平成23年(モ)第142号 文書提出命令申立事件
(基本事件 平成22年(ワ)第5047号 国家賠償請求事件)

主文 相手方は,本定か確定した日から7日以内に,別紙1文書目録記載の文書を当裁判所に提出せよ。
 理由
第1 申立ての趣旨及ひ理由等
 1 申立ての趣旨
主文と同旨
 2 申立の理由等
(1) 文書の所持者 相手方
(2) 証すへき事実
ア 平成20年8月12日に春日井簡易裁判所(以下「春日井簡裁」という。)裁判官により発付された検査すへき身体を「申立人の陰茎」 とする身体検査令状(以下「本件身体検査令状」という。)について, 愛知県春日井警察署(以下「春日井署」という。)の取扱い,執行状 況か違法,不当てあった事実(以下「証すへき事実1」という。)イ 春日井署か,犯罪捜査規範等により作成を義務つけられている別紙 1文書目録記載の文書(以下「本件文書」という。)を本件身体検査 令状に関して適切に作成し,管理していたか否かに関する事実(以下 「証すへき事実2」という。)(3) 文書の提出義務の原因 民事訴訟法(以下「法」という。)220条3号後段第2 事案の概要
1 本件の基本事件は,18歳に満たない児童てある当時16歳の少女(以 下「A子」という。)と性交類似行為をしたとして,児童買春,児童ホルノ に係る行為等の処罰及ひ児童の保護等に関する法律(以下「児童買春等処罰 法」という。)違反て逮捕,勾留,起訴され,その後,無罪判か言い渡さ れて確定した申立人か,国及ひ相手方に対し,逮捕,勾留,起訴等の違法を 理由として,国家賠償法1条1項に基つく損害賠償等を請求している事案て ある。2 本件申立てに関係する前提事実
(1) 春日井署は,平成20年8月12日,申立人を被疑者とする児童買春等処罰法違反の被疑事実について,春日井簡裁裁判官に対し,逮捕状を請求し,これに対し,春日井簡裁裁判官は,同日,逮捕状を発付した(甲38)。
 (2) 春日井署は,前記(1)の逮捕状請求の際,前記(1)の被疑事実について,検査すへき身体を「申立人の陰茎」とする身体検査令状請求し,これに 対し,春日井簡裁裁判官は,前記(1)の逮捕状ととに,検査すへき身体 を「申立人の陰茎」とする身体検査令状(本件身体検査令状)を発付した (甲52)。本件身体検査令状の有効期間は,平成20年8月19日て てあり,本件身体検査令状には,「有効期間経過後は,この令状により身 体の検査をすることかてきない。この場合には,これを当裁判所に返還し なけれはならない。有効期間内てあって,身体の検査の必要かなくなっ たときは,直ちにこれを当裁判所に返還しなけれはならない。」との記載 かされていた(甲52)。(3) 春日井署は,平成20年8月13日,申立人を通常逮捕し,同月14日, 申立人を名古屋地方検察庁(以下「名古屋地検」という。)検察官に送致 する手続をした(甲38,39)。(4) 名古屋地検検察官は,平成20年8月14日,申立人を,児童買春等処 罰法違反の被疑事実て勾留請求し,名古屋地方裁判所(以下「名古屋地裁」という。)裁判官は,同日,申立人を,同日から春日井署留置施設に勾留する旨の定をし,申立人は,春日井署留置施設に勾留された(甲40)。 (5) 名古屋区検察庁(以下「名古屋区検」という。)検察官は,平成20年 8月22日付けて,申立人について,児童買春等処罰法違反の公訴事実て 略式命令を請求し,名古屋簡易裁判所裁判官は,同日,申立人に対し,罰 金40万円に処する略式命令を発し,申立人は,罰金40万円を仮納付した(甲19,乙イ23)。
(6) 申立人は,平成20年8月28日,前記(5)の略式命令について,名古屋簡裁に,正式裁判の請求をし,同年9月24日,申立人に対する児童買春等処罰法違反被告事件は,名古屋地裁において審理されることとされた。
 (7) 名古屋地裁は,平成21年12月4日,前記(6)の被告事件について, 申立人を無罪とする判を言い渡し,同判は,同月19日,確定した(以 下,申立人に対する以上の児童買春等処罰法違反の刑事事件を「本件刑事事件」という。)。
(8) 申立人は,平成22年7月23日,国及ひ相手方に対し,損害賠償等を求る基本事件の訴えを提起した。
(9) 申立人は,基本事件において,平成22年11月18日付け「準備書面(1)」を提出し,国に対し,本件身体検査令状,本件身 体検査令状の請求書及ひ本件身体検査令状の請求書添付資料の うち基本事件において未た書証として提出されていないの等 の任意提出を求た。(10)春日井署は,平成22年11月29日,本件身体検査令状か未執行て あるとして,身体検査令状返還書ととに本件身体検査令状を春日井簡裁 に返還した(甲51,52)。(11)申 立 人 の 前 記 (9)の 任 意 提 出 の 要 請 に 対 し , 国 は , 基 本 事 件 に おいて,平成22年12月13日付け「被告国第2準備書面」を提 出 し , 前 記 (9)の 各 文 書 は , 名 古 屋 地 検 か 保 管 す る 刑 事 確 定 記 録 て は な い 不 提 出 記 録 中 に 存 在 す る か ,名 古 屋 地 検 に 存 在 し な い 書 類 て あ る こ と か ら ,い す れ に つ い て  任 意 提 出 の 要 請 に は 応 し られないとした。(12)申 立 人 は ,平 成 2
 2 年 1
 2 月 1
 7 日 の 基 本 事 件 の 第
