旨,継続的契約関係においては長期間の拘束か許されす, 一定の場合には解約か認められるへきてあるという契約の基本原理に 照らせは,本件解約金条項は法10条前段の要件を満たす。ウ 法10条後段該当性について
(ア) 被告は,同業他社との関係て,基本使用料金を競争可能な価格てある従前の半額程度に設定せさるを得なくなったたけてあるにもかかわ らす,本件定期契約を締結した場合の月額基本使用料金の額を50% 割引てあるとして,あたかも割引サーヒスを提供しているかのように 見せている。実際には,新規契約者のほとんと,又は,全ての者か, 本件定期契約を締結しているのか実態てあり,本件定期契約の本質・ 実態は,競争可能な基本使用料金の価格に不当な2年間拘束を付加したたけのものてあって,契約者に基本使用料金の割引というメリット を付与するものてはない。したかって,本件解約金条項は,消費者に とって利益かなく,義務たけを課す規定てあるから,消費者に一方的 に不利益な条項に該当する。(イ) MNP制度は,電話番号を維持しつつ契約先を他の電気通信事業者 に変更てきる制度てあり,その制度趣旨は,利用者の利便性の向上, 携帯電話事業者間の競争の促進等にある。同制度により,消費者は, 自由に携帯電話会社を選択する権利・利益か保障されている。本件解 約金条項は,定期契約期間中の解約を不当に制限し,MNP制度によ り保障された消費者の自由に携帯電話会社を選択てきる権利・利益を 阻害するといえるから,消費者に一方的に不利益な条項に該当する。(ウ) 本件約款において,本件定期契約の基本使用料金は,通常契約の基 本使用料金の半額に設定されており,しかも,被告は,本件定期契約 の契約者に限り,携帯電話端末の割引等の特典を付与し,本件定期契 約のメリットを強調している。また,本件通信契約には多くの料金体 系割引フランかあり,とれか消費者にとって有利てあるかは分かり にくいのか現状てある。結果として,消費者は,代理店等て勧められ る本件定期契約に加入することかほとんとてあり,その契約か自分に とって最も相応しいものかとうかは十分に理解てきていない。本件定 期契約を選択する消費者か多いことは,同契約か客観的にみて消費者 にとって魅力的なフランてあることを意味しない。エ 更新後について 本件定期契約においては,契約後2年を経過すると,自動的に契約か更新されることとなっている。仮に,契約から2年以内に解約する際に 解約金を徴収することか許容されるとしても,更新かされた後は,契約 者は既に2年間の契約期間に拘束された以上,解約金を徴収されることに合理性はない。少なくとも,本件解約金条項のうち,更新後の本件定期契約に適用される部分は,法10条後段に反し,無効てある。
 (被告の主張)ア 法10条前段の意義について 法10条前段にいう「民法,商法,その他の法律の公の秩序に関しない規定」は,文のある任意規定に限られる。 イ 法10条前段該当性について本件定期契約は,次の理由等から,準委任契約とはその本質を全く異 にする契約てあり,民法651条の規律は及はない。(ア) 本件通信契約は,被告か顧客に対し電気通信サーヒスを提供し,顧客かこれに対する対価を支払うことを中核的な要素とする有償双務契約てある。
(イ) 電気通信サーヒスには,電話サーヒス,インターネットサーヒスその他の多様なサーヒスか含まれ,被告と顧客の間には複合的な契約関 係か成立することから,本件通信契約は単に事務の委託を目的とする 契約てはない。(ウ) 本件通信契約には準委任契約の本質てある当事者間の特別な信任関 係かない。(エ) 本件通信契約は有期契約てあり,解約自由か原則とはなっていない。
 (オ) 本件通信契約は,準委任契約と異なり,受任者の裁量の余地か少な く,むしろメール電話等,契約者の主体的な利用行為か前提となっている。
ウ 法10条後段該当性について
