平成22年6月2日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官 平成20年(ワ)第2207号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日 平成22年3月24日判決
主文
1 被告Dは,原告Aに対し,55万円及ひこれに対する平成19年9月20日から支払済みまて年5分の割合による金員を支払え。
2 原告Aのその余の請求を棄却する。
3 原告B及ひ原告Cの請求をいすれも棄却する。
4 原告Aと被告Dとの間の訴訟費用は,これを6分し,その1を被告Dの,その余を原告Aの各負担とし,その余の訴訟費用は原告B及ひ原告Cの負担とする。
5 この判決は,第1項に限り,仮に執行することかてきる。
事実及ひ理由
第1 請求
1 被告らは,原告Aに対し,連帯して330万円及ひこれに対する平成19年9月20日から支払済みまて年5分の割合による金員を支払え。
2 被告らは,原告B及ひ原告Cに対し,連帯して565万6786円及ひこれ に対する平成19年9月20日から支払済みまて年5分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は被告らの負担とする。
 4 仮執行宣言
第2 事案の概要 本件は,原告Aか,被告京都市か設置する甲中学校在学中に同級生てあった被告Dからいしめを受け,不登校となり,転校せさるを得ない状況に追い込ま れ,精神的かつ肉体的な苦痛を被ったところ,被告Dの親権者てある被告E及ひ甲中学校の教諭らは被告Dに対する必要な指導・監督をせす,被告京都市も 安全配慮義務を怠ったから,被告D及ひ被告Eは不法行為(民法709条,7 19条)に基つき,被告京都市は不法行為(国家賠償法1条1項)ないし債務 不履行(民法415条)に基つき,それそれ損害賠償責任を負うとして,被告 らに対し,連帯して,慰謝料及ひ原告Aか不登校となった日からの民法所定の 遅延損害金の支払を求めるとともに,原告Aの親権者てある原告B及ひ原告C か,上記転校に伴いマンション及ひ駐車場を新たに賃借し,家具を購入せさる を得す,これらに要した費用相当額の損害を被ったとして,被告らに対し,不 法行為(民法709条,719条)ないし国家賠償法1条1項に基つき,連帯 して,上記費用相当の損害賠償及ひ原告Aか不登校となった日からの民法所定 の遅延損害金の支払を求める事案てある。1 前提事実 (1) 当事者
ア 原告Aは,平成5年a月b日生まれの男性てあり,平成18年4月,甲 中学校に入学した。原告B及ひ原告Cは,原告Aの両親てあり,親権者てある。
イ 被告Dは,平成5年c月d日生まれの男性てあり,平成18年4月,甲中学校に入学した。
 被告Eは,被告Dの母てあり,親権者てある。なお,被告Eは,平成16年11月11日に離婚した。
ウ 被告京都市は,甲中学校を設置し運営している。
(2) 原告Aの不登校
ア 原告Aと被告Dは,中学1年生のときは違うクラスてあったか,中学2年生て同し2年4組になった。
 2年4組の担任はF講師てあり,F講師は,被告Dか所属する野球部の顧問てもあった。なお,F講師は,平成15年12月から中学校の教師をしており,担任をもつのは4回目てあった。
イ 平成19年9月19日,2年4組の男子生徒か,教室の隣にある学習室て合唱コンクールの練習をしていたところ,指揮者をしていた被告Dは, 原告Aを含む3名の男子生徒を他の生徒の前に立たせて歌わせ,原告Aら か歌うのを見た生徒らは,笑ったり拍手をしたりした。そして,原告Aは,再度,被告Dから前て歌うよう言われたため,教室 を出た。(この一連の出来事を,以下「本件合唱練習事件」という。)なお,F講師はこの場にいなかった。
ウ 原告Aは,同月20日から甲中学校に登校しなくなった。
(3) 原告Aの転校 原告Bは,同年10月19日,原告Cの名義て乙中学校の学区内のマンション(以下「本件マンション」という。)を賃借し,原告Aの住民登録を本 件マンションへ移転し,原告Aを乙中学校に転校させた。原告Aは,同月22日以降,乙中学校に通学した。
 2 争点
(1) 被告Dの問題行動の有無及ひ内容
(2) 被告Dの行為の違法性の有無
(3) 平成19年9月19日まての被告京都市による注意義務違反の有無(4) 平成19年9月19日以降の被告京都市による安全配慮義務違反の有無 (5) 被告Eによる注意義務違反の有無(6) 原告らの損害及ひ因果関係
3 争点に関する当事者の主張
(1) 争点(1)(被告Dの問題行動の有無及ひ内容)について 〔原告らの主張〕ア 中学1年生当時 被告Dは,甲中学校て,問題児として有名てあった。イ 平成19年4月 被告Dか代議員(学級を代表する委員のこと。)に立候補したところ,他の生徒は被告Dを恐かって立候補しなかったため,被告Dか代議員になった。
ウ 平成19年5月
(ア) 被告Dは,自分と仲の良くない生徒や,おとなしい生徒に暴力を振 るい,手当たり次第に,2年4組の生徒を殴るなともした。(イ) 被告Dは,原告Aに対し,「おちんちんを見せろ。」と言ったり, 「金もっこり」というあた名をつけるなとした(以下「本件いしめ1」 という。)。(ウ) 同月下旬頃から,被告Dは,ほとんと毎日,昼食の時間に,原告A の弁当のおかす(ハンハークやヒレカツ等)を取り上けて食へたり,原 告Aの水筒を無断て同人の鞄から出してお茶を飲んた(以下「本件いし め2」という。)。エ 平成19年6月
(ア) 被告Dは,ほとんと毎日,原告Aの股間,太もも内側,脇の下,上腕等を何度も殴るなとした(以下「本件いしめ3」という。)。(イ) 被告Dは,数学の授業中に数学担当のG教諭とけんかをするように なり,G教諭か「勉強かてきないと高校に行けないよ。」と言ったとこ ろ,被告Dは,「高校には行かない。僕はマフィアになって原告Aを殺 して,原告Aの家の物を盗んて,原告らの家に火をつけて金持ちになるから,勉強はいらない。」と怒鳴った。また,被告Dは,原告Aに対し, 直接何度も,「マフィアになってお前を殺す。」,「僕は甲中学校を卒 業したら,原告Aを殺して,家の物を盗んて,お前の家に火をつけて金 持ちになる。」なとと脅迫した(以下「本件いしめ4」という。)。オ 夏休み後
(ア) 被告Dは,平成19年8月30日から同年9月11日まての間の数 学の授業中,教室て,G教諭の面前て,原告Aに対し,右手拳て左肩を 2回殴打した(以下「本件いしめ5」という。)。(イ) 被告Dは,ほとんと毎日,原告Aを殴った(以下「本件いしめ6」 という。)。(ウ) 同年9月19日,本件合唱練習事件か発生した。被告Dは,歌えて いない者を前に出して歌わせるというルール(以下「本件ルール」とい う。)を同日に言い出し,原告Aかきちんと歌っているにもかかわらす, 「歌っていない。罰や。」と言って,原告Aを他の生徒の前て4,5回 も歌わせた(以下「本件いしめ7」という。)。〔被告D及ひEの主張〕 ア 中学1年生当時
被告Dか問題児として有名てあったとの主張は否認する。
授業中の態度や,提出物か出せていないこと等について,担任てあった F講師かたひたひ家庭訪問に来ていたか,被告Dは問題児てはなかった。イ 平成19年4月 他の生徒か被告Dを恐かって立候補しなかったとの主張は否認する。ウ 平成19年5月
(ア) 被告Dは,仲の良い友達とも「肩ハン」(生徒か,他の生徒の肩の辺りをハンチすること。)をし合っており,しゃれあいの範囲内てあった。
(イ) 本件いしめ1は否認する。
 (ウ) 本件いしめ2は否認する。被告Dは,原告Aのおかすを食へたことはあるか,原告Aの承諾を得 ていたし,主菜の全部は取っていない。水筒を勝手に原告Aの鞄から取 り出したこともない。エ 平成19年6月
(ア) 本件いしめ3は否認する。
被告Dは,原告Aに対して「肩ハン」をしたか,しゃれあい,ちょっ かいの範囲内てあった。(イ) 本件いしめ4は否認する。
 オ 夏休み後
(ア) 本件いしめ5は否認する。
(イ) 本件いしめ6について,被告Dか原告Aに暴行を加えたことかあることは認める。
(ウ) 本件いしめ7について,合唱コンクールの練習において,被告Dか原告Aを他の生徒の前て歌わせたことは認める。たたし,原告Aを含む 生徒らは,練習前に本件ルールを決めたのてあって,被告Dはそれに従 ったたけてある。〔被告京都市の主張〕 ア 中学1年生当時
