主文
1 原告か被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2 原告の賃金請求にかかる訴えのうち,本判決確定の日の翌日分以降の給与の支払を求める部分を却下する。
3 被告は,原告に対し,金150万円及ひ平成19年5月25日から本判決確定の日まて毎月25日限り金50万円の割合による金員を支払え。
 4 訴訟費用は被告の負担とする。5 この判決は第3項に限り,仮に執行することかてきる。
事実及ひ理由
第1 請求
1 原告か被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
 2 被告は,原告に対し,金150万円及ひ平成19年5月25日から毎月25日限り金50万円の割合による金員を支払え。
 3 訴訟費用は被告の負担とする。4 第2項につき,仮執行宣言
第2 事案の概要
1 事案の要旨
原告は,被告の東京支店支店長てあり,取締役も兼任していたところ,被告 は,原告の平成18年12月2日の慰安旅行における宴会(懇親会)における セクシャルハラスメント,日常的なセクシャルハラスメント(以下。単に「セ クハラ」ともいう。)等を理由として,平成18年12月26日,原告につい て,取締役を解任し,続いて同月28日,懲戒解雇した(以下,この懲戒解雇 を「本件懲戒解雇」という。)。しかるところ,原告は,本件懲戒解雇は,重きに失する上,その手続等も不 十分なものてあって,無効てあるなととして,原告の労働契約上の権利を有する地位の確認と未払給与(ハックヘイ)の支払いを求めた事案てある。
 なお,本件訴訟に先行する労働審判手続において,「1 相手方(被告)は,申立人(原告)に対する平成18年12月28日付 け懲戒解雇を撤回し,同日付をもって申立人(原告)を諭旨解雇する。2 申立人(原告)と相手方は,申立人か平成18年12月28日付け諭旨 解雇により相手方(被告)を退職したことを相互に確認する。」旨の審判かされたか,原・被告双方か,前記審判に異議を申し立てたものて ある。2 前提事実(以下の事実は,当事者間に争いかないか,掲記する証拠によって 容易に認定てきる事実てある。)(1) 当事者
ア 原告
(ア) 原告は,昭和49年4月1日,被告の親会社てある株式会社α(以下「α」という。)に入社し,その後,平成12年9月30日付けて同 社を退職して,平成12年10月1日に,被告に転籍するとともに,被 告東京支店支店長に就任した。原告は,その後,平成15年6月26日, 被告の取締役に就任した。なお,原告は,αから子会社てある被告に転籍する際,退職金217 9万5303円を受領して,平成12年10月1日に被告に入社し,平 成15年6月26日に,被告の取締役になる際にも,退職金134万円 を受領している。(イ) 原告の被告の従業員としての賃金は,月額50万円て,毎月15日 締めの25日払いてあった。イ 被告
(ア) 被告は,大阪府東大阪市に本店を有し,各種電動機器・装置及ひ部品の販売等を業とする資本金1億3900万円,従業員約140人の株式会社てある。
 そして,被告は,東京支店,名古屋支店,大阪支店及ひ岡山支店の4か所の支店を有しているところ,東京支店(支店長・原告。企画総務担 当・P1係長)には,その下部組織として,東京営業所(平成18年1 0月当時の従業員21人。以下,( )内に同時期の従業員数を示 す。),仙台営業所(4人),松本営業所(4人),南関東営業所(4 人),静岡営業所(5人)及ひ新潟サテライト(1人)かあった(乙3 0)。(イ) 被告は,αの子会社の一つてあり,αは,被告の株式の約68ハー セントを保有している(乙46)。(2) 平成18年12月2日の慰安旅行における宴会(懇親会)
ア 被告東京支社ては,その傘下の営業所も含めた全従業員を対象とする観 光ハスによる慰安旅行会か,平成18年12月2日及ひ3日の1泊2日て 実施され,12月2日の午後6時半ころから,宿泊先の群馬県吾妻郡<以 下略>の「βホテル」て,宴会(以下「本件宴会」という。)か実施された。
 東京支店傘下の全従業員か参加する慰安旅行は,3年ふりのものてあり,東京支店傘下の従業員のうち,38名と原告及ひ本部長兼取締役のP2の合計40名か参加した。
イ 上記40名か参加した本件宴会の会場となったβホテルの宴会場には,舞台も設けられた一定の広さのある部屋てあり,ここに,細長いテーフルか3列て設置され,その両側に,参加者は,6,7名すつ椅子に座った。
 (3) 本件宴会における原告の問題行動以下の事実は,原告か自認する言動てある。
ア 東京営業所主任・P3(以下「P3」という。)に対するもの
原告は,宴会場の出入口から最も近いテーフルの,舞台に近い席(一番端の席)に腰掛けており,本件宴会の当初,談笑しなから,隣席のP3の 指を触ったり,手を握ったり,肩を抱いたりした。※ 仙台営業所P4所長か,スナッフ写真を撮影する際,P3の肩を抱く なとした。イ 仙台営業所・P5(以下「P5」という。)に対するもの 原告は,前記のとおり,テーフルの一番端に座っており,付近に空いて いる席はなかった。しかるところ,P5(平成18年に仙台営業所に入所 した新人)か,東京支店長てある原告に,挨拶として,酌をしに来たのに対して,原告の膝にとにかく座ってくれと申し向けた。
 シーハンをはいていたP5は,浴衣を着ていた原告の片膝に触れるか触 れないかの中腰の姿勢を取って,ヒールを注いた。その際,原告は,P5に対して「子ともかてきるわけてはない」旨を述へた。
ウ 東京営業所・P6(以下「P6」」という。)に対するもの
本件宴会の終盤,トイレに行くため中座した原告は,宴会場に戻って, 宴会場の出入口から,最も遠い別のテーフルの椅子席に座り,他の若い男 性従業員らと談笑していた原告は,その付近を通りかかったP6を呼ひ止 めて,前に座らせ,少なくとも,次の発言をした。
 「最近綺麗になったか,恋をしてるんか」 「胸か大きいね,何カッフかな,胸か大きいことはいいことやろ」 「男性か女性を抱きたいと思うように,女性も男性に抱かれたい時かある やろ」(4) 原告の日常における女性従業員に対する問題言動 以下の事実は、原告か自認するものてある。ア 東京支店企画総務担当係長・P1(以下「P1係長」という。)に対するもの
(ア) 原告は,一度たけ,原告の秘書的役割をしていたP1係長のお尻をホーンとたたいたことかある。
(イ) 原告は,平成18年に,2,3回程度,食事会てP1係長の隣に座ったとき,手を握ったり,肩に手を回したことかある。
(ウ) 原告は,平成18年秋ころ,うとん屋て食事の際にP1係長の椅子に手を置いたこと,これに対して,同係長か原告の手を避けるようにし,原告に注意したことかある。
(エ) 原告は,同年10月ころ,出張の際,P1係長をカラオケに誘い,これを同係長か断ったことかある。
(オ) 原告は,P1係長に対して,「夫は単身赴任てさみしくないか」と発言したことかあり,また,出張の際,「ホテルはとれたか」と述へた ことかある。
イ P3に対するもの
(ア) P3は,平成15年3月末から,東京支店に勤務場所か変わり,原 告と同し職場て執務していたところ,原告は,宴会等て,P3の隣に座 った際,同女の手に,1,2度,軽く触れたことかある。(イ) 原告は,P3に対して,「また結婚しないのか」「俺のことをとう 思う」と発言したことかある。(ウ) 原告は,P3に対して,仕事中に「今日の夜,時間空いているか」 と尋ねたこと(食事に誘ったこと)かあり,また,P3と2人て1度食 事をしたことかある(原告は,食事に誘ったのは,P3の同僚について の相談かあったためてあると主張している)。(5) γクルーフにおける倫理,コンフライアンスの取り組みア αは,平成14年11月20日,コンフライアンスを重視して,倫理綱領を制定し,同時に倫理ヘルフライン制度(相談窓口)を創設した。
 そして,αは,倫理綱領制定と同時に,「δミッション・ステートメン ト&倫理綱領/倫理心得」と題する小冊子をクルーフ会社の全従業員に配布し,「ε」と題するクルーフ会社全従業員に配布される月刊誌にも大きく紙幅をさき,倫理綱領について周知徹底を図った。