(ア) MNP制度は,他の電気通信事業者へ契約先を変更しても,現在の 電話番号を維持てきるという制度にすきす,電気通信サーヒスの利用 契約は何時ても自由に終了させる契約てなけれはならないことを定める制度てはない。有期契約てある本件定期契約について,中途解約権 を認めるか否かは,MNP制度とは無関係てあり,被告の営業判断に 委ねられるへき事柄てある。(イ) 本件定期契約は,2年間の有期契約てあるから,契約者は,本来, 契約期間中は契約関係を維持すへき義務を負うのてあって,解約金の 支払いを要するとはいえ,契約者に解約権を認めていることは,契約 者の利益を図る意図に基つく。(ウ) 契約者は,2年間の契約継続と引き換えに,基本使用料金の50% 割引という料金メリット等を享受している。このように,多種多様な 料金フランを提供することは,消費者の選択肢を広け,消費者の利益 に合致することとなるのてあり,本件解約金条項により,消費者の利 益か信義誠実の原則に反して一方的に害されているとはいえない。(エ) 本件定期契約は,2年間の有期契約てあれは期間の定めのない契約 に比してより長期の利用か見込まれること等を勘案して,基本使用料 金を50%割り引くということにしたのてあって,名はかりの高額な 基本使用料金を設定し,これを外見上割り引くことにしたというよう なことは全くない。原告らは,割引後の基本使用料金の価格か,競争 可能な価格てあると主張するか,電気通信サーヒスの提供契約におい ては,基本使用料金のみならす,通信料金,通信品質,速度等のサー ヒス内容及ひ携帯電話端末の魅力等の様々な条件か重要な要素となっ ており,基本使用料金を安くしたたけて同業他社との競争に勝つこと はてきないのてあるから,基本使用料金の額たけを取り上けて競争可 能か否かを問題にすへきてはない。他社との競争の関係て,基本使用 料金を半額に設定せさるを得なかったという原告らの主張は,失当て ある。(オ) 原告らは,被告の契約者のほとんとか本件定期契約に加入していることから,基本使用料金の割引は消費者にとって利益となっていない 旨主張するか,通常契約を締結している契約者も数百万人という規模 て存在しているから,その主張の前提か誤っている。また,契約者は, 多様な料金フラン,割引サーヒスの中から,利得損失を考慮し,自ら にとってもっとも相応しい契約フランを自由な判断て選択しているの てあり,本件定期契約は契約者にとって相応の利益かあるからこそ, 多くの契約者から支持されているのてある。加えて,選択する者は少 なくても,通常の契約フランも,それを選択した者にとっては,魅力 的なフランてある。本件定期契約か消費者にとって一方的に不利益て あるとの原告らの主張は当たらない。エ 更新後について 被告は,契約者に対し,更新するか否かの判断を2年毎に求めており,更新とはいいなからも,本件定期契約を2年毎に新たに締結するのと同 しことてあるから,本件解約金条項か消費者にとって一方的に不利益て あるとはいえないことは更新前の契約と同様てある。第3 当裁判所の判断
1 本件解約金条項か法9条1号により無効てあるか否か(争点(1))(1) 本件解約金条項か「解除に伴う損害賠償の額の予定」又は「違約金」に 該当するか前記前提事実のとおり,本件解約金条項は,更新日の属する月に解約を する場合,解約に伴い契約種別を変更して本件通信契約を継続する場合 等を除き,本件定期契約の解約に伴い解約金として9975円を支払う義 務かあることを定める契約条項てあり,契約者は,本件定期契約を契約期 間の途中て解約し,被告との間の契約関係の解消を望む場合には,解約事 由の如何を問わす,上記解約金の支払いを余儀なくされる。したかって, 本件解約金条項は,本件定期契約の「解除に伴う損害賠償の額の予定」又は「違約金」にあたる。
(2) 法9条1号にいう「平均的な損害」の意義について
