主文
 1 原告らの請求をいすれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
 事実及ひ理由
第1 請求の趣旨
処分行政庁か平成21年3月24日付けて原告らに対してした供託金還付請求却下 処分を取り消す。第2 事案の概要
1 本件は,原告らの被相続人の被相続人か所有していた株式に関し発生した配当 金等につき債権者不確知を理由に供託かされたのに対し,原告らか,この配当金等は 分割債権てあり,原告らは自己の相続分に応してその権利を確定的に取得していると して,その相続分に応して供託金の払渡請求(還付請求)をしたところ,処分行政庁 からこれを却下する処分を受けたため,その取消しを求める事案てある。2 前提事実(以下の事実は,当事者間に争いのない事実及ひ後掲の証拠から容易 に認定てきる事実てある。)(1) 原告らは,いすれも亡A(平成▲年▲月▲日死亡。以下「亡A」という。)の 相続人てある。亡Aは,亡B(昭和▲年▲月▲日死亡。以下「亡B」という。)の相 続人てあり,亡Bの遺産につき9分の2の相続分を有していた。よって,亡Aの妻て ある原告Cは,亡Bの遺産につき9分の1の相続分を有し,亡Aの子てある原告D及 ひ原告Eは,亡Bの遺産につき各18分の1の相続分を有する。原告らのほか,亡Bの遺産につき相続分を有し,現在生存する者は,F(相続分9 分の2),G(相続分9分の2),H(相続分9分の1)及ひI(相続分9分の2) てある。(2) 亡Bの遺産として株式会社J銀行の株式(亡Bの相続開始後,企業再編に伴い 「株式会社K銀行」,「株式会社M」,「株式会社L」の株式となった。以下,これ らの株式を,時期を問わす「J銀行株式」ということかある。)3万株かあったか,その後,この株式に関して別紙記載のとおり有償増資及ひ新株の無償交付か行われ, 平成2年5月30日に一部の株式につきFに名義書換か行われた結果,亡B名義の株 式数は5万0214株となった(以下,企業再編の前後を問わす,この株式を「本件 株式」という。甲25ないし27,29,弁論の全趣旨)。(3) Gは,亡Bの遺産に関し,津家庭裁判所伊勢支部に遺産分割の調停を申し立て たところ,同事件は審判移行し,同支部の審判(津家庭裁判所伊勢支部平成▲年 (家)第▲号)に対し抗告かされた。抗告審てある名古屋高等裁判所は,平成17年 8月31日,上記審判を取り消し,亡Bか死亡当時所有していたJ銀行株式3万株及 ひFか名義書換により取得したJ銀行株式1万0125株をFか取得するものとする ことなとを定める定(平成▲年(ラ)第▲号。以下,「名高裁定」という。)を した。名高裁定は,その余の本件株式1万0089株については,遺産から生した 法定果実てあり,当事者間にこの株式を遺産分割の対象とする旨の合意かないとし て,遺産分割の対象とせす,その帰属について判断を示さなかった。また,名高裁 定は,本件株式等に対する後記(4)の配当金等については,その存在を含め,帰属に 関して何ら言及していない。名高裁定は,許可抗告不許可及ひ特別抗告棄却によ り,平成18年1月末ころ確定した(甲14ないし16,29)。(4) Lは,平成16年6月から平成18年6月の定時株主総会議(3回)による 配当金として36万6487円(甲17)を,Mは,平成13年6月及ひ平成14年 6月の定時株主総会議による配当金28万1176円並ひにJ銀行とN間の株式移 転に伴う移転交付金14万0600円及ひこの株式移転に伴い発生した端数株式処分 代金3416円の合計42万5192円(甲18)を,K銀行は,昭和52年9月3 0日から平成12年3月31日まての間の中間配当金及ひ期末配当金の合計533万 1277円及ひ昭和61年5月から平成2年5月まての増資(合計4回)に伴う端数 株式処分代金合計4147円の合計533万5424円(甲19)を,いすれも,当 該配当金等の分割につき,亡Bの相続人間て係争中(未分割の状況)てあり,また,異なる相続人から異なる主張に基つく支払要求を受けていて,真の債権者を確知する 2ことかてきないとして,平成18年12月8日,津地方法務局伊勢支局に供託した (以下,これらの供託を,順次,「本件供託1」,「本件供託2」,「本件供託3」 といい,総称して「本件供託」といい,本件供託により供託された配当金等を総称し て「本件供託金」という。