主文
被告人を無期懲役に処する。
未勾留日数中370日をその刑に算入する。
 理 由
(罪となるへき事実) 被告人は,
第1 平成19年3月25日頃,千葉県市川市ab丁目c番d所在のeの当時の被 告人方において,A(当時22歳)に対し,その顔面等に打撃を加えた上,結 束ハントを用いて両手首等を拘束するなとし,これらの暴行により同人の反抗 を抑圧して,強いて同人を姦淫し
第2 同日頃から同月26日頃まての間,前記の当時の被告人方において,前記第 1の犯行の発覚を防くため,前記Aに対し,殺意をもって,その頸部を圧迫し, よって,その頃,同所において,同人を窒息死させて殺害し第3 同月26日頃,前記の当時の被告人方において,前記Aの死体を浴槽の中に 入れて土て埋めるなとし,もって死体を遺棄し
たものてある。
 (証拠の標目)
省略 (争点に対する判断)
 1 本件の争点
(1) 本件強姦致死,殺人被告事件の公訴事実の要旨は,被告人は,平成19年(以 下,日付はすへて平成19年のものてある。)3月25日頃,当時の被告人の住 居てあるe(以下「被告人方」という。)において,A(以下「被害者」という。) に対し,その顔面等をけん骨等て多数回殴り,結束ハント及ひ粘着テーフを用 いて両手首等を緊縛した上,殺意をもって,その頸部を圧迫するなとし,その 頃,同所において,被害者を窒息死させて殺害し,その際,上記一連の暴行に より被害者の反抗を抑圧し,被害者を強姦した,というものてある。
 これに対し,弁護人は,1被告人か被害者の両手首等を結束ハントて緊縛す るなとして被害者を強姦したことは間違いないものの,強姦に際して,被害者 の顔面等をけん骨等て殴ったり,頸部を圧迫したりしたことはなく,被害者の 両手首等を粘着テーフて緊縛したこともない,2被告人は,強姦を終えてから 相当な時間か経過した後に,被害者の頸部を圧迫したことて被害者の死亡に至 らせたか,その際,被告人には殺意はなかった,3被告人に強姦致死罪は成立 しない,旨主張する。
 弁護人の主張3に関し,検察官は,被告人か被害者の頸部を圧迫したのか強 姦を終えてから相当な時間か経過した後てあったとしても,いつても姦淫てき る状態を継続させた中て被害者を死亡させたのてあるから,被告人に強姦致死 罪か成立する,と主張する。
(2) したかって,本件の争点は,1強姦の手段たる暴行の態様,すなわち,被告 人は,被害者を強姦するに際して,被害者の顔面等を殴ったかとうか,被害者 の両手首等を粘着テーフて緊縛したかとうか,被害者の頸部を圧迫したかとう か,2被告人か被害者の頸部を圧迫した際,被告人に殺意かあったかとうか, 3被告人に強姦致死罪か成立するかとうか,の3点てある。2 強姦の手段たる暴行の態様について (1) 顔面等の殴打の有無についてア 証拠によれは,被告人は,3月25日午前9時54分過き頃,被害者を連 れて被告人方に入り,その後間もなく,室内て被害者を押し倒し,その身体 を上から押さえ付けた上,その両手首,両足首を結束ハントて拘束して姦淫 したことか認められる。
イ そして,本件の結束ハントは長さ45センチメートルのものと長さ30セ ンチメートルのものかあるところ,いすれも,それを結束するためには,そ の一方の端を他方の端の小さな穴に通す必要かあり,そのような形状等から すれは,相手か少しても抵抗てきる状態にある場合には,その両手首,両足 首を拘束するのは極めて困難てあると認められる。そうすると,被告人か被 害者の両手首,両足首を結束ハントて拘束した時点て,被害者は既に抵抗て きない状態にあったと推認することかてきる。
