平成20年(む)第64号 証拠開示に関する裁定請求(証拠開示命令請求)事件 主文本件証拠開示命令請求を棄却する。
 理由
第1 本件証拠開示命令請求の趣旨及び理由並びに検察官の意見
1 本件証拠開示命令請求の趣旨
検察官が,弁護人に対し,A,B及びCの取調べを担当した警察官が同人らに対す る取調べの時に作成した取調べ内容のメモのすべてを開示するよう命じる決定を求め る。2 本件証拠開示命令請求の理由(要旨) (1)平成19年12月25日最高裁判所第三小法廷決定によれば,取調べ警察官が取調べの際に犯罪捜査規範13条に基づき作成した備忘録は証拠開示の対象となり得 ると解されるところ,警察官が取調べ時に供述内容や取調べの状況を記録したメモ は,その形式や作成等に関する手続にかかわらず,すべて同条に基づいて作成され た備忘録に当たる。上記最高裁決定は,取調べ警察官が取調べの際に作成した備忘 録について,同条に基づくものと基づかないものが存在するという考え方を前提と していない。(2)弁護人は,捜査段階における上記3名の供述は互いにすり合わされたもので,信 用性がないという主張を予定しており,同人らの供述経過を明らかにするために, 本件証拠開示命令請求に係る取調べ内容のメモは,上記予定主張に関連するものと して,開示される必要性がある(なお,上記3名は,公訴事実の上で被告人の共犯 者とされている者であり,これまで実施した公判前整理手続の経過によれば,捜査 段階において,被告人との間で本件の共謀があったことを認める供述をしていたも のと認められる。)。3 検察官の意見(要旨) 上記最高裁決定が開示の対象となり得ると判示した取調べに関するメモは存在せず,弁護人の本件証拠開示命令請求には理由がない。
 第2 当裁判所の判断1 上記最高裁決定は,証拠開示命令の対象となる証拠は,検察官の保管に係る証拠に 限定されず,当該事件の捜査の過程で作成され又は入手した書面等であって,公務員 が職務上現に保管し,かつ,検察官において入手が容易なものを含むこと,公務員が 職務の過程で作成したメモのうち,専ら自己が使用する目的で作成したもので,他に 見せたり提出することを想定していないものについては証拠開示命令の対象とならな いこと,他方,取調べ警察官が犯罪捜査規範13条に基づき作成した備忘録であって, 取調べの経過等参考となる事項が記録され,捜査機関の保管に係る書面は,個人的メ モの域を超える捜査関係の公文書ということができ,これに該当する備忘録は,当該 事件の公判審理において当該取調べ状況に関する証拠調べが行われる場合には,証拠 開示の対象となり得ることを判示したものである。結局,上記最高裁決定は,取調べ 警察官が取調べの際に記録等のために作成した書面には,同条に基づき作成された備 忘録とこれに該当しないメモとが存在することを前提に,これらを一応区別した上でこのとおり判示していると解するよりほかない。 したがって,弁護人が,警察官が取調べ時に供述内容等を記録したメモは,その形式等にかかわらず,すべて同条に基づいて作成された備忘録に当たると主張する点(前記第1の2(1))は,採用することができない。
2 そして,犯罪捜査規範13条の趣旨に照らすと,取調べ警察官が取調べの際に作成した個々のメモ等が同条に基づき作成されたものであるか否かといった個別的な判断 は,特段の事情のない限り,当該メモ等を作成した取調べ警察官をはじめとする捜査 官においてされるべきものと解するのが相当である。3 そうすると,検察官が,弁護人の証拠開示請求に対して,警察官に対する照会の結 果,取調べ警察官が本件の捜査の過程で同条に基づき作成した備忘録は存在しないと 回答した以上,本件証拠開示命令請求には理由がないこととなる。よって,本件証拠開示命令請求には理由がないから,刑事訴訟法316条の26第 1項により,主文のとおり決定する。
 平成20年6月13日
 富山地方裁判所刑事部
裁判官 坂 田 正 史
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