ア 法9条1号か,解除に伴う損害賠償の予定等を定める条項につき,解 除に伴い事業者に生しる平均的損害の額を超過する損害賠償の約定を無 効とした趣旨は,事業者か,消費者に対し,消費者契約の解除に伴い事 業者に「通常生すへき損害」(民法416条1項)を超過する過大な解 約金等の請求をすることを防止するという点にある。したかって,法9 条1号は,債務不履行の際の損害賠償請求権の範囲を定める民法416 条を前提とし,その内容を定型化するという意義を有し,同号にいう損 害とは,民法416条にいう「通常生すへき損害」に対応するものてあ る。なお,本件解約金条項か定めるのは,消費者に留保された解約権の 行使に伴う損害賠償の予定てあり,債務不履行による損害賠償の予定て はない。しかし,このような消費者の約定解除(解約)権行使に伴う損 害賠償の範囲は,原則として,契約か履行された場合に事業者か得られ る利益の賠償と解され,それは結局民法416条か規定する相当因果関 係の範囲内の損害と等しくなる。したかって,本件解約金条項について 法9条1号該当性を検討するときも,同号にいう「損害」は上記のとお り解すへきこととなる。イ また,同号か,「平均的」という文言を用いたのは,消費者契約は不 特定かつ多数の消費者との間て締結されるという特徴を有し,個別の契 約の解除に伴い事業者に生しる損害を算定・予測することは困難てある こと等から,解除の事由,時期等により同一の区分に分類される複数の 契約における平均値を用いて,解除に伴い事業者に生しる損害を算定す ることを許容する趣旨に基つくものと解される。そして,法9条1号は,「当該条項において設定された解除の事由, 時期等の区分に応し」て事業者に生すへき平均的損害を算定することを定めるか,上記アの同号の趣旨にかんかみると,事業者か解除の事由, 時期等による区分をせすに,一律に一定の解約金の支払義務かあること を定める契約条項を使用している場合てあっても,解除の事由,時期等 により事業者に生すへき損害に著しい差異かある契約類型においては, 解除の事由,時期等により同一の区分に分類される複数の同種の契約に おける平均値を用いて,各区分毎に,解除に伴い事業者に生しる損害を 算定すへきてある(たたし,「解除の事由」により事業者の損害に著し い差異か生することは,通常,考えにくい。)。ウ 以上によれは,法9条1号の平均的損害の算定は,民法416条に基 つく損害の算定方法を前提とし,解除事由,時期等により同一の区分に 分類される同種の契約における平均値を求める方法により行うへきてあ る。(3) 本件定期契約の解約に伴う平均的損害の算定方法について 上記のような考えに基つくと,本件定期契約の解約に伴い被告に生しる平均的損害の算定方法は次のとおりてある。
ア 平均的損害の算定の基礎となる損害額について
契約締結後に一方当事者の債務不履行かあった場合に,他方当事者か 民法415条,416条により請求のてきる損害賠償の範囲は,契約か 約定とおり履行されたてあれは得られたてあろう利益(逸失利益)に相 当する額てある。したかって,本件定期契約の中途解約に伴い被告に生 しる平均的損害を算定する際にも,上記民法の規律を参照し,中途解約 されることなく契約か期間満了時まて継続していれは被告か得られたて あろう通信料収入等(解約に伴う逸失利益)を基礎とすへきてある。イ 解約に伴う逸失利益の算定方法 証拠(甲3)によれは,本件通信契約の料金体系は,定額制てある基本使用料金と従量制の通信料金を組み合わせたものてあり,契約フランの種別によって基本使用料金の額通信料金の単価等か異なることか認 められる。また,契約者は,本件定期契約の契約期間中,自由に契約フ ランを変更し,月々に支払う基本使用料金の額及ひ通信料金の単価等を 増減させることかてきる。したかって,個々の契約者の月々の通信料金 等は,加入している契約フランの種別及ひ通信量等に応してはらつきか あり,同し契約者てあっても,契約期間中に一定の変動かあることか想 定される。このような本件通信契約における料金体系等を考慮すると, 本件定期契約の解約に伴う逸失利益の算定は,本件定期契約のARPU を基礎として,これに解約時から契約期間満了時まての期間を乗する方 法により行うのか相当てある。また,民法の規定により債務不履行に基つく損害賠償請求をする際, 当該債務不履行に起因して債権者か支出を免れた費用等かある場合には, その額を控除して賠償額を算定することとされている。したかって,法 9条1号における平均的損害の算定にあたっても,解約に伴い事業者か 支出を免れた費用を解約に伴う逸失利益から控除すへきてある。ウ 本件定期契約における解約に伴う逸失利益の額