 3 回 口 頭 弁 論 期 日 に お い て ,国 に 対 し て 任 意 提 出 を 求  て い る 文 書 に つ い て , 任 意 提 出 を し て  ら え な い の て あ れ は ,文 書 提 出 命 令 の 申 立 て を 検 討 し て い る ,相 手 方 に お い て  上 記 文 書 を 保 管 し て い る の て あ れは,任意提出を求る旨述へた。これに対し,国は,現時点て は,任意ては回答てきない,文書提出命令の申立てかあれは,対 応を検討する旨述へ,相手方は,申立人から任意提出の要請を受 けた文書について,任意ては提出に応しられない旨述へた。(13)春日井署は,平成23年2月24日,本件身体検査令状の請求書を名古 屋地検に送致した。(14)申 立 人 は ,基 本 事 件 に お い て ,平 成 2
 3 年
 2 月 2
 5 日 付 け「 文 書提出命令申立書(2)」を提出し,相手方に対し,「身体検査 令 状 ( 原 告 の 陰 茎 ) 」 ,「 身 体 検 査 令 状 請 求 書 ( 原 告 の 陰 茎 ) 」 , 「身体検査令状請求書(原告の陰茎)添付資料のうち本件訴訟に おいて未た書証として提出されていないの」及ひ「身体検査令 状(原告の陰茎)についての令状請求簿(犯罪捜査規範137条 3項)」(本件文書)の提出を求た(本件文書提出命令申立事 件)。(15)これに対し,相手方は,平成23年3月10日付け「意見書」において, 前記(10)及ひ(13)の事実を主張し,相手方は,本件身体検査令状及ひ本件 身体検査令状の請求書を所持していない旨主張し,本件文書については, 取調への必要性かない旨なとを主張した。(16)申立人は,前記(15)の相手方の主張を受けて,基本事件において,平成 23年3月23日付け「文書送付嘱託申立書」を提出し,本件身体検査令 状及ひこれと同時に春日井署から春日井簡裁に送付された送付書等の書 類の春日井簡裁への送付嘱託を申し立てた。(17)当裁判所は,基本事件において,平成23年3月29日付けて前記(16) の春日井簡裁に対する送付嘱託を採用した。(18)平成23年4月15日,春日井簡裁から送付された本件身体検査令状及 ひ身体検査令状返還書か,当裁判所に到着し,これらの書類は,平成23 年5月13日の基本事件の第5回口頭弁論期日において提示された。(19)申立人は,本件文書提出命令申立事件について,平成23年5月9日付 けて,「 身 体 検 査 令 状 ( 原 告 の 陰 茎 ) 」 , 「 身 体 検 査 令 状 請 求 書 (原告の陰茎)」及ひ「身体検査令状請求書(原告の陰茎)添付 資料のうち本件訴訟において未た書証として提出されていない の 」 の 文書提出命令の申立てを取り下けたか,「 身 体 検 査 令 状 ( 原 告 の 陰 茎 )に つ い て の 令 状 請 求 簿( 犯 罪 捜 査 規 範
 1 3
 7 条
 3 項 )」 (本件文書)の文書提出命令の申立ては維持した。3 当事者の主張
(1) 本件文書の取調への必要性
ア 申立人
 証すへき事実1について
申立人は,基本事件において,本件身体検査令状の有効期間の末日てあ る平成20年8月19日の申立人に対する取調への際,取調へにあたった 春日井署生活安全課のB巡査か,取調への最中にかかってきた検察官から の電話の後,申立人に,「お前チンチンにイホあるか。」なとと言い,申 立人か自発的にスホンを下けてBに陰茎を見せたところ,Bは,申立人の 陰茎を見て,陰茎の突起物(以下「イホ」という。)の有無を確認し,「普通のチンチンたな,へんなチンチンてはないな。」と発言した,申立人は, Bに上記り取りを調書に取って欲しいと頼んたか調書にとってらえ なかった,この際,Bは,申立人に本件身体検査令状を呈示しなかった, 相手方は,本件身体検査令状か発付されていた事実自体を隠蔽するた, 本件身体検査令状を刑事訴訟法(以下「刑訴法」という。)218条,刑 事訴訟規則157条の2に反して意図的に返還せす,その請求書について 意図的に検察庁に送致しなかったなとの事実を主張している。これに対し,相手方は,Bか申立人のイホの有無を確認したこと,Bか 「普通のチンチンたな,へんなチンチンてはないな。」と発言したこと, 申立人か,Bに上記り取りを調書に取って欲しいと頼んたことなとを否 認している。さらに,申立人は,春日井簡裁への本件身体検査令状の返還か,発付日 (平成20年8月12日)から2年以上か経過した平成22年11月29 日になってから行われたこと,本件身体検査令状の請求書,他の一件記 録ととに直ちに名古屋地検に送致しなけれはならなかったのに,平成2 3年2月24日になって送致されたという経緯かあることから,春日井署 は,本件身体検査令状を事実上執行したのの,捜査目的に合わなかった (申立人の陰茎にイホのないことか判した結果,A子の供述の信用性に 疑問か生した)た,令状を執行していない扱いとしたと主張しているか, 相手方は,これについて争っている。このように,基本事件においては,Bか申立人の陰茎を見てイホの有無 を確認したか等の点に争いかあり,これらをらかにするたには,本件 身体検査令状の管理,執行に関する客観的資料そののの内容からかに される必要かあり,本件身体検査令状を請求した捜査官の陳述書ないし証 人尋問等によって上記客観的資料の記載内容を詳細かつ正確にらかに することは極て困難てあるから,捜査官の証人尋問等によって本件文書の取調へを代替することはてきない。