被告Dか問題児として有名てあったとの主張は否認する。
このころの被告Dの問題行動としては,昼食中,被告Dか他の男子生徒 に弁当のおかすをくれとせかみ,両者かもみ合いになったところ,被告D のシャツにソースかついたため,被告Dか腹を立ててその男子生徒を2発 殴ったというものかあった。その場にいたF講師は,二人を引き離してす くに被告Dを別室に連れて行き,被告Dの主張を聞いた上て,暴力行為は 許されないということを指導し,反省させ,当日の夜,被告Dとともに殴 られた男子生徒の自宅を訪問し,被告Dに謝罪させた。イ 平成19年4月 他の生徒か被告Dを恐かって立候補しなかったとの主張は否認する。なお,平成19年度後期の代議員を決めるとき,被告Dは立候補しなかったか,立候補者はなかなか出なかった。
 ウ 平成19年5月
(ア) 被告Dか仲の良くない生徒等に暴力を振るったことは否認する。こ のころ,2年4組の何人かの男子生徒の間ては肩ハンかはやっており, 男子生徒間のふさけ合いからされていたか,被告Dも肩ハンをされてい た。(イ) 本件いしめ1は不知。
 原告Aは,「原告Aちゃん」と呼はれていた。(ウ) 本件いしめ2について,被告Dか原告Aの弁当のおかすをねたって いたことは認める。当初,F講師は男子生徒間てよくあることたと思っ たため注意しなかったか,しはらくして原告Aか嫌かっていると感した ため,被告Dに対し,やめるよう指導した。なお,被告Dは,他の男子 生徒に対しても,おかすをくれるようねたっていた。また,被告Dか水筒のお茶を勝手に飲んたことは否認する。昼食時間 中,F講師はそのような行動を見たことかない。エ 平成19年6月
(ア) 本件いしめ3は不知。
たたし,本件合唱練習事件の後,F講師は,原告Aから,本件いしめ 3のようなことかあったことを聞いた。なお,F講師は,被告Dかホクシンクの真似のような感して原告Aの 肩の辺りに拳を当てるの見たときは,その場て,被告Dに対し,やめる ように厳しく大きな声て叱りつけた。(イ) 本件いしめ4について,G教諭と被告Dかけんかをしたとの主張は 否認する。G教諭か「勉強をしないと,高校に行けないよ。」と言ったところ, 被告Dは「高校には行かないから勉強しなくても良い。マフィアとかやくさになる。」と言ったのてある。なお,G教諭は,これに対し,「高 校に行かないのてあれは,学校て勉強てきるのは今か最後になるのたか ら,なおさら勉強しておかないといけない。マフィアとかやくさては生 きていけない。自分をもっと大事にしないといけない。」と指導した。
 被告Dか直接原告Aに対して脅迫したとの主張については,不知。オ 夏休み後
(ア) 本件いしめ5,6は否認する。
(イ) 本件いしめ7について,合唱コンクールの練習において,被告Dか原告Aを他の生徒の前て歌わせたことは認める。
 平成19年9月19日,F講師は,2年4組の生徒を男子ハート,女子ソフラノハート,女子アルトハートに分け,男子ハートを教室横の学 習室,女子ハートをそれそれ教室及ひ教室前の廊下て練習させた。通常, F講師は,ハート別の練習の際には随時巡回して指導に当たっていたか, この日は,教室て練習していた女子のハートの使う機器の調子か悪く, 音楽か流れなかったため,F講師は,教室て機器の設定に対応したり, 教頭に対応策を相談するために職員室に行ったりしていた。そのため, F講師は,男子ハートの練習を見ることかてきす,その間に本件合唱練 習事件か発生した。F講師か当日に原告Aから聞いたところによると,声か小さかったり ふさけている者は前て一人て歌うというルール(本件ルール)か設けら れ,原告Aを含め3名か指名されて歌うと,歌い終わった後に笑い声や 拍手か起きた,練習を再開しても,再度,原告Aを含め2名か指名され たため,我慢かてきなくなり,学習室を飛ひ出したとのことてあった。カ その他 被告Dの本件合唱練習事件まての問題行動は,原告か主張するもの以外ては,次のとおりてある。
(ア) 平成19年9月3日のF講師による授業中,被告Dは,F講師の指 示に従わすに「やる気かない。」と発言したため,F講師か注意したと ころ,被告Dは大声て反抗した。そのため,F講師は,被告Dを指導し, 謝罪させた。(イ) 同月7日の野球部の部活動中,被告Dか足に擦り傷を負ったため, F講師か,擦り傷の処置をしたらフレーを続行するように指示すると, 被告Dは「部活やめる。」と言ってクラウントを飛ひ出した。そのため, F講師及ひ他の2年生の担当教師は,被告Dを指導し,謝罪させた。(ウ) 同月8日の野球部の公式戦当日,F講師か試合オーター表を提出し た後に,被告Dか髪型をモヒカン(前から見れは丸刈りたか,後頭部の 中央部分に数cm髪の毛を残していた。)にしていることか発覚したため, F講師は,被告Dを最初の守備にたけつかせ,すくに交代させた。そし て,F講師は,被告Dに対し,髪型か校則に反し不適切てあると指導し た。(エ) 同月10日,被告Dの髪型か上記(ウ)のままてあったのて,F講師 は,継続して指導していくこととした。(2) 争点(2)(被告Dの行為の違法性の有無)について 〔原告らの主張〕被告Dは,原告Aに対し,本件いしめ1ないし7のとおり,継続的かつ執 拗ないしめを繰り返していたのてあり,被告Dのこれらの行為に違法性かあ ることは明らかてある。特に,本件いしめ7については,4回も5回も人前て歌わせて嘲笑させて おり,許されるものてはない。〔被告D及ひ被告Eの主張〕 当時,生徒間ては肩ハンかはやっており,教師も黙認していたのて,被告Dか原告Aに肩ハンをしたことのみを不法行為と評価することはてきない。本件合唱練習事件においては,当時,本件ルールかあったから,被告Dは それに従って原告Aを歌わせたのてあり,不法行為と評価することはてきな い。(3) 争点(3)(平成19年9月19日まての被告京都市による注意義務違反な いし安全配慮義務違反の有無)について〔原告らの主張〕
ア F講師は,被告Dか代議員になることを容認した。
また,F講師は,平成18年度に被告Dか男子生徒とおかすをめくって トラフルになり,暴力行為に及んたことを知っており,被告Dか原告Aの おかすを取るのを目撃していたにもかかわらす,よくあることと思い,特 に注意をしなかったというのてあり,不適切な対応をしていた。イ F講師は,原告Aか被告Dに殴られているのを何度も目撃していたにも かかわらす,何回か被告Dに軽く注意したにすきす,真剣な指導をしなか った。また,G教諭は,授業中に,被告Dか「マフィアとかやくさになる。」 と言ったり,原告Aを殴打するのを見たにもかかわらす,必要な指導・監 督をしなかった。ウ 平成19年9月19日の合唱コンクールの練習は,授業時間内に行われ たものてあるから,F講師ら甲中学校の教師は,体罰やいしめか発生しな いようにする注意義務かあった。そして,被告Dは,被告京都市か認めて いるたけても同月3日から同月10日の短期間に複数の問題行動を起こし ていたのてあるから,被告Dを合唱コンクールの指揮者にすれは,問題か 起こる可能性かあることは,F講師らは十分に予測てきた。それにもかかわらす,F講師らは,被告Dか合唱コンクールの指揮者に なることを容認した。また,仮に,被告Dに指揮者をさせるのてあれは,F講師らは,被告Dによるいしめや不適切言動か起こらないように細心の注意を払う義務かあ った。しかし,F講師らは,本件ルールの存在や,原告Aらか前て歌わさ れているという事実を把握していなかった。エ このように,F講師らは,被告Dに対して必要な指導・監督を行わす, 注意義務違反かあったのてあり,被告京都市には,注意義務違反ないし安 全配慮義務違反かあった。〔被告京都市の主張〕
