主文
 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は,原告の負担とする。
 事実及ひ理由
第1 請求 被告は,原告に対し,3150万円及ひこれに対する平成22年4月20日から支払済みまて年6分の割合による金員を支払え。
 第2 事案の概要本件は, 原告か,被告に対し,火災共済契約に基つき,共済金と遅延損害 金(起算点は訴状送達の日の翌日てあり,利率は商事法定利率てある。)の 支払を求める事案てある。1 争いのない事実等(証拠等を掲けたもののほかは当事者間に争いかない。)(1) Aは,原告に対し,平成14年9月25日,別紙物件目録1記載の建物(以 下「本件建物」という。)を,賃貸期間同年10月1日~平成24年10月 1日,賃料月額5万円て賃貸し(以下「本件賃貸借契約」という。),平成 14年10月1日,本件建物を引き渡し,原告は,本件建物への居住を開始 した。(2) 原告は,被告との間て,平成20年3月12日,本件建物内の家財及ひ本 件建物に関して,以下のとおりの借家人賠償責任特約付風水害等給付金付火 災共済契約(以下「本件火災共済契約」という。)を締結した。ア 被共済者 原告
イ 共済金受取人 原告
ウ 期間 平成20年3月13日~平成21年2月28日 エ 共済の目的及ひ金額(ア) 共済の目的 家財 共済金額 1000万円
臨時費用共済金 火災等共済金の額の15%に相当する金額 (イ) 共済の目的 本件建物(借用住宅)共済金額 2000万円 (以下,(ア)のうち臨時費用共済金を除いた家財を目的とする共済金を「家財共済金」といい,(イ)の共済金を「借家人賠償責任特約共済金」という。) オ 月額共済掛金額 1400円(3) 火災の発生 平成20年11月20日午前零時20分ころ,本件建物内て火災か発生し,全焼した(この火災を以下「本件火災」という。)。
 (4) 被告の支払拒絶平成21年7月17日,原告か,被告に対し,本件火災共済契約に基つき, 共済金の支払を請求したか,同年10月22日ころ,被告代理人は,本件建 物につき,本件火災共済契約締結の前日てある平成20年3月11日にカス 及ひ水道か供給停止となっており,以後本件火災発生日まて供給の再開かな かったことから,原告か本件火災共済契約締結時,本件建物に居住していな かったことからかてあり,そうすると風水害等給付金付火災共済事業規約 (以下「本件規約」という。)8条1項1号,33条,64条1号,74条 1項3号により本件火災共済契約は無効となるとして,この支払を拒絶する 旨通知した。(5) 本件規約の定め(甲8の1~6,乙1) ア 8条1項柱書及ひ同項1号共済の目的とすることのてきる家財は,共済契約の発効日において,共 済契約関係者か居住する日本国内の建物内に収容されている家財に限る。イ 33条1項柱書及ひ同項3号 共済の目的か,発効日において,8条に規定する共済の目的の範囲外の場合,共済契約は無効とする。
ウ 60条1項柱書及ひ同項1号 共済契約者,共済の目的の所有者又は共済金受取人の故意又は重大な過失により生した損害については,基本契約共済金を支払わない。
 エ 64条柱書及ひ同条1号借家人賠償責任特約の申込みか基本契約に付帯してなされたものてあ り,かつ,借用住宅か基本契約の共済の目的てある家財を収容する場合に 限り,借家人賠償責任特約を締結する。オ 73条1項柱書及ひ同項1号 共済契約者,被共済者又は共済金受取人の故意によって借用住宅か滅失,毀損,又は汚損したことにより被共済者か被った損害については,借家人賠償責任特約共済金を支払わない。 カ 74条1項柱書及ひ同項3号発効日において64条に規定する要件のいすれかをみたしていない場 合,借家人賠償責任特約は無効とする。キ 78条1項 基本契約か無効のときは,借家人賠償責任特約も無効とする。2 争点
(1) 本件火災共済契約時,原告か本件建物に居住していたか否か (2) 本件火災か原告の故意により生したものか否か(3) 共済金額
3 争点に関する当事者の主張
(1) 争点(1)(本件火災共済契約時,原告か本件建物に居住していたか否か)(被告の主張) 本件火災共済契約締結の前日てある平成20年3月11日をもって本件建物の水道及ひカスの供給か停止されていること,本件建物の水道・カスの 使用量からかに少なく,反対に後記別宅の水道の使用量は多いこと,原告か本件建物に全くといっていいほと滞在しておらす,近隣住民とのつなかり も皆無てあること,組事務所という使用目的からして,原告か本件建物に居 住していなかったことはらかてあるから,本件火災共済契約は無効てある。
 (原告の主張)本件建物内にあった家具・家電製品及ひそれらの状況,電気の供給はされ 続け,本件火災時にも通電状態てあったことから,本件火災共済契約時,原 告か本件建物に居住していたことは白てある。水道及ひカスの供給か停止 されていることについては,原告は,知人から水道の開栓方法を教わり,無 断て水を使用するなと,自分なりに工夫して生活していたのてあって,原告 か本件建物に居住していなかった根拠にはならない。(2) 争点(2)(本件火災か原告の故意により生したものか否か) (被告の主張)ア 火災の原因は放火と認められる。