また,本件供託を行った供託者らを総称して「本件供託者 ら」という。)。(5) 原告らは,連名て,本件供託1については6万5273円,本件供託2につい ては9万4487円,本件供託3については118万5649円の還付を求める供託 金払渡請求書を,通知書(甲20),戸籍謄本(甲1ないし5,7,9,11,30 ないし34),定書(甲14,名高裁定),抗告不許可定書(甲15),抗告 棄却調書(甲16),委任状及ひ印鑑登録証書を添付して津地方法務局伊勢支局に 提出した(以下,この還付請求を「本件還付請求」という。)。原告らは,その後, 津地方法務局伊勢支局に,名高裁定の原審の審判書(甲29)及ひ株式配当金支払 細書等(甲23ないし27)を提出した(弁論の全趣旨。以下,本件還付請求に際 して原告らか処分行政庁に提出した書類を総称して「本件添付書類」という。)。(6) 処分行政庁は,平成21年3月24日,本件還付請求には供託規則24条1項 1号所定の還付を受ける権利を有することを証する書面の添付かないとして,本件還 付請求を却下する旨の定(以下「本件処分」という。)をした。3 関係法令の定め
供託法8条1項 供託物ノ還付ヲ請求スル者ハ法務大臣ノ定ムル所ニ依リ其権利ヲ証スルコトヲ要ス (2項は省略)
供託規則24条1項 供託物の還付を受けようとする者は,供託物払渡請求書に次 の各号に掲ける書類を添付しなけれはならない。1号 還付を受ける権利を有することを証する書面。たたし,副本ファイルの記録により,還付を受ける権利を有することからかてある場 合を除く。2号 反対給付をしなけれはならないときは,供託法第10条の規定に よる証書類(2項は省略)
4 争点及ひ当事者の主張 本件の争点は,本件処分の適否てあり,具体的には,本件還付請求か供託規則24条1項1号にいう「還付を受ける権利を有することを証する書面」を添付してされた と認められるか否かてある。この点に関する当事者の主張は,次のとおりてある。(被告の主張)
(1) 供託官の審査権限について 供託物払渡請求に対する供託官の審査権限(審査方法)は,法定の申請書及ひ添付書類のみに基ついてする書面審査(形式的審査)に限定される。これに対し,供託官 の審査の対象及ひ範囲は,供託の手続的要件のみならす,提出された法定の書面の記 載に基ついて判断し得る限りにおいて,当該請求か実体上の要件を具備した有効なも のてあるか否かにまて及ふものてある。(2) 債権者不確知の場合における供託金払渡請求
本件供託は,法律上の債権者不確知すなわち当事者を巡る債権の帰属等の法律関係 の判断か容易てないことを理由に供託されたものてあるところ,このような場合の供 託金還付請求には,被供託者全員による請求による場合のほか,被供託者の一部から の請求のときは,その者か供託物に対する還付請求権を有することの確定判,和解 調書,請求者以外の被供託者の承諾書等を添付して証することか必要てある(供託 規則24条)。(3) 本件について
ア 新株の無償交付は,株主からの払込みを伴わす,会社の他の資産を振り替えて 新株を発行することをいい,株式分割の性質を有するものてあるのて,無償交付され た新株は遺産てあり,これに対する配当金は,遺産てある株式の法定果実てある。しかし,有償増資は,株式を引き受けようとする者か,その申込みをし,それに対して 4株式会社か新株の割り当てを行うものてあり,遺産てあるとも,その法定果実とも認 められないから,有償増資により引き受けた新株に対する配当金は,遺産てある株式 の法定果実には当たらない。また,株式移転交付金及ひ端数株式処分代金は,いすれ も株主の有していた従前の株式か金銭に形を変えたものてあり,遺産そのものてあ る。イ 相続開始から遺産分割まてに遺産から生する果実は,遺産とは別個の財産てあ り,共同相続人の共有財産と解され,原則として共有者(共同相続人)か相続分に応 して持分を取得することになる。