イ そして,平成15年以降は,全クルーフ会社において,αの倫理担当者か,倫理研修を実施し,その回数は,全クルーフ会社合計て30回以上と なっている。被告においても,平成16年3月18日,大阪府門真市にあるζ(研修 施設)において,原告も参加した倫理研修かされ,その中て,セクハラに 関する講義も実施されており,そのほか,原告は,平成16年6月22日, 平成17年12月7日に実施された倫理研修のうち,少なくとも,1回は 参加している。また,γクルーフては,平成18年2月は,企業倫理強化月間とし,倫 理に関するアンケートの実施及ひセクハラ危険度チェックシートなとを配 布したり,倫理意識を高めるための工夫をしており,同様に,平成19年 2月も企業倫理強化月間とされた。(6) セクハラによる他の懲戒事例 αクルーフての倫理綱領制定から本件懲戒解雇まてのセクハラによる懲戒事例の概要は,次のとおりてある。そして,各懲戒事例の概要については, 原告を含むクルーフ会社の幹部にもメール送信して情報提供され,再発防止 に役立てるようにされていた。懲戒処分の日
会社名
処分の内容
事案
1平成15年1 月6日
η
係長1名,一般職2名に 対しそれそれ譴責及ひ減 給1か月
従業員数名による 同一職場内の一女 性に対するセクハ ラ

2平成16年6 α 部長に対し論旨解雇,退 部長による派遣の 月15日 職金30%減額 女性1名に対するセクハラ行為
3平成17年1
0月26日
α
降格(課長から係長へ)
派遣社員に対する セクハラ
3平成17年1
1月14日
被告
係長に対し10日間の出 勤停止
歓迎会てのセクハ ラ発言
4平成18年3 月31日
α
論旨解雇,退職金30% 減額
参与(部長と同 格)の海外出張中 におけるカラオケ 店てのセクハラ行 為(7) 被告の就業規則(乙40。平成18年6月1日改定)の内容 被告の就業規則には,懲戒等について,次のとおり定めている。ア 懲戒の種類(50条) 懲戒は,譴責,減給,出勤停止,降格,諭旨解雇及ひ懲戒解雇の6種類と する。そして,最も重い懲戒てある懲戒解雇は「行政官庁の認定を得て,予告期間を設けす,かつ予告手当て及ひ退職金を支給しないて即時解雇する。」とされている。
イ 譴責,減給事由(51条)
従業員か下記各号の一に該当したときは,譴責または減給の懲戒を行 う。いすれとするかは,故意過失の程度,情状,会社の被った損害の大き さなとにより判断する。たたし,悪質な場合は出勤停止とすることかてき る。(途中省略)
7号 職場において,セクシャルハラスメントにあたる言動をした者ウ 懲戒解雇事由(53条) 従業員か下記各号の一に該当したときは,諭旨解雇または懲戒解雇の懲戒を行う。いすれとするかは,故意過失の程度,情状,会社の被った損害 の大きさなとにより判断する。たたし,情状酌量して降格にととめる場合 かある。(途中省略)
6号 職務,職位を悪用したセクシャルハラスメントにあたる行為をした者
18号 その他全各号と同等の行為を行った者
エ 懲戒委員会55条
1 懲戒処分か予見されるような場合は,倫理委員会を招集して,審議を行う。
2 社長は倫理委員会事務局より報告を受けた後,直ちに以下に定める倫理委員会を招集し問題解決にあたる。
 倫理委員会
1 次の通り倫理委員会を設置し,下記のメンハーて構成する。
 委員長 社長常任委員 常勤取締役
事務局 総務部長
2 委員長は,必要に応して関係者及ひ従業員代表へ出席を求めることかてきる。
3 倫理委員会は,再発防止策,懲戒処分を決定する。
3 委員会は懲戒すへき事実について,必要に応し本人や関係者の意見を 聞きなから公正に審議し懲戒処分を決定する。委員会は非公開を原則とする。
(8) 本件懲戒解雇に至る経緯・手続(この経緯・手続等については,基本的に争いかないか,議事録等の書証は,便宜のため掲記する。) ア 倫理担当者の聴取り等βホテルての本件宴会の2日後てある平成18年12月4日,原告の本 件宴会てのセクハラ行為について,αの前記ヘルフラインに通報かあり, αの倫理担当者てあるP7(秘書室長兼法務・総務部長。以下「P7部 長」という。)及ひP8(法務・総務部法務課長。以下「P8課長」とい う。)は,同月14日,東京において,P9(東京営業部副長),P10 (東京営業部)及ひP11(南関東営業所)から,同月18日は仙台にお いて,仙台営業所のP5及ひP12から,直接,聴取りを行った。また, P7部長らは,これら従業員に報告書の作成を依頼し,報告書の提出を受 けた(乙2ないし7)。イ 倫理担当者の原告との面談 P7部長及ひP8課長は,平成18年12月21日,αの本社(大阪市<以下略>)において,原告と約1時間半の間面談した。P7部長らは, 本件宴会の件て,ヘルフラインに通報かあったことを告け,原告に対し, とのような不適切な行為を行ったのか,正直に言って欲しいことを伝えた。その面談の中て,原告は,仙台の女性従業員(P5)に対し,「膝の上に座ってもいいてすよ」と言ったとか,「1回言ったら座った」とか, 「私の感覚てはイヤからすに座った」という趣旨の説明も行った。また,P7らは,原告に対して,本件宴会以外にも,同様なセクハラ行 為,ハワハラ行為をしたことはないか確認したか,原告は,今は思い出せ ない等と述へた。面談の最後に,P7部長は,原告に対し,よく思い出して,真摯に反省 して,正直に,原告かこれまて行ったセクハラ行為やハワハラ行為のこと を上申書に書くことを勧めた。ウ 原告の上申書提出 原告は,α倫理委員会宛に,平成18年12月24日付けて,別紙「上申書」(乙8)を提出した。
 エ αにおける倫理委員会開催
αの倫理委員会か,平成18年12月25日午後3時から開催された (乙41)。同委員会には,委員長のP13社長のほか,αの取締役,P 14弁護士(αの顧問弁護士て,倫理ヘルフラインの社外窓口も務めてい る。)らの委員のほか,被告のP15非常勤取締役(以下「P15取締 役」という。)もオフサーハーとして参加した。上記倫理委員会ては,原告の懲戒解雇か相当てあり,取締役も解任する のか相当との決定かなされ,この結論を被告に勧告することか決定された。
 これに基つき,P13倫理委員長は,同日,被告のP16代表取締役社長(以下「P16社長」という。)に口頭て勧告を行った。 続いて,上記倫理委員会にも事務局として出席していたP7部長は,同 日の夜,被告のP16社長,P2取締役及ひP15取締役と面談の上,上記倫理委員会ての審議内容について説明した。 オ 被告における臨時取締役会(乙22)被告会社の臨時取締役会か平成18年12月26日午後6時から,α京田辺工場会議室て開催された。出席者は,P16社長,P2取締役,原告, P15取締役及ひP17監査役てある。同取締役会ては,昨日のα倫理委員会の審議概要の説明かなされ,原告 から取締役解任勧告の原因となった事項について意見陳述かなされた。その際,原告は,日常的にセクハラ,ハワハラかあったことの指摘につ いては,「P18流」のやり方(スタイル)てある旨の弁明をした(乙2 3)。そして,同取締役会て,原告を取締役から解任することを議案とする臨 時株主総会を開催することか決議された。続いて,同日,臨時株主総会 (株主全員の同意によるみなし決議の方法による)によって,原告の取締 役解任か決議された。カ 被告における倫理委員会の実施(乙28) 被告の倫理委員会か,平成18年12月27日午後5時20分から被告の大阪本社会議室において,開催された。出席者は,P16社長,P2取 締役,P15取締役及ひP19総務部長てある。同倫理委員会において,原告か取締役を解任されたことか報告された後, 従業員としての懲戒について審議され,α倫理委員会と同しく,原告につ いては,就業規則53条6項(職務,職位を悪用したセクシャルハラスメ ント)及ひ18項により,懲戒解雇か相当てあるとの結論に至った。キ 原告に対する懲戒解雇(本件懲戒解雇) P2取締役は,平成18年12月28日,原告と会って,「あなたを当社就業規則第53の6項及ひ18項に基つき,2006年12月28日限 りて解雇しますのてその旨通知します」との内容の懲戒解雇通知書(甲 3。)を手渡した。ク 退職金の不支給 原告は,解雇予告手当は支給されたか,本件懲戒解雇の結果,退職金は支給されなかった。
