京都地方裁判所第3民事部 平成22年12月21日判決言渡
事件名 平成21年(行ウ)第14号 公金支出差止請求事件
判決要旨 市の監査委員並びに教育委員の委員長及び委員に対して月額で報酬が支給されていることは違法であるとして,城陽市に事務所を置く住民団 体が市長を被告として,上記報酬支給の差止めを求めたが,棄却され た事例。判決
主文
 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
 事実及び理由
第1 請求 被告は,城陽市監査委員並びに城陽市教育委員会の委員長及び委員に対し,別紙目録記載の月額報酬をいずれも支出してはならない。
 第2 事案の概要1 本件は,京都府城陽市に主たる事務所を有する特定非営利活動法人である原 告が,同市の監査委員並びに教育委員会の委員長及び委員(以下「本件各委員」 という。)に月額で報酬が支給されていることが違法であるとして,同市の執 行機関である被告に対し,地方自治法(以下「法」という。)242条の2第 1項1号に基づき,上記報酬の支給の差止めを求める事案である。2 関係法令の定め (1) 法
ア 180条の5
1項 執行機関として法律の定めるところにより普通地方公共団体に置かなければならない委員会及び委員は,次の通りである。
一 教育委員会
二 選挙管理委員会
三 人事委員会又は人事委員会を置かない普通地方公共団体にあっ
ては公平委員会 四 監査委員
(中略)
5項 普通地方公共団体の委員会の委員又は委員は,法律に特別の定があるものを除く外,非常勤とする。
 (後略)
イ 203条の2
1項 普通地方公共団体は,その委員会の委員,非常勤の監査委員その他の委員,自治紛争処理委員,審査会,審議会及び調査会等の委員 その他の構成員,専門委員,投票管理者,開票管理者,選挙長,投 票立会人,開票立会人及び選挙立会人その他普通地方公共団体の非 常勤の職員(短時間勤務職員を除く。)に対し,報酬を支給しなけ ればならない。2項 前項の職員に対する報酬は,その勤務日数に応じてこれを支給す る。ただし,条例で特別の定めをした場合は,この限りでない。(中略)
4項 報酬及び費用弁償の額並びにその支給方法は,条例でこれを定めなければならない。
(2) 特別職の職員で非常勤の者の報酬及び費用弁償に関する条例(昭和31年10月3日条例第6号。以下「本件条例」という。)(甲3)
ア 1条 この条例は,法律又はこれに基づく条例で別に定めるもののほか,法203条の2の規定に基づき,特別職の職員で非常勤の者(以下
「特別職の職員」という。)に対する報酬及び費用弁償に関して定
めることを目的とする。
 イ 2条
1項 特別職の職員の報酬の額は,別表第1のとおりとする(以下「本 件規定」という。)。ウ 3条 特別職の職員の報酬の支給については,次の各号による。(1) 月額で定める者については,当月分を毎月末日までに支給す る。(中略)
エ 別表第1(2条関係)
区分
議会の議員の中から選ばれた監査委員 (以下「議員監査委員」という。) 識見を有する者の中から選ばれた監査委員 月額 10万4000円 (以下「識見監査委員」という。)(中略)
教育委員会の委員長 月額 11万円 教育委員会の委員 月額 8万5000円 (中略)上記以外の法令又は条例等で定める委員会及び審議会等
会長・委員長 日額 1万0200円
委員 日額 8600円
3 前提となる事実(当事者間に争いがないか,証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) (1) 当事者
原告は,京都府城陽市に主たる事務所を有する特定非営利活動法人である。報酬額 月額 5万円
被告は,同市の執行機関である市長である。
 (2) 報酬の支給
本件各委員(議員監査委員,識見監査委員及び教育委員会の委員長が各1 名,教育委員会の委員が3名)は,いずれも城陽市の非常勤の職員であり, 地方公務員法上の特別職としての身分を有するが,本件条例に基づき,それ ぞれ月額をもって定められた報酬の支給を受けている。(3) 住民監査請求及び本件訴えの提起