(ア) 本件火災の出火箇所は,ストーフ北東側の和室と居間の間付近てあ ると考えられ,この場所にはソファーか置かれていた。このソファーか ら灯油に相当する油性成分か検出されているところ,ソファーに灯油か 自然に付着するとは考え難く,本件火災時にストーフから灯油か飛ひ散 った形跡もないから,人為的に付着したものといえる。(イ) 原告は,本件火災の原因について,ハンカーに掛けて干していた洗 濯物かストーフに落ちて,火事になった可能性を指摘するか,ストーフ の焼損状態,同型のストーフての実験結果からしてあり得す,漏電た はこの失火の可能性も否定されるから,火災の原因は,ソファーへの放 火と考えるのか合理的てある。イ 放火について原告か関与したと認められる。
(ア) テレヒと電気かついている屋内に第三者か侵入し,放火を行うとは考えられないところ,原告は,本件火災時に本件建物にいたのは原告のみと自認しているのてあるから,本件火災に関与てきたのは原告のみということになる。
(イ) 原告は,過去にも火災によって共済金を取得した経験かあり,本件火災当時には多額の借財かあり金銭に窮している状態てあった。また, 本件建物への水道・カスの供給か停止された翌日に本件火災共済契約か 締結されているなと契約締結の経緯も不自然極まりない。(ウ) これらによれは,放火について原告か関与したといわさるを得す, 本件火災は,原告の故意により生したものてあるから,本件規約60条 1項1号,73条1項1号に基つき,被告は,家財共済金及ひ借家人賠 償責任特約共済金の支払を免責される。(原告の主張) 原告を放火犯人と断定するには,原告か放火したのてなけれは合理的に説てきない事実か存在することを被告において主張立証しなけれはならない か,被告か主張している事実は,せいせい原告の放火と矛盾しない事実に留 まる。(3) 争点(3)(共済金額)
(原告の主張)
ア 本件火災共済契約によれは,火災等て全焼の場合,契約共済金額の全額か支払われることになっている。家財共済金の契約共済金額は1000万 円てあるから,被告か原告に支払うへき金額も同額となる。臨時費用共済金はその15%てあるから150万円となる。
イ 原告は,本件建物の貸主から,新たに建物を建て直して引き渡すよう迫られており,そのために要する金額は2000万円を下らない。それ故, 借家人賠償責任特約共済金として被告か原告に支払うへき金額も同額と なる。(被告の主張)
ア 本件火災によって焼失した原告の家財の再調達価額(再取得価額)は, 被告か委託した鑑定人か原告と1つすつ確認しなから,品類・数量・単価 を打ち合わせたところによれは,418万3500円てあり,仮に家財共 済金か支払われるとしても上記金額に留まる。臨時費用共済金は,上記金額の15%に相当する額てあるから,仮に支 払われるとしても62万7525円に留まる。イ 借家人賠償責任特約共済金額は,被共済者か借用住宅の貸主に支払うへ き損害賠償金の額(客観的に生した時価損害額)てある。本件建物の時価損害額は,被告か委託した鑑定の結果によれは,再調達 損害額1463万2548円から30%の減価償却をした1024万2 784円に,解体撤去費用85万7850円を加算した1110万063 4円てある。したかって,仮に借家人賠償責任特約共済金か支払われるとしても,上 記金額に留まる。第3 当裁判所の判断
 1 認定事実
争いのない事実等に,証拠(甲1,甲2,甲5,甲9~甲11,甲12の1 ・2,甲13,甲14,甲29,甲30,甲33~甲35,乙2,乙3,乙 4の1・2,乙5~乙7,乙8の1・2,乙10,乙14~乙20,原告本 人)及ひ弁論の全趣旨を総合すると,次の事実か認められ,括弧内の証拠中 この認定に反する部分は採用することかてきす,他にこの認定を左右するに 足りる証拠はない。(1) Aと原告の関係 Aは,O市に事務所を構える,指定暴力団・B会の二次団体,C組の組長てあり,Dと称している者てある。
 原告は,C組の6人の執行部のうちの1人てあり,C組の秋田県における二次団体てあるE組(組員は5名程度)の組長てあった。 (2) 一連の経過ア 平成5年10月10日,本件建物か新築された。
イ 平成9年1月31日,原告は,別紙物件目録2記載の居宅を新築した(以下「別宅」という。)。原告は,その住宅ローンとして1720万円の融資を受けた。
ウ 平成10年5月18日,原告は,別紙物件目録3記載の店舗兼居宅を相続した(以下「別宅隣接店舗」という。)。
エ 平成12年3月,本件建物の当時の所有者か多額の債務を抱え本件建物内て自殺し,その後,本件建物は競売手続に付された。
オ 平成13年11月15日,Aは,C組の組員てあるFを住まわせるために,競売手続て本件建物を取得した。落札価額は450万円てあった。
 カ その後,上記Fか本件建物に居住していたか,1年程て所在不となっ てしまったため,Aは,原告に管理させるへく,平成14年9月,原告との間て本件賃貸借契約を締結した。 その後,原告は,被告との間て本件火災共済契約と同様の火災共済契約を締結した(以下「従前火災共済契約」という。)。
キ 平成15年11月6日,原告は,G銀行から550万円程度を借り入れた。その際,H協会に保証委託した。
ク 平成16年4月末ころ,原告は,N市にカスと水道の供給を,東北電力に電気の供給を申し込んた。それまての契約名義人は,本件賃貸借契約締結後もF名義たった。
ケ 平成16年8月末,使用料金の滞納のため,本件建物へのカスの供給か停止された。
コ 平成17年11月,使用料金の滞納のため,本件建物への水道の供給か停止された。
サ 平成18年2月,本件建物への水道の供給か再開された。
シ 平成18年4月16日,原告は,I社からトヨタクラウンを購入し,J社との間てその代金の立替払契約を締結した。
ス 平成18年6月,使用料金の滞納のため,本件建物への水道の供給か停止された。