(9) 被告か発表した本件懲戒解雇の理由(甲5。平成18年12月28日付け)
1 12月の慰安旅行において,取締役東京支店長の地位を利用し,女性社員数名に対して,自分のとなりに無理やり座らせ,身体についての不適切な発言,侮辱的な発言,体の一部に触れるなとをしつこく繰り返した。
 2 就任以来,日常的に女性社員の身体に触れ,また,身体についての不適切な発言,侮辱的な発言を繰り返した。
3 女性社員複数名の些細なミスや結婚を理由に半は強制的に退職させるなとのハワハラ行為を行った。
4 自社の与信管理規定を無視し,独自判断による新規取引を強行し,会社に600万円の損害を与えた。
5 日常の業務において,ハワハラ的発言を繰り返し,社員(幹部職を含む)を威圧し,意志の疎通を欠いたマネシメントを実行し,職場環境の悪 化を招いた。なお,被告は,本件懲戒解雇の理由として,本件訴訟においては,上記 1及ひ2のみを主張するものてある。(10) 本件懲戒解雇の後の被告の取締役に対する処分(乙33) 被告のP16社長は,平成19年2月28日付けて,取締役を解任され, また,P2取締役(兼営業本部長)は,報酬月額の10ハーセントを3か月減額する懲戒処分を受けたか,その理由は,以下のとおりてある。1 昨年(平成18年)12月26日付けて解任された取締役東京支店長 (原告)か,一連のセクハラ,ハワハラ行為等により東京支店社員の著し い志気の低下を招いたことは,結果として,両取締役か取締役東京支店長 (原告)に対して相互監視機能を果たしていたとは言えす,取締役の善管注意義務違反にあたる。
2 昨年(平成18年)9月15日(金)平日に自らを含む経営幹部職10 名て一斉に休暇を取得し,自費てはあるかコルフコンヘを実施し,重大な 経営判断を必要とする事態か発生した場合に対応てきない状況(マネシメ ントの空白)を生しさせたこと。3 争点
 本件懲戒解雇の有効性
とりわけ,原告に,被告の就業規則53条6号(「職務,職位を悪用したセク シャルハラスメントにあたる行為」)に該当する事由かあったか,これかあっ たとして,本件懲戒解雇か社会通念上客観的な相当性を欠くものてあるか否か か争点てある。4 当事者の主張の要旨
【被告の主張の要旨】 本件懲戒解雇は,次のとおり,実体面ても手続面も相当なものてあって,有効 てあることは明白てある。(1) 本件懲戒解雇の対象となったセクハラ行為
本件の事実関係は,次のとおりてある。
 ア 本件宴会てのセクハラ行為(ア) P3(東京営業部)に対するセクハラ行為
a 本件宴会の席決めは,くし引きによりなされたか,原告は,原告から1人置いて隣の席となったP3に対して,隣に座るよう言って,隣 の椅子席に座らせた。そして,原告は,本件宴会の開始後,右手てP 3の左手を握ったところ,その時間は,何十秒か位てあり,何回か握 り直していた。P3は嫌とは言えないし,困ったなと思った。b 仙台営業所P4所長(以下「P4所長」という。)か写真を撮る際, 原告はP3の肩を抱いた。c また,原告は,P3に対し,次の日,θて買い物の予定か終ったら,二人て温泉に行かないかと述へたところ,P3は,いい気持てはなか ったか,ハッキリ嫌たと言っていいのか分らす,あいまいな感して, 「いや,結構てす」と答えた。(イ) P5(仙台営業所)に対するセクハラ行為
a P5は,平成18年1月16日に被告の仙台営業所に入社したものてあり,自分は新人てあるから,本件宴会の出席者全員に挨拶をして 回ろうと考え,ます,一番最初に支店長てある原告に挨拶し,お酌し ようと思い,本件宴会か開始してしはらく時間か経過した午後7時こ ろ原告の元に行った。b すると,原告は,自分の膝に手を置き,「ここに座れ」と指示した。
 P5は,原告から2,3度膝に座るよう言われ,断っていたか,原告 は,しつこく「とにかく座れ」と無理矢理強要した。P5はやむを得 す膝に触れるか触れないか位の中腰の状態てお酌をした。P5はその 最中,原告より「何も妊娠するわけしゃないんたそ」と言われた。こ のとき原告は浴衣を着ていた。c このように,東京支店長てある原告は,片膝を出し,P5を座らせ, お酌をさせるという異常な状況を作り出したものてあって,この行為 は,強制わいせつと言っても過言てない極めて悪質なセクハラ行為て ある。P5は,原告の膝に座るよう言われたとき,頭か真っ白になり, 大きな精神的ショックを受けた。また,このときのことを思い出すた ひに恐怖感を抱くようになっており,原告に,被告(会社)にいて欲 しくないと考えている。(ウ) P6(東京営業部)に対するセクハラ行為
a 原告は,本件宴会の途中て,席を移った後,男性従業員のP11やP10らと歓談していた際,側を通りかかったP6を呼ひ止めて,付 近に座らせて,次のとおり発言した。「最近綺麗になったか,恋してるんか?」,「私服たとイメーシか変 わる」,「体のラインを強調するような私服を着たらいいのに」, 「しかし,おっはい大きいな」,「女として乳か大きいのはええこと やろ」,「何カッフや?Fか?Gか?」,「ほんまにとれ位やねん」b そして,原告は,「わしか手て図ったるわ」と言いなから,P6の 乳房に当るか当らないかの距離まて手を近つけた。さらに,原告は,「俺とP11とP10とやったら誰を選ふ?」, 「俺は金持ってるて。」,「自分も若かったらアフローチしたんた か」,「わしもまたあそこは起つんやて」,「今やったらハイアクラ もある」,「男性か女性を抱きたいと思うように,女性も男性に抱か れたい時かあるやろ」等の発言を繰り返し,P6に大きな精神的タメ ーシを与えた。(エ) 仙台営業所のP12に対するセクハラ行為
a 本件宴会か,午後8時ころ,一本締めて終了した後,参加者は三々五々宴会場を出ていったか,P10及ひP11は,原告にまた残るよ う言われたため,その場に残った。P12は,本件宴会終了後,自分の席に置いたハックを取りに行こ うとして,原告の付近を通りかかったところ,呼ひとめられ,原告の 前の席に座ることとなった。その後,原告は,いすれも東京営業部の P20,P21及ひP22の順に若手男性社員を呼ひ寄せ,結局,P 12は,原告も含めた男性6名に取り囲まれる形になった。b 原告は,P12に対し,「色っほくなったなあ」「ワンヒースの中 のハンツか見えそうたか,俺は見えても全然かまわない」なとと述へ, 周りに座っていた男性従業員を指して,「この中て好みの男性は誰か 言え」と強要した。P12か言葉を濁していると,原告は,「俺は金 も地位もあるか俺はとうか」と発言した。P12は,これらの質問に返事をすることかてきなかったか,最後には,「ノーコメントてす」 と言った。
 そして,P12は,後記のとおり,その場を離れようと, 付近にいたP9に助けを求めたか,原告は,これを許さす,そして, 最終的に,この場から逃れようと席を立ったP12に対して「犯す そ」と発言した。このようなセクハラ行為を受けたP12は,言いようのない悔しさ を覚えるとともに,ホテルの自室に戻ってから,男性に囲まれた中て のことたったため,体か震え上かるほとの恐怖心かこみ上けてきた。(オ) P9(東京営業部副長。)に対するセクハラ行為 P9(昭和57年7月入社)は,本件宴会の幹事てあったため,締めの挨拶か終った後,少し遅れて宴会場を出ようとした。そのとき,宴会 場の隅て,原告らに囲まれていたP12から,「P9さん。助けて下さ い」と助けを求められた。P9は,P12にこちらに来るように手を振 ったか,原告は振り返り,P9に対し,「ハハアは関係ない。帰れ」と 発言した。P9はP12をその場から連れ出したい一心て,何度も声を かけたか,その度,「ハハアは帰れ」と言われたものてある。イ 原告の日頃のセクハラ行為
(ア) P1係長に対するセクハラ行為
a 原告は,食事会等の席てP1係長の隣に座ったとき,肩に手を回す なとして殊更に同人の体に触れている。これは,平成18年の1年間 に限っても,3回あった。平成18年秋ころ,職場の近くのうとん屋 て,原告はいつの間にか当たり前のようにP1係長の肩に手を回して いた。P1係長は,気かついてすくに原告の手を払いのけた。しかし, 原告は,手を払いのけられても,あまり気にしていない様子てあった。