(ア) 証拠(甲37,乙7,乙10)及ひ弁論の全趣旨によれは,次の事実か認められる。
a 本件定期契約の契約者のARPUの推移は,次のとおりてある。1 平成21年度 5624円
 2 平成22年4月ないし12月の間 4940円
 3 平成23年4月ないし12月の間 4480円b 被告か本件通信契約の締結に伴い支出する経費の種別及ひ内訳は, 次のとおりてある。このうち,月々の下記2の経費の額は,ARP Uの15%ないし20%の額に相当する。1 中途解約により支出を免れない費用
代理店において契約者か契約を締結した際に被告から販売代理 店に支払われる手数料,設備投資・運用費用等2 中途解約に伴い支出を免れる費用 料金を回収するためのコスト(請求コスト)及ひ通話等の際に他の電気通信事業者に支払う接続料金(アクセスチャーシ)等,
契約継続に伴い発生する費用
(イ) 上記(ア)の認定によれは,本件定期契約の契約者のARPUは一定の変動かあることに加え,平成21年度以降,徐々にその額か下落 していることか認められる。また,個別原告らか本件定期契約を締 結した各時点及ひ本件口頭弁論終結時てある平成24年4月26日 の時点における本件通信契約のARPUの値を示す的確な証拠はな く,上記認定のARPUの推移によれは,上記各時点のARPUに は一定の変動かあることも想定される。そして,上記認定のとおり, 平成21年度以降,各年度におけるARPUはいすれも4000円 を上回り,このことは,個別原告らか本件定期契約を締結した各時 点及ひ本件口頭弁論終結時においても同様てあったと推測されるこ と,上記(ア)a1ないし3のARPUの平均値は5014円(1円未 満切捨て)てあること等に照らすと,上記各時点におけるARPU を5000円として,本件定期解約の解約に伴う逸失利益を算定す るのか相当てある。(ウ) また,上記認定によれは,本件定期契約か1か月間継続するのに 伴い被告に追加的に発生する経費は,多くてもARPUの20%に 相当する額てあることか認められるから,同金額を,上記ARPU から控除して,1か月あたりの被告の解約に伴う逸失利益を算定す へきてある。したかって,上記逸失利益は,5000円から20% を控除した額てある4000円てあり,これを解約時から契約期間満了時まての期間を乗した額か,解約に伴い被告に生しる平均的損害となる。
エ 解約時期による区分について
前記イのとおり,1か月あたりの解約に伴う逸失利益に,解約時から 契約期間満了時まての期間を乗しる方法により被告に生しる平均的損害 を算定すると,解約時期の違いによって,平均的損害の額には著しい差 異か生する。したかって,前記第3,1,(2),イのとおり,このような 契約類型においては,解約時期により同一に区分される複数の契約にお ける平均値を求めることにより,各区分毎に,被告に生する平均的損害 を算定すへきと解する。そして,1上記のとおり,本件定期契約の一契 約者あたりの1か月の売上高てあるARPU等を基礎に平均的損害を算 定すること,2証拠(甲3,36,乙1,2の1・2,3)によれは, 被告は基本使用料金を月額て設定・表示しており,通信料金等の請求も 月毎に行っていることか認められること,3被告の1か月あたりの解約 に伴う逸失利益は4000円てあり,解約時期の違いか1か月の範囲内 てあれは,被告に生しる平均的損害の額に著しい差異か生するとまては 評価てきないこと等を考慮すると,本件定期契約においては,解約時期 を1か月毎に区分して,各区分毎に,被告に生しる平均的損害を算定す へきてある。オ 更新後について 前記前提事実及ひ証拠(甲3)によれは,本件定期契約においては,更新日の属する月に解約の意思表示をしない限り,期間満了日の翌日て ある更新日に本件定期契約か更新され,新規に本件定期契約を締結した のと同様の効果か生しることとなる。したかって,更新後の解約におい ても,更新前と同様,被告には契約期間満了時まて契約か継続していれ は得られたてあろう通信料収入等を基礎とする逸失利益か認められるから,解約に伴い被告に生しる平均的損害の算定方法も,更新前後て同様てあると解する。
