平成18年(行ウ)第80号 住民訴訟事件 判決 主文
1 被告は被告補助参加人会派Z1に対し,4614万円を支払うよ う請求せよ。2 原告らのその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,これを3分し,その2を原告らの負担とし,その余を被告の負担とし,補助参加によって生した費用は,これを3分し, その2を原告らの負担とし,その余を被告補助参加人らの負担とす る。事実及ひ理由
第1 請求の趣旨
被告は被告補助参加人会派Z1に対し,1億3500万円及ひこれに対する平成1 7年6月1日から支払済みまて年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。第2 事案の概要
1 本件は,名古屋市の住民てある原告らか,名古屋市議会の会派てあった会派A か名古屋市から交付された平成16年度の政務調査費のうち,1億3500万円(会 派Aか交付を受けた政務調査費のうち,所属議員らに支給したとする合計1億395 0万円から,会派Aか名古屋市に返還した450万円を控除した残額)を不当に利得 していると主張して,地方自治法242条の2第1項4号に基つき,被告に対し,同 金額の不当利得金の返還及ひ遅延損害金の支払を会派Aの権利義務を承継した被告補 助参加人会派Z1に請求するよう求める住民訴訟てある。2 名古屋市における政務調査費交付手続等の概要
(1) 名古屋市においては,地方自治法(平成20年法律第69号による改正前のも の。以下同し。)100条13項の規定を受けて,名古屋市会政務調査費の交付に関 する条例(平成13年名古屋市条例第1号。たたし,平成20年名古屋市条例第1号による改正前のもの。以下「本件条例」という。)を定めている。本件条例に基つき, 名古屋市長は,名古屋市会政務調査費の交付に関する規則(平成13年名古屋市規則 第11号。以下「本件規則」という。)を定め,また,名古屋市議会議長は,名古屋 市会政務調査費の使途基準及ひ収支報告書の閲覧に関する規程(平成13年名古屋市 会達第1号。以下「本件規程」という。)を定めている。(2) これらによれは,名古屋市における政務調査費の交付手続等の概要は,次のと おりてある。ア 名古屋市ては,市議会における会派(所属議員か1人の場合を含む。)に対し, 議員の市政に関する調査研究に資するため必要な経費の一部として,当該会派に所属 する議員1人当たり月額55万円を交付することとしている(本件条例1条,2条, 3条1項)。そして,その政務調査費は,議長か定める使途基準に従って使用するも のとし,市政に関する調査研究に資するため必要な経費以外のものに充ててはならな いとされている(本件条例4条)。政務調査費の使途基準について,本件規程2条は,「別表に掲ける項目ことに概ね 右欄に掲けるとおりとする。」と定めている(別表の定めは,別紙1のとおりてあ る。)。イ 政務調査費の交付を受けた会派の代表者は,政務調査費に係る収入及ひ支出の 報告書(以下「収支報告書」という。)を所定の様式により議長に提出しなけれはな らない(本件条例5条1項。なお,この提出の際には,領収書等の提出は求められて いない。)。収支報告書は,前年度の交付に係る政務調査費に関し,毎年4月30日 まてに提出しなけれはならない(同条2項)。議長は,提出された収支報告書の写し を市長に送付する(本件規則5条)。議長は,上記収支報告書か提出されたときは,必要に応して調査をすることかてき る(本件条例6条)。市長は,政務調査費の交付を受けた会派かその年度において交 付を受けた政務調査費の総額から,当該会派かその年度において市政に関する調査研 究に資するため必要な経費として支出した総額を控除して残余かある場合,当該残余の額に相当する額の政務調査費の返還を命しることかてきる(本件条例7条)。ウ 会派は,経理責任者を置かねはならす,その経理責任者か政務調査費の支出に 関し会計帳簿を調製し,領収書等の証拠書類を整理し,これらの書類を収支報告書の 提出期限の日から起算して5年を経過する日まて保管しなけれはならない(本件規則6条1項,2項)。
エ 会派か議長に提出した収支報告書は,提出期限の後,一定期間か経過すれは,閲覧は可能となるか(本件規程3条),会派か調製すへき会計帳簿及ひ保管すへき証 拠書類を閲覧に供する旨を定めた規定はない。3 前提事実(以下の事実は,当事者間に争いのない事実及ひ後掲の証拠から容易 に認定てきる事実てある。)(1) 当事者等
ア 原告らは,名古屋市民てあり,被告は,名古屋市長てある。イ 会派Aは,名古屋市議会議員て構成する会派(権利能力なき社団)てあった。なお,会派Aの構成メンハーのうち9名は,平成18年9月,会派Aを離脱し,新た に会派B(その後「会派C」と名称を変更した。)という会派を結成した。平成21年3月31日,会派A及ひ会派Cは解散し,その構成員らは,同年4月1 日,被告補助参加人会派Z1を結成した。被告補助参加人会派Z1は,会派A及ひ会 派Cの権利義務を承継した。ウ 被告補助参加人Z2,同Z3,同Z4は,平成16年当時,会派Aに所属する 名古屋市議会議員てあった(以下,これら3名の被告補助参加人と被告補助参加人会 派Z1を併せて,「被告補助参加人会派ら」という。)。(2) 平成16年度の会派Aに対する政務調査費の交付等
ア 前記2のとおり,平成16年度においては,名古屋市議会の各会派に対し,政 務調査費として,月額55万円に当該会派の所属議員数を乗した額か交付されること になっており,同年度において,名古屋市は,会派Aに対し,合計1億5345万円 を交付した。イ 会派Aは,1人当たり月額55万円の政務調査費のうち,5万円を会派の共通 経費とし,その余の50万円を個人経費として各議員に対して支給する政務調査費に 充てていた。ウ 会派Aは,本件条例5条1項に基つき,平成17年4月28日付けて,名古屋 市議会議長宛てに平成16年度政務調査費に係る収支報告書(甲1。以下「本件報告 書」という。)を提出した。本件報告書の記載内容は,別紙2のとおりてある。
エ 会派Aは,平成17年5月26日,別紙2記載の残余金606万5717円を 名古屋市に返還した。(3) 監査請求等
ア 原告X1らは,平成18年9月8日,名古屋市監査委員に対し,要旨「会派A は,平成16年度に交付された政務調査費のうち,450万円を当時病気療養中て政 務調査活動かてきる状態になかった会派AのD議員に支給していた。しかるに,会派 Aは,本件報告書に,上記450万円も含めて政務調査活動に支出したとの事実に反 する記載をして,これを市議会議長に提出した。」なとと主張して,平成16年度に 会派Aに交付した政務調査費のうち,個人経費分の合計額1億3950万円(以下 「本件政務調査費」という。)を名古屋市に返還させるために必要な措置を執ること を求める住民監査請求(以下「本件監査請求」という。)を行った(甲2)。イ 名古屋市監査委員は,本件監査請求において違法性か具体的に摘示されている のはD議員に交付された450万円のみてあるとして,この450万円か不当利得に 当たるか否かを監査対象事項とした。そして,名古屋市監査委員は,要旨次の(ア), (イ)のとおりの事実を認定し,上記450万円については,既に名古屋市に返還され ており,不当利得はないとして原告らの請求を棄却し,また,その余の部分について は,違法性か具体的に指摘されていないとして却下する旨の監査結果を平成18年1 1月7日付けて原告らに通知した(甲2)。(ア) 平成17年4月25日,会派Aは,D議員に対して450万円を支給した。こ 4れは,平成16年度の政務調査費の個人経費分てあると認められる。(イ) 会派Aは,本件報告書にはD議員への450万円の支出か含まれていたことを 認め,平成18年10月19日,本件報告書の訂正願いを市議会議長に提出し,45 0万円については,名古屋市長から会派Aに対し返還命令か出され,会派Aは,これを名古屋市に返還した。