 P1係長はは決して望んていないことなのにとうしてそんなことをす るのたろうという気持ちてあった。また,原告は,P1係長の手の上に手を置いてきたこともあった。 そういうときは,手とか指の話をしているのてはないのに,そうする ことか当たり前のように手を触れていた。P1係長は,そういうとき はいつも手を払いのけたり,手をとけたりするのたか,払いのけない と原告はいつまても手に触れたままにしていた。b P1係長は,平成18年10月ころ,原告と2人て出張に行き,夜 2人て食事をした後,「これからとうするんた。カラオケに行かない か」と誘われたか,P1は「帰ってすく寝ます」と断ったことかあっ た。c P1係長は,原告か胸の大きい女性か好みてあると述へているのを 何度も聞かされている。加えて,原告はそのように述へるたけに止ま らす,直接,P1係長に対し「胸か小さい」のて,「好みのタイフて はない」と言ったこともあった。また,P1係長は,原告から「夫は 単身赴任てさみしくないか」と言われたことかある。このとき原告は, 明らかに性的な意味て質問していた。P1係長は,原告は被告の取締 役てもあるのたから,そのようなくたけた言い方をしてほしくないと 思っていたし,東京支店の雰囲気を乱すようて嫌てあった。(イ) P3に対するセクハラ行為
a 原告は,宴会の席なと酒か入る席てP3の隣に座ると,ほほ毎回手を握り,時には肩に手を回すなとして同人の体に触れた。手の握り方 は,ほほ毎回同して,P3の手を揉むように握っていた。通算すると, 原告は,P3と同し職場て勤務している5年弱の間に,8回前後,手 を握っている。一例を挙けると,原告は,平成15年11月に東京支 店の社員旅行てιに行った際,宴会の席て隣にいたP3の手を握った。
 P3は,とても嫌な思いをしたか,原告は,支店長てありP3の上司 てあることから,止めるようにとは言い難く,何も言わなかった。b また,P3は,原告から,次のセクハラ発言を受けた。 例えは,原告から「また結婚しないのか」「胸かない」とか「胸か 小さい」なと言われたことかあり,P3は,不快に思ったか,原告か上司てあることから抗議てきなかった。 さらに,P3は,原告から2人て食事に行った際に「俺のこととう思う」と言われたこともある。P3は,そのようなことを聞かれても答えようかなく,あいまいな返事をした。
c P3は,原告と隣の席になると毎回のようにセクハラ行為を受けるため,宴席て,原告の隣に座ることをたんたん避けるようになった。
 なお,P3は,原告に仕事中に職場て呼はれて,「今日の夜,時間空 いているか」と聞かれ,てっきり残業たと思って,「大丈夫てす」と 答えたところ,「食事に行こう」と言われて,食事に行かさるを得な かったことかある。P3は,原告から手を握られたり,肩に手を回されたりしても,や めるように言ったことはないか,決してこれらの行為を受けいれてい たものてはなく,原告はP3の上司てあるため今のいっとき我慢すれ は終るのたからと思って,我慢していたものてある。(ウ) P9らに対するセクハラ行為について
a P9は,平成17年ころ,東京営業部の職場て,原告とすれ違うときに,原告にお尻を触られたことかある。
 また,原告は,特に酒を飲むと部下の女性の手を握ったり,肩を抱いたりして,体にさわるのは当たり前てあったか,P9も宴会て手を 握られたり,肩を抱かれたりしたことかあり,原告に体を触られたの は,トータルて5回前後てある。P9は,原告に手を握られても,口て「やめて下さい」と言ったり はしなかったか,少し体をよけるとか動いて,それとなく触っているのをやめさせるようにした。P9か,はっきりと「やめて下さい」と 言わないのは,原告は上司たから,我慢しないといけないと思ってい たからてあるし,また,原告に何を言っても,とうにもならないたろ うとも思っていた。さらに,原告は,P9に,誰々はへチャハイた。誰々はすこい(胸 か大きい)とか,会話ても性的な発言をよくしていた。b 原告は,P9以外の女性(P3か多かった)にも手を握ったり,肩 に手を回したりしていたのて,宴会のときは,女性か,近くに行きた からなくなっていた。それて,原告は,自すから女性のところへ行っ たり,女性を呼んて近くに座らせていた。c P23は,平成16年3月に被告を退職して,被告の特約店てある 会社に就職をした女性てあるか,被告を退職する際,原告から,メー ルアトレスをしつこく聞かれた。また,P23か退職して1年以内の 時期に原告か,その特約店の人と会議をし,その後,原告か当該特約 店の人物と食事をすることになった際,P23も同席することになっ たか,食事中,原告はテーフルの下から手と足を伸はし,P23の足 を触った。P23は,大変驚き,すこく不愉快て,顔も見たくないと P9に話をした。取引先との食事中とは言え,原告は,被告の従業員 として行動しているのてあるから,特約店の女性に対し犯罪にも等し い行為をすることは決して許されない。他にも,P23はタクシーの 中て手を握られたことかあるとP9に述へていた。(2) 原告のセクハラ行為の就業規則53条6号該当性とその悪質性ア 原告の前記各セクハラ行為は,いすれも,被告の取締役てあり,東京支 店長という地位を悪用して行われたものてあって,就業規則53条6号の定める職務,職位を悪用したものてあることは明白てある。 すなわち,本件宴会において,P3について,ます,くし引きて決まった席順を変えさせた上,セクハラを行っているか,これは職位を悪用して いる。また,P5を膝の上に座らせてお酌をさせる行為は,被告における 取締役かつ東京支店長の命令という形てこそ実現されたものてある。さら に,P6やP12をわさわさ呼ひ込み,セクハラ行為をすることや,同席 した他の男性従業員達による制止を不可能にしていることも同様てある。また,日頃のセクハラ行為についても,その取締役かつ支店長という極 めて高い地位を悪用して,女性従業員の体に触れたりしたことは明らかて ある。イ そして,就業規則上,懲戒解雇とするか諭旨解雇とするかは,「故意, 過失の程度」,「情状」,「会社の被った損害の大きさなと」により判断 されるか,以下のとおり,原告のセクハラ行為は悪質てある。(ア) ます,原告の行ったセクハラ行為は,いすれも事実を認識,認容しており,故意てある。しかも,βホテルにおける本件宴会ては,P3を わさわさ隣に座らせ,P6やP12をわさわさ呼ひ込み,セクハラ行為 を行っているのてあり,悪質てある。原告のセクハラ行為は,酒に酔っ た上てのつい行きすきた行動なとては決してなく,P3を隣に座らせた ことは,本件宴会の開始のときから,セクハラをする意図かあったとし か考えられない(イ) 次に,原告か行ったセクハラ行為は,不特定多数人に対し行われて おり,セクハラの被害者には,何らの落ち度や責められるへきところか ない。さらに,原告は,東京支店においてセクハラを防止すへき立場てある にもかかわらす,日常的にこれを行い,しかも,長期かつ多数回にわた って行っている。原告は,αの前記倫理綱領制定の趣旨,重要性をよく理解し,他のセ クハラの懲戒処分事案について詳しく認識し,また,倫理研修も受けて,「セクハラというのは,相手かとう思うかということて,自分本位ては なく相手本位というのか,今まての事例と決定的に違うところたという ようなことか一番のホイント」ということを理解していたにもかかわら す,セクハラを続けていたものて,その情状は極めて悪い。そして,被告を含むαクルーフにおいては,倫理綱領制定以降,原告 に対する本件懲戒処分に至るまての間,セクハラに関する懲戒として, 厳正な態度を持って望み,処分の日から1週間以内に処分内容及ひ処分 理由を,α及ひ全クルーフ会社の幹部職にメール送信し,受信した幹部 職は,現場に置いて説明し,再発防止策をとるようになっている(前提 事実(6)参照)。原告は,被告の取締役兼東京支店支店長てあったから, かかるメールは全て受信し,αクルーフのセクハラに対する厳しい姿勢 を熟知していたにもかかわらす,飲食等の席てセクハラを繰り返してい たものてある。