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20.5.22横浜地裁 棄却 316条の15,316条の20
主文
 本件請求をいずれも棄却する。
理由
第1 A,B,C,D,E,F,G,Hの各供述録取書等の不開示部分1 主任弁護人は,平成20年3月4日付け「証拠開示請求書(1)」2において,上記各証 拠について各供述者の供述の証明力を判断するために重要であるとして,証拠開示請求(刑 訴法316条の15第1項5号)した。これに対して,検察官は,同月25日付け「証拠開示請求に 対する回答書」第1の2において,9通の警察官調書の抄本を開示するが不開示部分は相当性 の要件を満たさないと回答した。そして,検察官作成の同年5月20日付け「意見書」におい て,不開示部分は共犯関係にある各供述者の身上調書中,出生,学歴及び経歴,家族関係, 前科前歴等に関する部分であるが,これらは各供述の証明力を判断するにあたって重要性 は非常に低く,開示の必要性も低く,他方開示によりプライバシー等が侵害される弊害の程度が大きいから,相当性がないと述べている。
2 当裁判所は,上記各証拠の謄本及び弁護人に開示した抄本について証拠の提示を受け,不開示部分が前記事項に関する部分であることを確認した上,以下のとおり判断する。
 まず,不開示事項のうち,出生,学歴及び経歴,家族関係については,供述の証明力を 判断するにあたって類型的に重要性があるとは言えず,刑訴法316条の15第1項本文記載の重要性の要件を欠いている。
 次に,共犯関係にある供述者に前科前歴があることは,その内容次第では,供述者が自らの刑責を軽くする動機を推知させる一事情となりうるなど,その供述の証明力を判断す るために重要である場合があることは否定できない。しかし,共犯関係にある各供述者に ついては既に,身上調書の不開示部分を除き,その供述調書が全て開示されていることな どに照らすと,供述の変遷,各供述間での整合性等によって十分各供述者の供述の証明力 の判断をすることができるのであるから,前科前歴を開示する必要性は相当低いと言うべ きである。一方,これを開示した場合には,共犯関係にある供述者の名誉あるいはプライ バシーを不当に侵害するおそれは決して小さくない。以上より,上記各証拠の前科前歴に 関する部分については,重要性が高いとまでは言えず,開示の必要性が相当低いと言うべ きである一方,開示の弊害が決して小さくない本件事案においては,刑訴法316条の15第1 項本文所定の相当性が認められない。第2 A,B,C,D,E,F,G,Hの取調べ状況報告書の前科調書及び犯歴カード等 主任弁護人は,平成20年3月4日付け「証拠開示請求書(2)」3において,上記各証拠に ついて主任弁護人作成の同日付け「予定主張記載書」IIの4における主張に関連する証拠と して証拠開示請求(刑訴法316条の20第1項)した。これに対して,検察官は,同月25日付 け「証拠開示請求に対する回答書」第2の3において,開示請求証拠の存否にかかわらず, 相当性の要件を満たさないと回答した。上記「予定主張記載書」IIの4の主張からは主任弁護人ら作成の同年5月15日付け「証拠開示命令請求書」3に記載されている,共犯者らの供 述が刑事責任を被告人に転嫁しようとする共犯者らの利益と被告人を刑事訴追したいと考 えている捜査官の利害が一致したことによってなされるに至ったものとまで主張している ものか直ちに明らかであるとは言えないが,要旨,共犯者らが捜査官に迎合したとの主張 をしているとの前提で考えると,共犯者らに前科前歴があれば,それらが自己の刑責を軽 くする目的で捜査官に迎合する動機を推知させる一事情となることもあり得ようから,そ の程度はともかくとして,弁護人らの主張と関連性があること自体は否定できない。しか し,上述の通り,各共犯者の身上調書の不開示部分を除き,各共犯者の供述調書が全て開 示されていることなどに照らすと,供述の変遷,各供述間での整合性等によって各共犯者 の供述の証明力の判断ひいては捜査官に迎合した可能性のある供述か否かの判断を十分に することはできるのであるから,上記各証拠が仮に存在したとしてもそれらを開示する必 要性は相当低いと言うべきである。一方,前科前歴を開示した場合には,共犯者らの名誉 あるいはプライバシーを不当に侵害するおそれは決して小さくない。また,共犯者らの公 判において各人の前科前歴が明らかにされているとしても,それは,各人が被告人となっ ている裁判を通じて生じる不利益であり,また,それぞれの公判審理においてのみ明らか にされたにすぎず,証人としての立場を有する本件事案においては,なお,その名誉ある いはプライバシーの保護が十分尊重されるべきことは言うまでもない。したがって,上記 証拠を開示する重要性が高いとまでは言えず,開示の必要性が相当低い上,開示の弊害が 決して小さくない本件事案においては,刑訴法316条の20第1項所定の相当性が認められな い。第3 結論 よって,弁護人らの本件請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官・栗田健一,裁判官・香川礼子,裁判官・田中一洋)
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