ウ 名古屋市監査委員は,本件監査請求に対する監査結果の通知において,「会派Aの政務調査費の支給事務に関し,D議員に対する政務調査費の支給に至る経緯か曖 昧てあり,また,領収書か個人別に特定てきす,会計帳簿か不備てあったことなとか ら,会派としてのチェック機能か十分に働いていないことかうかかわれた。会派Aに おいては,政務調査活動を証する領収書,報告書の確実な徴取及ひ適正な管理,支出 内容を事後に容易に点検てきるような会計帳簿類の調製,政務調査費の支出における 自己監査体制の整備なと,内部統制の充実を図り,会派として再発防止に努められる よう強く要望する。」と記載した(甲2)。(4) 別件訴訟
本件の原告らは,名古屋市長を被告として,会派Aに対し,平成15年度及ひ平成 16年度の政務調査費のうち共通経費に当てられたとされる部分の返還を求めるよう 請求する住民訴訟(第1審・当庁平成17年(行ウ)第47号,控訴審・名古屋高等 裁判所平成19年(行コ)第14号。以下「別件訴訟」という。)を提起した。別件 訴訟の控訴審判決は,名古屋市長に,会派Aに対して,165万9781円及ひこれ に対する遅延損害金を支払うよう請求することを命したか,その判決理由中において, 会派Aか平成17年5月26日に名古屋市に返還した平成16年度分の政務調査費の 残余金606万5717円には,R議員の2か月分とP議員の1か月分の個人経費分 か含まれていた旨を認定した(丙28)。4 争点及ひ当事者の主張
本件の争点は,会派Aか本件政務調査費のうち1億3500万円について,「法律 上の原因なく他人の財産によって利益を受けた」か否かてあり,これに関する当事者の主張は,次のとおりてある(なお,被告は,会派Aに不当利得かあることは争って いるか,具体的な主張はしていない。)。(原告らの主張)
(1) 政務調査費は,地方自治法100条13項に基つき交付されるところ,同項は, その使途を「議員の調査研究に資するため必要な経費の一部」と定めているから,こ れ以外の目的による政務調査費の支出は,同項に違反することになる。そして,同法 2条14項,138条の2,地方財政法4条1項に照らせは,交付した政務調査費に 年度末の段階て残余かあった場合や議員の調査研究に必要な経費以外に支出された場 合は,かかる支出に対応する部分の利得を当該会派に維持させることに法的合理性は ない。また,このような事情の下て,当該地方公共団体の執行機関か当該会派に対し て上記利得に相当する金員の返還を命しないとすれは,かかる執行機関の行為は当該 地方公共団体に損害を与える行為てある。上記の点に照らせは,本件条例7条は,交付され政務調査費に年度末の段階て残余 かある場合のみならす,政務調査費か市政に関する調査研究に必要な経費以外に支出 された場合についても,被告に,会派に対して不当利得返還請求をすることを命して いると解すへきてある。(2) 会派Aは,平成16年度に交付された政務調査費のうち,450万円を当時病 気療養中て政務調査活動かてきる状態になかったD議員に交付していた。しかるに, 会派Aは,本件報告書に,上記450万円も含めて政務調査活動に支出したとの事実 に反する記載をして,これを市議会議長に提出した。そこて,原告らは,本件監査請 求をしたところ,会派Aは,本件監査請求の調査の過程て450万円を名古屋市に返 還した。その上,その監査結果において,会派Aの政務調査費の支給に関し,D議員 に対する政務調査費の支給に至る経緯か曖昧てあり,また,領収書か個人別に特定て きす,会計帳簿か不備てあったとの指摘かされた。以上によれは,平成16年度に会派Aに交付された政務調査費中,少なくとも会派 内て個人経費分として分配された月額50万円(この合計か,本件政務調査費てある。)の使途については,支出に関する会計帳簿もなく,誰かとのような使途ていく ら支出したのか特定てきない状態てあったことになる。そして,監査結果における上 記指摘を踏まえると,少なくとも平成16年度分の会派A所属の議員の政務調査費支 出分については,会派Aは,本件条例か要求する適切な支出報告をしておらす,その 年度において市政に関する調査研究に資するため必要な経費として支出したことの証 明かされていないことになる。他方,各会派か政務調査費を最終的に保有てきるのは,本件条例5条に基つき適切 な収支報告かされ,これに基つき被告から本件条例7条に基つく返還請求権か行使さ れないことか確定した段階てある。以上によれは,会派Aは平成16年度分の政務調査費に関して適切な収支報告をし ていない以上,少なくとも個人経費分てある本件政務調査費についてはこれを保有す る権限を有しない。よって,被告は,本件条例7条及ひ不当利得返還請求権に基つき,会派Aの権利義 務を承継した被告補助参加人会派Z1に対し,会派Aか平成16年度分として交付さ れた政務調査費のうち,会派Aか1人当たり月額50万円の割合て支出したとされる 合計1億3950万円(本件政務調査費)から会派Aか既に名古屋市に返還した45 0万円を控除した1億3500万円について,不当利得返還請求権の発生か明らかと なった平成17年6月1日から支払済みまて年5分の割合による遅延損害金を付して 請求する義務かあるというへきてある。なお,会派Aは,本件報告書において606万5717円の残余金か発生したとし て,これを名古屋市に返還した。しかし,この残余金は,平成16年度に会派Aに交 付された政務調査費のうち,共通経費部分か個人経費部分か判然とせす,いすれの可 能性も否定てきない。したかって,上記残余金について個人経費部分てあることの根 拠かないから,本件においては不当利得返還金額からこれを控除することなく請求す る。(3) 会派Aの所属議員か提出した陳述書によっても,会派Aに交付された政務調査 7費全額は,政務調査費としての目的外の支出てある。
 会派Aに所属していた議員(たたし,所属議員全員てはない。)は,陳述書において,政務調査費の支出内容を説明している。しかし,これを裏付ける帳簿や領収書は 提出されていない。陳述書自体,会計帳簿に比へ明らかに信用性は低い上,本件て提 出された陳述書の記載は,支出内容を「調査費」,「研修費」,「会議費」,「資料 作成費」,「資料購入費」,「広報費」,「事務費」及ひ「人件費」に類型化して, それそれの総額を記載しているにすきない。支出かこれらの類型に属するというため には,少なくとも,特定の政務調査活動を目的とした支出てあることを裏付ける資料 を示すことか必要てあるか,本件ては,何も根拠か示されていない。したかって,陳 述書の記載は,支出目的の正当性の根拠とはならない。例えは,資料を購入した,資 料を作成したなとと陳述していても,その資料の具体的内容を明らかにしていない。 その他の費目に関しても同様てあり,使途を具体的に明らかにしておらす,説明か抽 象的てあり,政務調査活動として支出したとの説明かされていない。(4) また,具体的に,次のような疑問かある。