ア 原告ほか1名は,平成21年2月23日,城陽市監査委員に対し,本件各委員に勤務日数によらないで月額報酬を支給することは違法であるとし て,支給の差止めを求める住民監査請求(以下「本件監査請求」という。) をした(甲1)。イ 城陽市監査委員は,平成21年4月24日付けで,本件監査請求のうち 教育委員会の委員に係る部分につき,理由がなく措置の必要を認めないと し,非常勤の監査委員に係る部分については,法199条の2の監査執行 上の除斥に該当するから監査できないとして,監査の対象外とし,その旨 を原告に通知した(甲2,弁論の全趣旨)。ウ 原告は,上記イの結果を不服として,平成21年5月22日,本件訴え を提起した。4 争点及びこれに対する当事者の主張 本件の争点は,本件各委員に対して月額報酬を支給する旨の本件規定が法203条の2第2項に違反し無効なものであり,本件各委員に対して本件規定に 基づき月額報酬を支給することが違法か否かであり,この点に対する当事者の 主張は次のとおりである。(原告の主張)
(1) 法203条の2第2項の趣旨等
ア 法203条の2第2項は,非常勤職員に対する報酬について,原則として勤務日数に応じた報酬を支払うとしているが,その趣旨は,常勤職員に ついてはその生活を地方公務員の収入に依存していることから勤務実績に 対する反対給付としての要素だけではなく,生活給としての面をも考慮し なければならないが,非常勤職員の場合には,これに対する報酬は生活給 としての意味を全く有さず,純粋に勤務に対する反対給付としての性格の みを持つのみであり,したがって,原則として勤務日数に応じて支給され るべきものとしたことにある。このような法の趣旨からすると,非常勤職員に対して日額ではなく月額 又は年額で報酬を支給する例外的扱いができるのは,その勤務実態が常勤 職員と異ならないといえるなど特別な事情がある場合に限られると解する のが相当である。この点に関し,被告は,昭和31年法律第147号による地方自治法の 改正(以下「昭和31年改正」という。)の経過に照らし,法203条の 2第2項(当時は203条2項)は,少なくとも行政委員会の委員につき, 出勤日数に応じて報酬額を定めるかどうかを地方公共団体の判断にゆだね ており,したがって,日額報酬制の例外を認めるかどうかについては,地 方公共団体の議会の広範な裁量が認められている旨を主張する。しかし, 改正経過がどのようなものであったにしても,法が日額報酬制を原則とし て,例外的に条例による特別の定めを認めるとしている以上,このような 法の構造を無視することは許されない。イ また,法2条14項及び地方財政法4条1項に照らせば,地方公共団体 の経費は最少限度の支出で最大限の効果が上がるように使用されなければ ならないところ,昭和31年改正の際も,日額報酬制により適正な支出が 確保され,財政経費が節減されることを期待されていた。このような観点 からしても,法203条の2第2項ただし書については制限的に解釈すべ きであり,当該非常勤職員の勤務実態が常勤職員と異ならず,生活給としての要素も考慮しなければならない場合に限り,例外を認めるべきである。
 (2) 本件各委員の勤務実態等ア 城陽市の非常勤の監査委員のうち,識見監査委員については平成19年 度40日(延べ日数。以下同じ。),平成20年度48日,議員監査委員 については平成19年度33日,平成20年度41日が監査等の実施に費 やされたとされるが,これを月平均にすれば,識見監査委員については平 成19年度3.33日,平成20年度4日,議員監査委員については平成 19年度2.75日,平成20年度3.42日程度にしかすぎない。しか も,実際の監査時間をみると,例月現金出納監査や住民監査請求監査で4 時間以内,辞令交付で1時間以内など短時間で終了するものも含まれてお り,実質的な職務遂行日数はさらに短いものとなる。これらからすれば, 非常勤の監査委員について,常勤職員と同程度の勤務実態があるとは到底 いえない。イ 城陽市教育委員会の委員のうち,委員長については平成19年度63日, 平成20年度51日,職務代理については平成19年度63日,平成20 年度60日,その他の委員については平成19年度58日,平成20年度 67日がその活動に費やされたとされるが,これを月平均にすれば,委員 長については平成19年度5.25日,平成20年度4.25日,職務代 理については平成19年度5.25日,平成20年度5日,その他の委員 (1名を除く。)