 た,本件ては,春日井署か,前記のように本件身体検査令状を事実上執行したことを受けて,本件文書の「令状執行」欄の「月日時」欄,「執 行官氏名」及ひ本件文書下部の「備考」欄に,本件身体検査令状の取扱い, 執行状況等について何らかの記載を行っている可能性かある。したかって,本件文書を取り調へることて,本件身体検査令状の取扱い, 執行状況からかとなる可能性かあり,基本事件において本件文書を取り 調へる必要性かある。 証すへき事実2について 本件ては,前記のとおり本件身体検査令状の春日井簡裁への返還か2年以上遅れ,本件身体検査令状の請求書の検察庁への送致2年以上遅れ たことからかになっている以上,本件文書の作成,管理か不適切てあっ た可能性か十分認られ,この点か,例えは,本件文書の「有効期間及ひ 更新状況」欄等に記載かされている可能性かある。そして,春日井署にお いて令状請求簿の作成,管理か適切てなかったことからかとなれは,本 件身体検査令状の取扱い違法,不当てあったことか推認される。したかって,このような意味て本件文書を取り調へる必要かある。 イ 相手方 証すへき事実1について 本件ては,春日井署か,平成22年11月29日に本件身体検査令状を春日井簡裁に返還したことは,証拠(甲51,52)上らかてあり,本 件身体検査令状の取扱いについては,基本事件においてらかとなってい る。た,本件ては,申立人か平成20年8月19日のBの取調への際に, 自発的にスホンを下けて,Bに陰茎を見せようとしたこと,その際に本件 身体検査令状か申立人に呈示されていないことは争いかなく,その後に申立人に本件身体検査令状か呈示されていないこと,申立人は争っていな いはすてあって,本件身体検査令状か執行されなかったことは客観的に らかてあり,本件身体検査令状の執行状況は,基本事件においてらかと なっている。したかって,基本事件において,証すへき事実1をらかにするた に本件文書を取り調へる必要はない。た,身体検査令状を執行した場合にその執行状況に関して記載する項 目は「令状執行」欄の中の「月日時」欄と「執行官氏名」のてあり,仮 に申立人か主張するようにBか申立人の陰茎のイホの有無を確認した等 の事実かあったとして,そのような事実は,令状請求簿に記載される のてはない。同様に,本件身体検査令状の春日井簡裁への返還か2年以上 遅れた事実かあるとして,そのような事実か令状請求簿に記載される のてはない。したかって,令状請求簿からは申立人の主張する証すへき事実1は らかとならないから,この点から,基本事件において本件文書を取り調 へる必要はない。 証すへき事実2について 申立人は,令状請求簿の作成,管理か適切てなかったことからかとなれは,本件身体検査令状の取扱い違法,不当てあったことか推認される と主張するか,令状請求簿の作成,管理か不適切てあったことからたたち に本件身体検査令状の取扱い,執行状況か違法,不当てあるということは てきない。た,令状請求簿の作成,管理か不適切てあったとして,そ れかたたちに国家賠償法上違法と評価されるのてはないから,申立人か らかにしようとする事実は,基本事件の請求原因事実とは何ら関係かな い。したかって,基本事件において,本件文書を取り調へる必要はない。(2) 法220条3号後段該当性 ア 申立人
本件文書は,犯罪捜査規範137条3項,125条に基つき,本件身体検 査令状の請求及ひ執行に当たって作成される文書てあり,本件身体検査令 状か現実に執行されたか否かという,相手方と申立人との間の法律関係そ れ自体について記載された文書てあるから,法220条3号後段の法律関 係文書に該当する。そして,令状請求簿は,令状請求の手続,発付後の状況等をらかにする たに作成されるのてあって,上記のとおり,国家公安委員会規則てあ る犯罪捜査規範に根拠を有する。したかって,令状請求簿は,公務員個人 の手控え等のように個人的に用いるのてはなく,内部文書にはあたらな い。法220条4号ニは,文書提出義務か免除される場合の1つとして,「専 ら文書の所持者の利用に供するたの文書(国又は地方公共団体か所持す る文書にあっては,公務員か組織的に用いるのを除く。)」と定,国 か所持する内部裁用文書等てあって,行政機関の職員か組織的に用い るのとして保有している文書は,提出義務かあると解される。そして, このような解釈は,いわゆる内部文書性の判断において同様に解すへき てあり,仮に,令状請求簿か,内部的裁用文書てあるとして,令状請 求簿は,行政機関の職員か組織的に用いるのとして保有している文書と いえるから,いわゆる内部文書には該当しない。したかって,本件文書は,法220条3号後段の法律関係文書に該当す るから,相手方は,同号に基つく提出義務を負う。イ 相手方 令状請求簿は,令状請求の手続,発付後の状況等をらかにすることにより,適正な捜査管理に資するたに作成されるのてあり,申立人と相手方との法律関係の基礎となり若しくは裏付けとなる事項をらかにすると いう目的を有するのてはない。そして,令状請求簿の作成,管理は,あ くて当該令状を請求した警察署によりなされ,検察庁との間ての授受 ,検察官からの勾留請求について,勾留の可否を判断する裁判官か参照 することなとは予定されていない。た,犯罪捜査規範は,第1条の規定 かららかなとおり,警察官か犯罪の捜査を行うに当たって守るへき心構 え,捜査の方法,手続その他捜査に関し必要な事項を定た内部規範てあ って,第三者に対し,何らかの法的な権利を付与したり,義務を課すの てはなく,申立人の身体の自由を制約したり,申立人に対する何らの受忍 義務の発生,変更及ひ消滅といった個別の権利関係を生しさせるのてな いことはらかてある。このような令状請求簿の作成目的,記載内容及ひ性質等の諸要素を総合 して客観的に判断すると,令状請求簿は,専ら所持者てある春日井署の自 己使用のたに作成された,いわゆる内部文書の性質を有するから,法2 20条3号後段の法律関係文書に該当しない。申立人は,法220条4号ニか定る「専ら文書の所持者の利用に供す るたの文書」の解釈と内部文書の解釈か同義てあると主張するか,これ を裏付ける裁判例等はなく,申立人の主張は理由かない。したかって,相手方は,本件文書について,法220条3号後段に基つ く提出義務を負わない。(3) 文書保管者の裁量権の濫用 ア 申立人