セ 平成18年8月末,本件建物への水道の供給か再開された。
ソ 平成18年9月25日,本件建物1階和室床の間付近て火災か発生し,本件建物の一部及ひ家財か焼損した(以下この火災を「平成18年火災」という。)。
タ 平成18年11月ころ,被告は,原告に対し,従前火災共済契約に基つき,家財共済金として171万2000円,臨時費用共済金として25万 6800円,借家人賠償責任特約共済金として182万7000円の合計 379万5800円を支払った。なお,その当時の従前火災共済契約の契約共済金額は,家財共済金か6 00万円,借家人賠償責任特約共済金か2000万円てあり,月額共済掛 金は,1640円てあった。チ その後,原告の口座から平成18年11月分,同年12月分,平成19 年1月分の従前火災共済契約の月額共済掛金の引き落としかてきなかった ため,被告の規約に基つき,従前火災共済契約は,平成18年11月1日 に遡って失効した。ツ 平成19年1月中旬,使用料金の滞納のため,本件建物への水道の供給 か停止された。テ その後,原告は,上記シのトヨタクラウンに係る立替金の支払を滞納し たため,J社から立替金の支払と上記クラウンの引渡しを求める訴えを提 起され,平成19年6月12日,J社との間て,約270万円の立替金債 務かあること,それを毎月4万5000円すつ返還すること,期限の利益を喪失した場合には上記クラウンを引き渡すことなとを内容とする訴訟上の和解をした。
ト 平成19年9月末,本件建物への水道の供給か再開され,同年10月にはカスの供給も再開された。
ナ 平成20年1月27日,原告は,100万円て上記シとは別のトヨタクラウンを購入した。その一方て,上記シのクラウンについては,上記テの 分割金の支払を平成19年12月31日,平成20年1月31日と怠り, 期限の利益を喪失させた。ニ 平成20年3月11日,N市は,原告か上記トのカスと水道の供給再開 後,使用料金を全く納めないため(滞納額は合計約1万円),本件建物の カス,水道の供給を停止した(水道閉栓時の量水器メーターの数値は97 mてあった)。カスと水道の供給停止は,本件火災日まて続いた。なお, カスと水道の供給停止後も,電気については供給か続き,本件火災日にお いても供給されていた。ヌ 平成20年3月12日,本件火災共済契約か締結された。
ネ 平成20年3月27日,原告は,上記シのクラウンを約88万円て売却 し,その売却金をJ社への支払に充てたか,それても約161万5000円の債務か残った。
ノ 平成20年8月21日,J社は,上記ネの残債権を請求債権として,別宅隣接店舗及ひその土地について,強制競売を申し立て,同年9月2日, 差押えの登記かされた。そして,そのころ,原告は,強制競売か開始され たことを知った。ハ 平成20年9月,上記ノの強制競売手続において,K町は,原告に関し て,平成16年度~平成20年度の固定資産税及ひ国民健康保険税の合計 約49万円の滞納かあるとして交付要求し,H協会は,極度額200万円 の根抵当権の元本として,上記キの信用保証委託契約に基つく元本187万円の債権届出をした。
ヒ 平成20年11月20日,本件火災か発生した。
消防署員は,火災鎮火直後,原告からの事情聴取を行い,夜かけてか ら,本件建物の焼損状況を写真撮影し,翌21日には本件建物の実況見分 を行った。フ 平成21年2月13日,上記ノのJ社か申し立てた強制競売手続か,買 受可能額か手続費用及ひ優先債権の合計額に満たないとして,取り消され た。ヘ 平成21年6月29日,被告から委託を受けた調査事務所の調査員(以 下「被告調査員」という。)と株式会社L(以下「L」という。)の社員 か本件建物に赴き,原告立会いの下,本件建物内の実況見分,写真撮影, 油性成分調査のための試料採取を行った。なお,被告側の実況見分等かこの時期となったのは,N警察署か同月ま てローフを張って本件建物を立入禁止としていたためてある。ホ 平成21年7月6日,被告調査員か原告からの聴き取りを行った。マ 平成21年7月17日,争いのない事実等(4)のとおり,原告は,被告に共済金を請求した。
ミ 平成21年7月27日,被告調査員かAからの聴き取りを行った。ム 平成21年7月28日,本件建物か解体された。解体の際に水道の水は使用されなかった。
メ 平成21年9月3日,被告調査員か原告からの聴き取りを行った。モ 平成21年9月末,N市か本件建物の量水器メーターの数値を確認したところ,99mてあった。
 (3) 間取り
本件建物は,2階建ててあり,本件建物1階の間取りは,別紙図面のとお りてある(以下6.0畳の和室を単に「和室」という。)。(4) 本件建物の焼損状況(甲5,甲9,甲13,乙10) ア 1階和室及ひ居間の焼損状況特に和室か強く焼損しており,居間と和室との仕切り垂れ壁(天井か ら垂れ下かったような形の壁)か間柱(柱と柱との間に立てる小さい柱) 長押(なけし。柱から柱へと水平に打ち付けた材)を残し,焼損して いる。その長押は下層からの火炎により焼損しており,和室の天井も広 く焼失し,野縁(天井裏なとの隠れている部分に用いる細長い材)か炭 化している。押入廊下との仕切り引き戸等も焼損している。和室の北 寄りの廊下へ通しる引き戸前に置かれたソファー(以下「北側ソファー」 という。)周辺か強く焼損し,その直上の天井裏及ひ2階の床板か焼け 抜けている。北側ソファー下層は畳の藁か露出,同背面は引き戸か焼失 し,残存する戸も桟(えつり。壁の下地として,縦横に組んた竹細木) を残すのみ,同東側は居間のテレヒか原形を留めない焼損状況てあり, テレヒの背面の壁には同ソファー側から斜め上に上かる焼損痕かある。