については平成19年度4.83日,平成20年度5. 58日程度にしかすぎない。しかも,実際の活動内容をみると,行事や式 典への参加など短時間で終了するものも含まれており,実質的な職務遂行 日数はさらに短いものとなる。これらからすれば,教育委員会の委員につ いて,常勤職員と同程度の勤務実態があるとは到底いえない。ウ なお,本件各委員の具体的な勤務実態を検討するに当たっては,城陽市 情報公開・個人情報保護審査会の委員の活動が参考とされるべきである。すなわち,同審査会は,城陽市情報公開条例及び城陽市個人情報保護条例 の規定により,開示決定等の不服申立てがあった場合に諮問することが主 たる職務であるところ(甲15~17),この不服申立てがいつされるか は不明であるため,常にこれに備えて待機しなければならないものである が,かかる委員であっても原則どおり日額をもって報酬が支払われている (甲13,14)。(3) 本件各委員の報酬額の相当性 本件各委員の月額報酬額は,議員監査委員が5万円,識見監査委員が10万4000円,教育委員会の委員長が11万円,教育委員会の委員が8万5 000円であるところ,これが相当かどうか検討するに当たっては,城陽市 において他の行政委員に対して支払われている日額報酬の額を参考にすべき である。本件条例の別表第1によれば,「上記以外の法令又は条例等で定め る委員会及び審議会等」の委員の日額報酬額として,会長ないし委員長が1 万0200円,委員が8600円とされているから,本件各委員についても, この金額に各委員に係る上記(2)の月平均の勤務日数を乗じると,いずれの 委員についてもその報酬額は半額程度となる。したがって,本件各委員につ いては,報酬額の面からみても,月額報酬制を採用することにより支出が過 大になっており,合理性がないことは明らかである。(4) 以上によれば,本件規定は法203条の2第2項に違反し無効であるか ら,本件各委員に対する月額報酬の支給も違法である。(被告の主張)
(1) 法203条の2第2項の趣旨等
法203条の2第2項は,非常勤職員に対する報酬について,その勤務日 数に応じて支給するとしながら,条例で特別の定めをした場合は,この限り でないと規定している。その趣旨は,法律が一定の事項の定めを条例にゆだ ねている場合,これを具体的にどのように定めるかについては,条例を定める当該地方公共団体の議会に広範な裁量が認められることを前提に,非常勤 職員の職務の内容や特質,職務上の義務及び地位,各地方公共団体における 財政状況,人材確保の必要性等の諸事情にかんがみ,月額報酬制が相当であ ると議会が判断した場合には,これを尊重するところにある。上記規定(当時は203条2項)は,昭和31年改正により新設されたも のであるが,当初の政府提出法案では,法203条の2第2項ただし書に相 当する規定がなかったところ,国会審議において,とりわけ行政委員会の委 員についてその報酬を日額制とすることでよいのかが議論となり,その結果, この点については地方公共団体の自主的判断にゆだねるのが妥当であるとし て,修正がされたものである。このような改正の経過からすると,少なくと も行政委員会の委員につき出勤日数に応じて報酬額を定めるかどうかは地方 公共団体の判断にゆだねられているのであって,日額報酬制の例外を認める かどうかについては,議会の広範な裁量が認められているというべきである。(2) 本件各委員の職務,勤務実態等
ア 監査委員は,非常勤であっても,常勤の場合と同じく,職務上特別職地方公務員として諸種の義務を負い,また兼職禁止の制約も受けている。ま た,監査委員の職務には,毎月ないし毎会計年度これを行うことが法令に より規定されているもののほかに,監査委員が必要があると認めるときに これを行うことができるとされているもの,住民等による請求又は普通地 方公共団体の長若しくは議会の要求があった場合にこれを行うものとされ ているもの等多岐にわたっている。これらに照らすと,非常勤の監査委員 について,その報酬をその勤務日数に応じて支給するものとせず,その職 務及び責任に対する対価として,常勤職員と同様に月額ないし年額をもっ て支給するものとすることは,合理性を有するというべきである。