 また,証拠によれは,被害者の遺体の顔面,胸部,腹部,背部,両上肢及 ひ両下肢に,手の拳足なとを含む鈍体によって形成されたと認められる, 陳旧てない皮下出血か多く残されていたこと,特に右目の周りの皮下出血は 筋肉の挫滅を伴っており,かなり強い力て打撃か加えられた可能性か高いこ と,か認められる。被害者か,強姦されそうになって激しく抵抗し反撃を試 みたてあろうと常識的に考えられることも合わせると,被告人は,両手首, 両足首を結束ハントて拘束するに際し,右目の周りへのかなり強い力による 打撃を含め,全身に対する暴行を加えた,とみるのか自然て合理的てある。ウ(ア) これに対し,被告人は,強姦の際に被害者を殴ったことはないとした上 て,仰向けの状態て大を出して抵抗する被害者に馬乗りのような状態に なり,被害者の口を手てふさき,被害者の両手,両足を,自分の両手,両 足て押さえ込んたり,被害者の体に自分の体を密着するように押し付けた りして,数分間激しくもみ合った,すると,被害者は疲れたのか,抵抗し なくなった,そこて,被害者の服を脱かせて全裸にし,被害者の上半身を 起こして,右手て被害者の上半身を押さえたまま,左手て玄関の靴箱の上 にある収納棚から結束ハントを取り出し,被害者の両手首,両足首を拘束 した,旨供述する。
 被告人の供述によれは,両手,両足を押さえ込むなとして数分間もみ合 ったたけて,被害者は,服を脱かされる時も,両手首,両足首を結束ハントて拘束される時も,全く抵抗てきないほとの状態に陥ったということに なる。しかし,当時,被告人は身長約180センチメートル,体重約70 キロクラムてあるのに対し,被害者は身長約176センチメートル,体重 約63.5キロクラムてあり,両者に顕著な体格差かないことも考えると, あまりに不自然てある。被告人か供述するように,被害者か数分間にわた り相当に激しく抵抗することかてきたというのてあれは,驚かく恐怖に より抵抗てきない状態に陥ったとも考えられない。 また,被害者のコート,カーティカンかいすれも両袖部分を切断されて いたことにつき,被告人は,コートは姦淫しようとする時に手て破った, カーティカンは被害者か亡くなった後にはさみて切断したと思うなとと述 へるか,証拠(省略)からうかかわれるコートの切断面は,およそ手て破 ったものとは認められないし,カーティカンの両袖部分を被害者の死後に はさみて切断した理由についても,被告人は何ら説していない。また, 被害者の着衣に尿斑かみられたことにつき,被告人は,被害者を全裸にし て姦淫した後,被害者か排尿したため,そはに置いてあった着衣に尿か付 着した旨供述するか,スカート,タイツ,ハンティーに残された尿斑の位 置,範囲等からみて,被害者かこれらを着用したまま排尿したことはら かてあって,被告人の供述はこれに反している。
 以上のとおり,被告人の供述は,被害者を抵抗てきなくさせて結束ハン トて拘束した状況のみならす,被告人か脱かせたという被害者の着衣の状 況に関しても信用することかてきす,強姦時の状況に関する被告人の供述 は全体として信用性か低い。
(イ) 被告人は,さらに,被害者の顔面を殴ったのは強姦後のことてあるとし て,その際の状況について,被害者を強姦した後,その両手首,両足首を 拘束した状態て,4.5畳和室に置いた浴槽の中に入れて留め置いていたか,被害者から「たはこを吸いたい」と言われるなとしていらいらし,「私 を帰して,今帰さないと大変なことになる」と言われて,かっとなり,そ の左右のを1回すつ殴った,旨供述する。しかし,被告人は,強姦後も被害者を留め置いていた理由につき,人間 関係を作って許してもらった上て帰したいと考えていたからてあるなとと 述へるのに,「帰さないと大変なことになる」なとと言われて感情的に殴っ たというのは理解し難い。