ア 代議員や指揮者に自発的に立候補した生徒かいる場合,その生徒に代議員や指揮者をさせることは教育上適切てあり,特段の事情かない限り適法 てある。被告Dは,模範的な生徒てはないかもしれないか,同人の立候補 の意思を排除しなけれはならない事情かあるとまてはいえなかった。イ 被告Dか原告Aのおかすを食へることについて,当初,F講師は男子生 徒間てよくあることたと思ったため注意しなかったか,しはらくして原告 Aか嫌かっていると感したため,被告Dに対し,やめるよう指導した。そ して,被告Dは男子生徒から繰り返しおかすをねたっていたため,F講師 か被告Dに聞くと,給食(弁当のようなものて,希望者たけか購入する仕 組みになっている。)たけては量か足りないということたったのて,F講 師は,家庭訪問をし,被告Eに対し,被告Dか男子生徒から繰り返しおか すをねたっていることなとを伝えた上,給食とは別に,更におかすやこは んを持たせるなとして十分な量の昼食をとれるようにてきないかとのお願 いをした。ウ F講師は,被告Dかホクシンクの真似のような感して原告Aの肩の辺り に拳を当てるの見たときは,その場て,被告Dに対し,やめるように厳し く大きな声て叱りつけ,やめさせた。なお,被告Dかいつとこて原告Aに対して肩ハンをするか具体的に予見 することは不可能てあるし,被告Dを常時監視するのは教育上不適切かつ不可能てある。
エ 本件合唱練習事件は,前記(1)〔被告京都市の主張〕オ(イ)のとおり,F講師か女子ハートの機器トラフルに対応しているときに発生した。また, F講師か女子のハートを見回っている間に男子生徒か本件ルールを作った としても,F講師かそのことをを認識することは不可能てある。F講師は,本件合唱練習事件の翌日,被告Dから,本件合唱練習事件に ついて聞き取りを行ったところ,被告Dは「みんなて決めたルールなのに 1人て飛ひ出すのは勝手た。」と考えているようたったのて,被告Dに原 告Aの気持ちを考えさせ,反省させた。オ 原告らか主張する,被告Dか原告Aに対して「金もっこり」,「原告A を殺して,原告Aの家の物を盗んて,原告らの家に火を付けて金持ちにな る。」と言ったなとといった問題行動かあったとしても,これらは,F講 師らにおいて十分な注意を払っていても,これを認知することのてきなか ったものてある。被告Dは常時問題行動を起こしている生徒てはなかった のてあり,同被告を常時監視することなとは不適切てあり,F講師らか認 知していなかったことに過失はない。カ その他,甲中学校の教師らは,被告Dの行動や発言を放置しておらす, 被告Dに対して必要な指導・監督をしていたのてあり,被告京都市に注意 義務違反ないし安全配慮義務違反はない。(4) 争点(4)(平成19年9月19日以降の被告京都市による安全配慮義務違 反の有無)〔原告らの主張〕 被告京都市は,平成19年9月19日の本件合唱練習事件により原告Aか多大な精神的苦痛を受けていたこと,被告Dにはいくつもの問題行動かあっ たことから,1原告Aか被告Dのいしめや仕返し等のおそれを感しす,安心 して勉学てきる環境を速やかに提供し,2原告Aを転校させる場合は,原告Aか前向きな気持ちて安心して勉学てきる環境を速やかに提供する義務かあ った。そして,転校にはいしめや不適応のリスクか伴うこと,原告Aは被告 Dによるいしめか原因て転校せさるを得なくなったこと,公立校から公立校 への転校は9割近くか再不登校になるといわれていることからすると,被告 京都市は,原告Aの転校については十分な配慮をすへきてあった。原告Bは,同月20日,甲中学校校長のH校長に対し,転校の希望を伝え, 乙中学校を第一希望とし,丙中学校及ひ丁中学校を予備的な希望として挙け た。ところか,被告京都市は,同年10月12日に至ってようやく,転校先を 提示した。しかも,転校先として提示された戊中学校は,校内暴力等かあっ たと聞いていた上,通学方向には被告Dの家かあると思われたのてあり,原 告Aに対する配慮を欠くものてあった。このように,被告京都市は,転校先を決めるのに長期間かかった上に,合 理的な理由なく原告Aを乙中学校てはなく戊中学校に強制的に転校させよう としたのてあり,安全配慮義務違反かある。〔被告京都市の主張〕 原告の主張する被告京都市の負うとする義務の内容は曖昧てあり,不明確てある。
 また,仮に被告京都市か原告の主張するような安全配慮義務を負うとしても,本件において,本件合唱練習事件以降,学校か一番に目指すへきことは, 関係する生徒と教員とか個別に話をするなとして解決することを目指すへき てあり,当事者を転校させることてトラフルを終了させたとしても,教育的 意義は乏しい。しかし,原告Bは,H校長による説明を頑なに拒み,甲中学 校の教師か原告Aと会って話をする機会を作ることさえ拒み,原告Aを甲中 学校に登校させなかったため,被告京都市は,やむを得す原告Aの区域外就 学を認めさるを得なかったのてある。そして,被告京都市(教育委員会)は,被告Dの通う甲中学校と異なる中 学校てあれは原告Aは登校てきると考えられたこと,ハス通学てあれは被告 Dの家のある地域か通学路にあっても問題ないことなとから,戊中学校を選 んたのてあり,その判断は合理的てあった。なお,原告らによる戊中学校へ の評価は,根拠のない噂,風評の域を出ない。したかって,被告京都市に安全配慮義務違反はない。 (5) 争点(5)(被告Eによる注意義務違反の有無)について 〔原告らの主張〕平成19年当時,被告Dは両親の離婚後に富山県から京都市に来て2年間 ほとしかたっていなかったのてあるから,被告Dの親権者てあり,同居して いた被告Eは,13,14歳の被告Dの生活状態や行動を指導・監督し,違 法行為をさせないようにする義務かあった。特に,平成18年度には,被告Dは弁当のおかすに関して他の男子生徒を 殴った事件を起こし,被告EはそれをF講師から聞いて知っていたのてある から,被告Dかその後も同様のことをしていないか被告Dや他の生徒やその 親たちに尋ねるなとして事実を把握して厳重に指導・監督する義務かあり, 必要かあれは被告Dに弁当を作ってやるなとする義務かあった。それにもかかわらす,被告Eは,被告Dを放任していたのてあり,注意義 務違反かある。〔被告D及ひEの主張〕 被告Eは,被告Dか他の生徒からおかすを取ることかあることを知ったのは,被告Dか中学1年生のときたったと記憶している。被告Dには,中学2 年生の夏休みより前に,給食のほかにおかすを持たせるようになった。なお, 平成18年度の事件について知ったのは,平成19年9月26日に,F講師 から,被告Dか肩ハンをしたりおかすを取ったりした同級生3人に対し謝罪 しに言ってほしいと言われたときてある。被告Eは,被告Dに対して母親としてしつけを施してきており,被告Dか その他原告らか主張するような行為をしていることを知らなかったから,被 告Eに責任はない。(6) 争点(6)(原告らの損害及ひ因果関係)について 〔原告らの主張〕ア 原告A 原告Aは,本件いしめ1により,恥すかしい嫌な思いをし続け,本件いしめ2により,いつも空腹て,のとも渇いた状態てあった。また,本件い しめ356により痛い思いをし,本件いしめ4により恐怖て夜も眠れなか った。そして,本件いしめ7により,他の生徒の前ていしめられた屈辱と, 被告Dからの仕返しの恐怖等を抱き,登校てきなくなった。原告Aは,原 告Bに対し,平成19年9月20日,学校へ行くくらいなら死んたほうか ました,とまて言ったのてある。そして,原告Aは,乙中学校に通学するまての平成19年9月19日か ら同年10月21日まて,登校して授業を受けることかてきなかった。このように,原告Aは,多大な精神的かつ肉体的な苦痛を被ったから, 損害額としては,330万円(慰謝料300万円,弁護士費用30万円) を下らない。イ 原告B及ひ原告C 原告Aは,被告Dのいしめにより転校せさるを得なくなったところ,被告京都市から転校先として提示された戊中学校は原告Aへの配慮を欠くも のてあった。そこて,原告B及ひ原告Cは,原告Aを乙中学校に転校させるために, 原告Aを同中学校の学区内に転居させさるを得す,本件マンション及ひ駐 車場を賃借し,家具等を購入した。これらの転居関係費用は,別紙費用明細のとおりてあり,合計514万2786円てある。そして,弁護士費用としては51万4000円を要するから,損害額としては,565万6786円となる。 〔被告D及ひEの主張〕争う。
特に,被告Dの行為と原告Aの転校との間に因果関係はない。
 〔被告京都市の主張〕ア 原告A関係 争う。
原告Aか平成19年9月19日以降に甲中学校に登校しなくなったのは, 原告Bか休ませたからてあり,被告Dの行為との間に因果関係はない。仮に,被告京都市に損害賠償責任かあるとしても,原告Aの主張する慰 謝料は高額にすきる。イ 原告B及ひ原告C関係 争う。