ア 議員の活動のうち,政務調査活動はその一部にすきす,その多くは政治活動や 委員会活動てある。より多数の支持を受け,議会における多数派の地位を占めるため の活動は,すへて政治活動てあるし,議員として議会に出席し,意見を述へ,議決に 参加することも政治活動てある。また,名古屋市議会においては委員会か設けられており,委員会単位ての調査や視 察かされており,これに要した費用は費用弁償条例により議員に支払われるから,こ れを政務調査費として支出することは許されない。したかって,政務調査費の支出として正当化てきるのは,政治活動にも委員会活動 にも属さない支出てあり,かつ,会派か政務調査活動として掲けたものに限られる。
 この観点から見た場合,調査費,研修費,会議費,資料作成費,資料購入費,広報費, 事務費,人件費については,いかなる政務調査活動として何にいくら支出したのかの 説明かされていない以上,政務調査費の支出として正当化てきるものてはない。イ 政務調査費の支出として正当化てきるものは,会派としての政務調査活動てあ って,個人のそれてはない。したかって,陳述書に記載された政務調査活動か,会派 の政務調査活動として決定され,調査か委託されたものてあることを示す必要かある か,これらの説明かない。ウ 飲食そのものは政務調査活動てはなく,少なくとも飲食代金を政務調査費から 支出するためには,具体的な調査活動をするに当たって,飲食を伴うことか必要とい える状況てあることか必要てある。会派Aは,政務調査費(共通経費)を飲食代とし て支出してきたところ,そこに所属する議員も,同様に支出してきたものと認められ るから,これらの支出は違法てある。エ 本件規程2条は,広報費を政務調査費から支出することを認めているか,広報 活動は政務調査活動てはなく,議員としての活動成果を広く一般に伝えることによっ て市民の支持を受けることを目的とする活動てあって,政治活動そのものてある。し たかって,政務調査費から広報費の支出を許容する本件規程2条は,地方自治法10 0条13項に違反する。また,S党の機関紙てある「T」は,議員自らの宣伝に割か れている紙面か多く,その発行は,政治活動に他ならない。よって,政務調査費を広 報費(「T」の発行費用)として支出することは違法てある。オ 人件費は,その支出に関して政務調査活動のための支出てあるとの説明か十分 にされていない以上,政務調査活動のためというよりも政治活動のために雇用した者 の人件費と見るのか相当てある。また,事務費の内,事務所借り上け費用は,政務調 査活動を行うために事務所を借りる必要はないのて,違法てある。(被告補助参加人会派らの主張)
(1) 現代の議会において,会派は極めて重要な役割を担っており,会派を構成する 議員を通して,様々な情報を収集し,これを分析,検討して,会派としての意思決定 を行っている。会派に所属する議員は,会派て意思決定された方針や計画に従って, 会派間の協議,本会議や委員会ての審議に参加する。また,議会外において,所属す る会派か推進する施策を広く市民に周知し,会派としての実績をアヒールする。その結果,新たな情報か得られれは,各議員は,会派にその情報をフィートハックし,市 政に生かされることになる。そして,実際の会派の活動は,主に,所属議員1人1人 か行い,その活動範囲は広範多岐にわたる。このような会派及ひ議員の調査活動の補助のために政務調査費は交付されているか, 費用の支給てある以上その使途の透明性の要請かあるのて,名古屋市ては,本件条例 により会派に対し収支報告書の提出を義務付けるものの,他方て,政務調査活動は, 結社の自由,言論の自由及ひ政治活動の自由とも密接に関連しており,これらの自由 を制限するおそれや執行機関等からの干渉を防止し,会派間における独自性,優位性 を確保する観点から,領収書等の提出は義務付けられていない。(2) 会派Aにおいては,会派内の取決めにより,議員1人当たり55万円の政務調 査費について,月額50万円を限度として各議員の個人経費として支給し,残り5万 円を会派の共通経費としていた。政務調査費の管理については,毎月,会派Aの預金 口座に振り込まれる政務調査費をその都度全て引き下ろし,各議員の個人経費として 支給する部分については,現金50万円すつの封筒に分けてこれを金庫に保管し,共 通経費に充てる部分は,会派Aの別の口座に入金して管理していた。そして,所属の 議員に対しては,領収書を財務委員長かチェックし,適切てない場合には是正を依頼 するなとした上て,1人当たり毎月50万円を限度として,各議員の政務調査活動に 応して,政務調査費を支払っている。平成16年度においては,会派Aは,政務調査費として合計1億5345万円の交 付を受けた。そして,個人経費分については,会派Aの財務委員長(平成16年度は E議員)か,所属議員から会派Aの団長宛てに提出された領収書(政務調査費の使途 基準てある8項目に分類されたもの)に基ついて,その項目ことの合計に基ついた出 納テータをハソコンにより管理しており,個人経費分の使用額かいくらてあるかを把 握していた。ところて,会派Aは,平成16年度に受領した政務調査費のうち,平成17年5月 26日に606万5717円,平成18年11月16日に450万円の合計1056万5717円を名古屋市に返還したか,平成17年に返還したもののうち共通経費分 は456万5717円(利息37円を含む)てあり,150万円は個人経費分てある。
 また,平成18年に返還したものは,全て個人経費分てある。原告らの請求は,会派 Aか受領した政務調査費のうち個人経費部分から既に返還した450万円を控除した 1億3500万円について返還を求めるものてあるか,会派Aは,上記のとおり個人 経費分については更に150万円返還したから,個人経費分として受領したのは最終 的には1億3350万円てある。(3) 政務調査費の支出の違法性に関する判断基準は,政務調査費としての個々の具 体的な支出か,その本来の使途及ひ目的に違反していることを推認させる一般的,外 形的な事実を不当利得返還を請求する者において立証した場合に初めて,これを争う 者において,その推認を妨けるへく,本来の使途及ひ目的に沿って使用したことを明 らかにする必要かあるところ,原告らは,上記の一般的,外形的な事実の立証をして いない。上記の原告らの立証の不備を置くとしても,平成16年度に会派Aに所属していた 議員の個々の政務調査活動の内容及ひ政務調査費の支出状況は,各議員作成の陳述書 (政務調査費の支出状況の骨子は別紙3)のとおりてあり,政務調査費の支出として いすれも適法なものてある。なお,当時会派Aに所属していた議員のうち,一部の議員は陳述書を提出していな いか,その理由は,死亡,離団ないし分裂というものてあり,陳述書未提出の議員て あっても,当然他の議員と同様に政務調査活動を行っていたと考えるのか自然てある。 すなわち,陳述書未提出の議員てあっても,本会議ての質問や,予算の要望をするた めには,その準備や調査か必要てあり,それに相応する費用の捻出か必要てある。ま た,前記のとおり,会派Aにおいては,政務調査費のうち個人経費分については,各 議員に支給する前に,財務委員長による領収書のチェックか行われていたから,これ らの議員に関する政務調査費も適正に支出かされていたと推定すへきてある。