 そのほかに北側ソファーの周辺ては,和室と居室との間の敷居の炭化, 畳の下の床板の一部に焼け抜けかみられる。和室の中央付近に置かれた 座卓はその脚のみを残して焼失している。イ ソファーの焼損状況 和室の南側に置かれたソファーか原形を留めているのに対し,北側ソファーは,下木枠と背もたれの一部か辛うして残存しているのみて殆と 原形を留めていない。北側ソファーの東側背面は,下木枠か焼け切れて おり,背もたれもそれに対応して焼け切れている。ウ 石油ストーフ自体及ひ周辺の焼損状況
(ア) ストーフ下部に合成樹脂製炎調節タイヤルの溶融,ストーフ北側背面外枠に斜め上に上かる煤の付着,天板中央寄りに薄黒い汚損か みられるか,そのほかには外観上,顕著な破損,変形はなかった。ストーフの外枠を外し,中をみると芯か5mm程出ていた。
(イ) ストーフの周辺をみると,ストーフ北側は,北側ソファー下層から畳の藁か露出するなと激しく焼損している。しかし,ストーフ直近の 敷居には未焼損の部位かみられ,居間側の床面も斑な焼損部位かみら れるか,焼け抜けなとの強い焼損部位はみられない。(ウ) ストーフの周辺には,ハンカーの溶融痕スホン,Tシャツの残焼 物かあったか,衣類残焼物の下の敷居は殆と未焼損てあった。エ 洗面室の状況 洗面室の分電盤は,フラスチック製のカハーか溶融し,漏電遮断器か通電の位置になっていた。また,洗濯機は,アースは繋いた状態てあったかコンセントは抜かれた状態てあった。
 (5) 火災直後の原告の説(甲5,甲33)ア 本件建物には1人て住んていた。普段たはこは吸わない。本件火災の前 日午前10時か午前11時ころから,1階て対流型の石油ストーフを使 用していた。ストーフは戸を外した和室と居間の間仕切り付近の和室の 中央に置いていた。イ 昼食後,洗濯をして洗濯物をフラスチック製のハンカーに掛け,ストー フの上の長押に掛けて干していた。干した物は,シャツ2枚と肌着,靴 下なとて,ストーフの真上にはタオルケットをハンカー2つに渡して掛 けて干してあったと思う。ウ 午後10時か午後11時ころ,布団を敷くために2階に上かったか,そ のまま眠ってしまった。1階のストーフ,テレヒ,電気は付けたままた った。ホンと音かして目か覚めると焦け臭いにおいかして,1階に降り ようとしたか,階段の半分まて降りたところて,上かってくる煙かすこ いのて無理たと思い,1階の屋根の上に逃けてそこから119番通報し た。1階の屋根からなら何とか飛ひ降りられると思ったか,結構高かったのて助けを待っていた。 (6) 油性成分の検出(乙6)
Lは,平成21年6月29日の本件建物の調査の際に採取した試料につい て,カスクロマトクラフ質量分析法による油性成分分析を行った。その結果,北側ソファー東側背もたれ躯体焼失部の西側躯体表面から採取 した試料から26μg/gの灯油に相当する油性成分か,北側ソファー東 側背もたれ躯体焼失部の東側躯体表面から採取した試料から6.7μg/ gの灯油相当の油性成分か存在する可能性のある成分かそれそれ検出され た。また,ストーフの置台裏(床側)て北側縁の固着物から採取した試料から も灯油に相当する油性成分か検出されたか,北側ソファー東側背もたれ部 とストーフとの間より採取した試料3つからは灯油に相当する油性成分は 検出されなかった。(7) 燃焼実験の結果(乙10) 平成16年11月,本件建物て使用されていた自然対流型石油ストーフと同型の石油ストーフを用いて,1 天板上にタオル2枚,シャツ1枚を 軽く固めて置いた場合,2 天板上にシャツ1枚を広けて置いた場合,3天板上にタオル2枚,シャツ1枚の端部を垂らして置いた場合について, それそれの燃焼経過を確認する実験か行われ,その結果,1については, 有炎燃焼に至らない,2については,発火してシャツの一部か畳上に焼け 落ち部分的に焼損か生したもののそれ以上に火炎の波及なし,3について は,ストーフのハッテリーのフラスチック部分及ひ電池部分に着火し,同 部か畳上に落下し燃焼を継続したものの畳か部分的に焼損したのみて自然 鎮火し,タオル,シャツも自然鎮火した。(8) 平成18年火災の被害,修理の状況(乙5,乙7)
ア 平成18年火災によって床の間に敷いてあった畳か焼け抜けた。原告は,床の間の床を張り替えたり,側壁のクロスを張り替えたりはし たか,てきるたけ費用を掛けないよう,床下土台部分まては修理しな かった。原告は,被災状況について,150万円のロレックスの時計,80万 円の観音像を焼損したと申告したか,これについては共済の目的てある 家財には当たらないとされた。イ 原告の説 本件建物は,前所有者か自殺している曰く付きの建物てあり,床の間に観音様を祭り,その四方にローソクを灯し,拝むのか毎朝の日課たった。
 ローソクを灯したまま,外て草刈りをして戻ってきたら,火災になって おり,人か消火活動をしていた。警察と消防からは,床の間に飾ってい た絵か落下して,ローソクの火か燃え移ったのてはないかと言われた。2 争点(1)(本件火災共済契約時,原告か本件建物に居住していたか否か) (1) 原告は,大要,以下のとおり供述する(甲26,原告本人)。ア 全般的な居住状況 露天商を営んていた関係て,北関東方面に出向くことか多く,秋田県内にいないことか多かった。秋田県内にいるときも知人女性宅に泊まること もあった。そのため,本件建物にいるのは月に1週間から10日位たった。 本件建物にいるときも,毎日のように朝から夕方まてハチンコ店に行って いた。月に1回程度,自分の組の組員を集めて,食事会をしていた。平成 19年は熱海の仕事を指名されて殆と秋田県に帰ってくる暇かなかった。 当初,内妻と一緒に本件建物に住むつもりており,内妻も別宅と本件建物 を行き来していたか,別宅隣接店舗を経営している関係はり住み慣れ たところかいいなとと言って,内妻はそのまま別宅に住んている。イ 水関係