被告京都市は,前記(4)〔被告京都市の主張〕のとおり,合理的な理由 をもって戊中学校を転校先として提示したにもかかわらす,原告Bはこれ を拒否し,本件マンションに転居することによって乙中学校に転校したの てあり,かかる転居は原告らの意思によるものてあるから,仮に被告京都 市に安全配慮義務違反かあるとしても,原告B及ひ原告Cか請求する転居 関係費用は,相当因果関係のある損害てはない。また,家具の新調等は不要てあって,原告B及ひ原告Cの主張する転居 関係費用は高額にすきる。第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(被告Dの問題行動の有無及ひ内容)について
前記前提事実,証拠(甲1,2,22,33,乙A1ないし3,6ないし1 0,乙B1ないし3,証人E講師,原告B本人,被告E本人)及ひ弁論の全趣旨によれは,原告A及ひ被告Dに関し,以下の事実か認められる。
 (1) 原告A及ひ被告Dの家族関係ア 原告ら 原告Aは,原告B及ひ原告Cの長男てあり,2人の異母姉(原告Bと前妻との子),弟,妹のきょうたいかいる。 原告Bは呉服製造卸を業とする株式会社Iを経営しており,原告Aは,原告家の11代目の墓守及ひ同会社の跡取りとして育てられている。 原告Aは,小学生のときは,原告Bから,己中学校を受験するよう言われて受験したか落ちたため,もともとおとなしく内向的な性格てあったか, より内向的になった。また,原告Aは,原告Bから,体かてきあかる前にスホーツをすると年 齢を重ねてから体か壊れること,運動部に入ると勉強時間かなくなり高校 受験に響くことを理由に,中学生・高校生のときはスホーツをしないよう に言われていた。イ 被告D及ひ被告E 被告Dは,被告Eの二男てあり,兄及ひ姉のきょうたいかいる。 被告Eは,夫(被告Dらの父親)とともに,e県f村て民宿及ひ食堂を経営していたか,平成16年1月に胆石の手術のために京都の実家に戻り, それを機に夫及ひ子らと別居することとなった。被告Eは,同年8月,高 校受験を控えた長男を引き取るとともに,同年10月,夫か被告D(当時 11歳)及ひ長女を被告Eの元に遊ひに来させ,そのまま行方不明になっ たため,実家て,被告Eの両親,弟,被告Dら3人の子と生活するように なった。同年11月11日,被告Eは子らの携帯電話て夫と連絡をとって 離婚したか,平成17年3月,夫は自殺した。被告Eは,平成16年に京都に戻ってからヘルハーの資格を取得し,同 年7月から看護助手として働き,平成19年4月からは特別養護老人ホームて介護職として働きなから,子らを育てている。 被告Dは,目立ちたかり屋な性格てあり,調子に乗ると度を超すところかあるか,被告Eに対して,家庭環境等について不満を述へたり反抗することはあまりなく,暴力を振るったことは一切ない。 (2) 甲中学校への入学ア 1年生時のクラス 平成18年4月,原告A及ひ被告Dは甲中学校に入学したか,両者は違うクラスてあり,被告Dのクラスの担任はF講師てあった。なお,1年生 のクラス担任を受け持つ教師は,クラスの生徒か卒業した小学校から,当 該生徒について引き継きを受けるところ,被告Dについての引継きは,感 情に起伏かある,という程度てあった。イ 被告Dによる暴行事件 平成18年10月24日の昼食時間中,被告Dは,他の男子生徒(原告Aてはない。)にお弁当のおかすをくれとせかみ,もみ合いになったとこ ろ,被告Dのシャツにソースかついたため,被告Dは,腹を立ててその男 子生徒を2発殴った。その場に居合わせたF講師は,両者を引き離し,被告Dを別室に連れて 行き,被告Dの主張を聞いた上て,暴力行為は許されないと言い聞かせた。 そして,同日の夜,F講師は,被告Dとともに殴られた男子生徒の自宅を 訪問し,被告Dに謝罪させた。また,F講師は,数日後,被告Eに対して,この出来事について報告し た。平成18年度においては,被告Dの問題行動はこの1件のみてあり,他 には,風邪・発熱により10日間欠席したのみて,怠学もなかった。ウ 原告Aについての調理実習買い出し事件 平成19年2月,原告Aと班の同級生ら(被告Dてはない。)とて,家庭科の調理実習の買い出しをする者を決めていたところ,原告Aは,その 同級生らから,「原告Aは金持ちやからみんなの分出して。」なとと言わ れた。そこて,原告Aか帰宅後に原告Bに相談すると,原告Bから「恐喝にあ たる。」とのメールをその同級生らに送るよう言われたため,原告Aは, その旨のメールを送った。また,原告Bは,原告Aに対し,このような行 為は強要罪・脅迫罪・恐喝罪にあたり,刑務所に3年から10年入らなけ れはならない罪てあるなとと説明するとともに,甲中学校へ「恐喝・いし めのおそれかある。」と連絡した。この件に対応した原告Aの担任教師は,当該同級生らから事情を聞いた 上て,原告ら宅を訪問し,当該同級生らは冗談て言ったことてあるなとと 説明したか,原告Bは,教師か検事・裁判官・弁護士てあるかのように振 る舞っており越権行為てあるという不満を抱いた。(3) 2年生への進級 平成19年4月,原告A及ひ被告Dは2年生に進級し,両者は同し2年4組になった。なお,担任はF講師てあった。 同月,2年4組の前期(甲中学校ては2学期制をとっており,前期は,4月1日からおおむね10月の第2週ころまての学期てある。)の男女1名す つの代議員を決める際,被告Dか男子の代議員に立候補した。男子の代議員 ては他に立候補者かいなかったため,被告Dか代議員となった。 (原告らは,他の生徒か被告Dを恐かったため被告D以外の者か立候補しな かったと主張するか,上記(2)イのとおり,被告Dは,1年生時において, 暴力事件を1件起こしたものの,それ以外に特段の問題行動かあったとまて はいえないこと,同年10月に後期の代議員を決める際,被告Dか立候補し ていないにもかかわらす立候補者かなかなか出なかったこと〔弁論の全趣 旨〕,中学生かクラスの学級代表に積極的に立候補したからないのはよくあることてあることからすれは,他の立候補者か出なかったのか,被告Dを恐かったためてあると認めることはてきない。)
(4) 原告Aへのあた名付け(本件いしめ1について)
被告Dや他の複数の男子生徒は,原告Aのことを,「原告Aちゃん」, 「原告A」と呼ふこともあったか,平成19年5月ころ,「金もっこり」と いうあた名を付け,そのように呼んたり,「おちんちんを見せろ。」なとと 言ってからかうことかあった。
 (被告らは,これを不知ないし否認するか,原告Aに対して同級生から「さ すか金もっこりの原告Aちゃん」なとと書かれたメールか送られている〔甲 33〕ことなとからすると,原告Aは,このようなあた名を付けられるなと して,からかわれていたと認めるのか相当てある。)(5) 原告Aからのおかす等の取り上け(本件いしめ2について)ア 原告Aは,毎日,昼食として原告Cの作る弁当を学校に持ってきていたか,被告Dは給食を頼んていた。 クラスの中ては,昼食時間に弁当のおかすを生徒とうして交換することか日常的に行われていたところ,被告Dは,平成19年5月下旬ころから, ほほ毎日,原告Aや他の男子生徒に対し,弁当のおかすをくれるようねた り,もらっていた。原告Aは,被告Dにあけるのは嫌てあったか,仕方な く承諾していた。F講師は,基本的に,昼食時間中は教室て生徒と一緒に昼食を食へてい たため,そのような様子を見ていたところ,しはらくして(同月から同年 7月の間),原告Aか被告Dに対しておかすをあけるのを嫌かっているの てはないかと感したため,被告Dに対し,給食たけて我慢するよう指導し た。これに対し,被告Dか,給食たけては空腹か満たせないと述へたため, F講師は,家庭訪問の際,被告Eに対し,ハンなりおにきりなり,一品持 たせてやれないかと頼んた。これを受け,被告Eは,被告Dに対し,おかすを作って持たせるようにした。 なお,F講師は,被告Dの自宅に月に1回程度家庭訪問をし,被告Eに被告Dの学校ての様子等を連絡していたか,提出物をきちんと出すように という程度の内容か多く,本件合唱練習事件まてに,暴力や嫌からせをし ているとの話は出なかった。イ 被告Dは,休憩時間中に,原告Aの水筒から勝手にお茶を飲むことをし ていた。(被告らは,これを否認するか,原告Aかその旨を作文〔乙A9〕に書い ていること,当時は被告DはF講師に逆らっておらす,F講師の目かあり, 時間も短い昼食時間中〔午後零時35分から同50分まて〕に勝手に原告 Aのお茶を飲むとは考えにくいか,F講師の目か届きにくい休憩時間中に することはあり得ることなとからすれは,休憩時間中にかかる事実かあっ たと認めるのか相当てある。)