しかも,被告人の供述を前提とすると,被告人 は,強姦されまいと激しく抵抗した被害者に対しては殴らなかったのに, 両手首,両足首を結束ハントて拘束されて抵抗てきない状態にある被害者 に対しては,筋肉の挫滅を生しさせるほとの強い力て殴ったことになり, 一貫性を欠いており不自然てある。この点の供述も信用することはてきな い。エ そして,被告人の供述を含む全証拠を検討しても,被告人か被害者の顔面 等に対して打撃を加えた現実的な可能性かある場面は,強姦時のほかには想 定することかてきない。被告人か被害者を死亡させることになったと述へる 場面においても,両足首を拘束された被害者に被告人か背後から覆い被さる という後記のとおりの状況及ひ体勢からして,被告人か,筋肉の挫滅を生し させるほとの強い力て被害者の顔面に打撃を加えた現実的な可能性かあると は認められない。
オ 以上によれは,被告人か,右目の周りの筋肉挫滅を伴う皮下出血なと,被 害者の遺体に残された前記の傷を形成するほとの打撃を加えたのは,強姦時 を除いてほかにはない。したかって,被告人は,強姦の手段として,被害者 の顔面等に打撃を加えたものと認めることかてきる(なお,打撃の方法とし ては,手の拳による殴打か最も考えすいか,足て蹴ることなとも想定てき るところてあって,とのような方法て打撃したのかについては,証拠上,確に特定することかてきない。)。
(2) 粘着テーフによる緊縛の有無について
ア 証拠によれは,被告人方から使用済みの粘着テーフ片か多数発見されたこ と,上記粘着テーフ片の粘着剤は天然コム系のものてあること,被害者の遺 体の左右前腕,左右の足には天然コム系の粘着物か付着していたこと,か認 められる。
 そして,前記のとおり,強姦に際して被害者の両手首,両足首を結束ハン トて拘束するには,被害者を抵抗てきない状態にしておく必要かあることか らすると,被告人か,被害者に打撃を加えた後,手足か動かないように,被 害者の両手首,両足首を粘着テーフて緊縛した上,結束ハントて拘束した可 能性か高い。
イ もっとも,前記のとおり,被告人は,被害者の顔面に打撃を加えるなとし て,被害者を抵抗てきない状態にしたと認められる。また,前記のとおり被 害者のタイツ等の着衣に,それらを着用したまま排尿した痕跡か認められる ことからすると,被害者か失禁した可能性もある。打撃の強さ失禁等の事 情を考えると,被害者か一時的に失神し,あるいは,強度の恐怖心等を抱い て抵抗てきない状態になっていた可能性も否定てきない。被害者かそのよう な状態にあったのてあれは,粘着テーフていったん緊縛するまてもなく,被 害者の両手首,両足首を結束ハントて拘束することは可能てあると認められ る。
 そして,被告人方から多数の粘着テーフ片か発見され,その中には両手首 両足首に巻き付けるのに適当と思われる長さのものか複数含まれているこ とからすると,被告人か被害者の両手首,両足首に粘着テーフを巻き付けた 機会は複数回あったとも考えられ,強姦時に限られない。
 そうすると,被告人か,強姦に際して,被害者の両手首,両足首を粘着テ ーフて緊縛したことか常識に照らして間違いないとまて認めることはてきな い。なお,被告人か,強姦の行為から殺人の行為まての間のいすれかの時点 て,被害者の両手首,両足首を粘着テーフて緊縛したこと自体はらかてあ るか,その時点及ひ具体的状況を特定し得ないのて,これを強姦及ひ殺人の 各行為と独立した暴行行為として,別罪を構成するものと認定することはて きない。
(3) 頸部圧迫の有無について
ア 証拠によれは,被害者か頸部を圧迫されたことはらかてある。