しかし,共同相続人の合意により果実を遺産分割の 対象に組み入れることを排除するものてはなく,また,共同相続人の合意により不可 分債権とすることも可能てあるから,果実の分配についても,共同相続人間の合意か あれは法定相続分と異なった割合によることも可能てある。したかって,原告らか本 件供託金(配当金等)を法定相続分に従って確定的に取得するためには,本件供託金 の分割について,原告らを含む相続人間て何らかの合意もされていないことか必要て ある。本件供託の供託書の供託の原因たる事実欄に「当該配当金等についてはその分割に つきG他相続人間て係争中てあり,また当社は異なる相続人から異なる主張に基つく 支払要求を受けている。」と記載されていることに照らすと,遺産分割審判て言及さ れなかった本件供託金に関しては,その分割を巡り,相続人間に何らかの争いかある ものと認められるから,原告らか法定相続分に従って本件供託金を取得したことにつ いては疑義かあり,債権者不確知といわさるを得ない。したかって,本件還付請求か 認められるためには,本件供託金の帰属についての争いか解消され,原告らか本件供 託金について相続分に従って取得したことを添付書面においてらかにする必要かあ る。しかるに,本件添付書類を見ても,本件供託金(配当金等)の帰属については何 ら言及されておらす,配当金等の帰属について原告らの権利を確定させるものてはな い。したかって,本件供託金については,依然として債権者不確知のままてあるといわさるを得ないから,供託官はその払渡請求に応しることはてきない。
 5ウ よって,本件還付請求は,供託規則24条1項1号による還付を受ける権利を 有することを証する書面か添付されていないことになるから,これを却下した本件処 分は適法てある。(原告らの主張)
(1) 本件供託金の性質について
ア 亡Bか死亡した時に存在していた株式に対する配当金について この配当金は,遺産てある本件株式の法定果実てあり,相続開始後に発生した果実は各相続人かその相続分に応して分割債権として確定的に取得し,後にされた遺産分 割協議の影響を受けないものてある。したかって,この配当金は,亡Bの各相続人 か,その相続分に応して確定的に取得したものてある。イ 相続開始後に増加した株式に対する配当金について
(ア) 新株を元の株式の法定果実と解する場合
1 新株の無償交付の場合 新株の無償交付は,株式会社か新株引受権を株主に割り当て,当該株主かその新株引受権を行使することにより無条件に新株か割り当てられるものてある。したかっ て,新株の無償交付により増加した株式は,元の株式の果実てある性質を有するもの てあり,当該新株は,全相続人の相続分に応した準共有状態となる。したかって,準共有状態にある無償交付された新株に対する配当金は,当該新株の 果実てあり,相続分に応して各相続人か取得するものてある。2 有償増資の場合
有償増資てあっても株主に新株引受権か割り当てられる場合には,株主たる地位を 基準に新株引受権か割り当てられており,増加した株式は,元の株式の果実たる性質 を有する。したかって,新株は元の株式の果実と解される以上,上記1と同様,新株 から生した配当金は,当該新株の果実てあり,相続分に応して各相続人か取得するも のてある。(イ) 新株を元の株式の法定果実と解さない場合 6
元の株式は,亡Bの死亡により遺産分割まての間各相続人間において準共有の状態 にあったところ,相続人の1人か行った新株引受権の行使は,共有株式の変更又は処 分行為といえる。また,有償増資の払込みも,共有株式の変更又は処分行為に当た る。そして,共有物の変更・処分については,共有者全員の同意か必要てある(民法 251条)ところ,本件においては,共同相続人の全員か新株を遺産の対象とするこ とに同意しており,共有者全員の同意は認められる。よって,新株の無償交付により取得した株式に対する配当金は,無償交付された新 株の果実てあり,可分債権として民法427条により共有持分に応して各共有者か確 定的に取得する。ウ 株式移転交付金について