(4)ア 原告らは,政務調査費の支出は政治活動及ひ委員会活動に属さない支出に限 11定されると主張する。しかし,政治活動の概念自体か明確てない上,政治活動ても, 市政において問題となる課題に直接的又は間接的に関連する政治活動のために必要と される調査研究活動への支出てあれは,政務調査費の支出として適法とすへきてある。 また,委員会活動に伴う費用弁償か受けられるのは,委員会活動そのものに関するも のに限定されており,委員会活動に関連したすへての調査研究活動について費用弁償 を受けられるわけてはない。したかって,委員会活動として費用弁償を受けられない か,それに関連する調査研究活動を行った場合に,政務調査費を支出することは,当 然適法てある。イ 原告らは,政務調査活動は会派としての活動に限定されると主張する。しかし, 本件条例1条は「名古屋市会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部とし て」と規定し,本件条例2条は,所属議員か1人の会派への政務調査費の交付を認め ているから,議員個人の政務調査活動のために支出することを当然に許容するものて ある。したかって,原告らの主張は,失当てある。ウ 原告らは,飲食費は政務調査費として認められないと主張するか,飲食費てあ っても,市政に関する調査や会議に伴って支出するものてあり,それか社会通念上必 要かつ相当と認められるのてあれは違法な支出とはいえないとするへきてある。エ 原告らは,広報費は政務調査費として認められないと主張する。しかし,市政 に関する施策を策定する上て,市民の意見を取り入れることは重要てあり,その前提 として市民にその判断材料となる情報を提供することも当然に必要てある。したかっ て,市民に対する広報活動は,施策決定のための調査研究活動として最も重要な活動 の1つてあり,そのための費用は,政務調査費に含まれるとするのか相当てある。第3 当裁判所の判断
1 政務調査費の意義及ひ主張立証責任の分配等について
(1) 普通地方公共団体の議会は,議決権(地方自治法96条等),選挙権(同法97条等),監視権(同法98条,100条,179条3項,180条2項等),意見 表明権(同法99条,125条,206条4項等)等広範な権限を有しているところ,これらの権限を現実に行使するのは,当該議会の議員てある。したかって,普通地方 公共団体の議会の議員の職責も,広範てあり,議員かその活動を十分に行うためには, 相応の調査研究か必要てある。同法100条13項により政務調査費の交付か認めら れたのは,このような広範な職責を有する議員の活動を実効あるものにするために, 議員の調査研究のための費用を助成する目的によるものと認められる。そして,議員か行う調査研究活動は,基本的に各議員の問題意識にのっとって行わ れるへきものてあり,原則として執行機関等の外部からその内容について容喙するこ とは許容すへきてなく,また,例えは,執行機関の不正の調査なと秘密裏に行う必要 のあるものや,会派独自の政策の企画立案なと他の会派に知られると当該会派の優位 性か失われる性質の活動を含むものと認められ,活動内容の全貌を明らかにすること により,その活動の実効性か失われるおそれかあることは否定てきない。前記第2の 2「名古屋市における政務調査費交付手続等の概要」において判示したとおり,議長 は,本件条例5条1項に規定する収支報告書か提出されたときは,必要に応して調査 することかてきるとされているか(本件条例6条),本件条例等において,執行機関 か個々の政務調査費の支出の適否を直接調査することを予定した規定か設けられてい ないのは,上記のような政務調査活動の性質を踏まえて,政務調査費の支出の適法性 の判断は,原則として,各会派の自律的な判断に委ねる趣旨てあると解される。他方,政務調査費は,税金を原資とするものてあるから,その収支の状況はてきる たけ透明にすることか望まれる。本件条例5条1項か,各会派に政務調査費に係る収 支報告書の提出を求め,本件条例8条1項か,議長に対し各会派から提出された収支 報告書についてその提出期限から5年間保存することを義務付け,同条2項か,何人 に対しても議長の保存に係る収支報告書の閲覧請求権を認めているのは,上記の透明 性の要請に応えようとしたものてあると解される。したかって,各会派か提出する収 支報告書については,その記載内容の正確性か強く求められるところ,本件規則6条 1項か,会派は政務調査費に関する経理責任者を置かなけれはならないとし,同条2 項か,政務調査費の交付を受けた会派の経理責任者に対し,政務調査費の支出について会計帳簿を調製するとともに,領収書等の証拠書類を整理し,これらの書類を当該 政務調査費に係る収支報告書の提出期限から5年間保管することを義務付けているの は,各会派による政務調査費の支出か適正に行われることを期するとともに,各会派 か提出する収支報告書の記載内容の正確性を担保し,収支報告書の記載内容について 疑義か生したときには,当該会派において,会計帳簿や領収書等の証拠書類に基つい て政務調査費の収支の状況を説明てきるようにするためてあると解される。(2) これらを踏まえて,政務調査費の返還か求められている訴訟における主張,立 証責任の分配等について検討する。本件条例4条によれは,政務調査費は,議長か定める使途基準に従って使用するも のとし,市政に関する調査研究に資するため必要な経費以外のものに充ててはならな いとされ,本件条例7条によれは,市長は,政務調査費の交付を受けた会派かその年 度において交付を受けた政務調査費の総額から,当該会派かその年度において市政に 関する調査研究に資するため必要な経費として支出した総額を控除して残余かある場 合,当該残余の額に相当する額の政務調査費の返還を命することかてきるとされてい る。これらの規定に照らせは,当該会派か政務調査費の本来の使途及ひ目的に違反し た不適切な支出をした場合には,その支出は「市政に関する調査研究に資するため必 要な経費」として支出したものとは認められないことになるから,市長は,当該不適 切な支出に相当する額の政務調査費に関しても,当該会派に返還を求めることかてき ると解するのか相当てある。そして,残余金及ひ政務調査費として不適切な支出に相 当する額の金員は,会派かこれを保有しておく理由のない金員てあることに照らせは, 本件条例7条に基つく返還請求権は,不当利得返還請求権の性質を持つものと解され る。したかって,本件条例7条に基つき会派に対して政務調査費の返還を求める場合に は,不当利得返還請求権の一般的な主張立証責任の分配に従って,政務調査費の返還 を請求する側において,返還を求める政務調査費の支出か「市政に関する調査研究に 資するため必要な経費」の支出に当たらないことの主張,立証責任を負うことになると解される。しかし,本件条例の下においては,各会派か提出する収支報告書の支出 欄には,支出項目と項目ことの金額等か記載されるにととまり,支出の明細か明らか にされておらす,また,領収書等も公開されていないことからすると,返還を求めら れている会派側において,何らの立証の負担も負わないとするのは相当てないから, 政務調査費の返還を請求する側において,相応の根拠をもって当該会派の提出した収 支報告書の記載内容か正確てないことを主張,立証した場合には,返還を求められて いる会派側において,政務調査活動の秘匿性の要請に抵触しない限度において,政務 調査費の支出状況を明らかにすへきてあり,これすらも明らかにてきない場合には, 当該会派は,本件規則6条から当然に導かれる政務調査費の支出状況についての説明 責任を果たしていないものといわさるを得ない。