 そして,前記のとおり,被害者の遺体には顔面を含む全身に多数の傷か残 っており,被害者か,強姦されそうになって激しく抵抗し反撃を試みたてあ ろうと常識的に考えられることにも照らすと,被告人か,被害者を抵抗てき なくさせるために,被害者の頸部を圧迫した可能性もなくはない。イ ところて,被害者の遺体の司法解剖を担当したB医師によれは,後記のと おり,被害者の死因は頸部圧迫による窒息死てあり,頸部圧迫から15分程 度て被害者は死亡したと認められる。そして,被告人か複数の機会にわたっ て被害者の頸部を圧迫したことを示す証拠はないから,被告人か被害者の頸 部を圧迫した機会は1回てあることを前提に検討するほかないところ,頸部 圧迫の機会か被告人方に入室した後間もない時点てあったとすれは,被害者 はその後15分程度て死亡したことになる。
 しかし,その場合には,被告人方から両手首両足首に巻き付けるのに適 当と思われる長さのものを複数含む多数の粘着テーフ片切断された痕跡の ある複数の結束ハントか発見されていることから,被告人か,被害者を強姦 した後,複数回にわたり粘着テーフ結束ハントて被害者を拘束する機会か あった,すなわち,被害者か相当の時間にわたり生存していたとうかかわれ ることを合理的に説することは難しい。
ウ そして,被告人は,被害者を強姦する際に被害者の頸部を圧迫したことは ないとした上て,被害者を死亡させることになった際の状況につき,要旨, 次のとおり供述する。
 被告人は,被告人方の4.5畳和室に置いた浴槽の中に,結束ハントて両 手首,両足首を拘束した状態の被害者を入れていたか,3月26日午前2時 か3時頃,被害者の様子をみると手首の結束ハントか外れており,被害者か らいきなり殴られた,被害者は倒れた浴槽から出て獣のようなを上けなか ら,うつ伏せの状態て逃けようとした,被害者か大を出しなから逃けるの をめさせようとして,うつ伏せの状態の被害者に対し,左腕をその背後か ら顎付近に回して,被害者に覆い被さって押さえ込んているうちに,被害者 か前進したため,左腕か被害者の体の下に入ってしまった,左腕か被害者の 体のとの部分に当たっているのか分からなかったか,なお押さえ込んていた ら,被害者か動かなくなった。
上記供述のうち,被告人方の4.5畳和室に置いた浴槽の中に,結束ハン トて両手首,両足首を拘束した状態の被害者を入れていたなととする点につ いては,浴槽の排水口による圧痕とみられる痕跡か被告人のいう浴槽の位置 にあること,浴槽の中ての被害者の位置か,被告人の供述するままてあれは, 証拠(省略)に照らすと上記圧痕を残し得ないものの,被害者の位置か変わ れは圧痕か残り得るといえること,被害者の遺体か発見された際の両手首, 両足首の状態等と整合していることなとからすると,必すしも虚偽てあると はいえない。また,被害者か3月26日午前2時か3時頃まて生存していたとする点も, 前記のとおり,被告人方から多数の粘着テーフ片切断した痕跡のある複数 の結束ハントか発見されていることに加え,被害者から聞いたという 「warferrin」(ワルファリン)等の言葉か,3月25日午後11時38分頃 から同月26日午前0時3分頃まての間に,被告人のノートハソコンて検索 されていることと矛盾しない。そのほか,頸部を圧迫したとみられる時期に ついての被告人の上記供述と矛盾する証拠は見当たらない。
 頸部を圧迫していることの認識の有無に関する被告人の供述には,後記の とおり,看過することのてきない疑問点かあるものの,頸部を圧迫するに至 るまての客観的な事実経過については,被告人の供述を排斥し去ることはて きないといわさるを得ない。
 そうすると,強姦の際に被害者の頸部を圧迫していないとする被告人の供 述を排斥することはてきないというへきてある。
エ 以上によれは,被告人か,強姦の際に,被害者の頸部を圧迫した事実を認 めることはてきない。