株式移転交付金は,完全子会社となる会社の株主に対して,設立する完全親会社の 株式を割り当てる際の比率の調整のために支払う金員てあり,完全子会社となる会社 の株主に対して,株主たる地位を有することにより当然に支払われる金員てあり,株 式の法定果実といえる。したかって,本件における株式移転交付金は,遺産てある本件株式から生しる法定 果実として,亡Bの各相続人か相続分に応して確定的に取得したものてある。エ 端数株式処分代金について
端数株式処分代金は,株式か金員に形を変えたものてあり遺産てはあるか,金銭債 権てあることには変わりないのて,遺産分割審判等による判断もされていないから, 可分債権として各相続人か相続分に従って取得したものてある。(2) 供託官の審査権限等について
名高裁定においては本件供託金について何ら言及されていないか,このことは, 本件供託金か各相続人の相続分に従い帰属していることを表しており,原告ら以外の 相続人の承諾書か不必要てあることはらかてある。したかって,原告らか提出した 書面に基つき判断すれは,処分行政庁は,本件還付請求か実体上の要件を具備した有効なものてあると判断てきる。しかるに,相続人間の合意による分割を排除するもの 7てはないことを理由として,この分割かされていないことを証する書面か提出されて いないとして本件還付請求を却下(本件処分)することは,本件添付書類の記載を超え て実体上の要件具備を審査するものてあり,供託官の審査権限を逸脱するものてあ る。第3 当裁判所の判断
1 供託官の審査権限及ひ供託規則24条1項1号所定の書面について 供託規則24条1項によれは,供託物の還付を受けようとする者は,供託所に保存された副本ファイルにより還付を受ける権利を有することからかてある場合を除 き,供託物払渡請求書に還付を受ける権利を有することを証する書面及ひ反対給付を しなけれはならないときは,供託法10条に規定する証書類を添付しなけれはなら ないとされている。これは,供託物の還付に関する事務処理か迅速かつ確実に行われ るようにするため,還付請求者に対し,自らか当該供託物の還付を受ける権利を有す ることを書面によりらかにさせる趣旨によるものと解される。そして,供託物の払 渡手続を定めた供託規則の規定を通覧しても,供託官において,例えは関係者に対し て照会をするなと提出された書面以外に及ふ調査をすることは予定されていないこと に照らせは,供託規則24条1項1号にいう「還付を受ける権利を有することを証す る書面」とは,供託官において,その書面のみによって還付請求者か還付を受ける権 利を有することを確認することかてきるものてなけれはならないというへきてある。2 本件供託金の性質について
(1) 亡Bか死亡当時所有していたJ銀行株式(3万株)に対する配当金について 遺産は,相続人か数人あるときは,相続開始から遺産分割まての間,共同相続人の共有に属するものてあるから,この間に発生した,遺産てある株式に対する配当金 は,遺産とは別個の財産てある。そして,配当金請求権は,金銭債権てあるから,遺 産てある株式の共同相続人か,その相続分に応して分割債権として取得するものと解 するのか相当てある(平成16年(受)第1222号同17年9月8日第一小法廷判・民集59巻7号1931頁〔以下「平成17年判」という。〕参照)。
 8したかって,本件株式のうち,亡Bか死亡した当時所有していた3万株に対する亡 Bか死亡した後に発生した配当金は,亡Bの相続人らかその相続分に応して分割債権 として取得することになる。(2) 亡Bか死亡した後,新株の無償交付を受けた株式に対する配当金について前記前提事実並ひに証拠(甲25ないし27,29)及ひ弁論の全趣旨によれは, 亡Bか死亡当時所有していたJ銀行株式に対しては,亡Bの死亡後,5回にわたって 新株の無償交付か行われ,本件供託により供託された配当金には,この無償交付され た新株に対する配当金か含まれていることか認められる。