そして,前示の政務調査費に関する 透明性の要請に照らせは,本件条例か,そのような最低限度の基本的な説明責任すら 果たされていない政務調査費についてもなお,「市政に関する調査研究に資するため 必要な経費」に充てられたものとして,その返還を要しないものとしているとは解さ れないから,当該会派は,当該政務調査費を不当利得として返還すへき義務を負うと 解するのか相当てある。また,当該会派において政務調査費の支出状況を明らかにした場合てあっても,返 還を請求する側において,具体的な政務調査費の支出か,政務調査費の本来の使途及 ひ目的に違反した不適切な支出てあることを推認させる外形的事実を主張立証したと きには,返還を求められている会派側において,当該政務調査費の支出か政務調査費 の本来の使途及ひ目的にかなうものてあることを立証しない限り,当該政務調査費の 支出は,「市政に関する調査研究に資するため必要な経費」として支出したものてな いとの立証かあったものと扱うのか相当てある。2 会派Aにおける政務調査費の処理状況等について
前記前提事実並ひに証拠(甲1,2,丙10の2,4,丙27〔枝番を含む。〕, 28,29,証人E)及ひ弁論の全趣旨によれは,平成16年度における会派Aの政 務調査費に係る処理状況等は次のとおりてあったと認められる。(1) 会派Aの財務委員長Eは,平成16年度において,本件規則6条1項所定の政 務調査費に関する経理責任者を務めていた。E委員長は,毎月,名古屋市から交付を 受ける55万円に所属議員数を乗した金額の政務調査費のうち,50万円に所属議員 数を乗した金員を個人経費分として現金て保管し,5万円に所属議員数を乗した金員 を共通経費分として預金口座に入金していた。(2) E委員長は,会派Aの所属議員から,必要事項を記入した「政務調査費報告 書」(丙27,以下「月次報告書」という。)と題する書面及ひこれに対応する領収 書(原本)の提出を受け,これらを基に,支出か政務調査費の使途基準に適合するか 否かを検討し,同基準に適合すると判断したものについて,議員1人当たり月額50 万円を上限として,所属議員に個人経費分の政務調査費を支給していた。E委員長は, 月次報告書の細目ことの金額をハソコンに入力して集計していたか,本件規則6条2 項により調製・保管か義務付けられている会計帳簿を調製していなかった。また,E 委員長は,所属議員から提出された領収書を項目ことにまとめて保管していたか,領 収書かとの議員から提出されたものてあるのか特定することはてきない。(3) 月次報告書は,「項目」欄に本件規程別表に定められた項目を列記し,「細 目」欄に本件規程別表の「内容」欄に例示された費目等を列記した上,各細目に対応 する領収書の枚数及ひ金額の記載欄と,各項目に対応する「主な調査内容(行先・会 場等)」の記載欄とを設けた用紙に,所属議員か必要事項を記入したものてある。(4) 会派Aか実際に共通経費として金銭を支出した場合には,これを上記預金口座 から支払い,会計帳簿等に記載した上て,E委員長かその領収書を保管した。(5) E委員長は,月次報告書を基にハソコンに入力した上記テータを集計し,これ に,会派Aか実際に共通経費として支出した金額を合算して,平成16年度の政務調 査費として交付を受けた総額を1億5345万円(このうち,個人経費分として現金 て保管したのか1億3950万円,共通経費として預金口座に入金したのか1395 万円てある。),支出総額を1億4738万4320円,残余金を606万5717 円(なお,37円は預金利息)と算出した。会派Aは,これに基ついて,別紙2のとおりの本件報告書を作成し,平成17年4月28日,これを名古屋市議会議長に提出 するとともに,同年5月26日,名古屋市に対し,上記残余金を返還した。上記残余 金のうち,100万円はR議員の個人経費分てあり,50万円はP議員の個人経費分 てある。(6) 原告らは,平成18年9月8日,会派Aは,平成16年度に交付された政務調 査費のうち450万円を当時病気療養中て政務調査活動かてきる状態になかったD議 員に支給し,本件報告書に,上記450万円を含めて政務調査活動に支出したとの事 実に反する記載をしたなとと主張して,本件監査請求を行ったところ,会派Aは,本 件報告書にはD議員に対する450万円の支出か含まれていたことを認め,同年10 月19日,本件報告書の訂正願いを市議会議長に提出し,名古屋市長からの返還命令 を受けて450万円を名古屋市に返還した。上記訂正後の収支報告書(以下「訂正後の報告書」という。)においては,調査費 として支出した金額か1696万7281円,支出の合計金額か1億4288万43 20円と,それそれ本件報告書記載の金額から450万円を減した金額か記載され, 他の支出項目については金額の訂正はなかった。3 被告補助参加人会派らか個別の議員ことの支出状況につき何ら立証をしていな い政務調査費について(1) 前記2の認定事実によれは,本件政務調査費(1億3950万円)のうち,会 派Aか名古屋市に返還したのは合計600万円てあるから,その差額1億3350万 円の中に,「市政に関する調査研究に資するため必要な経費」として支出したものて ないとして,被告補助参加人会派Z1か返還義務を負うものか含まれているか否かか 問題となる。そこて,ます,本件報告書の記載内容の正確性について見ると,前記前提事実(3) ウのとおり,本件監査請求に対する監査結果の通知において,会派Aにおける政務調 査費に係る会計処理の問題点か指摘されている上,前記2(6)のとおり,会派Aは, 訂正後の報告書において,単純に調査費及ひ支出総額を450万円減額したのみてあるか,政務調査活動は通常多岐にわたって行われるところ,1人D議員の政務調査費 のみか,調査費名目てしか支出されていないとすることは不自然てあるし,平成16 年度の会派Aの経理責任者てあったE委員長は,1政務調査費の個人経費分について は,各議員から提出される月次報告書の数字を細目ことに合算して本件報告書を作成 した,2D議員は月次報告書を提出していない,と証言する一方て,D議員に係る4 50万円の返還に伴って本件報告書の内容を訂正したと証言しており,その証言には 矛盾かある。こうした点に鑑みると,本件報告書の記載内容か正確てないと考えるこ とには,相応の根拠かあるものと認められる。したかって,会派Aの権利義務を承継した被告補助参加人会派Z1は,前記1(2) て判示したとおり,政務調査活動の秘匿性の要請に反しない限度て,本件政務調査費 のうち既に返還した分を除く1億3350万円について,その支出状況を明らかにす へき義務を負うものてある。(2) 本件政務調査費の支出状況については,会派Aに所属していた議員のうち, 被告補助参加人Z2,被告補助参加人Z3,被告補助参加人Z4を含む合計16名の 議員か,政務調査費の支出の概要を記載した陳述書を提出した(これらの陳述書て述 へられた各議員の支出項目ことの合計金額は,別紙3のとおりてある。)。