 刑訴法47条は,「訴訟に関する書類は,公判の開廷前には,これを 公にしてはならない。但し,公益上の必要その他の事由かあって,相当と 認られる場合は,この限りてない。」と定る一方,刑訴法53条は, 「何人,被告事件の終結後,訴訟記録を閲覧することかてきる。但し,訴訟記録の保存又は裁判所若しくは検察庁の事務に支障のあるときは,こ の限りてない。」と定ており,刑訴法47条は公判開廷前に関する規定, 刑訴法53条は公判終了後に関する規定と読へきてある。そうすると, 本件のように申立人の無罪判か確定して公判手続か終了している事案 においては,刑訴法47条の適用はなく,刑訴法53条の適用かあると考 えるへきてある。そして,刑事事件記録は公判終了後は一般的に公開すへきたという刑訴 法53条の趣旨からすれは,同条にいう「訴訟記録」は,「裁判所不提出 記録」含れるから,本件文書は,刑訴法53条の「訴訟記録」に該当 し,同条に基ついて公開されるへきてある。 仮に,本件文書か,刑訴法47条の「訴訟に関する書類」に該当する とした場合,本件文書の所持者てある相手方か,本件文書の提出を拒否し たことか,裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用するのてあったかとうかか 問題となる。この点について,本件文書は,前記(1)アのとおり取調への必要性か高 い。た,本件刑事事件は,平成21年12月4日に言い渡された無罪判 の確定によって全て終了しているから,本件文書を開示することによる 本件刑事事件への弊害は皆無てある。以上のとおり,相手方による本件文書の提出の拒否は,本件文書を取り 調へる必要性か高い一方,本件文書を開示することによる弊害発生のおそ れは認られないことに照らすと,相手方の有する裁量権の範囲を逸脱し, 又は濫用するのてあることはらかてある。したかって,相手方は,本件文書の提出を拒否することは許されす,提 出の義務かある。イ 相手方 申立人の主張は争う。
第3 当裁判所の判断
1 一件記録によると,前記第2の2の「本件申立てに関係する前提事実」に加え,以下の事実か認られる。
(1) 申立人は,平成20年5月29日午前1時40分ころ,愛知県春日井市(以下略)付近路上て,知人の家から自宅へ帰るA子を客としてタクシーに乗車 させ,午前2時ころ,A子の自宅付近において下車させた。A子は,同日夕方,春日井署に対し,申立人か,タクシーの中てA子の乳房 を触る,A子に口淫させるなとの性交類似行為を行った旨の申告をした。そ のた,春日井署は,上記事実について捜査を開始した。(2) 春日井署は,A子の事情聴取,タクシーの走行経路についてのA子の引 き当たり捜査,申立人の勤務先に対する捜査等を行い,平成20年8月12 日,春日井簡裁裁判官に対し,申立人か,「平成20年5月29日午前1時 55分ころ,愛知県春日井市(以下略)から愛知県小牧市(以下略)を走行 中の普通乗用自動車(登録番号以下略)内において,A子か18歳に満たな い児童てあることを知りなから,同児童に対し,現金1万円の対償を供与し た上,自己の性的好奇心を満たす目的て,同児童の乳房を弄ひ,膣内に手指 を挿入し,自己の陰茎を同児童に口淫させるなとし,って,児童買春をし たのてある。」との被疑事実に基つき,逮捕状を請求するととに,検査 すへき身体を「申立人の陰茎」とする身体検査令状を請求し,同日,春日井 簡裁裁判官は,逮捕状及ひ本件身体検査令状を発付した(甲38,52)。(3) 春日井署は,平成20年8月13日,申立人を通常逮捕し,同月14日, 申立人を名古屋地検検察官に送致する手続をし,名古屋地検検察官は,同日, 申立人を,勾留請求し,名古屋地裁裁判官は,同日,申立人を春日井署留置 施設に勾留する旨の定をし,申立人は,同日から春日井署留置施設に勾留 された(甲38,39,40)。(4) 名古屋区検検察官は,平成20年8月22日付けて,申立人を,「平成20年5月29日午前1時55分ころ,愛知県小牧市(以下略)付近路上を走 行中の普通乗用自動車内において,A子か18歳に満たない児童てあること を知りなから,同児童に対し,現金1万円を対償として供与して,同児童に 自己の陰茎を口淫させるなと性交類似行為をし,って児童買春をしたの てある。」との公訴事実て略式命令を請求し,名古屋簡裁裁判官は,同日, 申立人に対し,罰金40万円に処する略式命令を発し,申立人は,罰金40 万円を仮納付した(甲19,乙イ23)。(5) 申立人は,同月28日,名古屋簡裁に,前記(3)の略式命令について正式裁 判の請求をし,その後,本件刑事事件は,名古屋地裁において審理され,申 立人は,無罪を主張し,A子の供述の信用性,申立人の捜査段階ての自白の 任意性及ひ信用性等を争った。(6) A子は,申立人の陰茎の形状について,捜査段階において,春日井署司法 警察員及ひ名古屋地検検察官に対し,以下のアないしエのとおり述へ,公判 期日において以下のオのとおり証言するなとしていた。ア 平成20年5月29日(甲20,乙イ1。司法警察員に対し。)「フェラチオをするときに分かったのてすか,亀頭のカリの部分に,何個 かのイホイホかあったのて,イホか出来物かなと思いした。」イ 平成20年7月25日(甲4,乙イ7。司法警察員に対し。)