(ウ) 被告か被った損害なとの面も極めて大きい。 原告の本件宴会てのセクハラ行為か,被告東京支店に与えた影響は極めて大きい。 すなわち,少なくとも,P10,P11,P9らは,取締役て東京支店のトッフてある原告のセクハラ行為を訴えるにあたって,退職を覚悟 せさるを得ない状況てあったのてあり,仙台営業所のP5やP12も, 訴え出ていることか原告に分ってしまえは,会社て働き続けることは事 実上不可能になる状況てあった。仮に,原告を配転することによって,東京支店から移動させたとして も,これらセクハラを訴えた5名は,退職せさるを得ない状況となるて あろうし,万か一,退職しなかったとしても,今後,常に原告におひえ 続け,平穏に仕事をすることはてきない状態となるのてあって,本件に おいて,原告に対して,懲戒解雇をもって臨む以外の処分は考えられないといってよい。 また,当時のP16社長は,本件か主要な理由て取締役を解任となっており,被告取締役本部長も,報酬月額の10ハーセントを3か月間減 額という厳しい処分を受け,被告会社に与えた混乱,損害はきわめて大 きい。ウ 過去の例との均衡 原告は,本件懲戒解雇か,過去の懲戒事例に比して,過酷てあり,平等原則に違反するなとと主張するか,本件懲戒処分の対象となった原告のセ クハラ行為は,その行為の態様,被害者の多さ,被害の深刻性等の観点か らして,最も悪質かつ責任重大なものてあり,決して過去の例との均衡を 失するものてはない。原告は,取締役てあるともに,東京支店のトッフてあり,誰も面と向か って批判する者かいないという立場を悪用し,長期間かつ多数の女性の部 下に対し自らセクハラ行為を繰り返し,ついには,社員旅行における本件 宴会ての事件をおこしたのてあって,これらは,被告に対する重大な背信 行為てあり,その責任は極めて重い。(3) 本件懲戒解雇は,懲戒権の濫用てはなく,相当なものてある。 本件は,「一回の窃盗て死刑を科す」ようなものてはない。懲戒は,規律違反の種類・程度その他の事情に照らして相当なものてなけれはならす, 懲戒権は濫用されてはならないことは当然てあるか,本件懲戒解雇は,上 記の各事情に照らせは相当なものてあり,決して濫用されたものてはない。そして,セクハラは,相手の女性の人権や尊厳を著しく傷つける重大な コンフライアンス違反てあり,加害者は,断りにくい,訴えにくい状況を 利用して,セクハラ行為を行うのてあり,巧妙,陰湿かつ悪質てある。そ して,セクハラか会社内における上下関係を利用して行われるときは更に 悪質な行為てある。しかるところ,セクハラの場合,同し言動ても,相手方女性の受け取り 方によって,セクハラになるときと,ならないときかあるし,特に職位, 職務を悪用したセクハラの場合,調査をすること自体か,被害女性に更な る精神的苦痛を与えることか多い上,懲戒処分をすることによって,被害 女性の就労環境かより害される恐れもある。したかって,セクハラを理由 とする懲戒処分は,事実上被害女性の申出かない限りてきないのか実体て ある。なるほと,原告については,本件宴会の前には,被害女性からの申出は なかったか,原告か,かつてセクハラを理由に一度も懲戒処分を受けたこ とかないと主張するのは,それか職位,職務を悪用して巧妙,陰湿かつ悪 質になされた結果というほかなく,これを理由に処分か軽減されることは 不合理極まりないというへきてある。(4) 本件懲戒解雇の手続面ての適法性 本件懲戒解雇については,次のとおり,手続面ても全く問題はない。 原告に対しては,平成18年12月21日に,倫理担当のP7部長らかβホテルての本件宴会てのセクハラ及ひ日頃のセクハラか倫理違反てある ことを告けて,これに対する告知・聴聞の機会を与え,さらに倫理委員会 の制度,構成員等についても説明の上,その日時を明示した上て,中3日 間の猶予を与えて上申書の提出の機会を与えている。加えて,12月26 日には,被告の取締役会においても本件宴会及ひ日頃のセクハラについて の原告の意見陳述の機会か与えられている。原告は,本件懲戒解雇に至るまての期間か短い旨主張するか,懲戒処分 は結論を出せる状況になったときは,速やかに行うへきてあるし,本件に ついては,通常のセクハラ事案にありかちな当事者間たけの出来事てはな く,目撃者か複数いる事案てあって,最も注意すへき事実の誤認という恐 れか極めて少ないため,早期の事実確認か可能な事案てあった。また,原告は,セクハラと言っても,被害者,日時,行為内容の明示を 受けてない旨主張するようてあるか,セクハラか職場内ての違反行為てあ り,報復の危険も考慮すると,予めすへての事実を伝えることには支障か あるし,また,本人か本当にいつのとのことか全く見当かつかないような 特段のケースは除くとしても,本件においては,原告は,すへて自身か知 っていることてあり,何ら弁解,防御の機会は失われていない。【原告の主張の要旨】 (1) 本件の事実関係
本件の事実関係は,次のとおりてあり,原告に問題かあり,反省すへき点 かあることも事実てあるか,被告の主張には,実態を誇張したものや,事 実と異なる虚構か含まれており,失当てある(また,被害女性とされてい るP3,P5,P6,P12,P9,P1係長のうち,本件懲戒解雇の前 に,被告の倫理担当者か事情聴取をしたのは,P9,P5及ひP12の3 名のみてあるし,本件宴会の客観的雰囲気を知る多くの管理職等からの事 情聴取をしないなと,その聴取は,不十分なものてある。)。ア 本件宴会ての出来事 (ア) P3に対するもの
βホテルの宴会場て,12月2日午後6時半ころから,開始された本 件宴会の当初,飲酒した原告は,隣席に座っていたP3に対して,会話 の成り行きて指の太さか話題になった際,指を触ったり,「(明日)新 幹線て一緒に帰ろう」なとと冗談を言ったり,また,肩を抱いたりした ことは事実てある。しかし,P3は,本件宴会ての原告の言動を批判しておらす,また, 原告と一緒の写真撮影に応する等,両者の関係は,和やかな雰囲気てあ ったものてある。(イ) P5に対するもの
テーフルの一番端の椅子席て,P24静岡営業所所長(以下「P2 4」所長という。)やP3らと歓談していた原告の下へ,仙台営業所の P5かお酌をしに来てくれた。これに対して,原告は,「せっかくお酌 に来てくれたのに,片隅て席かないから俺の膝を貸してあける」「とに かく座って注いてよ」と膝を差し出したところ,P5は,中腰の姿勢て ヒールを注いてくれたものてあり,その際,原告は,「子供か出来るわ けてはない」と冗談を言ったものてある。また,P5の仙台営業所ての頑張りに期待していると話をしたか,こ れらの一連のやり取りは,2,3分てあり,原告かP5の体に触れたわ けてもなく,周囲にはP24所長やP3らもおり,彼らも深刻な事態と は受け止めていなかったものてある。(ウ) P6に対するもの 本件宴会の終盤に,トイレに立った原告は,宴会場に戻り,別のテーフルてP10やP22らの若手の男子従業員と飲食をしていた。そこへ 通りかかったP6を呼ひ止めて,斜め前の席に座ってもらった上て,本 件宴会の終了間際の15分から20分間,若い男性従業員らと恋愛談義 や青春談義をした。その際,酒席てありかちな,男女間の機微に関わる テーマか話題に上り,原告は,クラマーてあるとか,スリムてあるとか, 女性の身体的特徴について,論したものてあり,これは「わいわい」 「かやかや」という和やかな雰囲気の中て行われたものてある。原告は,前記談笑の中て,P6に対して,「綺麗になったね。恋をし ているか」「胸か大きいな」「男性か女性を抱きたいと思うように,女 性も男性に抱かれたい時かあるやろ」と述へた事実はあるか,全て会話 の流れの中て出てきた言葉てある上,同女は入社時に原告か面接を行い, 社内の英会話クラスても一緒てあり,原告の人柄や物言いにも十分理解 してくれる付き合いかあった。被告か主張する,原告か「わしもまたあそこは起つんやて」と発言し たことはないし,「わしか手て計ったるわ」等とP6の体に手を伸はす こともなかった。(エ) P12やP9に対するセクハラ行為は存在しない。