(ア) 水は止められていたか,三,四日に1回程度,車て5分程度のところにある湧き水に行き,4リットルのヘットホトルに四,五本汲んてき ていた。汲んてきた水は,流しの下に置いておき,煮炊き,洗い物に使 った。飲料水は,4リットルのヘットホトルから500ミリリットルの ヘットホトル2本に移し替えて冷蔵庫に入れていた。(イ) 洗濯については,水道屋て長らく働いた知人から水道の開栓方法を 教わり,自分て開栓し,無断て水を使用していた。汲んてきた湧き水を 使ったりもした。洗濯は,月に一,二回,下着を洗濯する程度たった。(ウ) トイレは,ハチンコ店にいる間はハチンコ店て,帰宅後は屋外て用 を足していた。(エ) 風呂は,元々ホイラーか故障していたのて,週に二,三回程度銭湯 に行っていた。ウ カス関係 風呂は上記のとおり銭湯に行っていた。調理に関しては,米は炊飯器て炊いていたし,その他の煮炊きは,携帯用コンロにカスホンヘを入れてっていた。
(2) 認定事実ク~サ,ス,セ,ツ,ト,ニのとおり,本件火災共済契約の締結の前日(平成20年3月11日)に本件建物のカス,水道の供給か停止 され,本件火災まてその状態か継続しており,平成16年4月から平成2 0年3月11日まての間に,カスについては,平成16年8月末から平成 19年10月まての約3年間供給か停止されており,水道については,供 給の停止・再開か繰り返されており,合計て1年超の間供給か停止されて いる。また,証拠(乙2,乙3,乙9)によれは,平成16年4月から平成2 0年3月11日まての本件建物の水道使用量か約4年間て合計56mてあ ること,同期間の本件建物のカス使用量か合計3mてあること,これに対 して別宅における平成16年から本件火災まての水道使用量は1か月当たり概ね15mを超えていること,1か月ての1人当たりの平均使用水量に つき7.5m~10mという統計かあることか認められる。これらに加えて,(1)アのとおり,原告自身,本件建物ての滞在日数につ き月に1週間~10日位と供述していることからしても,原告の本件建物 ての居住実態か希薄てあることは被告の指摘するとおりてある。(3) しかしなから,電気については,平成16年4月からカスと水道か最後 に供給停止となった平成20年3月11日以降も本件火災まて供給されて おり,本件火災時にも通電状態てあったこと(認定事実(2)ク,ニ,(4)エ), 本件建物内にあった家具・家電製品(ストーフ,テレヒ,布団,炊飯器,洗 濯機,冷蔵庫,ソファー)及ひそれらの状況(甲9,乙13),平成20年 3月11日の水道の供給停止から平成21年9月まての間に約2mの水道 水か使用されており(認定事実(2)ニ,モ),本件建物の解体業者か解体時 の使用を否定するなと(甲14),原告以外の者か使用したことはうかかわ れす,原告に水道の開栓方法を教え,開栓に必要な特殊な工具を貸したとい う知人の陳述書(甲18)も提出されていること,原告か本件建物における 生活状況に関する裏付けとして知人の陳述書(甲16,甲17),湧き水に 関する資料(甲19~甲25),本件建物宛の郵便物(甲27,原告本人) を提出しており,自動車の保有状況も前記のとおりてあること(認定事実(2) シ,ナ,ネ)なとによれは,前記(1)の原告の供述を排斥することは困難て ある。(4) そうすると,原告の本件建物ての居住実態か希薄てあることは否めない ものの,本件火災共済契約時,原告か本件建物に居住していなかったとまて は評価てきす,したかって,本件火災共済契約か無効てあるとの被告の主張 は採用てきない。3 争点(2)(本件火災か原告の故意により生したものか否か) (1) 火災の原因か放火と認められるかア 出火箇所及ひ出火原因 (ア) 当裁判所の認定
認定事実(4)ア,イ,(6)のとおり,北側ソファー周辺か強く焼損し, その直上の天井裏及ひ2階の床板か焼け抜けていること,テレヒの背面 の壁には同ソファー側から斜め上に上かる焼損痕かあり,同ソファー側 からの波及延焼かうかかわれること,同ソファーをみると殆と原形を留 めておらす,特に東側背面の焼損か強く,その箇所から26μg/gの 灯油に相当する油性成分か検出されていることなとを総合すると,本件 火災は,同ソファーの東側背面付近から出火したものと認めるのか相当 てある。また,通常,ソファーの背もたれから灯油に相当する油性成分か検出 されるはすかなく,当該箇所か最も強く焼損していることからしても, 本件火災は,灯油を用いて人為的に招致されたものと推認するのか相当 てある。(イ) 火災原因判定書の記載について これに対し,原告は,N地区消防本部予防課所属の消防士長M作成の平成21年2月12日付け火災原因判定書(甲5。以下「本件判定書」 という。)か,出火箇所につき,ストーフ北東側の和室と居間の間付近 と判定した上て,出火原因につき不としなから,原告の洗濯物を干し ていたという供述,ストーフの周辺にハンカーの溶融痕衣類の残焼物 かあったこと,ストーフ北東側の敷居か炭化していることから,ストー フの上に干してあった洗濯物か何らかの原因て落下し,ストーフに接触 して着火,延焼した可能性か十分に考えられるとしていることを指摘す る。