「チンコの先っの方にイホイホか10個くらいある なんてイホイホか あるんたろうと思っていたのてした。」ウ 平成20年8月5日(甲21,乙イ8。司法警察員に対し。) 「チンコの先っの少し下に小さなイホか10個くらいあったことを目て は見てはいせんか,唇舌て感したのてした。」,「これてチンコにイ ホか付いている人はいなかったのて,チンコにイホイホかあるなんて初て たと思い,とて印象に残っているのてす。」なとと述へ,さらに,「イホの状況」と題する図面を書き,イホの形状を具体的に説するなとした。エ 平成20年9月4日(甲26,乙イ20。検察官に対し。) 「私は,警察官に運転手のおしさんのチンコの先っのうに,イホか10個くらいあったとお話しししたか,タクシーの中はとて暗く,目て 見て直接確認したわけてはありせん。私かフェラチオをしているときに, 口舌の感覚てイホかあると感したたけて,男の人のチンコの形か状況に よって変わることからして,イホかあったとは自信を持って言えせ ん。」オ 平成21年8月26日の第1回公判期日(甲27,乙イ22) 「て,9月4日の検察官調書を見ると,検察官調書ては,何て答えたか覚 えていすか。」との質問に対して,「・・・なかった。」と証言し,「これを見ると,いかあったか自信を持って言えせんというふうになって すよね。て,検察官の取調へのときに,いについて,何か言われたん てすか。」との質問に対して,「言われした。」と証言し,さらに「な んて言われたんてすか。」との質問に対して,「調へるとか。」と証言し, 「調へて,とうたと言われしたか。」との質問に対して,「違ったと。」 と証言した。(7) 名古屋地裁は,平成21年12月4日,本件刑事事件について,A子の供 述及ひ申立人の捜査段階ての自白の信用性をいすれ否定し,申立人かA子 と性交類似行為等をしたと認るについては合理的疑いを差し挟余地かあ り,公訴事実について犯罪の証かないとして,申立人に対し,無罪判を 言い渡し,同判は,同月19日,確定した(甲1)。(8) 申立人は,基本事件の平成22年7月23日付け訴状において,「8月 19日の取調へについては,原告は,『う私はそのときせんせんわかり せん』という状況の下て行われた。取調へ中検事から電話かあり,『原 告の陰茎にイホかあるかとうか』という問い合わせかあった。そこて原告 は自ら陰茎をB刑事に見せイホのないことを確認させたか,これらは調書には書いてらえなかった(甲18号証)。」(p14,15),「C検 察官はその供述か信用てきるかを確かるへく,8月19日,原告か当時 勾留されていた春日井警察署に電話をし,B刑事らに,被告人のイホかあ るかないかの問い合わせをした。そして,B刑事は,原告の陰茎を実際に 見て,イホのないことを確認し,それはC検察官に伝えられた」(p17) なとと主張した。(9) これに対し,国は,平成22年10月1日付け「被告国第1準備書面」 において,「C検事か,警察官において原告を取り調へていることを認識 した上,警察官に対して原告の陰茎のイホの有無を問い合わせた事実はな い。なお,C検察官か平成20年8月20日ての間に,原告の陰茎を確 認したか否かを電話て警察官に尋ねた事実はあるか,その際,応対した警 察官からは,『確認していない』旨の回答を受けたにととる。その後 C検察官は,警察官からの原告の陰茎を実際に見てイホかないことを確認 したなとという報告を受けておらす,た,警察官に対して原告の陰茎の イホに係る調査を指示した事実なかった。」(p5,6)なとと主張し た。(10)相手方は,平成22年10月1日付け「第1準備書面」において,「8 月19日の取調へ中に検察官から電話かあり,『原告の陰茎にイホかある かとうか』という問い合わせかあった事実,原告かB巡査に陰茎を見せイ ホのないことを確認させたか,これらは調書に書いてらえなかった事実 はいすれない。上記取調へにおいて,B巡査は『チンコに特徴かあるの か。他人と違うところとか,大きいとか小さいとか。』と原告に尋ねたと ころ,原告はスホンを降ろしてその陰茎を見せようとした。本来てあれは, 被疑者の陰茎を確認するような行為は身体検査令状に基つきなされるへ きてあり,令状の執行なしに原告の陰茎を確認すれは,捜査の任意性を疑 われるおそれかあったことから,B巡査は原告の陰茎を確認することなく,原告にスホンを上けるよう指示しており,その陰茎にイホかあったかとう かては確認していない。」(p12),「この取調へにおいて,B巡査 は原告に『チンコに特徴かあるのか。他人と違うところとか,大きいとか 小さいとか。』とその陰茎の特徴を尋ねたところ,原告は『いないてす よ。そりあ,大きくはないてすけと,男同士なら別に恥すかしくないか ら見せす。』等と言って椅子に座った横を向き,椅子から立ち上か りなからスホンを下けようとした。本来てあれは,被疑者の陰茎を確認す るような行為は身体検査令状に基つきなされるへきてあり,令状の執行な しに原告の陰茎を確認すれは,捜査の任意性を疑われるおそれかあったこ とから,B巡査は原告の陰茎を確認することなく,原告にスホンを上ける よう指示したところ,原告はこれに応した。なお,原告に対する身体検査 令状の執行の当否につき,春日井署は原告か既に犯行を認,その状況を 詳細に供述していたことから,敢えて原告の陰茎を確認してこれを証拠化 することは,原告に精神的・身体的苦痛を与えるとして執行しなかった。」 (p33)なとと主張した。2 本件文書の取調への必要性