城陽市の非常勤の監査委員のうち,識見監査委員については平成19年 度40日,平成20年度48日,議員監査委員については平成19年度33日,平成20年度41日の活動実績があるところ,原告は,これを月平 均でみると3~4日程度にすぎず,常勤職員と同程度の勤務実態があると は到底いえない旨を主張する。しかし,そもそも議会の広範な裁量権や監 査委員の上記職務及び責任にかんがみると,勤務実態いかんにかかわらず 月額報酬とすることには合理性がある。また,監査委員の職務は,定期的 ・能動的に行う事務のみならず,不定期・受動的に行う事務もあるところ, 例えば住民監査請求に基づく監査の場合,いつでも住民からの監査請求が あれば,これに応じる準備をしておくことで監査委員としての職責を全う することができるのであるから,勤務日数や勤務時間の長短で月額報酬を 支給することの当否を判断するのは相当ではない。イ 教育委員会の委員は,非常勤とされているが,職務上,特別職地方公務 員として,諸種の義務を負い,また兼職禁止の制約も受けている。また, 教育委員会の委員が属する教育委員会の職務は,地方教育行政の組織及び 運営に関する法律(以下「地教行法」という。)23条に掲げられた項目 を始め多岐にわたっている。これらに照らすと,非常勤の教育委員会の委 員について,その報酬をその勤務日数に応じて支給するものとせず,その 職務及び責任に対する対価として,常勤の職員と同様に月額ないし年額を もって支給するものとすることは,合理性を有するというべきである。城陽市教育委員会の委員のうち,委員長については平成19年度63日, 平成20年度51日,職務代理については平成19年度63日,平成20 年度60日,その他の委員については平成19年度58日,平成20年度 67日の活動実績があるところ,原告は,これを月平均でみると数日程度 にすぎず,常勤職員と同程度の勤務実態があるとは到底いえない旨を主張 する。しかし,教育委員会の委員についても,不定期・受動的に行う事務 が多々あり,これに上記の職務及び責任を併せみれば,勤務日数や勤務時 間の長短で月額報酬を支給することの当否を判断するのは相当ではない。ウ なお,原告は,行政委員で原則どおり日額報酬の支払を受けている委員 の活動例として,城陽市情報公開・個人情報保護審査会の委員を挙げるが, 同委員と本件各委員とでは,職務の内容,職務上の義務及び地位等が全く 異なるのであり,同審査会の委員が日額報酬であるからといって,本件各 委員についてもこれが当てはまるとはいえない。(3) 本件各委員の報酬額の相当性 原告は,本件各委員の月額報酬額が過大であると主張するが,そもそも行政委員について,職務の内容や特質,職務上の義務及び地位を考慮すること なく,報酬の多寡を論じても無意味である。また,本件各委員の月額報酬額 は,国の非常勤の報酬限度額日額3万5300円で計算した場合,月額によ る支出のほうが低額となるし,別表記載の京都府下14市の監査委員及び教 育委員会の委員の月額報酬額と比較しても,本件各委員の月額報酬額が取り 立てて過大とはいえない。(4) 以上によれば,本件規定は,法203条の2第2項に反するものではな く,本件各委員に対する月額報酬の支給も違法とはいえない。第3 当裁判所の判断
1 法203条の2第2項は,普通地方公共団体の非常勤の職員(短時間勤務職員を除く。)に対する報酬について,その本文において,その勤務日数に応じ てこれを支給すると規定する一方,そのただし書において,条例で特別の定め をした場合はこの限りではない旨を規定している。上記本文は,非常勤職員に対する報酬が,常勤職員に対する給与と異なり, いわゆる生活給としての要素を含まず,純粋に勤務に対する反対給付としての 性質のみを持つことから,勤務の量(日数)に応じて支給されるべきことを明 らかにしたものと解される。他方,非常勤職員には多種多様な職種が含まれ, その中には,執行機関である行政委員会を構成する委員も含まれており,当該 委員の職務内容は,単に委員会等に出席するのみではなく,実際に出勤して勤務をしていない場合でも,職務に関連した調査・研究等をしていることがある といった勤務の態様,職務の内容及び職責等に照らし,勤務日数に応じた報酬 の支給をしたのでは適当でないこともあり得ることから(もとより勤務の実態 がほとんど常勤職員と異ならず,常勤職員と同様に月額ないし年額をもって支 給することが合理的であるものもあり得る。),同項ただし書を設け,非常勤 職員のうちの一部の者については,各地方公共団体が,各地の実情や当該非常 勤職員の勤務の態様や職責等に照らし,日額制以外の方法(月額ないし年額) による報酬支給をすることができることとしたものと解される。