平成23年12月14日判言渡 同日原本領収 裁判所書記官 平成22年(ワ)第2049号 所有権移転登記手続請求事件 中間判のための口頭弁論終結日平成22年(※平成23年に更正定済み)10月12日
中間判
主文 被告の本案前の答弁は,理由かない。
事実及ひ理由 第1 原告らの請求及ひ被告の答弁
1 請求の趣旨 (1)主位的請求
被告は,原告らに対し,別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」とい う。)について,被告からA(死亡時の住所:名古屋市○区○町○丁目○番 地の○。以下「亡A」という。)に対する昭和37年10月1日売買を原因 とする所有権移転登記手続をせよ。(2)予備的請求 被告は,原告らに対し,本件土地について,被告から亡Aに対する昭和37年10月1日時効取得を原因とする所有権移転登記手続をせよ。
 (3)訴訟費用は被告の負担とする。2 被告の本案前の答弁
(1)本件訴えをいすれも却下する。
 (2)訴訟費用は原告らの負担とする。3 被告の本案の答弁
(1)原告らの請求をいすれも棄却する。
(2)訴訟費用は原告らの負担とする。
 第2 事案の概要
1 本件は,亡Aの相続人てある原告らか,被告に対し,本件土地について,亡 Aへの所有権移転登記手続(主位的に売買を原因とし,予備的に時効取得を原 因とする。)を請求している事案てあるか,被告は,原告らの本件訴えの却下 等を求めている。2 前提事実(争いのない事実並ひに証拠(甲2の1~22,3,4,6,19 の1~7)及ひ弁論の全趣旨により容易に認定てきる事実)(1)被告は,本件土地及ひ本件土地上の建物(以下「本件建物」という。)を 所有していた。(2)亡Aは,被告から,昭和37年10月1日,本件土地及ひ当時市営住宅て あった本件建物(以下「本件不動産」という。)を,下記の約定て,代金7 5万3130円て購入し(以下「本件売買契約」という。),被告は,亡A に対し,同日,本件不動産を引き渡した。記
ア 支払方法
昭和37年10月1日
同年11月から昭和44年10月まて 毎月5日限り1万0950円イ 買主(亡A)か3か月分以上分割代金の納付を怠ったときは,売主(被 告)は,本件売買契約を解除てきる(以下「本件解除特約」という。)。(3)被告は,本件土地の所有権登記を有している。
 (4)亡Aは,平成18年○月○日,失火か原因の本件建物を全焼する火災(以下「本件火災」という。)によって死亡したか,その時点において,本件不動産を占有していた。 (5)亡Aは,配偶者及ひ子かおらす,直系尊属はいすれも亡Aの死亡より前に2万6800円
死亡していた。
 (6)亡Aの相続に関する身分関係は,別紙A相続関係図記載(たたし,「(相続放棄)」との記載を除く。※別紙省略)のとおりてあり,原告X4とBと は,昭和44年7月15日,婚姻し,B,原告X2及ひCの母D(以下「亡 D」という。)は,平成19年12月13日,死亡した。(7)亡Aは,平成17年,原告X1宅を訪れ,その際,原告X1は,亡Aから, 市営住宅(本件不動産)の移転登記かされていないということを聞いた。(8)Bは,平成18年4月23日,Eは,同月24日,Cは,同月25日,そ れそれ亡Aの死亡の事実を知った。(9)B及ひCは,平成21年8月12日,名古屋家庭裁判所(以下「名古屋家 裁」という。)に,同年6月28日親戚からの手紙により相続の開始を知っ たとして,被相続人亡Aの相続の放棄を申述し,同年8月19日,受理され た。(10) Eは,平成21年9月14日,名古屋家裁に,同年7月27日親戚から連 絡を受けて相続の開始を知ったとして,被相続人亡Aの相続の放棄を申述し, 同年10月13日,受理された。(11) Fは,平成21年9月14日,名古屋家裁に,同年7月24日親戚から連 絡を受けて相続の開始を知ったとして,被相続人亡Aの相続の放棄を申述し, 同年10月13日,受理された。(12) Gは,平成21年9月14日,名古屋家裁に,同年7月29日親戚から連 絡を受けて相続の開始を知ったとして,被相続人亡Aの相続の放棄を申述し, 同年10月13日,受理された。(13) Hは,平成21年9月14日,名古屋家裁に,同年7月25日親戚から連 絡を受けて相続の開始を知ったとして,被相続人亡Aの相続の放棄を申述し, 同年10月13日,受理された。(14) Iは,平成21年9月14日,名古屋家裁に,同年7月28日親戚から連絡を受けて相続の開始を知ったとして,被相続人亡Aの相続の放棄を申述し,同年10月13日,受理された。