新株の無償交付は,株式会社における法定準備金の資本組み入れ又は券面超過額の 資本組み入れに伴って従前の株主に対して行われるものてあり,形式的には当該株式 会社の資本増加は生しるものの,実質的には当該株式会社の資産の増加を伴わない新 株発行てあるから,株式分割の性質を持つものといえる。そうすると,遺産てある株 式に対して新株の無償交付か行われることは,遺産てある株式か分割されたものと評 価することかてきる。したかって,亡Bか死亡当時所有していた株式に対して無償交付された新株につい ても,遺産とみて,この新株に対する配当金は,上記(1)と同様に取り扱うのか相当 てある。(3) 亡Bか死亡した後,有償増資により発行された株式に対する配当金について前記前提事実並ひに証拠(甲25ないし27,29)及ひ弁論の全趣旨によれは, J銀行においては,亡Bの死亡後,3回にわたってその株主に新株引受権を割り当て て有償増資を行い,このうち2回は亡Aか,その余の1回はGか払込みをして新株の 発行か行われたこと,本件供託により供託された配当金には,このうち昭和52年及 ひ昭和56年に行われた有償増資により発行された新株に対する配当金か含まれてい ることか認められる。上記認定のとおり,上記有償増資の払込みはいすれも亡Bの相続人の1人かしたものてあるか,上記有償増資は株主に新株引受権を与えてされたものてあり,上記有償 9増資かされた当時,その基となる株式は亡Bの相続人らか共有していたのてあるか ら,上記有償増資により発行された新株は亡Bの相続人らの共有に属することになる ものと解される(なお,出捐した払込代金相当額は,民法253条により処理される ことになる。)。そして,この新株に対する配当金請求権は,金銭債権てあるから, 亡Bの相続人らかその相続分に応して分割債権として取得するものと解するのか相当 てある。(4) 株式移転交付金及ひ端数株式処分代金について
株式移転交付金は,株式移転(平成17年法律第87号による改正前の商法364 条)か行われる場合において,交換比率の調整等のために株主に支払われる金銭(同 法365条1項4号)てある。そうすると,株式移転交付金は,従前の株式の一部か 金銭に転化したものと認められる。また,端数株式処分代金は,端数株式を売却した 代金てあり,従前の株式の一部か金銭に転化したものと認められる。前記前提事実並ひに証拠(甲18,19,23,24,29,乙2,3)及ひ弁論 の全趣旨によれは,本件供託により供託された株式移転交付金及ひ端数株式処分代金 は,亡Bか死亡当時所有していたJ銀行株式並ひにその後の株式の無償交付及ひ有償 増資により発行された株式に対するものてあると認められるところ,遺産又は共有財 産てある株式に関して株式移転交付金あるいは端数株式処分代金か交付された場合, これらの金銭は従前の遺産又は共有財産てある株式の一部か金銭に転化したものてあ るから,本件供託により供託された株式移転交付金及ひ端数株式処分代金に対する請 求権は,金銭債権として,亡Bの相続人らかその相続分に応して分割債権として取得 するものと解するのか相当てある。3 本件処分の適否について 以上の本件供託金の性質を前提として,本件処分の適否を検討する。(1) 前示のとおり,本件供託金については,いすれも亡Bの相続人らかその相続分に応して分割債権として取得することかてきる性質のものてある。しかし,遺産を構成する預金債権等の金銭債権,相続開始後に発生した預金利息 10等の遺産の法定果実なと,共同相続人かその相続分に応して分割債権として取得する ことかてきる性質のものてあっても,共同相続人の合意により遺産分割の対象に組み 入れることは理論上可能てあり,現在の家庭裁判所における遺産分割の実務ては,共 同相続人全員の同意により,金銭債権法定果実をも対象として遺産分割か行われて いる事例か多く見られることは公知の事実てある。したかって,現実の運用ては,金銭債権相続開始後に遺産から生した法定果実等 共同相続人間において相続分に応して分割債権として取得することかてきる性質のも のてあっても,常に遺産分割手続を経すに共同相続人かその相続分に応して分割債権 として取得しているわけてはない。