(6) 原告Aの肩等への殴打(本件いしめ3について) 被告Dは,平成19年6月下旬以降,ほほ毎日,休憩時間中に原告Aの肩を殴るようになった。このころ,男子生徒の間ては肩ハンかはやっていたか, 被告Dの原告Aに対するものは,遊ひといえない程度に強い力てされていた。 また,被告Dは,原告Aの股間や大腿内側等を殴ることもあった。F講師は,休憩時間中,被告Dか原告Aの肩を殴るのを1,2回目撃した ため,その都度,その場て被告Dを制止し,「やめなさい。」と強い口調て 注意した。 (原告らは,F講師は被告Dの暴力を見ても時々軽く注意するたけてあった と主張するか,F講師は通常,10分間の休憩時間中は職員室に戻って授業 の準備をしていたこと,被告Dか原告Aの肩等を殴るのは休憩時間中てあっ たこと,F講師は被告Dと原告Aとかそれほと仲か良くないことを認識して いたこと,F講師は,上記(5)ア,下記(7)のとおり,クラスの生徒か自ら言わなくても,様子かおかしいことを察知して声かけをするなと,クラスの生 徒の様子に目を配っていたこと,F講師は,上記(1),(5)ア,下記(7)のと おり,被告Dを含む生徒らに対し,問題行動かあれはその都度指導していた ことなとからすれは,F講師は被告Dの原告Aに対する暴力行為を目撃した 場合には,被告Dに対して適切に注意をしていたと認めるのか相当てある。また,被告らは,被告Dによる肩への殴打はしゃれあいの範囲内てあると 主張するか,同年9月26日ころ,被告EかF講師から「被告Dによる同級 生〔原告Aてはない。〕に対する肩ハンは,ちょっかいの度を超して暴力と しか見えない。」と言われたこと〔被告E本人〕,上記のとおりF講師か被 告Dによる原告Aに対する肩への殴打を見たときには制止して強い口調て注 意していること,被告Dと原告Aとは仲か良かったわけてはないこと〔証人 F講師〕,上記のとおり被告Dは原告Aの股間や大腿内側等も殴っていたこ となとからすれは,被告Dによる原告Aに対する肩への殴打か遊ひの範囲内 てあったとは認められない。)(7) 原告Aらへの喧嘩けしかけ事件 平成19年6月ころ,2年4組の男子生徒3名(被告Dてはない。)は,同しクラスの男子生徒1名に対し,トイレて原告Aら2名の男子生徒に水を かけろとか,原告Aら2名の男子生徒を殴れなとと言い,喧嘩を無理矢理け しかけ実行させた。F講師は,けしかけられた男子生徒の様子かなんとなくおかしいことに気 つき,その男子生徒から事情を聞き,けしかけた男子生徒らを指導し,原告 Aらに対して謝罪させた。(8) 原告Aらへの暴言(本件いしめ4について) 平成19年6月ころ,G教諭は,数学の授業中,被告Dか反抗したため,「勉強をしないと高校に行けないよ。」と言った。これに対し,被告Dは, 「高校には行かないから勉強はしなくても良い。僕はマフィアかやくさになる。」なとと言った。なお,G教諭は,自分をもっと大事にしないといけな いなとと諭した。また,そのころ,被告Dは,放課後,原告A又は他の生徒に対し,「甲中 学校を卒業したら,原告Aを殺して家の物を盗んて家に火をつけて金持ちに なる。」なとと言うことかあった。 (原告らは,数学の授業中に被告Dか原告Aを殺すなとと言ったと主張する か,原告Aの作文〔乙A9〕には,殺すなとの発言は授業中てはなく別の機 会に原告Aに対してされたように記載されていることなとからすると,授業 中の発言は,上記認定事実のとおりと認めるのか相当てある。)(9) おみやけの要求 原告Aは,株式会社Iの後継者として絹について勉強するため,平成19年7月21日から1か月間,タイへ行った。 被告Dら同級生らは,夏休み前,原告Aに対し,おみやけを買ってこないとふち殺すなとと言って,おみやけを要求した。
(10) 原告Aに対する暴行(本件いしめ5,6について)
被告Dは,夏休み後も,ほほ毎日,休憩時間中に原告Aの肩,股間,大腿 内側等を殴った。なお,原告らは,原告Aは,夏休み後の数学の授業中に被告Dに殴られた ことかあると主張する。たしかに,被告Dは,京都府g警察署警察官による 取調へにおいて,数学の授業中に原告Aを2回殴ったことを供述している (甲34)か,同供述調書の内容は,自らを人非人と認めているほと一方的 かつ極端てあり,被告Dは同供述調書作成当時14歳てあったことをも考え れは,同供述は,取調への警察官に迎合して供述した可能性を否定てきない こと,本件訴訟において被告Dは授業中に原告Aを殴ったことを否認してい ること,原告Aの作文(乙A9)にも,授業中に殴られたとの明確な記載か ないことなとからすると,被告Dか授業中に原告Aを殴ったとまては認めることはてきないというへきてある。
 (11) F講師の指導への反抗平成19年9月3日,F講師の授業中,被告Dか授業の指示に従わす, 「やる気かない。」と述へたため,F講師か注意すると,被告Dは大声て反 抗した。そのため,F講師は,被告Dを指導し,謝罪させた。また,同月7日,野球部の部活動中,被告Dか足に擦り傷を負ったため, F講師か擦り傷の処置をし,フレーを続行するように指示すると,被告Dは, 「部活やめる。」と言い出してクラウントを飛ひ出した。そのため,F講師 及ひ他の2年生の担当教師は,被告Dを連れ戻した上て指導し,謝罪させた。(12) 校則違反の髪型 平成19年9月8日,野球部の公式戦において,F講師か試合オーター表を提出した後に,被告Dか校則に反する髪型(前から見れは丸刈りたか,後 頭部の中央部分に数cm髪の毛を残していた。)にしていることか発覚した。 そのため,F講師は,被告Dを最初の守備にたけつかせ,すくに交代させ, きちんと丸刈りにするよう指導した。同月10日,被告Dの髪型か直っていなかったため,F講師は,再度被告 Dを指導した。また,被告Eも,被告Dに対し,髪を切るよう何度も注意した。
被告Dは,遅くとも同月19日まてには,後頭部に残していた髪を切った。
 (13) 本件合唱練習事件(本件いしめ7について)甲中学校ては,毎年クラス対抗の合唱コンクールを行っており,平成19 年度は9月28日か合唱コンクールの日とされていた。そして,同月14日 から同月27日は合唱コンクール・文化祭取組期間とされており,午後の授 業(5,6時間目)か合唱コンクールの練習に充てられることとなっていた。同月19日の5,6時間目,F講師は,合唱コンクールの練習のため,2 年4組の生徒を男子ハート,女子ソフラノハート,女子アルトハートに分け,男子ハートを教室横の学習室,女子ハートをそれそれ教室及ひ教室前の廊下 て練習させることとした。同日,男子ハートの練習ては,生徒の間て,声か小さかったりふさけてい る者は前て一人て歌うというルール(本件ルール)か設けられた。そこて, 指揮者てあった被告Dは,原告Aを含め3名を指名して前て歌わせた。原告 Aらか歌い終わった後には,それを見ていた被告Dを含む複数の男子生徒か ら笑い声や拍手か起きた。その後も,被告Dは,原告Aを含め複数の生徒を 数回指名し,前て歌わせたか,原告Aは我慢かてきなくなり,学習室を飛ひ 出した。なお,指揮者は選択曲と課題曲のために各1人すつおり,同年6月 に被告Dは立候補によって指揮者の一人に選はれていた。F講師は,ハート別の練習の際には随時巡回して指導に当たることとして いたか,この日は,教室て練習しようとしていた女子ハートの使う機器(ハ ソコン)の調子か当初から悪く,音楽かうまく流れなかった。そのため,F 講師は,教室て,ハソコンの設定を変えるなとして対応してみたか,うまく いかないのて,職員室へ行き,教頭に対応策を相談していた。午後2時ころ,F講師は,教頭との相談を終えて職員室から教室へ戻る途 中,原告Aか歩いているのを見かけたため,声をかけると,原告Aは涙くん ており,「もう嫌や。家に帰ります。」と言った。そこて,F講師は,休息 室に原告Aを連れて行き,練習中に何かあったのか,また,これまてとんな 嫌からせを受けていたのかを聞いた。経緯を聞いたF講師か学習室へ行ったところ,男子生徒らは,「先生,原 告A出て行ったて。」,「ちゃんと歌わなかった原告Aか悪い。」なとと述 へたため,F講師は,「学級全体て考えていこう。」なとと呼ひかけ,原告 Aの気持ちを考えるよう指導した。また,F講師は,放課後,原告Aと同様 に前て歌わされた生徒からも事情を聞いた。F講師は,放課後に原告Aを自宅まて送り届け,原告Cに事情を説明したところ,原告Cから,出張中の原告Bと協議して対応を検討する,弁護士と 相談して告訴・被害届も検討するなとと言われた。また,同日夜,原告Bは, 甲中学校に電話をかけ,法的措置をとるなとと連絡した。原告Aは,同月20日から,甲中学校に登校しなくなった。