これらの 陳述書によれは,この16名の議員か受領した平成16年度の政務調査費は合計88 50万円てあるから(各議員の受領額は,P議員か200万円,Q議員か250万円, その余の14名の議員か各自600万円てある。),被告補助参加人会派Z1は,残 りの4500万円の政務調査費については,個別の議員ことの支出状況について何ら の立証をしていない。この点に関し,被告補助参加人会派Z1は,陳述書か提出されていないのは,当該 議員の死亡,離団ないし分裂によるものてあると主張する。しかし,名古屋市に対し て政務調査費の収支の状況を報告すへき義務を負う者は,個々の議員てはなく,政務 調査費の交付を受けた会派てあることは本件条例5条に照らし明らかてある。そして, 本件規則6条は,会派に対して,前記のとおり,その報告を正確に行うことかてきるように,経理責任者を定め,その者に会計帳簿を調製し領収書等の証拠書類と併せて 保管することを義務付けている。したかって,当該会派は,これらの手続を適切に履 践しておれは,たとえ政務調査費を実際に支出した議員の協力を得ることかてきなく とも,政務調査費の支出状況については説明てきるはすてあり,被告補助参加人会派 Z1か主張する事情は,4500万円の個人経費分の政務調査費につき,個別の議員 ことの支出状況を明らかにてきないことの正当な理由となるものてはない。(3) そうすると,被告補助参加人会派Z1は,本件政務調査費のうち4500万円 について,本件規則6条から当然に導かれる政務調査費の支出状況についての最低限 度の基本的な説明責任すら果たしていないものといわさるを得ないから,この450 0万円につき不当利得として名古屋市に返還すへき義務を負うものというへきてある。4 参加人会派らか個別の議員ことの支出状況につき陳述書を提出した政務調査費 について(1) 会派Aに所属していた議員のうち,被告補助参加人Z2,被告補助参加人Z3, 被告補助参加人Z4を含む合計16名の議員は,政務調査費の支出の概要を記載した 陳述書を提出し,自らか受領した政務調査費の支出状況について一応の説明をしてい る。この点,原告らは,陳述書による説明は何らの裏付けを伴っておらす,陳述書の 記載のみては政務調査費の支出の正当性の証明として不十分てある旨主張する。しか し,前記1(2)て判示したとおり,本件条例7条に基つき政務調査費の返還を求める 権利の性質は,不当利得返還請求権てあり,その発生原因事実てある「法律上の原因 かないこと」,本件条例7条に即していえは,具体的な政務調査費の支出か「市政に 関する調査研究に資するため必要な経費」として支出されたものてはないことの主張 立証責任は,これを請求する側てある原告らにおいて負担すへきものてあるから,原 告らは,被告補助参加人らの一応の説明を前提として,又は,これを前提とせすに, 具体的な政務調査費の支出か,政務調査費の本来の使途及ひ目的に違反した不適切な 支出てあることを推認させる外形的事実を主張立証することか必要てある。(2) ところて,前記1(1)のとおり,議員の職責は広範なものてあり,これに応し 19てその政務調査活動も広範にわたるものてあるから,その外縁を明確に定義すること は困難てある。また,議員の特定の活動か,政務調査活動と政治活動の性質を併せ持 つ場合かあることは否定てきす,この場合に,その活動のために政務調査費を支出す ることは,その活動の中心的な目的か明白な政治活動(専ら選挙て当選を目指すこと を目的とした活動)てあるといえるときは格別,そうてないときには,その支出か本 件規程に定める政務調査費の使途基準に合致している場合には,当該支出をもって違 法な支出ということはてきない。また,政務調査活動は,委員会活動と重複する場合もあるところ,名古屋市議会の 議員の議員報酬及ひ費用弁償等に関する条例等により費用か支弁される場合には,当 該経費のために政務調査費を支出することは許されないことは当然てあるか,費用支 弁かされない経費については,委員会活動てあっても政務調査費を支出することは, 本件規程に定める使途基準に合致する限りにおいて差し支えないというへきてある。原告らは,政務調査費の支出か正当化されるためには,当該政務調査活動か会派の ためのものてあることか必要てあると主張する。しかし,本件条例において,政務調 査費は会派に交付するとしているか,本件条例1条において「議員の調査研究に資す るため必要な経費の一部」として政務調査費を交付する旨か規定されており,支出の 対象となる政務調査活動を会派としての政務調査活動に制限しておらす,また,政務 調査活動自体,必すしも会派としての統制の下て行う必要かあるものてはなく,議員 個々人の判断て行われても不都合のない性質のものてあると認められる上,本件条例 においてはいわゆる1人会派に対しても政務調査費を交付することを定めていること に照らせは,政務調査費の支出の対象となる政務調査活動を,会派か行うものに限定 する必要はないというへきてある。(3) 以上の観点から,原告らか個別的に問題点を指摘する本件における政務調査費 の支出を中心に,8850万円の政務調査費の支出の当否について検討する。ア 飲食費について 飲食は,通常,個人の費用により日常生活において必す行うものてあるから,たとえ政務調査のための会合を昼食時又は夕食時に行う必要かあるとしても,例えは議員 のみの会合てある場合には,その際の飲食費は各参加者か負担すれはよいたけの話て あり,昼食時又は夕食時の会合てあるという理由たけては当該飲食費を政務調査費の 中から支出することか正当化されるものてはない。したかって,政務調査費から飲食 費を支出することか正当化されるためには,当該飲食を伴う会合か,食事を伴う時間 に開催する必要かあり,しかも,例えは外部の人間を交えての会合をする場合なと, 会合参加者全体として一緒に飲食をする必要性かあり,かつ,その飲食内容か会合の 性質なとに照らして社会通念上相当な範囲内てある場合てあることか必要と解すへき てある。もっとも,食事の時間帯以外に開催する政務調査のための会合において,い わゆるのとを潤す程度の茶菓を政務調査費から支出することは,それか社会通念上相 当な範囲内てある限り,これを違法とする理由はないというへきてある。したかって,政務調査費から支出された飲食費か「市政に関する調査研究に資する ため必要な経費」てないと認められるためには,原告らにおいて,具体的な飲食費に 係る支出か外形的に見て,社会通念から逸脱したと認められることを主張立証するこ とか必要になるところ,原告らは,そもそも,違法と主張する飲食費の支出を具体的 に主張していない。したかって,この点に関する原告らの主張は,その余の点を検討 するまてもなく,理由かない。イ 広報費について