そして,非常勤職員につき,いかなる場合に条例によって日額制以外の報酬 を定めることができるかについては,条文上何ら限定はされていないところ, そもそも法203条の2第2項に相当する規定は,昭和31年改正により新設 されたものであり,その改正経緯として,選挙管理委員会などの各行政委員の 報酬について,その職務の内容や勤務の態様等に照らし,一律に日額をもって 支給することには問題があるとされ,この点については地方公共団体の議会の 自主的判断を尊重することとして設けられたものと認められること(乙1, 9),地方公共団体には団体自治が認められ,その自主立法権は尊重されなけ ればならないことなどを総合すると,いかなる場合に日額制以外の方法による 報酬支給が認められるかは,議会の広範な裁量にゆだねられているものと解さ れ,当該非常勤職員の職務の内容や勤務の態様等に照らし,勤務日数によらず に報酬を支給することが著しく不合理であるといった事情がない限り,月額報 酬制を条例で定めること自体が上記裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したも のとして違法となるとはいえないというべきである。これに対し,原告は,法203条の2第2項ただし書により条例で非常勤職 員に対する報酬について月額ないし年額をもって定めることができるのは,そ の勤務実態が常勤職員と異ならないといえるなど特別な事情がある場合に限ら れると主張する。しかし,条文上このような限定は存しない上,上記の改正経緯等も併せ考慮すると,同ただし書が適用される場合をきわめて限定的に捉える旨の原告の上記主張は採用できない。
2(1) 監査委員は,普通地方公共団体に置かなければならない独任制の執行機関であり,その職務として,普通地方公共団体の財務に関する事務の執行及 び普通地方公共団体の経営に係る事業の管理につき,毎会計年度少なくとも 1回以上期日を定めて監査をしなければならない(定期監査)(法199条 1項及び4項)。また,監査委員が必要があると認めるときは,普通地方公 共団体の事務の執行について監査することができるが(行政監査),当該普 通地方公共団体の長から地方公共団体の事務の執行に関し監査の要求があっ たときは,その要求に係る事項について監査しなければならず,さらに必要 があると認めるとき,又は普通地方公共団体の長の要求があるときは,当該 地方公共団体が補助金等の財政的援助を与えているもの等の出納その他の事 務の執行で当該財政的援助に係るもの等を監査することができるとされてい る(同条2項,6項及び7項)。そのほか,選挙人の直接請求による監査(法 75条),議会の請求による監査(法98条2項),決算監査(法233条 2項),月例出納検査(法235条の2第1項),指定金融機関の検査(同 条2項),基金運用状況の審査(法241条5項),住民監査請求に係る監 査(法242条4項)及び職員の賠償責任の監査(法243条の2第3項) 等をその事務としている。そして,監査委員は,その職務を遂行するに当た っては,常に公正不偏の態度を保持して監査をしなければならないとされる とともに,守秘義務が課されており(法198条の3),地方公共団体の常 勤の職員,短時間勤務職員との兼職を禁止されている(法196条3項)。