 カ 小括
以上によれは,中途解約により被告に生しる平均的損害は別紙2のと おりてあり,本件解約金条項中,1本件定期契約か締結又は更新された 日の属する月から数えて22か月目の月の末日まてに解約かされた場合 に解約金の支払義務かあることを定める部分は有効てあるか,2本件定 期契約か締結又は更新された日の属する月から数えて23か月目以降に 解約した場合に別紙2の「平均的損害の額」欄記載の各金額を超過する 解約金の支払義務かあることを定める部分は,上記超過額の限度て,法 9条1号により,無効てある。(4) 原告らの主張について 原告らは,本件通信契約は,大量の新規契約等か予定されており,ある契約の解約に伴い生しる損害は,別の契約により補されることから,逸 失利益を基礎に平均的損害を算定することはてきない旨主張する。しかし,一般に,民法の規定に基つき損害賠償請求をする場合において, 債務不履行に起因して他の契約を締結する機会か新たに生したことにより, 損害か補されたとしても,逸失利益の請求は認められ,上記補額は, 損益相殺の対象となるにととまる。また,当初の契約の債務不履行に起因 して他の契約締結の機会を得たとはいえない場合には,上記損益相殺は認 められす,損害(逸失利益)全額について賠償請求か認められる。法9条1号の解釈にあたっても,以上のような民法の規律を参照し,1 解約に伴い,別の契約を締結する機会か新たに生し,これにより損害か 補されたといえる場合には,解約に伴う逸失利益から上記損害の補額を 控除することにより平均的損害を算定するか,2解約に伴い別の契約を締 結する機会か新たに生したといえない場合には,平均的損害の算定にあたり,他の契約を締結することによる損害の補の可能性を考慮することは てきないと解する。そして,本件通信契約においては,ある契約か締結さ れることにより,他の契約を締結する機会を喪失するとはいえす,それゆ え,解約に伴い別の契約を締結する機会か新たに生しるともいえないから, 他の契約を締結することによる損害の補の可能性を考慮することはてき ない。したかって,上記原告らの主張は採用てきない。(5) 被告の主張について 被告は,本件定期契約を中途解約した者の平均解約時期は,契約締結時又は更新時から11.59か月間(以下「平均解約期間」という。)か経過 した時点てあることから,1か月あたりの解約に伴う逸失利益に,2年間 の契約期間から上記期間を控除した月数(12.41か月間)を乗しるこ とにより,平均的損害をすへきてある旨を主張する。ア しかし,平均解約期間は,あくまて本件解約金条項における解約金の額 を前提とする実状に基つき算定されたものてあるから,本件解約金条項か 法9条1号に照らして有効か否かを判断する際に,平均解約期間を用いる ことはてきないと解すへきてある。すなわち,契約者か,他の事業者に契約先を変更する際等に,被告との 契約関係の解消を望む場合には,1解約を契約期間満了時まて待って,通 信料等(少なくとも基本使用料金)の支払いを継続するか,2契約期間満 了時まてに本件定期契約を解約し,解約金を支払うかのいすれかを選択す ることになる。そして,いすれの選択肢を採るかは,月々の基本使用料金 等の額及ひ契約期間満了時まての期間並ひに解約金の額を比較対照して判 断されることから,解約の際に支払を余儀なくされる解約金の額の増減に 応して,平均解約時期か変動することか容易に予測され,平均解約期間は, 本件解約金条項において定められた9975円という解約金の額を前提と する本件定期契約の契約者の行動の結果を示すものにすきない。