(1) 一件記録によれは,基本事件においては,前記1(8)ないし(10)のとおり,Bか,申立人に陰茎に特徴かあるのか尋ねたこと,申立人は,スホンを下 けてBに陰茎を見せようとしたこと,この際,本件身体検査令状か申立人に 呈示されていなかったことは争いかないか,Bか,実際に申立人の陰茎のイ ホを確認し,「普通のチンチンたな,へんなチンチンてはないな。」と発言 したか,申立人かBに上記り取りを調書に取って欲しいと頼んたか,取調 への最中に,検察官からBに,申立人の陰茎を確認したかを尋ねる電話かあ ったか,Bか,検察官に対し,申立人の陰茎を確認したことを返答したか等 については争いかあることか認られる。このように,基本事件ては,本件身体検査令状か申立人に呈示されていない等の事実は当事者間て争いかないとして,上記のとおり,実際にBか申 立人の陰茎を確認したか,検察官か春日井署に申立人の陰茎について確認 したかは争いかあり,取調への段階において,捜査機関か申立人の陰茎のイ ホの有無について,とのような確認をし,とのような認識を有していたかに ついてらかになっておらす,基本事件の重要な争点となっている。た, 本件刑事事件における判は,前記1(6)のようなA子の供述の変遷等につい て言及した上,「被告人の陰茎の特徴についてと,母親から電話かかかって きた時刻については,いすれ口淫被害と密接に関連する部分てあって,こ の点についての供述に信用かおけないことの意味は極て重要というへきて ある。」(甲1)なとと指摘している。(2) そして,一件記録によれは,申立人は,基本事件において,本件身体検査 令状の取扱い,執行状況に関連する事実をらかにすることて,本件身体検 査令状の取扱い執行状況の違法,不当を主張するにととらす,捜査機関 か平成20年8月19日の取調への時点て把握していた事実等を主張して, 検察官の略式命令の請求,その後の正式裁判における公訴維持か違法てあ ったとしているのてあり,これに対し,基本事件の被告てある国相手方は, 申立人の上記主張等を争っている。このような争点との関係ては,平成20 年8月19日の時点て捜査機関,特に申立人の起訴不起訴の定権限を持つ 検察官か,申立人の陰茎のイホについてとのような認識を有していたのかか 極て重要てある。し,検察官か,申立人の陰茎について,警察官に確認 させるなとして,申立人の陰茎にイホかないことを認識していたとすれは, A子の供述の信用性について重大な疑問か生しるのてあるから,この点に関 する補充捜査等を行うことなく漫然と申立人に対する略式命令を請求し,正 式裁判の請求後公判を維持したのとして,検察官の行為か違法とされる なとの可能性か高くなるのてある。したかって,上記のような申立人か主張する事実かあったか否かを基本事件においてらかにする必要性は極て高いのてある。
 そして,令状請求簿は,令状請求の手続,発付後の状況等をらかにする ことにより,適正な捜査管理に資するたに作成されるのてあることから すれは(犯罪捜査規範137条3項),本件文書には,本件身体検査令状の 取扱い,執行状況についての事実,Bか申立人の陰茎を確認したか等これ に付随し,関連する事実か,備考欄等に記載されている可能性かあるし,前 記第2の2(10)及ひ(13)のとおり,本件身体検査令状か2年以上経過した後 に春日井簡裁に返還され,その請求書そのさらに約3か月後に名古屋地検 に送致されるという異常な取扱いかされていることに照らせは,本件身体検 査令状か一旦は執行された扱いとされていた可能性等否定てきないのてあ る。た,令状請求簿は,犯罪捜査規範(別紙様式第13号)により別紙2 のとおり様式か定られており,本件文書同様の様式て作成されていると 考えられるところ,本件身体検査令状か発付されたのに執行されていないと すると,必要な記載か空欄の残されていたことになり,何らの指摘対処されない2年以上経過してしうのは極て不自然てある。そして, このような状況においては,関係する警察官の証人尋問等を実施したとして ,客観的事実に沿った答えかされるとは限らす,偽証証言拒否の可能性 考えられるのてあって,本件文書の取調へに代替てきるのてはない。以上からすれは,基本事件において,本件文書を取り調へる必要性は,優 に認られるのてある。(3) 相手方は,前記第2の3(1)イのとおり,基本事件において本件文書を取り 調へる必要性はないなとと主張するか,申立人は,基本事件において,単に 本件身体検査令状及ひ本件文書の取扱い,執行状況の違法,不当を主張する のてはなく,前記(2)のとおり,本件身体検査令状て検査すへき身体とされ た「申立人の陰茎」についてのBによる確認,その結果の検察官への連絡 等の事実を主張して,略式命令の請求,その後の正式裁判における公訴維持か違法てあったことを主張しているのと解されるところ,このような争 点との関係て,前記(2)のとおり基本事件において本件文書の取調への必要性 かあることはらかてある。なお,証すへき事実1及ひ2は,それ自体具体性に欠ける内容てはあ るか,そそ,これら証すへき事実との関係において,申立人は,春日 井署において具体的に本件身体検査令状についてとのような処理か行われた のか,相手方において作成された文書の開示を受けることなしに知り得る立 場にはなく,申立人か,春日井署において作成された本件文書等の資料を見 て初て処理の内容か判するのてあるから,本件申立てにおいて,証 すへき事実かある程度抽象的となるのはを得ないし,本件ては,上記の とおり申立人の基本事件における主張との関係を見れは,証すへき事実は らかとなっており,取調への必要性か高いのてある。したかって,この点に関する相手方の主張は,理由かない。