(4) まとめ 以上検討してきたところをまとめると,被告人は,被告人方に入室した後間 もなく,被害者に対し,右目の周りへのかなり強い力による打撃を含め,全身 に対する暴行を加え,さらに結束ハントてその両手首等を拘束してその反抗を 抑圧し,被害者を強姦したと認められる。
3 殺意の有無について
(1)ア 前記B医師は,1被害者の遺体には,暗赤色流動性の血液,臓器の鬱血, 腎臓肺のいっ血,という所見かみられたこと,2被害者の胸骨舌骨筋内に 出血かあり,輪状軟骨の左右2か所か骨折していたこと,を根拠に,被害者 は,頸部の真ん中又はそれに近いところを,作用面の狭い物又は平らな面の ある物て強く圧迫されたことにより気道か閉塞され,窒息死したと考えられ る,被害者の遺体の状況を前提にすると,頸部圧迫等により酸素の供給か3 分程度遮断されないと窒息死に至らない,旨証言する。これらの判断は,法 医学上確立された考え方に基つくものてあり,その判断過程に不合理な点も ないから,これらの判断は信頼することかてきる。
イ そうすると,被告人は,胸骨舌骨筋内の出血輪状軟骨の左右2か所の骨 折を生しさせ,さらにその中の気道を閉塞させる程度の強い力て,少なくと も3分程度にわたり被害者の頸部を圧迫したことにより,その間酸素の供給 を遮断させ,被害者を窒息死させたと推認することかてきる。
 気管等のある頸部を強く圧迫すると人か窒息し死に至ることは常識的に知 り得るところてあるから,このような頸部を圧迫する力の強さ及ひ時間から すると,確な殺意かあったことか推認される。
(2)ア これに対し,被告人は,1被害者か大を出しなから逃けるのをめさせ ようとして,うつ伏せの状態の被害者に対し,その背後から覆い被さり,自 分の左腕を被害者の顎付近に回して押さえ込んているうちに,被害者か前進 したため,左腕か被害者の体の下に入ってしまい,左腕か被害者の体のとの 部分に当たっているのか分からなかった,2左腕か被害者の体の下に入って しまった状態か継続したのは短時間てあり,感覚的には1分程度てあった, 旨供述する。
 ます,1の点については,被告人の供述を前提にすると,自分の左腕を被 害者の左肩の上からその顎付近に回した状態てあったところ,被害者か前進 したことにより,左腕か顎から外れて首の部分を圧迫する形になったことに なる。しかし,その体勢からして,被告人の左腕か被害者の胸よりも下に入 り込むとは考えられないし,顎胸と首とては固さも左腕への接着面積も違 うのてあるから,左腕か被害者の体のとこに接着しているかについて感覚的 に分からないはすかない。この点についての被告人の供述は信用てきない。 むしろ,被告人には,頸部を圧迫しているとの認識かあったと認められる。 また,2の点については,1分程度というのは被告人自身か認めるとおり, 感覚的なものに過きない上,前記B医師か,被害者の遺体の状況を前提にす ると,酸素の供給か遮断されたのか1分程度てあれは,医療措置を講しなく とも自発呼吸か再開し,窒息死には至らない旨を証言していることと整合し ない。この点に関する被告人の供述も信用てきない。
イ そうすると,被告人か,その供述とおりの客観的経緯及ひ体勢て被害者の 頸部を圧迫したにしても,被告人には,頸部を圧迫しているとの認識かあっ たのてある。のみならす,頸部を圧迫する強さは,前記のとおり,被害者の 輪状軟骨の左右2か所を骨折させ気道を閉塞させるほとのものてあったのて あるから,被告人は,自らの左腕にそのような強さの力か掛かっているのを 感していたと認められる。被告人は,そのような認識かありなから,被害者 か進もうとするのに対して,力を緩めることなく引き付け続けたことになる。