本件解約金条項に係る解約金の額か平均的損害を超過するか否かを判断するにあた り,上記のとおり解約金の額の増減に応して変動する性質を有する平均解 約期間を用いることは相当てはない。イ また,前記第3,1,(2),イのとおり,法9条1号は,解約時期に応し て事業者に生しる平均的損害の額に著しい差異か生する場合には,解約時 期等により契約を区分して,各区分毎に平均的損害を算定することを定め ていると解される。前記のとおり,1か月あたりの解約に伴う逸失利益を 基礎として,被告に生しる平均的損害を算定する場合,解約時期に応して 損害額か大きく変動することになるから,解約時期による区分を一切せす に,平均解約時期を用いて一律に平均的損害を算定することは相当てはな いと解する。以上によれは,被告の上記主張は採用てきない。
(6) 基本使用料金の累積割引額か,平均的損害に当たるかについて被告は,本件定期契約か2年間継続することを期待して割引をした本件 定期契約と通常契約の基本使用料金の差額の累積額か,平均的損害に当た ると主張する。しかしなから,次のとおり,被告の主張は採用てきない。ア 被告の上記主張を前提とすると,契約者か契約締結直後に解約をした場合に平均的損害の額か最も小さくなり,契約期間満了直前に解約をし た場合に平均的損害の額か最も大きくなる。しかし,契約者か契約期間 満了直前に解約をした場合において,被告か解約時まてに得た通信料収 入等は,契約期間満了時まて契約か継続したと仮定した場合に被告か得 られる通信料収入等をわすかに下回るに過きない。契約期間満了の直前 に平均的損害か最も大きくなり,契約期間満了に至った瞬間に平均的損 害かセロになるというのは,上記各場面において被告の得た通信料収入 等の額の相違かほとんとないという実態に照らすと,不自然てある。む しろ,本件定期契約か約2年間継続した場合に得られる通信料収入等を期待して基本使用料金の割引をした旨の被告の主張を前提とすると,解 約時期か遅くなり,契約の継続期間か長くなれはなるほと,被告の得ら れる通信料収入等か増加し,被告の上記期待か実現される関係にあるは すてあるから,期間満了直前の解約の際には解約に伴う被告の損害か最 小化するはすてある。イ 被告の上記主張によれは,事業者か,通常契約の基本使用料金の価格 を引き上けれは,その分,解約に伴い被告に生しる平均的損害か増加す ることとなり,事業者か容易に平均的損害の額を操作することか可能と なる。しかし,解約金条項のない契約フランか,常に消費者にとって実 質的な選択肢として機能し,市場による価格調整か行われることの保障 かないことに照らすと,上記のように解することは,民法416条を定 型化し,解約に伴い事業者か消費者に対し過大な金員の請求をすること を制限するという法9条1号の趣旨を没却するおそれかある。ウ また,前記のとおり,法9条1号の平均的損害を算定するにあたって は,解約に伴う逸失利益を基礎とすへきてある。そして,通常契約は,本件定期契約とは別個の契約てあり,被告か本 件定期契約の契約者から通常契約の通信料金を得ることは契約上予定さ れていないことからすれは,通常料金と本件定期契約の基本使用料金の 差額は,上記逸失利益には当たらない。また,上記のとおり,契約期間か2年間継続した場合に被告か得られ る通信料収入等を基礎に平均的損害を算定すれは,本件定期契約か中途 解約されたことにより被告に生すへき損害は全てカハーされることとな る。これに加えて,被告か契約期間か2年間継続すると信頼して支出(割 引)した額を平均的損害を算定する際の基礎とすることは,被告に生し た損害を二重に評価することとなり,妥当てはない。エ 以上によれは,本件定期契約と通常契約の基本使用料金の差額か平均的損害算定の基礎となる損害てある旨の被告の主張は採用てきない。
 2 本件解約金条項か法10条に反するか(争点(2))(1) 法10条前段該当性について
ア 法10条前段における,民法等の「法律の公の秩序に関しない規定」は,文の規定のみならす,一般的な法理等も含まれる(最高裁平成22年(オ)第863号同23年7月15日第二小法廷判参照)。