(ア) 原告らは,そもそも政務調査費には広報費か含まれるへきてはなく,これを認 めた本件規程は地方自治法100条13項に違反すると主張する。しかしなから,議員は,選挙により選挙民から選はれた立場にあるから,議員の政 務調査活動において,選挙民の意識や意向に注意を払うことは必要てあり,これをて きるたけ酌み取って議員としての活動に反映することか必要てあると認められる。議 員の広報活動は,多くの場合,それまての自らの活動内容を宣伝し,社会情勢等の現 時の問題点等を指摘し,それに対する対応や施策についての自らの見解を選挙民に示 すことなとにより,それらに対する選挙民の反応を見て,これを今後の議員としての活動に反映させるとともに,選挙民の自己に対する支持や理解を取り付ける目的てな されるものてある。したかって,議員の行う広報活動には,政治活動の要素かあるこ とは否定てきないか,同時に選挙民に情報提供し,その反応を見るという施策決定の ための重要な役割をも有していると認められるから,このための費用を政務調査活動 から支出することは,一般的に見て「調査研究に資するため必要な経費」の支出ては ないということはてきない。よって,広報費を政務調査費から充てることは,地方自 治法100条13項に違反するものとは認められない。(イ) 次に,原告らは,S党の機関紙てある「T」の発行は政治活動てあり,その費 用を政務調査費から支出することはてきないと主張する。証拠(丙2の1ないし10,丙18の4,丁イ2,3,丁ロ2)及ひ弁論の全趣旨 によれは,会派A所属の各議員は,その選挙区において,当該選挙区の選挙民を購読 者とするS党の機関紙てある「T」の各区版を発行していること,その紙面には,各 議員かそれそれ議会等における活動内容や取り組んている施策等についての記事か多 く掲載されていること,その紙面には,各議員の後援会活動に関連する記事も掲載さ れているか,それらの記事は紙面の主要な部分を占めておらす,証拠として提出され ているもの(両面印刷の2頁)てみると,多くとも1頁の半分を超えるものてはない ことの各事実か認められる。以上によれは,「T」は,各議員か自己の議員としての実績を宣伝する内容か含ま れていることは否定てきないものの,各議員か推進する施策等を記事として掲載する ことにより,それらに対する選挙民の反応を見て,これを今後の議員としての活動に 反映させる効果を有するものと認められる。確かに後援会活動なと,政務調査活動と は関連しない記事か掲載されているものかあるか,その占める割合は一部てあり,全 体としてみれは,「T」は,政務調査活動の一環としての広報活動のために発行した ものてあると認められる。したかって,各議員らか「T」の発行費用等に政務調査費 を充てることは,使途基準に違反するとは認められない。ウ 事務所借り上け費について
証拠(丁イ1,丁ハ1)によれは,被告補助参加人Z2は,政務調査費から毎月5 万5000円を事務所借り上け費として支出しており,被告補助参加人Z4は,政務 調査費から毎月4万円を事務所借り上け費として支出していたことか認められる。ところて,本件規程の定める使途基準(別紙1)には,政務調査費から支出するこ とを許容する経費の項目として,事務費を掲けており,その内容については「調査研 究活動に係る事務遂行に必要な経費」とし,その例として,「事務用品・備品購入費, 通信費等」を挙けている。政務調査活動をするために,事務所のような一定の場所を 必要とする場合かあることは明らかてあり,したかって,本件規程を制定する際にも, 事務所の借り上け費を例示することも十分考えられたと思われるか,本件規程てはあ えて事務所の借り上け費を例示として挙けていないことに照らせは,本件規程におい ては,事務所の借り上け費は,基本的に政務調査費の支出対象としては想定していな いものと解するのか相当てある。もっとも,本件規程の定める使途基準においては,事務費の内容を「調査研究活動 に係る事務遂行に必要な経費」とし,「事務用品・備品購入費,通信費等」はその例 として挙けられているものてあるから,調査研究活動のために特に事務所を借り上け る必要かあったような場合には,その事務所の借り上け費用をもって,本件規程の定 める使途基準にいう事務費に当たると解する余地はあるか,被告補助参加人Z2及ひ 被告補助参加人Z4は,その陳述書(丁イ1,丁ハ1)において,上記のような特別 の事情につき何ら述へていないから,同人らか支出した事務所借り上け費は,本件規 程の定める使途基準にいう事務費に当たらないものと認めるのか相当てある。したかって,被告補助参加人会派Z1は,上記各議員の事務所の借り上け費相当額 の合計114万円については,「市政に関する調査研究に資するため必要な経費」と して支出したものには当たらないものとして,同金額を名古屋市に返還する義務を負 うものというへきてある。エ その他の経費について 前示のとおり,政務調査費を不当利得として返還することを求めるためには,その返還を請求する側において,具体的な政務調査費の支出か本来の政務調査費の使途及 ひ目的に違反した不適切な支出てあることを推認させる外形的事実を主張立証する必 要かあるところ,その他の経費について,原告らの主張する内容は,議員の陳述書に よる説明か政務調査費の支出を正当化するものとしては不十分てあるというものにと とまり,個々の具体的な支出を捉えてその支出か,政務調査費の本来の使途及ひ目的 に違反した不適切な支出てあることを推認させる外形的事実を主張をしているとは認 められす,主張自体不十分てある。また,その提出した証拠を見ても,上記のような 外形的事実か立証されたものとは認められない。したかって,その他の経費として支出された政務調査費については,被告補助参加 人会派Z1に返還義務かあるということはてきない。(4) そうすると,陳述書を提出した議員に交付された8850万円の政務調査費に ついては,114万円の限度て「市政に関する調査研究に資するため必要な経費」に 支出したものには当たらないと認められるから,被告補助参加人会派Z1は,名古屋 市に対して,同金額を不当利得として返還すへき義務を負うことになる。5 遅延損害金について
以上判示したとおり,被告補助参加人会派Z1は,名古屋市に対して,合計461 4万円の不当利得返還義務を負うことになるところ,原告らは,名古屋市に本件政務 調査費に関する不当利得返還請求権か発生したことか明白となった平成17年6月1 日から支払済みまて年5分の割合による遅延損害金を付して請求することを求めてい る。しかしなから,不当利得返還義務は期限の定めのない債務てあるから,遅延損害金 か発生するのは,その履行を請求され当該債務か付遅滞となった時からてある。本件 においては,名古屋市か会派Aないし被告補助参加人会派Z1に対し上記不当利得返 還義務の履行を請求したという事実についての主張立証かないから,被告補助参加人 会派Z1に遅延損害金の支払義務かあると認めることはてきない。なお,被告は,地 方自治法242条の2第7項に基つき,会派Aに対し本件訴訟の告知をしているところ,同項の訴訟告知は,同条8項により,当該訴訟に係る請求権の時効の中断に関し ては,民法147条1号の請求とみなされるか,上記の訴訟告知によって,履行の請 求かあったものとして,期限の定めのない債務につき付遅滞の効果か発生すると解す ることはてきない。第4 結論
以上によれは,原告らの請求は,被告に対し,被告補助参加人会派Z1に対して, 4614万円を支払うよう請求することを求める限度て理由かあるのて,その限度て これを認容することとし,主文のとおり判決する。名古屋地方裁判所民事第9部
裁判長裁判官 増 田 稔
裁判官 鳥居俊一
裁判官 杉浦一輝
(別紙1)
本件規程2条に規定する使途基準を定める別表
項目
内容
調査費
本市の事務及ひ地方行財政に関する調査研究活動並ひに調査委託に 要する経費(調査委託費,交通費,宿泊費等)
研修費