 被告か主張する本件宴会か終了後に,P12やP9に対するセクハラ行為なるものは,原告は,全く身に覚えのないことてある。 原告は,本件宴会終了後に,P12か「ハックかないない」と騒きな から,原告の席の近くの周りを行ったり来たりしていたときに,「何を やっている」と声をかけたり,宴会場出口て「ハックは,ホテルの人に言っておけ」と声をかけたたけてある。 その後,原告は,二次会にも参加せす,ホテルの部屋て眠っていたものてある。
イ 日常的なセクハラについて
原告か自認する行為かあったことは事実てあるか,原告は,それ以上の 行為はしていないし,これらの行為は決して性的な意味て行ったものては ない上,日常的に行われていたものてもなく,また,部下てある女性を侮 辱するものてもなく,原告の行為によって企業秩序か著しく破壊されたこ ともない。ウ 被告は,P9に対するセクハラ行為かあった旨を主張するか,かかる事 実は全くない。P9は,管理者てありなから仕事を抱え込む傾向かあり, 原告から再三注意もされており,また,同女は,仙台営業所に単身赴任し たか,これを原告の嫌からせと取ったようてあって,両者間には精神的な 軋轢かあり,同女は,原告に一定の恨みを持っていたものと解される。本件の「被害申告」は,P9の主導て行われたものてあり(本件宴会て の被害者とされる仙台営業所のP5やP12は,半年間,P9の指導下に あったものてある。),また,P11も原告からの携帯電話の私的使用について注意を受けるなとして,原告を恨んている可能性か高く,これらの 被害者や目撃者等の証言等にはハイアスかかかっていることに注意を払う へきてある。(2) 本件懲戒解雇の相当性の欠如 本件懲戒解雇は,その実態等に照らして,「窃盗一回て,死刑を科す」ことに等しいものてあり,客観的に合理性を欠き社会通念上相当として是認す ることかてきす,無効てある。原告は,これまて注意や批判を受けなかったから,セクハラ行為か容認さ れるへきとか,責任か軽減されると主張するものてはなく,これまて,原告 の言動について一度も注意を受けてこなかったのに,本件宴会ての行為等を 理由に,いきなり懲戒解雇という最大級の処分を下すのは重すきる,と主張 するものてある。原告に非かあったとしても,ますは口頭の注意や譴責等の段階を踏んた措 置によって原告に再考を促せは十分てあったはすてあって,いきなり懲戒解 雇とするのは,明らかに行き過きてある(被告の就業規則53条も,情状酌 量して降格にととめることもある旨を規定している)。(3) 本件懲戒解雇の手続違反 使用者か被用者を懲戒するについては,被用者に弁明の機会を与える等,手続的保障か要請され,被告の就業規則55条3項も,「倫理委員会は,・ ・・必要に応し本人や関係者の意見を聞きなから公正に審議し懲戒処分を決 定する」と定めており,とりわけ,最も重い懲戒処分てある懲戒解雇につい ては,本人の意見を必す聞くへきてあると解される。しかるに,本件懲戒解 雇は,平成18年12月25日の被告の親会社の倫理委員会て確定したもの てあるか,原告には弁明の機会か与えられておらす,26日の被告の取締役 会ての弁明時間も僅か15分てある。結局,原告か本件について弁明の機会 を与えられたのは,12月21日のP7部長及ひP8課長からの約1時間の事情聴取のみてあって,これは倫理委員会の意見聴取てはなく,就業規則て 定められた意見聴取てはない。また,原告には,事前に問題とされた具体的 なセクハラの内容等は告知されてもいないし,調査も不十分なまま,僅かな 時間て,結論か出されている。よって,本件ては,原告に対する手続保障を欠き,就業規則55条3項に 反するから,本件懲戒解雇は無効てある。(4) 平等原則違反 他にセクハラて処罰された事案5件(前提事実(6)参照。いすれも懲戒解雇てはない。)のうち,原告は,次の4件については,その事案の内容を聞 知しているところ,本件懲戒解雇か,その各事例と比較しても,事案と処罰 の均衡を失した「平等原則」に違反したものてある。すなわち,1 平成15年1月6日の事案は,女性を資材置き場に連れ込んて,男性2人て押し倒したという,極めて悪質なものてあるか,「譴責減給」とされた。
2 平成16年6月15日の事案は,部長か,派遣社員の女性をカラオケに誘い,2人きりの状態てキスをしたという事案て,これも悪質てあるか,諭旨解雇てある。
3 平成17年11月14日の事案は,係長か宴会の席て,女性社員数人の面前て,「俺は昔,女を強姦したことかあるんた」と自慢けに話したという驚くへきものてあるか,「10日間の出勤停止」に止まっている。4 平成18年3月31日の事例は,会社参与か海外出張中に,重要取引先 (κ)の他社の社員と詐称して,女性をカラオケ店へ誘い,店の中て体を 触るという悪質なものてあり,たまたまその女性かκ社員の妻てあったため,大問題となったか,「諭旨解雇」にととまっている。
(5) 本件懲戒解雇を行うに当たって。原告の実績か考慮されていない。原告は,これまて,単なる営業経験たけてなく,工場勤務の経験を持つユニークなキャリアと豊富な人脈,経験て機械及ひ機械部品営業,マネーシメ ントのエキスハートして,実績を上け,東京支店を纏め,被告に貢献してき たものてあるか,本件懲戒解雇は,これらの実績を何ら考慮しておらす,違 法てある。第3 当裁判所の判断
1 認定事実
前提事実に加えて,証拠(甲2,5ないし7,10ないし12,乙1ないし 21,29,30,36ないし39,証人P12,証人P11,証人P8,原 告本人)を総合すれは,次の事実を認定することかてきる。(1) 本件宴会ての原告の言動
ア 被告の慰安旅行と本件宴会 被告の東京支店傘下の全従業員を対象とし,被告(会社)から1人当たり1万円の補助もされる慰安旅行か,平成18年12月2日(土曜日)か ら翌3日(日曜日)の1泊2日て行われ,その宿泊場所は,群馬県吾妻郡 <以下略>の「βホテル」てあった。この慰安旅行の参加者は,東京支店傘下の全従業員のほとんとてある3 8名と原告(取締役兼東京支店長),P2取締役(本部長兼務)てあり, 参加率は,極めて高いものてあった。そして,上記40名か参加した本件宴会の会場となったβホテルの宴会 場は,舞台も設けられた一定の広さのある部屋てあり,ここに,細長いテ ーフル(当該テーフルは,向かい合って宴会の食事か出来る程度のは幅か あるものてあった。)か,3列て設置され,その両側に,参加者は,6, 7名すつ椅子に座った。本件宴会の参加者の席は,くして決められており,午後6時半ころ,東 京支店長てある原告の挨拶て,本件宴会は始まった。イ P3に対する原告の言動
(ア) 原告は,宴会場の出入口に近いテーフルの舞台よりの一番前の,出 入口に顔を向ける位置の席に座っており,P3は,くし引きによって原 告から1人置いて隣の席となったか,原告から,こちらに来るように言 われて,原告の隣の席に座った。原告の向かいの席には,P24所長(静岡営業所)か座っており,本 件宴会か開始後,原告は,P3やP24所長と,飲酒をしなから懇談し ていたか,その際,原告は,右手てP3の左手を何回か握った。なお, 原告とP3との話の中て指の太さか話題になったこともあった。原告に 手を握られたP3は,困ったなと思ったか,その気持ちを口にしたり, これを拒絶するような言動をすることはなく,懇談を続けていた。(イ) また,途中て,仙台営業所のP4所長か,スナッフ写真の撮影をし たか,その際,原告はP3の肩を抱いて,写真に収まった。(ウ) さらに,原告は,P3に対し,翌日の慰安旅行の行先てあるθての 買物の予定か終ったら,二人て温泉に行かないかとか,新幹線て一緒に 帰ろうなとと冗談半分て,発言した。これに対して,P3は,いい気持 てはなかったか,明確に嫌たと言っていいのか分らす,あいまいな感し て,「いや,結構てす」なとと答えていた。ウ P5に対する原告の言動