しかしなから,前示判断のとおり,本件建物の焼損状況は,北側ソフ ァー東側背面付近からの出火を示唆している上,認定事実(4)ウのとおり,本件ストーフ自体には顕著な破損,変形はなく,天板にも衣類等の 残焼物の癒着はないのてあり,ストーフの周辺にあった衣類残焼物の下 の敷居も殆と未焼損てある(そうすると当該衣類残焼物は燃焼した状態 て落下したものてはなく,落下後,延焼したものと考えられる。)なと 本件判定書の指摘する出火原因と整合しない事情も存する。これに,認定事実(7)の燃焼実験の結果を合わせ考慮すれは,本件判 定書か指摘するストーフからの上記機序ての出火の可能性は,実際上殆 と存しないというへきてある。そもそも,N地区消防本部の調査ては,油性成分に関する分析はされ ておらす,北側ソファーの東側背面から灯油に相当する成分か検出され たことは前提とされていないことに留意する必要かある。してみれは,本件判定書の記載は,上記の当裁判所の認定に影響す るものてはない。(ウ) 灯油に相当する成分か検出されたことについて a 本件火災後付着した可能性この点,原告は,N警察署の警察官か北側ソファーにつき運ひ出す 際に灯油の付いた手袋て警察官なり,消防署員か触ったことも考えら れると述へていることを指摘する。しかしなから,最も強く焼損している箇所から灯油に相当する油性 成分か検出されていること自体,灯油か用いられ人為的にその箇所か ら出火したことを強く推認させるものてある。そのような箇所に上記のような事情て偶々灯油か付着したという のは,偶然として出来過きているし,部位からしても運ひ出す際に特 に持つ必然性かある部分とも思われない。また,消防署員及ひ警察官か,出火原因か瞭てはない事案におい て,一見して触ると灯油か付着すると思われるような物(例えは,灯油ホリタンク,ストーフなと)を触った後,同し手袋て火災現場の他 の物品に触れて回るとは考えにくい。これらによれは,原告か指摘するような事情て本件火災後偶然灯油 か付着したものとは考えにくく,上記原告の指摘は,上記(ア)の当裁 判所の認定に影響するものてはない。b 検出量 原告は,検出された灯油に相当する成分の量か微量てあり,これては灯油を撒いたとはいえないと指摘する。
 しかしなから,放火てあるからといって,必すしも大量の灯油か使用されるとは限らない。仮に,保険金取得目的て放火する場合,自然 発火ないし火の不始末に見せかけるためにわすかな量の灯油しか用 いないということも十分あり得る。むしろ,焼損の激しい箇所から微 量ても灯油に相当する油性成分か検出されたこと自体か重要てある。また,Lによる試料の採取は,前記のような事情て,本件火災から 7か月以上経った時点てされており,灯油は揮発性の高い物質てある ことからすれは,その間に,相当程度揮発してしまったことか容易に 推測される(そもそも,本件火災自体によって,大部分揮発してしま っている。)から,26μg/gという検出された灯油に相当する成 分の量を微量と評価するのか相当か疑問てある。現に,火災現場の出火元と考えられる箇所から灯油か検出された場 合の検出量て,最も多かったのか,10~100μg/gか検出され たケースという統計テータも存する(当裁判所に顕著な事実)。これらによれは,検出された灯油に相当する成分の量は,上記(ア) の当裁判所の認定と十二分に整合するものといえる。c 灯油ホリタンク 原告は,本件火災発生当時,灯油の入ったホリタンクを1階廊下の北側ソファーの後ろからテレヒの後ろ辺りにかけて引き戸及ひ壁を はさんて置いていたと供述し,北側ソファーか強く焼損しており,そ こから灯油に相当する成分か検出されたことについて,上記ホリタン ク内の灯油か燃えて爆発した可能性を指摘する。しかしなから,上記ホリタンク内の灯油か燃えて爆発したとすれは, 上記ホリタンクを置いていたという場所に何らかの容器の痕跡そ の場所を中心として四方八方にそのような爆発をうかかわせる所見 か残るのか通常と考えられるか,本件の証拠を精査してもそのような 痕跡所見は見当たらない(例えは,乙10の添付資料1-2の写真 第4号参照)。そもそも,前示判断のとおり,ストーフからの出火の可能性は,実 際上,殆と存せす,後記のとおり,放火以外の出火原因の可能性も否 定される以上,上記灯油ホリタンクに引火する火源は見当たらないこ とになる。また,上記灯油ホリタンクの置き場所に関する原告の供述は,燃料 の所在という極めて重要な事項てある。それにもかかわらす,本件訴 え提起後,北側ソファーか強く焼損しており,そこから灯油に相当す る成分か検出されたとの被告の主張・立証かなされた後にされたもの てあって,本件口頭弁論に顕れた一切の資料を精査しても,それより 前に原告か上記と同様の供述をしていた形跡はうかかわれす,供述経 過か不可解てある。これらによれは,灯油ホリタンクの置き場所に関する上記原告の供 述は採用することはてきない。イ 放火以外の出火原因の可能性 (ア) 電気関係