 また,識見監査委員は,代表監査委員となり,法242条の3第5項の訴訟 について当該地方公共団体を代表する等の職責が課されている(法199条 の3)。以上のような監査委員の職務の内容,職務上の義務及び地位は,常 勤の監査委員と非常勤の監査委員とで法令上異なるところがない。このような監査委員の職務の内容,職務上の義務及び地位のほか,城陽市 監査委員においては,会議等に出席するのみならず,事前に監査に係る資料 や質問事項を調査・検討し,さらには事前に実地に赴き現地確認をするなど していることも窺われること(乙14,弁論の全趣旨)からすると,非常勤 の監査委員についても,その報酬を勤務日数に応じて支給するのではなく, 月額をもって支給するものとしたとしても,不合理ということはできない。また,非常勤の監査委員に支給される報酬額については,議員監査委員が 月額5万円,識見監査委員が月額10万4000円であるところ,上記事情 のほか,京都府下14市の監査委員の月額報酬額が別表のとおりであること, 国の非常勤の報酬限度額(日額3万5300円)を基に月額換算した場合, 現行の報酬額のほうが低額となること等を勘案すると,本件規定の定める報 酬の額が高額に過ぎるともいい難い。(2) 次に,教育委員会は,都道府県,市町村などに設置され,学校その他の 教育機関を管理し,学校の組織編制,教育課程,教科書その他の教材の取扱 い及び教育職員の身分取扱いに関する事務を行い,並びに社会教育その他教 育,学術及び文化に関する事務を管理し及びこれを執行する5人の委員から 構成される合議制の執行機関である(法180条の5第1項1号,180条 の8,地教行法2条,3条,13条,23条)。教育委員会の委員は,当該地方公共団体の長の被選挙権を有する者で,人 格が高潔で,教育,学術及び文化に関し識見を有する者のうちから,地方公 共団体の長が,議会の同意を得て任命するものとされ,守秘義務が課されて いる(地教行法4条,11条)。教育委員会の委員は,地方公共団体の議会 の議員若しくは長,地方公共団体に執行機関として置かれる委員会の委員若 しくは委員又は地方公共団体の常勤の職員,短時間勤務職員との兼職を禁止 されている(地教行法6条)。教育委員会は,委員のうちから委員長を選挙しなければならないとされ,委員長は,教育委員会の会議を主宰し,教育委員会を代表するものとされて いる(地教行法12条)。このように教育委員会の委員は,日額制の例外を認める必要があるとして 念頭に置かれていた執行機関に属する委員会の委員であり,上記のような職 務の内容,職務上の義務及び地位等からすると,非常勤の教育委員会の委員 についても,その報酬を勤務日数に応じて支給するのではなく,月額をもっ て支給するものとしたとしても,不合理ということはできない。また,非常勤の教育委員会の委員に支給される報酬額については,委員長 が月額11万円,委員が8万5000円であるところ,上記事情のほか,京 都府下14市の教育委員会の委員の月額報酬額が別表のとおりであること, 国の非常勤の報酬限度額(日額3万5300円)を基に月額換算した場合, 現行の報酬額のほうが低額となること等を勘案すると,本件規定の定める報 酬の額が高額に過ぎるともいい難い。(3) なお,原告は,城陽市の他の行政委員として,城陽市情報公開・個人情 報保護審査会の委員の例を挙げ,同審査会は城陽市情報公開条例及び城陽市 個人情報保護条例の規定により開示決定等の不服申立てがあった場合に諮問 することが主たる職務であるところ,同審査会の委員は日頃から不服申立て があった場合に備えて準備しておかなければならないものであるが,かかる 委員であっても原則どおり日額をもって報酬が支払われていると主張する。 しかしながら,本件各委員はいずれも執行機関ないし執行機関に属する委員 会の委員である上,上記審査会の委員とでは,その職務の内容,職務上の義 務及び地位等に大きな違いがあることは明らかであり,同委員について日額 報酬が支給されているからといって,本件各委員に月額報酬を支給すること が不合理であるとはいい難く,原告の上記主張は失当である。(4) 以上の検討によれば,本件各委員について月額制の報酬を定めたことが, 議会の裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものであるとはいえず,本件規定が法203条の2第2項に違反するとは認め難い。したがって,本 件各委員に対して本件規定に基づき月額報酬を支給することは違法とはいえ ない。3 以上によれば,原告の請求は理由がないから棄却する。 京都地方裁判所第3民事部裁判長裁判官 瀧 華 聡 之
裁判官 奥 野 寿 則
裁判官碩 水音
判例本文 判例別紙1

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