調査研究活動のために行う研修会・講演会の実施に必要な経費並ひ に他団体か開催する研修会・講演会等への所属議員及ひ会派の雇用 する職員の参加に要する経費 (会場費・機材借上け費,講師謝金,会費,交通費,宿泊費等)会議費
調査研究活動のために行う各種会議に要する経費 (会場費・機材借上け費,資料印刷費等)資料作成費
調査研究活動のために必要な資料の作成に要する経費 (印刷・製本代,原稿料等)資料購入費
調査研究活動のために必要な図書・資料等の購入に要する経費 (書籍購入代,新聞雑誌購読料等)広報費
調査研究活動,議会活動及ひ市政に関する政策等の広報活動に要す る経費(広報紙・報告書等印刷費,会場費,送料,交通費等)
事務費
調査研究活動に係る事務遂行に必要な経費 (事務用品・備品購入費,通信費等)人件費
調査研究活動を補助する職員(臨時職員を含む。)を雇用する経費 (給料,手当,社会保険料,賃金等)注 ( )内は例示
(別紙2) 本件報告書の内訳 (なお,括弧内は,備考欄の記載てある。)1 収入
2 支出
政務調査費 利息 合 計 調 査 費
研 修 費
会 議 費
資料作成費
資料購入費
広 報 費
事 務 費
人 件 費
1億5345万円
37円
1億5345万0037円 2146万7281円
(政務調査のための旅費等) 2093万6674円
(研修に伴う諸経費) 1088万2326円
(会議,打合せのための費用) 751万7383円
(機関紙「T」の作成費及ひ諸資料作成費) 160万4129円(図書,新聞等の購入費) 1224万8617円
(通信,広報費等) 1898万4655円
(事務用品等) 5374万3255円
(調査研究を補助するための雇用に要する経費等) 1億4738万4320円606万5717円
3 残余


(別紙3)
各議員の政務調査費の支出状況 以下に記載した金額は,各議員か作成した陳述書て述へた支出項目ことの合計金額(会派に対して請求した金額)てあり,括弧内に記載した事項は,各議員かその陳述 書の政務調査費の使途の項て主な使途として述へたものてある。1 E議員(丙10の1)
調 査 費
研 修 費
会 議 費
人 件 費
資料作成費
事務所運営費 185万5327円(コヒー代,電話代,事務用品購入等の一部) 合 計 623万5385円2 F議員(丙11の1)
調 査 費 研 修 費 会 議 費 資料購入費 広 報 費 事 務 費 人 件 費53万1747円(カソリン,タクシー代等) 198万0336円(研修会の開催経費の一部等) 82万7642円(会議,集会の開催費用等)4万7194円 64万4404円
159万4449円(備品購入費,電話代,郵送費等) 61万9000円624万4772円


3 G議員(丙12の1)
128万1891円(タクシー,有料道路,カソリン,視察費用) 19万3864円 72万1402円(懇談会,意見交換会の開催費用)210万5970円(資料整理,調査委託,会議準備等) 7万6931円調査に伴う旅費・資料収集 128万円 各種,各地の会合・懇談会・研修会 65万円 市政報告の集会や会議の開催 138万円 資料作成や資料の購入 13万円 Tの発行・輸送・配布 120万円 事務所費 72万円 人件費 67万円合 計
4 H議員(丙13の1)
603万8542円
調査費 研修費 会議費 資料作成費 資料購入費 広 報 費 事 務 費 人 件 費5万0024円 16万5000円 31万円 19万1835円 17万0484円9万4108円 187万9098円 330万4000円 616万4549円合

5 I議員(丙14の1)
調査費 研 修 費 会議費 資料購入費 事務費
約99万円 約275万円 約18万円 2万円 約60万円
人 件 費 約147万円 合 計 約601万円
6 J議員(丙15の1)
調 査費 研 修費 会 議費 資料作成費 事 務 費 人 件 費21万6197円(交通費,宿泊費) 59万5403円(会場費,会費) 11万6928円(会場費,資料印刷費)278万6467円(印刷製本費) 12万9000円(事務用品購入,報告書作成)267万1000円(事務職員給料,アルハイト料) 651万4995円合

7 K議員(丙16の1)
調 査費 研 修費 会 議費 資料作成費 広報費 人件費 合計8万7884円 47万4100円(研修参加費等) 60万3803円153万6800円(集会資料や,Tの作成費等) 3万7800円(Tの郵送料等)336万円 610万0387円
8 L議員(丙17の1)
調査費 会議費 資料作成費 広報費
209万3830円(調査委託,資料収集) 80万1545円(市政報告会会場費,開催経費等) 29万0380円(報告書の印刷なと) 23万1290円(交通費,広報誌の印刷)事 務 費 人 件 費
65万4027円(事務用品,通信費) 230万1300円
637万2372円


9 M議員(丙18の1)
調 査 費 研 修 費 会 議 費 資料作成費 広報費 人件費 合 計146万5420円(調査委託費,イキリス視察交通費) 91万0020円(研究会の会場費,市政報告会の会場費) 60万8760円(市政報告会の開催経費等)7万3500円 93万3498円(T作成費,送料)
240万円 639万1198円
10 N議員(丙19の1)
研 修費 資料作成費 資料購入費 広報費 事務費 人件費 合 計100万8650円 24万3750円 5万8277円 50万4008円 405万6516円20万円 607万1201円
11 O議員(丙20の1)
調 査 費 会 議 費 広 報 費
18万4470円 9万7000円 1万5000円
事 務 費 人 件 費
37万5347円 542万9370円 610万1187円


12 P議員(丙21の1)(たたし,平成16年8月に議員を辞職)調 査費
研 修費
広 報費
事 務費
人件費 75万円
合 計
206万1541円
調 査費
研 修費
会 議費
資料作成費 34万4024円
広 報 費 事 務 費 人 件 費
11万5810円 88万4428円 36万8600円

計 275万7406円
14 Z2議員(丁イ1)
調 査 研 修 会 議
費 213万4823円(交通費なと) 費 5万1130円
費 43万0521円
27万3646円 29万8179円 22万2310円 51万7406円13 Q議員(丙22の1)(平成16年11月に就任)
23万1262円 37万0197円 44万3085円
資料購入費 広 報 費 事 務 費 人 件 費
7万4929円 46万5410円(Tの発送料なと)
111万5765円(事務所借り上け費用なと) 190万1215円617万3793円


15 Z3議員(丁ロ1) 外部調査委託費 外部調査結果の広報費人件費
視察費,意見交換会開催費 市政報告作成費,アンケート作成費 ホームヘーシ作成費合 計
16 Z4議員(丁ハ1)
20万円
27万4000円(たたし,一部) 240万円
25万5860円(たたし,一部) 292万5000円
21万円 626万4860円
調 査費 会 議費 資料作成費 資料購入費 事務費 人件費 合計43万9050円 12万7050円 39万9385円 13万7086円131万7820円(事務所借り上け費48万円を含む。) 385万円627万0391円
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