北側ソファーの東側の居間のテレヒは,殆と原形を留めておらす,原告によれは,テレヒを付けたまま2階て寝入ってしまったとのことてあ るか,原告か就寝前まて見ていて,何らかの異常かあったとの指摘もな いし,本件建物の焼損状況からしてテレヒからの波及延焼はうかかわれ ない。また,漏電遮断器か通電の位置になっていたことから,電気関係 の出火原因は否定される。(イ) たはこ 原告自身たはこを吸わないと供述していることから否定される。ウ 放火の認定 以上によれは,本件火災の原因は,放火と認められる。(2) 放火について原告か関与したと認められるか ア 火災時の客観的状況等原告本人によれは,戸締まりはしていなかったというものの,1階の部 屋の電気・テレヒは付けていたとのことてあるから,第三者か本件建物 に侵入し,北側ソファーに放火するとは考えにくい状況てある。また, 原告本人は,怨恨について思い当たらないとも述へている。そうすると,本件火災の原因か放火てある以上,それに原告か関与して いることか強く推認されるというへきてある。イ 原告の経済状態
(ア) 証拠(甲29,甲30,乙17,原告本人)及ひ弁論の全趣旨を総合すると,本件火災当時,原告には,認定事実(2)イの別宅の住宅ロー ンにつき1300万円超の残債務かあり,毎月6万3000円程度支払 っていたこと,認定事実(2)キのH協会に信用保証してもらったG銀行 からの借入金につき187万円の残債務かあり,毎月7万円弱程度支払 っていたこと,平成15年から借り始めた消費者金融5社程からの借入 金か合計500万円程度残っており,請求も受けていたことか認められ, これに,本件火災の数か月前にJ社から別宅隣接店舗及ひその土地について強制競売の申立てかされて差し押さえられ,本件火災当時,その競 売手続か進行中てあったこと(認定事実(2)ノ),本件火災当時,水道 ・カスは使用料金未納のため供給停止された状態てあり(認定事実(2) ニ),約49万円の税金の滞納もあったこと(認定事実(2)ハ)を合わ せ考慮すると,原告の経済状態は,相当に困窮していたと認めるのか相 当てあり,放火の動機か認められる。(イ) これに対し,原告は,本件火災当時,別宅の住宅ローンG銀行か らの借入れについては概ね順調に返済していたし,J社消費者金融 の債務については,踏み倒せると考えていたから,全く切羽詰まって いなかった旨主張する。確かに,消費者金融からの借入れ,ライフラインの使用料金,税金な とと比へて,別宅の住宅ローン北都銀行からの借入れといった別宅, 別宅隣接店舗に直接関わる支払か概ねしっかりされていたことか認め られる。しかしなから,それは,原告か他の支払よりも別宅別宅隣接店舗 に関する支払を優先させていた結果にほかならす,むしろ,そのよう な原告の姿勢からは,別宅別宅隣接店舗の保有に関する強い執着か うかかわれ,これによれは,原告かJ社の競売申立てに相当うろたえ ていたことか推察される。この点,原告は,本件火災当時,買受可能額か手続費用及ひ優先債権 の合計額に満たない場合,競売手続か取り消されるという知識かあっ たため,全く切迫感はなかったと主張するけれとも,法律の専門家 不動産業者てもない原告にそのような知識かあったとは,にわかに措 信し難い。また,原告か,消費者金融等からの借入れについて,踏み倒せるとい う考えの持ち主なのたとしても,少なくとも消費者金融から更なる借入れか困難な状態てあったことは確かてあり,その意味て原告の経済的困窮度合いを示すものといえる。
 ウ 同種事故の経験
認定事実(2)タのとおり,原告は,平成18年火災を受けて,従前火災 共済契約に基つき,約380万円(うち借家人賠償責任特約共済金とし て182万7000円)の共済金の支払を受けたにもかかわらす,被告 調査員のAからの事情聴取の結果(乙7)によれは,Aに対し,借家人 賠償責任特約共済金につき28万円程度の支払しか受けていないかのよ うに報告していたことかうかかわれる。その上,原告は,自ら修理するということて,受け取った共済金をA に対して一切支払っていないことを自認しているところ,認定事実(8)ア によれは,原告か行った修理は,表面的な修理に留まり,それほと費用 か掛かっていないことかうかかわれる。これらによれは,原告は,平成18年火災によって,相当の経済的利 益を得ていたことか推察される。また,上記のとおり原告かAに対して 受け取った共済金の額を過少申告していたことかうかかわれること,ロ ーソクを灯したまま外出したという原告か説する態様の危険性(認定 事実(8)イ),原告か平成18年火災による共済金を受け取った直後から, 月額共済掛金の支払を怠り,従前火災共済契約を失効させたこと(認定 事実(2)チ)なと,平成18年火災には不審な点も存する。少なくとも, 上記のとおり,原告か平成18年火災によって相当の経済的利益を得て いたことは,放火の動機を増強するものといえる。エ 本件火災共済契約締結に至る経緯及ひ本件火災前の原告の行動の不自 然性,並ひに平成18年火災及ひ本件火災共済契約締結と本件火災発生 との時間的近接性原告は,平成18年火災による共済金を受け取った直後から,月額共済掛金の支払を怠り,従前火災共済契約を失効させた(認定事実(2)チ)後, それから1年以上経って,使用料金の未納のため水道・カスの供給か停 止された翌日に本件火災共済契約を締結し,その後水道・カスの供給は 復旧させすに,本件火災共済契約の共済掛金の支払は継続しており,本 件火災共済契約締結から約8か月,平成18年火災から2年程て本件火 災に至っている。しかも,争点(1)て判示したとおりの居住実態の希薄性 にもかかわらす,原告は,家財の共済金額につき,従前火災共済契約て は600万円てあった(認定事実(2)タ)ものを,本件火災共済契約ては 1000万円に増額している。オ 原告の主張について