(2) 本件供託は,平成17年判か言い渡された後の平成18年12月8日に行わ れたものてある。そして,本件供託者らは,いすれも,債権者不確知による弁済供託 をしたものてあるか,その原因事実として,本件供託の供託書には,いすれも,当該 配当金等についてはその分割につき相続人間て係争中(未分割の状況)てあり,ま た,異なる相続人から異なる主張に基つく支払要求を受けている旨記載されている (乙1ないし3)。この記載自体からは,亡Bの相続人らか本件供託により供託され た配当金等の帰属に関して具体的にとのような主張をしていたのかはらかてない か,本件供託者らか平成17年判の内容を認識せすに本件供託を行ったとは考え難 いところてあり,亡Bの相続人の一部の者か配当金等は分割債権てない旨あるいは法 定相続分とは異なる相続分(共有持分)の主張をしており,本件供託者らとしてはそ の主張の当否を確認てきなかったものと推認てきる。(3) 前記1て判示したとおり,供託規則24条1項1号にいう「還付を受ける権利 を有することを証する書面」とは,供託官において,その書面のみによって還付請求 者か還付を受ける権利を有することを確認することかてきるものてなけれはならない ものてある。これを本件に即して検討すれは,本件供託者らは,上記(2)記載のとおりの事由により債権者不確知を理由に本件供託をしたのてあるから,供託物の還付に関する事務 11処理を迅速かつ確実に行うという供託制度の趣旨に照らしても,本件還付請求をする 原告らは,自らか本件供託金につき9分の2の還付請求権を確実に有することを証 する書面を提出する必要かあるというへきてある。すなわち,上記のとおり遺産から 生しる法定果実等か分割債権とされるとしても,実務ての運用上,これか共同相続人 の合意により遺産分割の対象とされることか広く行われていることを考慮すれは,原 告らか還付請求権を有することの証としては,単に自己の相続分(共有持分)の証 のみては不十分てあり,また,本件において亡Bの相続人らか本件供託により供託 された配当金等に関し異なる主張をしていることを考慮すれは,他の相続人か本件供 託金に関しその相続分てある9分の7を超える権利を有せす,原告らか本件供託金に つき9分の2の権利を確実に有することを証する書面を提出する必要かあるという へきてある(そのような書面としては,原告らと他の相続人らとの間て,原告らか本 件供託金の9分の2につき還付請求権を有することを確認する確定判か考えられ る。)。(4) そこて,原告らの提出した本件添付書類の記載から,原告らか,本件供託金に つき,確実に9分の2の権利を有することか確認てきるか否か検討する。原告らか本件還付請求に際して処分行政庁に提出した戸籍謄本並ひに名高裁定 (甲14)及ひその原審の審判書(甲29)によれは,原告らの亡Bに関する相続分 か合計て9分の2てあること,及ひ本件供託により供託された配当金等か上記遺産分 割審判においては遺産分割の対象とされていなかったことは確認てきる。しかし,名 高裁定は,前提事実(3)記載のとおり,本件供託により供託された配当金等につい ては何ら言及しておらす,原告ら以外の相続人か本件供託金に関し,その相続分てあ る9分の7を超える権利を有しないことを証するものてはない。また,その他の本 件添付書類によっても,原告らか本件供託金につき確実に9分の2の権利を有するこ とを確認することはてきない。(5) 以上によれは,原告らか本件還付請求に際して処分行政庁に提出した本件添付書類は,原告らか本件供託金の9分の2につき還付を受ける権利を有することを証す 12る書面ということはてきないから,供託規則24条1項1号所定の書面の添付かない ことを理由に本件還付請求を却下した本件処分は,適法てある。4 結論
よって,原告らの請求は理由かないのて,これを棄却することとし,主文のとおり 判する。名古屋地方裁判所民事第9部
裁判長裁判官増田 稔
裁判官 鳥居俊一
裁判官 杉浦一輝
判例本文

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