イ 民法は,委任契約及ひ準委任契約のほか,請負契約において,役務の 提供を受ける者か,一方的に契約を解除することかてきることを規定し ている。また,この場合に生しる損害を補するため,一定の要件の下 て,解除の相手方か,解除の意思表示をした者に対し,解除に伴う損害 賠償を求めることかてきることを定めている(以上,民法641条,6 51条,656条)。これらの定めによると,民法は,委任契約・準委任 契約及ひ請負契約等の役務の提供を給付内容とする契約において,役務 の提供を受ける者か,少なくとも,役務の提供者に生しる損害を補す る限り,不必要となった役務の受領を強いられることはないという一般法理を定めているといえる。
ウ 本件通信契約は,民法の定める委任契約及ひ準委任契約の主要な特徴てある,特定の受任者に対する委任者の特別な信頼関係の存在を前提と しない非典型契約てあるか,被告による通信サーヒス役務の提供及ひこ れに対する契約者による代金の支払を給付内容とする契約てあり,委任, 準委任契約又は請負契約等の民法の定める役務提供契約と類似する性格 を有する。したかって,本件通信契約においても,上記一般法理か同様 に妥当すると解すへきてあり,本件解約金条項は,解約に伴い被告に生 しる損害の有無及ひその多寡にかかわらす,一律に一定の金員の支払義 務を契約者に課す点において,解約に伴い相手方に生する損害の限度て 損害賠償請求権を認める上記一般法理と比較して,消費者の権利を制限し,消費者の義務を加重しているといえる。そうすると,本件解約金条項は,法10条前段の要件を満たすということかてきる。
 (2) 法10条後段該当性についてア 本件解約金条項は,本件定期契約の契約者か,中途解約をする際に, 9975円の解約金を支払うことを定める条項てあり,契約者か,本件 定期契約を解約し,被告との契約関係から離脱することを一定程度制限 する効果を有するといえる。しかし,本件定期契約における契約期間は 約2年間てあり,著しく長期間にわたり,契約者の解約を制限する規定 てはない。また,本件定期契約は約2年間の定期契約てあり,本件解約 金条項に係る解約金は,解約に伴い被告か逸失する期間満了時まての通 信料収入等を補するという性格を有する。このことは,更新後てあっ ても同様てある。さらに,同条項において定められた9975円という 額は,前記第3,1,(3),カにおいて無効と説示した部分を除いては, 中途解約に伴い被告に生しる平均的損害を超過しない合理的な範囲の額 にととまる。また,証拠(乙1,2の2)によれは,本件定期契約において,1本 件解約金条項に基つき9975円の解約金の支払義務かあること及ひ2 更新日に本件定期契約か更新されることについては,契約書に一義的か つ確に記載され,契約締結時に契約者に交付される説書類・ハンフ レット等にも上記1及ひ2に関する説書きかあることか認められるか ら,被告と契約者の間には,本件解約金条項に係る解約金の支払に関す る確な合意かあったことか認められる。したかって,本件解約金条項のうち前記第3,1,(3),カにおいて無 効てあると説示した部分を除いては,信義則に反して消費者の利益を一 方的に害する条項てあるとはいえす,法10条後段に該当するとはいえ ない。イ 他方,本件解約金条項のうち,前記第3,1,(3),カにおいて法9条 1号により無効てあると説示した部分については,解除に伴い被告に生 しる損害を超過する解約金の支払義務を定めており,その内容は合理性 を欠くといえるのて,消費者の利益を一方的に害する条項てあり,法1 0条により無効てあるというへきてある。ウ なお,本件解約金条項は,本件定期契約の解約に伴い全ての契約者に 一律の解約金の支払義務かあることを定める契約条項てあり,上記イの 一部無効部分と,その余の有効部分は,1つの契約条項によって定めら れているか,本件解約金条項の一部か無効てあることは,直ちに同条項 の残余部分の無効をも導くものてはないと解する。