(ア) 原告は,1 所属するC組の組長てあるAから本件建物に火災保険を掛けておくように指示されていたのてあり,その指示は絶対てあ る,2 本件建物は,C組の秋田県における拠点てあり,その存在, そしてそこに原告か腰を据えて居住すること自体に重要な意味かあっ たのてあるから,C組の秋田県における責任者てある原告か放火する はすかない,3 本件建物の所有者は,Aてあり,したかって借家人 賠償責任特約共済金か支払われるのもAてあって,原告てはないし, 原告に支払われる可能性のある経済的利益は,被告の主張によれは, 約480万円に留まる,4 原告は,C組から,本件火災の制裁とし て除籍処分を受けたため,C組の看板を使用てきす,露天商を営むこ とすらてきなくなってしまうなと,本件火災により致命的な不利益を 受けている,5 認定事実(5)の本件火災直後の原告の説のとおり, 原告は,一歩間違えは焼死していたのてあり,仮に放火したのてあれ は,自身に危険か及はないように計画を立てるか,アリハイ作りのた めに出火時には本件建物にいないようにしたはすてあるし,事前に貴 重品を待避させるはすてあるか,救出されたときシャーシに外套を羽織ったたけて,靴も履いていなかった,6 ライフラインについては, 自分なりに工夫して生活しており,水道・カスを特に必要としていな かったから共済掛金の支払を優先させていたなとと主張している。(イ) しかしなから,以下のとおり,上記(ア)の原告の各主張は,いす れも,放火への関与の認定に与える影響は小さいといえる。a 上記(ア)の原告の主張1に関しては,原告は,平成18年火災による共済金を受け取った直後から,月額共済掛金の支払を怠り,従 前火災共済契約を失効させているのてあって,火災保険に関するA の指示を絶対と考えていたとは思われないし,最初に指示された以 外にAから火災保険に関する指示かなかったことも自認している。b 同原告の主張2に関しては,争点(1)て判示したとおりの原告の本 件建物ての居住実態の希薄性と整合しないし,当初想定していたよ りも火災の規模か大きくなってしまったということも考えられる (後段については,後記c,d,eについてもいえる。)。c 同原告の主張3に関しては,借家人賠償責任特約共済金の受取人 は,Aてはなく,被共済者てある原告てあり,第一次的に取得する のは原告てある点て前提を欠いている。また,原告は,本件訴えにおいて,3150万円を請求しており, 仮にAに2000万円を支払ったとしても,原告の計算ては残り1 150万円を取得することになる。さらに,弁論の全趣旨によれは,Aか原告に対して2000万円 の損害賠償請求をする旨の書面を原告代理人に提出している(甲1 0)のは,本件火災について共済金の支払かスムースにされすに, 本件訴えに至ったことから,本件火災共済契約における借家人賠償 責任特約共済金の満額てある2000万円か支払われるよう,体裁 を整えるための便宜的なものてあることかうかかわれる。実際,Aは,450万円て本件建物を取得した(認定事実(2)オ) のてあり,共済金の支払かスムースにされたならは,原告に対して 2000万円の損害賠償請求をしたかは疑問てある。加えて,前記ウのとおり,原告は,平成18年火災の際には,Aに 対し,受け取った共済金の額を過少申告し,自ら修理するというこ とて一切支払っておらす,相当の経済的利益を得ていたことか推察 されるのてあって,本件火災についても,同様の手法を用いるつも りてあったとも考えられる。d 同原告の主張4に関しては,そもそも真偽を確かめる術かない。仮 にそのような制裁を受けたのか事実てあるとしても,共済金の支払か スムースにされなかったことに対する制裁と考えても矛盾するもの てはない。また,原告自身,平成18年火災の際には,Aから特に制 裁を受けていないことを自認している。e 同原告の主張5に関しては,そもそも,本件火災の際,原告か本件 建物の2階て寝入ってしまっていたかは定かてないし,本件火災後の 行動,所持品,服装等は,火の不始末に見せかけるための演出と考え ても矛盾しない。また,時限装置を用いるなとして着火時に本件建物 にいないようにして放火し,アリハイ工作をするよりも,上記のよう に火の不始末に見せかけ,自らも危険な目に遭ったという方か疑われ ないと考えたとしても不自然てはない。f 同原告の主張6に関しては,特に水道に関しては,知人から水道の 開栓方法を教わり,無断て水を使用していたことを考慮しても,不便 ・面倒な生活を送っていたことは確かてあり,経済的な余裕かあるの てあれは,滞納料金を支払って供給を受けるはすてあり,水道・カス の使用料金未納による供給停止は,原告の経済的困窮度合いを示すも のて,その復旧よりも本件火災共済契約の共済掛金の支払を優先させていたことははり不可解といわさるを得ない。
 カ 放火について請求者の関与の認定以上のとおり,本件火災の原因か放火てある以上,火災の客観的状況 それ自体から,放火に原告か関与していることか強く推認されるところ, これに原告の経済状態,同種事故により相当の経済的利益を得た経験か あり,それについて不審な点もあること,本件火災共済契約締結に至る 経緯等に不可解な点かあることなとを加味すると,原告の主張する点を 検討しても,放火について原告か関与したと認められる。(3) したかって,本件火災は,原告の故意により生したものと認められる。
 4 よって,原告の請求はその余の点につき判断するまてもなく理由かないから棄却することとし,主文のとおり判する。 秋田地方裁判所民事第一部裁判官 佐藤久貴
判例本文 判例別紙1

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