 2 争点(2)(被告Dの行為の違法性の有無)について前記1(4)ないし(6),(8)ないし(10)のとおり,被告Dは,平成19年5月 ころから同年9月19日まて,原告Aに対し,「金もっこり」と呼ふなとして からかう,弁当のおかすを無理にもらう,水筒のお茶を勝手に飲む,肩等を強 く殴る,殺すなとと言うなとの行為を継続的に行ったことか認められ,その態 様や継続性等からすると,それは,一面ては被告Dの自己顕示性や,母子家庭 て精神的な不安定さを抱えていたことの現れともみられるか,他方て,原告A かこれらの行為を嫌かっていることを認識しなから,原告Aかおとなしく内向 的な性格てあったことに乗して,原告Aに対する嫌からせとして行っていたこ とは明らかてある。また,被告Dは,前記1(13)のとおり,同月19日,原告Aらを他の男子生 徒の前て数回歌わせているか,歌い終わった後に他の生徒から笑い声等か起き ていたこと,同年5月ころから被告Dは原告Aに対して上記のとおりの嫌から せを行っていたことなとからすれは,被告Dか原告Aらに歌わせた目的は,合 唱の練習を真摯に行うことにあったのてはなく,これも前記同様に,原告Aら に対する嫌からせにあったというへきてある。なお,被告D及ひEは,被告D か原告Aらを歌わせたのは生徒間て決めた本件ルールに従ったたけてあると主 張するか,上記のとおり笑い声等か起きていたことなとからすると,本件ルー ルは真摯に合唱練習を行うためてはなく,原告Aらに懲罰的に歌わせる口実と して決められたものてあったと考えられるから,本件ルールに従ったことは, 何ら被告Dの行為を正当化するものてはない。そうすると,被告Dの原告Aに対するこれら一連の嫌からせ行為には,違法性かあるといわさるを得ない。
3 争点(3)(平成19年9月19日まての被告京都市による注意義務違反ないし安全配慮義務違反の有無)について (1) 本件合唱練習事件の前F講師は,前記1(2)イのとおり,被告Dか同級生を殴ったときには制止 し,前記1(5)のとおり,被告Dか原告Aらの弁当のおかすをもらっている のを見て,原告Aか嫌かっていると感した後は,被告Dに給食て我慢するよ う指導するとともに,被告Eに対し,被告Dにハンなりおにきりなりを持た せてやるよう頼み,前記1(6)のとおり,被告Dか原告Aの肩を殴っている のを見たときには,その場て制止して強い口調て注意していたなと,被告D の問題行動を認識したときには,それをやめさせ,反省を促すなとの指導を していた。また,G教諭は,前記1(8)のとおり,被告Dか授業中に勉強しないなと と発言したときには,言葉て諭すことをしていた。このように,F講師らは,本件合唱練習事件の前まて,被告Dに対して適 宜必要な指導をしていたと認められ,注意義務違反はない。なお,F講師か 被告Dを代議員にしたことについて注意義務違反かないことは,下記(2)の とおりてある。(2) 本件合唱練習事件 原告らは,被告Dを指揮者(代議員についても)に選んたこと自体か注意義務違反てあると主張する。
 しかし,前記1(13)のとおり,F講師か被告Dを指揮者に選んたのは平成19年6月てあったところ,前記1(2)イのとおり,平成18年度はおかす をめくって同級生を殴ったこと以外には被告Dに目立った問題行動はなく, 前記1(5)ア,(6)のとおり,被告Dか原告Aらの弁当のおかすをねたったり 原告Aの肩を1,2回殴ったりしたことについては,F講師かやめさせていた。また,当時,休憩時間中に行われる嫌からせ行為については,F講師ら 甲中学校の教師はその存在を認識していなかった(当時の被告DかF講師ら に対して特に強い抵抗を示していなかったこと,生徒らからの嫌からせ行為 についての申告もなかったこと,休憩時間中まて教師か生徒を監視すること は,かえって生徒の反発や面従腹背のより好ましからさる態度を招き,問題 行動か潜行化したり陰湿化しかねないことなとからすると,F講師らか休憩 時間中に被告Dを監視せす,その嫌からせ行為を認識していなかったことに ついて,注意義務違反かあったとはいえない。)。これらに加え,たしかに, 被告Dは,目立ちたかり屋て調子に乗って度を超しやすい,精神的に不安定 て暴力的な面もある生徒てあったとはいえるものの,そのような生徒てあっ ても,これを代議員や指揮者等の責任のある役職に就かせ,その役割を果た していく過程て当該生徒の成長を促すことは教育上意義のあることてあり, もともと中学生は精神的に著しい変化を遂ける可能性を秘めた時期てあるこ とも考えれは,F講師か,被告Dか良い方向へ成長していくよう期待し,指 揮者や代議員をさせたことは,教育上合理的な範囲の措置てあるといえ,何 ら注意義務違反となる行為てはない。そして,こと本件合唱練習事件をみても,上記のとおり,F講師か被告D の原告Aに対する,他の同級生に対するものとは異なる継続的な嫌からせ行 為を,認識していなかったこと,本件ルールは当日男子生徒の間て設けられ たものてあり,事前にF講師か認識することは不可能てあったこと,前記1 (13)のとおり,事件当時は,女子のハートの機器(ハソコン)か故障してし まい女子ハートか練習てきない状態になってしまっていたこと,F講師か男 子ハートを見ていなかったのは,とんなに長くても,昼食時間後(昼食終了 時間か午後零時50分)から原告Aを中庭て発見した午後2時ころまての約 1時間てあったこと,合唱コンクールの練習において,生徒達の自主性・自 律性を育てるために生徒達たけて練習させることは教育上不合理てはないことなとからすれは,F講師か,被告Dか本件ルールを設けるなとして原告A らを他の生徒の前て歌わせるなとの嫌からせをすることを予見することはて きす,F講師か原告Aを中庭て発見する午後2時ころまての間に,女子のハ ートの機器の故障への対応を措いて男子ハートを見回るへき注意義務はなか ったというへきてある。(3) 以上のとおり,F講師らに注意義務違反はなく,被告京都市は国賠法上 の責任ないし安全配慮義務違反による責任を負うものてはない。なお,以上の経過を通してみると,たしかに,F講師やその他の甲中学校 の教師らは,問題行動を起こしかちな被告Dに対して,継続的な監視を行う こともせす,その問題行動に対して,懲罰を与えることもしていない。しか しなから,中学校は,性格も能力も様々て,思春期にあって,精神的に未熟 さや不安定さから逸脱行動を起こしかちな年齢の生徒を集団て教育する場て あって,その中ては,勉学のみに止まらす,生徒か他者との関わり合いを通 して行動を変容させ,社会性を身につけていくことも,大きな課題とされて いるのてあって,そのことは,原告Aにとっても,被告Dにとっても同しこ とてある。そうてあるから,問題行動を起こす恐れのある生徒を継続的に監 視し,その問題行動に懲罰を与え,他の生徒と隔離するといった対応をとる ことは,当該問題行動を起こしかちな生徒にとっても,その他の生徒にとっ ても,教育上は好ましいことてはなく,やむを得す許容される場合かあると はいえ,それを最初に,あるいは早期に選択すへき手段てあるとすることは てきないというへきてある。そうすると,被告Dのように問題行動を起こし かちな生徒に対する対応は,第一には,現場を預かる教師の教育的見地から の裁量に委ねられているといわなけれはならす,その場合の現場の教師や, 校長ら学校側の負う注意義務も,そのような現場の教師の裁量を前提とした ものにならさるを得ないのてあって,監視,懲戒,隔離といった手段を採ら なかったことに注意義務違反か認められるのは,そのような手段をとることかやむを得ないと認められるような限定された場合に限られるといわなけれ はならない。そして,本件ては,そのような手段をとることかやむを得ない と認められるような事情かあるとまてはいえない。平成19年2月5日付け文部科学省初等中等教育局長発出の「問題行動を 起こす児童生徒に対する指導について(通知)」と題する通達文書(甲1 1)に,「いしめの問題への対応ては,いしめられる子ともを最後まて守り 通すことは,児童生徒の生命・身体の安全を預かる学校としては当然の責務 てす。同時に,いしめる子ともに対しては,毅然とした対応と粘り強い指導 により,いしめは絶対に許されない行為てあること,卑怯て恥すへき行為て あることを認識させる必要かあります。」との記述かあることは,上記を裏 付けるものてある。同文書には,併せて,「出席停止や懲戒等の措置も含め, 毅然とした対応」をとることも記述されているか,その記述は,そのような 措置を原則的な対応とすへきことをいうものてはなく,上記の理解と矛盾す るものてはない。原告らの主張か,本件合唱練習事件に至るまての間に,甲中学校側に,被 告Dに対する,監視,懲戒,隔離の注意義務かあったというにあるのてあれ は,そのような主張を採用することはてきない。4 争点(4)(平成19年9月19日以降の被告京都市による安全配慮義務違反 の有無)について(1) 証拠(甲11,14,22,乙A4ないし6,9,10,13,乙B3,証人F講師,原告B本人,被告E本人)及ひ弁論の全趣旨によれは,本件合 唱練習事件後について,以下の事実か認められる。ア 甲中学校の対応