したかって,本件解約金条項は,上記イの限度て一部無効の契約条項 てあると解するのか相当てある。3 差止めの範囲について 本件解約金条項は,解約時期等による区分をせすに,解約の際に一律に一定の金員の支払義務かあることを定めており,前記第3,1,(3),カ及ひ第3, 2,(2),ウのとおり,その一部か法9条1号,10条より無効の契約条項て ある。そして,被告か,今後,本件解約金条項を改訂し,本件定期契約にお いて解約時期等による区分かある解約金条項を使用するおそれかあることを 示す証拠はないことから,差止めの対象となるのは,あくまて被告か現に使 用する本件解約金条項を含む意思表示に限られるというへきてあって,被告 か今後新たに解約時期等による区分かある解約金条項を使用することを想定 して,一部無効となる範囲を示した意思表示の差止めを求めることはてき ないと解する。4 個別原告らの不当利得返還請求権の当否について
(1) 前記前提事実のとおり,原告Aは,平成20年2月1日に本件定期契約を更新した後,契約期間満了前の平成21年12月8日(更新日の属する月から数えて23か月目の月)に本件定期契約を解約し,その翌月に,本 件解約金条項に基つき,被告に対し9975円の解約金を支払った。別紙 2のとおり,同解約に伴い被告に生しる平均的損害は,8000円てあり, 本件解約金条項のうち,上記平均的損害を超過する解約金の支払義務を定 める部分は無効てある。したかって,原告Aは,被告に対し,不当利得返 還請求権に基つき,上記平均的損害額を超過する部分に相当する額てある 1975円の支払を請求することかてきる。(2) 前記前提事実のとおり,原告Eは,平成20年8月13日に被告との間 て本件定期契約を締結した後,契約期間満了前の平成22年7月7日に(契 約締結日の属する月から数えて24か月目の月)に本件定期契約を解約し, 同月31日に,被告に対し,9975円の解約金を支払った。別紙2のと おり,同解約に伴い被告に生しる平均的損害は4000円てあり,上記平 均的損害を超過する解約金の支払義務を定める部分は無効てある。したか って,原告Eは,被告に対し,不当利得返還請求権に基つき,上記平均的 損害額を超過する部分に相当する額てある5975円の支払を請求するこ とかてきる。(3) 前記前提事実のとおり,上記2名を除くその余の個人原告らは,いすれ も,契約締結日又は更新日の属する月から数えて22か月目の月か経過す るまてに解約をしており,解約に伴い支払った9975円の解約金は,被 告に生しる平均的損害を超過しない範囲の額にととまる。したかって,上 記原告らの各請求は認められない。5 結論 以上の次第て,原告法人の請求は,被告に対して,法12条3項に基つき,被告か消費者との間てau通信サーヒス契約を締結する際に,別紙1記載の 解約金条項を意思表示の内容とすることの差止めを求める限度て理由かある からその限度てこれを認容し,その余は棄却し,原告Aの請求は,被告に対して,不当利得返還請求権に基つき,1975円及ひこれに対する第2事件 の訴状送達の翌日てある平成23年3月29日から支払済みまて民法所定の 年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度て理由かあるからその限 度てこれを認容し,その余は棄却し,原告Eの請求は,被告に対し,不当利 得返還請求権に基つき,5975円及ひこれに対する上記同日から支払済み まて民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度て理由か あるからその限度てこれを認容し,その余は棄却し,その余の個人原告らの 各請求はいすれも理由かないからこれらを棄却し,意思表示の差止めを命し る部分についての仮執行宣言の申立ては相当てはないからこれを却下するこ ととして,主文のとおり判する。京都地方裁判所第4民事部
裁判長裁判官佐藤 
裁判官 栁 本つとむ
裁判官板東 純
判例本文 判例別紙1 判例別紙2

この判例ページのURL

LINEで送る
Pocket