 このようにして,被告人は被害者の頸部を少なくとも3分程度圧迫し続けた ことからすると,被告人には,確な殺意かあったと認められる。(3) また,これまて検討してきたところによれは,被告人は,被害者を強姦した 後,結束ハント等て被害者の両手首,両足首を拘束した状態て,被告人方4. 5畳和室に相当の時間にわたり留め置いていたということになる。そして,被 告人としては,強姦の犯行か発覚する危険を考えると,被害者を帰宅させよう にも帰宅させられない状態か続き,その対応に窮するようになっていたと考え られる。このような中て,被害者か大を出して逃けようとしたことて,他の 住人から警察に通報される等の危険か現実的なものとなったといえるのてある から,被告人には殺意を抱く動機かあったと認められる。(4) さらに,被告人は,被害者のために救急車を呼ふなとしておらす,被害者の 救命に全力を尽くしたというような事情はうかかえない。このことは,被告人 か被害者の死亡を受け入れていたことを意味する。 なお,被告人は,被害者の目か開いて焦点か合わない状態になっていたこと から,人工呼吸心臓マッサーシを繰り返したとも供述する。しかし,被害者 の遺体には肋骨の骨折かないことからすると,少なくとも,被告人か救命に資 するような心臓マッサーシをしたとは認められない。また,仮に,被告人か人 工呼吸何らかの心臓マッサーシをしたという事情かあったとしても,救急車 を呼ふなとしていないことも考えれは,直ちに殺意かなかったことにはならな い。
(5) 以上によれは,被告人か被害者の頸部を圧迫した際,被告人に殺意かあった と認めることかてきる。4 強姦致死罪の成否について
 これまて検討してきたところによれは,被告人は,3月25日午前9時54分過き頃に被告人方に入室した後間もなく,被害者を強姦し,その後,犯行の発覚 を防くため,被害者に逃けられないよう,被害者を,結束ハント等てその両手首, 両足首を拘束した状態て,被告人方4.5畳和室に置いた浴槽の中に入れるなと して留め置いていたか,同月26日午前2時か3時頃ないしこれと近接する時期 に,被害者かを上けて逃けようとしたことから,その頸部を圧迫し,被害者を 殺害した,ということになる。
 上記の頸部圧迫は,犯行の発覚を防くため,被害者に対する強姦行為と場所的 に接着して行われたものてはあるか,強姦後,相当な時間か経過した後の行為て あり,時間的に接着して行われたものとまてはいえない。また,被告人か被害者 を留め置いていた間,強姦の意思か継続していたと認めるに足りる証拠もない。 そうすると,被害者の死亡の原因となった頸部圧迫行為は,それに先立つ強姦 行為に随伴するものとまてはいうことかてきないから,被告人には,殺人罪に加 えて,強姦致死罪は成立せす,強姦罪か成立するにととまると認めるのか相当て ある(強姦時の暴行により被害者に皮下出血等の傷害か生したことは前記のとお り認められるか,公訴事実の記載及ひ釈の趣旨に照らし,検察官かこれらの傷 害について訴追意思を有しているとはいえないから,本件て強姦致傷罪の成立を認めることはてきない。なお,被害者の父てあるCの検察官調書(省略)によれ は,強姦罪についても処罰を求める意思のあることはらかてあるから,同罪の 親告罪としての訴訟条件は具えているものといえる。)。(法令の適用) 罰条
 判示第1の所為 刑法177条前段
 判示第2の所為 刑法199条
 判示第3の所為 刑法190条
刑種の選択
判示第2の罪 無期懲役刑を選択
併合罪の処理 刑法45条前段,46条2項本文(無期懲役刑を 選択した判示第2の罪の刑て処断し,他の刑を科さない) 未勾留日数の算入 刑法21条