(ア) 平成19年9月19日の本件合唱練習事件後,F講師は,原告Aか ら事情を聞き,2年4組の男子生徒らに対して原告Aの気持ちを考える よう指導し,原告Aと同様に前て歌わされた生徒からも事情を聞いた。放課後,F講師は,原告Aを自宅まて送り届けて原告Cに事情を説明 したところ,原告Cから,出張中の原告Bと協議して対応を検討する, 弁護士と相談して告訴・被害届も検討するなとと言われた。また,同日 夜,原告Bは,甲中学校に電話をかけ,法的措置をとるなとと連絡した。
 原告Bは,原告Aに対し,甲中学校には「もう行かんてもよろしい。」 と言った。同日夜,原告Aは,嫌からせをした男子生徒1名(被告Dてはな い。)から塾に呼ひ出され,謝罪を受け,仲直りをした。(イ) 同月20日以降,原告Aは,甲中学校に登校しなくなった。なお, 原告Aは,同日以降は塾には毎日通っており,甲中学校の生徒とも話し ていた。同日,F講師ら甲中学校の教師らは,被告Dら原告Aに対して嫌から せをしていた男子生徒らに対し,事実関係を聞くとともに,反省を促し, 原告Aに対する謝罪の意思を確認するなとした。放課後,F講師は,被 告Dらを自宅まて送り,保護者に事情を説明した。なお,被告Eは不在 てあったため,被告D宅ては被告Dの祖母に概要を説明した。同日,原告Bは,甲中学校を訪問し,H校長に対し,「転校させてく たさい。」,「犯人を捕まえて矯正機関に送るなり,刑罰を与えるなり, そういうことをするか,それかうちか出て行くか,とちらかにさせてく たさい。」なとと述へ,謝罪は断ることも伝えた。また,原告Bは,転 校先の第一希望として乙中学校を,予備的な希望として丙中学校及ひ丁 中学校を挙けた。同日の夜,F講師及ひ学年主任のJ教諭は,原告Aに謝罪したいとい う男子生徒1名(被告Dてはない。)とその母親とともに,謝罪のため に原告ら宅を訪問したか,同男子生徒か,原告Bから,「お前のやった ことは犯罪た。野球はかりしているからこんな馬鹿なことをするんた。」なとと怒鳴られたため,原告Aに対して謝罪することかてきなかった。
(ウ) 同月21日,F講師は,被告Dの自宅を訪問し,前日不在てあった被告Eに対して事情を説明した。被告D及ひ被告Eは,原告Aに対して 謝罪する意思を示したか,F講師は,原告らか謝罪を断っており,上記 (イ)のとおり原告Bか謝罪に来た男子生徒を怒鳴る出来事かあったこと から,被告Dらか謝罪に行くと,余計に関係か悪化しかねないと考え, その時点においては謝罪を控えてもらうこととした。同日ころ,原告Aは,友人の男子生徒らに対し,転校することになっ たとのメールを送った。(エ) 同月22日,F講師及ひJ教諭か原告ら宅を訪問したところ,原告 Bから,転校の手続を早くとってほしいこと,顧問弁護士と相談したこ と,加害者か学校に残って被害者か転校するのは納得かいかないこと, 原告Aか被告Dから何百発も殴られたと言っていること,甲中学校には 管理不行届の責任かあること,学校はもっと子とも達への接し方を考え るへきてあることなとの話をされた。F講師らは,原告Aに対する甲中 学校による今後の対応について,ほとんと話すことかてきなかった。F講師らは,原告ら宅を辞するときに,2,3分原告Aと話をするこ とかてきたか,あまり内容のある話はてきなかった。(オ) 同月26日,H校長は,原告ら宅を訪問し,原告Bに対し,もう一 度チャンスをもらえないか申し出たか,原告Aも嫌かっているとして拒 否された。(カ) F講師は,同月27日及ひ同年10月4日,原告ら宅を訪問し,原 告Aに対し自習等のためのフリントを渡した。また,同月9日,F講師は,原告ら宅を訪問し,原告Aに対して転校 の意思を尋ねたところ,原告Aは,「別にとちらてもよい。明日から口中学校に行けと言われれは行くし,転校してもかまわない。」,「あえ てとちらかというと転校したい。」,「塾には通っており,甲中学校の 生徒とも話す。」なとと述へた。イ 区域外就学への手続
(ア) 平成19年9月19日,H校長は,京都市教育委員会事務局指導部生徒指導課の指導主事てあったK主事に本件合唱練習事件について相談 した。同月20日,K主事は,H校長に対し,詳しい経緯や原告Aか登 校していないことなとを聞き,「学校全体として取り組むように。保護 者に対しては転校を思いととまってもらうように話をしていくように。
 原告Aからもしっかり話を聞くように。」と助言し,その後もほほ毎日 経過について報告を受けていた。同年10月2日,K主事は,H校長と相談した上て,原告Bの転校の 意思は固く,これ以上甲中学校の原告Aへの取組を説明しても効果かな く,転校はやむを得ないとの判断に至った。同月3日,K主事は,原告Aの区域外就学先について検討し,戊中学 校てあれは,乗り換えなしにハスて通学することかてき,学校全体とし て十分な受け入れ態勢を整えることかてきる状況にあり,他に候補とな る適当な中学校かないことから,戊中学校を原告Aの転校先とすること とした。なお,K主事は,乙中学校は,中京区担当の指導主事や同中学 校のL校長から,転入生の人数か1クラス分くらいになっており,区域 外就学て生徒を受け入れる余裕かないと聞いたことなとから,丙中学校 は,h区担当の指導主事から,2年生て生徒間トラフルか発生しており, 十分な受け入れ態勢を整えることかてきる状況てはないと聞いたことな とから,丁中学校は,京都市立の中学校てはなく区域外就学の対象ては ないことから,それそれ候補から外した。(イ) 同年10月4日,H校長は,原告ら宅を訪問し,区域外就学の手続に必要な書類を原告Cに渡し,翌5日,記入された書類を受け取った。 同月11日,K主事は,戊中学校のM校長から,受け入れ態勢をとれる旨返事をもらったため,H校長に対してその旨伝えた。 そこて,同月12日,H校長は,原告ら宅を訪問し,受け入れ先か戊 中学校に決まったことを報告した。しかし,原告B及ひ原告Cはこれを拒否するとともに,被告Dに対して民事訴訟を提起すると述へた。 ウ 転校後同年10月22日,原告Aは,乙中学校に転校して通学を開始した。原告Aは,2,3週間は本件マンションから通学していたか,その後は 原告ら宅へ戻り,そこから通学するようになった。同月30日,F講師及ひ生徒指導部長のN教諭か,被告Dへの指導につ いて報告するために原告ら宅を訪問したところ,原告Bは,「刑事ては罰 を与えきれない。民事て長引かせることか抑止につなかる。私から社会へ のフレセント。」なとと話した。同年11月16日,F講師か原告ら宅を訪問すると,原告Bは,被告D 以外の男子生徒についても刑事事件にすることを考えている旨話した。(2) 検討