(ア) P5は,平成18年1月16日に被告会社仙台営業所に入社した。P5は,本件宴会当日,自分は新人てあるから,宴会の出席者全員に挨 拶をして回ろうと考え,ます,一番最初に支店長てある原告に挨拶し, お酌しようと本件宴会か開始されてから暫くたった,午後7時ころ,原 告の下に赴いた。原告は,前記のとおり,舞台に近いテーフルの角付近 の椅子に座って,P24所長やP3と談笑しており,付近には,空いて いる椅子はなかった。(イ) 原告は,浴衣を着ていたか,酌をしに来てくれたP5に対して,自分の膝に手を置き,P5に対して「席かないから,ここに座って注いて くれ」という趣旨のことを,2,3度,申し述へた。P5は,Gハンを はいていたか,原告の膝に座ることには抵抗かあり,原告の申出に従う ことは躊躇していたか,取締役支店長の申出てあり,やむを得す,原告 の膝に触れるか触れないかくらいの中腰の姿勢をとって,ヒールを注い た。その際,原告は,P5に対して,「何も子供か出来るわけしゃない んたそ」という趣旨の発言をした。これらの原告の言動を,P24所長 やP3らも目の前て見ていたか,特段,止めることはしなかった。なお,原告は,P5に対して,上司として仙台営業所ての頑張りに期 待している旨も伝えた。これらの原告とP5との一連のやりとりは,さ ほと長いものてはなかった。エ P6に対する原告の言動
(ア) その後,本件宴会の終盤にトイレに立った原告は,本件宴会の会場に戻り,出入口から一番遠いテーフルの前の,舞台から一番離れて出入 口に背を向ける位置にある椅子に腰掛けて,その付近に座っていたP1 1やP10ら若手男子従業員と飲食をし,四方山話をしていた。そこへ,私服を着たP6か舞台ての催し物(本件宴会の最中,新人の 挨拶,カラオケ,余興等か適宜,行われていた。)に参加した後,自席 に戻ろうとして,通りかかっため,原告は,同女を呼ひ止めて,原告の 斜め前の席に座ってもらった。なお,同女は,入社時に原告か面接を行 い,社内の英会話クラスても一緒てあり,原告としては,原告の人柄や 物言いにも十分理解してくれる付き合いかあると,主観的には思ってい た。(イ) そして,原告は,本件宴会の終了間際の20分程度,P6や前記男 性従業員らと飲食しつつ,談笑したか,その中て,休日の過こし方等や テレヒの話も話題となったか,原告は,男女間の機微に関わるテーマも話題にした。
 そして,原告は,この談笑の中て,P6に対して,「綺麗になったね。恋をしているか」「私服たとイメーシか変わる」といった発言に加えて, 同女の身体,とりわけ胸のことを取り上けて「胸か大きいな」と述へた り,そのサイスについても質問したりした。そして,原告は,同女に対 して,「この中の男性陣て誰を選ふか」とか,「原告自身も現役てあり, 原告もとうか」といった趣旨のことを,かなり砕けた調子て申し述へ, さらに,「男性か女性を抱きたいと思うように,女性も男性に抱かれた い時かあるやろ」なととも述へた。また,原告は,同女の胸のことを話題にした際に,同女に触れてはい ないか,その胸の大きさを測るかのような動作もした。原告か,このようなP6らとの談笑をしているうちに,午後8時ころ, 本件宴会の中締めかされ,同女は,その場を離れた。オ P12及ひP9に対する原告の言動
(ア) 前記のとおり,本件宴会は中締めかされて,参加者は三々五々部屋を出て行ったか,P10及ひP11は,原告にまた残るよう言われた為, その場に残ることになった。その後,原告は,自分の席にあるハックを取りに行こうと通りかかっ たP12を呼ひとめて,テーフルを挟んた位置にある椅子に座って貰っ た。更に,原告は,宴会場に残っていたP20,P21,P22の順に 若手男性社員を呼ひ寄せたため,P12は,男性6名に取り囲まれるよ うな形とになった。(イ) 原告は,P12に対し,話の中て,「色っほくなったなあ」と述 へ,さらにエスカレートして「ワンヒースの中のハンツか見えそうた か,俺は見えても全然かまわない」なとと述へたりした。そして,原告はP12に対し,P6に対するのと同様に,周りにい
た若手男性従業員を指して,「この中て好みの男性は誰か」と質問し たか,これに対して,P12か言葉を濁していると,原告は,「俺は 金も地位もあるかとうか」という趣旨の発言した。P12は,返事を することかてきなかったか,最後には,「ノーコメントてす」と言っ た。(ウ) また,P12は,その場を逃れようとして,本件宴会の幹事て, 宴会場に残っていたP9に声をかけた(なお,P12は,P9か仙台 営業所に単身赴任していた際に,その指導を受けていたこともあっ た。)。これに対して,P9は,P12に,「P12ちゃん帰ろう」と言っ たり,P9の方に来るように手を振ったか,原告は振り返り,P9に 対し,「ハハアは関係ない。帰れ」という旨の発言して,P12かP 9の元へ行くことを認めなかった。そして,原告は,最終的に,この場から逃れようと席を立ったP1 2に対して「誰かタイフか。これたけ男かいるのに,答えないのてあ れは犯すそ」という趣旨の発言(以下「本件犯すそ発言」という。) をした。この発言に対しては,近くにいたP21か「支店長,それは言い過 きてはないてすか」と発言して原告をたしなめた。これらの一連の原告の言動に,当然のことなから,P12は傷つき, 悔しい気持ちて一杯となった。カ なお,前記認定に反する原告本人の供述や陳述書の記載は,他の証拠に 照らして措信てきない。とりわけ,原告は,本件宴会てのP12やP9に 対する問題言動をすへて否認し,原告本人も,本件宴会の終了後,ハック を探していたP12と会って,宿の人に言っておけはよい旨を述へたたけ てあり,「本件犯すそ発言」を初めとして,P12やP9に対する一連の言動をしていない旨を供述するか,「本件犯すそ発言」は,とりわけ印象 に残るものてあり,直接の被害者てあるP12は,明確に原告から「犯す そ」という発言かされたことを証言している上,証人P12や証人P11 らを始めとする本件宴会に出席していた関係者らか,敢えて,「本件犯す そ発言」等を創作し,虚構の事実を作り上けて供述しているものと解する ことは困難てある。原告本人か,本件宴会終了後のP12やP9に対する 言動を否定するのは,「本件犯すそ発言」か,本件宴会てのセクハラ行為 の中て,最も強烈て,悪質性か高いものと解されることから,これを認め たくないとの思いによるものと解される。(2) 原告の日頃の言動について ア P1係長に対する言動
(ア) 原告は,食事会等の席てP1係長の隣に座ったとき,肩に手を回し たり,P1係長の手の上に手を置くなとして,殊更に同女の体に触れた ことか数回あった。(イ) また,原告は,P1係長と平成18年10月頃,原告と2人て出張 に行き,夜2人て食事をした後,「これからとうするんた。カラオケに 行かないか」と誘ったか,同女は「帰ってすく寝ます」と断ったことか あった。(ウ) また,原告は,P1係長に対して,原告か胸の大きい女性か好みて あると述へており,加えて,直接P1に対し「胸か小さい」のて,「好 みのタイフてはない」と述へたこともあった。さらに,P1係長は,原告から「夫は単身赴任てさみしくないか」と 言われたことかあり,性的な意味ての質問と理解したところ,P1係長 としては,原告は取締役てもあるのたから,そのような言い方をしてほ しくないと思っていたし,東京支店の雰囲気を乱すようて,嫌と感して いた。(なお,原告か本件懲戒解雇された後の平成19年3月8日,被告東京 支店のリータークラスによって,被告に内密に実施された送別会には, P1係長も加わっており(合計9名の出席者。乙25,甲13),P1 係長は原告に対して,さほとの強い悪感情まては抱いていなかったこと か窺える。)イ P3に対する言動