(15) 原告らは,平成22年○月○日,本件訴えを提起した。
3 被告は,本件訴えは,亡Aの相続人全員て提起すへき固有必要的共同訴訟て あるとし,B,C,E,F,G,H及ひI(以下「本件放棄申述者ら」という。) の相続放棄は,いすれも自己のために相続の開始かあったことを知った時から 3か月以内にされたものてはないから無効てあり,亡Aの相続人全員か原告に なっていないとして,本件訴えの却下を求めている。4 これに対し,原告らは,本件訴えか固有必要的共同訴訟てあることを争うと ともに,以下のとおり主張し,B,C,E,F,G,H及ひIの相続放棄はい すれも有効てあるとして,本案の審理及ひ裁判を求めており,後記被告の主張 を争っている。(1)F,G,H及ひIは,亡Aの死亡の事実を,Hにつき平成21年7月21 日,F,G及ひIにつき同月28日,原告X1の三男Jからの連絡文書によ って初めて知った。(2)B,C及ひEは,いすれも亡Aに相続財産(負債も含む。)かあることを 知らす,B及ひCは,亡Aの相続人てある亡Dの死亡により相続人となった ものて,亡Dは亡Aの死亡時には意思能力かなく,本件不動産の存在につい ては,Bにつき平成21年6月29日,Cにつき同月28日,Eにつき同月 27日,Jからの連絡文書によって初めて知った。(3)B,C及ひEは,いすれも亡Aとは付き合いかなく,亡Aには相続財産か 全くないと思っていたり,自分か亡Aの相続人になることさえ認識していな かったものて,亡Aの相続財産の有無の調査を期待することか著しく困難な 事情かあった。5 さらにこれに対し,被告は,以下のとおり主張するなとして,原告らの主張 を争っている。(1)被告の担当者てある住宅都市局住宅部住宅管理課管理係長K(以下「K」 という。)は,平成18年4月25日,原告X4に対し,電話て,本件不動 産について,亡Aと譲渡契約を結んてはいたけれとも完済には至らす,登記 も被告名義のまま今日まて来ていること等を説したし,同日午後5時ころ, 直接面談して,再度上記本件不動産に関する事情等を説した。そのため,原告X4と同居しているBは,上記本件不動産に関する事情を 知っていたはすてあり,Jからの連絡文書(甲15の3)にある「・・・先 日からこ連絡させていたたいている件てす。こ連絡か遅くなり申し訳ありま せん。さて,6月15日のY住宅管理課長との交渉は残念なから裂いたし ました。Yの主張は,今まての交渉より後退した理不尽なものとなっていま す。」なとの文面からすれは,平成21年6月15日より前から,J,原告 X4及ひBの間ては,上記本件不動産に関する事情か旧知の事実てあったこ とか推認される。(2)原告X1は,平成17年に,亡Aから,未登記の本件不動産のことを聞い ており,亡Aの死亡の事実を知った亡Aの相続人らは,同し相続人てある原 告X1に問い合わせをするたけて,本件不動産の存在か判したのてあるか ら,亡Aの相続財産の調査をすることか著しく困難てあったとはいえない。第3 当裁判所の判断
1 前記前提事実に証拠(甲13の2・3,14の4~7,15の4・5,20)及ひ弁論の全趣旨を総合すると,Hは,平成21年7月21日,F,G及 ひIは,同月28日,Jからの連絡文書(甲15の4・5)等によって,亡A の死亡及ひ本件土地の存在を初めて知り,いすれも,同年9月14日,名古屋 家裁に,被相続人亡Aの相続の放棄を申述し,同年10月13日,受理された ことか認められる。2 前記前提事実に証拠(甲12の1~3,14の1~3,15の1~3,17, 18の1,20ないし23,乙1,2,証人E,証人C,証人B)及ひ弁論の全趣旨を総合すると,亡Dは,亡Aの死亡時(平成18年○月○日)には,認 知症及ひ脳出血により既に意思能力かなくなっており,平成19年12月13 日,死亡したこと,Jは,原告X1から本件土地のことを聞いており,平成2 0年11月5日,被告に対し,本件土地のことを問い合わせ,以後,同年12 月5日,平成21年1月15日,同年2月2日,同月4日,同年4月7日,同 月10日,同年5月15日,同月25日,同年6月15日と,被告との交渉等 を続けていたこと,原告X4は,同月2日ころ,Jからのメールて,本件不動 産か分譲住宅てあったこと等について連絡を受け,これをBに話したこと,B 及ひ原告X4は,同月29日,Cは,同月28日,Eは,同月27日,Jから 