 3 法220条3号後段該当性(1)ア 法220条3号後段の法律関係文書とは,挙証者と文書の所持者との間 の法律関係それ自体ないしそれに関連する事項を記載した文書てあって,所 持者か専ら自己の利用を目的として作成した内部文書を含ないと解され る(最高裁平成12年3月10日第一小法廷定・最高裁裁判集民事197 号
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 1 頁 )。これを本件についてると,本件身体検査令状は,これによって申立人 の身体の自由を制約して,陰茎についての検査を受忍させるという,申立 人と相手方との間の法律関係を生しさせる文書てあるところ,身体検査令 状の請求をした司法警察員は,法令(犯罪捜査規範137条3項)により 本件文書(令状請求簿)を作成することか義務付けられている。そして,犯罪捜査規範は,警察官か犯罪の捜査を行うにあたって守るへ き心構え等を定ることを目的として,国家公安委員会か,警察法12条に基つき制定した国家公安委員会規則てあるか,そそ国家公安委員会 は,内閣総理大臣の所轄の下に内閣府の外局として置かれ,委員長及ひ5 人の委員をって組織する国の委員会てある(内閣府設置法49条1項, 警察法4条)のに対し,都道府県警察は,都道府県か設置する警察組織て あり(警察法36条1項),両者は,全く別個の行政組織てある。そして, 国家公安委員会は,警察行政に関する調査を行うことにより,個人の権利 と自由を保護すること等を任務とするのて,このような任務を達成する た,所定の事務について警察庁を管理したり,法律の規定に基つきその 権限に属せられた事務をつかさとるとされているのてあり,このような任 務の性質からいって,実質的に,都道府県警察とは別個独立ののてあ ることを要するのてある(警察法5条)。そのた,国家公安委員会の 委員は,任命前5年間に警察又は検察の職務を行う職業的前歴のない者の うちから,内閣総理大臣か両議院の同意を得て任命するのとされている のてある(警察法7条)。したかって,犯罪捜査規範か,行政機関の内部 において定られた規範てはないことはらかてある。た,令状請求簿の形式は,犯罪捜査規範別紙様式第13号によって定 られ,かつ一般に公開されており,その記載内容は,別紙2のとおり, 令状請求の裁月日,令状種別,罪名,被疑者氏名,令状発付及ひ執行の 月日時,有効期間,備考欄等と細かく規定されており,記載内容か作成者 の自由な判断に任されているのてはない。令状請求簿は,身体検査令状 請求書と異なり,身体検査令状の発付を求るたに作成か義務付けられ ているのてはないのの,「令状を請求したとき」に作成しておくこと か法令上定られており,作成時期の定ある(犯罪捜査規範137条 3項)。令状請求簿作成の目的は,令状の請求の手続,発付後の状況等をらか にし,令状請求手続の適正を担保することにあると考えられるか(犯罪捜査規範137条3項),上記のように令状請求簿の形式か定られ,かつ 一般に公開されており,記載内容等定られていることからすれは,令 状請求簿の作成を義務付けているのは,単に警察署内部において令状請求 手続発付後の状況をらかにしておくという目的たけてはなく,さに 本件のように事後的に令状の取扱い等か問題となった場合に,外部から適 正な令状執行等の手続か行われたか否かを確認し検証するという目的あ るということかてきる。そして,開示されるおそれかないとすると,本件 刑事事件におけるような,令状の不当ないし杜撰な管理か横行するように なるのてあり,しろ,開示されることにより,令状の執行管理につい て適切を期するよう意識的に注意するようになると考えられるのてあって, 令状請求簿の目的かより効果的に達せられることになるのてある。すなわ ち,令状請求簿は,外部に公表することか予定されす専ら警察署内部ての 使用することを目的として作成されているのてないことはらかてあ る。以上のような本件文書の作成目的及ひ記載内容等に照らせは,本件文書は, 申立人と相手方との間の,本件身体検査令状によって生した法律関係に関連 する事項を記載した文書てあって,単なる内部文書にととらないというこ とかてきるから,法律関係文書に該当すると認られる。イ 相手方は,令状請求簿か,検察庁との間ての授受,検察官からの勾留 請求について,勾留の可否を判断する裁判官か参照することなとは予定され ていないことなとから,内部文書にあたる旨主張する。確かに,相手方か主 張するように,令状請求簿は,検察官に送致される一件記録の中には含れ す,勾留請求等の際に検察官から裁判官に提出されるのてない。しかし, このような事情か認られるとして,前記アに述へたところからすれは, 本件文書は,内部文書と評価されるのてはなく,申立人と相手方との間の, 本件身体検査令状によって生した法律関係に関連する事項を記載した文書てあるということかてきる。したかって,この点に関する相手方の主張は理 由かない。た,相手方は,犯罪捜査規範は,警察官か捜査を行うにあたって守る へき心構え,捜査の方法,手続その他捜査に関し必要な事項を定た内部規 範てあるから,これにより第三者になんらかの法的な権利を付与したり義務 を課すのてはないと主張するか,犯罪捜査規範か行政機関の内部におけ る規範といえないことは前記アのとおりてあるから,この点に関する相手方 の主張理由かない。(2) 以上によれは,本件文書は,法220条3号後段の法律関係文書に該当す る。4 文書保管者(相手方)の裁量権の濫用について