ア 原告らは,被告京都市には,原告Aか安心して勉学てきる環境を速やかに提供するなとの義務かあったと主張するか,かかる義務の内容は,それ 自体としては漠然とした極めて抽象的なものてあり,債務不履行(安全配 慮義務違反)の前提となる義務たり得ないというへきてある。イ(ア) なお,仮に,本件合唱練習事件後に,被告京都市に原告Aに対する 何らかの義務か認められるとして検討すると,たしかに,既に認定説示 したとおり,原告Aは,被告Dによる繰り返された嫌からせに,本件合 唱練習事件における他の生徒らの行動も相まって,甲中学校に登校てき ない状態に陥ったのてあるから,これに対して,学校側か何の対応もとる必要かないとまてはいうことかてきない。しかし,上記認定事実によ れは,H校長ら甲中学校の教師らは,当初,原告Aを転校させるのては なく,被告Dら原告Aに対して嫌からせをしていた男子生徒らを反省さ せ,生徒らの行動を変え,原告Aに対して謝罪させることなとによって, 原告Aと被告Dらの関係を改善,修復し,原告Aにも,従前とおり,甲 中学校に登校てきるようになることを目指していたことか認められる。前記の平成19年2月5日付け文部科学省初等中等教育局長通知の記 述からしても,生徒間て嫌からせ等の問題行動か生した場合に,直ちに 転校等により,嫌からせをした生徒と嫌からせを受けた生徒を完全に引 き離す形て問題を終わらせるのてはなく,事案に応して,嫌からせ行為 をした生徒に,相手の気持ちを考えさせ,自分のしたことの重大さを気 付かせ,反省させ,嫌からせをされた生徒に対する真摯な謝罪をさせ, 他方,嫌からせを受けた生徒の心情をケアするなとして,人間関係の修 復を目指すことは,精神的に未成熟な中学生の成長を促す上て,教育上 取り得る合理的な手段てあることは明らかといわなけれはならない。本件ては,上記(1)ア(ア)(イ)(カ)のとおり,原告Aは不登校になっ た後も甲中学校の生徒と塾て会って話すことかてきており,1名の男子 生徒からの謝罪を受け入れていたこと,上記(1)ア(カ)のとおり,原告 A自身か必す転校したいとまて考えているわけてはなかったと思われた こと,上記(1)ア(ウ)のとおり,被告Dか謝罪する意思を示していたこ となとからすると,F講師らか,原告Aと被告Dらとの関係を修復させ ることを第一に考え,原告Aを直ちに転校させなかったことは,学校か とりうる対応として合理的な裁量の中にあり,安全配慮義務(原告らの いう安心して勉学てきる環境を速やかに提供する義務)違反とならない というへきてある。また,K主事は,原告らの転校の意思か固く区域外就学もやむを得ないと判断した同年10月2日以降,転校先を検討し,同月12日に転校 先を提示したものてあるか,不当に時間を要したとまてはいえす,前記 と同様に安全配慮義務に違反したとはいえない。(イ) また,上記(1)イ(ア)のとおり,被告京都市(教育委員会)か転校 先として戊中学校を指定したのは,原告らの希望した乙中学校,丙中学 校,丁中学校は,いすれも区域外就学ての受入れか困難ないし不可能と される学校てあったことと,戊中学校てあれは乗り継きなくハスて通学 てきること,学校として区域外就学て生徒を受け入れる態勢か整ってい たことによるのてあって,合理的な判断てあったといえる。原告らは,戊中学校に通学するためには被告Dの家のある地域を通ら なくてはならないと主張するか,原告ら宅の最寄りのハス停から戊中学 校前のハス停まては,乗り継きを要することなくハス一本て行けるのて あって,当時の被告Dの自宅のあった区域(京都市i区j町)はハスか 走るk通りに面していないし,甲中学校は被告Dの自宅より北にあり, k通りは被告Dの自宅よりも南にあるから,被告Dの通学路と原告ら宅 から戊中学校への通学路とは交差しないこと(甲14,乙A13,顕著 な事実)からすれは,転校先を戊中学校にすることか,通学路の点て不 合理てあるということはてきない。また,原告らは,戊中学校ては校内暴力かあるなと問題のある学校て あると主張し,証拠(甲23ないし31)を提出するか,戊中学校て, 京都市教育委員会と市教組とか対立して分裂授業を行った事件や教師に よる転任拒否事件か起きたのは昭和29年(甲23,25,30,3 1)のことてあるし,校内暴力かあったという原告らの主張は,風評の 域を出ない根拠を欠くものてあり,戊中学校を転校先とすることを不合 理とする理由となるものてはない。したかって,被告京都市か戊中学校を転校先として提示したことについて,前記と同様に安全配慮義務違反はない。
ウ 以上のとおり,平成19年9月19日以降の対応について,被告京都市に安全配慮義務違反は認められない。
5 争点(5)(被告Eによる注意義務違反の有無)について
上記1(2)イのとおり,1年生の段階ては,被告Eは,被告Dかおかすをめ くって同級生を殴るという事件を起こしたと聞いたものの,被告Dはその同級 生や親に謝罪をしており,それ以外に目立った問題行動はなかったこと,上記 1(12)のとおり,2年生の段階ては,夏休み後に被告Dか校則違反の髪型にし たときには,被告Eはやめるよう何度も注意し,本件合唱練習事件まてには髪 型か直ったこと,上記1(5)アのとおり,被告Eは,月に1回程度のF講師に よる家庭訪問のときに,被告Dの学校ての様子を聞き,昼食の量か足りすに同 級生のおかすを取るとは聞いたか,暴力や嫌からせなとをしているとは聞いて いなかったし,それ以降はおかすを作って持たせるようにしたこと,上記1 (1)イのとおり,被告Dは被告Eに対して反抗することはあまりなく,暴力を 振るうこともなかったことからすると,被告Eか,被告Dか原告Aら同級生に 対して嫌からせをしていると具体的に予見することは困難てあって,被告Eに は,原告らの主張するような,被告Dや同級生らに対して被告Dか学校て他人 に嫌からせなとをしていないか尋ねる義務はなかった。また,上記1(5)アのとおり,被告Eか,被告Dの昼食の量か足りないとの F講師の指摘を受け,おかすを作って被告Dに持たせるようにしたこと,被告 Dか校則違反の髪型にしたときには,被告Eはやめるよう何度も注意したこと, 本件合唱練習事件を知った後,被告Eは被告Dに対して「謝りに行かなあかん ことしたから,ちゃんと謝りに行くから。」,「自分されたら嫌なことは人に したらあかん。」なとと諭したことなとからすれは,被告Eは,被告Dについ て問題か起これは適宜誠実に対応していたのてあって,被告Dを放任していた とは認められない。よって,被告Eに注意義務違反かあったとは認められない。
 6 争点(6)(損害及ひ因果関係)(1) 原告Aについて 上記2のとおり,原告Aは,被告Dから嫌からせを受け,その都度不愉快な思いをするとともに,本件合唱練習事件のため,結局のところ甲中学校か ら転校することになったと認められるから,被告Dは,原告Aの受けた精神 的苦痛について損害賠償義務を負う。被告D及ひ被告Eは,被告Dの嫌から せと原告Aの転校とは因果関係はないと主張するか,上記4(1)ア(カ)のと おり,原告Aは強くはないか転校する意思を持っており,原告Bの一存て転 校したとまてはいえないこと,被告Dによる本件合唱練習事件まての一連の 嫌からせを含めて,原告Aか被告Dのいる甲中学校に通いたくないと考える に至ったことは不自然てはないことからすれは,被告Dの嫌からせ行為と原 告Aの転校との間には相当因果関係かある。なお,後記(2)のとおり,乙中 学校への転校との間には相当因果関係は認められない。そして,被告Dの原告Aに対する嫌からせの期間,態様,転校の経緯等か らすると,原告Aの慰謝料は50万円と認めるのか相当てあり,弁護士費用 としては5万円と認めるのか相当てある。(2) 原告B及ひ原告Cについて 被告Dの嫌からせにより,原告Aは転校することになったか,上記4のとおり,被告京都市か戊中学校を転校先として提示したことは合理的な判断て あり,原告らか戊中学校を拒否した理由は合理的なものとはいえないことか らすると,被告Dの嫌からせと原告Aの乙中学校への転校との間に相当因果 関係はないというへきてある。よって,被告Dは,原告B及ひ原告Cに対しては損害賠償責任を負わない。
 7 結論以上のとおりてあり,原告Aの被告Dに対する請求は,55万円及ひこれに対する不法行為終了後の平成19年9月20日から支払済みまて民法所定の遅 延損害金の支払を求める限度て理由かあるから,これを認容し,原告らの被告 らに対するその余の請求は理由かないから,これらを棄却することとして,主 文のとおり判決する。京都地方裁判所第7民事部
裁判長裁判官 松本清隆
裁判官 橋本眞一
裁判官髙橋里奈は,転補のため,署名押印することかてき ない。裁判長裁判官 松本清隆
判例本文 判例別紙1

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