連絡文書(甲15の1~3)等の送付を受けたこと,B及ひCは,いすれも, 同年8月12日,名古屋家裁に,被相続人亡Aの相続の放棄を申述し,同月1 9日,受理され,Eは,同年9月14日,名古屋家裁に被相続人亡Aの相続の 放棄を申述し,同年10月13日,受理されたこと,Eは,亡Aと,昭和60 年1月のL(原告X4,E及ひ原告X3の父)の葬儀の時を最後として,その 後は交流か全くなく,原告X1とも,上記葬儀の時を最後として,その後は年 賀状のりとり以外の交流はなかったこと,B及ひCは,亡Aと,記憶もない ような幼少時を除けは,昭和44年のBと原告X4との結婚式の時に会ったた けて,その他の交流は全くなかったこと,Cは,原告X1と,平成14年8月 2日のM(B,原告X2及ひCの父。以下「亡M」という。)の葬儀の時を最 後として,その後は交流か全くなかったこと,Bは,原告X1と,亡Mの葬儀 の時に会って以降,年賀状のりとり以外の交流はなかったこと,原告X4は, 平成18年4月23日,原告X1からの連絡て,亡Aの死亡及ひ本件火災かあ ったことを知り,これらを,同日,Bに伝え,同月24日,Eに伝えたこと, Bは,これらを,同月25日,Cに伝えたこと,原告X4は,同日,本件火災 現場(本件土地)へ行き,そこからKと電話て話をし,その後,本件火災現場 に来たKと話をして,「市営○○住宅荘 棟 号」内にある物件について,一切の権利を放棄し,その処分に異議はなく,処分を被告に委任する旨の被告市 長宛の委任状(乙1)及ひ原状回復残置物件の処分,処分に要する費用の負 担,敷金の充当等について記載のある被告市長宛の退去届(乙2)にそれそれ 署名押印し,本件火災後の家財残置物の処分費用を原告X4か負担することて, 市営住宅に関する処理は終了するものとされたこと(なお,失火の場合,近隣 への延焼については,失火ノ責任ニ関スル法律により,失火者に重大な過失か ない限り,不法行為責任は負わない。),原告X4及ひBは,同月の時点て, 亡Aは,借家住まいてあり,本件火災により亡Aの財産は焼失するなと全て価 値かなくなり,債務も存在しないものと認識しており,Bは,亡Dか亡Aの財 産を相続し,将来さらに自分か相続する可能性かあることを認識していなかっ たこと,Eは,同月の時点て,自分か亡Aの相続人となることを認識しておら す,亡Aの財産債権債務について全く興味かなかったこと,Cも,同月の時 点て,亡Dか亡Aの相続人となり,将来さらに自分か相続する可能性かあるこ とを認識しておらす,亡Aの財産債権債務について全く興味かなかったこと, 本件不動産について,原告X4及ひBは,平成21年6月2日ころ,Jからの メールによって初めて知り,Eは,同月27日,Jからの連絡文書(甲15の 1)等によって初めて知り,Cは,同月28日,Jからの連絡文書(甲15の 2)等によって初めて知ったことか認められる。3 本件訴えは,1個の不動産(本件土地)について,共有権に基つき,亡Aへ の所有権移転登記手続を求めるものてあるから,共有者全員について合一に確 定する必要かあり,共有者全員を訴訟の当事者とすることを要するいわゆる固 有必要的共同訴訟てあると解される。しかし,以上の認定事実によれは,被相続人亡Aの相続について,F,G, H及ひIの相続放棄は,いすれも自己のために相続の開始かあったこと(亡A の死亡及ひ本件土地の存在)を知ったときから3か月以内にされたものと認め られ,有効なものてあるし,B,C及ひEは,亡Aの死亡を,平成18年4月中に知ったのてあるから,Eについては,原則としてこの時点から熟慮期間か 進行し,亡Aの相続人てなかったB及ひCについては,原則として意思能力か なかった亡Dの死亡(平成19年12月13日)を知ったときから熟慮期間か 進行することとなるか,いすれも,これらの時点から3か月以内に限定承認又 は相続放棄をしなかったのは,亡Aの積極及ひ消極の相続財産について,自分 に権利義務か帰属することさえ意識しないなと,その存在を全く認識していな かったためてあり,B,C及ひEと亡Aとの交流かほとんとなかったことから すれは,B,C及ひEには,上記のような認識てあったことについて相当な理 由かあると認められる。そうすると,本件土地の存在等を認識した時点てあるBにつき平成21年6 月2日ころ,Eにつき同月27日,Cにつき同月28日から,それそれ熟慮期 間を起算すへきてあり,同年8月12日にされたB及ひCの相続放棄並ひに同 年9月14日にされたEの相続放棄は,いすれも有効なものと認められる。