訴訟費用の処理 刑訴法181条1項たたし書(不負担) (量刑の理由)本件において,被害者は,強姦されて人格を踏みにしられた上に,尊い生命を奪 われているのてあって,犯行かもたらした結果か重いことはいうに及はない。被害 者は,強姦により耐え難い肉体的・精神的苦痛を強いられたにととまらす,頸部を 圧迫され続けて絶命するに至ったのてあり,22歳の様々な可能性に満ちた人生を, 絶望的な状況のもと終えることを余儀なくされた被害者の無念さ,苦しさは計り知 れない。
 そして,被害者の遺体に残された多数の傷は無惨というほかなく,暴行の激しさを物語っている。しかも,被告人は,被害者を強姦した上,相当な時間にわたり,被害者の身体を拘束したまま留め置き,被害者に対し,更なる肉体的・精神的苦痛を与えている。加えて,少なくとも3分程度にわたり被害者の頸部を圧迫して殺害し,その殺害後は,被害者の遺体の両足首を結束ハントて拘束したまま,土に埋めているのてあって,そこには被害者の人格,生命に対する敬意は微塵も感しられない。これら一連の各犯行の態様は悪質てある。
 被告人は,自己の性欲を満たすために被害者を強姦した上,その犯行か発覚することを恐れるなとして被害者を殺害し,さらには,これらの発覚を免れようとして被害者の遺体を遺棄している。犯行の動機はいすれも身勝手極まりないものてあって,悪質てある。
 被告人は,本件後,2年7か月以上にわたって逃亡を続け,その間,被害者の遺族か来日したことを知っても意に介することなく,また,整形手術を受けてまて逃け通そうとしていた。このことは真相の解を妨けたはかりてなく,被害者の遺族の精神的苦痛を強めたものてあって,犯行後の情状も悪質てあるといわなけれはならない。
 また,愛する娘を異国の地て失った両親ら遺族の苦痛,悲嘆,憤まんの情は言葉て表し尽くすことかてきす,被告人に対し,しゅん烈な処罰感情を有しているのも当然のことてある。
 しかも,被告人は,公判廷においても,事実の一部を認めているとはいえ,客観的証拠と矛盾する供述,不自然な内容の供述を繰り返しており,自らか犯した罪と向き合おうとしていないといわさるを得ない。そこには真摯な反省の態度をみてとることはてきない。被告人は,被害者の遺族に対して被害弁償の申入れをしているか,逃亡生活中の出来事を綴った本を書いて得た金銭を弁償に充てようというものて,被害者の遺族の心情に対する配慮を全く欠いており,これを謝罪反省の態度と評価することはてきない。
 以上のほか,本件か近隣住民をはしめとする社会に与えた影響も考慮すると,被告人の刑事責任は非常に重いといわなけれはならない。
 他方,被告人には前科かなく,犯罪傾向か進んているとはいえないこと,現在32歳てあるという年齢も考えれは,更生可能性かないとはいえないことなと,被告人のために酌むことのてきる事情も認められる。
 以上の諸事情のうち,特に,被害者に肉体的・精神的苦痛を与えた悪質な犯行てあること,犯行動機か身勝手極まりないことを重視し,凶器なく1名の者を殺害した殺人既遂の単独犯の事案における量刑傾向も参照して検討すると,本件殺人には計画性かなく,殺意も極めて強固なものとまてはいえないことのほか,前記のとおり被告人のために酌むことのてきる事情を考慮しても,被告人に対しては無期懲役刑を科すのか相当てあると判断した。
なお,被害者の両親か被害者参加人として,法律上許される最高刑を求めるのは, その心情に照らし当然のこととして理解し得るか,前記の諸事情を総合考慮すれは, 本件において死刑を選択するのは相当とはいえない。(求刑 無期懲役)
平成23年7月21日
 千葉地方裁判所刑事第2部
裁判長裁判官 堀田哉
裁判官 佐々木 公
裁判官 内山香奈
判例本文

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