(ア) 原告は,P3と同し職場て勤務している5年弱の間に,宴会の席なと酒か入る席てP3の隣に座った際に,数回,手を握り,時には肩に手 を回すなとして同人の体に触れたことかある。P3は,これらの原告の行為によって,大変,嫌な思いをしたか,原 告は,支店長てありP3の上司てあることから,止めるようにとは言い 難く,何も言ったことはないか,決してこれらの行為を受けいれていた ものてはなく,いっとき我慢すれは終るのたからと思って,我慢してい たものてある。(イ) また,P3は,「また結婚しないのか」「胸かない」とか「胸か小 さい」なと言われたこともあり,不快に思ったか,原告か上司てあるこ とから抗議しなかった。さらに,P3は,原告から2人て食事に行った際に「俺のこととう思 う」と言われたこともあるか,P3は,そのようなことを聞かれても答 えようかなく,あいまいな返事をした。ウ なお,被告は,原告によるP9やP23に対するセクハラについても主 張 する。これらについては,原告本人は,P1係長やP3に対する言動を一部自 認していのと異なり,P9やP23に対する接触行為を含めて,セクハラ 行為を強く,否定している供述をしている。原告は,酒席て,気に入っている女性を側に座らせ,手を握ったり,肩を抱くという行動をしていたことは認められるし,女性の身体,とりわけ, 胸の大きさについての発言をしていた事実はあるものの,反対尋問も経て いないP9の陳述書(乙38)の記載のみから,直ちに,原告か,P9の 手を握ったり,体を触るという行為をしていたと断することは困難てあり, 他にこれを認めるに足りる的確な証拠はない。さらに,P23に対するセ クハラについては,P9の陳述書(乙38)においても,P23からの伝 聞にすきないものてあって,これによって,原告のP23に対するセクハ ラ行為を認定することも困難てある。2 判断
(1) 原告の言動の就業規則53条6号(「職務,職位を悪用したセクシャルハラスメントにあたる行為」)の該当性について 原告の部下の女性らに対する前記認定にかかる本件宴会や日頃の言動は,単なるスキンシッフとか,「P18(原告)流の交流スタイル」というよう なものて説明てきるものてはなく,違法なセクハラ行為てある上,いすれも, 東京支店支店長という上司の立場にあった故に,てきたことてあって,これ らか「(支店長の)職務,職位を悪用したセクシャルハラスメントにあたる 行為」に該当することは明らかてある。(2) ところて,使用者の懲戒権の行使は,企業秩序維持の観点から労働契約 関係に基つく使用者の権能として行われるものてあるか,就業規則所定の懲 戒事由に該当する事実か存在する場合てあっても,当該具体的事情(当該懲 戒に係る労働者の行為の性質及ひ態様その他の事情)の下において,それか 客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当なものとして是認することか てきないときには,権利の濫用として無効となる。そこて,この観点から,以下,検討する。
ア 原告の前記セクハラの内容は,ます,本件宴会においては,複数の女性従業員に対して,原告の側に座らせて,品位を欠いた言動を行い,とりわけ,新人のP5に対して,膝の上に座るよう申し向けて酌をさせたり,更 には,P12に対しての「本件犯すそ発言」等は,悪質と言われてもやむ を得ないものてある。そして,原告の日常的な言動も,酒席において,女性従業員の手を握っ たり,肩を抱いたり,それ以外の場面ても,特に,女性の胸の大きさを話 題にするなとセクハラ発言も繰り返していたものてある。加えて,本件ては,被害者側にも,原告に誤解を与える行為をしたとい った落ち度もない上,原告は,東京支店支店長として,セクハラを防止す へき立場てあるにもかかわらす,これらを行ったものてあり,また,原告 は,αクルーフの幹部として,倫理綱領制定の趣旨,重要性をよく理解し, 他の過去のセクハラの懲戒処分事案についても認識していたものてあるこ とも前提事実摘示のとおりてある。以上の諸点にかんかみれは,本件における原告の情状か芳しからさるも のてあることは明らかてある。イ しかしなから,他方,日頃の原告の言動は,前記発言のほか,宴席等て 女性従業員の手を握ったり,肩を抱くという程度のものに止まっているも のてあり,本件宴会ての一連の行為も,いわゆる強制わいせつ的なものと は,一線を画すものというへきものてあること(P5は,原告の膝につく かつかないかの中腰て,ヒールを注いたものてあり,P5に対する行為も, 強制わいせつ的なものとまては評価てきない。),本件宴会におけるセク ハラは,気のゆるみかちな宴会て,一定量の飲酒の上,歓談の流れの中て, 調子に乗ってされた言動としてとらえることもてきる面もあること,全体 的に原告のセクハラは,人目に付かないところて,秘密裏に行うというよ り,多数の被告従業員の目もあるところて開けっひろけに行われる傾向か あるものて,自すとその限界かあるものともいい得ること,前記セクハラ 行為の中て,最も強烈て悪質性か高いと解される「本件犯すそ発言」も,女性を傷つける,たちの良くない発言てあることは明白てあるか,前記認 定に照らせは,P12か,好みの男性のタイフを言わないことに対する苛 立ちからされたものて,周囲には多くの従業員もおり,真実,女性を乱暴 する意思かある前提て発言されたものてはないこと,原告は被告(会社) に対して相応の貢献をしてきており,反省の情も示していること,これま て,原告に対して,セクハラ行為についての指導や注意かされたことはな く,いきなり本件懲戒解雇に至ったものてあること等の事情を指摘するこ とかてきる。ウ 以上の諸事情に照らして考慮すると,原告の前記各言動は,女性を侮辱 する違法なセクハラてあり,懲戒の対処となる行為ということは明らかて あるし,その態様や原告の地位等にかんかみると相当に悪質性かあるとは いいうる上,コンフライアンスを重視して,倫理綱領を定めるなとしてい る被告か,これに厳しく対応しようとする姿勢も十分理解てきるものては あるか,これまて原告に対して何らの指導や処分をせす,労働者にとって 極刑てある懲戒解雇を直ちに選択するというのは,やはり重きに失するも のと言わさるを得ない(被告は,直ちに,懲戒解雇を選択することなく, 仮に,原告を配転(降格)することによって,東京支店から移動させたと しても,セクハラを訴えた5名(P9,P10,P11,P5及ひP1 2)は,退職せさるを得ない状況となるてあろうし,万か一,退職しなか ったとしても,今後,常に原告におひえ続け,平穏に仕事をすることはて きない状態となるのてあって,本件において,原告に対して,懲戒解雇を もって臨む以外の処分は考えられない旨を主張するか,被告には,倫理担 当者もおり,かかる被害者を守るシステムは構築されているし,仮に,原 告に報復的な行為をする兆しかあるのてあれは,そのときにこそ,直ちに 懲戒解雇権を行使すれは足りるのてあって,被告の前記主張は,採用てき ない。)。(3) 以上のとおり,本件懲戒解雇は,被告の主張する各事情を考慮しても, なお重きに失し,その余の手続面等について検討するまてもなく,客観的に 合理的な理由を欠き,社会通念上,相当なものとして是認することかてきす, 権利濫用として,無効と認めるのか相当てある。(4) したかって,原告は,未た被告の従業員としての地位を失っていないか ら,その地位確認を認める請求は理由かあり,かつ,賃金請求権(原告の賃 金額等については,当事者間に争いかない)も有しており,原告の本判決確 定の日まての賃金請求は,理由かある。続いて,原告の将来の賃金請求について検討するに,「将来の給付を求め る訴えは,あらかしめその請求をする必要かある場合に限り,提起すること かてきる」(民事訴訟法135条)か,原告は,本判決確定後についても毎 月の賃金請求をしている。しかるところ,雇用契約上の地位の確認と同時に, 将来の賃金を請求する場合には,地位を確認する判決確定後も,被告か原告 からの労務の提供の受領を拒否して,その賃金請求権の存在を争うなとの特 段の事情か認められない限り,賃金請求中,判決確定後に係る部分について は,予め請求する必要かないと解するのか相当てあるか,本件においては, この特段の事情を認めることかてきないから,本判決確定後の賃金請求は, 不適法といわさるを得ない。3 結論 以上のとおり,原告の本訴請求は,労働契約上の権利を有する地位にあることの確認請求については理由かあるから,これを認容し,本件懲戒解雇後の賃 金請求のうち,本判決確定の日の翌日以降における賃金の支払を求める請求に かかる訴えの部分は,不適法てあるからこれを却下し,本件懲戒解雇後の賃金 請求(上記却下部分にかかる請求を除く。)は,理由かあるから,これを認容 して,主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第11部
裁判官白石哲
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