(1) 刑訴法47条本文か「訴訟に関する書類」を公にすることを原則として禁止しているのは,それか公にされることにより,被告人,被疑者及ひ関係者 の名誉,フライハシーか侵害されたり,公序良俗か害されることになったり, 又は捜査,刑事裁判か不当な影響を受けたりするなとの弊害か発生するのを 防止することを目的とするのてあること,同条たたし書か,公益上の必要 その他の事由かあって,相当と認られる場合における例外的な開示を認 ていることにかんかると,同条たたし書の規定による「訴訟に関する書類」 を公にすることを相当と認ることかてきるか否かの判断は,当該「訴訟に 関する書類」を公にする目的,必要性の有無,程度,公にすることによる被 告人,被疑者及ひ関係者の名誉,フライハシーの侵害等の上記の弊害発生の おそれの有無等諸般の事情を総合的に考慮してされるへきのてあり,当該 「訴訟に関する書類」を保管する者の合理的な裁量にゆたねられているの と解すへきてある。そして,民事訴訟の当事者か,法220条3号後段の規定に基つき,刑訴 法47条所定の「訴訟に関する書類」に該当する文書の提出を求る場合において,当該文書の保管者の上記裁量的判断は尊重されるへきてあるか, 当該文書か法律関係文書に該当する場合てあって,その保管者か提出を拒否 したことか,民事訴訟における当該文書を取り調へる必要性の有無,程度, 当該文書か開示されることによる上記の弊害発生のおそれの有無等の諸般の 事情に照らし,その裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用するのてあると認 られるときは,裁判所は,当該文書の提出を命することかてきるのと解す るのか相当てある(最高裁平成16年5月25日第三小法廷定・最高裁民 事判例集58巻5号1135頁,最高裁平成17年7月22日第二小法廷 定・最高裁民事判例集59巻6号1837頁,最高裁平成19年12月12 日第二小法廷定・最高裁民事判例集61巻9号3400頁)。(2) 本件文書は,前記3(1)アのとおり,申立人と相手方との間の,本件身体検 査令状によって生した法律関係に関連する事項を記載した文書てあり,かつ, 本件のように事後的に令状の取扱い等か問題となった場合に,適正な令状執 行かなされたか否か等を確認するという目的て作成されているということか てきる。そして,本件文書は,本件刑事事件において,裁判所に提出されな かった文書てある。そうすると,本件文書は,申立人に対する被疑事件に関 して作成された書類てあり,かつ,公判において提出されなかった書類てあ るから,刑訴法47条の「訴訟に関する書類」にあたる。なお,申立人は,本件文書か刑訴法47条の「訴訟に関する書類」にはあ たらない旨主張するか,刑事事件の確定後てあって当該刑事事件の公判て 公にされなかった書類(不提出書類)か「訴訟に関する書類」にあたること はらかてあり(前記(1)の最高裁平成16年5月25日定参照),この点 に関する申立人の主張は理由かない。(3) 前記2(2)のとおり,申立人は,基本事件において,検察官の略式命令の請 求,その後の正式裁判における公訴維持か違法てあったことを主張してお り,平成20年8月19日の時点て捜査機関,特に申立人の起訴不起訴の定権限を持つ検察官か,申立人のイホについてとのような確認を行い,との ような認識を有していたのかか極て重要てあり,基本事件において本件文 書を取り調へる必要性は高いということかてきる。た,本件文書を公開す ることによって,申立人以外の者の名誉フライハシーか侵害されるおそれ ,捜査,公判にとのような支障か生するかについて,相手方の主張なく, 一件記録を検討して,本件文書に,申立人以外の者の名誉フライハシー を侵害するような記載かあるなと,その提出によって第三者の名誉フライ ハシーを侵害するようなおそれ等の弊害かあるとは到底いえないし,申立人 に対する捜査及ひ公判手続は,無罪判の確定によって終了しているから, 今後の捜査公判への悪影響を考慮する必要皆無てある。そして,本件文 書の所持者てある相手方に生する可能性のある不利益は,本件身体検査令状 の執行本件文書の管理等か不適切てあったことか客観的に白になること てあるか,このような事態を防こうという利益は正当なのとは認られな いのてある。(4) したかって,前記(3)のとおり取調への必要性か高く,開示することによる 弊害かとんと考えられない本件文書の提出を拒否する相手方の判断は,何 て隠しておこうとする秘密主義によるのか,あるいは本件文書に相手方 に不利な記載等かあることを隠蔽しようとしていることさえ疑われるのて あり,これらのいすれてないとして,法220条4号ホによって,一般 的提出義務から除外されていることを奇貨として前記のような理由のない主 張を繰り返して基本事件の進行を遅滞させるのてあって,裁量権の範囲を 逸脱し,かつこれを濫用するのてあることはらかてあり,相手方は,本 件文書の提出義務かある。第4 結論 以上のとおり,相手方は,法220条3号後段に基ついて本件文書の提出義務かあり,本件申立ては理由かあるから,主文のとおり定する。平成23年12月27日 名古屋地方裁判所民事第8部
裁判長裁判官 長谷川 恭 弘
裁判官 鈴 木 陽一郎
裁判官 中 畑 章 生
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