なお,被告は,平成18年4月25日,Kは原告X4に,電話て,本件不動 産について亡Aと譲渡契約を結んてはいたか完済に至らす,登記も被告名義の まま今日まて来ていること等を説し,同日午後5時ころにも直接面談して, 再度上記本件不動産の事情等を説した旨主張して,Kか作成したとする事務 処理経過ノート(乙12)を提出し,これには,同月24日の記載として,「住 宅・敷地を分譲,契約はあるものの,支払未了」,「登記名義は市のまま」と の記載かあり,同月25日午後の原告X4との電話てのりとりとして,「登 記上名義(判読てきす。)なし・・・・残置物処理」との記載かある。しかし, 上記同月25日午後の記載については,後から書き加えることも可能な場所に 記載されている上,Kか原告X4に用紙を渡して提出させた被告市長宛の委任 状(乙1)及ひ退去届(乙2)は,いすれも市営住宅についてのものてあり, 証人Bは,被告の上記主張を否定する趣旨の供述をしているし,被告は,「被 告としては,相続放棄の有効性からかにされ,全相続人か本件訴訟の当事者となっていることか確にならない限りは,本案の問題に入るわけにはいかな い。」(平成22年9月30日付け第2準備書面)なととして,自ら本案前の 答弁についての審理・判断を先に行うよう求めておきなから,第6回弁論準備 手続期日(平成23年6月1日)において,当裁判所から本案前の問題につい て人証の申請を検討するよう促されたにもかかわらす,同年7月1日付け上申 書て,「本案前の抗弁についての審理段階ては,人証申請する予定はない。」, 「現段階ては,被告職員等の尋問まては不要と判断した。」なととして,被告 の主張する上記事情を知り得る立場にあったKなと被告職員等の尋問をあえて 申請せす,上記の点に関する立証を自ら放棄しているのてあり,上記事務処理 経過ノート(乙12)の記載を当時記載されたものと認めることはてきないし, その内容も信用することかてきす,したかって,上記事務処理経過ノート(乙 12)の記載を根拠に被告の上記主張を認めることはてきないのてあり,他に これを認めるに足りる証拠はない。また,被告は,平成17年に,原告X1は亡Aから未登記の本件不動産のこ とを聞いており,亡Aの死亡を知った亡Aの相続人らは,同し相続人てある原 告X1に問い合わせるたけて,本件不動産の存在か判したのたから,亡Aの 相続財産の調査をすることか著しく困難てあったとはいえない旨主張する。し かし,原告X1か本件不動産のことを知っていたとしても,以上の認定事実に よれは,Bは,亡Aは借家住まいて,本件火災により亡Aの財産は全て価値か なくなり,積極及ひ消極の財産は存在しないと認識していたのてあり,Eは, 亡Aの積極及ひ消極の相続財産について,自分に権利義務か帰属することさえ 認識していなかったのてあり,B,C及ひEのいすれについても,原告X1と の交流も希薄なものて,亡Aの葬儀法事等を開いて一同に集まったりする機 会もなかったのてあるし,さらに,B及ひCについては,亡Dの死亡(平成1 9年12月13日)を知ったときから亡Aの相続についての熟慮期間か進行す ることを認識することは,これを認識せさるを得ないような特別な事情てもない限り困難な状況にあったのてあるから,B,C及ひEに,亡Aの財産につい て,積極的に他の相続人等に問い合わせる義務かあったということはてきす, 上記のとおり,亡Aに相続財産か全く存在しないと信し,あるいはこれを意識 することさえなく,その存在を認識していなかったことについて,B,C及ひ Eには,相当な理由かあったというへきてある。4 以上によれは,B,C,E,F,G,H及ひIの相続放棄により,被相続人 亡Aを相続し,本件土地を共有することか可能な者は,原告X1,原告X2, 原告X4及ひX3の4名のみになったものと認められる。そうすると,本件訴えは,訴訟の当事者となるへき者全員か原告となってい るのてあって,適法なものと認められる。5 よって,被告の本案前の答弁は理由かなく,主文のとおり中間判をする。
 名古屋地方裁判所民事第8部裁判官 長谷川恭弘
物件目録
所在 愛知県名古屋市○区○町○丁目 地番 ○番○
地目 宅地
地積 131.70m
(別 紙)
以上
判例本文

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